河田英正の主張 |
2002/10/17 やはり弁護士費用の敗訴者負担は,司法アクセスの抑制
9月14日から25日の間,ドイツ(フランクフルト),オランダを中心にヨーロッパの「弁護士報酬の敗訴者負担問題」について日弁連敗訴者負担問題対策本部として調査をしてきました。依頼者の方には,長期の留守をしてしまいご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
日本,アメリカでは「各自負担」でヨーロッパでは長い間「敗訴者負担」となっています。
ところが,司法改革論議のなかでヨーロッパ型に変更しようという動きがでてきています。日弁連は社会的,経済的弱者にきびしい改革であるとしてこれには反対の立場をとっています。そこで,敗訴者負担の国でなんらの問題がないかどうかの調査にいきました。
司法省,権利保護保険会社,裁判官,法律事務所,弁護士会,法律扶助協会などの訪問調査でした。明らかになったことは,いずれの国も国民の半数が法律扶助をうけることができるようになっていること,権利保護保険が普及していること,訴訟件数は日本と比べ格段に多いことなど基本的な社会基盤に違いがあったことです。そして労働裁判,家族関係裁判,行政訴訟など多くの例外があったり,裁量によって負担させない例外事例が多くありました。また,訴訟件数を減少させるための司法アクセス抑制政策として敗訴者負担制度がとらえられていました。
司法へのアクセスを増加させるために敗訴者負担を導入するという今の推進本部(内閣)の考えが基本的に誤りであることは明白です。また,様々な社会基盤があるとはいっても,やはり経済的弱者,あるいはそのときの少数意見者にとって敗訴者負担は厳しい制度であるとの認識もヨーロッパでは一致していました。
敗訴者負担制度の導入を阻止するために,署名運動を日弁連として開始します。皆さんのご協力を御願いいたします。
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