2004年2月9日(月) 戻るホーム民主党文書目次

枝野幸男政調会長/臨時記者会見要旨

■平成16年度民主党予算案について
[民主党予算案] 特に訴えたいことについて
[民主党予算案] 防衛費の扱いについて
[民主党予算案] 予算案の組替要求について
イラク情報の開示に関する福田官房長官の発言について
[自衛隊のイラク派遣] 国会での攻防について
[自衛隊のイラク派遣] 国会承認のあり方について

>>民主党平成16年度予算案参考資料


■平成16年度民主党予算案について

[平成16年度民主党予算案]
明日から衆議院予算委員会で本予算審議が始まるようなので、それに先だって本日、民主党予算案を発表させていただくことにした。

民主党は、昨年から政府予算案に対して、対案をまとめて発表し、それに基づいて予算審議を進めていくやり方をとっている。政府は、強大な官僚組織を手足として使って予算編成をしているのに対し、民主党予算案は、議員団、党の政策スタッフ、秘書という非常に少ない人数で作業をしているため、細かい所まで詰めることはできないが、「国民から預かった税金の使い方を政治が自ら決める」という姿勢を示したつもりだ。民主党が政権を奪った暁には、このように予算の対案を作っていることが、官僚主導ではない予算編成を進めていく上で、大きなOJT(On the Job Training)となるのではないか。

今回の予算案は、昨年の総選挙で示したマニフェストに基づいて作成した。マニフェストは原則として、政権を奪ってから衆議院任期の4年間に実現する政策の約束だ。それを予算という形で表現するにあたっては、法律改正、制度改正など必要なものがいくつかある。法律改正には、野党自民党の抵抗がどの程度あるかによって、いつ成立するかの制約があり、実行するための経過措置が必要なケースも出てくる。しかし、今回の民主党予算案は、政治姿勢としての対案を示す観点から、法改正などに縛られたテクニカルなものではなく、民主党が4年間で実現する政策、国のかたちを予算という形で表現させていただいた。したがって、マニフェストで数年かけて増やす予算を、一気に平成16年度に計上するものや、法改正がなければ実行できないものも含まれているが、ご理解いただきたい。

[民主党予算案の目標]
私たちは民主党予算案によって2つの大きな目標を実現したい。一つは、自主自立に基づく社会である。民間企業、地域、国民が主役となり、それぞれの能力を十分に発揮できる社会をつくっていきたい。政府が何かを進めて国民が後からついてくる、あるいは枠の中で行動していく国のかたちではなく、自主自立に基づいて社会が動いていく。特に経済を中心としてそのような社会にしていきたい。

もう一つの柱は、自主自立の裏付けとして、強くて安定したセーフティーネットを築いていくことである。セーフティーネットがあるからこそ、個人、地域、企業が安心して自己責任、自己判断に基づく自由な社会経済活動を進めていくことができることになる。この自主自立と、強くて安定したセーフティーネットという2つの目標を実現する上で、財政健全化が一つの大きな柱となる。もちろん現在の国の財政状況を考えれば、一気に財政健全化へ大きく舵を切るのは困難なことではあるが、その方向に一歩でも進んでいく姿勢をこの予算案の中に示した。

[7つのポイント]
具体的に7つのポイントを民主党予算案に示している。
(1)第一に、7兆円の予算規模でマニフェストの全項目を予算化したことが一つの大きな柱だ。民主党が昨年の総選挙で約束した、例えば高速道路の原則無料化をはじめとして、マニフェストで約束したことが財政的にも可能であることを示した。

(2)第二に、財政健全化への第一歩を示したことである。危機的な財政状況を考慮し、これを1センチでも改善するために、国債発行額、つまり借金額を政府案に比べて1.2兆円削減する内容とした。

(3)第三に、セーフティーネットの強化。年金の国庫負担を1/3から1/2に引き上げるため、2.7兆円の予算を計上した。医療費の窓口負担軽減や失業対策など、セーフティーネットの強化にトータルで3.8兆円の予算を投入している。

(4)第四に、雇用の創出である。潜在的な需要を掘り起こすことによって、約125万人の新たな雇用を創出できる。

(5)第五に、中小企業予算の倍増である。政府の中小企業予算はあまりにも少ない。セーフティーネットや雇用との関連を考えても、中小企業の活性化こそ、日本経済活性化の柱であるとの考えから、民主党案は政府案に比べて2倍以上の中小企業予算を確保した。

(6)第六として、こうした政策実現のため、税金の使い道を徹底して精査した。政府案よりも12兆円の歳出削減を行い、その財源で、民主党が積極的に進めたい政策を実行していく。

(7)最後に第七として、金額的に一番大きな柱になるが、地方へ19兆円の実質的な財源移譲を行うこと。地方が自由に使える財源を19兆円移譲する内容となっている。以上が民主党予算案の7項目の柱だ。

[歳入について]
歳入項目について、民主党は一括交付金を行うため、政府が行おうとする地方への所得譲与税のような中途半端なことは行わない。所得税そのものを減らして、住民税に振り替える形とした。

税収に関して民主党予算案では、ローン利子控除制度を創設するため、3400億円の所得税の税収減となるが、波及効果をあまり無責任に計上しない方が良いと考えており、税収面は考慮していない。計算上、所得税は3400億円減ることになるものの、ローン利子控除制度を使えば使うほど、消費が増え、消費税が増収となるため、実質的にはそれほどの財政的なマイナスにはならないと考えている。

なお、環境税、自動車関連諸税については、昨年のマニフェストで具体的に細かく約束したところである。

[歳出について]
歳出項目については、政府案よりも12兆円余り減らしている。中央政府の支出では、公共事業費の削減が4.5兆円減となる。国直轄事業1.2兆円は実質減であるが、地方に対する公共事業関連補助金を3.3兆円削減する。この部分は地方に税源移譲が行われるため、見かけ上の削減となるが、地方の判断でこの規模以上の公共事業を行うこともできる。

また、独立行政法人や特殊法人向けの歳出を1.4兆円削減する。政府は特殊法人が減ったと大騒ぎしているが、実質的には特殊法人を独立行政法人に名前を変えただけのところがほとんどだ。税金の使い方を改めるとの観点からはメスが入っていない。民主党案は、特殊法人、独立行政法人向けの歳出を大胆に3割強削減する。

この他、各省庁の一般行政経費は少なくとも1割は削減できることから、1兆円余りを計上した。また、国会議員定数の削減は非常に細かい額だが、まず国会からも予算を削らなければならないとの観点から計上した。公務員人件費については、人事院勧告制度、公務員の交渉権等の問題はあるが、大胆な地方分権を進める中で、人員の配置転換等によって5000億円程度の削減が可能と考える。

歳出増の項目では、マニフェスト項目を柱に、雇用増に結びつくところを中心に、7兆円余の歳出増を計上した。

[民主党予算案における経済効果]
民主党予算案における経済効果を試算してみた。経済効果を算定するのは、政府・与党でも毎回間違えていることであり、民主党が責任をもって行うのは非常に難しいが、試算可能な範囲に限定しても、政府予算案よりは経済効果が大きく、全体として政府案より少なくとも0.3%強の経済成長率が見込まれるとの結果が出た。かなり少なく見積もってもこのような計算が出てきた。

細かく説明するとまず、民主党予算案は、政府予算よりも国債発行額が1.2兆円少なく、全体としての歳出規模は、国、地方を通して2.7兆円少なくなっている。これによる経済のマイナス効果は、政府モデルに基づく計算をすると、マイナス0.542%となる。次に民主党の政策であるローン利子控除制度や高速道路の無料化による効果は、限定的に捉えても、この2つで0.9%程度のプラスの効果があり、差し引きして、政府案よりも0.36%のプラスの経済成長が見込まれることになる。

この他にも、例えば雇用に直接つながる所に予算の使い方を振り替えるため、失業率が下がることによる波及効果は計上していない。したがって、直感的に申し上げて、民主党予算案を実行すれば、政府案よりも2%程度のプラス効果が見込めるのではないか。

また、雇用効果については、具体的に直接雇用が増える部分が66万人。ローン利子控除制度に伴う雇用増が34万人。高速道路無料化に伴う観光産業等の雇用増を25万人と見積もっており、直接的効果で約100万人、波及効果を合わせて125万人の雇用増の効果が出ると考えている。

その他、数字を計上しにくい部分については項目だけを上げているが、民主党案は十分に政府案よりも経済にプラスに働く予算を組ませていただいている。

[公共事業予算]
昨年の民主党予算案に対して政府から、「公共事業をそんなに削って大丈夫なのか」との無責任な意見があったため、補足的に説明しておきたい。

民主党案では、国直轄の公共事業予算1.2兆円は純減となる。しかし、公共事業全体で4.5兆円減らす内の残りの3.3兆円は補助金であり、税源移譲によって、使い道の全く自由な5.5兆円が地方自治体にまわることになる。これは地方が全額公共事業に使おうが、全額公共事業以外に使おうが自由である。仮に、5.5兆円全額公共事業に充てれば、国と地方を合わせて、実質で0.4兆円増えることになり、逆にこれを一切公共事業に使わなければ、地方の公共事業予算が3.9兆円減となるので、1兆円のマイナスとなる。この点は、公共事業の持つ雇用に対する効果を含め、段階的に考えて行かなければならない。

民主党は決して公共事業の全てが悪だと言っているわけではない。地方の生活密着型の公共事業には必要な部分が沢山ある。地方は税源移譲によって自由になった部分の一定程度を公共事業に充てると思われるので、トータルでのマイナスは、国直轄の大型公共事業でマイナス1兆円程度に留まるのではないかと思うが、これは地方が自主的に判断することだ。その結果で全体としての公共事業の総額が決まってくることになる。

[地方の裁量的予算の拡大]
補足の二点目として、地方が自由に使える予算がどのくらいになるのか説明したい。民主党案は地方税収が38.5兆円、地方交付税が13.1兆円、地方特例交付金が0.9兆円、一括交付金13.2兆円。この一括交付金の使途は完全に地方の自由ではないが、教育、街づくり、中小企業振興等のカテゴリーは分けて、その中での使い方は地域に任せていることから、地方の自主財源と考えている。これらを合計して、65.7兆円が地方で自由に使い道を決められる予算となっている。これは政府案に比べて、14.2兆円増えている。この14.2兆が地方分権に本気であるかどうかの民主党と自民・公明連合との違いである。

[高速道路無料化の財政負担]
補足の三点目は、高速道路無料化が財政に与える影響である。高速道路を無料化すると、道路公団が抱える債務が国の債務に継承される。それを返済するための償還負担が1.5兆円かかる。そして無料化された高速道路の維持管理費が0.5兆円かかり、合わせて2兆円の財政負担である。一方で、0.5兆円分は大都市周辺の高速道路で例外的に料金収入があるので、国の財政に与えるマイナス効果は1.5兆円になるが、1.2兆円削減した国の直轄公共事業の予算の中で、他の無駄の多い部分を圧縮すれば、0.5兆円の維持管理費を含めて十分に吸収できるという観点から予算を組んでいる。

[参考資料について]
民主党予算案本体と別に、参考資料をお付けした。高速道路無料化や一括交付金制度、環境税・自動車関連諸税・道路特定財源についてはいずれも昨年のマニフェストに示したことであり、これらを予算計上するにあたり、若干の誤解や認識を十分にいただいていない部分について補足説明をつけた。政府案との比較も説明した。

また、中間まとめであるが、民主党は予算を大きく変えると同時に、規制改革を徹底して進めることも重要と考えている。しかし、政府の規制改革は、弱い者いじめであり、目立つところではあるが効果がない所ばかりを狙ったスタンドプレーである。そこで、原口ネクスト規制改革担当大臣の下で、規制改革の考え方を整理した。これは確定稿ではないが、概ねこうした方向で本当の意味での規制改革を進めているということを今回示させていただいた。

以上、民主党は、政府予算案及び予算に対する考え方の違いを軸に据えながら、10日からの予算審議に対案をもって堂々と臨みたい。


■[民主党予算案] 特に訴えたいことについて

昨年の民主党予算案があり、それを基にしたマニフェストが作られ、それに基づいて今回の予算案が出来上がってきた。この一連の積み重ね、連続性を重視している。

民主党は、昨年初めて予算案を作り、政権を奪ることを前提にマニフェストをまとめ選挙を戦ってきた。それらの経験を踏まえた上で今回の予算案ができている。この1年間、真剣に政権を目指して戦ってきた蓄積が、昨年よりも1年分以上の蓄積になっている。その成果が例えば、経済に対する効果を政府案よりもプラスの効果をもち、政府案に比べて圧倒的に多くの新規雇用を生み出す中身であり、かつ財政の健全化に向けて、1センチかもしれないが昨年よりも前へ進めることができた。

税金の無駄づかい、時代に合わなくなった税金の使い方を変えるという決断さえすれば、景気や雇用と、社会保障の充実、財政の建て直しを両立することができる。小泉総理は、その点にメスを入れずに物事を進めようとするから、どちらに向かっているのかわからない、どちらにも向かっていないという状況になっているのではないか。この民主党予算案を通じて「やればできる」ことを国民に訴えたいし、信頼していただきたい。


■[民主党予算案] 防衛費の扱いについて

防衛費の扱いについて、ここで言う一律1割削減は、いわゆる行政経費という考え方である。防衛費の場合、自衛官の人件費や正面装備費は、いわゆる一律削減に適する一般行政経費とは性質が違うと最終的に判断した。これは新しい防衛のあり方として、ミサイル防衛(MD)の研究を含め、ミサイル、テロ、ゲリラ等によるリスクが高まってくることによって、防衛体制のあり方を大きく変えるという大きな方向性をマニフェストに示しているが、基本的には既存の経費の振り替えで行っていくことも方向性として示してきた。したがって、人件費や、正面装備費については、そうした新しい国際状況の変化に応じた振り替えを行う。ただ、防衛費予算の中にも一般行政経費的な側面がある。その部分は他の省庁と同じように横並びで削る。このあたりを計算すると約1500億円となった。


■[民主党予算案] 予算案の組替要求について

予算審議がある程度進んだ段階で組替要求をすることになるのではないか。

しかし、民主党予算案と組替要求とは決定的に意味が違っている。民主党予算案は、政権を奪った際の国のかたちを示す意味で、法改正、制度改正、経過措置等に縛られずに作成している。組替として出す場合には、(出すとしても2月下旬から3月上旬であることから、その状況から組み替えても)4月1日に間に合うような範囲でしか出せない。組替要求は民主党予算案の中に含まれている項目からピックアップされることになる。違う視点で整理をしなければならない。

他の野党との関係については、政権を共有することが前提となっていないため、政権を奪った場合の対案ということでは、単独で訴えていくことになるが、現状ではダメなものを少しでも良くする意味での政府案の組替については、共有できる可能性はある。民主党としての組替に対する姿勢がある程度固まってきた段階で考えたい。現在のところ白紙だ。


■イラク情報の開示に関する福田官房長官の発言について

情報開示についての福田官房長官の発言は、一般論として安全に関わることについて全ては公表できないというのはその通りだ。しかし、この国会論戦を通じての政府の姿勢は、安全に関係のないことまで安全に関係すると言って、情報開示をしていない。例えば、サマーワ周辺での襲撃事件の件数すら言わない。個々の襲撃事件にどのような対応をし、どのような善後策が採られているのかといったことを公表するのは、次の攻撃の参考にされてはいけないということがあるだろう。しかし、件数自体を言わないのは、どこが安全性と関わってくるのか。政府は、「これを開示すると情報が入ってこなくなる」という趣旨のことを言っており、全く理解不能だ。

一般論としては福田官房長官の発言はあると思うが、全てを公表したらマイナスとなることもあることを前提として最大限の公表の工夫をするのが内閣のスポークスマンとしての官房長官の役割だ。それを放棄されるのであれば、官房長官失格と言わざるを得ない。いつでも辞めていただき、私に代わってもらいたい。私は『次の内閣』の官房長官として、最大限の公表をすることが官房長官の役割だと思っている。


■[自衛隊のイラク派遣] 国会での攻防について

国会の論戦、攻防は、「攻」と「防」で成り立つものだ。国会論戦は与党と野党の両方で作り上げていくものだ。「どうせ結論が違うから答えても仕方がない」という小泉総理の答弁に代表されるように、投げやりな政府の答弁姿勢の下では残念ながら論議を深めたくても深めることができない結果となった。

どういう立場に立っても今回の派遣は歴史的な大きな決断であり、こうした議論が政府側の無責任な答弁姿勢で深まらない状況で、自衛官やイラク国民の生命に関わる重大な決断がなされたことは残念であり、昨年の総選挙で政権が奪れなかったことについて改めて残念に思う。こうした政府を選んだことを含めて選挙の結果であり、今回のリスクと責任は全国民が共有すべき事だ。国民に対する呼びかけ、働きかけを含めて、改めて次の総選挙で政権を奪わなければならない。


■[自衛隊のイラク派遣] 国会承認のあり方について

議論する姿勢のない人たちを前にしたら国会は無力だ。与党は国会で多数を持っているわけで、自分たちが議論したくない案件ほど、短い審議時間で審議を打ち切って採決してしまえば何でもできる。民主党が反対と叫んだところで、例えば予算案でも、明日で審議を打ち切り採決動議を出し、数の力で与党が予算を採決することは可能だ。これが国会法に基づく建前としての国会のルールだ。

政府が重要なものであると考え、それを説明する姿勢があってはじめて国会の審議が意味をもつ。政府が説明し、違った視点から野党が検証し、その上で結論を出すから、例えば、自衛隊の安全に対して心配をしている国民も、これだけ国会で議論をしたのだから、結論として仮に意見が違っていたとしても、一定のチェックが働いていることから安心できるが、しかし小泉政権はそのような姿勢をもっていない。大事なことほど審議しない内閣であるため、国会が機能しないのは当たり前で、その責任はひとえに政権側にあると言わざるを得ない。

以 上 


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