2003年1月18日 | 戻る/ホーム/民主党文書目次/目次 |
6.教育・文化・科学技術
【教育・文化】
学級崩壊や不登校、いじめ、学力問題など学校現場が抱える様々な問題に対し、現在の教育行政は有効な方針を示すことができずにいます。民主党は、従来の官主導の画一的な教育を改め、学びの現場からまず徹底的に検証し直し、地域や学校の個別状況に応じた学びの環境をつくり出すことを提案します。高等教育においては、改革を促すために国立・私立間の公平な競争を喚起し、効果的な研究支援システムを確立するとともに、意欲を持つ人が誰でもいつでも学べる機会を提供します。2001年に民主党が中心となって制定した「文化芸術振興基本法」を足がかりに、地域を立脚点とする芸術・文化活動の支援と伝統文化の保護・育成をすすめます。
中央教育委員会の設置
文部科学省のうち教育に関わる部局を廃止し、これに代わって独立行政委員会としての「中央教育委員会(仮称)」を設置します。国=「中央教育委員会」の役割は、各年齢段階の最低基準・基本方針を定めることに限定し、その他の権限は最終的に地方自治体が行使できるものとします。
学習指導要領の大綱化
地域・学校・学級の個別状況に応じて、学習内容・学校運営を現場の判断で決定できるよう、学習指導要領の大綱化と最低基準性の明確化を行い、現場裁量権を大幅に拡大します。また、高校の学習指導要領については速やかに廃止します。
「ゆとり教育」について
ゆとりであれ、詰め込みであれ、すべての児童・生徒に画一的な教育を行うことは問題があります。民主党は、文部科学省がすすめてきたいわゆる「ゆとり教育」を根本的に見直し、学びの現場からまず徹底的に検証を行い、すべての児童・生徒がそれぞれの可能性を開花できるような学びの環境をつくります。
少人数学級の実現
民主党は、「30人以下学級法案」を提出するなど一貫して少人数学級の実現をめざしてきました。学力問題や不登校、学級崩壊など学校現場での様々な問題に対応するためには、児童生徒の抱える問題を教師が把握でき、わかる授業を行う態勢にしていくことが重要です。民主党は、少人数学級を原則とする教育をめざします。
教科書検定・採択について
地域や子どもたちの個性に適した多様な教育を実現するために、教科書も様々な工夫を取り入れた多様なものが存在すべきであり、民主党は将来的に検定制度を廃止すべきと考えます。廃止の前提として、教科書採択にあたって保護者や教員の意見が確実に反映されるよう、現在の広域採択から市町村単位へ、さらには学校単位へと採択の範囲を段階的に移行します。このような分権的採択制度が確立されるまでの間、検定制度は維持しますが、検定過程は公開とします。
コミュニティースクールの設置
従来の公立学校に加えて、「コミュニティースクール」という地域のニーズに基づいて運営される、新しいタイプの学校が設置できるように法律を整備します。「コミュニティースクール」は、現在の小・中学生を対象とする学校で、各自治体が市民から公募した校長のイニシアティブの下に、保護者や地域住民の意思を取り入れながら運営されます。
体験学習の推進
子どもたちの自律性を引き出しながら、命をいつくしむ心、他者や自然と共生する知恵を養う機会をつくるため、体験学習を推進します。共同生活、職業体験、異年齢間交流、都市と農山村地域の交流、国際交流、自然体験、農業体験、社会奉仕体験など、子どもたちが自ら考えたプログラムを尊重しつつ、教職員、保護者、地域住民や児童生徒で構成する「学校運営協議会」がサポートする形で体験学習を実行します。
スクールカウンセラー制度の充実
いじめや不登校などの問題や、職業選択などの進路指導について専門的知識を持って児童生徒の相談に応じることができるスクールカウンセラーを全国の小学校、中学校、高等学校等に配置するため、必要な法整備を行います。
国立大学改革と支援のあり方
現在の国立大学は将来、地方立(公設民営など)や私立大学に移行することも視野に入れ、抜本的に見直します。大学教育に対する国の支援は、原則として民間のインセンティブが働きにくい基礎研究などを行う少数の大学院大学に限定します。研究開発のうち、短期的な市場価値は低いものの、学術的に必要な研究については、学校への支援ではなく、個別の研究プロジェクトに対する補助システムを導入して、その水準を確保します。
奨学金制度改革
大学生・大学院生に対する奨学金制度を大幅に改め、希望する人なら、誰でも、いつでも利用できるようにします。学費のみならず、最低限の生活費も貸与することで、いったん社会人となった人でも、また、親の支援を一切受けなくても、意欲があれば学ぶことができるシステムをつくります。新奨学金制度の普及にあわせて、大学・大学院そのものへの助成は、順次縮減します。
学校施設老朽化対策
児童生徒の学習・生活の場であり、震災時などの防災拠点でもある公立学校施設の4割以上が現行の耐震基準を満たしておらず、施設の老朽化による事故なども増加しています。民主党は、老朽校舎・危険校舎の改修を早急に進めるため、耐震診断の義務づけと補強・改築費用の補助のかさ上げを図る「公立学校耐震改修促進法案」を提出しています。
学校図書館の整備
子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにするうえで欠かせないものです。2001年に成立した「子どもの読書活動推進法」を足がかりとしながら、全国の学校図書館の整備・充実をすすめ、子どもの読書環境を改善します。
生涯教育の充実
技術の高度化、転・再就職の準備、地域活動のリーダー養成、教養講座など多様な教育ニーズに対応する生涯学習社会を実現します。子どもから大人までが利用しやすい施設の整備、公民館活動の活性化、公立図書館の一層の充実を図ります。また、大学・短大を卒業し社会で働く人に、本人の希望で再び大学や大学院で教育を受けることができる制度(リカレント教育制度)を確立します。
統合教育・障害児教育の推進
学校教育において障害者と健常者がともに学ぶ機会を増やし、障害者への偏見をなくす「こころのバリアフリー化」をすすめます。このため、保育園・幼稚園の段階から小中学校教育まで統合保育・統合教育に取り組み、障害を持つ子どもと持たない子どもとの分離を前提とした教育を見直します。また、学校施設のバリアフリー化や弱視者用の拡大教科書導入のための制度改正など、障害者の視点に立った教育環境をつくります。
芸術文化活動への支援
人々の創造性や表現力、コミュニケーション能力を高めるうえで、芸術文化の振興は極めて重要です。民主党は、従来の文化ホール建設といったハコモノ中心の行政を改め、人材を活かす文化政策へと転換します。様々なジャンルの芸術文化に対する地域住民のニーズや取り組みに応えて、芸術家・専門家がソフト・マンパワーを用意できるように行政が支援していく地域住民主導型の文化政策をめざします。
伝統文化の保存・継承
日本の伝統文化を保存し、そのうえにさらなる新たな文化を創造する基盤を整備します。文化財の保護、地域に固有の伝統芸能・工芸の継承、教育における体験鑑賞など、文化・伝統を保護、育成するための環境整備を行います。
【科学技術】
わが国は20世紀、既存技術の改良・応用を中心としたいわゆるキャッチアップ型を中心とした研究開発で製造業の強い競争力を生み出し、成功してきました。しかし21世紀においては、情報通信、バイオテクノロジーなどに代表される時代の先端技術分野において、より独創的な成果を自ら生み出す国や企業でなければ国際競争のなかで勝ち残っていくことは困難です。科学技術政策の本質は「人」の育成です。今後継続して独創的な研究開発の成果を生み出していくためには、研究者の水準を質・量ともに向上させていく必要があります。民主党は「キャッチアップ型研究開発から独創的研究開発へ」「モノへの投資から人への投資へ」という視点に立ち、「科学技術で世界をリードする国」をめざします。
科学技術分野における行政改革
科学技術政策を戦略的に推進するため、各省庁の科学技術関係の政策立案権限・機能を分離・一元化し、総合科学技術庁を設置します。公的予算の配分は組織単位の補助金ではなく、研究内容そのものに着目し研究者単位での資金配分を行う競争的研究資金中心の制度に転換します。また、研究開発への客観的評価を徹底するために「研究開発評価法」を制定します。
人材の育成
子どもたちの理数科の基礎学力の底上げを図り、科学技術に対する適応力を高めるため、とくに初等教育において科学技術・理数に理解のある教員を拡充するなど、理数系教育環境を改善します。中等教育において創造力や論理力を重視した教育・学習を重視する環境を生み出すべく、大学入試選抜の改革を図ります。また大学改革を通じて「知的戦力」となりうる人材の募集、試験成績よりも知的創造力を重視した入学者選抜を行えるよう後押しします。
若手研究者の受け皿の確保
近年、名目上の「研究者数」の増加は見られるものの、進路に恵まれず研究から離れてしまっている状況が多く見られます。優秀な人材を育成しても活躍の場がなければ意味はなく、その受け皿となる大学・研究機関・企業の改革に着手するとともに、若手研究者の流動性確保を促進します。
TLOの強化
研究機関から企業へ研究成果を移転する試みとしてTLO(技術移転機関)の活用がすすめられていますが、多くのTLOが赤字に悩み、公的支援に頼っている現状にあります。技術移転対価の大学・研究者への還元を活性化し新たな研究成果を生み出す「知的創造サイクル」の要として、TLOの質的強化を図ります。
研究環境の改善
わが国の大学や研究機関の施設の手狭さ・老朽化はかねてから重ねて指摘されているところです。研究者の日常の研究の質的向上に向け、研究施設整備における場あたり的予算配分を改め計画的投資を行います。また、研究補助者の増員と地位の向上を図り、研究者が研究活動に専念できる環境を整えます。
科学技術政策の「選択と集中」
限られた財源を有効に活用するため、(1)今後20年程度に予想される観点、(2)さらに長期的観点の2つに分けて、それぞれ取り組むべき研究テーマを厳選し、公的研究資源を集中的に投入します。(1)としては、国民の生活を維持向上させるために必要な政策、次代のわが国の産業競争力のために有望なもの、国民の安全のために必要な研究などを重点課題とします。(2)としては、より幅広い基礎研究の確保や、地球環境と人間性回復のための施策を重点課題とします。
エネルギー関連の技術研究
原子力技術は、より安全で持続利用可能なエネルギーが開発されるまでの間、安全性を最優先に過渡的エネルギーとして利用・研究を継続します。ただし近年の原子力の安全に対する国民の懸念を踏まえ、独立機関としての原子力安全規制委員会を設置し、安全確保体制を刷新することが必要です。また地球温暖化対策において世界をリードすることを使命とし、省エネルギー関連技術の研究をさらに後押しするとともに、新エネルギー・自然エネルギーの効率向上やコスト低減、環境特性の一層の向上といった観点からの研究開発を促進します。
次世代の産業競争力を担う技術
21世紀初頭においては、医療を含む生命科学分野や、ますます変化のスピードを増す情報通信技術、あらゆる技術分野に応用が及ぶともされるナノテクノロジー(超微細技術)関連技術などが世界の競争ステージの主要をなすことは確実と言えます。しかし、これら先端技術分野におけるわが国の立ち遅れも強く指摘されており、次世代の産業競争力を確保するという観点から、研究者・技術者の質的・量的不足を一刻も早く解消するとともに、課題とされる倫理規制の整備などを含む戦略的な技術開発施策を推進します。
国民の安全確保への貢献
従来より、科学技術の発達には災害などの危害の防止・軽減への寄与が期待されてきました。また一方、近年社会が高度科学技術社会化していくなかで、一般市民が技術のもたらす危険に遭遇する場面が増え、国民の科学技術に対する不安も高まりつつあります。国民生活の安全を守ることは国の最も基本的な責務であり、食品の安全確保、プライバシーの防衛、地震防災・予知への取り組みなど、科学技術の安全への応用について積極的に推進します。
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