江田五月のやさしい政治講座 4 1993/11/22

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政治改革法案が参議院へ

 11月18日、政府提出の政治改革4法案の修正案が衆議院本会議で可決され、参議院へ送られました。海部内閣、宮沢内閣、細川内閣と3代の内閣で提案され、今年だけでも230時間以上も審議をしてきたのですから、いくら何でも決着をつけなければ話になりません。

 しかし、これから審議が始まる参議院は実はなかなか容易ではありません。参議院は総定数252人ですが、そのうち自民党98人+社会党73人(これを55年体制といいます)が7割近くを占め、しかもそれぞれの内の多くの人が“守旧派”です。社会党の中から10人以上の造反があれば(その可能性のある人がかなり多くいます)、法案は成立しません。

 細川さんが「まだ半分も来ていない、3分くらいのところだ」といっていたのはその通りなのです。細川内閣としては、ちょうどクリントン政権がNAFTA批准を下院で議決したときのようにあらゆる努力をして反対票を1票でも少なくして、賛成票を1票でも多く獲得しなければなりません。私も大いに汗をかいて働かなければならないと覚悟を決めて、その作業に取りかかりました。政界再編第2ラウンドの準備と合わせて、科技庁長官の公務とともに、“政務”の季節がまたやってきたようです。


税制改革いよいよスタート

 11月19日に政府税制調査会が細川首相に「公正で活力ある高齢化社会」の実現を目標とした税制の抜本的改革の中期答申を提出しました。今回の政府税調の答申は、税制の抜本改革の中身を「所得税減税+消費税増税」だけをクローズアップさせていてあまりできのよいものとは言えません。

 連立政権の合意では「所得・資産・消費のバランスの取れた総合的な税制改革」をめざすことになっています。従って不公平税制の是正、資産課税の強化、使途不明金の根絶、納税者番号制の導入などについての抜本改革を行わなければなりません。

 消費税はまずその“しくみ”を変えなければならないと思います。“EC型付加価値税”に改めてインボイス(伝票)制にする、簡易課税、限界控除、免税制度などを改めて、“益税”をなくすことが必要でしょう。

 所得税の累進構造をなだらかにし、最高税率を答申のようにすることは妥当だと思いますが、その財源が消費税率のアップというのでは、総合的な税制改革とはとても言えません。しかし、税制の抜本改革が必要なことは当然のことで、細川内閣の使命である日本の構造改革の重要な柱であることは間違いありません。「正しい税制改革」にしたいと思います。


政治 経済 永田町 の 今

政界再編第2ラウンドのゴングなる

 参議院の審議が難航するとはいえ、政治改革法案が衆議院を通過した時点で、政界再編の第2ラウンドのゴングが鳴りました。私も11月1日から政治活動を再開しました。現在の私の基本方針は、(1)科学技術庁長官の公務に全力をつくす。(2)「連立与党」のまとめ役として細川内閣を支え継続させる。(3)「新党」あるいは「新・新党」を結成する。(4)274の小選挙区の推薦候補を決定する。(5)比例代表選挙に備えて全国ネットワークをつくる、などです。

 次の総選挙は、基本的に「連立与党」VS自民党の戦いになると思いますが、55年体制(自民党と社会党)のこわれ方が早いと、一気に新しい時代の理念を争点とした選挙になる可能性もあります。いずれにせよ、新しい時代の理念と政策を積極的に提案しながら、細川連立政権が歴史的使命を果たしていくために頑張ることが重要だと思います。

不況対策の処方箋 その3

 「平成複合不況」の8つの不況の1つ「構造不況」への処方箋の2つ目は、「公共投資の配分比率の見直し」です。これも細川内閣の基本方針になっています。

 西暦2000年までの10年間に日本は総額430兆円の公共投資をすることになっているわけですが、従来の省庁タテ割で建設省が7割、農水省が2割、あとはその他、しかも省内も局課ごとにシェアが固定している。これでは土建業者のための公共投資をいつまでも続けることになります。

 住宅・下水道・公園・情報通信・健康医療・スポーツ文化教育・環境・研究開発・コミュニティなどの分野に積極的な投資をする。そのためには建設省と農水省の予算を思い切ってカットしなければなりません。たいへんな抵抗がおこりますが、これをやらなければ日本のリストラはできません。

安全保障基本法要綱をつくりました

 冷戦が終わって新しい時代になったのに細川政権の国会で未だに「自衛隊は合憲か、違憲か」というような論争が行われているのは何とも情けないことだと思います。

 この問題に決着をつけるためと新しい国際社会での日本の役割を明確にするために準憲法的な規範として「安全保障基本法」を制定すべきだというのが、私たちの年来の主張ですが、衆議院の法制局のみなさんの協力を得て、8ヶ月かけて法案の要綱が11月9日出来上がりました。

 専守防衛の自衛隊は合憲とする、非核三原則を法制化する、国連を中心とする集団安全保障体制には別組織あるいは国際公務員として参加する、ことなどがその骨子ですが、15条から成るこの要綱(第一次案)をたたき台として多くの方々に議論していただいて、安全保障政策についての国民合意をつくっていきたいと思います。

「274」という数字はどこから来たのか?

 11月15日の深夜、政治改革をめぐって細川・河野トップ会談が行われた時、私は連立与党の党首の一人として待機していました。トップ会談が終わって首相官邸に集まったとき、テレビの河野総裁の会見で、細川さんが小選挙区の定数を274と提案したと話しているのを見て私もちょっと驚きました。

 275という数字は聞いていましたが、トップ会談から帰ってきた細川さんの説明では自民党の300と政府の250の中をとった275ではなく、総定数の500の中からまず47都道府県に小選挙区を1つずつ割り当てて残りの453を小選挙区と比例代表に半分ずつ割り当てると小選挙区は274となる(四捨五入して)、とのこと。計算方法に一定の理由があり、しかも275より1つ少ないことで社会党に配慮しているというなかなかの苦心の案で、成田首相秘書官の知恵かもしれませんが、私はなるほどと賛成しました。


科学技術庁情報

種子島から「もんじゅ」へ

 国会が始まってからは日程がきびしくなって視察の機会がなかなか取れなかったのですが、11月21日から23日の連休を利用して視察をすることにしました。

 まず21日には朝大阪空港から出発して種子島の宇宙センターへ。2月1日打ち上げ予定のH−IIロケットの組み立て棟から打ち上げ棟への移動を視察しました。その後屋久島に行く予定だったのですが天候不良で断念、岡山へ戻りました。

 22日は朝岡山駅頭で街頭演説、午前は事務局会議、午後は女性の会の講演会に出席。夕方岡山を出発して福井県敦賀市へ。

 23日は朝から敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」、新型転換炉原型炉「ふげん」、美浜の関西電力の原子力発電所などを視察します。かなりあわただしい日程になりましたが、どうしても早めに視察しておかなければならない所なので、職員のみなさんの協力も得て行うことになりました。

アメリカ議会とテレビ討論

 11月17日朝、東京のKDDのスタジオで、アメリカ下院の会議室との間でテレビ会議を行いました。アメリカ下院の科学・宇宙・技術委員会のブラウン委員長の呼びかけで実現したもので、日本側の出席者は私と、広中環境庁長官、臼井衆院科学技術委員長、川島筆頭理事、岡田委員など。アメリカ議会側から私に、日本の宇宙開発政策やプルトニウム利用政策に対して質問があり、なかなか有意義な機会だったと思います。

 日本の科学技術製作や原子力政策は世界から大きな関心を持たれており、日本の国民のみなさんに詳しく説明するだけでなく、世界の人々にも説明していかなければなりません。国民合意と国際社会の理解は科学技術政策を進める上で不可欠のもので、これは私の大切な役目だと自覚しています。そのためにも今回のテレビ会議は有意義だったと思います。


やさしい政治講座 1993/11/22

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