江田五月のやさしい政治講座 8 1994/02/08 |
「国民福祉税」でまたまたピンチ!
2月3日未明の記者会見で細川さんが発表した「国民福祉税」で、細川政権はまたまた大揺れとなりました。
1月21日の参議院本会議での政治改革法案否決で大ピンチになったところを、トップ会談こよる逆転ホームランで1月29日に政治改革法案が成立。支持率も大きく上昇したのですが、平穏な航海は3日しかもたずに、再び嵐の海に突入しました。
この時私は閣僚の中でただ一人(?)東京を離れていました。2月1日打上げ予定のH−IIロケットが悪天候のため打上げ延期になり、2月3日打上げに立会うために2日の夕方から種子島宇宙センターにいたのです。2月3日の朝、H−IIは再び打上げ延期となり、一方政権は大揺れということで、急拠東京へ戻ったのですが、種子島での記者会見で、私は「政策論としてはそんなにストライクゾーンをはずした話ではないが、どういう手法で合意をつくるのかという手続き面で問題があるのではないか」という意味のことを述ペました。
たしかに「唐突」「姑息」「単なる税率アップ」「手続無視」という批判に対して、明確な福祉ビジョンの策定、抜本的な税制改革、十分な議論と合意形成の努力がなければ真の改革はできません。ボタンをかけ直して前にすすむために私も最大限頑張るつもりです。
政治改革法案ついに成立
1月29日、政治改革法案がついに成立しました。施行期日を抜いて、重要項目の修正を通常国会(本予算審議前)に送るという変則的な形ではありますが、両院協議会の2/3以上の多数(17対2)で可決され、衆参両院の本会議の大多数で可決成立したことの意味は大きいと思います。
小選挙区300、比例代表200、比例代表は11ブロック、企業団体献金は1団体50万円まで、という修正は自民党案に大幅に譲歩したものですが、これは政治改革法案の出発点となった第8次選挙制度審議会の答申案とほほ同じもので、言わば原点に戻った形です。
区割り法案の成立まで含めた政治改革法案の最終的な成立は秋の臨時国会になりそうですが、それでも新しい選挙制度へ向けての政界再編はスタートしました。
口火をきったのは新党さきがけで、田中秀征代表代行が首相特別補佐を辞任して党務に専念、武村官房長官も「小さくともキラリと光る国・日本」を出版、リベラル路線を走りはじめたようです。私たち社民連の解党方針決定(新党結成までは存続)と「さきがけ日本新党」との統一会派入りも、政界再編成の先駆的役割を果たそうというもので、リベラル新党あるいは連立新党結成へ向けてスター卜を切ったものです。
政治 経済 永田町 の 今
■統一会派「さきがけ日本新党」へ
1月29日に召集された第129回通常国会(6月29日まで150日間)から、社民連は社会党との院内統一会派を解消して、新党さきがけと日本新党と社民連の統一会派「さきがけ日本新党」を構成することにしました。
しかし実質的にこの形で行動するのは私と阿部昭吾書記長だけで田英夫参議院議員と菅直人衆議院議員(新党さきがけに入党)は社民連を離党、楢崎弥之助代表代行は社民連党籍で社会党との統一会派に残ることになりました。
社民連本体も1月24日の運営委員会で、連立与党を再編成して新党を結成し、社民連を解党する方針を正式決定しました。統一会派「さきがけ日本新党」を中心にして、「市民の政治」を目標とするリベラル新党あるいは連立新党をすみやかに結成したいと思います。当面はちょっとわかりにくい展開かもしれませんが、なるべく早くすっきりさせたいと思います。
不況対策の処方箋 その6
今回は「消費不況」。処方箋としてはまず、今問題の所得税減税ですが、景気対策としての効果はあまりないという議論もありますが、年間6兆円で3年間の先行実施ということになれば効果がないということはありません。たとえ相当部分が貯蓄にまわったとしても、バブル崩壊で悪化した家計のバランスシートを改善させることは間違いない。
さらにこの3年間で規制緩和、円高差益の還元などの内外価格差の是正策をすすめて、将来の間接税率アップが消費減退につながることがないようにすればさらに効果は高まります。
もう一つ消費不況に対しては消費者が真に求めているものを企業がもっとしっかりとつかむことが必要です。従来の成長型経済の延長の考え方しかできない企業は生さ残ることはできません。賢い消費者に対して適切な商品・サービスを提供することが消費不況への一番の処方箋でしょう。
■ボール拾いで汗をかく
3日未明の「国民福祉税」で意見が対立し細川内閣は混乱状態になりました。特に4日の昼の与党代表者会議で意見が対立し、「減税も増税も白紙」ということになって、細川党首を残して内野手も外野手もベンチに引っ込んだ形になってしまいました。
ボールは官邸にあるのか、与党代表者会議か、あるいは社会党か。いやグラウンドに落ちて誰も拾いに行かない状態だということで私は4日の夕方からボールを拾いに行きました。
まず羽田さんと電話で話し、夜には山岸さんと電話。5日は武村さんに電話したが連絡がつかず、山岸さん、羽田さんと再連絡。午後3時には総理公邸で細川さんと会談。6日の日曜日の午後は連合の臨時中央執行委員会での8党首会合に出席しました。合意形成はなかなか難しく、状況の打開ができたわけではありませんが、誰もボールを拾いに行かない状態の改善には役立ったと思います。
■宇宙と原子力は平和利用に徹する
H−IIロケットの成功や日本のプルトニウム利用政策、それに北朝鮮の核疑惑などが重なって、日本が将来核武装するのではないかというような議論がアメリカなどで起こっているようです。
私は科学技術庁長官として宇宙開発委員会と原子力委員会の委員長という立場にあり、この問題についての直接責任者です。
私は4つの点で日本の宇宙と原子力の軍事利用はあり得ないと説明しています。第1は意志。日本政府も日本国民もその意志を持っていない。非核三原則も国是となっている。宇宙の平和利用についての国会決議もある。第2は法制度。日本憲法・原子力基本法・宇宙開発事業団法などの平和原則。第3は技術。軍事利用できないような技術システムにし、技術の透明性を確保する。第4は国際的保障措置。特にプルトニウムの国際管理システムを確立する。
これからは私自身が国際社会に対して直接説明していくようにしたいと思います。
科学技術庁情報
H−II大成功に「感動!科学の心」
H−IIロケットは現場の担当者の皆さんから見れば、100点満点の200点の成功だったようです。
LE-7という第1エンジンの完全燃焼(これだけで100点の価値があるようです)、フェアリング(先端部のカバー)分離、第2エンジン(LE−5A)完全燃焼、OREX(大気圏再突入実験機、りゅうせい)分離、VEP(性能確認用衛星、みょうじょう)分離、OREX着水、VEP受信開始・停波などの課題の全てが成功しました。まさに「感動!科学の心」です。(この「感動!科学の心」というのは4月18日から24日の科学技術週間の標語で、公募した標語の中から私が合成して作ったものです。)
OREXは有翼無人往還機(日本版スペースシャトル・HOPE)設計のための基礎データを得るためのもので、西暦2000年頃には実験機を打上げる計画です。現在「宇宙政策大網」の改訂作業を行っており、月・火星・金星探査も含めた宇宙開発の方向が示されると思います。
「原子力長計」の見直しにご意見を
「原子力開発利用長期計画」の見直し改定作業を行っていることは以前この欄でふれましたが、この長計の改定に際して、多くのみなさんのご意見を聞こうということで1月28日付の新聞広告で募集しました。
まず2月8日必着で参考資料と応募用紙の請求を募集したところ、7日現在で5200通あまりのハガキが届きました。予想以上の応募をいただいて、担当者も驚いているようです。ご意見を寄せられた方の中から10人程度の方には、3月4日と5日に開く「ご意見をきく会」に出席していただいて意見を述べていただくことになると思います。寄せられたご意見は残らず記録して長計に反映させるようにし、反映されない場合でも何らかの方法で応答するようにしたいと思います。
日本の原子力利用について批判的な方も含めて関心をもつ方が多いということは、安全性を高めるためにも不可欠のことだと思います。
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