河田英正の主張 |
2002/03/02 先物取引被害110番に寄せて
先物取引とは
将来の一定の時期に物の受け渡しを約束して,その価格を現時点で決める取引のことをいいます。そして,その約束の期日前に,その時点での価格による初めの取引と反対の取引を行うことによって決済をする取引です。この価格の差が損益となるわけです。
トラブルの要因は
先物取引は投機取引行為であり,元本の保証はありません。取引高の5パーセントから10パーセントの保証金(委託証拠金)で取引ができます。価格変動額の数十倍から数千倍の倍率で損益が計算されることになりますので,思惑と異なった値動きになれば思わぬ損害が発生することになります。
業者の利益は,注文執行の手数料と自己玉による利益です。どうしても手数料を稼ぐための無意味な取引の繰り返しがなされたり,なかなか取引を中断(仕切)ができないなどのトラブルが発生しやすいといえます。
例 金の取引単位は1キログラム,呼び値の最小単位は1グラムですので10枚の取引をしていれば変動額の10000倍の損益が発生していることになります。委託証拠金は価格によって45000円から90000円となります。
トラブルのおきやすいポイント
- 年金など生活の基盤を支える資金を投入することは適切ではありません。退職者,主婦や公金を扱っている人を勧誘する事には問題があります。
- 「絶対儲かります」というような勧誘は断定的判断の提供といって法で禁止されています。
- 将来の価格変動を予想することは大変難しいことです。先物取引をするには,価格変動を予測できる能力とこれに費やす時間がある人でなければなりません。例えば,ガソリンの価格変動には,世界の産油国をめぐる政治情勢,経済の変動,為替の動き,天候などが影響してきます。これらの情報を収集し,判断できる人でなければ危険な取引といわざるをえないでしょう。
- 相場が思惑と反対の方向に動いて追証拠金が必要になった場合に,業者側からは取引を継続させるために反対玉を建てて様子をみましょうなどといって「両建て」取引を勧めてくることがよくあります。売り買いを同数にして価格変動による損益を固定するという方法です。しかし,これは取引量が増えるだけの何の意味も持たない取引です。相場の世界には「見切り千両」と言う格言があります。
- 業者に任せきりの取引は違法です。自らの判断と指示で取引をしなければなりません。現実には普通の人にとって価格変動の要因となる情報を手に入れることは極めて困難なことから,業者に実質的に任せきりにならざるを得ないのが実態でしょうか。
- その他 仕切拒否,問題な特定取引など
このような金融取引には自己責任が問われます。十分に取引を理解したうえで,自らの判断と責任で取引をすべきです。判断が難しいと感じたら取引は止めるべきです。最近,超低金利時代,ペイオフ対策という経済環境を種に勧誘を受けたという被害相談が増加しています。
岡山弁護士会ではこうした被害の実態把握と被害救済のありかたを検討するために先物取引被害110番を3月15日実施致します。
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