2006年11月21日(火) | 戻る/ホーム/民主党文書目次/記者会見目次 |
小沢一郎代表 定例記者会見要旨
○沖縄県知事選挙の結果と今後の課題 ○防衛庁の省昇格法案について ○沖縄知事選での野党共闘について ○安倍総理の集団的自衛権の見直し論議について ○国会運営の対立軸路線について ○アメリカ中間選挙による日本への影響 ○自民党の郵政造反組復党への動きについて |
■沖縄県知事選挙の結果と今後の課題
【記者】沖縄知事選挙について、糸数候補は4万票の差で届きませんでしたが、それについての受け止めと、今後の課題について、お願いします。
【代表】みんな一生懸命やってくれましたが、結果的に及ばなくて残念でした。
沖縄の問題だけではありませんが、やはり地方選挙、競り合い、その2つの要素になると、どうしても基盤のないところは競り負けてしまう。だから民主党の課題としては、きちんとそれぞれの地域に根の張った基盤を、それぞれが作り上げていくことが大事だと思っています。
■防衛庁の省昇格法案について
【記者】国会の対応について伺います。衆院の安全保障委員会で、防衛庁の省への昇格法案が審議されていますが、これについての賛否について、代表としての方針をお聞かせください。
【代表】個人的見解であれば言いますが、党としていま議論しているところですから、そうした時に私の方針として話すことは、あまりよろしくない。全く個人的には、そのこと自体は反対ではありません。ただ防衛庁は、自分たちの体裁を繕っていられるようなことをちゃんとしているのかと。国防の任にあたる役所が、刑事事件をしょっちゅう起こしているようでは、「省にして下さい」とかいう資格がない。もう少し、防衛庁の制服組もそうですが、内局もしっかりとしないとだめですね。私の個人的な感じです。
【記者】法案の賛否について、党議拘束をかけるべきとお考えですか。
【代表】党議拘束というのは、かけるとか、かけないとかではないのです。国会の中で個人でばらばらだったら、党を作る必要ない。みんな個人でやっていればいい。国会の会派というのは、基本的には決めたことはその通りやるからこそグループなのでしょう。アメリカやイギリスでは党議拘束がないという人もいますが、そういう言葉遣いをするかは別として、基本的には当たり前のことなのです。ただ、こういう問題については、「自分は党の一員だけれどもこうだ」という人が中にいて、それがその国の社会通念上、それもさもありなんと認められるかどうかの問題だ。だから記者の皆さんも言葉ばかりで遊んでいてはいけない。基本原則を良く理解しないと。
【記者】関連して、国民に対立軸とか民主党が一丸となってやっているという意味でも、防衛省への昇格法案の賛否が問われた場合には、一致して賛成なり反対なりでまとまるべきだというお考えでいいのでしょうか。
【代表】本質的に会派を作って政治活動をやっているわけだから、党として議論して、結論が出たらそれに従うのは当たり前のことだ。「べき」とか「べきでない」とかいう話ではなくて、そうでなかったらグループや党を作る必要ないでしょう。同じような考えを持った者がグループとして、その中で1つ1つの問題について議論して、こういう考えで皆で行こうと決めたら、一応それは党としてグループの構成員もそれを認めていかないと。もっと大きく言えば、国会で法律は通ったけれども、俺は反対したから守らなくてもいいという話にも理屈としてはなりかねない。反対の人でも何でも国会で通ったらしょうがない。だからそれとは基本的に違うけど、政党とか会派というのはもっとプライベートなフリーな関係だけれども、原則的にはそういうことだろうということです。
【記者】以前代表は、閣僚による核保有の発言について、そうした発言について精査されないままで防衛庁の省昇格というのはいかがなものかとおっしゃっていましたが、それについては今も変わりませんか。
【代表】同じです。それは汚職だ刑事事件だということも大変なことですが、核武装の論議というのは、まさに日本の命運を左右するくらいの大きな問題ですから、それを「非核3原則は守ります」と言っておきながら、「議論するのはいいではないか」と閣僚が発言するというのでは、誰からも非核3原則を守っていくというふうには取られなくなってしまう。防衛庁長官が言ったわけではないでしょうが、安倍内閣として、そこは閣僚はきちんとけじめをつけなければ。外からどうとられているか、記者の皆さんも分かっているだろう。アメリカでさえ「何言ってるんだ、この日本人は」という感じじゃないですか。
【記者】今般の政治状況では、防衛庁の省昇格は相応しくないという認識でいいのでしょうか。
【代表】省への昇格といった役所の体裁を整えるという類いと次元が違うということです。省へ昇格することは、私はずっと前からその方がいいと言っているのです。けれども、それと全然違う大事な問題をなおざりにして、体裁のことだけ無理やり通そうということでは駄目だと言っているのです。
■沖縄知事選での野党共闘について
【記者】沖縄の知事選の結果を分析してみると、野党共闘を代表は強調されましたが、その結果、若干真ん中から右側の有権者が離れてしまったのではないかという印象があるのですが、今後の参院選を展望する時に、野党共闘することと、なるべくマジョリティーを取ることは、若干のジレンマがあるように思うのですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
【代表】ジレンマはありません。どちらがプラスか、というだけです。その判断です。ですから例えばいつも言いますが、社民党や共産党まで入った形というのは、いま君が言うように、そうではない人たちの票が逃げるのではないかという議論は常にあるわけだ。社民党や共産党と一緒に共闘というのでは違うのではないか、という人もいる。
けれども、二大政党として戦後半世紀にわたって対立してきた社会党の政権をつくって、何が何でも権力を奪回するとしてきた自民党が、現に政権をとっている。それをマスコミも国民も容認している。いいかげんと言えばこれほどいいかげんなことはないが、現実に、そのことは忘れ去られてしまっているかのごとき状況だ。
ですから、その良し悪しとか、日本の政治風土のレベルという問題があるのですが、現実にそうしたことを勘案しながら、野党としては、多数の国民の支持を得ていくにはどうしたらいいかを考えていかなければならないから、そういう意味で、例えば沖縄の選挙も全野党がまとまったことによって、右側の票が逃げたのではないかという君のいまの話だけれども、では民主党単独で取れるかという問題だ。
だからそれはいろいろなことを言うけれども、自民党は権力を取り返すために社会党の総理大臣をつくったという一事をマスコミは忘れたのですか、と言いたいのだな。半世紀対立してきた政党ではないか。それを権力奪回のために利用したわけだ。私はそういうつもりはありませんが、正面で選挙で勝つということを目標に頑張りたいと思っています。
■安倍総理の集団的自衛権の見直し論議について
【記者】安倍総理は就任当初、集団的自衛権の見直しの作業で懇談会を作りたいと言っていましたが、最近では懇談会設置は見送って水面下で勉強していくようですが、これについてどうお考えですか。
【代表】どう思うかは、本当は記者の諸君が判断する話だな。私は核の論議でも、集団的自衛権の話でも、ごまかしの手法はとるべきではないということが、私のあらゆることについての主張です。自分がこうと思うなら、正々堂々と議論し、国民に訴えればいいと私は思います。もし君の言が正しい事実だとすれば、どうも集団的自衛権を正面から取り上げると風当たりが強そうだから内緒でやろう、といった手法はよろしくない。特に与党、天下人としては、よろしくないと思います。
■国会運営の対立軸路線について
【記者】国会運営全般についてお伺いします。沖縄知事選で負けたこともあってか、党が意気消沈しているように見えますが、国会審議への復帰の見通しも見えつつある中で、今後も引き続き対立軸路線でいく方針なのか、お聞きします。
【代表】そんなことは当たり前のことで、沖縄で負けたからといって(方針を)変えますという馬鹿なことはないわけで、沖縄勝ったら、勝ちすぎじゃない。みんな勝っちゃったことになっちゃうくらいでしょう。沖縄も勝ったら(福島知事選、福岡市長選含めて)3つ勝ったという話でしょう。そうありたかったけれども、結果としては残念ながら沖縄は勝てなかったということです。党内、意気消沈しているの?誰かしてる?
【記者】あまり元気がないように見えますが・・・。
【代表】そうかね。私はそうは思わないよ。3つのうち2つ勝ったのだから。
【記者】やや政策本位というより知事選を見据えて国会運営していたようにみえますが、政策本位の対応がとれていないのではないか、というマスコミの指摘もありますが。
【代表】政策をいま政権政策委員会で基本政策をきちんと論議していることは知っているでしょう。来月中にきちんとまとめて打ち出しますから、もし具体的に政策にマスコミも興味があるなら、大々的に取り上げて国民に知らせてください。
■アメリカ中間選挙による日本への影響
【記者】中間選挙によってアメリカの政治の方向性が変わりつつありますが、それによる日本への影響はどのようなものがあるとお考えでしょうか。
【代表】アメリカの中間選挙の影響は、私自身がアメリカにいるわけではないので正確には分かりませんが、ブッシュ政権のアフガンに続きイラクへのやり方に対する国民の批判が高まったということで、ごく当たり前のことだと思います。
それと、やはりアメリカ社会は全体的に豊かですから、飢えたりすることはないですが、しかし貧富の差は非常に大きくなってきていると聞いています。したがって、そういう意味での国民の不満、それはかなり鬱積してきているのではないだろうかと思っています。アメリカン・ドリームというのは非常にいいことですが、しかしそれはただ単に強者の論理であってはならないのであって、私が主張しているのは、自由競争による要素は大事だが、同時に大多数の安定した生活を望む国民のそのセーフティーネットは、雇用の面でも、社会保障はもちろんですが、食料・農業の面でも、大企業や零細企業といった企業活動の面でも、皆が安定して生涯暮らしていけるようなセーフティーネットが伴わないと弱肉強食の世界になってしまいますから。
私はどこかに呼ばれたときに言ったのですが、動物というのは、肉食動物は獲物を殺して食べますが、お腹が一杯になれば絶対に殺生はしないわけです。ところが人間は本当にどうしようもない性を持っていて、どこまでも欲望を膨らませますからね。その意味ではちょっと動物を見習わないといけませんが、ですから、まるっきり制限なしの自由にしてしまうと弱肉強食の社会になってしまいますから、それであってはいけないと。やはり万物の霊長としての人間社会は、きちんとみんなで幸せを分かち合えるようにしないといけないということで、私は自由と同時に、いろいろな分野のセーフティーネットを作っていかないといけないと主張しているところです。
安倍政権というか、小泉前総理がブッシュ大統領の後を付いていって、それで日米同盟だと言っていたわけですが、後を付いて歩いているほうは困っちゃうのではないですかね。親ガメがこけちゃってどうしようという意味で、安倍総理も小泉前総理の政治姿勢を継承するということであって、私はそういうことがきちんとした議論と考え方に基づいて、その上で日本の国家戦略として決められた上で、アメリカとどこまでも、というのならまだ分かるけれども、とにかくアメリカの機嫌を損ねないように後から言われたように付いて行くといった類いのことでは、自立国家日本としての将来は非常に不安です。ですから、いまの内閣も、ブッシュ大統領がこけそうになっていて、非常にどうしていいのか分からないのではないですかね。その意味では内閣に影響はあるでしょう。
日本国民全体にどのような影響があるかは分かりませんが、ただブッシュ大統領の行ったイラク戦争などはやはり米国でも評判は悪いのだなとは感じるでしょうから、あとはそれが国内政治にどのような影響があるかは判断しかねます。
■自民党の郵政造反組復党への動きについて
【記者】自民党では郵政造反組の復党問題が加速していますが、こうした動きは代表の目から見て、国民の理解が得られるとお考えでしょうか。
【代表】得られるかどうかは選挙をしてみないと分かりませんが、とにかく自民党は何でもありなのです。その場その場で何でもやるわけだ。さっき言ったように、政権を奪い返すためには、社会党の総理大臣でも何でもいいという政党ですから、今度は政府の方針の郵政に反対した人は悪玉で、正義の味方小泉なにがしといってそれに賛同する人たちが選挙に出て、それがもてはやされた。だけど、どうも熱が冷めてみると、このままだと自分に不利だと。そう思えば、なりふり構わずだ。そういう政党なのです、元々。
ただ、そうした筋道の通らないやり方を何となく国民が許容してしまうというところが、日本の政治レベルだね。ですから、日本の議会制民主主義というものは、何とかして、我々の力で政権を代えて、議会制民主義とはこういうものだと国民の皆さんに認識してもらわないといけないと思っています。編集/民主党役員室
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