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7.国土・社会資本
公共事業改革/交通政策/都市・地域政策/沖縄政策
【公共事業改革】
不要不急の公共事業の実施は税金の浪費のみならず、土木建設業をはじめとする産業構造改革の妨げになっています。またダムのように自然環境を大きく破壊し、将来に負の遺産を残すものも存在します。いま行われている公共事業のすべてが不必要であるという訳ではありませんが、今後はこれまでより少ない予算で効率的に、しかも情報化・高齢化・バリアフリー・自然再生型などの事業に転換する必要があります。民主党は、以下の点を中心に、新しい公共事業のあり方をめざします。
公共事業コントロール法
道路整備5箇年計画や空港整備7箇年計画など、わが国の公共事業の多くは「長期計画」によって事業の内容や量が定められています。これらの長期計画はあわせて15本ありますが、閣議決定事項とされているために国会のコントロールが及びません。またそれぞれの計画に連携がなく縦割りであるために、重複による無駄もあります。民主党はこれら15本の長期計画を一本化し国会承認事項とするとともに、再評価・事後評価の仕組みを盛り込んだ「公共事業コントロール法」を制定します。
PFIの促進
PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)とは、道路や橋、刑務所や役場庁舎などといった公共施設の建設や運営を、資金調達を含め民間事業者に委ねることにより、公共事業のコストを削減する手法です。PFIの一番の目的は、事業にかかるリスクを民間事業者に負わせることで、民間の経営感覚を活用し、効率的かつ高品質な公共サービスを提供することにあります。このPFI制度を積極的に活用するため、モデル事業の展開やPFIの数値目標を定めるとともに、PFIの促進を阻害する法律・政省令・条例等の改正をすすめます。
大型公共事業事例の見直し
川辺川ダム建設事業や諫早湾干拓事業、長良川河口堰など、全国各地で大型公共事業事例のあり方が問題になっています。例えば川辺川ダム建設事業は、数千億円の費用をかけて利水や治水などを目的とした多目的ダムを建設する計画ですが、多くの人家の水没という犠牲を強いる一方で、受益者である地元農家の多くが利水事業計画に反対して訴訟を起こしており、ダムによる治水は不要であるとして学者から代替案が示されるなど、ダム計画の必要性が著しく疑問視されています。民主党はこれらの無駄な公共事業事例について、今後もきびしく追及していきます。
道路特定財源の見直し(道路政策)
ガソリンの購入価格に含まれるガソリン税、自動車を購入する際に徴収される自動車取得税、車検の際に納入する自動車重量税、これらはいずれも使途が道路整備に限定される「道路特定財源」です。一方でわが国の道路整備の水準は、十分ではないにしろ既に高いレベルにまで達していることから、道路に特化された特定財源の存在は、無駄な道路建設や財政硬直化の原因との批判が高まっています。民主党は道路特定財源を一般財源化とするとともに、複雑な自動車関係税制を簡素化します。
治水政策(緑のダム)
ダムは河川の流れを寸断し、自然生態系に大きな悪影響をもたらすばかりか、堆砂(砂が溜まること)により数十年間から百年間で使い物にならなくなります。このように環境負荷の大きいダム建設を続けることは、将来にたいへん大きな禍根を残すものであると言わざるを得ません。今後はダム建設をやめるとともに、森林の再生を通じ、森林のもつ保水機能や土砂流出防止機能を高めること、つまり「緑のダム」へと治水政策の転換を図ります。現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、2年以内をめどにその必要性の再検討を行います。
一次産業の名を借りた農林土木の排除
生産性・効率性向上を掲げて整備をしても利用されない農地や水揚げのない漁港、一般車両ばかりが通行する農道や高規格林道など、本来の事業目的と関連がない農林関係公共事業があまりにも多過ぎます。それらは、農林水産業を目的に掲げると予算獲得ができるので、その抜け道を使用しているのです。これらの公共事業の計画にあたっては、農林漁業者の要望と生産見通しに基づくこととし、生産性・効率性の向上に結びつく事業へと転換します。
諫早湾干拓事業の見直し
諫早湾干拓事業が、有明海における漁獲の低下、ノリ被害等の究極の要因であることは、過去の経緯から十分推定されます。にもかかわらず政府・与党は、干拓事業の継続に固執し、地元自治体には中止すれば補助金返還義務が生じると説明して見直しを遮っています。しかし、失われつつある自然の機能の大きさは、事業の価値を失わせるほど多大です。地元から要望される防災機能については必要な手立てを講じ、補助金負担を含め事業の見直しを行います。
【交通政策】
誰もが安心して移動できる環境を整えることは、わが国の交通政策を考えるうえで最も大切なことです。また、より高速・低コストな交通・物流の実現は、経済の発展・維持のために欠かすことはできません。しかし現状では、障害者や高齢者などの方々が安心して利用できる交通機関や施設の整備が遅れていたり、鉄道・空港・道路・港湾などの整備が縦割りで行われ体系的なものとなっていないなど、様々な問題が存在しています。これらの解決のために、民主党は以下の施策をすすめます。
交通基本法の制定
日常生活に欠くことのできない安全かつ円滑な移動は、高齢者や障害者をはじめとしてすべての国民に等しく保障されなければなりません。これを「移動の権利」として具体的に明記したのが、2002年6月に民主党が国会提出した「交通基本法案」です。「交通基本法案」ではその他、交通基本計画によって総合的な交通インフラを効率的に整備することにより、重複による公共事業の無駄づかいを減らし、環境負荷の少ない持続可能な社会の構築をめざすことが定められています。
交通バリアフリー
高齢者や障害のある方々は、長い間交通機関や道路の利用について大変な制約を受けてきました。2001年に成立した「交通バリアフリー法」は、旅客施設新設や車両導入におけるバリアフリー化を義務づけたほか、市町村が策定する基本構想によって、関係者が協力してバリアフリー化をすすめることが規定されています。しかし民主党の対案で盛り込まれていたSTS(スペシャルトランスポートサービス=既存の交通機関の利用が著しく困難な移動制約者に対し別途の移動手段を確保すること)について措置がされていないなど、まだまだ現行法には不十分な点も多く存在します。移動制約者の自立と社会参加の促進のため、民主党は今後も引き続きバリアフリー社会の実現を働きかけていきます。
整備新幹線
新幹線は、その高速性のみならず、大量輸送性、高い安全性、優れたエネルギー効率など、他の交通機関と比較して優れた機能と特性を有しています。とりわけ自動車や航空機と比較して二酸化炭素の排出量も少なく、地球温暖化問題等の観点から環境にやさしい省エネ型の交通機関と位置づけることもできます。しかし整備新幹線の建設に要する財源を考えたとき、費用対効果の観点からその必要性については多くの疑問があることも事実です。民主党としては、鉄道・自動車・海運・航空等の各交通機関が、それぞれの特性を活かしつつ、重複を避けて効率的・総合的に整備されることが望ましいと考えます。
高速道路整備
かつてのように道路整備の水準が未熟であり、かつ財源も乏しい時代においては、財政投融資などからの借入金で高速道路を建設し、利用者から徴収した通行料金で債務を返済する「有料道路制度」は優れた成果をあげてきました。しかし、今後の交通量需要は頭打ちが予想されるため、これまでと同様のペースで高速道路の建設を続ければ、いずれ破綻を招くことは明白です。民主党は日本道路公団等を民営化する過程において、現行の高速道路整備計画を一時的に凍結し、本当に必要な高速道路路線をきびしく選別します。
【都市・地域政策】
戦後の混乱期から高度成長期を経て今日に至るまで、わが国では経済成長を重視した国土形成が行われてきました。しかしその結果、住民不在の都市計画や農山漁村の荒廃、地域文化の衰退や没個性的なまちづくりなど、様々な問題が発生するようになりました。これらを解決し、真に国民・住民のための都市・地域政策を実現するために、民主党は以下の施策をすすめます。
住宅政策・住宅金融
政府のこれまでの住宅政策は、国民に住宅を取得させること、つまり持ち家重視の施策が採られてきました。しかし多額のローンを抱えて持ち家を取得するより、賃貸住宅等を活用し、家族構成等ライフステージの変化にあわせて住替えを行うなど、国民の住宅に対する価値観や嗜好は変化しつつあります。民主党はこれまで質・面積ともに低く抑えられてきた賃貸住宅の充実促進を誘導するとともに、中古住宅の流通促進、住宅ローン証券化、リバースモーゲージ(高齢者が持ち家を担保に生活資金を借入れること)の促進、職住接近のまちづくりなどをすすめます。
ハートビル
視覚障害を持つ方でも使いやすい廊下やエレベーター、車イスでも利用できるトイレ、段差のないスロープ式の出入口など、高齢者・身体障害者等が使いやすい設備の完備された建築物をハートビルと言い、その建築を促進するための法律がハートビル法です。しかし現行の法律では、バリアフリー義務づけの対象が老人ホーム等に限られているなど、まだまだ問題が多数存在します。民主党はすべての公共建築物にバリアフリー対応を義務づけることや、対象者の範囲を妊産婦・子ども・傷病者・知的障害者などに拡大することをめざします。
都市再生
これまでわが国の都市環境は、災害に対する脆弱性、無機質・没個性的な街並み、慢性的な交通渋滞など、けっして誇れるような状態ではありませんでした。また近年、都市郊外の乱開発により中心市街地の空洞化が生じるなど、深刻な問題が発生しています。そのため都市を魅力溢れる空間に再生することを目的に、民間資金やノウハウを活用し、都市の基盤整備や再開発等を促進する「都市再生特別措置法」が成立しました。しかし現状では、都市再生のあり方が経済対策・景気対策の視点からのみ考えられる傾向にあります。今後はそこに住む住民の意向や参画を担保しながら、地域文化の育成や発信などソフト面等の充実も踏まえ、都市の魅力を取り戻すためにはどうすべきかという観点からも、都市再生のあり方を考えていく必要があります。
過疎地域の対策
戦後の驚異的な経済成長の陰で、わが国の農山漁村は、超高齢化と若年労働者の流出がすすみ、過疎化による地域社会の崩壊や農地・林地の荒廃などが進行しています。しかし経済至上主義の価値観が転換を迎えつつある今日、農山漁村地域には、水源確保や土砂流出防止などの国土環境保全機能や、伝統文化や自然との共生等の文化・余暇機能の充実など、多種多様な機能が期待されるようになってきました。今後は現行の画一的・縦割的な地域振興関係諸法を改め、地域独自の事情や特性に対応した振興策により、過疎地域の自立化・多様化の実現をめざします。
雑居ビル火災対策
2001年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町雑居ビル火災を踏まえ、雑居ビルの目にあまる消防法違反の実態を抜本改正するために、消防署は違反を認めた時には必ず是正命令を出すことの義務化を軸とする議員立法を提出しました。同法案提出から4カ月遅れて、ようやく政府からも消防法改正案が提出されましたが(2002年4月成立)、これは民主党議員立法の流れを受けたものでした。多くの尊い生命を犠牲にする惨事を二度と繰り返すことのないよう、民主党は消防行政のあり方を今後とも検討していきます。
【沖縄政策】
沖縄は先の大戦で唯一の地上戦により、数多くの犠牲者を出す悲劇に見舞われました。さらに、敗戦後も米軍による占領を経験しました。2002年、沖縄は復帰30周年にあたりましたが、沖縄には依然在日米軍基地の75%が集中し、県民は過重な負担を強いられています。復帰後の経済発展も期待どおりにすすんでいません。この状況を重く受け止め、民主党は1999年7月に「民主党沖縄政策」を発表、また、2000年2月に軍用地返還特別措置法(軍転法)改正案を提出し、5月には日米地位協定の見直し案を提示しました。そして2002年8月26日には、「民主党沖縄政策」を刷新した「民主党沖縄ビジョン」を沖縄の地で発表し、「一国二制度」の推進等、沖縄の真の自立と発展への道程を示しました。
一国ニ制度
沖縄を連邦分権型国家のモデル県と位置づけます。沖縄はその歴史や地理的特性により「一国二制度」を他県に先行して導入するのに適しているからです。沖縄本島以外にも多くの離島が存在し、画一的な保険制度の適用にそぐわない等、沖縄の自立と発展のために「一国二制度」の実現が必要であるという観点から、全県自由貿易(フリートレードゾーン)構想をはじめとし、沖縄が地方分権の先がけとなるような諸政策を推進します。
経済振興策
沖縄の持つ独自性と優位性を活かした沖縄振興策に取り組みます。補助金依存型の経済構造から脱却するため、国からの支出は全額使途を限定しない一括交付金として財政上の主体性を確立するなど、財政調整制度のあり方を検討します。また、観光業等をはじめとした比較優位の分野に力を入れた起業家支援制度を整備し、経済的に自立した沖縄を実現していくなかで、失業率の低下及び雇用の安定を図ります。
自然環境政策
沖縄の豊かで多様な自然環境は、わが国だけではなく世界的にも貴重な財産です。このわが国の誇る自然環境を有用微生物の技術を積極的に取り入れながら保全・再生するとともに、自然環境を大事に活用した観光業(エコ・ツーリズム)の発展に努めます。また、沖縄独自の基準による自然環境再生型公共事業を全国のモデルケースとして積極的に促進します。
教育政策
沖縄独自の文化・芸能を継承しつつ、外国語や環境等、沖縄の特性をさらに引き出す教育を支援し、沖縄人(ウチナンチュー)としての自立心を育みます。アメラジアン(国際児)については、公的助成を含め教育環境の整備、及び養育費を確保するための米国との協定締結等の実現を図ります。また、東アジアのみならず世界の知性が集まり交流する「学問・研究の沖縄」をめざします。この際、環境・観光・地域安全保障戦略等に関連した研究分野に特化し独自性を活かします。
在沖縄米軍基地問題
日米安保条約を日本の安全保障政策の機軸としつつ、在日米軍基地の整理・統合・縮小を強力にすすめます。SACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告の早期実施をめざすと同時に、SACOIIの設置に努めます。基地縮小に際して生ずる雇用問題には、セーフティーネットの確保も含め、十分な対策を講じます。また、当事者としての立場を明確にするためにも在沖米軍の課題を話し合うテーブルに、沖縄県なども加わることができるよう働きかけていきます。
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