145国会に提出された主な法案と民主党の対応 戻るホーム民主党文書目次

改革の先送りを許さず、
プライバシー保護や生活環境の保全に全力。

今国会は6月17日会期末を迎えた。しかし政府・与党は57日間の会期延長を提案し民主党はこれに反対したが、自民・自由・公明・改革クラブの賛成多数で8月13日までの延長が決まった。民主党は、反対すべきは反対し、必要なものは立法し、豊かで安心な生活の実現に向け、正々堂々歩んできた。重要法案にどのような態度で臨んだのか、国会内での取り組みをまとめた。


ダイオキシン汚染対策緊急措置法案  2/17 民主党独自で参院提出

 廃棄物の焼却に伴うダイオキシン類の汚染が明らかになり、不安が高まっている。ダイオキシン汚染は過去の農薬散布等も原因とされており、その汚染状況調査は十分とは言いがたい。削減目標を明確に定め、十分な調査を行い、その結果に基づいて汚染地域の対策を適切に講ずる必要がある。

 民主党案の内容は(1)1日体重1キロあたり1ピコグラム以下の摂取を目標とする(2)大気、水、土壌の環境基準・排出基準を定める(3)調査を行い、対策を講じる(4)小型焼却炉や野焼き対策を講じる――など。


盗聴法案「反対」  6/1 衆院通過  8/12成立

 対象を暴力団、カルト集団などの組織犯罪に限定していないため、すべての人・団体が盗聴の対象となってしまう。また、令状を発する段階では盗聴する通信内容を特定できないうえ、NTT職員等の立会人には切断権がないなど実際の運用をチェックする機能がない。さらに、予備的盗聴、別件盗聴、事前盗聴が認められているなど盗聴の限度がなく、際限なく盗聴範囲が拡大する恐れがある。違法な盗聴に対する罰則も不十分。

 国民の基本的人権・プライバシーを侵害する恐れが濃厚だが、強行採決された。


住民基本台帳法案「反対」  6/15 衆院通過 8/12成立

 全国民に10ケタの番号(住民票コード)を付け、全国の住民基本台帳をネットワーク化する。行政機関が本人確認情報として使用した個人情報の消去規定がないなど、改正案の個人情報保護措置では不十分。条例で定めれば警察等への情報提供も可能になり、利用分野も限定されているとはいえない。

 プライバシー侵害の危険性の大きさにくらべ、国民の利便性向上の程度は小さいと指摘されている。民間を含めた包括的な個人情報保護法の制定が先決。


平成11年度予算「反対」  3/17成立

 民主党は予算を組み替えるよう動議を出したが受け入れられず、予算原案に反対した。反対の第1の理由は、景気回復に不十分な内容であること。党が求めた恒久減税等の抜本改革を見送ったことは、十分な消費刺激や国民の不安解消につながるものではない。公共事業費は上積みされたが、旧来型の土木事業が大半となった。第2の理由は、少子・高齢社会や失業問題に対するセーフティーネットの整備が不十分なこと。民主党が求めた基礎年金の国庫負担率引き上げ、子育て支援手当は盛り込まれなかった。第3の理由は、放漫財政におちいり、財政再建に見通しが立っていないこと。国債発行高は当初予算では最高で31兆円を上回り、国債依存度は37.9%となった。第4の理由は、行政改革が後退し、税金の無駄遣いが根本から是正されていないこと。


周辺事態法「反対」  5/24成立

 民主党は、新ガイドラインに基づく日米防衛協力の意義を認めながら、日本の主体性確保と国民生活に対する配慮を法律面で担保することが必要だと考えた。周辺事態法案については、(1)基本計画全体を国会の原則事前承認事項とする(2)周辺事態を日本有事に発展する可能性がある事態に限定する――等を主な内容とする独自の修正案を提出した。政府原案と自自公修正案には、(1)自治体や民間協力に対する国会のチェック機能がない(2)周辺事態の定義に拡大解釈の余地が大きい(3)船舶検査が削除された等の理由から反対した。

 なお、日米物品役務相互提供協定(ACSA)改正案については、日米防衛協力を原則支持する立場から賛成し、自衛隊法改正案についても邦人救出に艦船派遣のオプションを加えることの必要性を認め、賛成した。


平成11年度補正予算「反対」  7/21成立

 政府は事業規模5429億円の補正予算を提出した。主な内容は「緊急地域雇用特別交付金」の創設、「新規・成長分野雇用創出推進事業費」、「少子化対策臨時特例交付金」。民主党は質量ともに不十分として、衆議院に組み替え動議を提出した。ホームヘルパー増員などによる雇用の創出、都市部における保育所待機児童4万人の解消、起業家支援、NPOの基盤強化などで約1兆円規模のものとなった。公共事業予備費の活用などで、国債発行に頼らない組み替え要求となった。民主党の動議は否決され、政府原案の補正予算が成立した。


国旗・国歌法案「自由投票」 7/22 衆院通過 8/9成立

 民主党は、「日の丸」「君が代」が国民の間に定着していることは認めつつも、「君が代」については歌詞の解釈をめぐり、国民間のコンセンサスがまだ得られておらず、もっと時間をかけて議論すべきだと考えた。そこで、「日の丸」だけを法制化する修正案を提出した。

 修正案の内容は(1)法案名を「国旗法」とする(2)国旗に関する規定中、「国旗は、日章旗とすること」あるのを、「国旗は、日章旗であること」とする(3)国歌に関する規定を削除するものとする――など。

 原案に対しこの賛否は、内心、思想に関わることから、自由投票とした。

国旗・国歌法案が7/22衆院本会議で可決された。民主党は対案として、君が代を法制化の対象からはずし、日の丸を国旗と定めるだけの修正案を提出。鳩山幹事長が趣旨説明を行った。しかし結果は否決。原案である政府案には議員それぞれの意思で臨んだ。結果は賛成403票、反対86票。民主党の賛否は賛成45票、反対46票だった。


国会審議活性化法等「賛成」  7/26 成立

 国会における審議を活性化するとともに、国の行政機関における政治主導の政策決定システムを確立するため、国家基本政策委員会の設置及び政府委員制度の廃止並びに副大臣・大臣政務官等の設置等について定めるもの。

 民主党が政権運営委員会答申等を踏まえて提出していた法案と自白合意に基づく与党提出の法案をベースに与野党協議等で合意を得たもの。民主党主導で政府委員抜きの党首問討論が導入されるとともに、政府に副大臣等が入ることによって、政治主導の政策決定が実現できることとなった。


起業家支援法案(民主党の議院立法) 7/29 衆院否決

 政府は、事業再構築計画を策定した認定事業者に「後向き」の支援措置を講じることを柱とする「産業再生法案」(産業活力再生特別措置法案7/29衆院通過)を提出した。これには創業者への支援策等も若干含まれていたが、(1)自由競争の流れに逆行する(2)行政の裁量を増大させる(3)リストラへの歯止めが不十分等の理由で反対。

 民主党は、女性起業家支援、SBIR制度充実、国立大学教員の民間役員兼務、エンジェル税制強化などを柱とする「前向き」の対案を議員立法として提出。2法案は同時に審議された。論戦では民主党が優勢だったが、他党の理不尽な姿勢により否決された。


公職選挙法改正案等「賛成」  7/29 衆院通過

 (1)洋上投票=遠洋航海中の船員はFAXで衆院総選挙及び参院通常選挙の不在者投票を行える(2)収賄罪等による被選挙権停止期間の延長=従来の5年間の選挙権・被選挙権停止に加えさらに五年間被選挙権を停止する(3)選挙期間中の政治活動用ポスター規制=政党等の政治活動用ポスターに氏名等が記載された者が候補者となったときはそのポスターを撤去しなければならない。以上を内容とする公職選挙法改正案及び国会議員が本人以外の名義で株取引等を行うことを禁じる仮名株取引禁止法案が委員長提案され、可決された(公選法改正案は共産反対、他は全会一致)。


■民主党が取り組んだ議員立法(共同提出含む)

法案等名 法案の意義・ポイント
ものづくり基盤
技術振興基本法

3/12成立

民主党の今泉昭参議院議員が中心となってまとめ、超党派で成立させた。基幹的産業である製造業を支える基盤技術の振興策を総合的かつ計画的に推進するためのもの。
児童売春・ポルノ処罰法

5/18成立

主な内容は(1)18歳末満の者(=児童)に対価を供与して性交等を行った者(2)児童の性交等の描写物を頒布した者等を国外犯を含め厳しく罰するとともに被害児童を保護する。(全会一致)
地位利用収賄罪法案

5/21参院提出

国会議員が特定の人に不当に利益を得させる目的で役人に口利きをして報酬をもらったら、3年以下の懲役とする。民主、公明、社民、参議院の会で共同提出。
出資法等改正案

6/9衆院提出

超低金利情勢にもかかわらず、貸金業の貸出金利が高止まりしていることから、出資法等に定める上限金利を現行の40%から15〜20%に引き下げる。
政治資金規正法改正案

7月上旬提出予定

資金管理団体に対する企業・団体献金の禁止、収支報告書等の保存期間の延長及びコピー解禁。
公職選挙法改正案

(未提出)

衆院小選挙区で法定得票数に達しなかった者の比例名簿削除、補選統一、くら替え立候補禁止、比例名違繰上げ補充規制(3ヵ月以内)等の法案を準備ずみ。
民法改正案

(未提出)

人権尊重の観点から、(1)夫婦に別の姓を称する自由を与える「選択的夫婦別姓制度」の導入(2)相続分に関する非嫡出子差別の是正を内容とする法案を準備中。
ダイオキシン類対策特別措置法

7/12成立

民主、自民、公明の3党による協議の結果、調査の際に住民の申し出を認めるなど、民主党の案を実質的に取り込む形で、全会一致で成立した。
国会法改正
(憲法調査会設置法)

7/26成立

 衆議院議会制度協議会での議論を受けて、自民、民主、公明、自由の賛成で成立。発議権を持たない憲法調査会が両院に設置される。民主党の要求で会議は原則公開に。

■修正を勝ち取った重要法案

法案等名 主な修正点
情報公開法

5/7成立

 使う側の立場から(1)不服申し立てを8地裁で可能とする(那覇等は4年後に検討)(2)手数料は利用しやすい額とする(3)4年後に見直す(4)2年後に特殊法人の情報公開法制を講じる−の4点を修正。
司法制度改革審議会設置法

6/2成立

審議すべき項目として(1)国民により利用しやすい司法制度の充実(2)国民の司法制度への関与(3)法曹のあり方とその機能の充実強化の3点を明確にした。
男女共同参画基本法

6/15成立

男女共同参画社会の実現をめざすため、国等の責務や施策の基本となる事項を明示した法案。実効性ある法制定をめざして対案を提出。共同参画の理念を明確にした「前文」を付す修正を実現した。
労働者派遣法改正

6/30成立

主な修正は、労働者派遣の期間制限に違反した派遣先への雇入れ勧告・公表、派遣労働者の個人情報の保護措置、セクハラ防止や母性保護措置に係る事業主責任の派遣先・元への適用など。
外国人登録法改正案

5/21参院通過

参議院では、(1)特別永住者に対する外国人登録証明書常時携帯義務違反及び旅券等の携帯義務違反の罰則を行政罰に軽滅(2)指紋押なつ拒否者等の救済規定を新設。
食料・農業・農村基本法案

7/12成立

法案の理念として「国内農業生産の増大を基本」とすること、食料自給率の向上を旨とする目標の設定、基本計画の国会への報告の義務化の3点を修正。

 衆議院段階で、(1)国内農業生産の増大(2)食料自給率の向上(3)基本計画の国会への報告義務の3点を追加修正、参議院では本会議で特別決議を採択。

地方分権一括法案

7/8成立

地方分権をいっそう推進する観点から(1)法定受託事務について適宜適切な見直しを行う(2)地方税財源の充実確保につき必要な措置を講ずる――等の附則を追加。

 参院委で(1)自治事務への国の是正要求・直接執行の限定抑制(2)国・地方係争処理機 関の中立性確保(3)国・地方を通じた税体系の抜本的再検討等を附帯決議。

■反対した法案など

法案等名 反対の理由
平成11年度予算 3/17成立 別掲
平成11年度公債発行特例法

3/17成立

政府案は、公債発行残高の膨張に歯止めをかけ、財政赤字のさらなる増加を防ぐという観点が欠けており、将来世代に対して無責任と言わざるをえない。
所得税・法人税負担軽減措置法

3/24成立

所得税最高税率のみの引き下げ、定率減税、扶養控除引き上げなど所得税制を著しく歪める内容。各税率引き下けと子ども手当創設などを含む対案を提出。
地方税法改正案等3法

3/24成立

住民税減税、地方の減収補てんのために地方税法、地方交付税法を改正し、地方特例交付金特別措置法を制定。減税は国税で行い、国から地方へ税財源を移譲すべき。
国民年金法改正

3/31成立

厳しい経済情勢に鑑み、基礎年金の税方式化を展望すれば、政府案(保険料引上げ凍結)では不十分。民主党は基礎年金国庫負担率を1/2に上げその分保険料を下げる対案を提出、政府案に反対した。
主要食糧の需給および
価格の安定に関する法律等改正

3/31成立

米関税化受入れが国民不在・国会不在で決定されたこと、国内対策が不明確なこと、WTO次期農業交渉に臨む戦略が確立されていないことなどを理由に反対。
周辺事態法  5/24成立 別掲
日本政策投資銀行法

6/4成立

行革の一環としての開銀と北東公庫の統合には賛成だが、苫東・むつ小川原に対する不良債権処理が不透明で、国をはじめ関係者の責任追及もうやむや。
森林開発公団法改正

6/4成立

廃止される農用地整備公団業務の多くがそのまま新公団に継承されるなど問題点が多い。農用地総合整備事業等の都道府県への継承を旨とする修正案を提出。
都市基盤整備公団法

6/9成立

住宅・都市整備公団の名称を変更して都市基盤整備の業務強化を図るもので、特殊法人の焼け太りを招く。賃貸住宅の維持・管理に業務を限定する対案を提出。
鳥獣保護法改正

6/10成立

被害を受けた農林業者への補価制度がない他、根本的な問題解決のための生息地の回復措置が講じられていない。国や地方公共団体の責任が不十分。
特定化学物質管理法案

7/7成立

対案を提出。内容は、化学物質排出情報につき国民の知る権利を保障、地方自治体を主体とすることで、デ一タの正確性を担保しリスクコミュニケーションを推進、対象化学物質の範囲を拡大。

 参議院では、衆議院での修正に伴う矛盾点を追及し、営業秘密を除く事項の全面開示 等につき修正を求めたが、否決された。

組織犯罪対策3法案
(通信傍受法案=盗聴法案等)
6/1衆院通過 8/12成立
別掲
中央省庁改革法案

7/8成立

省庁の数を減らすだけで権限を温存したままの改革は理念を伴わず無意味。「官と民」、「中央と地方」の役割を見直すことが先決。民主党は首相府設置法案など内閣機能強化を目的とする対案を提出。

 巨大利権官庁の出現や、財政・金融の分離問題が未決着であるなど、実質的な行政改革からはほど遠い。基本理念が欠如した数合わせの省庁再編案であるといわざるを得ない。

住民基本台帳法改正案
8/12成立
別掲

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