参議院の役割と在り方
参議院は、議会制民主主義の原理である国民主権、権力分立及び議院内閣制の整合性ある実現と、多元的な国民の意思の反映のために創設された、もう一つの直接公選で選ばれた全国民の代表による議院という、民主主義における新しいタイプの議会制度である。旧来の抑制・均衡・補完という二院制の説明概念では、こうした民主的な役割は言いつくせないものがある。
参議院の主な役割は、第一に、議院内閣制の弱点を補完して衆議院及び内閣に対するチェックアンドバランスを発揮すること、第二に、異なる制度、時期による選挙によって、国民の多元的な意思を、よりよく国会に反映することにある。
そもそも両議院の国民代表としての存在意義には何ら違いはなく、いわゆる憲法上の衆議院の優越事項とは、議院内閣制に係る役割の差に由来するものにすぎず、役割の優劣を意味しない。むしろ参議院は、本来の議会の任務である行政への抑止の役割をより重く担っているとみるべきである。
次に、あたかも国際的に一院制が時代の趨勢であるかのような誤解が多いが、二院制の採用は現代的な必要性に基づくものであり、現実に近年20近い国々が新たに二院制を導入したところである。民主主義の成熟した人口の多い諸国はもちろん、一元的な政治体制から脱した国々において、二院制は強く支持されている。特に、平成9年の上院議長会議(上院サミット)において明らかになったように、参議院のような直接公選型の上院を設ける国々の増加も顕著であるが、これらは国民主権の最終的保障を図るため創設され、下院との関係で積極的で強い権能を有する点で共通している。我が国の二院制は、民主主義を強化するこうした新しい二院制の先駆的制度であるとみることができる。
協議会においては、こうした参議院の歴史的な役割と在り方に沿った議論が行われたところであるが、制度の改正に当たっては、参議院の在るべき役割に適合した選挙制度の改革の検討が必要であるというのが一致した意見であった。