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人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案大綱

第1 総則関係

1 法律の目的
 人権侵害による被害の救済及び予防並びに人権教育・啓発の措置を講ずることにより、人権の擁護に関する施策を総合的に推進し、もって、人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とすること。

2 国の責務
 国は、人権の擁護に関する施策を総合的に推進する責務を有するものとすること。

3 地方公共団体の責務
 地方公共団体は、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権の擁護に関する施策を推進する責務を有するものとすること。

4 国民の責務
 国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならないものとすること。

5 人権侵害行為等の禁止
(1) 何人も、他人に対し、公務、商品・サービスの提供、雇用等の社会領域において、人種、信条、性別、社会的身分、門地等を理由として不当な差別的取扱いをしてはならないものとすること。
※ 政府案大綱の「民族、障害、疾病、性的指向」による不当な差別的取扱いも当然含まれる。

(2) (1)のほか、何人も、特定の者に対し、不当な差別的言動、優越的立場においてする虐待等をしてはならないものとすること。

(3) 何人も、差別的取扱いを助長する目的で人種等に関する情報を公然と摘示し、又は差別的取扱いをする意思を公然と表示する行為をしてはならないこと。
 

第2 組織関係

1 中央人権委員会

(1) 設置
 内閣府設置法第49条第3項の規定に基づいて、内閣府の外局として中央人権委員会を設置するものとすること。

(2) 所掌
  1. 中央人権委員会は、2以上の都道府県にわたる人権侵害又は全国的に重要な問題に係る人権侵害について人権救済を行うほか、人権啓発を行うものとすること。

  2. 中央人権委員会は、内閣総理大臣若しくは関係行政機関の長に対し、又は内閣総理大臣を経由して国会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができるものとすること。

  3. 内閣総理大臣又は関係行政機関の長は、2.により中央人権委員会から意見を提出されたときは、その意見を十分に尊重するものとすること。

(3) 構成
 中央人権委員会は、委員長及び委員6人(うち非常勤3)をもって組織し、委員長及び委員の任期は、3年とすること。

(4) 任命
  1. 委員長及び委員は、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て、任命するものとすること。
  2. 委員長及び委員の任命に当たっては、男女いずれか一方の数が3名未満とならないように努めるとともに、NGOの関係者、人権侵害を受けた経験のある者等を入れるように努めるものとすること。

(5) 独立性・身分保障
 委員長及び委員は、独立して職権を行使し、法定の事由がなければ罷免されないものとすること。

(6) 国会報告
 中央人権委員会は、毎年、国会に対し、所掌事務に関する報告を行わなければならないものとすること。

2 地方人権委員会

(1) 設置
 地方人権委員会は、都道府県知事の所轄の下に置くものとすること。

(2) 所掌
 地方人権委員会は、管轄する都道府県における人権侵害について人権救済を行うほか、人権啓発を行うものとすること。

(3) 構成
 地方人権委員会は、委員長及び委員4人(うち非常勤2)をもって組織し、委員長及び委員の任期は、3年とすること。

(4) 任命
  1. 地方人権委員会の委員長及び委員は、都道府県知事が、都道府県議会の同意を得た上で任命するものとすること。

  2. 委員長及び委員の任命に当たっては、男女いずれか一方の数が2名未満とならないように努めるとともに、NGOの関係者、人権侵害を受けた経験のある者等を入れるように努めるものとすること。

(5) 独立性・身分保障
 委員長及び委員は、独立して職権を行使し、法定の事由がなければ罷免されないものとすること。

3 人権擁護委員

(1) 設置
 地域社会における人権擁護の推進を図るため、地方人権委員会に人権擁護委員を置き、人権擁護委員はその居住する市町村等において職務を行うものとすること。

(2) 委嘱
 人権擁護委員は、市町村長が推薦したその住民のうちから地方人権委員会が委嘱するものとすること。
 地方人権委員会は、他に特に適任と認める者があるときは、市町村長の意見を聴いて、その者にも人権擁護委員を委嘱できるものとすること。

(3) 報酬
 人権擁護委員に対しては、都道府県の条例で定めるところにより、報酬を支払うことができるものとすること。

(4) 定数
 人権擁護委員の定数は、全国を通じて1万人を超えないものとすること。
 各市町村ごとの人権擁護委員の定数は、その地域の人口、経済、文化その他の事情を考慮して、中央人権委員会が定めるものとすること。

(5) 人権擁護委員に対する研修の実施
 地方人権委員会は、人権擁護委員に対する研修を実施するものとすること。

第3 救済手続関係

1 一般救済手続

(1) 相談
 中央人権委員会及び地方人権委員会(以下「人権委員会」という。)は、広く人権相談に応ずるものとすること。

(2) 一般調査
 人権委員会は、人権救済を図るため、任意の調査を行うことができるものとすること。

(3) 一般救済
 人権委員会は、人権侵害の被害者から申出があったときは、助言、指導、被害者と加害者との調整等の措置を講ずるものとすること。

2 特別救済手続

(1) 特別な人権侵害行為
 人権委員会は、次に掲げる人権侵害について、(2)の措置を講ずることができるものとすること。
ア 第1の5(1)の差別的取扱い
イ 人種等を理由とする不当な差別的言動、地位利用を伴うセクシュアルハラスメント
ウ 次の虐待
(ア) 公権力の行使に当たる公務員による虐待
(イ) 社会福祉施設、医療施設、学校等における虐待
(ウ) 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待
(エ) 配偶者、同居の高齢者・障害者等に対する虐待
エ ア〜ウに準ずる人権侵害で、被害者の置かれている状況等から、被害者が自らその排除・被害回復を図ることが困難であると認められる人権侵害
オ 第1の5(3)の差別助長行為等

(2) 特別救済
  1. 過料の制裁を伴う調査
  2. 調停(職権で付する場合も含む。)及び仲裁
  3. (1)の行為者に対する人権侵害行為の停止等の勧告
    勧告に従わない場合には、その旨及び勧告の内容を公表
  4. 訴訟援助((1)ア〜エの人権侵害で3の勧告をしたものの被害者に対する資料の提供、訴訟への参加等)
  5. 差別助長行為の差止め等(勧告に従わない(1)オの行為者に対する人権侵害の差止請求訴訟の提起)

(3) 報道機関等による自主的な解決に向けた取組
 報道機関等による次の人権侵害について、自主的な解決に向けた取組を行うよう努めなければならないものとすること。
  1. 犯罪被害者等に対する報道によるプライバシー侵害
  2. 取材を拒否している犯罪被害者等に対して反復・継続して行われるつきまとい、待ち伏せその他の過剰な取材
※ 報道機関等による1及び2については、特別救済手続の対象としないこと。
※ 雇用における人種等を理由とする差別的取扱い及び労働者に対して職場においてなされる人種等を理由とする不当な差別的言動等について、厚生労働大臣及び国土交通大臣に係る特例は設けないこと。

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