2003年9月18日 民主党政策集―私たちのめざす社会 戻る政策集目次

【2】消費者・人権・共同参画

消費者・NPO/男女共同参画暮らしと人権スポーツ政策


【2】消費者・人権・共同参画

<消費者・NPO>

 経済社会が成熟し、個人の価値観が多様化している現在において、官主導の一元的公益判断では社会的ニーズが十分に満たされなくなっています。民主党は、多様な価値観を認めあい、市民が主導で公益を実現する社会へと変革するために、市民活動を社会システムに組み込むとともに、市民活動に対する税制を含む支援策の拡充に積極的に取り組んでいます。安全性に対する信頼が揺らいでいるなか、衣食住に関する安全性を十分に確保することが必要であると考えます。規制の強化や表示の徹底など、国民が安心して暮らすことが出来る社会の確立に向け、提言を行っていきます。

消費者教育等
 「賢く強い消費者」を育成するため、義務教育の段階から消費者契約やカード利用等についての知識も含め、消費者教育充実に向けた政策をすすめます。個人だけでなく、消費者団体などが悪質な約款などの差し止めを求める裁判をおこすことができるように団体訴訟権の確立をめざします。また、民主党提案の「消費生活製品の危険情報公表法案」を成立させ、消費生活用製品の危険情報が公表されるようにし、危害の発生や拡大を防止します。

食品の安全性
 BSE発生・食品表示偽装・残留農薬の検出等を契機に日本の行政が消費者に安全な食品を提供する視点に欠けていることが明らかになりました。これらの問題を受け、2003年の第156国会で食品安全基本法が成立し、食品安全委員会が設置されました。日本における食の安全体制が産声を上げたと言えます。新たな取り組みに着手しましたが、国内消費の60%を輸入に依存する日本の食の安全を確立するためには、日本国内だけではなく海外の生産供給体制にも目を向けなければなりません。民主党は、食品安全基本法案の審議で修正を行ったように、国産・輸入を問わず安全な食品供給がなされる体制整備に努め、また基本法に対応した「輸入食品安全確保法(仮称)」の制定を図ります。

NPO活動の促進・支援税制の拡充
 21世紀を柔軟で自己改革可能な活力溢れる社会にするため、NPOの育成は緊急かつ重要な課題です。2002年第155国会においてNPO法改正案が成立し、従来民主党が主張してきたNPO法人の活動分野拡大や設立認証申請手続簡素化等が図られることとなりました。今後もたえず制度の見直しを図ることで、NPO活動が社会にしっかりと根付くための努力を続けます。また、現行のNPO支援税制については認定要件が厳しいために、これを利用することができる「認定NPO法人」は、NPO法人全体(約12000余り)の中でわずか15法人に過ぎません(2003年8月現在)。民主党は、NPO全体の6割程度が支援税制を利用できるように、認定要件を緩和するなどの改善を図ります。


<男女共同参画>

 人生80年時代、女性が先行したライフスタイルの多様化は、今や男性にも及び、性別・年齢にかかわらず多様なライフスタイルを生きる時代になりました。しかし、私たちの社会システムは、旧態依然としたままで、社会の活力を失わせています。時代と社会の変化に適合した新しい女性政策が必要とされています。多様なライフスタイルを前提に、性別や年齢を問わず、自立した男女が共に参画できる社会システムづくり、そんな新しい女性政策(男女共同参画)が日本に活力を蘇らせます。老若男女が、それぞれ生きがいを感じる社会システムづくりが社会全体を豊かにするのです。性別役割分業を固定化しない(ジェンダーフリー)社会こそ、日本を再創造するカギとなります。

年金制度
 多様化した女性のライフスタイルに適合していない年金制度を改革します。世帯単位から個人単位の年金へ切り換え、被扶養配偶者の拠出は二分二乗方式(夫婦の所得を合算し各2分の1の所得で保険料を負担)を採ることとします。これにより、誰もが自分の厚生年金等をもつことができます。年金分割を実現し、離婚が性によって不利にならないように安心して女性が暮らせる環境をつくります。

税制
 働く女性に不利な税制を改め、個人所得税を性的役割分業に固定しないジェンダーフリーの税制に変えます。配偶者控除・配偶者特別控除を廃止して、税の増収分で子ども手当(児童手当)を充実します。手当は義務教育終了年齢までの支給とし、食費、被服費をまかなえる水準とします。特定扶養控除(16歳以上23歳未満)は廃止し、学びたい子が学べるように奨学金制度を充実します。激変緩和のために、基礎控除の引き上げを検討します。

雇用・労働
 時間外勤務手当ての割増率を国際水準に引き上げます。サービス残業の法的規制を検討するとともに、育児休業・介護休業法を改正して両立支援法を制定し、男女とも仕事と家庭を両立できる環境を整備します。パートに対する均等待遇の実現は喫緊の課題であり、また、ワークシェアリングの前提ともなるため、均等待遇に向けての法整備をすすめます。人員削減による長時間労働化を抑制し、時間外や休日労働分を新規の雇用へ振り向けます。政府調達事業の女性起業家への一定比率の発注枠確保、NPO等による起業を推奨し、女性起業家を増やします。

次世代育成
 低年齢児保育、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育など「多様な」保育体制を整備します。NPOなどによる保育の質チェックの仕組みをつくります。保育所と幼稚園の連携強化、一元化を図ります。民主党提出の民法改正案を成立させ、協議離婚に際する養育費の取り決め等を明記します。子ども手当に「ひとり親加算」制を導入します。母子(単身)家庭の自立のため、保育所の優先入所、子育て・生活支援、職業能力開発支援等を推進します。

男女平等の基盤づくり
 生活のさまざまな場面で知らず知らずのうちに刷りこまれていく固定的な性別役割分業意識の克服に向け取り組みます。自律能力の形成を教育目標に据え、職業体験学習、男性の家庭参加促進教育などをすすめます。人権に密接に関わる仕事(例えば教員、医療福祉関係、警察、入管職員等)に従事する人への男女平等教育をすすめるとともに、政策・方針決定過程へ女性の参画を拡大するためクオータ制(割当て制)を含む積極的差別是正(アファーマティブアクション)を講じます。また、女性に対する固定観念に基づく社会制度や慣行を改めます。

介護保障
 2000年4月に介護保険制度がスタートしましたが、現場を支えているのは低賃金で身分保障の不安定な女性が中心です。とくに、訪問介護の「家事援助」は、女性のアンペイドワーク(無償の家事労働)に対する無理解が反映され、低額な報酬にとどまっています。介護する人たちが安心して働けない職場環境では、サービスの向上も期待できず、安心して介護を任せられません。民主党は、ケアマネージャーやホームヘルパーなどの介護職員の専門性を高めるとともに、職員の待遇改善、短時間労働者への社会保険の適用などに取り組みます。また、介護保険制度を改善し、介護基盤の整備に取り組みます。

女性の健康
 それぞれの女性が自分らしい健康を生涯にわたって保障される環境づくりに取り組みます。性と生殖に関する女性の権利と健康を守るための法整備をすすめるとともに、年齢にふさわしい性教育を男女ともに行います。また、新しい医療の領域である「ジェンダー・スペシフィック・メディスン」(性差を考慮した医療)の考え方を、医学教育の段階から徹底します。不妊治療については、治療の効果と安全性を、漢方治療なども含めて適正に検証し、適応症と効果が明らかな治療法については医療保険の適用を検討します。その一方で、「女性は子どもを産んで一人前」というような画一的な価値観に縛られない社会を作っていきます。

男女共同参画型の国際協調
 紛争国や開発途上国において、女性の教育水準向上と仕事の充足を図ることは、貧困を是正し、男女格差、国際間格差の解消のために重要な方策です。更にジェンダー主流化*こそが開発援助において中心的な考え方になっていますが、日本の援助についてはジェンダー政策などを重点にする指導力が欠けています。私たちは、ODA予算配分とODAの実施に際して、調査、計画、立案、推進、評価の全ての段階において男女共同参画の視点からNGOの参加を求めます。また、いまだ国際スタンダードに達していない女性や子どもに関わる条約と関連法案を精査し締結の促進と法制化を図ります。
*ジェンダー主流化=経済開発、人間開発のすべての過程に女性が主体的にかかわる援助のあり方。


<暮らしと人権>

 日々の暮らしを人間らしく安心・安全に送ることはすべての人々の願いです。しかし現在でも人権侵害や不当な差別は根絶されておらず、また、地震や台風などの自然災害のみならず、最近ではテロ行為までもが市民生活を脅かしています。民主党は、人権保障のための法整備や施策の充実、女性・子ども政策の具体化により、差別のない人間尊重の社会を築くとともに、市民の権利保護と公平・公正な社会のための制度改革を進めます。更に災害対策やテロ対策など、市民生活に関わる諸施策を具体化し、安心・安全の社会づくりをめざします。

司法制度改革の推進
 現在、司法は本来期待されている機能のごく一部しかその役割を果たしていません。民主党は、明治以来の行政優位の国の構造を見直し、国民に基盤を有する身近で充実した司法を創出し、その司法制度のもと、公平で公正なルールが行き渡り、人権が保障され、安心して暮らせる社会をつくります。そのため、ロースクールの充実、隣接専門職種の参画等による法曹人口の拡大、弁護士など実社会の経験を踏まえた裁判官の拡大(法曹一元制度)、国民が裁判に参加することによって国民の良識を裁判に反映させる裁判員制度の導入、裁判を受ける権利を実効あらしめ、経済的理由等により裁判を断念したり、弁護士を依頼できない事態が生じないための、被疑者国選弁護制度や法律扶助の拡充、ビデオ録画等による取り調べ過程の可視化、証拠開示の徹底等を前提に集中審理方式を導入した裁判の迅速化等に取り組みます。

参考:裁判員制度設計に関する考え方(試案)

刑罰の見直し
 現行の無期刑は最短10年で仮出獄できてしまうことから、仮出獄を認めない重無期刑(終身刑)を創設するなど、刑罰を見直すとともに、「死刑制度の存廃」問題については超党派での協議を進めます。

少年犯罪の防止
 2000年11月に大改正された少年法については、「立ち直らせる」という法の理念を堅持する立場にたって、刑事処分にできる範囲を安易に拡大しない、少年が不利にならないよう厳正な事実認定手続きを創設する等の修正案を提出しました。今後も少年犯罪の防止には、少年を取り巻く環境(家庭、学校など)の整備、早期発見のネットワーク、安心して相談できる仕組み、家庭裁判所の充実強化など、総合的な対策の更なる充実を図ります。

犯罪被害者への支援
 犯罪被害者に対し、国が給付金を支給する制度をさらに拡充します。また、民主党は、犯罪被害者の権利を保障し、国や自治体に生活支援や精神的ケア等の総合的施策を義務づける「犯罪被害者基本法案」を提出していますが、その早期成立を求めています。

人権擁護機関の創設
 政府から独立した人権擁護機関の設置は、国連からも勧告されている緊急の課題です。しかし政府の案(人権擁護法案)では、同機関を刑務所や入管施設を管理する法務省に設置するとしており、刑務官らによる虐待・人権侵害が握りつぶされるおそれがあります。また、報道による人権侵害についても介入できることから、「表現の自由」への悪影響が懸念されます。民主党は、政府からの独立性を確保し、報道機関による自主的な人権救済を尊重する人権擁護法の制定をめざします。

難民認定委員会の創設・難民の生活支援
 1981年に我が国は国連の難民条約を批准しましたが、日本の入管・難民認定行政および難民への生活支援はあまりにも難民に対して冷たく厳しいのが実態です。難民条約の趣旨にのっとり適正かつ迅速な難民認定を行うために、内閣府外局に難民認定委員会を設置します。また、難民認定申請者の特別在留許可制度を設けることによりその法的地位を保護し、在留難民等の生活を支援する制度を構築します。そのために民主党は「難民等の保護に関する法律案」を提出し、成立を求めています。

行政訴訟の大幅充実
 
国民による行政に対するチェックが実効的に行えるよう、第一段階として、現行の「行政事件訴訟法」を大幅に改正し、原告適格の拡大、団体訴訟の導入、審査対象の大幅拡充を図ります。第二段階として、新たに行政訴訟法を新設し、納税者訴訟の創設や会計検査院・日本版GAO(行政監視院)に対する提訴権付与によって、司法を通して広く行政をチェックする仕組みを実現します。

青少年対策
 残虐な暴力や性暴力などの有害情報から子どもを守るため、書物の区分陳列や放送時間帯の配慮などによって、普通に暮らす子ども達が有害情報に触れないですむ環境をつくります。また子どもの有害情報について第三者機関(中央子ども有害情報対策委員会)を置き、事業者が自主的に取り組むこととします。大人社会のモラルと保護者の責任感を高め、子どもの権利を擁護します。今後、情報との付き合い方についても単に情報を与えないのではなく、与えつつ、情報化社会に生きる子どもが、情報のもつ意味を正しく理解し活用できる能力(メディアリテラシー)を持てるような教育をすすめます。

子ども政策の推進と「家庭・子ども担当大臣」の任命
 大人社会の権利や利益に対して、子どもの権利利益に関する取り組みは後まわしにされています。現在頻発している両親、祖父母、義理の親、きょうだい(姉妹)、保育所などによる子どもの虐待は計り知れないショックを子どもに与えています。民主党は、子どもの持つ「生命・生存・発達の権利」を明確にし、学校でも家庭でもどこにいても、子どもが伸び伸びと育つことができる環境づくりをめざして、「子ども政策」をまとめていきます。こうした政策を実現するために、家庭・子ども担当大臣の任命を検討します。

ドメスティック・バイオレンス対策
 従来、夫婦間の暴力事件は民事不介入として扱われていましたが、頻発するドメスティック・バイオレンス(DV)事件は現在では社会問題にまで発展し、「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)の被害者を多く生みだすなど、無視できない状況に至っています。2001年の通常国会で、民主党主導により、配偶者からの暴力は犯罪であることの明記や被害者保護に関する国、地方公共団体の責務、配偶者暴力支援センターの機能充実などを内容とする「DV防止法」が成立しました。今後、さらに同法に加害者更生プログラム、保護命令の対象者の拡大、暴力の定義規定の変更等を盛りこむなどの見直しを行い、充実を図ります。

選択的夫婦別姓
 夫婦同姓にすることも貴重な選択ですが、別姓を選べない法律下では、女性が「改姓したくない」と思っても、「女は結婚したら夫の姓を名乗るのが当たり前」という価値観を押しつけられるのが現状です。民主党提出の民法改正法案を成立させ、希望すれば夫婦が別の姓を選択することができる制度と、自らが何ら責任を有さない出生の事情によって子どもが不利益を被らないよう、婚外子(非嫡出子)の相続差別をなくすことを実現します。

個人情報の保護
 個人情報を適正に取り扱うため法律による規制は必要です。しかし、第156回国会で成立した個人情報保護法案には、(1)自分に関する情報の閲覧、訂正等を請求する権利である「自己情報コントロール権」が明記されていないこと、(2)主務大臣が民間の個人情報取扱事業者を監督する仕組みとなっており、公権力の恣意的介入や業界との癒着が懸念されること、などの看過できない問題点があります。民主党は、(1)「自己情報コントロール権」を明確にする、(2)第三者機関が事業者を監督する仕組みを導入する、(3)行政機関に対する罰則を強化する、等を内容とする対案を提出しました。今後も法制度の改善に取り組みます。

住民基本台帳ネットワークシステム施行問題
 行政が個人情報を勝手に収集・蓄積して活用していたという事件や、企業による個人データ漏洩事件が多発しており、国民の多くは、行政や企業の個人情報取扱いについて、不安と不信をいだいています。政府提案の個人情報保護法は成立しましたが、不備な点が多く、国民の不安や不信に応えるものではありません。しかも、現行の住民基本台帳ネットワークはシステムに欠陥が多く、重大なプライバシー侵害が起きる危険性があるとの指摘もあり、実施主体である自治体からも凍結を求める声が多くあります。よって、住民基本台帳ネットワークについては、凍結も含め、慎重に検討するべきと考えます。

障害者の人権
 日本では障害者差別に対する法的規制が世界的にみても遅れており、何が「差別的取扱い」か、何が「虐待か」を定める実体性を証明できない現状を変えるため、実効性のある法整備(「差別禁止法」の制定など)を行います。2002年度が最終年の政府の「障害者対策に関する新長期計画」に対応し、民主党は、2002年12月、自立と参加の共生社会づくりをめざす「新たな障害者基本計画と障害者プランの提言」を発表しました。2003年7月、与党から「障害者基本法改正案」が提出されましたが、民主党はこの改正案に更に障害を理由に差別されないこと、3年以内に法の実施状況及び差別実態を検討して所要の措置を講じること等の内容を追加し、障害者の人権確立を実現していきます。

人権教育・啓発促進法
 様々な文化、宗教、価値観を認め、憲法で定める人権の尊重、世界人権宣言、人権関係国際条約などの趣旨にもとづいてあらゆる不当な差別をなくすことは国民の等しい願いです。このような視点から、民主党は現行の「人権教育・啓発推進法」を見直し、国や地方自治体、国民の責務を明確にし、さらに充実した教育・啓発を実施します。

性同一性障害者の人権
 性同一性障害者とは「心の性」と「体の性」が不一致の状態であるために、他者による本人確定や自己の証明が困難で、職場や学校で偏見と差別的な取扱いを受けるなどの問題をかかえている方々です。2003年7月、このような性同一性障害者について戸籍法の「性別記載」の訂正を認める「性同一性障害者の性別取扱い特例法」が全会一致で成立しています。今後、民主党は、子どもの有無は問わないことを要件に加えるなど、更なる当事者の人権を確立します。

テレビ字幕普及法案
 
インターネットでの市民からの政策提案を受けて、民主党は、2001年10月に「テレビ字幕普及法案」を国会に提出しました。この法案は、聴覚障害者の利便を増進させるため、(1)放送事業者に対して字幕番組の提供計画を義務化する、(2)総務大臣への同計画達成状況の報告を義務化する、(3)総務大臣の勧告を可能とすること等を内容としています。更に、事業者等に対しては財政上及び税制上の支援措置を講じるものとし、2007年までに字幕付与可能番組については100%の字幕付与を達成するものとしています。

国内テロ対策
 わが国においてもテロ対策は焦眉の課題です。民主党は、情報収集・分析体制を内閣官房に一元化するとともに、危機管理に関する権限を持つ「危機管理庁」(日本版FEMA)を創設します。原子力施設へのテロ対策、ハイジャック対策、核・生物・化学兵器テロ対策、在外邦人や在日外国人の安全対策、テロ資金対策など、広範囲にわたるテロ対策の整備を行います。

大規模災害対策 
 災害発生後の救急活動や情報伝達、交通規制や応急復旧などを円滑にすすめるため、国・地方公共団体・警察・消防・自衛隊・民間企業・ボランティア・NPO等の役割分担、協力体制の整備をすすめ、情報伝達システムを確立するなど、民間の諸活動を強力に支援します。併せて大規模災害時の首都機能のバックアップ体制も検討します。また大規模かつ激甚な災害に迅速に対応するため、内閣総理大臣の権限を強化するとともに、米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)を参考にした「危機管理庁」(日本版FEMA)を設置します。

災害復興体制の整備
 災害による心身的ダメージを被災者が一刻も早く克服するには生活基盤の回復が必要であるため、「住宅再建支援法」の早期制定をめざします。生活再建支援金の支給額の引き上げ、支給要件の緩和、財源の全額国庫負担等と内容とした「被災者生活再建支援法」及び「災害弔慰金法」の改正に取り組みます。とりわけ、三宅島雄山噴火の被災者は避難生活が長期化していることから、支援措置の拡充と早期実施を強くすすめます。

化学物質過敏症・シックハウス対策
 快適さや便利さを求めるあまり、私たちの住環境は人工の化学物質で取り囲まれることとなり、それによる健康被害が生じています。建築物由来の化学物質被害を防止するために、民主党は、建物完成時の化学物質濃度測定義務づけと、大規模建築物における化学物質の定期的測定を義務づけたシックハウス対策2法案を提案しました。また、化学物質過敏症対策として、メカニズムの解明や治療体制の確立、療養所の建設、学校(シックスクール)対策の徹底などについても対策の確立をめざします。

たばこ・飲酒対策
 未成年者に対するたばこ、アルコール飲料の販売、提供の禁止を徹底するとともに、健康、公衆道徳、教育、国民の安全等の観点から、行き過ぎた喫煙、飲酒が行われないような環境を整備します。民主党提案の「軽犯罪法の一部を改正する法律案」を成立させ、公共の場における喫煙を禁止し、危険で迷惑な歩きたばこをやめさせます。

戦後処理問題
 
わが国と近隣諸国の建設的関係の土台を構築するためにも、歴史的事実の真相究明は必要です。その観点から、国会図書館に恒久平和調査局を設置する「国立国会図書館法改正案」の成立を目指します。また、当事者の方々が高齢化していることに鑑み、アジア等の女性に対する旧日本軍による「慰安婦」問題の解決を図るために「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の成立を急ぎます。また、在日の旧植民地出身軍人軍属の救済を図るため「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案」は民主党の提案を契機として成立しました。戦後処理問題は幅広く存在しており、今後も民主党として積極的な取組みを進めます。

新しい国立追悼施設の設立 
 
国民が自由意思により靖国神社を参拝することは何ら問題ありませんが、国家の機関である首相や閣僚が公式参拝することは、憲法で保障している「信教の自由」や「政教分離」に抵触する可能性があります。民主党は、何人もがわだかまりなく戦没者を追悼し、非戦・平和を誓うことができるよう、特定の宗教性をもたない新たな国立追悼施設の設置に向けて取り組みを進めます。


<スポーツ政策>

 これまでのわが国のスポーツ政策は、企業や学校が中心の、ともすればスポーツエリート育成型のものになりがちでした。しかし、スポーツがもつ本来の役割には、地域住民の世代を超えた交流促進や住民の健康増進、地域間交流や国際交流、さらには地域産業振興など多岐に及んでいます。民主党は、「企業・学校・競争型」から「地域・クラブ・共生型」スポーツ政策への転換をコンセプトに、従来のスポーツ行政を抜本的に見なおし、地域の自主的・主体的取組みを基本としたスポーツ政策を確立します。

地域密着型クラブスポーツの振興
 豊かなスポーツ文化の振興には、欧米諸国に見るような、地域に根ざしたクラブスポーツの確立が不可欠です。住民による自主的・自発的な運営、企業との連携、行政の支援を一体化し、生活に身近な地域におけるスポーツ活動の“核”を育てることが必要です。どこでも誰でも参加できる身近なスポーツ拠点として、またスポーツを通じた地域コミュニティ活性化の拠点として、地域密着型クラブスポーツを振興します。子供から高齢者まで、様々な種目に、各々のレベルに応じて参加できる機会を確保するため、指導者の育成や活動基盤となる施設の整備、自治体や各団体による情報発信の充実を図ります。

高齢者スポーツの振興
 
高齢者の生きがいや健康づくりにスポーツは大きく貢献します。スポーツの苦手な方や初めての方でも気軽に取り組める機会を一層拡大するため、スポーツ団体による講習会への助成拡大や地域リーダーの育成、青少年スポーツ活動との連携など一層推進するとともに、公共スポーツ施設のバリアフリー化を図ります。

障害者スポーツの振興
 スポーツの有効性は、障害のある人にとっても何ら変わることはありません。むしろ社会参加の促進に関する効果や、社会における障害の理解の促進等といった効果を積極的に捉え、ノーマライゼーションの推進の観点からも障害者全体のスポーツ振興を図ることが必要です。施設の利便性確保はもとより、指導員の養成・資質向上のための取り組み、自治体や関係スポーツ団体等とのネットワークの構築など、スポーツ振興施策と障害者施策の効果的な連携を推進します。

スポーツ医学振興政策
 
スポーツ医学は一部のアスリートのためだけの学問ではありません。競技力向上や障害予防の観点からスポーツの現場に医学知識を必要とすることは当然ですが、生活習慣病が年々増加傾向にある現代においては、運動に関する研究成果を人々の健康増進に活かしていくことも極めて重要です。年齢や障害の程度を超えていかなる人でもスポーツの恩恵にあずかり、健康で文化的な生活を営むことができるよう、スポーツ医学の振興を強く後押しします。

学校施設の開放と複合利用の推進
 住民に身近なスポーツ活動の場として、また地域コミュニティの拠点としての学校施設は今後も役割を増していくものと思われます。また前述の地域密着型クラブスポーツ振興の観点からも、徒歩圏内に安全な運動施設が存在することは欠かせない要素となります。子供たちの安全確保を絶対条件とした上で、学校施設利用の利便性向上やスポーツ施設との複合利用を更に推進します。

校庭の芝生化
 安心して思いきり走り回ることのできる運動場が子供たちには必要です。運動場の芝生化は身体への衝撃を緩和し、スポーツ技術向上と体力作りに貢献するばかりでなく、子供たちのストレス軽減、CO2削減効果やヒートアイランド現象の抑制効果も期待されています。小学校校庭や公共スポーツ施設の芝生化事業を強く推進するための予算を確保します。また芝生の効率的な保全管理や雇用創出の観点から、事業においてはNPO等との連携を重視します。

国際交流の推進
 
スポーツは、言語の壁を越えて同じルールの下で行われる全世界共通の文化です。文化・風習などが異なる外国との間でスポーツに関する技術や情報・知識の交流を図ることは、世界中の人々が平和で協力し会える社会の実現に大きく寄与するものと考えます。日本古来の武道を含め、スポーツを通じた国際社会の相互理解と交流のための施策をさらに推進します。


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