はんじ・けんじ
福岡地方検察庁の事件は,新聞・テレビで皆さんよくご存じでしょう。
弁護士会もその話題でいまもちきりです。「何というバカなことをしたのだ」というのが一致した反応です。ただし,「コノヤロー」という怒りと,「司法に対する信頼がなくなる」という心配と,「アホか」という嘲りと,その三つの割合が人それぞれなのですが。
こういうときにバーッと物を言いにくいのが,弁護士会のつらいところです。(福岡の弁護士会のご意見とか,どのメディアにものってないでしょう?)「報道されている事実がホントかどうか確認できていない」ということと,「人は,有罪判決が確定するまでは,無罪の推定を受ける」という骨の髄までしみ通った感覚と,「意見を発表できるまでの手続に手間がかかる」という組織的弱点があるんだよね。
でも,このさい思い切ってコメントしちゃいましょう。なにしろ,私が会を代表してるんじゃないからね。
報道によると,検察庁は早い段階で,初めの担当検事を外して,検事数人を担当にした,ということです。こんなの,司法(法律)の業界の常識ではありません。業界的にはむちゃくちゃな非常識です。しかし,「お役所業界」のこととして考えると,これはフツーのことでしょう。どなたもご経験がおありと思いますが,お役所は上に行けば行くほど,相手によって反応がちがいますからね。「イトコ同士の隣のお役所」に対して配慮しちゃってるんだよな,どうみても。
私が法律家のタマゴだった20ウン年前に,当時の伊藤栄樹さんという検事総長(だったと思うけど)が,「『被害者のために泣く』のが検察官なのだ」という名言を吐かれました。この言葉に感動して検事を志した知人も何人かありました。福岡の検察庁のお偉方たちも,この言葉に感動した「若いけんじ」の時代があったはずなのですが。
「上の方ばかり気にして下の方を見ない」人のことを,業界用語で『ヒラメ』と申します(意味,わかりますね?)。魚の世界とは逆に,人間の世界では,上に行くほどヒラメは増えてきます。『被害者のために泣く』検事だった人たちが,時がたつにつれて「お役人」になり,「ヒラメ」になっていく。なんて悲しいことでしょう。
はんじさん,けんじさん,お教え下さい。私たち弁護士が,皆さんを同じ世界の仲間だと考えるのは,悲しいユートピア妄想なのでしょうか。
(2001/02/05) |