2005年6月29日 | 戻る/ホーム/民主党文書目次 |
「障害者自立支援法案」に対する民主党の対応について
民主党が、障害者自立支援法案に関する与党との修正協議を継続することを断念したことに対し、全国から数多くの声が寄せられました。一部に若干の誤解も含まれておりますので、改めてこの間の経緯と今後の方針をご説明致します。
昨年10月に厚生労働省より「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が発表されて以来、党の障害者政策WTや厚生労働部門会議、議員団との懇談会などを通じて、障害者の皆様とは繰り返し意見交換・情報交換を行って参りました。この間のご協力に対しまして、改めて心より感謝を申し上げます。こうした皆様方との意見交換に加え、衆議院厚生労働委員会で行われた参考人質疑での障害者団体の意見を踏まえ、民主党は6月9日に「障害者自立支援法案」の骨格部分を含む9項目の修正要求を、与党に対して行いました。その内容は【別紙1】の通りでありますが、民主党としては何より同法案によって障害者の負担が過重となり、実質的なサービス抑制が生じないこと、少なくとも支援費制度を含む現行サービス水準の低下を招かないことを最重点として、与党との協議に臨むことと致しました。
これに対する与党回答は【別紙2】の通りであります。同法案の審議開始より既に2ヶ月を経過して法案の問題点も明らかになり、与党内からも「修正が必要」との意見がある法案にもかかわらず、実質的な「ゼロ回答」です。障害者等の実質的な負担軽減に係わる部分については、「修正には応じられない」「法案修正の必要はない」「法案修正にはなじまない」と明確な拒否を、与党は通告してきました。民主党としては、この与党回答を受けて、協議を継続する意味は乏しいと考え、6月22日をもって与党との協議を打ち切る決断を致しました。
一方で、民主党は与党との協議と並行して、厚生労働省とも協議を行っていました。同法案は抽象的な規定が多く、政省令(国会の議決を必要とせず、政府内で決めることのできる細目)が実質的に障害者の皆さんの生活を左右しかねないため、この政省令の内容について確認し、またできる限り負担が軽減できるように、行ってきたものです。民主党としては、法案修正を与党が拒否する以上、法案の修正は断念するとしても、この政省令の確認、方向性の改善については党を挙げて取り組んでいくことを決定しました。
ところが、民主党のこの決定を受けて、翌日、自民党・公明党(=与党)の衆院厚生労働委員会理事が揃って会見を行い、声明を発表しました。その内容は極めて異例なものであり、民主党が修正協議を断念したことについて、「まことに遺憾である」「修正協議打ち切りの決定を即刻撤回し、与党との協議を継続すべきである」としています。これは明らかに責任転嫁です。与党は、政府と一体となって万全の法案を国会に提出すべきであり、法案に問題があるなら、提出前に修正すべきは当然です。それにもかかわらず、与党が修正協議を求めるということは、自ら法案の欠陥を認めたも同然です。これを野党の責任というのは、滑稽でさえあります。百歩譲って、仮に修正協議を再開するとしても、まずは与党が欠陥法案を提出したことを関係者に陳謝し、その上で与党が考える修正案を示した上で、民主党に対して協議再開を求めることが筋だと考えます。ゼロ回答のままで「修正協議を再開せよ」というのでは、再開できるはずがありません。
加えて、厚生労働省は修正協議断念を受けて、民主党と厚生労働省の間の政省令に関する協議の打ち切りを通告してきました。国会の場において、法案の不透明な部分を確認することは当然であり、その前段階において「より障害者の立場に立った内容とすべきではないか」と国民の声を反映させることは、国民の代表としての国会議員の責務であります。厚労省は、この国会議員の責務さえも拒否し、障害者の皆さんの生活を実質的に左右する政省令を、独善的に決めていくと宣言したのです。
民主党は、障害者の方々のご協力を得て、昨秋より数え切れないほどの意見交換を行って参りました。この経緯を通じて、まず何より本法案に関する議論が余りにも不十分であることを痛感しています。その上で、本法案には、所得保障もなしに定率負担を導入すること、現行の障害者福祉サービスの水準低下に繋がりかねないことなど、極めて重大な問題があります。民主党の修正要求にゼロ回答を突きつけることによって、この問題を放置しようとする与党の姿勢には、強い憤りを感じています。
国会における「障害者自立支援法案」の審議は、まだ行われる見通しです。民主党としては、与党自らが認める欠陥法案ですので、十分な慎重審議を求めていくと共に、その中で政省令の具体化、内容の改善について全力で取り組んで参ります。
その上で、次期総選挙では政権を獲得し、国際的に見て低い障害者福祉水準の見直し、谷間のない総合的障害者福祉制度の確立に取り組んで参ります。引き続いてのご支援・ご協力を、是非ともお願い申し上げます。
別紙1
U. 修正協議を求める事項
前記の多くの論点を踏まえれば、本法案に対して民主党は反対である。
しかし、本法案が障害者等の生活を直接に左右するものであることから、障害者・児、家族及び関係団体からは一歩でも法案の改善を求める悲痛な叫び声が国会に届けられている。この当事者の声に真摯に応えていくことは政治の重大な責任である。
民主党としては、障害者が差別を感じることなく、自己選択・自己決定に基づき社会の構成員としてその能力を存分に発揮できる社会を構築していくことを目指すものであるが、その一環として、今回、法案にとどまらず、障害者等の生活を実質的に左右する政省令事項等についても、与党と政治レベルの協議を行うこととしたい。
具体的には以下の事項について、法案の修正、実質的な障害者福祉サービスの水準確保・向上等を求め、これを実現することにより障害者等の生活維持、自立と社会参加を実現しいくこととする。
1.法の目的
法案の目的に、障害者基本法の目的に明記されている「自立及び社会参加」を加える。
2.定率負担の凍結・所得保障
新たな障害福祉サービス等に係わる利用者負担について考える時、その大前提として、障害者の所得保障の確立等が必須条件となる。そこで利用者に負担を求めるにあたっては障害当事者のみの収入に着目することとした上で、障害者の所得保障制度の確立及び低所得者の負担軽減策の具体的な拡充が実現するまでの間、定率負担の導入を凍結する。
3.移動の保障
地域生活支援事業における「移動支援事業」は据え置きつつ、個別給付の「重度訪問介護」「行動援護」の対象を拡大し、サービス受給者の範囲を実質的に現状水準に維持することにより障害者の社会参加を保障する。
4.「自立支援医療」の凍結
公費負担医療を自立支援医療とする本年10月からの実施は凍結し、改めて医療を必要とする者の範囲、自己負担の在り方を検討する。
5.重度障害者の長時間介護サービスの保障
国及び都道府県の障害福祉サービス費に係わる費用負担については、障害程度区分の基準サービスに該当しない非定型・長時間サービス利用者の場合でも義務的経費の負担対象とする。
6.居住支援サービスの水準確保
障害程度別にグループホーム・ケアホームへの入居の振り分けは行わないこと。またグループホームにおけるホームヘルパーの利用を可能とするなど、重度障害者の入居可能なサービス水準を確保すること。
7.本人の意見聴取
「障害程度区分の認定」「支給要否決定等」を行うにあたり、障害者等又は保護者の求めがある場合には、その意見を聴取することを義務づける。
8.対象拡大及び障害定義の見直し
発達障害・難病等の者に対する本法の適用について、障害者等の福祉に関する他の法律に定める障害者の範囲の見直しと併せて速やかに検討し、必要な措置を講ずる。
9.権利擁護に係わる制度の確立
障害者の虐待防止に係わる制度、障害を理由とする差別禁止に係わる制度、成年後見制度その他障害者の権利擁護のために制度について、速やかに検討し、必要な措置を講ずる。
別紙2
民主党『「障害者自立支援法案」の主要な論点と修正協議項目』 | 左記に対する考え方 |
1 法の目的 法案の目的に、障害者基本法の目的に明記されている「自立及び社会参加」を加える。 |
法の目的については、法案を修正する方向で、その文言等についてさらに協議することとしたい。 |
2 定率負担の凍結・所得保障 新たな障害福祉サービス等に関わる利用者負担について考える時、その大前提として、障害者の所得保障の確立等が必須条件となる。そこで利用者に負担を求めるにあたっては障害当事者のみの収入に着目することとした上で、 障害者の所得保障制度の確立及び低所得者の負担軽減策の具体的な拡充が実現するまでの間、定率負担の導入を凍結する。 |
定率負担の導入の凍結については応じられないが、実質的に過大な負担とならないよう国会論議を踏まえ低所得者対策を講じることを検討したい。 なお、所得保障の確立については、今後の検討課題であり、法案修正が適当か否かについて引き続き協議することとしたい。 |
3 移動の保障 地域生活支援事業における「移動支援事業」は据え置きつつ、個別給付の「重度訪問介護」「行動援護」の対象を拡大し、サービス受給者の範囲を実質的に現状水準に維持することにより障害者の社会参加を保障する。 |
「重度訪問介護」「行動援護」の対象の拡大に関する法案修正には応じられないが、適切な移動支援サービスが確保されるよう、地域生活支援事業における移動支援事業の在り方について、さらに協議することとしたい。 |
4 自立支援医療の凍結 公費負担医療を自立支援医療とする本年10月からの実施は凍結し、改めて医療を必要とする者の範囲、自己負担の在り方を検討する。 |
自立支援医療の実施の凍結については応じられないが、自立支援医療の実施時期の変更については、引き続き協議することとしたい。 |
5 重度障害者の長時間介護サービスの保障 国及び都道府県の障害福祉サービス費に関わる費用負担については、障害程度区分の基準サービスに該当しない非定型・長時間サービス利用者の場合でも義務的経費の負担対象とする。 |
法案修正には応じられないが、重度障害者に対するサービスに係る義務的経費の負担の在り方については、適正なサービス水準が確保されるよう検討したい。 |
6 居住支援サービスの水準確保 障害程度別にグループホーム・ケアホームへの入居の振り分けは行わないこと。またグループホームにおけるホームヘルパーの利用を可能とするなど、重度障害者の入居可能なサービス水準を確保すること。 |
グループホームやケアホームについては、運用面の工夫により対応が可能であり、法案修正の必要はないと考える。なお、運用の在り方については、重度障害者について適正なサービス水準が確保されるよう検討したい。 |
7 本人の意見聴取 「障害程度区分の認定」「支給要否決定等」を行うにあたり、障害者等又は保護者の求めがある場合には、その意見を聴取することを義務づける。 |
法案修正には応じられないが、本人の意見聴取の運用の在り方については、引き続き協議することとしたい。 |
8 対象拡大及び障害定義の見直し 発達障害・難病等の者に対する本法の適用について、障害者等の福祉に関する他の法律に定める障害者の範囲の見直しと併せて速やかに検討し、必要な措置を講ずる。 |
発達障害・難病等の者の取扱については、今後の検討課題であり、法案修正が適当か否かについて引き続き協議することとしたい。 |
9 権利擁護に係わる制度の確立 障害者の虐待防止に係わる制度、障害を理由とする差別禁止に係わる制度、成年後見制度その他障害者の権利擁護のために制度について、速やかに検討し、必要な措置を講ずる。 |
法案修正にはなじまないと考えるが、今後の検討課題であり、その趣旨を表す方法及び内容について引き続き協議することとしたい。 |
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