2006年5月30日(火) | 戻る/ホーム/民主党文書目次/記者会見目次 |
小沢一郎代表 定例記者会見要旨
○インドネシアにおける大地震について ○国会閉会後の民主党の活動について ○雇用環境の現状認識について ○米軍再編に関する基本方針の閣議決定/社会保険庁改革法案について /参院選1人区行脚について ○靖国問題について ○終盤国会における政府・与党の姿勢について ○憲法について ○来年の参議院選挙の達成すべきラインについて |
■インドネシアにおける大地震について
【代表】インドネシアのジャワ島での大きな地震で、多くの方が亡くなり、被害に遭われています。このことについて、まず心からお見舞いを申し上げたいと思います。民主党としても、できることは限られてはいますが「ジャワ島地震救援対策本部」を設置し、できる限り被災地の再建、また被災者の皆さんのために支援をしていきたいと思います。
<質疑応答>
■国会閉会後の民主党の活動について
【記者】今国会について延長されない見通しですが、国会閉会後、自民党は総裁選に向けて活動が活発化するかと思いますが、民主党はどの点に力をおいて、どのような活動をするか、お考えを教えてください。
【代表】既に始めていますが、そして国会が閉会すればなおさらですが、来年の参議院選挙に向けて、候補者の選定・擁立など様々な活動を、国会が終われば議員は皆それぞれの地域に帰るわけですから、各地域でさらに精力的に活動してもらいたいと思っていますし、私もなおいっそう力を入れたいと、そう思っております。
あとは私がいつも話していることですが、そうした選挙あるいは政治活動と同時に、民主党も9月に代表選がありますから、それに向けながら、党の基本的な政策をきちんと確立する作業を進めていきたいと、個人としてそのように思っています。
■雇用環境の現状認識について
【記者】きょう発表された4月の完全失業率が4.1%と3ヶ月連続横ばいで、有効求人倍率も前月を0.03%上回るという形で、数字の上では小泉政権下で雇用環境が改善しいるような形になっていますが、ただ一方で正規、非正規、格差の問題があります。こうした雇用環境をめぐる現状について、代表はどのように見ていて、問題はどこにあるかとお考えかという点と、来年の参議員選挙に向けて、民主党としてこれからどのような点に着目して訴えていきたいか、お教え下さい。
【代表】トータルの数字とすれば、いまご質問にあった雇用関係の数字も、あるいは全体の経済関係の数字も良くなってきていると言えるのだろうと思いますが、ただ、その中身を検討してみると、敢えて何度も繰り返すまでもなく、雇用でいえば非正規の社員が以前よりはるかに増えてきていることや、旧来の安定した、日本の言葉で言えば「終身雇用」という仕組みが崩れつつあると。あるいは能力主義という中で「年功序列」という仕組みも崩れつつあると。この2つとも、私流に言えば、良し悪しはありますが、日本人が日本的な風土や考え方の中で作りあげたひとつの雇用に関するセーフティーネットであると思っています。そういう意味で、経営者も、あるいは労働者、そして労働組合も「時の流れだから」という感覚でやっているということは、どちらにとっても私はこのままそのような傾向になることは良いことではないと思います。やはりセーフティーネットはセーフティーネットとしての位置付けをきちんとしながら、その上でいかに効率的な経営を目指すかを考えるべきだと思いますが、いずれにしても、そういった問題点があると。
そして言うまでもなく、個人の収入面でも同様、都市と地方の格差でも同様に、どちらかといえば平等を旨とした日本的なコンセンサス社会の仕組みが非常に崩れかけている。あるいはそれ以上に歪みやひずみが現れつつあるというのが、私は小泉政権下での経済・社会の状況だと思います。
ですから我々が来年の参院選で国民に訴えるとき、「自由」というかけがえのない基本的な原則と同時に、皆が安心して生活し人生を送れる仕組みであるセーフティーネットをどのように構築し、組み合わせて、活力ある社会をつくるかをきちんと示すことが大事だと思います。私なりに具体的な考え方をまとめつつありますが、党としても、そういったトータルのビジョンを、自民党が示し得ないビジョンをきちんと示すことによって、初めて国民の大きな期待と理解が得られると、私はそのように思います。
■米軍再編に関する基本方針の閣議決定/社会保険庁改革法案について/参院選1人区行脚について
【記者】きょう米軍再編に関する基本方針が閣議決定されましたが、普天間の移設先や経済振興の財政措置など具体的なことは記されていないのですが、この閣議決定についてどう思われますか。また社会保険庁の改革法案に関して、小泉総理が審議を進めていけば会期中に成立することは可能ではないかと言った上で、改革潰しの動きに対して批判的なこと、いわば民主党を批判するような発言をしていますが、それについてどのように思われるか。そして参院選1人区行脚について、今後、高知や佐賀を回るようですが、当初は6月は連日のように回るという話だったと思いますが、少し間隔が開いているのは、調整が当初より遅れているという捉え方でいいのでしょうか。
【代表】米軍再編について、具体的に住民に直接関係する問題等が閣議決定に全く入っていなかったという今の指摘ですが、そのような閣議決定であなた方は評価するのかどうかという問題です。要するに、住民の意向とは別に、アメリカの軍事戦略を受け入れ、認めるという方向性が大事だということであり、それが優先しているのでしょう。それと同時に、国民生活に関することは、いつもの通りに曖昧で先送りするということです。
いつも私が話しているように、日本自身がグローバルなポリシーや主張があった上で、アメリカとの共同作業、役割分担をするということであるならば、その賛否は別として、それはいいとは思いますが、自らの考え方はなくして、ただ早くアメリカの言うことだけ受け入れていくような類いの日本政府のあり方は、日本国民からも、また多分アメリカ政府からも、心からの信頼を得られない。それは私がいつも言っている通り。当面の利用価値はあると思われているかもしれないが、本当の同盟国として扱われることは、今のままでは決してないだろうと思います。
社会保険庁の問題についても、どこがどのように「改革」になっていますか。今度の社会保険庁の問題も、一現場の人だけが悪いということではないでしょう。今の役所の体質や仕組みがおかしいということです。納付率が悪いのは、やはり今の仕組みできちんとした給付が果たしてなされるのだろうかという心配もあるし、様々なところに考えをめぐらせなければならいと思います。
特に社会保険庁云々ではなく、役所から出されてくるものは、既存の役所の仕組みと権益を前提に出されてきているわけで、「改革」という言葉に値するものが出てくるはずない。それは自分自身の今までの様々な既得権を失うことになるのですから。だからそのようなものでは駄目だと言っているのです。法案の中身は細かく読んでいませんが、読んでいなくても分かります。
そして、1人区の調整についてですが、それはあなたの予想以上に着々と進んでいます。
■靖国問題について
【記者】靖国問題でお聞きしますが、遺族会や経済団体がこのところA級戦犯の分祀について発言をしていますが、どのように評価をしていますか。また代表のお考えでは、戦争責任のある人を名簿から外すことが解決の方法だと私は理解していますが、靖国神社は宗教上できないとしています。この靖国神社側の主張についてどう思われるのか。そして以前、代表は総理になったらすぐこれはできると発言していますが、靖国神社が反対する中で、どのような手続きで実現しようとしているのか、お聞きします。
【代表】全て似たような質問ですが、私の基本的考えは、靖国神社は、神社という形態をとることはどうかといった議論もありますが、それは別次元の話として、靖国神社というのは、戦争で傷つき、亡くなった人を祀るところだということです。私は「戦犯」という言い方は必ずしもしませんが、日本の戦前の戦争を国策として立案し、指導した人たちの責任は非常に大きいと思っており、それは日本国民に対する責任、その他の外国の人たちに対する責任、両方を含めて非常に大きいと思います。その重要な役割を演じた人たちが、いま靖国神社に祀られていますが、彼らは戦死ではないわけです。もちろん自然死でもないのですが、戦死者を祀る靖国神社に、そうでない理由で死に至った人を祀ることは、本来の靖国神社のあるべき姿ではないと思っています。当時のいろいろな政治的な力関係によって、その人たちも祀ることになったのだと思いますが、私はそれは間違いだと思います。ものすごく分かりやすく言えば、天皇陛下も堂々と参拝のできる本来の靖国神社にすべきであると思います。総理はどっちでもいいですが、天皇陛下も以前には参拝しておられたわけですから、そういう本来の靖国神社にしなければないと思います。
それから、靖国神社の神主さんらが反対しているそうですが、それはすぐ説得できます。言葉できちんとね。
■終盤国会における政府・与党の姿勢について
【記者】終盤国会について、会期末まであと3週間ですが、与党は教育基本法案など、重要な法案を次々と出してきていますが、一方で社会保険庁問題や共謀罪といった、議論が足りない法案が残る中で、総理は今日改めて「延長しない」と明言しました。こうした政府・与党の姿勢についてどのようにお感じでしょうか。また民主党として、終盤国会どのように臨んでいくお考えでしょうか。
【代表】政府・与党としていま言われたような法案は提案されていますが、多分、総理ご自身はそれほど関心がないのではないでしょうか。あとは政治的に、在任最後にあたって、ご自分が、どう行動したら良いのかといったところに関心が移ってきているのではないでしょうか。我々としては、政府提出の法案について、どれもろくなものではないと思っていますが、ここは私も判断しかねるのですが、政府が共謀罪について、国際テロ云々という理屈で、これを本当に通すと小泉総理自身が思っているかどうか、ちょっと分かりません。アメリカとのこともあるかもしれませんし、それは私も分かりませんが、それをやろうとすると、総理の描いている格好の良い終わり方にはあまりならなくなる可能性もあるし、法案の中身というよりも、あとは彼自身の政治的な判断にかかっているから、よく分かりません。
■憲法について
【記者】憲法について、ハーバード大学のライシャワー研究所所長ケント・カルダー氏が来日しています。特派員協会で先週講演を行い、その中で日中関係の悪化を懸念されていて、靖国問題は国内問題ではなく国際問題であるということを話していました。それに関連して憲法改正のことを述べられましたのですが、今憲法を変えると、アジアとの関係が悪くなるのではないかと、自分(カルダー氏)としては解釈論で目的をクリアーできるのではないかと述べており、わざわざ憲法を改正する必要はないと述べられましたが、どうお考えですか。
【代表】何度も申し上げるように、日本国憲法は、日本国民が安全で安定したより良い生活を営むためのお互いの約束、最高のルールですから、時代が変わり、環境が変わり、条件が変わって、その目的のために変えたほうがいいということであれば、みんなで素直に変えればいいと。それはアメリカも中国も、直接には何の関係のないことだと私は思っています。
ただ憲法というと、9条だけがまず頭の中で出てくるわけですが、憲法は9条だけの問題ではありません。あらゆることを定めていますから、いまの状況で非常に不都合な条文になっているところもあります。例えば、参議院改革を言うときにも、衆議院の場合もそうですが、憲法をいじる以外ありません。いろいろな意味で、何かおどろおどろしいような、大上段で振りかぶって護憲だ、改憲だと殴りあうような話ではないので、お互いのためにここは変えたほうがいいということで合意できれば、変えればいいと私は思っていますから、もう少し素直に自然に憲法論議がなされればいいのではないかと思います。そうすれば、絶対に中国も誤解をしたりはしません。その心配はないです。
■来年の参議院選挙の達成すべきラインについて
【記者】来年の参議院選挙ですが、達成すべきラインとしては、どのくらいになるのでしょうか。
【代表】多ければ多いほど良いさ。志は高く、全部取れれば一番良いし。そういう意味で、最小限は自公の過半数割れに追い込むということを最大の政治的な参議員選挙における目標として、テーマとして、全力を挙げる。あとは多ければ多いほどいいということです。編集/民主党役員室
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