河田英正の主張

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2001/06/03 育たない公正な投資市場

日本の個人資産の90パーセント近くは銀行など間接金融にむけられている。これとは逆に米国では株式投資などの直接金融の割合は60パーセント弱までに達している。政府は個人資産の株式市場への移行を促す施策をとってきている。

どんなに強引で不適切な勧誘があり、虚偽にみちた説明によって株式取引がなされた場合であっても、日本の裁判では「投資はもともと損をすることがあるのは当然である」「自己責任である」として勧誘側の責任は過小評価されている。ワラント債、変額保険などの責任を証券会社、保険会社に問うのは極めて困難が伴うものである。

連休前から5月末にかけて、東京三菱、日本グローバル、日興などの大手証券会社が次々と証券取引等監視委員会から勧告などの処分を受けている。勧告の対象となったの行為は他社転換社債(EB債)の販売をめぐるものなどであり、顧客の損失の下に自社の利益をえようとする詐欺まがいの悪質なものであった。

6月1日、2日に京都に被害者の立場で証券問題に取り組む弁護士の会(24回証券問題全国研究会)があった。今年4月から金融商品販売法の施行がなされ法で策定が要求されている各社の「勧誘方針」を検討した。結果は、各社どこも同じような内容であり、過去の反省も、将来の決意も感じられないもので、法的責任につながらないように配慮だけはなされているものであった。一部で報道されているEB債をめぐる不公正な商品構成、大和都市管財をめぐる不適切な対応など投資市場の不明朗さはなかなか解決されそうにない。

公正な市場が育たない限り、国民の資産が直接投資に向かうことは小手先の施策によっては実現することはない。司法の場で個人の被害救済を図りながら、公正な市場のルールの確立を実現していく、我々の研究会もまだまだ存在意義がありそうである。


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