河田英正の主張 |
2002/05/31 精神医療を破壊する「心神喪失者等医療観察法案」
5月28日,衆議院本会議で「心神喪失者医療観察法案」の趣旨説明が行われ,国家の基本的な性格を決するような有事法制や個人情報保護法案などと共に,審議がつくされないまま数の論理で成立させられそうな状況です。
この法案は,もともと池田小事件を契機として,精神障害者の犯罪に対して厳しい世論のたかまりのなかで,まとめられたものです。しかし,池田小事件は,精神障害者の犯罪ではありませんでした。精神障害に起因した犯罪であれば精神障害の治療が一番に検討されなければなりません。精神医療の充実と改善こそが急務です。この法案は,精神医療とはあいいれない内容もあいまいな「再犯のおそれ」が要件に加わっています。患者を「閉じこめて」おくだけのものになってしまいます。かつて論議されて決着のはかられている「予防拘禁制度」の復活の論議でしかありません。しかし,再びこのような論議が生まれたのは,その間に精神医療の充実・改善に対してなんらの処置もされず,むしろ悪化している状況にあるからではないでしょうか。
6月5日(水)午後3時から5時,衆議院第2議員会館第1会議室でシンポジウム「これで良いか,新処遇法」があります。先進的な取り組みをしているイタリアの保安処分と地域精神医療の医療のありかたなどの報告もあります。国会で慎重な審議がなされるよう議員の皆さんの多くのご参加が期待されます。
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