2005年1月26日 戻るホーム民主党文書目次

当面の民主党アフガニスタン復興支援策
〜法の支配の下での市民社会の発展をめざして

民 主 党

T アフガニスタン復興支援に対する基本姿勢

○ 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ後、アル・カーイダ及びタリバン政権に対して米・英軍による空爆が行われ、11月、タリバン政権は崩壊した。民主党は、同時多発テロの発生直後から、国際社会が一致して「テロとの戦い」に取り組んでいくことの必要性を訴えた。この姿勢のもと、民主党は、いち早く2001年12月末、訪問団(団長:鳩山代表(当時))を派遣し、カルザイ暫定政権議長に対し、翌2002年1月東京で開催されるアフガニスタン復興支援国会議への出席を要請した。また、被災したアフガン国民への募金を現地で活動するNGOに手渡し、わが国国民の支援の声を伝えた。

○ これまでわが国がアフガニスタンに対し実施してきた復興支援は、重要な役割を果たしてきた。  テロ特別措置法に基づき、インド洋・アラビア海で実施している給油活動も、米同時多発テロを受けた国際協調の中での「テロとの闘い」において、海上自衛隊の真摯な取り組みなどにより、国際社会からの評価も高いと理解する。しかし、海上自衛隊が派遣されてから約3年が経ち、有志連合の枠組みの中で実施している海上での給油活動が、現在、アフガン国民の間でどの程度有益と認知されているか、疑問を持たざるを得ない。国連安保理決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)の枠組みの中で、我が国憲法に照らして行える支援も含め、アフガン国民の復興に資する支援のあり方を見直す時にきている。

○ また、2003年3月の米英などによる対イラク攻撃以降、国際社会及びわが国のアフガニスタン問題への関心が薄れてしまっている側面は否めない。本年9月、この傾向を憂慮したアフガニスタンで活動する日本のNGO諸団体は、国際NGOの動きと呼応する形で、小泉総理宛に継続的なアフガン支援を求める要請書を連名で提出している。

わが国政府は、2002年1月の東京での復興支援国会議で、向こう2年6ヶ月で最大5億ドルの復興支援を表明した。また、2004年3月末にベルリンで開かれたアフガニスタンに関する国際会議で今後2年間で4億ドルの支援を表明した。支援実績は、人道支援として2001年10月から1億2800万ドル、復旧・復興支援として2002年1月から6億8000万ドルの総額約8億1000万ドルにのぼっている。復旧・復興支援は、選挙の準備・実施経費支援など政治プロセス・ガバナンスに関するもの、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)など治安の回復、幹線道路修復等の復興といった三つの分野で行われている。

○ 民主党は、アフガニスタンこそ「テロとの戦い」の原点であり、アフガニスタンの安定と復興を達成させることの重要性を強く認識している。アフガニスタンが再びテロの温床とならないだけでなく、長く続いた銃による支配から脱却して安定した市民社会に移行していくには、持続的な発展を促す効果的な支援が必要である。

U 復興支援政策

民主党は、2004年11月、アフガニスタン訪問団(団長:鳩山由紀夫ネクスト外務大臣)をカブールに派遣、カルザイ大統領、アブドラ外相などとの会談を通し、幅広い情報収集および率直な意見交換を行った。また、同訪問団は、カブール滞在の間、DDR(武装解除・動員解除・社会復帰)の一環である除隊兵士教育施設の視察を行った他、アフガニスタン国内で活動する日本のNGO(非政府組織)関係者や日本大使館および国際協力機構(JICA)職員など、現地で直接復興支援に携わる官民両方の関係者からの率直な意見を聴取した。これらの結果も踏まえ、民主党はアフガニスタンの現状に基づく復興支援政策を下記のように提言する。

【6つの提言:要旨】
1) 国別援助計画の策定
アフガニスタンは日本のODA最重要対象国でありながら、現在の時点で国別援助計画が策定されていない。現地における個々の支援活動は有効であっても、今後、中・長期を見据えた効果的な援助計画が必要である。

2) 武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)の一層の強化
国内の治安の安定は、援助活動を進展させる上でも不可欠である。わが国が力を入れてきたDDRの「(除隊兵士の)社会復帰(Re-integration)」の分野での一層の支援が重要である。

3)「民」との連携 
アフガニスタンではNGOの復興支援活動も重要な役割を果たしている。しかし、その活動は常に安全というわけではない。現地で活動するNGOは、情報の収集と安全確保に十分な努力を講じることが必要と考える。また、政府の支援を受けるNGOに対する諸手続きの効率化なども課題である。

4)麻薬対策 
麻薬の栽培・製造・売買は、軍閥やテロ組織の主要な財源となっている。DDRを進める中で軍閥を解体し、法による支配を推進するためには、麻薬に代わる産業などの発展が不可欠であり、国際社会の支援が必要である。

5)女性の人権・教育問題への取り組み
女性は、タリバン政権下で抑圧され、教育の機会なども阻害されてきた。2002年11月、民主党が主催したアフガン女性復興支援会合のような取り組みなど、女性に対し、とくに手厚い支援を行っていくことが、アフガニスタンの復興に有益である。

6)公正な議会選挙の実施
今年4月に予定されている議会選挙は、アフガンの市民社会の発展に重要である。選挙監視団の派遣なども含め、わが国政府も出来る限りの支援を行っていくべきである。


【6つの提言】
1)市民社会の復興に主眼を据えた国別援助計画の作成
  〜 一貫性のある援助政策の立案
アフガニスタン復興支援における日本のODAが果たす役割は大きい。日本が実施するODAが効果を十分あげるには、中・長期的な目標に基づく援助計画を策定した上で、個別の支援に取り組んでいくことである。タリバン政権崩壊後の混乱期においては、基本的には緊急の支援となろうが、10月、大統領選挙を無事に実施したアフガニスタンにおいて、中・長期を見据えた援助計画が求めらている。現在、アフガニスタンにおいて日本大使館、国際協力機構(JICA)を中心とした現地ODAタスクフォースを既に立ち上げ、現地政府などとの政策協議を行っている。しかし、アフガニスタンが日本にとってのODA最重要対象国でありながら、現在まで国別援助計画の策定には至っていない。政府が掲げる「平和の定着」のためには、市民が法の支配の下、自発的に社会活動に取り組める環境作りが必要である。市民社会の復興に主眼を据えた国別援助計画の早急な作成を政府に対し求める。

2)治安の回復 〜 求められる国際社会の継続的関与
「治安の回復」、「ボン合意に基づく政治プロセスの進展」、「包括的復興支援の継続」は法の支配の下での市民社会の復興を達成するための必要3条件である。とくに、「治安の回復」は、「政治プロセスの進展」、「復興支援の継続」の前提条件であると、民主党は認識している。しかし、タリバン残党や国際テロ組織アル・カーイダなどへの掃討作戦などの軍事行動の遂行のみでは、治安問題の解決には至らない。「ボン合意」から3年が経過した現在に至っても、軍閥が地方の大部分を実効支配しており、中央や地方軍閥の多くが、麻薬貿易を含む非合法活動への関与など、「法の支配」の認識を欠いたままの地方統治が現在も続けている。また、地域内の敵対他軍閥との武力衝突も度々発生している。

現在、中央政府による治安の徹底のため、治安部門改革(SSR)が進められている。治安部門改革の一環として、国防軍(ANA)、国家警察(ANP)の育成と共に、DDR(武装解除・動員解除・社会復帰)、麻薬対策、司法改革が行われている。この中、国際治安支援部隊(ISAF)参加国、有志連合参加国を含む国際社会全体が、DDRの推進のために再結集する必要があると考える。また、地方軍閥がDDRに協力・参加するように、分け隔てなく全ての軍閥に対し、国際的な政治圧力を掛けることが重要である。日本はDDRのとりわけ除隊兵士への社会復帰・職業訓練分野において中心的役割を果たしてきた。今後も日本政府がより一層同分野における支援を強化することを求める。

3)復興支援における市民社会との連携 〜 「官」と「民」の相互補完関係の確立
官が行う復興支援と比較し、NGOなど民間のそれは、地域社会や市民と密接に連携した形での援助において通常比較優位を発揮する。とくに社会基盤が不安定なアフガニスタンにおいては、きめ細かい配慮の下、実施する支援形態が大きく求められている。治安の悪化が伝えられる現在も、日本の多くのNGOが、国際機関、政府機関などとの連携の下、復興における中心的な役割を果たしている。政府も、市民社会との連携を認識し、日本大使館、国際協力機構(JICA)などと日本のNGOとの間で定期的に協議会を開き、意見交換および情報交換を行っている。このような政府の新しい取り組みに対し、民主党は一定の評価をする。しかし、協議会などの新たな取り組みが形式的な儀式になってしまうことを憂慮する。わが国政府は、アフガン政府と地域社会の双方にアプローチし、相互補完関係的な援助を実施することが重要である。

現在、アフガニスタン国内で活動する日本のNGOは復興支援を進める上で大きく二つの問題に直面している。まず、次の具体的問題についての改善、取り組みを政府に要望する。

(1) NGOが活動を継続していく上での治安の確保の問題である。アフガニスタンで活動するNGOの多くは、国際機関などとの連携に加え、NGOのネットワークを最大限に活用し、自らの安全を確保する努力を進めている。治安に関する情報収集および分析を専門とするNGOや、安全確保の訓練を行うNGOなどもアフガニスタン国内で活動していることは特筆すべきである。民主党は、明確な自己責任原則の下、各NGOが治安情勢の分析能力、とくに、国外退避や国内退避を決定できる能力を向上させることが出来るよう、安全対策講習の実施、緊急時通信機材の提供、危機管理に有用な情報の提供など、よりいっそうの支援を行うべきと考える。また、これらの能力を有しているNGOの日本人スタッフに対し、緊急時において、移動手段の提供など、必要な対応措置をとることも個別の事案に応じて積極的に検討すべきである。

(2) NGOが政府の支援を受ける際の審査の遅れなどの問題である。アフガニスタンで活動する日本のNGOの多くは、日本NGO支援無償資金協力などの財政的支援を政府から受けている。訪問団が現地において意見聴取した際も、申請から承認まで1年の時間を要し資機材費用の急騰への対応に苦慮した例、審査の長期化によって申請プロジェクトの受益者グループとの信頼関係に悪影響が及んだ例などの報告があった。ODAの原資は国民からの税金であり、慎重な審査を要するが、資金の適用使用を確保した上での、行政手続き迅速化へのさらなる努力を政府に対して強く要望する。

4)国際社会による長期的取り組みが求められる麻薬対策
  〜 帰還難民の生活基盤の確保、就労問題及び農業復興支援の一環として
麻薬は国境を越えてあらゆる国に影響を与える問題であり、効果的な対策の必要性を強く認識する。問題の背景に貧困問題があることに留意し、貧困対策と併せて実施していくことが必要である。また、単なる取り締まりでは問題を解決することは不可能であり、代替作物の導入、麻薬生産に関わる全ての軍閥の解体などの措置と並行して取り組んでいくことが求められている。

アフガニスタンは、伝統的に小麦、果物等を主要作物とする農業国で、過去において乾燥果実の輸出は重要な外貨獲得源となっていた。20年以上にわたる内戦により灌漑農地、施設は放置され、農村は疲弊している現状がある。農業は最たる労働集約型産業であり、農業分野における支援は、麻薬対策としてのみならず、都市部におけるスラム化などの問題に対しても有効な対策である。民主党は、基幹産業である農業に焦点をあてた形での地方復興策の一環として麻薬対策により一層の支援を行っていくことの重要性を指摘する。

5)継続的な女性支援 〜 復興の担い手としての女性支援
アフガニスタンにおいて女性は長く抑圧されてきた。歴史が示すように女性の人権や教育の向上は、社会の発展の重要な要素である。「ボン合意」から3年、今回の大統領選挙においても多くの女性が投票に参加したように、女性の社会参画において一定の前進があったと考える。民主党は、女性支援を被害者への救済という視点からではなく、「復興の担い手」との視点から行っていくことが重用であると考える。この観点から、2002年11月、民主党主催でアフガン女性復興支援会議を開催した。よって、民主党は、経済活動を含む、復興過程のあらゆる分野における女性参画を促す支援を、政府が今後も継続的に行うことを要望する。

6)議会選挙実施に対する支援 〜 民主化に向けた政治プロセスの推進

2001年12月のボン合意後、2002年6月の緊急ロヤ・ジルガには、220人もの女性が参加し、カルザイ暫定政権議長を大統領とする移行政権が成立した。その後、アフガニスタンでは、2004年1月に新しい憲法が制定され、10月に行われたアフガニスタン初の大統領選挙ではカルザイ現大統領が選出、来年4月には国会議員選挙を控えている。このように民主的な手続きを通じて国造りを進めているアフガニスタン国民一人一人の希望に応えるべき、国際社会は最大限の支援を行うべきある。

まず、民主党は、国際社会、特に国際治安支援部隊(ISAF)参加国、有志連合参加国に対し、投票者の安全確保のための最善の努力を要望する。そして、政府に対し、選挙実施費用負担を含み、選挙実施に対する可能な限りの最大限の財政的及び人的支援を要望する。 

以 上


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