平成十四年七月十七日(水曜日)
午後零時三十二分開会
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参考人
弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会元委員長
岡部 保男君
弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会委員長
村越 進君
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本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査 (基本的人権)
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○会長(上杉光弘君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。
日本国憲法に関する調査を議題といたします。
本日は、「基本的人権」について、弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会元委員長岡部保男参考人及び弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会委員長村越進参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
忌憚のない御意見を承り、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
議事の進め方でございますが、岡部参考人、村越参考人の順にお一人二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、参考人、委員ともに御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず岡部参考人お願いいたします。
○参考人(岡部保男君) 御紹介いただきました岡部でございます。
本日は、日弁連の人権擁護活動について意見を述べる機会を設けていただき、ありがとうございます。
日本国憲法の下で、日本弁護士連合会、各単位弁護士会、ブロック弁護士会連合会、そして個々の弁護士がそれぞれ人権擁護活動に取り組んでまいりました。その活動は極めて広範な領域にわたって、多種多様な人権問題について、五十年を超える活動をしておりますので、その全体について取りまとめることは、整理要約することは私の到底できるところではありませんが、本日は、私の理解している範囲でその内容を御説明いたしたいと思います。
人権擁護活動は、大きく分けて三つの課題分野があります。その一は、個々の人権侵害事案について調査し、人権侵害行為に関係する個人、団体、企業、省庁等に対して警告、勧告、要望等を行う人権救済活動です。その二は、各省庁、地方自治体、その他の団体、企業等に対し、その組織、制度の運用や政策等について、基本的人権擁護の観点から調査研究し、提言する活動です。その三は、国会、地方自治体等の立法について、基本的人権擁護の観点から検討し、提言する活動です。人権機関としては、更に人権教育と研修プログラムの策定も任務になりますが、日弁連としては、この分野については若干の実績がございますけれども、まだまだ不十分で課題となっております。
弁護士及び弁護士会の人権擁護活動の歴史を概観しますと、大日本帝国憲法時代においても、個々の弁護士あるいは弁護士の集団は様々な人権擁護活動を行っております。しかし、弁護士会としての人権擁護活動の取組は、弁護士会そのものが形成段階にあったためにほとんどありませんでした。
日本国憲法の下で弁護士法が制定され、弁護士法第一条に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と明記されましたことにより、基本的人権の擁護はすべての弁護士と弁護士会の使命として明確に位置付けられることになりました。個々の弁護士だけではなく、日弁連を始め各単位会及びブロック弁護士会連合会として、そのためのスタッフ、予算を計上して人権擁護活動に取り組んできました。その結果、個々の弁護士では到底取り組むことのできない広い領域にわたって大きな活動をすることができるようになりました。この点において大日本帝国憲法時代との大きな相違があります。
日弁連の人権擁護活動をその時代の特徴的な課題を軸に整理しますと、昭和二十五年から昭和三十年代半ばまで約十年間、第一期、創始期の時期であります。そして、昭和三十年代半ばから昭和四十年代半ばまでの十年間、この時期は沖縄問題あるいは再審の取組などを始めとする第二期と言うことができるかと思います。そして、昭和四十年代半ばから昭和五十年代半ばまで、第三期というべき時期でありますけれども、再審問題が積極的に進んでいく、あるいは公害問題が新たな課題となり、薬害問題などにも取り組むと、こういったような時期であります。昭和五十年代後半から平成元年ころまで、死刑再審四事件について開始決定、無罪が出る、あるいは消費者問題等の活動が始まる。そして平成二年以降今日まで、その活動の分野は、国際人権、高齢者、障害者、犯罪被害者等、社会に起きてくる新たな要請にこたえて更に広がってきたというふうに分けることができるかと思います。
私は、この時期の区分に従って、概略、どういう時期にどういうふうな活動を、そしてどのような委員会ができたかということを、時間の関係もございますので、このレジュメに書いてある中を少しはしょりながら御説明申し上げたいと思います。そして二番目には、現在の弁護士会の人権擁護活動がどのような仕組みで行われているかというふうなことを申し上げたいと思います。そして最後に、平成七年以降昨年までの人権救済活動の中でどういうふうな事例を日弁連として取り上げてきたかというふうなことを御紹介して、我が国の人権状況の一端を御紹介したいというふうに考えております。
人権擁護活動の内容の時期的な概観でありますけれども、第一期は、先ほど申し上げましたが、昭和二十五年から昭和三十年代半ばまでであります。
このころは、弁護士会もようやく人権問題ということを、戦前の人権擁護活動を引き継いで、より積極的にというふうなことで動き出したところでありますけれども、まだ会全体としてというふうな状況ではなくて、そこに挙げてある捜査機関の人権侵害に対して人権総会等で決議をするというふうなことが多うございました。
それから、二番目の(2)で挙げてありますように、これは多くの先生方も御承知と思いますが、近江絹糸事件その他の人権侵害事件について日弁連として取り組んで調査をするというふうな時期でございます。
第二期、昭和三十年代半ばから昭和四十年代半ばでありますけれども、この時期になりまして、昭和二十七年の平和条約により、暫定的にアメリカの統治下に沖縄は置かれました。これに関連しまして、昭和二十八年の土地収用令による軍用地接収をめぐる問題が起き、沖縄の人たちは反対運動を激しく行っておりました。この運動に伴う様々な問題あるいはあつれきについて、人権擁護委員会は沖縄人権問題調査委員会を設置して取り組んでまいりました。これはかなり遅い時期までこの活動は続けてきました。
もう一つは、この時期の特徴は、再審問題に対する取組であります。無辜の者を有罪にする誤判は法治国家おいて最大の人権侵害でありますけれども、あってはならないことでありますけれども、少なくない冤罪被害者がおります。
この時期に日弁連が取り上げたのは、四ページ冒頭に書いてありますように、徳島ラジオ商殺しの事件、それから吉田石松、吉田翁と言われましたけれども、吉田石松の再審事件、そして免田栄さんの再審事件であります。
これは非常に著名でありますから先生方御承知だろうと思いますけれども、吉田翁の場合は特にこの冤罪の被害は深刻でありまして、五回の再審請求を行ってようやく再審が認められたと。そのとき八十四歳になっておりまして、無罪判決が出て九か月後に亡くなったというふうな状況で、この五回目の再審請求に日弁連は取り組んだわけであります。
免田栄さんにつきましては、昭和二十三年に事件が発生し、間もなく彼は逮捕、被告人となるわけでありますけれども、無罪の判決が出たのは昭和五十八年であります。三十五年間牢獄にとらわれ、あるいは再審のために死刑の恐怖の中で過ごさなければならなかったというふうな状況がありました。
これは後に、最後の方で人権救済事件として御説明してあるところでございますけれども、この時期、免田さんは死刑囚でありましたから、国民年金制度が採用された時期でありますけれども、当然、年金を申請する、あるいは年金をお支払できないからという、手続をするといったようなことは期待できない。現在、免田さんは年金を受けることができないということで、日弁連に対して、何とかならないかということで人権救済の申立てをしており、日弁連は、これに対して勧告をしましたけれども、依然として解決されていない。これは正に、国の誤判による犠牲者が年金においても更にまだ犠牲が続いているという悲惨な例でございます。
そのほか、この時期には、捜査機関に対する幾つかの要望等が挙げられております。
そして、先ほどの沖縄問題と関連しまして、平和・基地・沖縄問題についても、この時期に積極的に日弁連は取り組んできました。
第三期、昭和四十年代半ばから昭和五十年代半ばまでですけれども、この時期には、日弁連の活動が次第に広がってきて、様々な取組に対して人権委員会の体制を整備し、部会を作って、ここに掲げてありますような六つの部会を作って、それぞれ取り組むようになってまいりました。
その中で、とりわけここで強調したいのは先ほどの再審の関係でありますけれども、昭和四十七年に、日弁連として個別の再審事件のチームがありましたけれども、それを全体としてまとめて取り上げて取り組むという体制をスタートしまして、翌年、昭和四十七年のことでありますけれども、その後、当時の西ドイツのチューリンゲン大学の元教授だったペータース博士を日本にお招きして、西ドイツの誤判事例一千百件について政府の命によって調査された実績について、誤判がなぜ起こるか、どうして防ぐか、再審はどうあるべきかというふうなことを日本の四か所で講演していただきました。この講演は最高裁判所にもかなり大きな影響があったようでありまして、それから間もなく、白鳥事件の最高裁決定が昭和五十年に出ることになりました。そのことによって、日本のこれまでどうにも動かなかった再審事件が、昭和五十年の白鳥決定によって五十一年以降大きく前進することになりました。
その他、この時期から、公害・環境問題に取り組む、あるいは医療と人権の問題に取り組むというふうなことが行われるようになりました。
第四期が昭和五十年代半ばから平成元年ごろまで。この時期には、先ほど申し上げた再審事件について一連の勝利が続きまして、全体として十二件にわたって再審開始決定、無罪を得ることができました。その成果を踏まえて刑事弁護センターを創設し、そして誤判原因を究明する中で、捜査段階、被疑者段階の弁護が非常に重要であるということで、弁護士会として当番弁護士センターを設置して被疑者弁護を取り組んでまいりました。今、政府に国費による被疑者段階の弁護をお願いしているのも、ここからがスタートであります。
その他、子供の権利問題、それから両性の平等問題等についてもこの時期に取り組むことになりました。さらに外国人の人権問題、それから消費者の権利問題といったものもこの時期から取り組んでまいりました。
第五期として、平成二年以降現在まで、自由の問題、それからマスメディアの問題、社会保障問題、それから高齢者・障害者の問題、それから犯罪被害者の問題、民事介入暴力の問題、国際人権問題とあるいは戦後処理・補償問題という問題についてもこの時期から取り組んできました。
このような形で、人権委員会の部会あるいは人権委員会から分かれた公害対策・環境委員会とか消費者問題委員会とかというようなところで取り組むような形で進んでまいりましたけれども、そのほかに、立法問題、法制問題については、十一ページの六で書いてあるような様々な委員会が人権関連の問題として取り組み、それぞれの委員会において様々な調査研究をし、時々には意見書を国会等に提出するというふうな作業を続けてまいりました。
非常に短い時間で申し上げましたけれども、概略こういったようなことがこれまでの日弁連の約五十年を超える人権擁護活動の大まかな流れであります。
次に、現在の弁護士会の人権擁護活動はどう行われているかということでありますけれども、十二ページの冒頭にありますけれども、日弁連の人権擁護委員は、弁護士百二十名と事務局十四名で構成され、年間約、予算上は四千五百万ぐらいですけれども、毎年五百万前後の赤字が出て、トータル五千万ぐらいの活動をしております。これは事務局職員の人件費は含まないものであります。
取扱件数は、平均すると、平成十二年の例を挙げてありますけれども、日弁連に申し立ててくる件数は百件から百二、三十件が例年の例でありまして、そのうち、何を申し立てているのかよく分からないというものを不受理としまして、それ以外のものを受理するのが大体七十件ぐらいのところであります。それについて不採用というのは、これは予備審査をしたけれども取り上げない、それから調査開始するというものが十件から十数件であります。その調査をした結果、勧告書その他の形で意見をまとめて、しかるべき関係官署あるいは相手方個人に対して勧告、警告等の意見を発表するというふうなやり方をしております。
もう一つは、毎年、人権擁護大会を秋に開いておりまして、今年で四十五回を数えることになりました。ここでは、様々な重要問題について、一年若しくは数年掛けて調査した結果をまとめてシンポジウムを行い、それに基づく提言等を決議、宣言の形でまとめるというふうな作業をしてきました。
十三ページの第三のところで、平成七年以降の人権救済活動の事例として十六ページまで挙げてありますけれども、大体毎年十件前後の勧告、警告等を調査の結果まとめて、それを人権委員会の全体委員会で十分時間を掛けて討議し、さらに正副会長会に上げて審査し、その上で理事会にかけてその警告、勧告を日弁連として行うかどうかを決定するという段取りを取って行っております。ここには、今日時間があればそのほかの点も御説明しようと思いましたけれども、到底時間がございませんので、こういった項目の警告、勧告をこれまでしてきたというふうに申し上げるにとどめたいと思います。
このほかに、昨年度は、布川事件の第二次再審請求及び日野町事件の再審請求に取り組んでいくことを決定しまして、いずれも現在、前者は水戸地裁の土浦支部、それから後者は大津地裁で再審請求の審理に入っております。
私どもは、人権救済活動を中心に取り組んでおりますけれども、ごく最近の例では、このレポートには書いてありませんけれども、例えば現在刑務所の中でどういうことが行われているかという一端を御紹介して、私のまとめにしたいと思うわけでありますけれども。
歯が痛いということで刑務所の受刑囚等が当局に申し出ますと、三か月たたないと受診できないという状態が、東京の拘置所もそうですし仙台でも、大体全国各地で行われているわけです。皆さんも歯の痛い経験十分あると思いますけれども、三か月待たなきゃならないということは、我が国の生活水準といいますか経済水準からいうと、驚くべきひどい例だと思うわけです。しかしこれは、刑務所当局は十分御承知なんですけれども、予算その他、あるいは歯科医を確保できないということでそのまま続いているわけであります。
このような状態が法務省の下で行われていると。そして、その法務省の外局に、今、国会に掛かっている人権擁護法案は提起されている、外局となると。法務省の職員がその人権委員会に出向し、また法務省に戻るというふうなことが想定されているわけです。私ども日弁連が人権委員会を作るべきだというふうに考えておりますけれども、このような形でそういう人権委員会が作られるとすると、ジュネーブの国連人権委員会が求めていた政府から独立した人権機関とはほど遠いものになるだろうというふうに思われるわけであります。そのことは、先日の人権機関の方が来られたときもそういう趣旨のことを申されたというふうに新聞で報道されているとおりであります。
私どもとしては、我が国に本当に人権問題についてきちっと対応できる政府から独立した機関を是非設置していただきたいということを私の最後の発言として、本日の意見とさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
次に、村越参考人にお願いいたします。
○参考人(村越進君) 日弁連の人権擁護委員会委員長をしております村越と申します。
本日は、参議院憲法調査会での発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
私からは、日弁連の立法提言活動、国際人権基準から見た我が国の人権課題、なぜ憲法の人権規定が十分に生かされていないのか、そして基本的人権保障のための展望と課題、以上の四点について簡単にお話をさせていただきます。
第一に、日弁連の立法提言活動についてでありますが、日弁連は、弁護士法の一条に基づき、人権の擁護と社会正義の実現及びそのための法律制度の改善を使命としています。したがいまして、日弁連は積極的に新しい法律の制定を提言し、場合によっては新しい法律案に反対をし、法律の改廃についての意見を表明してまいりました。
現在、日弁連はそうした立場から、障害のある人に対する差別禁止法やホームレス自立支援法及び湿地保全再生法の制定を提言し、国会で審議されております心神喪失者医療観察法案に反対し、個人情報保護法案に反対し本年八月からの住基ネットの稼働延期を求め、また有事法制関連三法案に反対をしております。さらに、改正少年法や児童虐待防止法、DV防止法の施行・運用状況をウオッチし、法律の見直し期限に向けて提言をまとめるべく検討作業を行っております。
また、両性の平等を実現するため、男女雇用機会均等法をより実効的なものとするように見直すことや、選択的夫婦別姓を認める民法改正を急ぐべきことを提言しております。
まず、障害のある人に対する差別禁止法でありますが、御承知と思いますが、一九九〇年にアメリカ合衆国で制定されたいわゆるADA、アメリカンズ・ウイズ・ディスアビリティー・アクト、障害のあるアメリカ人法は、労働や公共交通機関の利用などにおける差別を禁止し、障害のある人が社会の中で自立して生活することを保障しようとする画期的な立法でした。ADAの制定後、障害のある人に対する差別を禁止する法制度を持つ国が増え、現在では四十三か国を超えています。
一方、障害者基本法などの我が国の法制度は、国や地方公共団体の施策の内容を中心として定められており、障害のある人は施策の対象であって、具体的な権利の主体とは位置付けられていません。このため、障害のある人が労働や公共交通機関の利用など生活上の様々な場面で存在する差別やバリアを自ら除去しようとしても、根拠となる具体的な法規定がない、裁判などでも種々の困難に直面してきました。
昨年八月に発表されました国連の社会権規約委員会の最終見解は、障害のある人々に対する差別的法規の廃止と障害のある人々に対するあらゆる種類の差別を禁止する法律の制定を日本に勧告いたしました。
日弁連は毎年秋に人権擁護大会を開催し、一年間の人権擁護活動を総括するとともに、幾つかのシンポジウムを開催し、その年の重要課題について大会宣言、大会決議を採択しています。昨年は、十一月に奈良市で第四十四回人権擁護大会を開催し、千五百名を超える会員弁護士と千数百名の市民が参加しました。日弁連は、この四十四回人権擁護大会において、障害のある人に対する差別を禁止する法律の制定を目指して、バリアのない社会のためにをテーマとしたシンポジウムを行い、差別禁止法の試案を発表しました。このシンポジウムには、堀先生にもパネリストとして御参加をいただきました。
日弁連は、このシンポを踏まえ、日本においても速やかに障害のある人に対する差別禁止法を制定すべきであるとの宣言を採択し、この宣言を受けて人権擁護委員会の中に障害のある人に対する差別禁止法に関する調査研究委員会を発足させ、障害者団体、各政党との意見交換、差別禁止法に関する出版など、引き続き法律制定に向けた活動を続けております。
また、日弁連は本年三月、東京、大阪、名古屋におけるホームレスの実態を調査し、ホームレス問題に関する意見書を発表し、ホームレス自立支援法の制定を提言いたしました。
本年十月には、日弁連は福島県郡山市において第四十五回人権擁護大会を開催します。同大会では、ラムサール条約に基づき、湿地の保全・再生法の制定を提言する予定であります。同法は、湿地の減少及び質的劣化の防止と再生・復元を目的とするものであります。
ところで、ハンセン病問題と心神喪失者医療観察法案についてですが、私たちはらい予防法というとんでもない悪法を四十三年間にわたり存続させてしまいました。このことについては弁護士、弁護士会としても痛みを持って受け止め、痛切に反省し、日弁連としても公式に謝罪をしています。
ただ、大変遅れはしましたが、九州弁護士会連合会が、入所されていた元患者の方から、法律家はこのような重大な人権侵害を放置するのかというお手紙をいただき、これをきっかけにして直ちに問題に取り組み、そのことが弁護団の結成と国賠訴訟につながったということは事実として申し上げておきたいと思います。
ハンセン病患者の終生絶対隔離というものは、患者が社会の一員として人生を全うする権利を完全に奪うものでありました。生まれてから死ぬまで、人はだれでも家族とともに地域で暮らし、学校に行ったり、仕事をしたり、結婚をしたり、友人、隣人と交流する、そんな人生を送りたいものであります。
しかし、我が国では、現在三十数万人の人が精神病院に入院し、社会から隔離された生活を送っています。今また、触法精神障害者に関して心神喪失者医療観察法案が国会で審議されています。しかし、同法案は、再犯のおそれという判定も予測も極めて困難な要件をもって、患者に対する治療行為としてではなく、医学的な根拠もなしに精神障害者を期限の定めもなく特別な施設に隔離収容することを認めるものであり、精神障害者に対する差別と偏見を助長し、人権の世紀たるべき二十一世紀の初めに、またもらい予防法の誤りを繰り返すものであると言わざるを得ません。
次に、個人情報保護法案と住基ネットについてですが、行政機関の保有する個人情報保護法案には、収集制限に関する明確な規定がないこと、行政機関等による目的外利用を広く認めていること、安全確保義務違反に対する罰則がないことなど、個人情報保護の観点から重大な問題があり、抜本的な見直しが必要であります。
一九九九年八月に住民基本台帳法の改正により、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットの導入が決まった際、プライバシー侵害の危険性が高いことから、同改正法施行に先立ち、個人情報保護法制を整備するものとされました。したがいまして、今国会で仮に個人情報保護法案が成立しないということになりますれば、住基ネットの稼働は当然に延期すべきものであるというふうに日弁連は考えております。
最後に、有事法制関連法案についてですが、日弁連は現在国会で審議されている有事法制法案に反対し、廃案とすることを求めております。もとより、日弁連は約一万九千名の会員を擁する強制加入団体であります。会員の中には様々な立場、意見の方がいます。有事法制についても、その必要性などについては様々な意見があります。しかし、今回日弁連は、そうした相違を超えて、現在審議されている法案について、法律家団体として憲法と人権の観点から検討し、反対せざるを得ないとの結論に達したものであります。
第二に、国際人権基準から見た我が国の人権課題について申し上げます。
我が国は、一九七九年に国際人権規約、これは自由権規約、社会権規約があるわけですが、同規約を批准しています。国際的な人権基準である同規約の実施義務を負うものであります。また、国際人権規約委員会から勧告された事項について、改善に向けて努力をすべき立場にあります。
一九九八年十一月、自由権規約委員会は自由権規約の実施状況に関する日本政府報告書の審査を踏まえ、最終見解を発表しました。見解では、二十九項目にわたる詳細な懸念事項と勧告が表明されています。一、二紹介いたしますと、我が国の人権擁護委員は法務省の管轄下にあるとし、警察や入管施設における人権侵害を救済するための独立した機関の設置を勧告しています。また、すべての子供は平等な保護を受ける権利があるとして、婚外子差別をなくすため、相続分を嫡出子の二分の一と定める民法九百条四号を含む法制度を改正するよう勧告しています。更に、国内法が自由権規約と適合するよう国内法を再検討ないし改正すること、個人通報制度を定めた第一選択議定書を批准することを勧告しています。
昨年、二〇〇一年八月には、社会権規約委員会が社会権規約の実施状況に関する日本政府報告書の審査を踏まえ、最終見解を発表しました。見解は、二十三項目の懸念を表明し三十一項目の勧告を行っていますが、注目すべき第一は、社会権規約、特にその中核部分に関する政府の義務は法的義務であり、直接適用可能性を有することを指摘し、この点に関する日本政府の見解を見直し、立法、行政及び司法の過程において同規約の規定が必ず考慮されるシステムの導入を勧奨していることです。
第二は、同規約二条二項に定める差別の禁止は例外のない絶対的な原則であると指摘し、差別禁止法の強化を求めていることです。殊に、障害のある人に関する差別条項を廃止し、あらゆる差別を禁止する法律を制定することを勧告しています。
第三は、パリ原則及び同委員会の一般的見解に従い、社会権をも対象とした国内人権機関の創設を求めていることです。
日弁連は、国連NGOとして、以上の審査に際しカウンターレポートを提出し、またジュネーブに代表団を派遣して審査を傍聴するとともに、ロビー活動を行いました。日弁連は、一九八八年に神戸で開催された第三十一回人権擁護大会以来、国際人権法、国際人権基準が我が国で実効的に実施されることを求めており、そのために必要な国内法の制定や改正及び選択議定書の批准を求めております。
第三に、なぜ憲法の人権規定が十分に生かされていないのかということでございます。
国際人権法の国内適用と遵守がいまだ不十分であると言わざるを得ませんが、一方で憲法の人権規定も、残念ながら、いまだ必ずしも社会の隅々まで浸透し、市民の生活の中で十分に生かされてはいないということも指摘せざるを得ません。私なりにその理由を幾つか考えてみましたが、時間がありませんので全部は申し上げられません。ピックアップしてお話をさせていただきます。
まず、最高裁を始めとする裁判所が憲法判断、違憲立法審査権の行使に極めて消極的であったということです。
裁判所は、基本的に立法府や行政府の裁量権を広く認めてきましたが、私はこれは少なくとも基本的人権に関しては誤りであると思います。社会の多数派、国会の多数派は自らの立場や権利を議会制民主主義の手続の中で実現することができます。しかし、人権が問題となるのはそうしたことができない社会的弱者、マイノリティーに関してです。国会が多数で決めたことについて司法がその当否を判断できないのであれば、少数者の人権が守られない事態も生じかねません。司法には、一人に対する人権侵害であっても救済する、そのためには法律を違憲と判断することも辞さない、そうした姿勢こそが必要であります。
次に、個別人権法の不存在ないし不備です。
国際人権法や憲法の規定はある意味で抽象的なものです。それを具体化し明確なものとするための法律の整備が不可欠です。一例を挙げれば、憲法十四条は法の下の平等を定め差別を禁止しているわけですが、これだけでは、どういうことが平等に反し何が差別として許されない行為であるのか、差別を受けた人がどういう権利を有しどういう救済手段があるのかがはっきりしません。このことが人権の実現や人権侵害に対する救済を困難にしてきました。各分野の差別禁止法が必要とされるわけです。
次に、人権が保障されているというためには、人権を侵害されたときに確実な救済が得られる必要があります。そうでなければ人権は画餅に帰してしまいます。人権救済の実効的なシステムが不可欠なわけです。しかるに、今日まで我が国では、大変な時間と労力そして少なからぬ費用を要し、しかも必ずしも救済の実を上げ得なかった裁判、司法救済という手段しか基本的にありませんでした。法務省の人権擁護委員制度は十分に機能せず、私ども日弁連の人権救済活動にもボランティア活動としての限界と権限や効力の壁がありました。
では、今後、基本的人権の実効的な保障のためにどういうことを考えていったらいいのか、これを最後に申し上げたいと思います。この点も、すべて申し上げる時間がありませんので、かいつまんで述べます。
一つは、司法の改革です。現在、司法改革ということが言われ、日弁連も総力を挙げて取り組んでおりますが、人権救済が実効的に行われるような裁判制度と裁判官の養成、そして裁判所による積極的な憲法判断が求められます。
次に、国際人権規約などの国際人権法の日本国内における適用と遵守、そして必要な国内法の整備です。毎回のように国連の関係機関から我が国の人権状況の問題点を指摘されることは、決して褒められたことではないと思います。人権についてのグローバルスタンダードをクリアし、世界に誇れる人権大国を目指すべきだと考えます。この関係で特に強調したいのは、国連に対する個人通報制度を定めた国際人権(自由権)規約の第一選択議定書を速やかに批准すべきであるということであります。
次に、最初に述べました障害のある人に対する差別禁止法のような人権にかかわる各種立法の制定です。各省庁はこうした点で大変腰が重いということを実感しております。私は、この点で特に国会議員の先生方に積極的に議員立法の御提案をお願いしたいと考えるものでございます。
最後に、人権救済機関です。岡部参考人も簡単に触れられましたので詳しくは述べませんが、日弁連は、政府から独立した人権救済機関、これが必要であるということで取り組んでまいりました。しかし、残念ながら、現在国会に提出されている人権擁護法案が想定している人権委員会は、国連や日弁連が求めているものとは全く異なります。
最も指摘しなければいけないのは、政府からの独立性が欠けているという点でございます。この点については、国連のメアリー・ロビンソン人権高等弁務官や、先日来日されたバーデキン同弁務官特別顧問も重大な懸念を表明されております。また、独立性とともに、その委員会の規模等で実効性があるのかということについても大変疑問を持っております。さらに、そういう独立性がない機関がメディアに対する調査権限を有するということは、国民の知る権利や報道の自由を侵害するおそれも大きいというふうに考えております。
ということで、国内人権救済機関を作るべきだと言ってまいりました日弁連としては、本当に残念ではありますが、現在の法案については出し直すべきであるというふうに考えるものです。
日弁連は、一九九九年十一月、人権のための行動宣言を公表しました、行動宣言では、具体的課題と課題実現のための制度改革を明らかにしています。具体的課題においては、二〇一〇年までを一応のめどとして日弁連が重点的に取り組むべき二十三の人権課題を示しています。そして、具体的課題実現のための制度改革では、人権保障のとりでとなるように司法制度を改革すること、それから政府から独立した国内人権救済機関を作ることを求めております。あるべき人権機関ができた場合には、日弁連も当然そうした機関と連携協力し、補完をし合いながら人権活動に取り組んでいくつもりであります。
また、私たち弁護士、弁護士会は、重大な人権侵害事件について、より積極的に訴訟を提起し、司法救済を求め、判例を蓄積して人権基準を明確にする、そうした取組を強化する必要もあると考えています。なお、そうした訴訟を提起する上で、現在言われております弁護士費用の敗訴者負担という制度は極めて大きな障害になるということを是非御理解をいただきたいと思います。
日弁連は、人権擁護活動を担い、あるいは支援することのできるように組織体制を一層強化充実させ、社会と市民の期待にこたえていきたいと考えています。今後とも御理解と御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終了いたしました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
なお、時間が限られておりますので、質疑、答弁とも簡潔に願います。
木村仁君。
○木村仁君 自由民主党の木村仁でございます。
本日は、両参考人から人権擁護活動の実践に基づく極めて貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
日弁連の、特に人権擁護委員会を中心とする人権擁護活動に敬意を表しながら、せっかくの機会でございますので、二、三の点について御質問をいたしたいと思います。
最初に、人権救済機関の在り方の問題でございます。
国際人権(自由権)規約委員会の報告は、人権救済機関として政府から独立し、公権力による人権侵害をも実効的に救済できる人権救済機関を設置すべきであると、こういうことを答申いたしておりまして、勧告しておりまして、どうもまだ日本はそれで十分でないと、むしろ韓国等の方がちゃんとした機関を作っているというようなことのようでございます。
ちょっとお尋ねをいたしたいんですけれども、この政府から独立した人権救済機関というのはどのような立場に立つんだろうか。日本では、憲法上、国家権力は立法、司法、行政のいずれかに分け与えられていると、それ以外の国家権力というものはないわけでございます。したがって、北欧のように、北欧のオンブズマンのように立法府に属するのか、あるいはむしろ司法に属するのか、あるいは行政でもまた人事院のような状態で置くことがよろしいのか、その辺りはどうであろうかと。例えば委員の任命、そしてフランス革命のように、この機関自身が暴虐な機関になることも可能なわけでありますから、それに対する民主的統制はどのように考えるんだろうかということ。
御答弁はいずれの参考人でも結構でございますから、よろしくお願いします。
○会長(上杉光弘君) どちらにお答えいただけば、いずれもという、お二人ともですか。
○木村仁君 いいえ、お一人で結構です、いずれでも。
○会長(上杉光弘君) じゃ、村越参考人。
○参考人(村越進君) おっしゃるとおりでございまして、日本の場合にこういう人権救済機関を作った場合、行政、司法、立法、どこに所属するのかという問題はございます。
実は韓国に六月初めに日弁連の調査団を派遣して、今報告書をまとめているところなんですが、韓国の国家人権委員会はその三権のいずれにも属さないんだというような説明を受けておりまして、なかなかそれは日本ではちょっと考えにくいなと。私どもとしては、これはやはり行政に属するしかなくて、国家行政組織法三条の独立行政委員会という在り方、それはそういうものであろうというふうに理解をしております。
問題は、その中身、実態がどうかということであるという考えでございます。
○木村仁君 関連してお尋ねしたいんですが、日弁連の「人権のための行動宣言」というのの「報道による人権侵害」というところを見ますと、報道による人権侵害については、例えば社内オンブズマンなどの社内制度を充実しなさい、あるいはプレスについては、報道評議会など、独立した第三者機関を自主的に設置して救済に努めなさいと、こういうことが書かれております。
これは、今の報道による人権侵害とはそんな生易しいものではないだろう、やっぱり報道から被害を受けた人から見れば報道は敵であると。したがって、むしろ日弁連とされても、このジャッジ・イン・ヒズ・オウン・ケースを認めるような発言ではなくて、もうできるだけ早く弁護士に相談しなさい、直ちに訴訟を起こしなさい、そして、それについて起こしやすいような環境、制度を作るように努力をすると、これが本筋ではないかなという気がしないでもないのでありますが、岡部参考人、いかがでございましょうか。
○参考人(岡部保男君) 報道をどう扱うかについては大変議論のあるところです。
そこで、先生御指摘のオンブズマンとか報道評議会というのも一つの方法でありますけれども、日弁連としては、さきに理解といいますか提案しているのは、一応報道を含めて人権委員会の対象にするという立場を基本的には持っております。ただ、報道自体は権力に対する監視機能あるいは国民の知る権利に奉仕している側面もこれも極めて重大でありますから、その調整を図らなければいけないというふうに思っておりまして、そのためには基本的には自主的な調査あるいは抑制をしていただきたいというのが日弁連の基本的な考え方であります。
ただ、先生おっしゃるような、訴訟でというふうなことでありますけれども、現実に最近幾つか訴訟でかなり高額の賠償判決が出ている例もありますけれども、多くの場合は訴訟までなかなかできない。訴訟はかなり時間を要するものでありまして、その負担も大変だということで、人権機関の発想は簡易、迅速に被害救済をするというところにあるわけでして、そういう点で考えるならば、訴訟でというのはやはり現実の解決には向かないのではないかというふうに思っております。
○木村仁君 本調査会は、本日は基本的人権を議論しておりますが、基本的には憲法のいろんな問題について考えを進めようという調査会でございます。
そこで、この憲法の第三章についての御高見をお伺いしておきたいと思うのでございます。
私自身は、この日本国憲法というのは、第二次世界大戦の終結という歴史的な事件を契機に、我が国が英米法系統と申しますか民主的法制を継受した出来事であったと、こういうふうに認識をいたしておりますので、たまたまそれがマッカーサー憲法草案という形で半ば強制的に押し付けられたというようなことがあったとしても、それは現象面にすぎないと。日本国民自身がそのような世界の一つの法律体系の分野を継受する素地を持っていたんだというふうに理解をいたしておりますから、この日本国憲法全体、そしてとりわけ国民の権利及び義務についてのこの第三章については極めて重要なものであるというふうに考えております。
ただ、このマッカーサー憲法草案を作られた方々がかなり若い方々、例えば、私はこれは大好きな条文でございますが、第二十四条の婚姻に関する条文というのは、当時、二十二歳の大学を出たばかりの女性が書いた条文で、それがそのまま生き残ったと。これは本調査会の公聴会で御本人が、シロタさんという方が証言されております。そういうこともあって非常に理想に燃えて人権中心に書かれていると、それは当然のことであると思います。
ただ、これを論ずる者からすれば、余りにも権利だけが書かれていて、例えば国家存亡の危機における国民の義務とは一体何だろうかというようなこと、そういったことも書かれていないし、全体として例えば公共の福祉に対する配慮がアンバランスになっているのではないかということが指摘されますし、また、この政治、行政の五十年の動きの中で、例えば財産権についての基本権はもう少し制約されていいのではないかと考えられる場合にも、その公共の福祉という理念が余り尊重されない。例えば土地収用に典型的に見られるように、本当に基本的人権の方だけが尊重されてきたのではないかということも指摘されています。
また一方では、新しい時代の潮流として、知る権利をどのように書き込んだらいいのかとか、あるいは環境権をこの第三章の中でどのように位置付けるかとか、様々な議論がされているのでございますが、この第三章についての岡部先生の基本的な考え方、あるいは今申し上げたような問題点についての御感想をお聞かせいただければ幸いでございます。
○参考人(岡部保男君) 第三章について、公共の福祉による制限についてもう少し強化しろというふうな御意見があることは承知しておりますし、それから新しい権利として知る権利なり環境権を憲法に規定すべきではないかというふうな御意見もあることも承知しております。
ただ、私どもとしては、公共の福祉による制限というのは、これは大変難しい問題でありまして、明治憲法、大日本帝国憲法のころに法律の範囲でというふうな制限がありましたけれども、その公共の福祉というものをどこまで認めるか、それによる制限を許すかというのは、基本的人権をどうするかということに、生かすか死ぬかにかかわる問題でもありまして、必ずしも先生がおっしゃるような形で今の公共の福祉によって国の政策その他が遂行することの妨げになっているというふうには私は考えていないのであります。
そういう点で、その基本的人権が無制限であるというふうには決して思っておりませんけれども、それをどのように調整していくかというのは、個々のケースを踏まえてかなり精密な議論をして具体的に妥当する方策を選択すべきでありまして、一律的に文言として規定するということは大変難しいんではないかというふうに考えております。
それから、先生御指摘の土地収用法の例ですけれども、私は実際に最近、区画整理の問題を扱っておりますけれども、あの区画整理というのは元々は土地が上がるということを前提に構想されているものですから、現状では大変な矛盾が生じてきておりまして、区画整理によって土地は減るし清算金をたくさん払わなきゃならないという非常に深刻な状態も起きておりまして、土地収用法なり区画整理の問題等を含めて、この辺はもう一度今の時点で、日本の国情がこういう状態になったとき果たしてどうかという点で見直す必要があるのではないかと逆に痛感しているところです。
そういう点で、それからもう一つ新しい環境権その他については、これも環境権の内容は何かについては大変議論のあるところでありまして、果たして憲法上の権利として規定すべきかどうかについても議論のあるところでありまして、規定しなくても十分環境権そのものはやれるではないかというふうなこともありまして、環境権について国民の全体の合意ができているというところには行かないのではないだろうか、あるいは憲法学者の間においても環境権の内容なり効力なりについてまだまだ議論が尽くされていないのではないかというふうに考えております。
○木村仁君 大変申し訳ございませんが、村越参考人もちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(村越進君) 新しい人権の点でございますが、例えば知る権利、環境権は憲法に明記はされていない。ただ、明記されていない権利は全部ないんだということではこれは決してないわけであって、環境権であれば十三条なり二十五条なり、それが当然に保障しているという考え方ができると思います。私が先ほど個別法の制定ということをいろいろ申し上げましたが、例えば環境権についても環境基本法という法律があるわけでございまして、この法律をより充実させるというようなことが今大切なことなんではないかなというふうに考えております。
知る権利とはちょっと違いますが、プライバシーなんかでも人権規約の十七条に規定されているわけでございまして、これを受けての国内法と、そういうことが今必要であって、まだまだ必ずしも煮詰まっていないことを憲法に抽象的な規定として書くということが当面の課題ではないのではないかなというふうに考えております。
○木村仁君 最後の質問になりますが、国民といわゆる司法との距離に関する問題でございます。
これは、もう司法改革の議論の中で膨大な議論が積み重ねられており、私も不勉強で詳しいことは知りませんから、恐らく遺漏なく議論がされていることであろうと思いますけれども、私は庶民の感覚としては、弁護士という、つまり司法と庶民との間をつなぐプロフェッションの皆様が国民から見れば大変近寄り難い存在。
なぜ近寄り難いかというと、一つはエクスペンシブであると、恐らく。それから、そういった法律その他の裏表をよく御存じであるために何を、ひょっとしたらやられるんではないかという、そういう気持ちもあると、私は率直なところそういうことではなかろうかと思うんです。
それゆえ、数の問題もございますが、一般の方々はむしろ、司法書士であるとか税理士であるとか、あるいは公認会計士はどうか知りませんが、事によったら社会保険労務士とかあるいは行政書士、そういういわゆるそのプロフェッションの方々から言わせれば自分たちが町のローヤーだというような感覚を持っておられまして、そういう人たちに相談する方が金が掛からない、安価であるというような、近寄りやすいというようなことがあるのではないかなという気が私はいたしております。
そこで、イギリスのように、法廷弁護人バリスターと事務弁護人ソリスターというのがいて、ソリスターの方がむしろ庶民と接触していて、年間の実入りではソリスターの方が多いというような役回りの方がおられるわけでありまして、だから、そういうほかの士の方々に活躍していただくのか、あるいは弁護士の先生方自身が役割分担をなさるとか、あるいはそこまではいかない制度的に違ったものを作るとか、そういうことまではいかないと思いますけれども、いずれにいたしましても、国民との接触面積を広げるということが非常に重要ではないかと、大変失礼ですけれども思っておりますが、岡部先生、いかがでございましょうか。
○参考人(岡部保男君) 先生御指摘のその二点につきましては、私もそのとおりであろうというふうに考えております。
そして、私どもの、これは私の個人的な、日弁連の意見というよりは私の個人的な意見になりますけれども、やはり弁護士はサービス業であるというふうに考えておりまして、そういう点でいうと、相談に来た人に、十分精神的にもそれから法律的にも満足する答えを出さなければいけない、満足してもらってお帰りいただくというふうな発想が必要だろうというふうに思っておりますけれども、我々大変不十分でありまして、その点について国民の御期待にこたえていない、あるいは時々弁護士の不祥事などが報道されて、先生御指摘のような不安を国民が抱くというふうな現状にあることは、我々としては大変残念であり、改善しなきゃならないというふうに考えています。
ただ、一言弁護士の実際にやってきたあれからいいますと、ソリスターとバリスターという例がありますけれども、弁護というのはやはり、民事でも刑事でもそうですが、直接その依頼者なり現場に行って事実を確かめ、そこからどういうふうに問題を解決するかということが大変重要でありまして、その作業、つまり事実に直接ぶつかるという作業、その中でいろんなことを考えて新しい解決を考えるという作業が必要でして、そういう点ではソリスター、バリスターというふうなやり方が果たして本来の弁護士のプロフェッションに合うのだろうかと。私もイギリスの例を現地で見ましたけれども、そういう感想を持って帰りまして、現在もそういうふうに思っております。
○木村仁君 どうもありがとうございました。
終わります。
○会長(上杉光弘君) 江田五月君。
○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月です。
今日は、お二人の先生、本当にお忙しい中、ありがとうございます。しかも、詳細な発言の要旨をおまとめくださいまして、本当にありがとうございます。
岡部参考人はどちらかというとこれまでの日弁連の人権に関する取組について、村越参考人は様々な弁護士会の提言についてお話をくださいました。
実は、私も弁護士でございまして、同業でもあるわけで、今日の御発言、それぞれそうだ、我が意を得たり、もっと頑張れと、こう言いたいところですが、それじゃどうも話にならぬので、若干緊張感を持って、問題点をそれでも探り出しながら議論をしてみたいと思うんですが。
私も国会の場で、かれこれもう二十三年になってしまったんですが、いろんな仕事をしていまして、その中で人権問題にもいろいろかかわってまいりました。そして、そんな中で、弁護士さん方の御努力にただただ敬意を表するということも何回か出会ってきた。
最近でいえば、人権といえば、六月の二十日が国際人権の日というんでしたかね、ちょうどその日でしたか、例のアフガン難民で釈放されていた者が再収容されると。入ったり出たり、また入ったり、いやいや、捕まえたり放したり、また捕まえたりと、もうたまらぬという状態に実はアフガン難民の若い者たちなっていた。それを弁護士さん方が本当に頑張って頑張ってむちゃくちゃ頑張って、何時間か後に、その日のうちに仮釈放ということになったと。弁護士先生方の御努力のたまものだと心から敬意を表するんですが。
それでも、今日のお話の中で、今現在国会で現に審理中の法案について幾つかかなり厳しい御批判の言葉があったかと思います。国会の中ではこれは賛否両方あるわけで、今議論している最中ですが、弁護士先生方が会としてこういう議論をするといかがなものかと、こういう意見があるいはあるかもしらぬなと思いながら聞いていたんですが、どうでしょう、その辺は弁護士会の中では議論は整理をされているんでしょうか。これは、村越参考人。
○参考人(村越進君) 先ほども少し触れましたが、日弁連は一万九千名の会員を擁する強制加入団体でございます。ですから、政治的と取られるような発言については基本的には慎重にやっていこうというコンセンサスがございます。
現実に国会で議論されているものについて発言をするということは即政治的なのかということですが、我々はそういうことではなくて、もちろんながら党派的、政治的立場には立っておりませんので、あくまで憲法、人権という視点で出されているものについて分析し検討を加えるという、これを力点としてやっております。
ということで、日弁連の見解をまとめるためにはもう何段階もの議論が要るわけで、正副会長会議、理事会等を経て日弁連意見になるわけですが、そういう手続、手順を十分に踏んだ上で、日弁連の圧倒的多数、総意といってもいい、そういうものとして外に向かっては物を申し上げておるつもりでございます。
○江田五月君 岡部参考人もそれはよろしいですよね。
○参考人(岡部保男君) はい。
○江田五月君 ありがとうございます。
決して軽々しい発言ではないんだと。むしろ、基本的人権に日ごろ業務の中でかかわっている皆さんが慎重な上にも慎重に議論を重ねた結果発言をしておるということで、私も、弁護士法一条の第一項は、基本的人権の擁護と社会正義の実現、第二項の方に、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならないという、そういう弁護士の使命が法定されているわけで、そういう法律制度の改善、ここの部分で日ごろの業務に基づいた発言をされているということだろうと理解をし、重視をしていきたいと思っております。
もう一つ、実はこれは大した心配じゃなかったんですけれども、憲法調査会に来てくださいと言うと、いやいや、衆参、国会の憲法調査会は、あれは改憲への布石ではないのか、あんなところへ行っていいのかなどという議論が出てきて、お断りになられたら困るなと思っていたんですが、今日はおいでくださって、しかもこれは、村越参考人のペーパーには、さっきはちょっと時間がないということで飛ばされたんですが、「第四、基本的人権の実効的な保障のために―今後の展望と課題」、その中で、第一は、議論をタブー視せず、政治的立場を離れて活発に議論を行うことだと。そして第二が司法改革、いやいや、ごめんなさい、ちょっと間違えました、その前ですね。「第三、何故、憲法の人権規定が充分に生かされていないのか」ということで、「第一は、憲法について論ずることが、直ちに護憲・改憲に色分けされ、政治的見解・立場の表明と同一視されるような社会状況が存在しました。そのために、人権規定を含めて憲法についての議論が一種のタブー視され、人権規定を充実・活用する方向での建設的議論もまた深まることがなかったと言えるのではないでしょうか。この点で、憲法調査会が広く深く憲法についての調査と議論を展開されていることに、心から敬意を表するものであります。」と。
敬意を表していただく部分が時間の関係上お話しいただけなかったので、私が代わりに読ませていただきましたが、私どもも、これは国会法の百二条の六、第十一章の二に「憲法調査会」というものを加えまして、ここで「広範かつ総合的に調査を行う」と、これをこの憲法調査会の任務ということにしておりまして、ここにはもちろん護憲を主張する人もいます、改憲を主張する人もいます。しかし、そういうあらかじめ立場を決めて調査をするのではなくて、大いに憲法を論じていこうと。ちなみに、民主党は論憲という立場で、全くそれと同じなんですが、こういう憲法調査会でやっておると。
これは、そういう憲法調査会の立場というものを十分御理解いただいて敬意を表していただいていると、こう理解してよろしいんでしょうか、村越参考人。
○参考人(村越進君) はい、おっしゃるとおりでございます。
○江田五月君 岡部参考人、同じですね。
○参考人(岡部保男君) はい、同じでございます。
○江田五月君 そこで、今日いろいろ御発言いただいたことは、先ほども申しましたとおり、我が意を得たり、そうだ、より一層頑張れと、こういうことなんですが、緊張感を持って議論するためにあえて申し上げますが、今日触れておられない、いや、触れておられるといえばおられるんですが、余り深めておられない基本的人権の一つとして憲法三十二条、裁判を受ける権利、これはやはり基本的人権だと思うんですね。
弁護士先生方は、それぞれの政策提言あるいは立法の批判、これももちろん重要な御発言だと思いますが、日ごろの弁護士業務の中で、国民の裁判を受ける権利をそれがどういう立場であれ全うさせると、こういう仕事に就いておられると思うんですよ。そういう仕事をやっておられて、今の制度の中で裁判を受ける権利が、自分たち、その権利を全うさせようと思ってやっているんだけれどもなかなかうまくいかないんだという、勝訴、敗訴は別ですよ、それは別で、国民の裁判を受ける権利を全うさせようとしてもうまくいかないところがあるということがいろいろ経験上おありになるんじゃないかと思うんですね。先ほどの木村委員のアクセスについてのいろんな障害、これも一つあると思いますが、そのほかにもいろいろあると。
どうでしょう、ちょっと抽象的な質問ですが、そういうことで、どういうことをお感じになるかと伺うと、どういう答えになるでしょうか。これはどちら、お二人ですね。
○会長(上杉光弘君) それでは、岡部参考人からお願いします。
○参考人(岡部保男君) 依頼者あるいは被告人に弁護を依頼されて、多くの場合、法廷に同道するというのが私のやり方でありますけれども、そのときに、裁判所はやっぱり非常に遠い距離にあるという感じを持っております。
その人たちが具体的にどういう場面で出てくるかといいますと、最近、ここ数年の傾向ですけれども、訴訟を早く進めようというふうなことから、証人尋問の時間を非常に制限して、陳述書を出して、それをちょっと補足するというふうな形で尋問するという形態になってきておりまして、長年いろんな問題で悩んでいる当事者本人にとってみると、自分の言いたいことが十分述べることができない。私どもからしても、二十分、三十分という尋問時間というのは結構あるわけです。
ごく最近でも医療過誤の事件でやっておりまして、医師とか看護婦さんを尋問するのに相当裁判所と交渉してようやく四十分とか一時間ということなわけです。その理由として、陳述書が出ているからそれを土台にすればというふうな感じになるわけですけれども、患者は原告の立場から見ると、陳述書をどう破るかということなものですから、そういう点で、今の裁判制度の中でもう一つ、何というんですか、目的が達成できないという感じを痛感しております。
○参考人(村越進君) 裁判を受ける権利という点でいいますと、私が実感しているのは二つでございまして、一つは、必ずしも請求金額等が大きくない、どっちかというと少額という事件でございます。
これは率直に言って、弁護士としても報酬規程でいただいても全くペイしないというか奉仕活動になってしまう、なかなか取り組みにくい事件というのがございます。これをどのようにちゃんと裁判所に出していけるのかということは我々も考えなければいけないわけで、今、公設事務所の取組等が始まっておりますが、そういうところで一人の弁護士でそういうのを抱えると、もう経営が成り立たなくなっちゃうというのがあるんですが、やはりそういう弁護士会のバックアップの中で、どんな事件でも、経済的にペイしなくても、ちゃんと裁判所に出していけるというシステムが必要ではないかというふうに考えております。
もう一つは行政訴訟でございまして、行政に対する不満、行政処分等が違法だ、不当だという訴訟、これは大変もう困難でございまして、間口が極めて狭い、要件が厳しくて、ほとんど勝ち目がないという感じになっております。これをやっぱり司法改革の中で改めていかないといけないんではないか。そうでないと、これはほとんどやっても無駄だよと言わざるを得ないような状態にあるという気がしております。
以上です。
○江田五月君 岡部参考人からは、十分聞いてもらえない、裁判所にもっと十分聞いていただきたいのにという裁判所のある意味のゆとりといいますか、そうしたこと。村越参考人、少額事件が弁護士によって十分弁護されない困難さ、それから行政事件、いずれも司法制度改革の中の重要な課題だろうと思います。
そうして、しかし、今の岡部参考人にしても村越参考人にしても、自分たちのところまでたどり着いた依頼者に十分なサービスが提供できないといういらいらですが、今度国民の方から見たら、弁護士のところまでたどり着けない紛争を抱えた人たちも非常にたくさんいる。二割司法というようなことが言われたりするわけですね。
それは、やはりどこに弁護士がいるか分からない、あるいは幾ら取られるか分からない、長く掛かってしまって、どっちみち弁護士の中だけで何か適当に処理されるんじゃないかというような不安とかいろんなことがあって、弁護士さん方にもそこはやはりいろいろ考えていただかなきゃならぬ点があるかと思いますし、数の点、弁護士の絶対的な数、裁判官も含めてですが、法曹の数の問題もある。
あわせて、私は憲法三十二条を実質的に保障しようとすると、やっぱり法律扶助がもっともっともっと抜本的に改善されなきゃならぬという気がするんですが、この点はいかがでしょうか。
どちらか、村越さんでしょうか。
○参考人(村越進君) 先ほど、少額訴訟等のところで言うのを忘れてしまったわけですが、先生がおっしゃるとおり、結局はそういう事件について訴訟費用等を立て替えて、費用がない方がちゃんと裁判を受ける憲法上の権利を行使していけるためには、法律扶助の抜本的な充実と、これはもう欠かすことができないものだというふうに考えております。
○江田五月君 先ほど村越参考人、人権擁護法案あるいはその人権擁護法案によって想定されている新たに作られる人権委員会のことについてお話しになりましたが、その中で、国家行政組織法の三条に基づくものでなければならないというお話をされました。ところが、今提案されているのは三条に基づくものなんですね。しかし、恐らく皆さんもあれでは十分でないと思われている。私どもも十分でないと思っておるんですが、三条に基づくものであっても駄目だというのは一体どの辺にあるとお考えですか。
○会長(上杉光弘君) どちらへお聞きしますか。
○江田五月君 村越参考人がさっきお話しになりましたが、どちらかで。
○参考人(岡部保男君) 一つは、法務省の外局という形に今のところ構想されているわけですけれども、法務省自体が入管や拘置所を扱っている、そういう言わば人権侵害が、今日のレポートにも幾つか出していますけれども、起きているところですね。そうすると、そこがなるということはどうかという点が一つです。
それからもう一つは、実際、我々、法務省と何度か意見交換というか御説明を承ってきましたけれども、結局法務省の人が出向で出てまた戻るということになっているわけですね。それでは独立性は保てないだろうということです。
それから三番目には、人権委員を、非常に少数の人権委員を想定されておりまして、結局はそこの人権委員会の法務省の職員であった人を中心に調査をされるということになると、今、法務省にある人権擁護局と実質そう変わらないことになるのではないかというふうなことを含めて、これでは具合悪いというふうに考えているわけです。
○江田五月君 右の手で刑務所や入管行政をやりながら、左の手で人権擁護といっても、なかなか国際社会はそれでいいですねと、パリ原則にも合致していますねとは見てくれないと。それならやはり別の行政機関、例えば内閣府にと。
しかも、私も国連人権高等弁務官特別顧問でしたか、ブライアン・バーデキン氏とつい先日お会いしましたが、スタッフの問題、それから財政、ファンディングの問題、それからあとはオートノミーというか自立性の問題、そうしたことで内容がしっかりしたものでなきゃならぬと。日本の提案されているものがどうであるかということは慎重に言及を避けておられましたが、言外にこれでは駄目だということが明らかなお話を伺いまして、そのとおりだと思いますね。
人権擁護、人権委員会、しかし作らなきゃならぬ、あるいはまたその他に例えばいろんな形のADRであるとか、オンブズマンであるとか、市民の人権をしっかり守っていく制度をこれからいろいろ作っていかなきゃならぬと思いますが、そうした中で弁護士の皆さんが大いに活躍する用意ありと、今日はそういうお話も伺ったように思うんですが、その点の決意を最後に伺って終わります。村越参考人。
○参考人(村越進君) 日弁連は、人権擁護委員会を中心に人権擁護活動をやってきておりますが、それだけでいいというふうには思っておりません。
新たにできる人権機関等とも協力して、もっと多角的にいろんなところで多くの弁護士が人権のために活躍するということで、国民、市民に対する救済機能を総体として上げていきたいというふうに考えております。そのために全力を尽くすつもりでおりますので、よろしくお願いいたします。
○江田五月君 ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) 山口那津男君。
○山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。
両参考人におかれましては、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
私も弁護士の出身でありまして、今日、様々お聞かせいただいた御意見については極めて共感するところが多いわけであります。
そこで、まず限られた時間でありますので、両名に共通した質問をいたします。
弁護士の職種は憲法七十七条で明記されておりまして、これは司法過程、法の執行過程にかかわる、そういう職種であると位置付けがなされているわけであります。
一方、在野での言わば法律問題のプロフェッショナルとしては、この弁護士会ほどの高い能力、経験を持つ集団はないわけでありまして、私は立法過程においてももっともっとこの弁護士会の持つ能力といいますか情報を発信するべきであると、こう考えております。
特に、これまでは提言やら批判が多かったわけでありますが、私は、むしろ対案を出して立法過程に物申すと、これは必ずしもそれ自体が政治的な動きということとは言えないと私は考えております。この対案を出して立法過程に携わるべきという期待が私はあるわけでありますが、この点についてそれぞれどうお考えになりますでしょうか。
○参考人(岡部保男君) 対案を出すべきものについては日弁連でもう随分研究して出しておりますし、それから問題によっては、対案には行かないけれども、その法案の問題点を指摘するというふうな、大きく分けて二つの活動をしてきておりますし、今後もそうなるだろうと思う。
ただ、対案を出す上では、やはり弁護士会の力がもう少し大きくなっていかないと十分な実態調査等を踏まえた意見を出すことが難しいので、その点はこれからの課題だろうというふうに考えております。
○参考人(村越進君) 個人的な意見になってしまうかしれませんが、私も、それは大変あるべき方向であって、できればそういうふうに日弁連がなっていけばいいなと思いますが、最大のネックは人とお金でございまして、我々は全くボランティアで無償で、自分の仕事を抱えながらやっていると。この体制の中で対案まで作っていくというのはちょっと難しくて、そのためにはやはり専従、半専従のそういうしっかりした体制を日弁連の中に作らなければいけないと。今も調査室とかそういったことで弁護士専従、半専従が何十名かいるわけですが、これは司法改革とかいろんな課題でもう忙殺されていて、とても様々な法案の対案作成までは手が回らないというのが実情でございます。その司法改革の中で会員も飛躍的に増えていけば、そういう制度、そういう組織を作っていくことも可能になろうかというふうに考えております。
○山口那津男君 次に、岡部参考人に伺います。
人権擁護委員会の活動の歴史を振り返ってみますと、やはりその時代時代の焦点といいますか、活動の焦点というのを決めてやっていらっしゃると思います。これから、少し先の話になるかもしれませんけれども、私の考えるところをちょっとお話ししたいと思います。
最近、国際刑事裁判所に関するローマ規程というのが発効いたしまして、これが設置されることとなりました。これは刑事裁判を行うところでありますけれども、しかしこのローマ規程の七十五条というところには民事賠償のことも規定をされているわけであります。従来、この国際法の分野では、陸戦に関するハーグ条約とか、あるいはジュネーブ条約の議定書とか、そういうところで国対国の賠償責任を主に規定したと言われているわけです。
しかし、この国際刑事裁判所の規程七十五条、これは言わば戦争犯罪等を犯した個人に対して被害者個人が賠償請求できる余地を認めているわけであります。個人対個人の道もこうやって開かれてきたと思うわけでありますが、しかし実際、国対国の賠償、個人対個人の賠償を認めたとしても、被害者個人が現実に救済されるかというと、これはなかなか困難な面があると思います。
したがいまして、私は、その加害者、犯罪者の所属する国に法的責任があるとすれば、やはりそこに賠償責任を認めると、こういう国際法を確立していく必要がありますし、またそれに応じた国内法も整備していく必要があると考えております。これからの人権救済の一つの課題として、この点をどうお考えになられますでしょうか。
○会長(上杉光弘君) どちらへお尋ねですか。
○山口那津男君 岡部参考人です。
○参考人(岡部保男君) 基本的な方向としては、私も同様に考えるべきだろうというふうに思っています。日本の国内法では、使用者責任のような規定がありますし、それから犯罪被害者の支援の関係では、刑事手続で民事和解をするというふうなことが国内法で最近なっておりまして、そういう点を考えましても、方向としてはそういうことになるだろうと思います。
ただ、それで具体的にどういう問題、あるいはどういう方向にできるかというのはもう少し詰めていく必要があろうかというふうに考えております。
○山口那津男君 この点について、国際法の運動を起こそうという機運はまだ未熟であると思います。また、このローマ規程七十五条には、信託基金を国が出して、それをもって被害者個人の賠償、救済に充てると、こういう私案も、私案といいますかこういう考え方も出ているわけですね。是非、日弁連がこういう国際社会における人権救済活動に積極的な活躍をされることを望みたいと思っております。
次に、村越参考人にお伺いいたします。
有事法制について結論は反対ということでありますけれども、その前提としては、政治的な視点ではなくてあくまで憲法、法にのっとって結論を考えるという人権擁護委員会の立場からしますと、この自衛権を日本国憲法はどう考えているか、あるいは自衛隊というものが合憲であるかどうか、この自衛権と自衛隊の合憲性について日弁連としてどうお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
○参考人(村越進君) 日弁連としては、自衛権があるのかないのか、あるいは自衛隊が合憲であるのか違憲であるのか、そういったところについての見解を統一はしておりません。
ですから、日弁連はどうかということについてはちょっとお答えのしようがないわけでございますが、個人的な意見としては、それは国民国家として当然正当防衛、自衛の権利はあるであろう、それを前提に物事を考えるというしかないというふうには思っておりますが、それはあくまで個人的な見解でございます。
○山口那津男君 また一方で、この論議の中で、現在、政府、また私どもも同様の考えでありますが、いわゆる集団的自衛権を行使するということは日本国憲法上禁止をされていると、こういう考え方を取っております。この点について日弁連としてどのようなお考えでしょうか。村越参考人に伺います。
○参考人(村越進君) 先ほどの続きですが、自衛権が認められるといたしましても、憲法は前文、九条でもう平和主義、平和原則をうたっておるわけですから、軍事力の行使を伴う自衛権の行使というのは極めて限定されるであろうと、基本的には正当防衛という範囲、その要件を満たす場合だけではないかなというふうに考えております。
そういうところからしますと、当然、その集団的自衛権の行使というのはその範囲を超えるものであり、憲法上許されないのではないかというふうに考えております。
○山口那津男君 次に、人権救済活動を進めていくに当たって、その基盤を整備していくということは非常に重要なことだと思います。先ほど江田委員からも御指摘ありましたけれども、民事法律扶助、この法律を数年前私ども推進しまして、予算も従来と比べれば大幅に増やしたわけですね。これはこれでいいことで、これからも頑張りたいと思っておりますけれども、また一方で、この費用というものは結局は弁護士さんの報酬の支払に取りあえず充てられていくものであると。そこに税金を拡大することについてはいろんな考え方があるわけであります。また一方で、医療従事者で資格を持って従事している方々に対しては保険料を主体に賄われているわけでありますが、ここについても今非常に抑制的な考え方が国民の中にあるわけですね。
そこで私は、この基盤整備ということに当たっては、国に様々な援助を求めるだけではなくて、私は弁護士会自身がもっと国民に見える形で努力する必要があると思います。これまでも様々な献身的な自己犠牲的な活動があったということは十分承知しておりますけれども、先ほどの対案を作る、立法活動に参加するということでも、本音としてはなかなか厳しいという話がありましたけれども、やはりそういう点でも献身的な努力というところも必要だろうと思うんですね。
また、実際問題として、外国人の人権救済活動に当たる場合にはこの法律扶助がストレートに当てはまるかどうか、ここも意見のあるところでありまして、特に最近は難民の認定手続に日本の弁護士にアクセスしにくいと、こういう意見も出ているわけですね。こういうところも含めて、私は弁護士会の自発的な努力というのが必要だと思っております。
こういった点についてどのようにお考えでしょうか。これは両参考人に御意見いただきたいと思います。
○参考人(岡部保男君) 弁護士会の努力あるいは個々の弁護士の献身的な努力が必要だということは、私もそのとおりだと思っております。
ただ、同時に、職業として成り立つための経済的な部分をどう補っていくかということを考えないと、その道に進む人が出てこなくなるというのも現実の問題としてあるわけでして、東京弁護士会あるいは日弁連で私ども人権擁護活動をしていますけれども、その点は、新しい活動をする人材をどう確保するかということで大変悩んでいるのが率直なところでありまして、我々の時代というのは大分いい時代だったのかもしれませんけれども、最近は非常に厳しい社会状況の中で、若い人たちが志を持って弁護士になっても、なかなか事務所を維持するのに大変だというふうなことで悩んで参加できないというふうなこともありまして、私ども、数年来その問題をどうするかということを人権擁護委員会の中では議論をしているところであります。
基本的な考え方としては山口先生おっしゃるとおりだろうと思っております。
○参考人(村越進君) 私も山口先生のおっしゃるとおりだとは思うわけですが、扶助に関しても、扶助の審査あるいは扶助事件の受任等でそれなりに弁護士は苦労をしているわけですが、まだ足りない、あるいはそれが国民の方に分かっていないという点は大変反省しなければいけないと思います。
個人的なことを申しますと、例えば、今、一件、障害者の方の人権にかかわる裁判を三十人ぐらいの弁護士でやっているんですが、扶助協会からいただいたお金が三十万で、三十人の弁護士で二年半くらいやっているんですね。これ最高裁まで行くとすれば何年掛かるかと、それでもやっているわけでございまして、決して扶助のお金は結局弁護士の懐に入るからと言われるほどの額はいただいていないなという気がしております。
それから、弁護士会の努力という点でいいますと、当番弁護士については単位会、日弁連挙げてかなり頑張っているというふうな気がしております。
それで、昨年ですと当番弁護士の受付が四万七千件くらいでございます。そのうち受任が九千六百件くらいでございます。これを日弁連の持ち出しでやっているわけで、昨年度末でその結果二億の赤字という事態になっているわけでございます。これをこの当番弁護士に充てるための特別会費というのを値上げをして会員から取り立てて維持しているということは御理解いただければと思います。
○山口那津男君 最後に、村越参考人に伺います。
難民認定手続におきまして、不認定の手続、現に処分を受けた者が不服申立てをする場合に、現行では、外国人から見れば一般の入国審査をする人の傍らで同じような人がまた不服審査の手続をしていると、非常に不公正で透明性がないと、こういう感を抱かれているわけですね。
やはり、法務省の様々な手続の中で、独立性とか透明性とかということの意識が不十分ではないかと、こう考えるわけでありますが、この点についての御意見を承りたいと思います。
○参考人(村越進君) 全くそのとおりでございまして、先ほど人権委員会を法務省が所管するのはおかしいと言ったわけですが、同じ入国管理局が一方で退去強制をやると、一方で難民として庇護を与えるということをやる、同じ役所の中で両方やっている。圧倒的ウエートは退去強制の方なわけでして、おまけくらいに数人難民認定官とかがいてやっているというわけですが、これはシステムとしても非常におかしい。これはやっぱり、難民認定は入管とは別のところに持っていって、難民条約に基づく保護を原則として適用する組織として作るべきだというふうに考えております。
○山口那津男君 ありがとうございました。
終わります。
○会長(上杉光弘君) 吉川春子君。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
お二人の参考人の方々に心からお礼を申し上げます。そして、私は、いろんな政府が出してくる法案の自分の賛否を決める基準としても日弁連の見解を大変参考にさせていただいておりまして、複雑ないろんな問題が多いわけですけれども、そういうときに日弁連の活動に本当にいろいろ教えていただいて、感謝をしているところです。
まず、村越参考人にお伺いをいたします。
私は、日本国憲法の下で人権の尊重を徹底させるためには、憲法に新しい条文を幾つか加えるべきだという意見があるんですけれども、そうではなくて、抽象的な憲法の条文を具体化する立法が決定的に欠けているのではないかと常日ごろ思っておりました。それで、参考人が、個別人権法の不存在ないし不備について指摘されている点について同感をいたしました。どういうことが平等に反し、何が差別かがはっきりしないことが人権の実現や救済を困難にしているということも指摘されておりまして、そのとおりだと思います。
例えば、女性の人権で言えば、もう本当にこの十年といわず目覚ましいのですが、例えばドメスティック・バイオレンスとか、セクシュアルハラスメントはかなりポピュラーになりましたけれども、リプロダクティブヘルス・ライツとかポジティブアクションとか、片仮名で、これが何なのかと、これが私に関係のある権利なのかということが実際にはまだ分からないぐらいのものもあるんですが、しかしこれは実際は女性たちを保護する権利なんですね。
それが権利だとつかんだときに初めて立法もできるし、運動も起こるということで、そういう女性の分野での法整備というのは非常に、非常にというか一定程度前進してきたと私は思っているんですが、参考人が指摘された個別人権法、具体的に何が必要と考えていらっしゃるのか、何が人権なのかということをまた明らかにするためにどうすべきなのか、この点についていかがでしょうか。
○参考人(村越進君) 昨年の人権大会をやりまして、今最も強く訴えているのは障害者の差別禁止法なんですが、実は現在、これはもう新聞等にも載って、国交省も何か指導されたということで、御承知と思いますが、全日空が精神障害者の方の搭乗を拒否したという事件がございまして、これが日弁連に人権侵害であるということで救済の申立てが来ているわけです。
これを現行法、今の法律の中でどうやって救済できるのか。例えば裁判やるとなると、なかなかこれは実は大変ではないかなという気がするわけです。全日空という民間企業を相手に、精神障害であるそういう人を乗っけると何か危険な事態があるんじゃないかということで内規を決めて乗せませんと言っているのはけしからぬじゃないかと言って、多分、慰謝料請求か何かの裁判になるんでしょうけれども。
これは、さっきちょっと触れましたアメリカのADAであるとか、イギリスにも同じような法律があるわけですが、そういう法律の中で、交通機関はどういうことをしなければいけないのか。障害のある方がきちんと利用できるためにどういう対応をする、あるいは何をやってはいけないのかというようなことを詳細に定めているわけですね。
なかなか法律だけでは詳細が定められないんですが、法律の下にガイドラインがあったり、行動プラクティスという行為準則みたいなものがあって、膨大な量があって、非常にだれが見てもその基準が明確になると。これはいかぬ、ここまではいいと言ってはなんですけれども、そういったものを整備していかないと、憲法十四条だけで精神障害の方の搭乗拒否を直ちに結論付けるということはとても難しいというふうに考えていますので。
障害者差別禁止法にも、そういった交通機関においては基本的にだれでも、障害のある人も同じように利用できる、そういうサービスを提供する義務があるということを明記した上で、更に細かい規定を作っていくということではないかなと考えております。
○吉川春子君 もう一問、村越参考人にお伺いいたしますけれども、資料でも配付されました国連経済的・社会的・文化的権利に関する委員会の最終見解、日本に対して二十九項目、懸念と勧告が行われておりまして、この内容は非常に日本の人権を守る上で貴重な見解だと思うんですが。
その中で、個人通報制度を定めた第一選択議定書の批准を勧告しているという指摘があるんですけれども、日本は批准した条約の選択議定書というのは全く批准をしていないわけで、その理由として、司法権の独立を侵すおそれがあるとか、主権の侵害ぐらいに近いことも言っているわけですけれども、国連の委員会からの勧告は日本の政府に対するものなので、なぜ司法権を侵すのか全く理解できませんけれども、やっぱり司法に対する権威、司法の権威に対して国連から云々されたくないということ、あるいは日本の人権保障が国連やその他条約の水準から立ち後れていることを明らかにされることへの政府のメンツではないかと、私はもう厳しく見ているんですけれども。
この選択議定書を、しかし、そうはいっても早急に批准をしていかなきゃなりませんけれども、そのためにこういう政府の態度に対してどのような理論、あるいはどのような行動でこれを突破していったらいいのか、お考えがあればお知らせいただきたいと思います。
○参考人(村越進君) その選択議定書を批准しない理由として言われていることの一つは、乱訴的な申立てが一杯あって大変じゃないかというようなこと。もう一つは、やっぱり国家主権との関係でどうか。特に、これは最高裁が言っているのかもしれませんが、最高裁が判断したものをまた国連に持っていかれて違うとか言われると、それは四審制みたいなものになってしまうんじゃないかというようなことが言われていると思います。ただ、乱訴というのは、別に日本が心配しなくてもいいわけであって、国連の方がこんなに一杯申し立てられては困りますと言えば、何らかの制限をされればいいんではないかなというふうに思います。
で、ちょっと古いんですが、一九九六年の七月の段階でこの人権規約、批准している国が百三十三ございまして、そのうちの八十七か国が選択議定書も批准をしております。アジアでも韓国、フィリピン、ネパール、モンゴル等が批准しているわけでございまして、この批准している八十七か国が国家主権の侵害だとか司法権の何とかなんということは言っておりませんで、こういう理屈を言っているのは日本くらいだというふうに思います。
また、個人通報制度を認めても、国連の委員会は見解を出すだけでございまして、その見解は別に日本国内において法的拘束力を有するわけではありません。その見解を受けて日本政府がどのように判断するかということだけでございます。ですから、主権の侵害であるとか司法権の独立を侵害するというようなことは全くないというふうに日弁連は考えております。
ただ、日弁連は、もう一九八八年からこの批准を言っておりまして、現在までその批准がなされないということは大変残念でございまして、我々もどういう運動を広げていったらいいのかなというふうに思うんですが、これは毎回、日本政府レポートの審査の際にずっと言われ続けることなわけですから、やはりそろそろ政府としても考えるべきときに来ている、また何年後かに審査がありますので、そのときに日弁連としてもほかのNGOとも協力し合いながら、再度カウンターレポート等を出して批准実現のために取り組んでいきたいというふうに考えております。
○吉川春子君 岡部参考人にお伺いいたします。
冤罪事件にも大分日弁連が取り組まれまして、実際に冤罪を晴らすという成果も上げられまして、これは人権を救済する上で大変貴重なすばらしい活動であったと思います。
ところが、冤罪事件というのはもうそれにもかかわらずひっきりなしに起こっておりまして、比較的近い例でも、これは窃盗なんですけれども、全く違う人を犯人として逮捕して公訴を提起して、そして判決の直前に真犯人が見つかって、だから、もう真犯人が自分でやったということを自白して、それで、それにもかかわらず非常におかしな処理をしていて、私が国会で謝罪すべきだと言ってもなかなか明確には謝罪しない。そのときは適正なことをやったんだと、だから警察にも検察にも全く落ち度はないんだと。じゃ、落ち度はないのに何で無実の人が有罪の判決を下される直前になったのかと言っても、そこは言を左右にして反省をしない。
こういう状況の中で、偶然犯人が見つかるなんということは全く希有な例でして、やっぱりいまだに多くの冤罪というのは、罪の重い軽いはあるにしても、あると思うんですね。終戦直後の自白偏重の時期にいろいろな事件が起きたと言われていますけれども、それからはるかもう五十年もたっているのにやっぱりこういうことが起こると。
こういうものをなくしていくために、憲法も三十一条以下、非常にデュープロセスの具体的な規定を置いておりますけれども、日弁連として何か御提言があれば聞かせていただきたいと思います。
○会長(上杉光弘君) どちら。
○吉川春子君 岡部参考人です。
○参考人(岡部保男君) 誤判あるいは誤捜査の一番の大きな原因は、やっぱり捜査段階での見込み捜査といいますか、初動捜査を含めて客観的な捜査ではなくて見込みでやる、この辺りの者が犯人だろうということでやってきて、あとはアリバイがはっきりしなければ逮捕して自白させるという、そういうシステムがこれまでの再審事件を通じて見ていますとほとんどのケースなんですね。
ですから、捜査段階についてどれだけ透明化するかということが大きな課題で、一つは早い段階で弁護人が付いて援助するということでありまして、もう一つは捜査・取調べ状況を透明化するために、私どもは前から申し上げているんですけれども、ビデオテープで取調べ状況を撮ってこれを裁判に出せば、自白の任意性あるいは信用性については今のような無用な論争をしないでももっとはっきりするわけでして、そういう意味で捜査段階について透明化をすることを進めることがまず重要だろうというふうに考えています。
○吉川春子君 もうあと少しの時間ですので、お二人に一言ずつ伺いたいと思います。
憲法二十四条は大変すばらしい規定だというお話がありまして、私もそう思うんですが、この憲法二十四条と、しかし実際上、民法には家父長制の名残の規定が幾つかあるんですが、今国会でも水面下で大分問題になっております夫婦別姓なんですけれども、これがもう自民党の反対が強くて強くて、とても実現の見通しがここに来ても今ないわけなんですね。
それで、法律を作れば人間の意識が変わるのか、あるいは人間の意識が変わらないと法律ができないのか、その辺について一言ずつお二人のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○参考人(岡部保男君) これは両々相まってというのが正確なところじゃないでしょうか。
世の中にいろんな動きがあって、それが法律で文章化される、そのことによって更に進んでいくということであって、夫婦別姓の問題についてはもう理論的な議論はほぼ尽きているわけでして、むしろある種の世界観というか人生観みたいなものが、大きくそれに対してどういう立場を取るかみたいなことですけれども、むしろ国会の決断で進めるべき問題であろうというふうに常々思って、やきもきしているというのが正直な感想です。
○参考人(村越進君) 岡部参考人と同様ですが、やはり私も含めて男性の意識改革というものが必要だというふうには感じております。
○吉川春子君 ありがとうございました。
終わります。
○会長(上杉光弘君) 平野貞夫君。
○平野貞夫君 自由党と無所属の会というところが作っております国会改革連絡会という会派の平野と申します。
最初に、村越参考人にお尋ねしますが、現行憲法の人権規定、一般の問題でございますが、憲法を作ってから五十年以上たつわけですが、その評価、批判でも結構ですし、あるいはあと仮に二十年ぐらい憲法をそのままにしておくとすると、どういうところを補完しておいたらいいか。
私はなかなかいい憲法だとは思いますが、やっぱり現在の憲法の人権規定の基本的性格は十九世紀的な思想の背景で、国家権力が人権を侵すんだということを前提に立った規定が多いと思いまして、新しい情報化社会の中では様々な人権を侵される状況というのは新しく出ていると思いますが、その辺のことについて率直な意見をお聞かせいただければと思います。
○参考人(村越進君) もう確かに憲法ができまして五十年以上たつわけですが、私はその憲法の基本的人権の規定というものは大変充実した内容であるというふうに考えております。それは、制定当時はもとより、現在においてもその輝きは失っていないんではないかというふうに考えております。
先生御指摘の、時代とともに様々な問題が生じ、新しい権利、人権と言われるものが大切になってくるということはそのとおりだと思いますが、ただ、憲法というもの、憲法にもいろんな、硬い憲法、軟らかい憲法あると思うんですが、日本国憲法は硬い方だと思いますので、そこにいろんな新たな権利が生まれてきたら次々と付け加えていくというやり方がいいのかどうかということについては、やや疑問を持っております。
先ほども言いましたが、要するに憲法原理はどういうことかということを考えたときに、文言上明記されたものではなくても当然に包含されているという権利はあるというふうに思いますので、逆に次から次へと新しいものを加えていくということは、その反対の理解として、書いてない権利は憲法で保障されていないというような誤解を招きかねないというふうに思います。
ですから、繰り返しになりますが、現状では、その憲法原理に包摂されている、しかし具体的に明確になっていない権利を個別人権法等で充実させていくということが必要なんではないかというふうに思います。
○平野貞夫君 分かりました。
しばらく現行の人権規定の原理でやっていけるという、こういうお話だと思いますが、私、現代というものをとらえた場合に、農業社会から工業社会へ、そして工業社会から情報化社会へと、言わば文明の転換期という、そういう人類の歴史上の大きな変化が起こっている真っ最中だと。
私も直ちに憲法の規定どうのこうのと言うわけじゃございませんが、今までやっぱり想定しなかった情報はんらん、あるいはまるで社会の情報化が人間の体の中にある神経を外へ出したような状況、それから科学技術の異常な発達。当然、新しい倫理とかあるいは新しい人間の規範とかというものの中で、この人権というものの在り方がどうしても、何といいますか、人間個人にももちろんあるわけですが、公共財的な意味を持ってきている。これは国家とか社会とかという意味じゃなくて、一コミュニティーとかあるいは一定の市民層の中で共有する人権というものもあるんじゃないかというふうな、そういう時代になっているんじゃないかということを考えておるんですが、そういった点について村越参考人、何か御感想があれば。
○参考人(村越進君) 御指摘のように、このIT社会、それから科学技術、特に生殖医療とか生命倫理にかかわるような科学技術の飛躍的な進歩によって、およそ想定されていないような問題が、かつては考えられなかったような問題、人間の存在自体が何なのかというようなところまで問われるような問題が出てきているというふうに思います。
それをどう考えていくのかというのは、とても私がここで申し上げられるような力量がないんですが、ただ、法律というのが、ある意味ではどうしても保守的なものであって、後追いになってしまっているということは考えなければいけないなと。かなり時代に後れていると、何十年か後れてようやく法律が整備されているというようなことが現実ではありますので、こういう時代に即応した、先回りをしたような法律を作っていく必要はあると思いますので、そこら辺は是非国会議員の先生方に御研究をお願いしたいというふうに考えます。
日弁連も、生命倫理とか生殖医療とか、ここら辺については来年の人権大会のテーマ候補にも挙がっておりますので、研究をしておるところでございます。
○平野貞夫君 岡部参考人にお尋ねいたしますが、弁護士法第一条に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」ということが明記されているということなんですが、これは本当は、国会議員はと言っても、国会議員にもそういう規定があってもいいぐらいなんですが、弁護士さんに特にこういう規定をしているというこの法意というのはどういうところにございますか。
○参考人(岡部保男君) そのこと自体を研究したことがないので私の感想的なものになりますけれども、やはり弁護士の在野性という立場が一般の国民の身近にあって、その人たちの人権を守るというのに一番ふさわしいと、そのことに社会的な弁護士に対するある種の様々な特権を与えているわけですね、刑事訴訟法を含めて。そういう特権を与えた代わりにその義務を全うせよということを命じているのだろうというふうに考えて私は仕事をしてきました。
○平野貞夫君 ありがとうございました。分かりました。
そこで、村越参考人に戻って、一つだけお尋ねしたいんですが。
お話の中にハンセン病の判決の問題がございました。私、これにかかわる弁護士さんあるいは弁護士会の貢献は高く評価するものでございます。しかし、ハンセン病の控訴断念をめぐる小泉内閣の姿勢が、ある意味では日本人のあるいは日本の権力の人権観といいますか、を非常に象徴的に表していると思います。
何度もここで取り上げて、またそういうことを言うのかということになるかも分かりませんが、私は今でも腑に落ちないんです。というのは、法の支配という憲法の下でいって、一審で判決があった。あの判決は当然の判決でございますね。それを小泉総理は自分の権限で、総理大臣としての権限で控訴を断念させたというPRをやった。悪いのはテレビのキャスターですよ、偉いことをやったといって持ち上げたんですが。しかし、内閣声明で、これは法律的には控訴すべきだったという、全く逆の声明を堂々と小泉さんが出した。同じ人間が。私は、これほど人権といいますか、が分かっていないといいますか、でたらめな国はないともう非常に悲憤慷慨したんですが、日弁連もそのことについて、小泉さんの行動に対して特段のコメントはなかったやに思うんですが、あったらごめんなさい。
本当にこんなことで人権というものが、本当に有識者も含めて、理解されているのかどうか極めて疑問だと。国会にもそうだと言う人もいるし、無関心な党の指導者たちもいたんですが、この辺について、これは日弁連代表というわけにいかぬのでしょうけれども、一言ずつお二人の参考人に御意見を聞かせていただいて、終わります。
○参考人(岡部保男君) 日弁連のコメントについては村越参考人から答えがあると思いますけれども、私は、やはりあれは控訴するというふうな話ではなくて、まず総理大臣自ら謝罪をすべきことであって、とんでもないことだというふうに思っていますし、日弁連としてはそういう基本的な立場を取っています。
○参考人(村越進君) 私のレジュメの中で、さっき触れなかったんですが、「行政府や立法府が、しばしば司法の判断を軽視するような態度を取り続けた」と、これが一つの問題だというふうに書いておきました。この最も最近の具体的な事例が、先生御指摘の、一方で控訴を断念し、もう裁判ではあきらめておきながら、この判決はおかしいというようなことを言うという、これは全く司法、法の支配ということを理解しないというか無視しているものだというふうに考えます。
日弁連といいますか、私どもの委員会の中でも、大変問題である、こういう対応はと、日弁連として何か物を申すべきではないかという議論はございました。
ただ、一方で、ハンセンの判決について、控訴を断念したということ自体は高く評価すべきだというふうに考えておりましたので、そのときにセットでそういうことを言うと非常に分かりにくいというか、誤解を招いてもいけないということで、あえてその部分だけについてのコメントを日弁連は出しておりませんが、考え方は岡部参考人が言ったとおりであり、先生御指摘のとおりでございます。
○会長(上杉光弘君) 大脇雅子君。
○大脇雅子君 今日は、貴重な御意見をありがとうございました。
私は、国会の場に参りまして、判例というものが積み重なって、やっと十年ぐらいたって国会の立法課題になってくると、したがって、弁護士会の立法提言というのはその段階では極めてやっぱり先駆的で、時代を開くものではないかと常々考えまして注目をしているわけです。
今、お話を聞かせていただきますと、弁護士会の人権擁護活動というのは非常に包括的な、そして広がりを持った部分と、個別具体的な個人の人権救済ということとやはり両面があり、それが非常に多様化し、細分化してきたということをお話を聞いて痛感をしたわけでございます。その中で、今、二〇一〇年までに日弁連が取り組むべき二十三の人権課題ということをおっしゃいました。
村越参考人にお尋ねをしたいのですが、この二十三の人権課題と制度変革の課題は何かということをちょっと御説明していただきたいと思うのと、平成十三年度にたくさんの個別事例で勧告をなさっているわけですけれども、今、二つ残っていると。布川事件の第二次再審請求と日野町事件の再審請求があるということですが、これはどんなケースなのか、岡部参考人にお尋ねしたいと思います。
○参考人(岡部保男君) 二つのケースが残っているのではなくて、二つのケースを昨年度新たに支援を決めて再審に取り組んでいるということです。
日野町という比較的新しい事件なんですけれども、滋賀県で酒屋の女主人が殺害されて山中というか雑木林に捨てられたという事件で、逮捕され裁判になった事件です。その犯人と目された人は精神的にやや遅滞している方なものですから、自白そのものを見ても非常に支離滅裂なんですけれども、ほかに決め手というのは、その酒屋の片隅に指紋が一つ手鏡に付いていたというだけなんですね。それ以外のものは何もないということで、今、大津地裁でその死因が何かを含めて進行しているという状況です。
布川事件という茨城県の事件ですけれども、これは強盗殺人を二人組でやったという事件で、一次再審が否定されて、その後、新証拠を確保するために目撃証人その他についてかなり長い時間を掛けて調査してきまして、昨年度、ようやくまとまって請求を出したというふうなことで、これも極めて証拠の薄弱な事件でして、先日、この事件の研究会をやりましたところ、元検察官の方にも参加していただいて、検察官の立場で見たらどうかというふうなことでかなり率直な、両事件について率直な御意見を言っていただいたんですけれども、もし自分が検察官であったらこの事件は起訴できなかった、起訴しなかったというふうなことを言われている事件でありまして、日弁連としては、これを是非冤罪を晴らしたいというふうに考えて取り組んでいる。
これ以外にも幾つかの事件、係属しているのは死刑事件含めてあるんですけれども、本日、時間の関係で省略しましたけれども、これは新しい事件という意味で御紹介しました。
○参考人(村越進君) 人権のための行動宣言というのは、こういうパンフにしておりまして、事前に日弁連の方からお届けしているかと思うんですが、ただ、現物がもう売り切れたもので、コピーで大変申し訳ありませんが、この中で具体的課題としては、一番の刑事手続から二十三番の国際的人権保障システムの強化までということを書いております。ごらんをいただければと思います。
○大脇雅子君 ありがとうございました。
人権が国境を越える時代になりまして、先ほど山口委員の方から国際刑事法廷のことが出て、吉川委員の方からも選択議定書の問題が出ました。
今まで国家によって保障されていた人権が、言わば国際的な仕組みの中で保障されるという時代を私は迎えたのではないかと思います。この国際的な人権が裁判で問題になるときに、なかなか条約などは裁判規範として適用されないという現実の問題があります。
やはり国内的に見ている人権ではもう制約があるということで、日弁連の方も国際的な人権に関する部会を設定されたわけですけれども、こうした国際的な人権の視点から見た現在の日本における司法制度の欠陥といったものはどこにあるのかということをお二人の先生に御説明いただきたいと思います。
○参考人(岡部保男君) 日本の裁判は、やはり特に刑事事件におきましては、捜査段階で出てくる証拠、特に自白調書を中心にやっているわけですけれども、その前段階の捜査の段階について、先ほど来申し上げました問題がありまして、それに基づいて言わば自白調書を言わば公認するといいますか、オーソライズするための手続と化している部分がかなりあるわけです。
もう一つは保釈、勾留制度が非常に厳しい運用をされていまして、自白をしなければ保釈されないという現状があって、それがまた自白の強要につながっているという側面がありまして、そういった点で、日本の刑事裁判に対して少なくとも国連の人権委員会では幾つかの視点から指摘をしておりまして、改善すべき点は非常に多々あるというふうに考えております。
○参考人(村越進君) 国連の人権委員会は、再三、日本の法律家、裁判官、検察官、弁護士も入るわけですが、に対して国際人権の教育をしなさいということを言っているわけです。これはもう大変恥ずかしいことで、私どもも弁護士会としてしっかりやっていかなければいけないんですが、今、裁判官、裁判長クラスになると、私より少し若い人もいるかもしれませんけれども、大学、司法研修所を通じて国際人権規約なんというものはほとんど見たこともないということだと思うんです。
ですから、やはりもう一回、国際人権法については法律家全般でしっかり教育プログラムを作って取り組むと。特に、裁判所においてはそれがどういう内容でどういう効力を有するのかということをしっかり徹底させていかないと、いつまでたっても知らない物は使いようがないみたいなもので、日本の国内法だけで判決を書くという状態が改まらないんではないかというふうに考えております。
○大脇雅子君 人権が国境を越えるという傾向と同時に、コンピューター社会になりますと様々な問題が法的にも起こってくると思います。
私は、八月五日に施行される住民基本台帳のネットワークによって個人情報が漏えいしたり、流出したり、あるいはハッカーなどによって取られるということが起き得るのではないか。日本は、ウィンドウズを市町村も使い、そして国の方の地方自治情報センターの方もそれを使うということですけれども、例えば、中国なんかは絶対に他国のソフトは使わないというふうになっているそうであります。そしてまた、アメリカなどの先進的なコンピューター社会でも、そうしたハッカー侵入に対する防止戦略というようなものを作ってハッカーを止めようとしていると。
私は、そういう意味では、個人情報の保護というのは今やコンピューター社会における安全保障の問題であり、むしろ国益、国防の問題だとすら、私はナショナリストではありませんけれども、そのようにすら思って、一億二千万人のそうしたデータが出ていくということに対して大きな懸念を持っています。
例えば、アメリカでは、各所轄官庁がコンピューターによってそうした個人情報を結合し照合するということについては、協定の文書によってどういう目的で、そしてどういう期間それを結合するのかということを締結して初めて可能となっておりますし、ヨーロッパなんかでも、結合や照合じゃなくて、どうやって個人情報を切断をして守っていくかということが議論されている中で、日本は何か非常に危機管理が甘い、そして、そういうリスク管理に対する危機意識が非常に薄いということを思っています。
それで、法的にも住基ネットが二百七十二の項目と結合することによって国家の一元管理も可能になってくるのではないか、成り済まし犯罪も増えるのではないかと思っておりまして、日弁連がその住基ネットに対する反対声明というのをお出しになったということに非常に注目しております。
この反対声明といいますか、この警告についてもう少し具体的に、どういう視点で何が問題なのかということをお知らせいただきたいと思います。
○会長(上杉光弘君) お二方からですか。
○大脇雅子君 はい、じゃ村越参考人。
○参考人(村越進君) 先日、日弁連でこの問題でシンポジウムを行いました。そのときには、コンピューターの専門家の方が言っていたのは、どんなところにでも絶対に侵入はできるんだと、ただ問題は時間とコストだけであって、二週間ぐらいいただければどこだって入っていって情報は取れてしまいますよということを言っていました。そこら辺が、この法律を作っている人はコンピューターのこと、私も全然分からないんですが、コンピューターのことあるいはその危険性が全く分かっていないんではないかという指摘がございました。
そういうことを考えると、基本的には漏逸するあるいは奪われるおそれがあるということであれば、過度に個人情報を集中しないということが最大の対策といえば対策でございまして、何から何まで集中して一元管理をするという方向自体が非常にリスクが大きいものではないかと。
私もよく知らないんですが、アメリカなんかでは、そうではなくて逆に分散する、情報を分散することによって一部が漏れても全部にはならないということで対応しているとか、そういうことでセキュリティーを高めているというようなことも聞いております。
だから、正にこのコンピューター社会、この時代にどういう、こういうことをやったら危険性があるのかということについての問題意識というものが全般に欠けているのではないかという気がしております。
○会長(上杉光弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言参考人の方々にごあいさつを申し上げます。
大変本日は貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十三分散会