2006年5月9日(火) 戻るホーム民主党文書目次記者会見目次

小沢一郎代表 定例記者会見要旨

○代表のスケジュールについて
米軍基地再編:日本自身の世界戦略を持たないまま国民負担だけが強いられる重
 大な問題

政府の教育基本法改正案の「愛国心」表現について
参院選候補者擁立について/参院選候補者の代表自らの発掘について
代表の新しい著書について
代表就任1ヵ月を振り返って
国民投票手続法案について
終盤国会に向けた自民党の強行姿勢について
参院選での非自公との連携について
教育基本法改正と教育行政のあり方について

■代表のスケジュールについて

【代表】まず私の個人的なことで一言申し上げますが、昨日、就任1ヵ月ということで報道をいただいて大変恐縮していますが、その中で私の日常の活動について、皆さんもご存知かと思って敢えて言わなかったのですが、ご存じでない方もいるようなので申し上げますが、十数年前に心臓の疾患で入院し、それをきっかけに60本吸っていたたばこもやめ、お酒も3分の1くらいにしました。そして毎日のスケジュールについて、医者の忠告に従い、十数年ずっと守り続けています。これは知っている人も多いと思いますが、朝6時半から毎日散歩をすること、早寝早起きをすること、食事をしてすぐに仕事に取り掛からないことといった忠告を受けて、もちろん非常に国政上大事な問題が生じた時にはその限りではありませんが、日課としていえば、7時過ぎに散歩から帰ってきてから様々に、個人の趣味を含めて、ゆったりとした時間をとっています。昼の時間も同様です。

 したがってそれ以来、朝食会、昼食会、特に米国などで行われているワーキングランチ的なものは最も体に悪いものですから、失礼とは思いますが、どなた様に対してもお断りしています。会議の出席などについても、国政上、あるいは私の基本的判断に基づく重要なものについては、自分のスケジュールをずらして出席していますが、その判断によって昼食の時間にぶつかったものは欠席させていただいています。したがって、意図をもって報道されるのは致し方ありませんが、私の日常活動の十数年間、スケジュールはそういう形で行っていることをご理解いただきたいと思っています。

■米軍再編:日本自身の世界戦略を持たないまま国民負担だけが強いられる重大な問題

【代表】それからもう1点はまさに政治の問題ですが、国会も後半、まさに終盤になり、共謀罪の問題や教育基本法の問題、あるいは国民投票手続法案の問題、医療の問題等々、大きなというよりも私どもにとっては理解しかねる政府提案の法律が出される、あるいは出されようとしています。

 それはそれで、いま国対や幹事長の下で国会で議論されていますが、そういう法律案とは別の問題で、いま米軍の再編に伴っての日本側の負担の交渉が、グアム移転云々の60.9億ドルについて一応合意したようですが、いずれにしても3兆円ともいわれる日本側の負担が言われています。

 このことについては、私は日米関係の非常に大事な問題をはらんでいると考えています。それは金額の話を敢えて言おうとしているのではありません。いま日本ならびに米国のそれぞれの閣僚が、バラバラで勝手な言い方をしているのを見ても分かるとおり、特に我々としては負担を強いられる日本国民のサイドから見ると、日本がこの安全保障の問題について、どのような役割をしようとしているのか、日米間の役割分担はどうあるべきと思っているのか等々が全くないが故に国民に説明できないまま、ただ単に国民の血税によって負担だけが強いられている現状は大変な問題だと思っています。

 従来から言っているように、私は日米同盟が最も大事だという考えについて、私はそれは大事だと思っている一人であります。しかしながら小泉総理といまの日本政府の言っていることは、米国との関係では到底同盟国とは言えないような関係ではないかと私は思っています。日本自身の主体的な安全保障政策はもちろんですが、世界的なグローバルポリシー、世界戦略が全くないままに行われ、米軍再編という問題にあたふたと対応している状況は、本当に日本にとって悲しむべき実態であろうと思っています。

 したがって私は、議論の核心はお金の話ではなく、何らそうした考えや日米間の議論がなされずに国民の税金が使われていくところに問題があると思っていまして、これは終盤国会でも政府の姿勢を強く追及し、国会での論戦を挑んでもらいたいと思っています。昨日の代表代行と幹事長との会議でも、菅代表代行からもその趣旨の話があり、ぜひとも代表代行が先頭に立って頑張ってほしいと申し上げたところです。

<質疑応答>

■政府の教育基本法改正案の「愛国心」表現について

【記者】教育基本法の改正について党内でも議論が進められていますが、一方、政府案の「愛国心」について「国と郷土を愛する態度」という表現になっていますが、代表自身はこの表現についてどのようにお考えでしょうか。

【代表】言葉そのものについていろいろ言っても、言葉通りで言いようがありませんが、要はこれを含めて全てそうですが、日本の国と国民がどうあるべきなのか、という類いの理念とか理想像やビジョンの裏づけが何もなく、言葉だけで愛国心を、あるいは愛するということを字面に並べても、本当の意味で国を愛する気持ちが起こるものではない。これは個人の心の問題ですから、本当に家族や隣人、地域、そして祖国、そういうものをそれぞれの国民が自らの判断と気持ちで愛するようになるのが自然のあり方であって、そのためにはどうしたらいいかと。社会はどうあるべきか、政治はどうあるべきかを考えなければいけないということだと思います。

 形式的な物事は崩れやすい。皆さんが知っているかどうかは分かりませんが、「三軍も帥は奪うべし、匹夫(ひつぷ)も志は奪うべからず」。つまり本当に一人の人が心に抱いたものは、どのような権力をもってしても奪うことはできないということわざがありますが、郷土愛や祖国愛はそれぞれの心の中の問題ですから、そういう言葉や形式だけで生まれるものではない。これは最もそれが声高に叫ばれた戦前から敗戦へのかつての歴史を見ても分かる通りです。だから私はその意味で、いま我が党でもいろいろと議論している最中ですから、本当に自立した一人ひとりの国民と、そして一人ひとりの国民の中に郷土を愛し国を愛する気持ちが育まれていくような社会をつくるためにどうするかを考えることが大事だと思っています。

■参院選候補者擁立について

【記者】今日の常任幹事会で、来年の参院選で1人区を中心に候補者擁立を加速させることを決めたと思いますが、1人区で民主党が獲得できる目標数があれば、お聞かせいただきたいのですが。

【代表】記者の皆さんが言う目標については変な意味にいつも使われるので分かりませんが、そして具体的にまだ候補者が決まっていないのだから何とも言いようがありませんが、選挙の目標は常に過半数。当たり前の話で、過半数を取れなければどうしようもないでしょう。常に過半数を取るために、1人区ではどのくらい取ればいいか、比例区ではどうか、複数区ではどうだ、ということで、皆で過半数目指して行う。それが選挙。

【記者】関連して、常任幹事会で前執行部の方針として、5月中旬に参院選の第1次公認を出す予定でしたが、今回まとめて出す方針を決めましたが、この2〜3ヵ月の間で未決定の1人区を中心に、非自公連携のため、他の野党との調整を視野に入れて2〜3ヵ月遅くなったということもあるのでしょうか。

【代表】そのために遅くなったということではありません。ただ、候補者をできるだけ揃えて、皆できちんと過半数取れる態勢でスタートしようということです。そして、もちろん以前から言っている通り、民主党で過半数を取れればベスト。しかし非自公、反自公の人たちとの連携で、よりそれが容易に達成できるとすれば、当然それをまた考えなければならない。

■参院選候補者の代表自らの発掘について

【記者】連休が明けたら1人区を中心とした候補者発掘に、代表自ら乗り出す考えを示していましたが、どのような形で進められるのか、意気込みをお伺いします。

【代表】日程をつくっているのは選対ですので、具体的にはそちらに聞いてください。いずれにしても、今度の土曜日にと思っていましたが、日程が入っていたので、月曜日から始まります。ただ5月中は私の前々からの日程が入っており、また私が行くにあたっての準備作業もありますので、今日また日程調整を選対と行いますが、本格的に週のうち何度も出るというのは来月からになるかもしれない。しかし可能な限り今月中も何箇所か行くところはあると思っています。

■代表の新しい著書について

【記者】代表選の立候補政見の中で、「日本改造計画」をさらに具体化させ新しい日本の設計図を国民に示すための著書を書いているとされていますが、それはいつ出されるのでしょうか。またそれが民主党の事実上のマニフェストになるという感じでしょうか。

【代表】いま基本的には出来上がっているのですが、あまりひどいものを出してはいけないので、いま読み直していて、いま6回目の推敲に入っているところです。1回ごとにあれこれ直したくなるので、なかなか時間がかかっていますが、出版物として出すことになると、まだ少し先かなと思っています。ただ、基本的な考え方、基本政策については、著書とは別の話ですから、9月までの任期ですので、その任期に向けて基本的な政策について簡潔なものは、党員の皆さんに提示することにしなければいけないと思っています。本そのものは、まだ先になると思います。

【記者】13年前と比べて中身は変わりましたか。

【代表】基本的には変わっていません。ただ、あの時はどちらかと言えばまだ総論的な部分でしたが、基本論ですが具体論にできるだけ踏み込んで、いま書いている最中です。

■代表就任1ヵ月を振り返って

【記者】代表就任1ヵ月ちょっとが経ち、振り返ってみて1ヵ月の間に千葉の補欠選挙で勝利し、一部の世論調査では政党支持率が自民党を上回る結果も出ていますが、この1ヵ月を振り返って、代表自ら自己採点すると何点でしょうか。

【代表】採点というのは他人が付けるもので、通信簿を自分で付けたらみんなオール「優」になっちゃう。それは皆さんが付けるものです。ただ千葉の補選にしても、またそれを契機として、皆が一生懸命力を合わせればできるのだ、自民党に勝てるのだという認識を皆が持ってくれたとすれば、民主党の将来にとっていいことだと思いますので、そういう気持ちで今後も全員がそれぞれの部署で、全力で頑張る態勢を維持していきたいと考えています。

■国民投票手続法案について

【記者】冒頭に代表から終盤国会の課題について話がありましたが、国民投票手続法案について、これはまだ与党側と民主党側との相違点があり、自民、公明、民主3党で協議を続けていますが、それに目途をつけ今国会中に法案を必ず提出すべきとお考えなのか、あるいはそれにこだわらずに調整を続けるべきか、どうお考えでしょうか。

【代表】私は3党の共同提案というのにはあまり賛成ではありません。手続法のことですから、それほど目くじら立てる話ではありませんが、もっと早く最初から整備しておけばいい話で、そのこと自体はそれとして、一方で党としての意見や主張があるわけです。その他の事項についても行えるようにするとか満年齢についてなど。そういうことについて、要は政府・与党がどうするのか、ということではないですか。私どもは私どもの考え方で、それに対応すればいいと思います。

■終盤国会に向けた自民党の強行姿勢について

【記者】自民党の青木・参議院議員会長が今日の役員連絡会で、多分、教育基本法や共謀罪などの重要法案を念頭に置いていると思いますが、衆議院で3分の2の勢力があるのだから、やるときはやらなければならないと述べ、採決などで強硬手段も辞さない考えを示しましたが、こうした自民党の姿勢について代表はどのようにお考えですか。

【代表】自民党の姿勢についての感想は別にありません。自民党は自民党の考えでやればいい。そして衆議院では3分の2の勢力があるのですから、間違いなく多数決を行えば、無理やりやれば通る話です。

 要は、いま先ほどにもありましたが、共謀罪にしても、国民の基本的人権に深く絡む法案ですよね。教育基本法も、その背景には本質的問題を含むものでもあります。そういう点を、きちんと本質的な基本的論議をすべきというのが我々の主張です。しかし我々は少数ですから、あとは自民党次第。そして自民党が議論を省略してでも多数で通すのだとすれば通りますが、その結果の判断は主権者たる国民が行うということです。

■参院選での非自公との連携について

【記者】参院選の話に戻りますが、非自公連携で例えばの話で、国民新党の綿貫代表がいる富山や亀井久興幹事長がいる島根など、あのあたりを連携すべきポイントとしてお考えか、お聞かせください。

【代表】それはそういうことも当然視野に入れて行わなければいけないと思います。
だから先ほども申し上げたように、ベストは民主党で過半数を取ることですが、しかしそれが難しい、もしくはいろいろな人と協力したほうがやりやすい場合には、そういう選択肢も当然考えていかなくてはいけない。

■教育基本法改正と教育行政のあり方について

【記者】教育基本法についてですが、愛国心ばかりが取り上げられていますが、教育専門家などは、改正によって行政が教育に介入するという危惧を持ち、廃案に持ち込むための運動を始めようという話もありますが、民主党の考え方についてお聞かせください。

【代表】民主党の考え方は、いま西岡武夫座長の下で、昨日も夜遅くまで議論したそうですし、今後も今週いっぱい議論を続けて、皆で議論して良いものをまとめきれれば一番いいと思っています。

 いまの教育のシステム的な話をされましたが、日本の教育行政の面から取り上げれば、非常におかしな格好になっているのです。それは占領行政のおかしなものの1つのものなのですが、質問された記者さんも皆さんも、教育の最終権限は文部科学省が持っていると思っているでしょう。しかし、文部科学省ではないです。いまの法制度の中では文部科学省は権限がないのです。これは戦後の占領政策の中で、教育委員会が全ての権限を持つようになっていて、その権限が列挙されているのです。しかしそれと同じ法律で、後ろの方に「文部科学省は助言と指導ができる」という文言があり、あくまでも「助言・指導」なのですが、助言・指導できる内容は全く同じなので、非常におかしな、無責任な仕組みになっているのです。だから市町村の教育委員会は「文部科学省の言う通りにやっているだけだ」と言う一方で、文部科学省は「私らは最終責任者ではない、指導・助言しているだけで、あとは彼ら(教育委員会)がやっている」といって、誰も責任を取らない。そういう仕組みになっているのです。

 いま党の意見はまとめていますが、私個人の意見は、その特に義務教育について、教育委員会も地方も国も、誰も責任を取る者がいないという今の教育行政のあり方はおかしいと思っています。しかし、それと同時に教育の中身について、いろいろと話すと長くなりますが、もっと地方の独自性と自立を行政的にも認めるべきというのが私の主張ですから、アメリカやヨーロッパでは州によって様々で、日本の場合は統一的ですが地域によって独自のものもありますが、中身については広く地方の自治体にそれぞれの地域や伝統文化といったものを踏まえながら、教育内容を地域の人たちで決められるような形にしたいと思っています。

 しかしそれを行うには、いまの中央集権的な霞ヶ関の支配体制を壊さないとできません。日本のマスコミからは、私は「壊し屋」と言われていますが、古いものを壊さないと新しい家も建てられないでしょう。当たり前のことですが、そう言われて若干不本意なんですけどね。とにかくそういった無責任な仕組みは、「壊す」という言葉が嫌ならば、そういった仕組みは「やめて」、新しいものを「創造する」。
そういうことが必要です。

 「改革」とか「革命」というのは、一部のところを行っても駄目で、だから私は全体として1つのビジョンがなければ駄目だと言っているわけで、そういう意味で、本当に教育問題を考える時には教育行政を、そして教育行政を考えるということになると今の中央集権の行政機構を直さなければならない。大変な革命的改革になるけれども、それを伴わずに一部だけ直そうとしてもできないのです。だから「嘘っぱちの改革」になってしまう。本質を直そうとしない、基本を変えずに小手先だけで化粧直ししようとしているから、何も改革にならないのです。

編集/民主党役員室


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