河田英正の主張 |
2001/08/18 家栽の人
NHKドラマ「少年たち」が放映されている。熱血家裁調査官の物語である。少年犯罪には結果が重大であってもその非行性には問題が少ないもの,逆に小さな事件であっても背後に重大な問題を抱えているものがある。全ての少年事件は家裁にいったん送致されてそこで刑事処分相当,保護処分相当かの処分の振り分けがなされる。その判断に重要な資料を提供するのが調査官の仕事の一つである。生き生きとした家裁の役割が描かれていて,考えさせられる内容をもったドラマである。
一律に,犯罪の結果だけに注目して,少年犯罪の重罰化,刑事処分への道を拡大した少年法の改正の浅はかな議論が浮き彫りにされている。声高にそしてエキセントリックな一時的な「世論」によって大切なものを失ってしまったのではないか。必要なのは,家裁の人的,物的な充実である。精神障害者の犯罪への対応の議論のももっと冷静さが必要である。
NHK出版「犬になれなかった裁判官」の著者は,「家栽の人」のモデルではないかと噂された人である(本人はこの本のなかで否定している)。著者は,家裁事件に生き甲斐を感じて,定年まで情熱を燃やし続けた人である。しかし,最高裁は,歴史に残る戸別訪問違憲判決などを書いたこの裁判官に任地,給与,人事(職務)のうえできびしい処遇を強いてきた。この本には,この内容ににも触れられている。審議会から国会へと審議の舞台を移してきた司法改革問題で真に改革しなければならない病巣であると思う。しかし,そのことに審議会の報告書は触れられていない。
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