江田五月のやさしい政治講座 2 1993/10/25

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ロシアの核廃棄物海洋投棄問題について

 10月16日(土)の夕方、私は地元岡山市で講演会をやっていました。午後7時10分頃、NHKニュースがロシアが日本海で低レベル液体放射性廃棄物の海洋投棄をすると報道した、との第一報が私のところに来ました。すぐに科技庁と連絡をとり、外務省を通じてロシア政府に事実確認を行い、事実ならまことに遺憾、即時停止を求めることを決めました。

 18日(月)の衆院政治改革特別委員会で早速質問を受け、そのように答弁。夕方に科技庁で関係省庁連絡会議を開き、20日(水)の午前に私が本部長をしている放射能対策本部の幹事会で日本独自の調査を決定、夕方5時には海上保安庁の調査船が出発。この間ロシア政府は投棄の事実を認め、その上に2回目の投棄をするとのこと。日本政府はあげて厳重抗議の結果、2回目の投棄は中止されましたが、一時は大変でした。20日(水)には来日した(このためではない)IAEA(国際原子力機関)のブリックス事務局長と会談。今後はIAEAに事前通告された情報を日本に知らせるよう要請(応諾)、22日(金)には同じく来日したロシアのミハイロフ原子力大臣と会談。今後とも海洋投棄中止の継続を強く申し入れると同時に、ロシア極東での処理施設問題を話し合いました。

 さらに、海洋投棄についてのロンドン条約締約国会議(11月)での海洋投棄全面禁止問題へ向けてまだまだ難問山積みです。今回課題となった日本政府の情報収集システムも含めて、政府の能力を高めていきたいと思います。


細川内閣は大丈夫か

 政治改革法案の衆議院での審議も相当にすすみましたが、法案の成立は容易ではありません。衆議院の委員会と本会議、参議院での委員会と本会議の4回の採決で可決されないと成立しないのですから大変です。元々与野党を通じて選挙制度改革には本音では賛成でない人が多い上に(みんな今の制度で当選してきた人たちです)、自民党と妥協しようとしても連立与党の社会党は妥協に反対(絶対?)ですし、自民党内の意見も実はバラバラ。

 細川さんは政治改革が年内に実現できなければ政治責任をとると明言したわけですから、細川内閣は大丈夫なのか、という声も出るわけです。その上に、ガットウルグアイラウンドの合意の期限が11月15日、12月15日とやって来てコメの関税化問題も待ったなし。コメの関税化絶対反対の議員の中には、選挙制度改革反対の人も多いだけに問題がさらに複雑に。これに消費税問題(税制改革)も絡むとなれば、年内解散総選挙かも。しかし私は、コメ、消費税、選挙制度の問題が一気におしよせてきて、連立与党の中がバラバラになって細川内閣がつぶれて解散総選挙になるのではなくて、むしろ細川内閣を支える連立与党の方がいろいろな形で再編成されることになるのではないかと思います。日本社会の構造改革という大きな課題にむしろ瀬局的に挑戦していく勇気を持つことが重要で、もちろん私はこの方向で動きます。


政治 経済 永田町 の 今

政治改革はどうなるか

 政治改革法案は本来は与野党合意が望ましいのですが、どうもそれは難しく、政府原案のままで成立させるしかないようです。連立与党の中の反対者を限りなくゼロにして、自民党の中の賛成者を1人でも多く獲得する。衆議院の委員会と本会議で可決されたら(11月15日頃?)、そこで第二次政界再編のゴングが鳴ることになります。

 私は今、新しい政治方針を打ち出す準備をしていますが、それは新しい選挙制度を前提にしているので、政治改革法案の同行を見極めなければなりません。政治改革はゴールではなく、あくまでスタートラインです。冷戦終結後の新しい世界を見据えて、日本の政治改革・経済改革・行政改革などの構造改革を実現するための第二のハードルが今ですが、全力でのり越えていきたいと思います。

不況対策の処方箋

 「平成複合不況」の8つの不況の1つ「資産不況(金融不況)」への処方箋は、「不動産買い取り機構」の設立です。私たちは既に昨年の7月に、金融機関の不良債権となった不動産を公的資金を使って(土地国債・公債の発行など)、適正価格で自治体などが買い上げることを提案しました。

 金融を円滑にすると同時に、公有地をふやすことによって都市計画や住宅建設など自治体の政策が進めやすくなる。今年の3月にはその構想をさらに進めて財政投融資資金を活用する「不動産買い取り機構」の創設を提案しました。バブル経済の後始末に公的資金を使うのはおかしいという批判があるかもしれませんが、適正価格で(安く)買い取ればよいと思います。自治体の住宅政策の展開には大きなプラスになることは間違いありません。

シリウスはどうなったのか

 シリウスは社会党、社民連、連合参議院(当時)の若手国会議員31名の政策研究会でしたが、7月の総選挙で10名が落選しました。政権交代実現のために、シリウスは一定の役割を果たしたと思います。特に社会党が政治改革や政権交代に対して前向きの対応をすることに、シリウスメンバーは貢献したと思います。しかし、総選挙での社会党の大敗からシリウスメンバーも逃れることはできず、主要メンバーの多くが落選してしまいました。

 そこで8月26日に総会を開いて、第1期シリウスの活動に終止符を打ち、改めて来るべき日を期すことを決めました。これからは有志による「江田五月を囲む会」という勉強会を開いて、シリウス運動を継承していくことにしました。「江田五月を囲む会」第1回勉強会は10月28日(木)です。

FAX質問大歓迎

 「江田五月のやさしい政治講座」はこれが2回目ですが、次回から皆さんからのFAX質問にお答えするコーナーを作りたいと思います。政治の動き、細川内閣について、科学技術庁のこと、何でもお答えします。

 例えば「10月16日の読売新聞で民社党の米沢書記長が江田さんの科技庁長官就任についていろいろいっていますが、本当ですか」という質問が来れば、「細川さんに“科技庁長官をやってほしいが、原発問題はどうしますか”と聞かれたので、“連立合意を守ります”と答えただけ。米沢さんから電話をもらったことはありません」という具合です。


科学技術庁情報

江田カラーをどう出すか

 原子力政策は前政権の政策を継承するのが基本ですが、自民党政権に変わる連立政権としての発展も必要。江田カラーをどう出すかも大切な課題です。原子力政策については、原子力基本法の平和、「自主・民主・公開」、国際協力の原則のもとに、さらに「より厳格な安全性確保」「情報公開」「国民合意」「国際協調・国際貢献」などを追及していきたいと思います。特に「情報公開」は国民の皆さんや国際社会の理解と協力を得るために不可欠のものです。

 また現在「原子力開発利用長期計画」の6年ぶりの改訂作業の真っ最中で、従来のように専門家だけで決めずに、いろいろな方面の皆さんの意見を広く聞いて、日本の原子力政策についての国民合意、国際合意を作りあげていきたいと思います。皆さんもご参加を。

お客様がいっぱい

 科技庁大臣室にはお客様がいっぱい。たとえば、石川秋田市長、岩國出雲市長、宇宙飛行士毛利さん、上山幌延町長、佐川水戸市長、中川大阪府知事、高木仁三郎さん、波多野国連大使、ドイツ社民党議員団。アイリーン・スミスさん、リゴベルタ・メンチュさん、ワルディマン・インドネシア教育文化大臣。ショット・オーストラリア科学大臣、ブリックスIAEA事務局長、モネムPLO日本代表。ミハイロフ・ロシア原子力大臣、デービット・ラン香港経済貿易代表部代表、除敦信中国大使など。

 原子力については推進の立場の人も反対の立場の人も何組もの訪問を受けました。ある新聞からは、八方美人、十六方美人の綱渡り、と書かれましたが、反対派の人も原子力に深い関心を持つ仲間と考えて、対話を続けていきたいと思います。


やさしい政治講座 1993/10/25

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