江田五月のやさしい政治講座 6 1993/12/27

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1994年は再編成と構造改革の年

 フジテレビの「報道2001」のアンケートで94年の政治・経済・社会の動きを展望したキーワードを一言で、と問われて迷うことなく「再編成・構造改革」と答えました。この言葉は今までも使ってきた言葉ですが、私自身もその当事者・責任者の一人として、94年は格段の具体性と重要性を持っていると思います。

 まず、政治では5年越しの政治改革法案の決着。そして94年秋にもある総選挙をめぐって政界再編成。冷戦時代の政治構造である55年体制(自民党と社会党の政治)から95年体制(穏健な多党制?あるいは三極構造?あるいは新しい一党支配?)への構造改革がうまくできるかどうか、行政の構造改革は、規制緩和・情報公開・地方分権・中央省庁の再編成と難関ぞろいですが、そのためにも新しい政治のリーダーシップを作ることが必要なのです。

 経済ではリストラクチュアリング。リストラを行いながら新しい産業・事業をどのように興していくか。政・官・財の、癒着ではない連係プレーが必要でしょう。

 社会では雇用と福祉。活力ある高齢化社会のビジョンをつくらなければなりません。教育改革、女性の権利、人権の尊重。地球市民の時代である21世紀を展望した構造改革がテーマになると思います。


1994年1月に社民連は解党する?

 12月21日に結成された社会党改革派の新政策集団「デモクラッツ」の結成総会での挨拶で社民連の阿部昭吾書記長(代表代行)が「社民連の歴史的任務は終わった。16年間やってきたが、デモクラッツが旗揚げしたことにより、このあたりで旗を巻いていい時期になった」と述べ、1月中にも社民連を解散する意向を示した、と報道されました。

 その日は私も各社から取材を受け、阿部書記長の発言は打ち合わせをした上でのものではないが、以前から政界再編成の中で社民連は発展的に解消すると言ってきたし、94年1月は政治改革法案の成立となれば、社会党の動向も含めて政界再編成は待ったなしとなる。その時に社民連が率先して一歩を踏み出す決意を述べたもので、それは妥当なことだとコメントしました。

 94年1月に政治改革法案が成立しない可能性もありますが、それでも政界再編成は必至の情勢です。以前にもふれましたが社民連は、5人の国会議員全員が“坂本龍馬”です。94年からはじまる政局に5人の龍馬が動かないはずがありません。今回は“阿部龍馬”の発言ですが、他の4人もそれぞれの構想を持っています。最終的にはどうまとまるかはまだわかりませんが、動きはじめたことは間違いありません。


政治 経済 永田町 の 今

またまた政治改革法案はどうなるか?

 11月24日午後4時30分からようやく政治改革法案の参議院での実質審議が始まりました。衆議院を通過してから36日目、5年越しの政治改革論議の中で参議院の委員会での実質審議は始めてのことです。と言っても昔の社会党以上に強力な野党になりきっている自民党の抵抗は強力で、まだまだ予断を許さない情勢です。法案が成立する可能性は現段階では6割くらいだと思いますが、それでも道筋は見えてきたかもしれません。

 それは1月20日過ぎ頃までに審議を終了していくつかの修正を加えて参議院で採決して可決成立させる。参議院社会党の一部の反対で否決された場合は、憲法59条の規定により衆議院が両院協議会の開催を求め、細川・河野のトップ会談などにより、自民党案に大きく歩み寄ってでも合意をつくり、両議員で可決成立させる、ということです。さて、実際にはどうなるかまだまだ大変です。

不況対策の処方箋 その4

 「構造不況」への処方箋の3つ目は「リストラ・ジャパン」です。成長型経済が終わった日本経済は、円高・低成長(あるいはゼロ成長)のもとで、生活の質を高める、企業は収益をあげる、という目標を達成しなければなりません。

 そのためには日本経済の“”不採算部門にメスを入れなければならない。農業・流通・建設・医療(質も)・事務管理・特殊法人などにメスを入れると同時に、新しい産業・事業を興して新しい雇用をつくり出す必要があり、規制緩和と公共投資の配分比率の見直しも、この目的と合わせて行う必要があると思います。

 その場合注意しなければならないのは雇用と福祉について政治は責任を持つという決意を明らかにすることだと思います。「リストラ」がいたずらに失業をつくり出し、福祉を切り下げるという事があってはなりません。それは経済の活性化にとっても逆効果をもたらすことになります。

科学技術庁の地域振興政策について

 平成4年4月24日に閣議決定された「科学技術政策大綱」は日本の科学技術政策の基本方針とも言うべきものですが、その中に「地域における科学技術の振興」という項目があります。「地方公共団体による科学技術政策の策定、地方公共団体の科学技術推進機能の強化、地方公共団体が設置する研究所および試験所の活性化等の研究開発機能の強化、地域間の連携の強化等を支援する」と書かれ“科学技術情報ネットワークの地域展開”“地域に置いて科学技術を担う人材の養成”“地域の特性を活かした研究開発、地域住民の生活に係わる研究開発”というような記述もあります。科学技術庁の地域振興策というとちょっと耳慣れないかもしれませんが、従来のキャッチアップ型の産業政策から、研究開発型の産業政策・地域振興政策を積極的に推進していきたいと私は考えています。

年末年始の過ごし方

 今年は94年度予算の編成が大晦日までかかると覚悟していたのですが、第3次補正予算も含めて予算編成が越年という事になり、政治改革法案の審議も年内は27日までとなりました。従って12月29日から1月3日までが休みという事になりました。

 1月1日は午前に皇居で新年祝賀行事があり、首相官邸で閣僚の顔合わせをした後、岡山へ向かいます。2日・3日と岡山で新年のお祝いをして3日の夜には東京へ戻ります。4日は朝から科技庁で職員のみなさんへの年頭のあいさつがあり、連立与党の議員も国会へ結集して政治改革法案の審議に臨む体制を取るようです。年末の29日から31日までのスケジュールは未定ですが、「再編成と構造改革」の年である94年に備えて十分な情報とエネルギーをインプットしておきたいと思います。


科学技術庁情報

「COE」ってご存知ですか?

 COEとはCenter of Excellenceの略で、中核的研究拠点と訳されていますが、世界最先端研究所ということで、科技庁では公的研究機関における特定の研究領域の水準を世界最高レベルにまで引き上げることを目的としてCOEの育成を支援する制度を設けました。1年間に3つの研究機関を選定して毎年4億円で5年間(合計1機関当たり20億円)科学技術振興調査費から支出しています。

 COEというのはおもしろい考え方で、私は「地域COE」という考え方もあるのではないかと思います。またわが国の世界最高水準の科学技術として国際研究協力のために開放する高速増殖原型炉「もんじゅ」、高温ガス炉「HTTR」、重粒子線ガン治療装置、大型放射光施設「Spring-8」、国際熱核融合実験炉「ITER」(まだ建設地が日本と決まっていない)、なども日本のCOEといえるのではないかと思います。

1994年の10大ニュース

 93年は科学技術10大ニュースとしては、ロシアの核廃棄物海洋投棄、プルトニウム運搬船あかつき丸、北海道南西沖地震、臓器移植問題などがありますが、あまりよいニュースはなかったようです。(私の科学技術庁長官就任は別にして)。

 しかし94年は今から予定されている10台ニュースがいくつもあります。まず2月にはH2ロケットの打ち上げ(成功率95〜100%)、3月は世界で初めての重粒子線がん治療装置スタート、4月には高速増殖原子炉「もんじゅ」臨界、7月頃には向井千秋さんの宇宙飛行、そのほかにも7年ぶりの原子力開発利用長期計画(「長計」)の改訂などがあります。

 いずれも94年1月に解散総選挙にならなければ、私が最高責任者の科学技術庁長官として取り組む重要事項ばかりです。いずれもが日本と世界にとって良いニュースとなるように、頑張りたいと思います。


やさしい政治講座 6 1993/12/27

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