やまのい和則さんのメールマガジンから抜粋 ホーム総目次日誌に戻る

今日(25日)は、ハンセン病の施設を訪問し、非常にショックを受けましたので、そのことを中心に報告します。

9時半に議員会館出発、11時に多磨全生園ハンセン病資料館に到着。ハンセン病問題の議員懇談会のメンバーでの視察だ。団長は江田五月参議院議員。この日は、中村哲治議員、家西悟議員など、国会議員10人とともに訪問。

資料館では、ハンセン病(らい病とも呼ばれる)患者である平沢保治さん(74歳)が案内をして下さる。

この問題は書き出せば本当にキリがない。簡潔に書く。今なお4400人ものハンセン病患者が全国15か所の療養所に隔離されている。そのほとんどが病気は治っているにもかかわらずである。

ハンセン病は伝染するという誤解に基づき(本当は伝染しない)、隔離され、長い人は75年も療養所に入れられたままで、最高齢は101歳。平均年齢は74歳。

この全生園にも551人の患者さんがいる。家族にハンセン病患者がいるというだけで、その家族が世間から厳しい差別を受けるので、ハンセン病患者は病状がおさまっても自宅に永遠に帰れないのだ。

この全生園が1つの町であり、平屋のプレハブに患者さんが住んでいる。資料室の次は施設を見学し、納骨堂で献花。すでに2万3000人もの患者さんが隔離され亡くなっているのだ。

1953年に「らい予防法」が成立し、ハンセン病患者を社会から隔離し、一生社会に帰さない政策がとられました。この法律は1996年に廃止されましたが、今日でも「家族に迷惑がかかるから」という理由で、多くの患者は療養所生活を余儀なくされています。

案内してくださった平沢さんは、「ハンセン病についての『伝染しない』という啓発が必要です。私たちは哀れみを乞いたいのではない。この現実を見て、皆さん一人一人に生きることの意味を考えてほしい」と言われた。

視察のあと、ハンセン病の患者であり、ハンセン病裁判の原告団の方々に会った。「この問題を議員の皆さんに国会で取り上げていただきたい。このらい予防法で、死ぬまで患者を隔離するという方法が正しかったのか、間違っていたのか、をはっきりさせてほしい。そして、もし間違っていたならば、その責任はどこにあるのかをはっきり結論を出してほしい。私もこのままでは死んでも死にきれない。隔離の中で故郷にも戻れず家族にも会えずに亡くなっていった2万3000人もの患者の無念を晴らすためにも、国会議員の皆さん、どうかよろしくお願い申し上げます」と、原告団の方々が深々と頭を下げられる。

責任の重さを痛感する。この問題は、究極の差別である。

私は、老人福祉、障害者福祉、同和問題、精神医療などさまざまな差別の問題に取り組んでいるが、本当になぜ、こんな差別が日本にまだあるのか、と考えさせられる。

昔の療養所の雑居部屋にハンセン病の患者さんが押し込められている姿は、現在の精神病院の現状に重なるものを感じた。精神病院でも重い病気でもないのに、20年、30年も入院させられている患者さんも少なくない。差別、隔離、偏見。ハンセン病と似た問題は多い。

この議員団団長の、江田五月参議院議員は、お父さんの江田三郎さんの代からこの問題に取り組んでおられる。

別れ際に案内の平沢さん(74歳)と握手した。「ハンセン病がうつるといって、昔は誰も握手してくれなかった」という。指は変形し、血も十分に通っていないので、冷たい手だ。そのひんやりした手の感触が今でも忘れられない。

帰りの電車の中で江田五月さんに話を聞いた。「小泉首相と世間は騒いでいますが、それも政治ですけど、ハンセン病のような地味な問題も大切な政治課題ですよね」(私)

「このような差別の問題を放置すると、結局は、子供へのいじめの問題など、どんどん弱いものいじめの社会になってしまう。私たち政治家の仕事は、経済を成長させることだけでなく、このハンセン病の問題など人権にかかわる問題に取り組んで、社会の質を高めることだ」と江田さんは言った。

「社会の質を高めるのが政治家の仕事」。何かわかる気がする。


明日(26日)は、午後1時から首班指名で小泉首相が誕生する予定。新聞社からも「感想は?」と聞かれている。

私は、今回の自民党の総裁選挙の4人の候補者すべてについて言えることだが、「福祉」を真剣に訴える人はいない。「社会保障」の見直しという形で財源論を議論する人はいても、「福祉」を良くしたいという熱い思いをもった人はいないように思った。

もちろん、「総裁選挙で、福祉のような小さな問題が争点にならない」と言われればそれまでだが、私は、やはり、自民党の政治には「やさしさ」が欠けていると思う。

弱い立場の人々を思いやる視点が欠けている。財政再建、景気回復、構造改革など。確かにどれも大事だが、その根っこになる「苦しんでいる人々を救いたい」という 愛 のようなものが、今の自民党の政治には感じられない。

メールマガジンで、一方的に相手を批判をするのは失礼かもしれないが、小泉首相が誕生する時なので、あえて私の感想を述べた。


私はやはり、民主党への政権交代が必要だと思う。民主党ならもっと「安心」をキーワードに政治を考える。社会の安心感を増す。それが、消費を高め、景気も回復させる。児童虐待、教育、環境問題、福祉、医療、差別の問題。経済成長とすぐに結びつく問題ではないが、江田さんの言う「社会の質を高める」政治が民主党の目指すものだと思う。

こんな心境だから、私は小泉さんになっても政局にはあまり関心がない。 「国会議員なんだからもっと政局に関心を持て」とお叱りを受けるかもしれません。私の気持ちは、常に 福祉 にあるのです。

ホームレスの方々、ハンセン病の方々、痴呆症のお年寄り、寝たきりのお年寄り、そのご家族、また、福祉現場で働いておられる方々、障害のある方々、その方々の暮らしが、私が国会議員になって少しでも良くなりつつあるのだろうか、ということが私の関心です。


菅直人さんは、「政治とは最小不幸の社会をつくることだ」と。私も同感です。最大幸福の追求じゃない。ますます幸せになるのは、個人に任せればよい。

しかし、運悪く、自分の過失や、努力不足でもないのに、不幸になってしまっている人々を、いかに減らすか、これが 政治の責務 だと私は思います。

江田五月さんは「でも、僕たちがやっている人権や福祉の問題に、力を入れるためには、やっぱり政権をとるしかないんだよ。僕たちが今議論してる問題の多くが、政権をとったら一気に進むんだから。だから、政局の話も大事なんだよ」とおっしゃった。

やまのい和則の「国政に福祉の風を!」から


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