河田英正の主張

戻る目次


2000/12/01 敗訴者の弁護士費用は誰が負担

裁判に負けたとき、相手方の弁護士費用は、誰が持つのでしょうか。現在の制度は、弁護士の費用は、勝敗に関係なく各自が負担する制度です。ところが、司法改革審議会は、勝訴したときに弁護士の費用を払わなければならないことが、裁判による救済の道をせばめているとして、原則として敗訴者が相手方の弁護士費用を負担する制度を導入しようとしています。

私の経験する限り、勝訴した場合の弁護士費用を心配して訴訟するか否かを決める人に出会った事はありません。むしろ、負けた場合、相手方の弁護士費用まで負担しなければならなくなるのではないかと心配される方にはよく出会います。証券会社、信販会社などその他巨大企業などを相手とする消費者被害事件、労働事件、環境・公害問題などの訴訟はもはや起こせなくなります。経済的、社会的弱者が強者を相手とする事件の救済を司法に求めることは極めて困難となります。訴訟を提起する事自体の費用の他に敗訴の場合の費用も考えなくてはならなくなるからです。法律が、成立当時の政権の性質の色合いを反映しているといえ、その法律の範囲で新しい政策形成のために提起される事件も多くあります。同じ問題でも、裁判に訴え、当初は敗訴が続いていてもやがて勝訴判決がでるようになり、そしてついには法律の改正、新たな政策の形成へとつながるのです。豊田商事問題とその後の政策の変更、今回の消費者契約法の成立などの動きもこうした問題と捉えられます。弁護士費用の敗訴者負担の制度はこのような被害救済の道を狭くし、市民の司法へのアクセスを著しく困難にする制度です。

今回の司法制度改革審議会の中間報告はいろいろと問題を残しています。官僚支配型の司法を市民に取り戻すという最大の司法改革の目的には目をつぶり、弁護士の数を今の3倍にすること、それを容易にする大学院をつくることだけは詳細に結論できているというものです。江田議員の司法制度改革PTのご報告は、そのことを指摘されているのだと思います。司法使う市民の声をもっとあげていかないと、政治も司法もダメな21世紀になりそうです。


河田英正の主張

戻る目次