河田英正の主張 |
2001/12/25 正当防衛?
今回の不審船事件で巡視船による「正当防衛」による射撃があった。公開されたビデオの「正当防衛による射撃中」との音声には,違和感を感じざるをえなかった。
正当防衛とは,「急迫不正の侵害に対して,自己または他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為」をいう。「権利の防衛のため」「やむをえない」ものであったかどうか厳密に検討の必要がある。正当防衛は,やられたからやり返すものではないし,積極的な応戦を認めるものでもないからである。
今回の事案は「自己または他人の生命,身体,自由又は財産に対する現在の危難を避けるためにやむを得ずなした」緊急避難行為であると考える。「テロ防止」「国際協力」の名目に「報復」が隠され,国際間の緊張が高まっていくなかで,感情に流されることなくしっかりとした検証が必要である。どこまでが適法な行為であり,違法とされても責任が追及されない範囲はあるか否かについて慎重な要件の吟味をしておくべきである。
私は,国の対処の仕方には問題がいろいろと残されていたと思われるが,事件の現場の対処には仕方がなかったのではないかと感じている(正当防衛はなりたたない銃撃も含まれていたと思われるが,緊急避難として責任を追及すべきではない事案)。武力を行使することに緊張感と抵抗感を失いつつある今だからこそ,あえて問題提起をした。
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