2007年7月5日 | 戻る/ホーム/民主党文書目次 |
松本剛明政調会長/緊急記者会見要旨
同席:長妻昭衆議院議員、山井和則衆議院議員<松本剛明政調会長>
通常国会閉会にあたっての総理の記者会見を聞いたうえで、我々からも申し上げたいことがあり、この会見をセットした。
通常国会が終わり、次の参議院選挙に向けてというのが総理記者会見の位置付けだったと思う。将来に向けて何の政策をするのかについて、結局ほとんどなかった。「美しい国」というビジョンもあまり中身がないと思っていたが、一国会ですべて終わってしまう程度だったのかという思いがする。
これから政策を将来にわたって語るには、当然財源の問題の議論が必要であり、私どもも総理から議論をいわば吹っかけられ、これには受けて立つつもりであるが、総理の側もぜひ示してほしい。今日の会見で話が少し出ると思っていたが、その方向に行かなかったことは残念だ。
また、自画自賛というほかないような会見だったが、天下りについてはそれがなかった。本人も自画自賛できないという私たちの指摘にやっと気がついたのだろう。
「主張する外交」の中には、ライフワークとされてきたという北朝鮮との外交の問題が、いま非常に難しい段階にきているにもかかわらず、話がなかったと思う。
年金だが、記録問題については長妻昭議員からも話を後ほど行うが、我々としてはまず、年金制度の話もこの機会にして、不安は制度と運用の両方から来ていると思うので、議論する、そういう姿勢を示してもらいたいと思っている。
記録の問題についての感想としては、第一に総理は、「社保庁は何をしている」、と国民に向けて言っていたが、社保庁の上に立っている行政の最高責任者が総理なのだから、会見でやっていただきたかったのはお詫びであって、自分のところの社員にあたる職員を非難してもらっても困る。総理になったはいいが、「えらい困った職員がいる」、と総理ご自身が言っているのでは、被害者になっているような極めて子どもっぽい反応であり、残念である。
原因についても、9年前の基礎年金の統合を言っていたが、すでに報道でも明らかなように、根っこはもっと昔からあるということもはっきりしてきており、理解が足りないのではないか。原因究明をすると言いながら、そして複合的な要因であることは判明しているにもかかわらず、原因を労働組合にしていた。私どもも、労働運動の意義そのものは認めてきたが、社会保険庁の労働組合のこれまでの活動は明らかに使命を逸脱しているし、私見だが、組織としてゼロから出直してもらいたいと思っている。ただ、それがすべての原因であるかのように言うのは、原因をこれから究明すると言われたのに矛盾しているのではないか。しっかり原因を究明しないと、しっかりした本当の次の有効な制度構築はできないだろう。
また、年金事業機構を国鉄に例えていたが、私どももこの新たな社保庁解体後の仕組みについては、いろいろなパターンを検討した。しかし、国鉄と根本的に違うのは公的な年金ということで、完全民営化ができるように売り上げを立てるような性格のものにならない。そうすると、国の外郭団体という形をとるのは、国そのものに置くよりも大体おかしなことになる。給与水準をみても、非公務員型は国家公務員よりも高い。特殊法人も高い。完全な市場のチェック、株主のチェック、顧客のチェックがありえない特殊法人は我々としては取りえない選択だと思っている。そのことを塩川元財務大臣も「離れのすき焼き」と評したように、むしろやめていこうというのがこれまでの我々の強い要求による政府の姿勢だったと思うが、その辺りの理解をまったく欠いているのではないか。
ましてや、年金事業機構にすると年金加入率が上がると言っていた。ひょっとすると、公的年金をやめて営業して年金を加入させようとしているのか。どのような考え、理解をしているのか。もう一度詰めていきたい。今日の両院議員総会でも言ったが、高校無償化について3000億円のものを9兆円かかると言うような感覚の欠如である。年金加入率なども、根本的な理解をまずしていただきたい。
○消えた年金問題について
<山井和則議員>
一番言いたいことは、嘘を書いた自民党のチラシは、即刻訂正すべきということだ。今日も安倍総理会見の一番の目玉は、前倒しして年内に5000万件の「照合」をするということだった。しかし一言も一番肝心なその記録が誰のものかを特定する「統合」について一切触れていない。「統合」が加入者にとって一番大事なことである。「照合」はコンピュータ上の操作に過ぎない。
1週間以上前から、総理は「照合」のことしか言っていないにもかかわらず、政府・与党は「今後1年間ですべての『統合』を完了させます」と書いている。裏面では、政府・与党案として、「今後1年間で問題解決、全額支払い」ということまで書いてあり、このチラシをずっと撒き続けている。
また自民党のホームページでは、茂木議員がビデオで、「5000万件を1年間で『統合』を完了すると総理も言っている」とかばっている。これは事実に反する。総理は「照合」までしか言っていない。そしてこのことについて、先週の木曜日(6月28日)、福山哲郎議員に質問された柳澤厚生労働大臣は、「事実と違うので、本日の委員会が終わったら、自民党広報局長に連絡をしなくてはいけない」と明言し、その後広報担当者へ連絡している。つまり、「『統合』とまで書くのは書きすぎであり、政府は『照合』とまでしか言っていない」、と訂正を申し入れた。そのことは、今朝の民主党部門会議でも社会保険庁の高橋室長が認めている。
それにもかかわらず、1週間それを無視して虚偽の表現をしているチラシを撒き続け、全国の参議院候補者は茂木議員のビデオを放送し続けている。間違った内容を書くだけでも問題だが、それを他でもない政府の柳澤大臣から訂正するように申し入れられても、それを放置して選挙の事前活動として利用している。これは極めて悪質である。そのような状況において、今日安倍総理は、「政権政党はできることしか言ってはならない」と強調した。
本日も、前倒しと言って、「照合」、「統合」、「名寄せ」を一般の国民にはわからないのをいい事に、1年間で解決する、支払いも終わる、という幻想を振りまき、一番大事な全額支払いの前提となる「統合」については一言も記者会見では触れなかった。
そしてまた今日、自民党は対策を自信を持って発表したようだ。ここにも、「名寄せ」、「照合」の前倒しについては書いてあるが、「統合」のことはまったく書かれていない。極めて悪質なミスリードである。
肝心な「統合」については、今朝の部門会議でも社会保険庁も「本人との確認が必要なので何年かかるかは現時点ではわからない」と言っている。安倍総理は照合を年内に終えると言うのと同時に、誠実であるならば、「照合は年内に終える予定だが、統合はいつ終わるかの目途は立っていない」ときちんと言わないと国民に対して誤解を与えると思う。
<長妻昭議員>
安倍総理の会見を受けて、消えた年金問題の部分に限って説明したい。まず総理の発言を追って、申し上げる。
(1)「1年以内に名寄せ、突合せを行う。」
「今年度」ということで、来年の3月までに5000万件の名寄せ、突合せを行うということであり、これは通知も来年3月までに完了するというような発言だった。これは、前から申し上げていたことだが、結局コンピュータの中だけで3億件の納付データがあり、未統合の5000万件と基礎年金番号の1億件のデータを突合せして、5000万件に該当するだろう1億のデータを抽出して、その該当者に、例えば山田太郎さんであれば、この方のこれまで払い込んだ納付記録の一覧を送り、「抜けがある可能性があるので、あれば連絡をください」と知らせる、あるいは往復葉書の方法かもしれないが、これを来年の3月までに行うということだ。
これはあまり知られていないが、平成10年から、社会保険庁はずっと同じ手法をすでにとっている。まったく同じ手法を、何か新しいことをするかのようなイメージでもう一度繰り返してやるということだ。我々としては、このような手法が効果がないので、5000万件の未統合のデータが出たと考えている。しかも通知は、5000万件のデータそのものをその方にお示しするわけではなく、抜けがないかどうかを本人に思い出させるという従来手法であり、この手法であれば1年でできるとは思うが、効果は薄いと思う。
(2)「ねんきん特別便」
1億人の方に納付履歴を送付するということだが、これは、私どもが最初に松本政調会長から今年1月に衆議院本会議で申し入れをしており、政府が拒否し続けていることである。この期に及んでも、「来年から」やるということである。
今、窓口に行けば納付の履歴をすぐに出してくれる対応をとっているわけなので、特別なソフトを開発する必要はない。我々としては今月中には第1便を出せると思っている。「鉄は熱いうちに打て」という言葉もあるように、今非常に国民の皆様の関心が高い時点でお送りし、今、チェックしていただく。この好機を逃すと、関心が薄れて、チェックしてもらう関心が高まらないということも想定される。
(3)「第三者委員会」
詳細基準は、一見外に出ているが、委員会の討議の中身は議事録も含めて外には出ない。社会保険事務所に、第三者委員会で審査してほしいと申し出ている方もいらっしゃるが、事務所からあなたのケースは取り次げないと断られている方も現実にいる。社保庁によってフィルタを掛けるようなことが起こっているので、詳細を明らかにしてほしい。
(4)「検証委員会」
原因と責任を明らかにするという総理の発言があったが、検証委員会に関しても非公開であり、おかしなことである。原因と責任だけでなく、今の実態解明が進んでいない。その実態解明が抜けていると言わざるを得ない。
(5)「社会保障カード」
健康保険等を1枚でやる。つまり、アメリカでいうソーシャルセキュリティー番号のような構想の話があったが、これも、今回の記録漏れに絡めた話だと聞こえたが、この議論も将来的には私個人は必要だと思うが、基礎年金番号にも十分統合できないのに、今回のケースでさらに新しい番号を入れていくことには危険性がある。現状のままこの議論を進めていくのは、ぐちゃぐちゃになる。まずは今回の問題のきちんとした処方箋を出すことが必要だ。
(6)「年金事業機構」
総理もやる気のある人しか残れない機構だと言っていた。我々民主党も、国税庁に社会保険庁を吸収合併する歳入庁構想を発表しているが、これも同様にやる気のある人しか移れないということを申し上げ、辞令がある人しか残れないとしているが、二つのものが一つになることによって、管理職は半分で済む。ダブり仕事もなくなるということで、絶対的人数もわが党案のほうが少なくて済む。
そして今回、どのような法律がでているかというと、消えた年金問題の関連としては、時効撤廃法1本だ。我々は、消えた年金被害者保障法という、この問題を解決するための、口約束ではなくて、包括的な解決策を示す法律を成立させるべきと主張している。法律によって、確かな保障を実現すべきであると申し上げているところだ。
5000万件の統合の問題に限って申し上げても、記録が壊れている可能性が高いので、未統合として残ったと考えているので、5000万に対応する紙台帳を探して、そしてコンピュータのデータを正しくしていく。厚生年金であれば、カナで名前が入力されているので、紙台帳に書いてある漢字にする。まず5000万件のデータを正していけば、本人だと確定する方もたくさんいるわけであり、そのような作業をすると同時に、一人ひとりに、抜けがありませんかという聞き方ではなく、○○会社にいたことはありませんか、ということを工夫して示していくべきだ。
今の話は、我々の抜本的解決策とも関係するが、すべての埋もれた紙台帳、マイクロフィルムも含めて、すべてとコンピュータとを照合して、データを徹底して訂正することが重要だ。そのときの紙台帳の突合せの優先順位は、5000万件に対応する紙台帳からにする。これが何よりも欠かせない。自分たちの記録がぐちゃぐちゃにもかかわらず、お客様である国民の皆様に、あなたは払ったのか、払っていないのか証明しなさい、第三者委員会に来なさいというような扱いではなく、まず自らのデータを正していけば、お呼び立てするまでもなく見つかることも多くある。
そして、もっとも重要で我々も再三再四質疑しているが、この紙台帳との照合でデータを訂正することについて、一切期限を出さない。また、もし1年で紙台帳とコンピュータを全部照合してデータを直すようなことをするとすれば、人・モノ・カネはどのくらいかかるのか。試算するように申し入れもしている。これをまず出してもらい、国民の皆様の前で、実現できるかできないか言ってほしい。私は政治的決断で実現すべきだと思うが、申し入れについては一切答がない状況だ。
同時に、臨時措置として今月から1億人に納付記録を第一便として送るべきである。その次には、特定の制度の集中調査ということで、特例納付はもとより、厚生年金の脱退手当金でもかなり多くの被害の相談があるので、この調査も欠かせない。あるいは、厚生年金基金のうち、10年未満の短期の脱退者の記録がどうなっているのかなど、問題が多いところの調査も欠かせない。同時に申請主義の見直しについても政府としても取り組んでいただかなくてはいけない。そして、被害者データベースを創設する。今、完全に記録が消失したケースとしては、昨年8月〜12月までの55件しか公表していないが、今年に入って判明した分も公表すべきだ。
最後に、総理に決定的に欠落しているのは、安部総理自身の不作為責任についてどう考えているのかということだ。松本政調会長からもあったが、他人事のように、社会保険庁はとんでもないと言っている。今年1月から、政調会長や私が質疑をしたところ、「年金に対する不安を煽る」、「ほとんどの記録は正しいので1億人に送付するのは非効率だ」と言われる。5月にも、「不安を煽るな」というような答弁があった。
しかし総理は、質問主意書の答弁書によると、昨年の暮れにこの問題を知ったと答えており、そうだとすると、この一連の質疑は知っていながらこのような答弁をしたとすれば、これは大きな不作為責任が問われてしかるべきである。総理自身もそれに対する釈明もしなくてはならないし、あるいは、報告は受けたが重大性に気づかずに答弁したとするなら、危機感のなさが現れている。
■ 質疑
問:年金記録の送付について、政府が今すぐに送ると言えない理由は何だと思うか。
答:<山井>推測だが、58歳通知でほぼ9%の方が違うと言って返事をしている。おそらく、全体でも9%くらい間違っている。受給者ではなく加入者に送ったら、何百万人単位で違うということが明らかになり、この間、政府・与党はそんなにたいした問題ではないと火消しに躍起になっているところに、いま照合しないままに送ると、大混乱になってしまうというのが本音ではないか。
裏返せば、だからこそ我々は緊急事態宣言でいまあるものを送って、違うものがあれば教えてほしいと言ったほうが確実だと言っている。1年間、社会保険事務所に行ったり電話したりしなくてはいけない。非常に不親切な先延ばし以外の何者でもない。
また、なぜ昨日の決算行政監視委員会を安部総理は逃げたのか。照合を12月まで前倒しするとか、1億人に来年送るなど、一方的に言うのは総理も耐えられる。しかし長妻議員から、肝心の統合はいつするのかと質問されると、バンザイになってしまうので、逃げていると推測している。
問:総理の演説全体を通して焦りを感じたが、率直な第一印象を。また、今回政府が出したものは、2ヶ月前倒しなど小さいものであり、このような姑息なやり方をどう思うか。
答:第1点は、焦りというよりは、おそらく何らかの振り付けを受けて話をされたのかと思う。年金の問題にしても、内容について言葉は覚えたのかもしれないが、それでも幾つか違うのではないかと思うところもあったし、真摯に訴えるものが感じられなかった。年金の記録の問題をあれだけ長く語られるのであれば、本当に困っている方々に対する思いとそれに対する解決への意気込みは伝わってこなければならないと思うがまったくなかった。
その背景には、おそらく姑息なものを言い立てるしかないということが実態としてはあるのだろう。自民党、与党の方々なのか、官僚なのかわからないが、これまでのその場しのぎのやり方が本当に通用しなくなった状況にきているのだろう。
ぜひ思い出してほしいが、例えば、牛肉のミートホープ社の問題でも、5年前のBSE問題のときから食品表示について取り上げられてきて、我々も根底の問題としてこの厳格化についてずっと訴えてきたし、今回の10本柱の中にも書いた。これも結局、BSEのことでその場しのぎで、本質の本格的な食品表示の問題に取り組まないまま推移している。こういうことをうやむやにさせることの延長線上が、とにかくこの選挙を乗り切ればということで、本質的な解決にならなくてもやっているというポーズだけ出されたということではないかという気がしている。
以 上【発信元】 民主党政策調査会事務局政調広報係
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