河田英正の主張 |
2001/11/21 司法改革と法曹教育
今の憲法が施行されて半世紀を経過しました。最高裁判所を頂点とした司法の現場で「違憲」判決がだされたのは数えるばかりしかありません。行政裁判は,ほとんど行政側の勝訴です。違憲判決を書いた裁判官の末路はあわれとしかいいようのない処遇を受けています。「犬になれなかった裁判官」(NHK出版)の例をみるまでもありません。死刑の確定した人が再審無罪となるような実態があります。これが病める司法改革であり,司法改革の原点でなければなりません。このことが忘れられてなされている司法改革です。司法の人権擁護の機能には触れない司法改革です。
裁判官,検察官の数は圧倒的に不足しています。しかし,これをどの程度増加させるかは全く不明のままの議論です。にも関わらず,現在の3倍,私たちの頃の6倍の人数の合格者をつくろうとしています。バランスのとれた法曹人口の増加を考えなければ司法の機能は低下します。「人権擁護」が語られない司法改革となっています。
法科大学院による法曹育成は,法科大学院にいける余裕と財力のある者にしか法曹の道が歩めないことを意味します。現在の医学部と同様に大学院間でランク付けが行われるようになるでしょう。現在の合格者のレベルを確保できるかは極めて難しい問題でしょう。30000人の人が1000人の枠をめざして平均5年以上頑張って合格している現状よりも落ち込むことが予想されるのは当然でしょう。今の司法試験は,誰でも何歳でも受験できるという平等があります。記憶力の極めて乏しい私が合格したのだから決して記憶力の問題ではないとは思いますが,即決即断力を要求されて事務処理能力に重点を置いて評価されているきらいはあるとは思います。司法試験の内容をどのようにするかの問題でしょう。
私は,法科大学院による法曹教育には反対の立場です。司法改革の視点からではなく法学部の生き残りとしての大学改革の視点から考えられているからです。しかし,法科大学院の設置の方向が決まったのですから,ここで法曹が育っていくことになるわけです。そうであれば,未来の司法を担っていくことになる後輩たちに司法の役割をきちんと果たしていただくことができる法学教育がなされる法科大学院となるようその設置にむけて積極的に協力をしていきたいと思っています。
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