NPO活動の促進のための税制改正案要綱骨子
民主党NPO委員会
■はじめに■
価値観が多様化し複雑化した現在の社会において、公益的機能を担う民間非営利・公益セクターの役割の重要性は今後ますます増大してくる。そこで、特定非営利活動法人(NPO法人)については、市民のニーズに合致し、新しく多様できめ細かな社会的サービスを供給する主体として、また、市民による自由な社会貢献活動として、その育成を支援する必要がある。各国とも、非営利セクターに対しては、法人格付与と税制支援策を採っているが、わが国では、法人格の付与が先行し、税制支援策が未だ確立していない。多様な価値観を認め合う市民社会を実現するためにも、速やかにNPO法人に対する税制支援策を導入すべきである。民主党は、特定公益増進法人制度とは別に、今後の発展が期待されているNPO法人の活動を、税制面からも適切に支援すべきであるとの観点から、客観的な基準により多くのNPO法人が税制支援策を受けることができる制度として、この提案をとりまとめた。
■法案の内容■
第一 法人税関係
1 適格特定非営利活動法人等(仮称)の認定
(1)「適格特定非営利活動法人等」とは、事業の開始後1年を経過した民法法人又は特定非営利活動法人のうち次に掲げる要件を満たすものとして、政令で定めるところにより、別に法律で定めるところにより設置される認定機関(国家行政組織法上の3条機関)の認定を受け、かつ、その認定を受けた日の翌日から3年(初めて認定を受けたものにあっては、2年)を経過していないものをいうものとすること。
◆収入要件
- 市民からの会費・寄附金、財団や基金からの助成、政府・自治体・国連機関等からの補助金の合計が全体の収入(ただし、不特定多数を対象とした特定非営利活動による事業収入を除く。)の3分の1以上を占めること。
ただし、特定の個人・法人による寄附については、カウントの上限を設ける。
◆支出要件
- 特定非営利活動に対する支出が、支出全体の75%以上であること。
◆活動要件
- 法人がその法人の役員等(社員、その親族を含む。)
に対して、金銭の貸付け、資産の譲渡、財産の運用、事業の運営等について特別の利益を与えないと。
- 資金源、資金募集プログラム、事業内容、有料サービスの料金体系、サービス提供要件等が、団体の目的や不特定多数性(主たるサービスが一般に開かれていること)に適合すること。
◆情報公開要件
- 役職員の給与(それぞれ上位5名)の公開
- 資金源、資金募集プログラム、事業内容、有料サービスの料金体系、サービス提供要件等の公開
<論点>
- 収入要件から除外する「大口寄附」の基準は、どうするか。
- 資金源の公開と、寄附者のプライバシー保護とをどう両立させるか。
(2)認定機関は、(1)の認定に関し必要があると認めるときは、国又は地方公共団体の関係機関に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができるものとすること。
<論点>
〇「認定」に関しては、
- 具体的な認定方法(書面審査か、あるいは、実体審査まで踏み込むか)
- 具体的な認定のために必要な調査について、既存の行政機関を利用することを考えるのか。
- 認定機関自身は、どの程度の規模(委員の数、独自の事務局職員の数など)のものを想定するのか。
等の問題を考えておく必要があろう。
2 適格特定非営利活動法人等に対する寄附金
一般寄附金の額の合計額に算入しない寄附金の額に、適格特定非営利活動法人等に対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金の額の合計額を加えるものとすること。
※(参考)改正の結果、一般寄附金の額の合計額に算入しない寄附金の額は、普通法人の場合、現行の特増枠と合わせて、所得の金額の100分の2.5まで。
3 適格特定非営利活動法人等に係る寄附金の損金算入限度額の特例
特定非営利活動法人のうち適格特定非営利活動法人等であるものが支出した寄附金の損金算入限度額は、法人税法の規定にかかわらず、当該事業年度の所得の金額の100分の50に相当する金額(当該金額が年100万円に満たない場合には、年100万円)とするものとすること。
4 みなし寄附
適格特定非営利活動法人等がその収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなすものとすること。
5 適格特定非営利活動法人等の収益事業に係る税率
特定非営利活動法人のうち適格特定非営利活動法人等であるものの収益事業から生じた所得に係る税率については、公益法人等の場合と同じ税率とするものとすること。
(参考)適格NPOの収益事業に係る税率(括弧内は、負担軽減措置法による税率)
(現 行)所得金額が年800万円以下の金額…………25%(22%)
↓ 所得金額が年800万円を超える金額………34.5%(30%)
(改正後)一律、25%(22%)
6 適格特定非営利活動法人等に係る収益事業の特例
適格特定非営利活動法人等が行う事業のうち、実費又は著しく低額な料金で行われるものについての法人税法の規定の適用については、同法に規定する収益事業に該当しないものとすること。
第二 所得税関係
1 適格特定非営利活動法人等に係る利子等の非課税
特定非営利活動法人のうち適格特定非営利活動法人等(※法人税法上の「適格特定非営利活動法人等」と同様の要件)であるものが支払を受ける利子及び配当等については、所得税を課さないものとすること。
2 特定寄付金に係る寄付金控除
- 特定寄付金の額の合計額に、適格特定非営利活動法人等に対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄付金の額の合計額を加えるものとすること。
- 居住者が特定寄付金を支出した場合における寄付金控除について、現行の「1万円を超える金額」という制限は廃止するものとすること。
- 特定寄付金に係る課税の特例
(1)居住者が、特定寄付金を支出した場合においては、(2)の適用を受ける場合を除き、その合計額(その合計額がその年分の所得金額の100分の25に相当する金額を超える場合には、当該100分の25に相当する金額)を、その年分の所得金額から控除するものとすること。
(2)居住者が、特定寄付金を支出した場合においては、その合計額の100分の50に相当する金額(その金額がその年分の所得税の額の100分の25に相当する金額又は12万円のいずれか少ない金額を超える場合には、当該いずれか少ない金額)を、その年分の所得税の額から控除するものとすること。
- 3の(1)の所得控除又は3の(2)の税額控除は、年末調整の対象とするものとすること。
第三 地方税関係
1 適格特定非営利活動法人等に係る利子等の非課税
所得税法に規定する適格特定非営利活動法人等が支払を受ける利子等で所得税が課されないものについては、道府県民税の利子割を課することができないものとすること。
2 個人の住民税に係る寄附金控除
都道府県及び市町村は、個人が特定非営利活動法人に対して寄附をした場合における当該個人に対する住民税の課税について、条例で特別の定めをすることができるものとすること。
第四 施行期日等
1 施行期日
この改正は、平成〇〇年〇〇月〇〇日から施行するものとすること。
2 その他
その他所要の規定を整備するものとすること。
以 上