2003年9月18日 民主党政策集―私たちのめざす社会 | 戻る/政策集目次 |
【3】経済・財政・金融
財政:財政構造改革/金融:不良債権処理など
税制改革/産業・通商/中小・ベンチャー支援/IT政策
【3】経済・財政・金融
<財政:財政構造改革>
民主党は、必要な人に必要なサービスを安定的に提供していく「安心の社会」と政府の適切な経済政策による「活力ある経済」を構築するために、積極的に財政再建を進め、「強い財政」をつくります。そのためにまず現在の予算構造を根本から見直すことによって、経済再生を実現します。具体的には旧来型公共事業の削減、入札制度の抜本改革、特殊法人の原則全廃、公務員の縮減等によって生み出した財源を、職業訓練などを含む雇用対策、子育てや年金などの社会保障や中小企業支援策に重点的に配分し、「仕事」と「安心」を生み出すことによって経済再生を実現し、もって税収増を図ります。同時に国有財産の売却や公営企業収入の配分の再検討及び現行税制における脱税防止策の強化などを通じて、収入を確保します。 さらに経済の活性化とスリムな政府の実現に向けた規制改革や、税源と権限を思い切って地方に移譲する分権改革など本来の構造改革を通じた財政再建も進め、結果として政権獲得後10年程度をメドに「プライマリーバランス(予算における国債収入額を、利払いを含めた国債費用額より少なくすること)」を実現することを目標にします。
予算編成のあり方
民主党は予算のあり方を根本から見直し、既得権益から脱却した財政の配分を実現することによって「経済の活性化」「安心の社会」「財政再建」を実現することをめざしています。これを実現するためには、予算を作る過程である「予算編成」も抜本的な見直しが必要です。現在の予算編成は、縦割り構造にある省庁が、凝り固まった既得権益を守るために「対前年度比」という時代に合わない考え方でつくった予算を持ち寄ったものであり、これでは改革は決してできません。しかし、政策を官僚に依存する自民党政権では、これ以外の予算編成はできないのです。自民党は自らの既得権益に予算を付けるために官僚に陳情し、叱咤し、恫喝することはできても、自ら予算を考えることはできないのです。民主党政権では、国民を代表する政治家が自ら予算を編成します。官邸に各省の大臣など政府の関係者を集め、ここで予算編成の基本方針(総額、重点事項、各省庁別の配分額など)を決定します。そして、この基本方針を受けて、省庁ごとに政治家(大臣、副大臣等)がグループをつくってその省庁の予算を編成します。霞が関に閉じこもる官僚が机上の空論で予算を編成するのではなく、常に国民と接する政治家が予算を編成するのです。このようなシステムに転換してこそ無駄な公共事業の削減や省庁の縦割をなくし、民意を反映し、かつ未来を見据えた予算が実現できると考えます。
公会計制度の見直しと政策評価・行政監視の強化
予算・財政改革を進めるためには、会計制度の見直しが不可欠です。 現在の公会計制度はお金の出入りのみを追った会計に過ぎません。しかも一般会計に加え、32もの特別会計と財政投融資制度が複雑に絡んでいるので、財政の実態は十分に情報公開されていません。隠れ借金という存在が公然と使われているのがその証拠です。民主党は発生主義会計の導入や厳格な公会計基準の設定と情報公開に努めます。 同時に、すでに経済的社会的意義の薄らいだ政策を見直し、国民経済的により重要な政策に財源を重点的に投入するためには、現在極めて形式的にしか運用されていない政策評価制度を予算編成との連繋の緊密化などによって抜本的に強化しなければなりません。更に、国会と国民の霞が関への監視・評価機能を高めるために「行政監視院(日本版GAO)」を設置します。
<金融:不良債権処理など>
「失われた10年」と言われるように、バブル崩壊後のわが国経済は長らく低迷を続けています。とりわけ、1997〜98年にかけては、大手金融機関が次々と経営破綻するなど、まさに金融危機と言える状況を迎えました。民主党は、破綻した銀行を一時国有化する金融再生法を成立させ、金融パニックを防ぎました。しかし、これまでに総額36兆円を超える公的資金が投入されたにもかかわらず、政府・与党の問題先送り政策により、金融システムはいまだ不安定な状態が続いています。2度にわたって総額1兆1,000億円の公的資金が投入された、りそな銀行グループが経営危機に陥ったのは、まさに先送り政策が限界に来たからです。金融システムの健全化なくして経済の再生はあり得ません。民主党は、金融再生ファイナルプランをはじめとする以下の施策を実行し、金融システムの早期健全化と経済の再生に取り組みます。
金融再生ファイナルプランの実行
政府も銀行も、不良債権処理は着実にすすんでいる、金融システムの健全性には問題はないと言い続けていますが、今なお不良債権は増え続け、貸し渋り・貸しはがしも解消されません。「金融再生ファイナルプラン」の柱は、金融再生法を復活させ、経営責任を明確にしたうえで存続可能な金融機関に公的資金を投入する民主党版早期健全化法を制定するものです。民主党は、この金融再生ファイナルプランを実行して金融システムを健全化し、貸し渋り・貸しはがしを解消します。
地域金融円滑化法(金融アセスメント法)の制定
中小企業に対する貸し渋り・貸しはがしは一向に解消されていません。根本的な原因は金融機関の経営の健全性に問題があり、積極的な融資ができないことですが、担保や保証に頼った金融機関の融資態度にも問題があります。民主党は、地域への寄与度や中小企業に対する融資条件などの情報公開を通じて金融機関同士の競争を促し、中小企業に対する金融を円滑化するため、地域金融円滑化法(金融アセスメント法)を制定します。
金融サービス法の制定
金融ビッグバンの進展に伴い、様々な金融商品が開発・販売されるようになりました。一方で、金融商品に関するトラブルはあとを絶ちません。例えば、国民生活センターには、事実と異なる説明を受けた、リスクの説明がなかった、必ずもうかるといった断定的な情報を提供されたなど、商品説明に関する苦情が数多く寄せられています。民主党は、こうしたトラブルを防ぎ顧客の保護を図るため、金融サービス法を制定します。
証券取引委員会(日本版SEC)の設置
バブル期に発生した大手顧客に対する損失補填や相場操縦、インサイダー取引などの不公正取引は、証券市場に対する個人投資家の信頼を失わせる大きな原因となりました。民主党は、こうした不公正取引をなくすとともに、間接金融(銀行貸出)に偏重したわが国金融市場の構造を、直接金融(証券)をより重視した構造に変えていくため、米国の証券取引委員会(SEC)にならった強力な権限を持つ証券取引委員会を設置します。
ヤミ金融対策
1000%以上という超高金利や過酷な取り立てによるヤミ金融の被害が急増し、自殺者も発生していることから、ヤミ金融対策は焦眉の急となっております。民主党は、ヤミ金融業者に対する届出要件の厳格化や罰則強化を柱とするヤミ金融対策法案をとりまとめ、与野党共同で成立させましたが、引き続き取り締まり体制の強化や金銭管理カウンセラー制度の創設など予防策・被害対策にも取り組みます。
<税制改革>
税制にとって最も重要なのは、国民の信用です。そのためには税制を簡素化し、透明性を高めるとともに、不公平感を持たれない制度へ常に改善を続ける必要があります。また現在の税制には時代遅れの面があり、新しい社会の構築や経済の活性化に向けて大胆な見直しが求められています。このような課題に対応するために、民主党は以下のような改革をすすめます。また極めて厳しい経済状況に対応するため、税制においても迅速な対応を進めます。
経済再生に向けた税制改革
負債デフレ解消、個人消費活性化の観点から、住宅・耐久消費財、教育費等を中心にキャッシュローン以外の全てのローンに係わる利子を所得控除する制度を創設します。また、住宅売却損失を繰越控除できる要件を緩和し、賃貸住宅住み替え時にも適用できるようにします。不動産取引等に係わる登録免許税の定額手数料化を進めます。さらに証券市場の活性化、直接金融の拡大を図るため、時限的に株式譲渡益課税のゼロ税率適用、損益通算範囲の拡大、繰越控除期間の延長を行います。
所得税改革
高所得者に有利な「控除主義」を改め、必要な人に対し確実な支援が可能となる「給付主義」へと転換します。このため、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除等の人的控除を見直し、これによって生まれる財源を子育て支援策などの社会保障給付の財源とします。但し、「控除から手当へ」の転換は、控除制度の廃止と社会保障給付の見直しを併せて制度設計すべきで、税収目的の配偶者特別控除等の廃止を先行させません。また、国民の納税者としての意識を高め、政治及び行政への関心を高めることによって成熟した民主主義を実現するために、確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できるという制度を導入します。
相続税・贈与税
相続税・贈与税の最高税率は50%としますが、富の偏在・固定化を回避するために累進構造を維持します。相続税については、配偶者への相続税率引き下げ、実際に被相続者の介護に携わった者に配慮した制度への改革を検討します。また、市民自らが公益を担う社会の創造に向けたNPO等公益団体への遺贈に対する相続税の軽減措置や地域の良好な生活環境維持に資する里山・雑木林等の緑の相続に対する軽減措置を検討します。
納税者権利憲章及び納税者番号制度
プライバシー保護の観点等から、住民基本コードや基礎年金番号とは独立した形で納税者番号制度を導入し、グローバル化のために捕捉が困難になってきている金融所得の正確な捕捉をすすめます。他方、税務行政の公正の確保と透明性の向上を図るために、納税者権利憲章を定め、納税者の権利を明確にします。
消費税改革
仕入税額控除についてインボイス制度を導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。また、滞納防止のため、一度滞納した事業者については毎月納税とするなどの措置を講じます。商品価格と消費税額を含めた総額表示の義務化は、中小企業等による消費税の価格への適正な転嫁が困難になったり、納税者に消費税額が分かりにくくなったりすることが懸念されるので、従来の表示方式を維持します。将来的には、世帯人員数に応じた基礎的消費支出にかかる消費税額を国民に還付し、消費税の逆進性を是正します。消費税の安易な引き上げは経済や国民生活への打撃が大きく、慎重であるべきだと考えます。
法人税改革
「頭脳立国」を実現するため、いわゆるIT、ナノテクノロジー(超微細技術)等ハイテク分野に限定することなく、全産業を対象として、研究開発及び環境対策に対する減税を拡大するとともに、これを恒久措置とします。また減価償却制度を抜本的に見直し、時代に即した制度へと転換します。なお、その他の企業向け租税特別措置については、原則としていったん廃止します。平成4年より停止されている「欠損金の繰戻し還付」の適用を復活させます。
金融・証券税制
個人資産の「貯蓄から投資へ」の移行を促進する上で、譲渡益を目的とする投資ではなく、長期的保有を前提とした配当目的の投資が望ましいという観点から、配当課税を軽減します。
NPO税制の拡充及び公益法人税制改革
市民の自立的な活動を支え、活力ある社会を形成するために、「NPO支援税制」を一層拡充するとともに、寄付金税制について大幅な拡充を行います。同時に、公益法人課税のあり方や公益寄付金優遇税制全般の見直しをすすめます。市民自体が公益を担う社会の創造に向け、NPOへの遺贈に対する相続税の軽減措置を検討します。
環境税
京都議定書の目標達成に向け、化石燃料の使用抑制・効率化と省エネルギー・新エネルギーの技術開発や環境関連投資促進に資する環境税を創設します。CO2排出量(炭素含有量)に着目し、炭素1トンあたり3000円程度課税します。電力については、現在の電源開発促進税を一部組み替えて課税する炭素・エネルギー税とします。産業界等の温暖化ガス発生の抑止への効果的な取り組みに対しては税の軽減もしくは還付制度を設け、わが国産業競争力の強化を促進します。また輸入石炭についても一定の措置を設けます。税収は、省エネルギー・新エネルギーの技術開発、設備投資、普及等に優先的に配分します。なお石油税制についても、そのあり方を含め今後検討します。
自動車関連諸税の改革
国土の骨幹となる道路の概成及び複雑かつ過重な自動車関連諸税の簡素化・適正化の観点に立ち道路整備を目的としてかさ上げされていた自動車重量税は、その税率を本則に戻し、自動車税との統合を図ります。また消費税との二重課税となっている自動車取得税については、廃止します。
道路特定財源制度の廃止
国が責任を果たすべき、国土の骨幹となる道路については整備が概成していることを踏まえ、道路整備に特定された巨額の財源を国が有する揮発油税、石油ガス税の道路特定財源制度は廃止し、その使途は暫定税率部分を含め一般財源化します。また地方の自主性を尊重する観点から、地方における道路特定財源制度(地方道路税、軽油引取税)も廃止し、一般財源化します。
外形標準課税
地方財政安定化の観点から法人事業税制の改革が必要であり、外形標準化を将来的な課題として、地方消費税との関係を整理しつつ検討します。但し、経済・雇用情勢が回復するまでは導入しません。
酒税・たばこ税
酒税・たばこ税に関しては、税負担とその使途についての理念を確立した上で税率を見直すべきです。その観点から、民間企業の努力に水を差す発泡酒税について平成15年度引き上げ前の税率に戻します。たばこ税についても、国民の健康維持、喫煙者による負担増への手当、たばこ農家への事業転換支援等、明確な理念を確立した上で適正な税率を設定します。
<産業・通商>
企業や人材が新しい時代の要請に応えられず、財政・年金など国民生活を支える制度インフラが破綻するなどわが国の経済・産業基盤が蝕まれる前に、一刻も早く抜本的な産業活性化策を実行に移し、産業再生を実現し、「閉塞NIPPON」からの脱却を図るべきです。これからは、弱い産業は強く、強い産業はさらに強くという生産性向上の両面戦略が必要です。民主党は、規制改革やナノテクノロジー(超微細技術)など最先端産業育成を重視し、競争力ある日本をつくります。国民一人ひとりが意欲と能力に応じて職が得られるような環境をつくり、人々のやる気を高めます。グローバル経済に対応できる、自由で公正な開かれた通商国家を構築します。
規制緩和・公的部門民営化
規制改革を経済構造改革の根本に置きます。自由公正で開かれた、民間の経済活動が確保されるよう、国民の生命等に係るものを除き、事業法は原則撤廃します。そのための基本法を制定し、期限を定めて、具体的に事業法の整理・縮小を進めます。存続するすべての経済的規制に期限を設け、延長する場合は行政からの説明責任を明確にします。また、規制改革推進リストを作成し、実施状況を政治主導で管理します。曖昧で不透明な商慣行や不公正取引を是正し、独禁法の抜本的な改正に取り組み、公正取引委員会の権限強化を通じてすべての人に公正な取引を保障します(2003年の第156国会において、民主党提案「下請代金支払遅延等防止法改正法案」をモデルとした下請法の改正が行われ、下請法のサービス業への適用が実現しました)。
リーディング産業の育成
弱い産業は強く、強い産業はさらに強くします。民主党は、わが国の優位性はモノづくり、とくに加工技術にあると考えます。その優位性をさらに高めていくには、研究開発の水準を高めるとともに、その成果を知的財産権で十分に保護していくことが重要であり、そのために研究開発と知的財産保護強化を推進します。非製造業を中心とする国内需要依存型産業については、規制改革による生産性の向上を図ります。
人的資源の有効活用
人々のやる気を高め、産業の活性化につなげます。(1)働く意欲を高める所得税制、(2)何度でもチャレンジができる仕組みづくり:個人保証を行う企業経営者へのセーフティネット導入、(3)起業家が正当な社会的評価を受けることができる環境づくり、(4)大学研究者の意欲向上:国立大学等の非公務員型独立法人化や大学における内部昇格制限による競争原理の強化、(5)企業におけるインセンティブ(動機づけ)・システムの導入を容易にする、などの政策をすすめます。
人的資源の活性化
女性の能力がフルに発揮されるための環境整備、例えば託児施設の整備、被扶養配偶者の勤労意欲を阻害する税制の是正などを推しすすめます。また、企業の新陳代謝を活発にするために、法人実効税率の引き下げや法人住民税の均等割り分増額などを検討します。また再就職業務の民間委託を促進すると同時に、再就職支援を1つの場所で受けることのできる、官民連携の「ワンストップ・サービス」を実現します。
知的財産権
知的創造力活性化のための包括的・総合的な政策を樹立します。民主党の主張によって成立した「知的財産基本法」の内容をさらに具体化します。知的な創造活動を支援する税制や補助金制度の創設、知的財産権の進展に的確に対応するための特許法改正、違反行為の差し止め請求の権利を認めるなど裁判所の知的財産権紛争処理能力の強化を図ります。海外における日本の知的財産権の保護や、国内における中小企業の知的財産権の保護にも取り組みます。学生の創造性を伸ばし、知の創造センターとして大学のあり方を見直します。
WTO
民主党は、自由で多角的な貿易体制を強化し、WTO(世界貿易機関)の機能をさらに充実させる立場に立ちます。2001年11月のドーハ閣僚会議で開始が決定されたWTO新ラウンドについては、2005年1月までのとりまとめに、日本がリーダーシップを果たすよう努めます。新加盟の中国に対しては、経済改革を推進し、国際ルールの遵守等を働きかけます。また、WTO協定に、労働基本権、環境条項などに関わる社会条項が盛り込まれるよう努力します。
FTA(自由貿易協定)
日本を含めた環太平洋経済の活性化及び協調関係の深化を期して、情報開示をすすめながら地域貿易の自由化を促進し、FTAの締結を積極的にすすめていきます。さらに、これを世界貿易の自由化推進につなげていきます。アジア地域との経済取引を拡大すると同時に、関税・輸入数量制限・不透明な商慣行の相違等の貿易障壁の解消に取り組み、単一経済圏の形成をめざします。FTAをてこに、国内の保護主義的動きの是正を図り、産業構造改革を推進します。
セーフガード
貿易自由化に加えて、新ラウンドの交渉対象となったダンピング防止措置などの貿易ルールも含む幅広い分野についても議論を促進し、貿易制限的な措置や知的財産権侵害が恣意的に発動されないよう規律強化を求めていきます。また、急激な輸入自由化等により深刻な影響をこうむる場合には、WTO協定で認められる範囲内で、TGS(繊維セーフガード)をはじめとするセーフガードが十分に機能するよう、発動手続きの弾力化などに努めます。
<中小・ベンチャー支援>
中小企業が、わが国の雇用の約8割と貴重な技術を支えていること、無限の可能性を持つ芽であることなどから、新しい成長分野の担い手であるベンチャー企業、中小企業の元気が出るよう、予算を抜本的に拡充するとともに、支援策を充実することが不可欠です。元気で自立・独立した中小企業を数多く輩出し、生きがいある仕事場としての中小企業を育て、新規起業を促進し、「大企業と中小企業の元気の循環=産業構造の変革」、「中央と地方の元気の循環=地方分散」をすすめていきます。そのために、従前の「バラマキ政策」から「やる気が出る政策」へ転換させます。日本人が培ってきた"モノづくりDNA"を覚醒させ、日本経済の屋台骨を支える製造業の発展に力を注ぎます。
中小企業金融
金融機関の融資については、内容説明や書面交付の義務付けなど、貸し手責任や義務を法律上明確化すると同時に、倒産に際しては、生活に必要な最低限の財産を手元に残すことを許すなど、再チャレンジの道が残される社会を確立します(「銀行等の中小企業者に対する貸付けの適正な運営の確保に関する法律案」を2003年の第156国会において提出)。中小企業向けの資本・債券市場を創設し、直接金融への道を開き、担保や保証を過剰に求める取引慣行を改めさせ、個人・中小企業への資金供給を円滑にします。また政府系金融機関については、個人保証を撤廃します。貸し渋り・貸しはがしへの緊急避難策としての「特別信用保証」の復活を図ります。天下り禁止や民間人主導の運営等により、信用保証協会の機能を強化します。
中小企業担当大臣の任命
現在、中小企業関連の予算は、主に経済産業省、財務省、そして厚生労働省の三つの省庁の所管にまたがっており、予算請求も別々に行われる仕組みになっています。こうした縦割り行政が、わが国における中小企業行政の遅れ−例えば、下請けいじめがいつまでもなくならないことや、欧米諸国と比較して、中小企業が経済全体における従業員比率にふさわしい販売額シェアを占めていないことなど−の原因の一つとなっていると思われます。また、わが国が直面する銀行セクターの改革や不良債権処理問題に中小企業が大きく関わっていることや、いわゆるニュー・エコノミーにおける中小企業のもつ重要性等に鑑み、中小企業行政をより横断的に統括するため、中小企業担当大臣の任命を検討します(中小企業担当副大臣〈Secrétaire d’Etat〉を置いているフランス等の例があります)。
産業・中小企業税制等
法人事業税への外形標準課税導入については、雇用及び中小企業経営に及ぼす影響に鑑み、慎重に検討します。創業5年未満の中小ベンチャー法人について、法人課税を減免します。創業促進のため、エンジェル(ベンチャーへの投資家)税制の複雑でメリットの少ないシステムを改め、公募債の要件を緩和して公募債と私募債の中間にあたる募債を可能にします。同族会社の留保金課税について中小企業への適用を廃止し、相続税全体の見直しにより小規模企業の負担を軽減します。
起業・ベンチャー支援
廃業よりも開業をめざし、ベンチャー企業の立ち上げを容易にすると同時に企業への技術移転を促進する制度を導入します(日本版SBIR制度の改善やSTTR制度の導入*)。資金不足が顕著な研究開発型ベンチャーを支援するため、エンジェルを支援します。ベンチャー企業の株式購入時に投資額の一定割合を税額控除できる制度の導入やエンジェルネットワークの設立・運営を支援します。また大企業からのスピンアウト(リストラをきっかけとした開業等)促進等総合的な起業支援策を講じて「特別融資枠」などを実現します。これらの施策を通じ、「100万社起業」を達成します。
* 日本版SBIR制度/STTR制度=いずれも中小ハイテク・ベンチャー企業への補助金制度。
ワーカーズ・コレクティブ活性化の支援
地域社会に必要な仕事を市民自らが市民事業として起こす「ワーカーズ・コレクティブ」の活動が広がっています。市民の協同出資、協同労働、協同運営に基づく<協>のセクターを、市民社会の新しいセクターとして社会的な定着を図るために、ワーカーズ・コレクティブ活動の活性化を積極的に支援してゆきます。
商店街対策
1階に商店街、2階以上を高齢者向けケア付き賃貸住宅とする複合建築物の建設も含め、「商住一体のまちづくり」をすすめます。託児所、駐車場・駐輪場等を整備し、消費者が気軽に商店街に出かけられる環境を整備します。起業家のためのSOHO(在宅勤務の小規模オフィス)活用、行政窓口設置により空き店舗や空き地の利用をすすめます。都市景観の向上、防災施設や情報通信基盤の整備、電線の地中化等を促進し、美しいバリアフリーの商店街をつくります。
ものづくり支援
民主党の主導によって成立した「ものづくり基本法」を生かし、ものづくり産業の基盤強化をすすめます。ものづくり技術、人材のデータベース化など、ものづくりをITと結びつけて振興し、中小製造業を有利な立場に誘導します。義務教育、高等教育におけるものづくり教育を重視し、ものづくり職人が一層評価される社会を確立し、後継者育成を推進します。加工技術の向上につながるナノテクノロジー分野への重点化をすすめます。
<IT政策>
民主党は、インターネットをはじめとするIT革命が、官主導から民主導へ、中央政府中心から地方政府中心へと社会を転換し、個人の生き方、生活のあり方を根本から変えるものと位置づけています。ブロードバンド(通信の高速・広帯域化)革命、知的財産権革命、リテラシー(情報読解力)革命と一体となったIT革命をすすめ、行政改革、教育改革などの構造改革につなげていきます。誰もがインターネットにアクセスでき、その恩恵を受けることができるよう、通信分野における競争を促進し、より低廉・高速・安全なインターネット環境の整備をめざします。さらに情報格差(デジタルディバイド)解消策、ネット犯罪・トラブル対策等についても万全を期していきます。
電波の有効利用
携帯電話の普及や無線LAN技術の進展に伴い、電波(周波数)不足が問題となっています。有限資源である電波を今後いかに有効利用するかが、産業活性化や新たな技術開発、国民の利便向上につながります。既存利用者の効率利用と新規需要への迅速な再配分を図るため、(1)電波の経済的価値を反映した電波利用料制度を導入し、歴史的経緯から電波が多く割当てられている公的部門を中心に電波の自発的な効率利用を推進する、(2)適当と認められる範囲内でオークション制度を導入することを可能とする、ことを主な内容とする「電波法の一部を改正する法律案」を2003年4月に国会提出しました。
通信・放送委員会の設置
IT産業の潜在力を発揮させるため、また、誰もが皆、世界最高水準のインターネット環境を利用できるようにするためには、情報通信分野における自由闊達な事業展開と技術開発、そして公正・中立なルールのもとでの競争を後押しすることが重要です。そこで民主党は、内閣府の外局に独立行政委員会を設置する「通信・放送委員会設置法案」を2003年4月に提出しました。総務省から規制部門を分離することで裁量行政を排除し、委員会のメンバーに外部から専門家を常勤で登用することで急速な技術革新へ対応しうる迅速な意思決定を実現します。
電子政府
2000年3月に発表した「人間中心の情報化社会をめざして」(高度情報化社会プロジェクト提言)のなかで、民主党は電子政府の実現を既に公約としています。主な内容は、全行政手続き・税務申告手続きのオンライン化、今後の公文書を電子化したうえでの全公開、政府調達手続きの電子化促進、行政サービス・ステーションの整備、公立図書館等でのインターネット環境の整備、民事訴訟手続きの電子化、判決のネット公開、テレビ会議による証言等の司法の情報化、などです。政府のすすめる行政のオンライン化政策に比べ、より住民の利便性と個人情報の適切な管理に重点を置いています。電子政府の実現は、無駄な行政経費の削減にもつながると考えます。
サイバーテロ対策
2001年11月、民主党はサイバーテロ対策への提言を発表しました。ポイントは、(1)重要インフラ防護センターの設置を軸とする組織体制の構築、(2)ネットワークの安全確保・ネット犯罪・サイバー危機事態に対応した法整備、(3)防衛庁・警察庁の対応力強化、(4)ダメージコントロールを軸とする対策構築の基本的な考え方の整理、(5)公的人材育成機関の設置・技術開発への予算投入、(6)官民連携体制の強化・国際協力体制の強化、(7)ネット教育体制の整備、等となっています。情報通信ネットワークに国境はなく、国際的な協力体制のもと、セキュリティーを確保していくことが重要です。
ITバリアフリー法(ユニバーサルデザイン法)
障害者も含めてすべての人々が使いやすい情報通信機器を設計する「ユニバーサルデザイン」の思想を普及させ、情報バリアフリー社会を確立します。そのため、障害を持つ政府等の職員が電子事務機器を利用できることを保障する、政府に納品する機器は身障者に配慮したものに限られる、メーカーは障害者向けの機器を用意する義務を負うこと等を規定した「ITバリアフリー法」を制定し、職場のバリアフリー環境の整備をすすめていきます。
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