2001年02月07日 |
参議院本会議で7日、前日に引き続いて施政方針演説に対する各党の代表質問が行われた。民主党・新緑風会からの2番手として石田美栄参議院議員が登壇した。
冒頭で石田議員は、「2つの世紀にわたって生きることの幸運なめぐりあわせを喜びたい」としながらも、輝かしい世紀が始まったと実感する人がどれだけいるかと指摘。自民党の利権最優先、問題先送り、国民・有権者をないがしろにした政治が、国の活力を失わせたとした。
質問では、まず森首相に「日本新生内閣と銘打っているが、過去に政治判断を誤って、失われた10年を演出した張本人たちを配した内閣で本当に新生できるのか」と皮肉をまじえて迫った。
また地方分権についての民主党の理念を示した上で、「政府が進める市町村合併は、権限や財源は相変わらずの中央集権的システムのままであり、真の地方分権とは言えない」
と批判した。
また、安心して子育てできる環境の整備にも大胆な地方分権が必要、とした石田議員は仕事をしながら子育てをした自分の体験から「職住接近の生活環境を創ることが重要」と提言。雇用環境の整備、働く親の要望の強い「子ども看護休暇制度」「短時間勤務制度の充実」「ベビールーム、保育所、学童保育を含めた総合的な保育事業制度」の充実を求めた。
続いて石田議員は、新たな役割を担う市民セクターとしてのNPOへの育成支援策について、寄付税制をはじめとする民主党の積極的なNPO支援税制に比べ、「政府の税制案では、圧倒的多数のNPOが、制度を利用できない」と指摘。政府案の目的、効果などは疑問だとして、森首相の認識を質した。
これに対して森総理は、「認定要件を満たしていれば、税制上の特別処置の対象となる。できるだけ多くのNPO法人の積極的な活用を期待している」などと正面から答えようとはしなかった。
次に、KSD疑惑で明らかにされた自民党党費の立替え問題に触れ、「自民党の比例順位は金次第ということを如実に表している」として、それ自体わいろと同じだと厳しく批判した。さらに、自民党が参議院比例代表選挙制度を非拘束式に強引に改悪したのは、「自民党の一部特定団体との癒着構造を国民の目からそらすためだったのではないか」と迫った。
石田議員は、「参議院としても証人喚問などで疑惑の追及を行い、その真実を国民に明らかにする責任がある」と指摘。連立与党の公明党・坂口大臣と保守党・扇大臣にもコメントを求めた。坂口大臣は「証人喚問は疑惑解明の選択肢のひとつだと思うが、それだけしかないのでは議会制民主主義が閉塞する。そこに至る努力こそが重要。伝家の宝刀は最後の段階まで抜かないところに意味がある」などとはぐらかし、扇大臣は「疑惑の対象議員は議員としての誇りと尊厳をもって明快な説明をすべき」と述べた。
続いて、石田議員はライフワークの「教育改革」を取り上げ、最近の改革論議について、文部科学省、中央教育審議会、教育改革国民会議の発表や提言、担当者の発言などに混乱や矛盾がみられると指摘。諮問機関である教育改革国民会議の報告をどう評価し、扱うつもりかと首相に質した。森首相は「国民会議の報告は自由な議論のたまもの。矛盾はない」としか答えなかった。
また、中高一貫教育の推進に関して、昨年の通常国会で小渕前首相が「5年間で全国に500校」と公約したものが、平成13年度予定も含め公立校でわずか29校に留まっている点をあげ、「言いっぱなしにしておくつもりか」と迫った。
また少人数学級の実現について、石田議員は、政府の「国の標準より小さな学級編成をすることを特例的に認めるが、増える教員の人件費は都道府県負担」との提案を、「小出しの姑息な提案」だと断じた。さらに、政府が少子化による児童・生徒数減で浮く人件費で、非常勤講師の雇用や教師を定年退職後再雇用することで、20人授業の実現を打ち上げている点についても、「ごまかしだ」と批判。「こんなことで、基礎学力の向上ときめ細やかな指導のための少人数指導を実施する“教育改革国会”とは、お笑いごとだ」と語気を強めた。
(民主党 News)
第151回通常国会 参議院本会議
施政方針演説に対する代表質問
民主党・新緑風会 石田美栄
民主党の石田美栄でございます。私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、森総理並びに各閣僚に新世紀、日本の国の舵取りについて質問させていただきます。
いよいよ21世紀を迎えました。いま確かに20世紀と21世紀の2つの世紀にわたって生きることのできる、幸運なめぐり合わせを私たちは喜びたいと思います。しかし、輝かしい世紀が始まったと実感している人が、今の日本にどれだけいるでしょうか?。森総理自身はいかがでしょうか?
20世紀は戦争と対立の世紀といわれ、また、開発と発展の世紀でもありました。いま私たちは、この新世紀を国民が平和に暮らし、自立と共生、ゆとりと豊かさの中で、ひとり一人の個性と活力が生かされる社会を築き上げる、「創造の世紀」としなければなりません。
特に私たち国会議員には、自分たちの世代、親たちの世代、中でも子や孫の世代の営みを確かなものとするよう、日本の国のかたちをより良い姿へ変えて行かなければならない責務があります。
しかし、政治の現状はどうでしょうか?
20世紀後半、官僚と癒着した自民党政治が、中央集権的なシステムをあやつり、公共事業を中心に国の経済を極限まで拡大してきました。
その結果、わが国経済は高い経済成長を達成し、物質的には非常に豊かな社会を築きましたが、政官業の癒着構造は固定化し、環境・教育・人心など、経済以外の分野では事態の悪化が続き、いまや極限に達しています。特に20世紀最後の10年は「失われた10年」と言われ、自民党政治の「利権最優先」「問題先送り」の、ひたすら国民・有権者をないがしろにした政治が、国の全ての活力を失わせる原因となりました。そしていまや、わが国は完全な「袋小路」に入った状態にあります。
重ねて申し上げますが、自民党中心の「利権最優先」「問題先送り」の政権が築き上げてきた、この中央集権的なシステムは、政官業の強固な癒着構造と無駄な公共事業のばら撒きによって、国・地方併せて660兆円を上回る膨大な借金の山を作り上げています。
まだこんなことを続けるのでしょうか?。いまや、政治に対する国民の不信感・失望感が蔓延し、最新の世論調査では、内閣支持率14%という、これまでの最低となり、残念ながら余りにも情けない状況であると言わざるを得ません。この現実を総理はどう受け止めますか? ご感想をお聞かせいただきたい。
本院同僚である久世議員、村上議員、小山議員が関係した、名簿順位を上げるための自民党党費の立替え問題、KSD関連の疑惑、そして外務省官僚による機密費の流用疑惑など、自民党政権が得意とするこの中央集権的システムが、いかに政官業の癒着と利権構造を生みやすいかを端的に物語っています。
いま、わが国が陥ってしまった「袋小路」から抜け出すためには、国の現在の機構を全く新しいシステムへ移行するしかありません。
私たち民主党は、そのために、国の権限と財源を大幅に地方へ移譲し、地方自治体と住民が権限と責任を持って、地域のことは地域が主体性を持って自ら決定できる、真の意味での地方分権システムを大胆に進めることが必要と考えています。
また、低迷するわが国経済を再生するために、なお一層の規制緩和とセーフティーネットを組み合わせながら、民主導で市場経済を再生させなければなりません。
さらに経済以外の分野も重視し、環境保全・社会保障制度・教育再生・人の心・雇用などの分野でも、セーフティネットの構築を優先させることが必要であると考えます。
私たち民主党は、21世紀を担う未来の世代のために、現状を正しく認識し、変革をけっしてあきらめず、自民党の前世紀的古い政治が、50年余りをかけて培ってきた中央集権的政治、利権最優先の政治が生み出した弊害を解消して、透明・公正・公平なルールに基づいて、「市民・市場・地方」の3つの視点をしっかりと踏まえた「市場経済とセーフティーネット」「自由主義と社会民主主義の融合」である新しい理想主義・新しい政策路線を確立して、わが国の「国のかたち」をより良いものに変革して参る決意であります。
さて、これから質問に入ります。総理は、自らの内閣を「日本新生内閣」と銘打っていますが、過去に政治判断を誤って「失われた10年」を演出し、わが国を「袋小路」に迷い込ませた張本人の方たちを配した内閣に、本当にわが国を新生することが出来るとお思いですか?
お考えをお聞かせ下さい。
次に総理は、「新たな国づくり」「日本新生」「第3の改革」を唱え、「既存の施策の発想を超え、過去との決別による改革を避けて通ることはできない」とおっしゃっておられましたが、その大きな柱と考えられる地方分権については、先の施政方針演説の中で、ほんのわずかに触れたのみでは、ありませんか。
私たち民主党は、大胆な地方分権を進め、住民に身近なサービスは基本的に全て市町村が行い、対応できない大きな課題については、広域行政主体が担い、中央政府は、外交・防衛・通貨制度・教育や福祉の基本水準など、国家としての共通性が求められる役割のみを担うこととして、地域のニーズと時代の変化に即応できる、効率的でスリムな政府を目指すべきだと考えています。
そこで私たちは、初めに現在の補助金の大部分を使途の限定されない一括交付金に改革し、さらには現行の地方交付税を改め、所得税の一定割合を自治体の自主財源として移譲して、自治体のやる気と自助努力を反映できるシステムに改め、そこに暮らす住民が、自治体から受けるサービスと税負担の関係を明確にしたいと考えています。
その上で、役割の重要になった基礎自治体である市町村が、必要な規模や態勢を確保するために、市町村合併を適切な情報公開のもと住民参加で進めていく考えであります。一方、政府が現在進めている市町村合併の仕方は、権限や財源については相変わらずの中央集権的システムのままであり、真の地方分権とは言えません。
私たちは、真の地方分権が進み、それぞれの地方がそれぞれの個性を発揮し、活性化して行くなかで、新しい仕事と労働環境が創出され、さらに豊かな住環境も整備されて、みんなが生きがいの持てる地域となれば、きっと子育てのしやすいところへ若者も戻ってくるはずと考えております。
子どもを産むという尊い役割を果たす女性が仕事をやめずに、生き生きと働き続け、能力を発揮し、社会で活躍できる可能性を広げ、しかも、男性も女性とともに仕事と家庭を両立し、安心して子育てのできる環境を社会全体で整えることが、未来のために重要です。
私は、それには職住接近、すなわち働く場所と住まいが近いという生活環境を創ることが、仕事をしながら子育てを実践してきた自分の体験上からも、非常に重要な課題であると考えております。
だからこそ、そのためにも地域の主体性の生きる大胆な地方分権が必要だと考えていますし、働きながら子どもを産み育てやすい雇用環境の整備として、働く親の要望の強い「子ども看護休暇制度」や「短時間勤務制度の充実」、「ベビールーム、保育所、学童保育を含めた総合的な保育事業制度」などの、個別の施策を整備することも必要だと考えます。
以上、地方分権に対しての考え方を少子化対策、家庭と仕事の両立支援、男女共同参画社会の実現という観点も含めて、森総理にお尋ね致します。
次に、分権社会の実現にむけて、新たな役割を担う市民セクター、NPOへの育成支援策について、うかがいます。
価値観が多様化し、複雑化した現代社会では、政府や企業とは別の、市民ニーズに合致した多用で、きめ細やかな社会的サービスや雇用を生み出し、市民による自由な社会活動を拡大する、民間・非営利セクターの役割が増大してきます。
NPO法人(特定非営利活動法人)に対しては、世界各国が法人格の付与と積極的な税制支援策で、その活動を育成支援しています。
しかし、わが国では、一昨年施行されたNPO法で、ようやく法人格付与が認められ、この2月現在で3352団体が認証をうけるに、とどまっています。
民主党は、非営利の市民セクターを育成するために、寄付税制をはじめとする積極的なNPO支援税制が、必要不可欠と考えていますが、今回政府から出される税制案は、圧倒的多数のNPOが、その制度を利用することができないものになっています。
今回提出された政府のNPO税制案の目的、そしてその効果として、どれくらいのNPOが、この制度を利用できると考えておられるのか?森総理のご認識をお聞かせ下さい。
続いて、KSD疑惑の究明について、政府の姿勢をお尋ねしたい。
KSD元理事長の横領事件に端を発した一連の疑惑は、残念なことに本院元自民党の小山孝雄前議員の逮捕にまで発展し、さらに拡大する可能性があります。
次々に明らかにされる事実の中で、参議院比例代表選挙において名簿順位を上げるために、自民党党費の立替えが明らかにされました。名簿順位に関わる党費立替え問題は、自民党の久世議員に続いて2人目・3人目であり、自民党が一部特定団体と癒着している体質を示しているものであり、自民党の比例順位は金次第ということを如実に表しています。
そして、党費立て替え自体、賄賂と同じなのではありませんか?
また、昨年、久世議員の党費立替え問題が発覚してから、自民党は参議院比例代表選挙の方法を余りにも性急に、そして余りにも強引に法改正した背景には、今回の疑惑を糊塗するため、さらには自民党の一部特定団体との癒着構造を、国民の目からそらすためだったとの、疑念を持たざるを得ません。
さらには、「ものづくり大学」の設立に関する疑惑では旧労働省と旧文部省、外国人研修生の滞在期間延長に関する疑惑では旧労働省、そしてKSD会員の募集に関して一部の金融機関が、組織的に関与していた疑いでは、旧大蔵省の関与も噂されるに到っております。
まさにKSD疑惑は、政治と行政の広範囲に及ぶ構造的な疑惑に発展しつつあり、中でも小山孝雄前議員と村上議員の疑惑については、その舞台に本院本会議と委員会の場が使われ、参議院全体の責任も厳しく問われる事態となっております。
参議院としても証人喚問はもちろんのこと、疑惑の追及を徹底的に行い、その真実を国民に明らかにしなければならない責任があると考えます。
今回の疑惑について、内閣として、また自民党総裁として、どのような態度で臨む方針か、森総理にお聞かせいただきたい。併せて、政治腐敗に対して、常に断固とした姿勢を示されてきた公明党から入閣されている坂口大臣。そして参議院から入閣されている扇大臣に、特にお考えがあれば、お聞かせいただきたい。
続いて国会議員となって、一貫して教育改革に取り組んできた者として、森総理の教育改革に取り組む姿勢について、お尋ねいたしたいと思います。
「教育は国家百年の計」「国づくりは人づくり」と言います。いままさに、21世紀のわが国に求められている事であります。森総理も今国会を教育改革国会と位置づけておられますが、総理ご自身の「教育観」を、そして、それによって、どのような国にしてゆきたいと考えておられるのか、総理の「国家観」をお聞きいたします。
次に最近の教育改革に関して、文部科学省、中央教育審議会、そして教育改革国民会議の発表や提言、担当者の発言などに混乱や矛盾が多々みられますが、総理は、総理の諮問機関である教育改革国民会議の報告をどのように評価し、どう扱われるおつもりでしょうか? また、中央教育審議会との関係では、その間の総理の決断、リーダーシップをどう働かせるのか、お聞かせいただきたい。
続いて、私たち民主党は「中高一貫教育推進法」を提出して、公立の中高一貫学校の設置を促してまいりました。
私も橋本総理当時に予算委員会において、中高一貫教育の是非について、議論させていただきました。その後、「学校教育法」が改正されて、高校入試のない中高一貫公立学校の設置が可能になりました。
また、去年の通常国会の施政方針演説で小渕前総理は「5年間で全国に500校。全ての子どもが通える範囲に、少なくとも1校を設置する」とおっしゃっておりましたが、その実態は、平成13年度設置予定を含めても、公立では僅かに29校だけであります。
森総理も先の所信表明で、中高一貫教育の推進を主張しておられますが、今後この政府公約をどう実現してゆくおつもりなのでしょうか?
あるいは、また言いっぱなしにしておくつもりなのでしょうか? お尋ねいたします。
次に、私たち民主党は、いわゆる「30人以下学級推進法案」すなわち、小学校・中学校・高等学校の一学級あたりの児童・生徒数を30人以下を標準にして、地域の事情や学校の事情に応じた独自の判断によって、弾力的に学級編制の運用ができるようにするための法案を繰り返し提案してまいりました。
アメリカではクリントン前大統領が、年度教書において、富の配分のために、全米の小学校での18人学級の実現を公約して、実行に移して行ったことは、まだ耳に新しいことと思います。
学校は本来学ぶ所であって、ひとり一人の子どもたちが、それぞれに授業が分かって、学ぶことが楽しい場でなければなりません。そのためのあらゆる手立てを尽くす責任が、国の未来のためにあると考えますが、如何でしょうか?
少人数学級の必要性は政府も認めていて、次々と小出しの姑息な提案を出してきているようであります。
例えば、これまでは全国一律に40人を標準に学級編制がおこなわれてきたのを、一部で国の標準より小さな学級編制をすることを特例的に認めるが、増える教員の人件費は都道府県負担となる。
こんな小手先の法改正をやってみても、今の財政状況の悪い地方自治体が、自らの負担で少人数学級を実現すると本当にお考えですか?国は逃げているだけではりませんか。
また、少子化による児童・生徒数減で浮く人件費で、非常勤講師の雇用や教師を定年退職後再雇用することによって「20人授業の実現」を打ち上げていますが、こんなごまかしがあっていいのだろうか、と私は思います。
細かいことですが、5年間で小中学校の教員を26,900人増やすことして、来年度については、4,500人分の220億円の予算が組まれております。このことは、私の地元岡山県に当てはめてみると、県全体の小・中学校で来年度45人の先生が増えるという計算になります。県全体で45人の先生が増えるだけで、いったいどのようにして「20人授業」が実現するというのですか。恐らく、「1ヶ月に一度だけ、ある教科で20人による授業ができた」そんな程度になるのではありませんか?
こんなことで総理が言う、「学校が良くなる、教育が変わる」という実感が持てるような本格的な教育改革。具体的には、基礎学力の向上ときめ細やかな指導のための小人数指導を実施するための「教育改革国会」とは、お笑いごとではありませんか。総理と文部大臣のご答弁をお願いいたします。
質問の最後に、幸運なことに21世紀最初の国会で、代表質問の機会を与えていただきました会派の同僚議員に感謝を申し上げるとともに、21世紀の日本の行方に、責任を持たなければならない立場にあるものの一人として、本院において活発で真摯な本音の議論が行われることを期待して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
2001年02月07日 |