2002/09/06 |
この文書は、9月6日の菅直人の記者会見で、結党以来の党運営の問題点を踏まえながら、政権交代をめざす党の課題と党改革の方向について、発表したものです。
1 政党は公共財
政党とは何か。従来政治的考え方を共通する人たちの集団という側面が強く意識されていた。しかし選挙で政権が交代する議会制民主主義が定着してきた今日、政党は政策上の意見集約や候補者選定など国民の政治参加の媒介を果たす社会的公共財だと私は考えている。民主党をこうした国民の政治参加のための国民に開かれた政党としていくため不断の改革が必要だ。
2 民主党結成から4年間の党改革
(1) スタート
民主党は1998年4月、複数の政党の合併により衆院議員93名、参院議員38名の合計131名の国会議員を擁する野党第一党としてスタートした。「民主党」という党名、代表に菅、代表代行に中野、幹事長に羽田、幹事長代理に鳩山、総務会長に横路という人事、「民主中道」という基本理念と政策など全て話し合いでまとめ結成大会で確認した。そして結党直後の7月の参院選で大勝して参院での与野党逆転を実現、橋本内閣を退陣に追い込んだ。しかし小渕政権に代わりその後一部野党が与党に鞍替えし自自公政権となった。
(2) 鳩山代表の誕生
1999年9月の代表選で鳩山由紀夫代表が誕生。代表は幹事長に羽田、政調会長に菅を指名。ネクストキャビネットをスタートさせ、後に政務役員会を廃止して政策決定をNCに一本化。党務の決定機関として常任幹事会を設置。国会対策のため国会役員会が設けられた。森内閣下の2000年の衆院選で民主党は大幅に議席を伸ばしたが与党を過半数割れに追い込むには及ばなかった。
(3) 第二期鳩山代表
衆院選挙後2000年9月の代表選で鳩山代表が無投票で再選。代表は特別代表に羽田、幹事長に菅、政調会長に岡田を指名。2001年の小泉政権下での参院選でも惨敗を免れ、民主党の議席をわずかながら伸ばす事ができた。2000年9月から今日までの2年間に次のような改革を行った。常任幹事会に地域別担当常任幹事を置き全体としてスリム化。国会役員会に代わって代表の下に役員会を設置。候補者の公募。衆院比例上位単独候補廃止の方針決定。理論誌の発行など広報の強化。党員・サポーターの本部登録制を導入し、今年5月末で10万人の党員・サポーターを実現。3 組織のあり方
(1) 本部組織
結成当初、民主党は議員政党か組織政党かといった議論もあった。基本的には国民に選挙で選ばれた議員が責任を持つ政党で、どちらかといえば議員政党的性格をもつ。党内の選挙で選ばれた代表に、副代表や幹事長など他の党役員を指名する大幅な人事権が認められている。代表を中心に党の一体性を確保するためこの原則は変える必要はない。候補者の公認などの党務に関する決定機関として「常任幹事会」が、政策決定機関としてネクストキャビネットが設けられており、この基本構造も変える必要はない。ただ、国会への対応を中心としたネクストキャビネットの議論だけでは、めざすべき政権政策の全体像が国民から見えにくいという問題もあった。国会活動と政権獲得にむけた活動をどう位置付けるかについては議論が必要。
私は国会開催中特に多忙な国会運営に対応する機関と、政権獲得のための機関とは別にした方が実効があると考える。政権獲得のために政権準備委員会(仮称)を代表中心に設置するのも一つの考えだ。もっとも政権獲得には国会戦略も重要な位置を占めるので、国会対策も最終的には代表の判断が必要となるのは当然だ。
(2) 全国組織
民主党の全国組織は衆院の小選挙区総支部を基礎単位としている。衆院小選挙区で選挙に勝って政権を担うために、行政区でなく小選挙区を基礎単位としたもの。総支部長は原則としてその選挙区から選出されている衆院議員または候補者。参院議員にも総支部設置が認められている。各県には「総支部連合会」が設置されている。この県連と総支部の関係について多くの議論があったが県連は県内の総支部の連合体と定義されている。小選挙区総支部と全国本部との関係を基本としたほうが衆院選挙にとって有効と判断したからである。総支部は地方議員を含む党員で構成され、それに加えて代表選の投票権を持つサポーターも総支部及び県連経由で本部に登録される。
(3) 自治体議員の代表選への参加権の拡大
99年の代表選では、地方組織が未整備という理由もあり、国会議員(2票)と衆院候補予定者(1票)、各県連(2票)の3者のみが有権者であった。今回は党員・サポーターと民主党所属自治体議員にも有権者の枠を拡大した。
この中で全国約1500人の自治体議員が全体の5%程度の持点というのは割合が低過ぎるという指摘を各地でいただいている。他方、候補予定者の中には今から多くの関係者に世話になる立場で、各自現職国会議員の半分の持点1点は各陣営の働きかけも強くて負担だという意見も聞かれる。
更に、決選投票になった場合に、党員・サポーターの投票が省略され、持点比率が極端に下がることも問題点として指摘されている。
今回の代表選が終わった後、こうした点を勘案し、よりよいルールを検討したい。特に自治体議員の持点比率は相当引き上げ拡大することが望ましいと考える。
(4) 民主党への国民の参加の推進
今回民主党は党員・サポーターに代表選への投票権を認めることとした。その結果、9月2日の締切りまでに30万人を超える党員・サポーターが実現した。これは広く国民に民主党に参加していただく第一歩と考えている。サポーターについては多くの意見が寄せられており、今後更なる検討が必要。
代表選への参加に加えて、衆・参選挙候補者選びへの参加の道を考えるべきだ。アメリカでは州毎に行われる予備選挙により、民主・共和両党の候補者選びに多くの国民が参加している。英国の保守党、労働党も多くの地域党員を擁し、選挙区毎に候補者決定に参加している。
民主党も、神奈川県連が中心となって10月に行われる神奈川8区の補欠選について候補者を公募し、オーディション方式で決定した。今後、このケースを参考に、党員が候補者決定に参加できるシステムを検討したい。そうなれば地域の人々の多くが党員として参加してくれる可能性が生れるはずだ。4 政権準備委員会
(1) 政権準備委員会の設置
アメリカの大統領選では、大統領候補者を決める予備選を闘う約1年の間に、各候補は大統領に就任したら何をするかを具体的に固めてゆく。我々民主党も政権交代をめざす野党第一党であり、通常の国会中心の政策活動とは別に、代表の直属の機関として「政権準備委員会」を設置し、いくつかの重要政策課題や政治課題について、政権獲得時に具体的にどういう時間的スケジュールで進めるかを検討しシナリオを用意しておく必要がある。
(2) 政策課題別タスクフォース
例えば緊急性を要する「金融」、中長期的展望が必要な「年金」、「外交・安保」など課題別にいくつかのタスクフォースを設置する。各タスクフォースの責任者は国会議員とするがスタッフには大学やシンクタンクなどの専門家に参加を求める。将来の政治任用(ポリティカルアポイント)に対応できる人材バンクとして活用する。
(3) 各界との交流プログラム
政権を獲得し運営するには、経済界、労働界、学者、マスコミ、NPOなど各界の有識者の理解と協力が不可欠。政権獲得を意識して優先度をつけて、国会議員に担当責任者となってもらい、各界との交流プログラムを作成し推進する。
(4) スポークスマンなどの強化
代表の発言は党にとって最大の国民に対するメッセージとなる。代表のもとにスポークスマンと、スピーチライターなどのサポート体制を強化する。5 総選挙準備
(1) 解散の時期
2000年6月の総選挙から2年余が経過し、2年以内に総選挙は必ず行われる。小泉内閣としては、まだ一度も総選挙の洗礼は受けておらず、チャンスをねらっていることは間違いない。早ければ北朝鮮訪問を機に、今年秋にも解散総選挙に打って出る可能性もあり、総選挙準備を急ぐ必要がある。
(2) 候補者擁立
今日まで190名を超える公認予定者が正式に決まり、更に30〜50名の候補者候補の名前が挙がってきている。代表選と併行して候補者擁立を進める。
(3) 新人及び一期生へのテコ入れ
政権交代の実現には各小選挙区における当選がカギとなる。選挙に習熟していない新人とまだ基盤の弱い一期生については特に、ソフト面でのきめ細かい支援が重要。新人には選挙準備の相談に乗れるアドバイス役の議員を決め、加えて選挙の研修、マニュアルの提供などきめ細かいサポートを実施できる体制をつくりたい。私自身3度の落選経験から、浪人中の候補者の財政的苦労はよく知っている。10月解散もあり得るという見通しの中で、新人と一期生を中心にテコ入れを図る必要がある。
2002/09/06 |