民主党・新緑風会の石橋通宏です。
私は、民主党・新緑風会、みんなの党、社会民主党・ 護憲連合を代表し、厚生労働大臣政務官・ 丸川珠代君問責決議案を提出致します。
まず、決議案の案文を朗読いたします。
「本委員会は、厚生労働大臣政務官・丸川珠代君を問責する。」
右決議する。
以上であります。
以下、提案の理由をご説明申し上げます。
そもそも、「大臣政務官」というのは、 平成13年の中央省庁再編に伴い、 国会審議の活性化などを眼目として設置された役職であり、 その職務は、内閣府設置法に「大臣を助け、 特定の政策及び企画に参加し、政務を処理する。」 と規定されています。
今回、我々が、 問責決議の提案を致します丸川君の担う特定の政策は、労働・ 福祉・年金分野であり、 いずれも国民生活に密接に関わる極めて重要な政策課題であります 。
それにも関わらず、丸川君の今回の言動は、 多くの勤労者に厚生労働行政に対する怒りと不信を抱かせる結果と なっております。また本委員会においても、 重要法案のための貴重な審議日程が奪われ、結果、 衆議院と比しても全く不十分な審議日程しか確保し得なかったこと は、国民生活にとって大変深刻な事態を招いたと言わざるを得ず、 その責任が丸川君に帰せられることは言うまでもありません。
以下、その証左について具体的に五点、指摘します。
第一は、言うまでもなく、 丸川君が政務官就任後の本年2月25日、全国紙朝刊において、 担当政務官として所管する分野の特定民間企業の営利目的の広告に 、政務官の肩書き付きで出演したことです。
広告主であるヒューマントラスト社は、 事業認可に対してより厳し い規制が適用され、 許可制 となっている「一般労働者派遣事業」 に該当する企業であり、 昨年10月1日に施行された改正労働者派遣法の規制・ 監督を受ける側にあり、担当政務官である丸川君は、規制・ 監督する側の立場にあります。しかも同社は、 本委員会の審議で複数の議員が指摘しております通り、 事業活動の様々な分野で法令に違反する可能性のある行為を行って いる疑いがもたれております。 監督官庁の担当政務官が、 そのような問題を指摘されている企業の営利広告に出演し、 当該企業の営業活動に「お墨付き」を与えてしまったことは、 派遣の現場で一生懸命に働いている労働者にも、また、 労働者保護のために派遣法遵守徹底のために現場で頑張って指導・ 監督を行っている厚生労働省職員らに対しても、 極めて深刻な悪影響を与えております。このことは、「 政務三役規範」において、「 全体の奉仕者として公共の利益のためにその職務を行う」 ことが求められ、「公使混淆を断ち、 関係業者との接触において国民の疑惑を招く行為」 が禁じられている政務官として、 極めてあるまじき行為であります。
第二は、丸川君が、当該企業広告において、 厚生労働省の方針と相反する内容を自ら喧伝し、 厚生労働行政に対する国民の不信と不安を生じさせたことでありま す。
丸川君は、当該広告の中で、 厚生労働大臣政務官の肩書きを示しながら、昨年 10 月に施行され た改正労働者派遣法の「日雇派遣の原則禁止」 が間違った改正であり、 その修正に向けた議論が労政審で行われることがすでに決まってい るかのような誤った印象を、全国の国民に植え付けました。 このことは、「派遣労働者の保護」を謳い、 日雇派遣の原則禁止の方向に舵を切った改正労働者派遣法の制度的 趣旨を著しく歪めるものであり、 厚生労働省の方針と矛盾するもので、 到底容認できるものではありません。
大臣政務官は、国会が定めた法律の順守・ 徹底に邁進するとともに、 厚生労働行政が積み重ねてきた政策の遂行を最優先すべきであるに もかかわらず、当該企業宣伝広告への出演では「一議員」 としての政治信条の披瀝と、 厚生労働省の方針とを混同させた言動をとっており、 厚生労働行政の根幹を揺るがす事態を引き起こしたことの責任は決 して免れられるものではありません。
第三は、新聞広告出演に関し、 丸川君と派遣業界との間の金銭面での大きな疑惑が生じているにも かかわらず、同君が、 当該企業及び関係事業者団体等との金銭授受・ 供応接待関係の有無について説明責任を果たす努力を一切放棄し、 国会の審議権を無視していることです。
今回の特定民間企業の営業広告への出演について、丸川君は「 直接の出演料は受領していない」と説明しておりますが、 この点に関しては、現時点に至るまで、 当事者である丸川君の口頭での発言以外、その事実を証明・ 裏付ける一切の資料が提出されておりません。この点は、 厚生労働省が「報酬・供応接待等を受けていない」 ことをもって本件が政務三役規範に抵触していない理由と説明して いることからも、問題の核心にかかわる重要な要素であり、 丸川君には委員会の説明要求に真摯に答える責務があるはずです。
出演料の問題については、時期をずらしたり、 名目を変えたりして実質的な報酬が支払われていたのではないかと の疑いももたれています。現実に、 丸川君は直近の二年間において、 2,000 万円以上の政治資金パ ーティーによる収入を得ていますが、このうち公開基準を上回り、 購入者の氏名が明らかにされているケースは皆無であります。 一体、 このうちの何割が派遣業界関係者からのものなのでしょうか。
この疑惑があるからこそ、本年 3 月 21 日以来、 本委員会において、 丸川君が所属する自由民主党の理事も含め全会派で確認し、 委員長より丸川君に対して、 派遣業界等からの公開基準以下の政治資金の流れに関する資料の提 出を求めております。それにもかかわらず丸川君は「 公開基準以下のものについては、 相手方との信頼関係を守る必要性があることから回答することは差 し控えたい。」と言い訳し、報告を拒んでおります。 しかし個別の企業名・団体名を記載せず、 派遣業界からの寄附等の総件数及び総額を公表することについては 何の支障もないはずであり、 それにもかかわらず資料の提出を拒むことは、 委員会の要請を無視する行為であり、 到底看過できるものではありません。
第四は、政務官という職にありながら、 参議院厚生労働委員会における審議と自らの答弁を著しく軽視して いることです。
丸川君は、 3 月 21 日以降の当委員会の審議において、繰り返し、 当該広告は「日経新聞の記事だと理解していた」と言い訳し、「 ヒューマントラスト社の広告であるとの認識は当日まで無かった」 と答弁しておりましたが、直近の本委員会での審議を通じて、 本広告はヒューマントラスト社側の発案によるものであり、 当初より、 同社の阪本社長が丸川君との連絡も担っていた事実が明らかになっ ております。丸川君が日経新聞社側担当者と会ったのは、 1 月 11 日の取材日が初めてであり、つまり丸川君が今回の企画を「 ヒューマントラスト社の発案による広告」 だと知らなかったとは到底、考え難く、そうであれば丸川君は、 本委員会の場で繰り返し虚偽答弁を行っていたことになります。
また、記事広告と一体となって掲載された「猫の手も借りたい」 とのヒューマントラスト社の広告について同君は、「猫の手」 という表現が、派遣労働者の方々に失礼に当たる点があるとして、 「事務所からヒューマントラスト社に対し、よく伝えておきたい」 と、3月28日の本委員会において答弁しています。 しかしその後、実際に行われた行為は、 丸川珠代事務所の職員からヒューマントラスト社の誰だかわからな い人物に対し、電話をかけただけであります。 本件の責任者は丸川君本人に他ならないにもかかわらず、 事務所の職員に電話をかけさせ、 しかも相手方の役職等も確認していないような対応は、 あまりに本委員会を愚弄するものです。
第五に、本件が、 公職選挙法や政治資金規正法に抵触する行為に該当する疑いすらも たれていることです。
仮に今回、丸川君が、政務官としてではなく、 政治家個人としてヒューマントラスト社の企業宣伝広告に無償で出 演し、同社の営利目的の宣伝に荷担したのであれば、その行為は、 ヒューマントラスト社に対する無形の寄付行為に当たる恐れがあり 、公職選挙法 199 条の二に抵触する可能性があります。また、 もし本広告での丸川君の発言が、 同社の宣伝に協力したものではなく、 あくまで政治家個人としての意見を述べたものであるならば、 これは、本年 7 月に改選を迎える丸川君が、 全国紙の全面広告に顔写真入りで政治家個人としての意見を述べる 売名行為の場を無償で得た、つまり、 ヒューマントラスト社がその広告宣伝料を肩代わりしたこととなり 得ます。この場合は、政治資金規正法 21 条が禁止する政治家への 寄付行為に抵触し、同法 22 条によって丸川議員本人も違反に問わ れる可能性も払拭できません。これは、 民主主義の根幹にも関わる問題であり、本来、 民主主義の最大の擁護者たるべき政務三役の一員が、 率先して民主主義を踏みにじる行為を行っていることとなり、 いずれにしても、 政治家として許されてはならない行為であります。
以上、様々な角度から、 今回の企業広告出演問題にまつわる問題を指摘し、 丸川君がいかに、 厚生労働大臣政務官の職にふさわしくないかを具体的に明らかにし てまいりました。
結局、丸川君には、自らが「政府の一員」であり、「 全体の奉仕者として公共の利益のためにその職務を行う」 ことが求められているという自覚が完全に欠如しております。「 政治は結果責任である」として、政権批判、 内閣批判に血道を上げてきた野党時代の手法を見直すことなく、 実在するかどうかも明らかにできない団体の発言を根拠として政務 官としての国会答弁を行ったことなどは、「無自覚」 の誹りを免れ得ません。一連の騒動を通じて、 なぜ自らが厳しく指弾されているのかを理解することさえできず、 国民に対しても、本院に対しても、 反省のかけらさえ示すことができない現状は、 到底看過することができないのです。
丸川君が、政務官として「不適格」であることは、 既に私どもの共通の認識となっております。 本委員会に所属する良識ある委員皆様が、 与野党の立場を乗り越えて本決議案にご賛同を戴きますことを願い 、あわせて、一日も早く、 丸川君に代わる真に適格性を有する政務官を本委員会に迎えること が出来ますことを切望し、問責決議案の趣旨説明を終わります。
ありがとうございました。
2013年6月25日 |