2002/10/22 |
「国民不在の改革は無用」千葉議員が代表質問 (民主党ニュース)
参議院本会議において22日、民主党・新緑風会の千葉景子議員が小泉首相の所信表明演説に対する代表質に立った。
千葉議員は冒頭、「改革なくして成長なし」を掲げた小泉内閣の1年半が、むしろデフレ・スパイラルによる“経済有事”を引き起こし、国民を生活や将来への深刻な不安の中に突き落としていることを指摘。「あなたの言う『改革』には人間の心や姿が見えず、将来の夢や希望のかけらも感じられない」と厳しく断じた上で、小泉改革が挫折したこの1年半の総括を求めた。
小泉首相は、自らの改革路線の総括には触れずに、政官業癒着体質の自民党を「ぶっ壊す」と豪語していたことについて問われたのに対応し、「改革に協力しないならぶっ潰すと言った。しかし、今は全部法案に協力してくれる。自民党は着実に変わっている。そこが自民党のいいところ」などと自民党抵抗勢力との蜜月関係を誇示する始末だった。
千葉議員は次に、大島農水相の前秘書官による口利き疑惑を取り上げ、「政治とカネ」の問題が焦点になっている最中に閣僚の不祥事が明らかになったことについて、首相の任命責任を追及した。しかし首相は、「職務に全力を尽くし、疑惑を晴らすよう指示している」などとやはり“他人事”の答弁。疑惑を否定しながらも秘書官を更迭した理由を問われた大島農水相も、「全力で集中して仕事ができる環境と状況でないため交代させた」などと不明瞭な答弁に終始した。
財政・金融政策をめぐっては、首相のなし崩し的な政策転換が経済の混乱を招いている現状を指摘。とりわけ、ペイオフ延期と不良債権処理の加速について国民に明確に説明し、混乱の責任を明らかにするよう求めた。その上で千葉議員は、民主党の経済対策を提起。(1)長期的視野に立った安心・安全のシステム──年金制度、健保・介護の保険制度の根本改革、雇用保険の給付期間や給付額の拡充、需給要件の緩和、(2)未来志向の雇用創出策──環境、福祉、新エネルギーなどの産業育成、NPO支援税制など非営利団体の活動促進による新たな雇用の創出、(3)生活者・中小企業を生かす金融政策──金融アセスメント法の策定、中小企業に対する金融上のセーフティネット確立、(4)国際ルールを重視した経済健全化策──日本版SECの創設、公正取引委員会の強化、などを挙げ、首相に実行を迫った。
ペイオフ延期について首相は、不良債権処理を加速する観点からのものだとし、「平成16年度には不良債権処理を終結する」という目標を提示しただけで、なしくずし的な政策転換には触れなかった。また、民主党が提起している金融アセスメント法案については、「一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価するのはいかがか」などとコメントしたにすぎなかった。
北朝鮮問題では、9月17日の日朝首脳会談で拉致被害者8名が死亡していると伝えられながら平壌宣言にそのまま署名したのはなぜか、と追及。また、10月29日の国交正常化交渉再開を決めた理由、今後の拉致問題に対する交渉方針などを質した。さらに、その後明らかになった北朝鮮の核兵器開発の問題についても、首脳会談時にどのようなやりとりがあったのかを明らかにするよう求めた。
首相は、首脳会談における金正日国防委員長の発言が「謝罪と再発防止の決意を明確に示すものだった」などとして平壌宣言にそのまま署名したことを正当化。国交正常化交渉再開についても、「交渉の中で(拉致問題などへの)誠実な対応を求めていくことがもっとも効果的」などと述べたにすぎなかった。核兵器開発をめぐっては、首相が責任ある行動をとるよう求めたのに対し、金正日氏は関連するすべての国際条約を遵守すると述べたことを紹介した。
千葉議員はイラク問題についても取り上げ、武力攻撃を主張する米英両国に対してどう対応していくのかを質した。首相は、武力攻撃に対する直接の態度は明らかにせず、「大量破壊兵器の開発・配備に関する必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきだ」と述べるにとどまった。
さらに千葉議員は、国民生活に不安をもたらしている諸問題について質問。とりわけ、原発のトラブル隠し問題をめぐって国の検査体制の甘さを批判し、対応を質した。首相は、電力会社による原発の自主検査の法制化や抜き打ち検査の実施などを検討しているとしたが、経済産業省の原子力安全保安院が軸となった国の管理体制が問題視されていることについては、「現在のチェック体制がもっとも有効」などと突っぱね、保安院の独立による推進体制とチェック体制との分離については拒否する姿勢を明らかにした。
小泉総理の所信表明演説に対する代表質問と答弁
民主党・新緑風会 千葉景子
第155回国会 本会議 平成十四年十月二十二日(火曜日)
○千葉景子君 私は、小泉総理の所信表明演説に対し、民主党・新緑風会を代表して、総理始め関係大臣に質問いたします。
(はじめに)
改革断行内閣、改革なくして成長なしを掲げてきた小泉政権が発足から一年六か月。改革は進んだのでしょうか。経済は成長し、国民生活に反映されるようになったのでしょうか。いや、実態はその逆で、改革も成長もない状態が続き、小泉デフレスパイラルを招いています。
経済が失速寸前の中で、広がり続けるリストラや失業という不安、介護や年金など将来に対する不安、そして健康や安全など暮らしに対する不安。いや、不安は今や失望と落胆へ、更に恐怖心へと変わっていると言っても過言ではありません。自殺する人の数は三年連続三万人を突破していることがその何よりの証左です。人々が人間としての尊厳も持てず、生きる場をも奪われてしまっているのです。
小泉総理、あなたはこの国を、いや、この国に生きる人々をどうしようとするのですか。あなたの言う改革には人間の心や姿が見えず、将来の夢や希望のかけらも感じられません。人々は皆必死に痛みに耐えています。しかし、それは頑張れば実現できる夢や希望があればの話です。夢や希望に向かって一人一人が個性豊かに生きることのできる社会、それを国や社会がしっかり支えるシステム、このような社会を作ることが改革の先に見えてくるはずだったのではないでしょうか。
しかも、そうした国や社会の基盤を成す政治、その政治への信頼も小泉内閣になってからますます地に落ちています。小泉政権の下で、金や利権にまつわる政治家の不祥事が続出しましたが、総理は常に、出処進退は政治家が自ら決めるものと、まるで他人事のような発言を繰り返すばかりでした。
今、七つの衆参補欠選挙が行われておりますが、うち二つは秘書の口利きという政治と金にまつわる辞職に伴うものです。
自民党の地方への利益誘導、公共事業依存型の政治の本質は何ら変わっておりません。赤字路線でも構わずに地元に道路を引き込んで、関連業界から政治献金を受け取り選挙の支援まで仰ぐという構図、こうした政官業の癒着構造は何一つ是正されておりません。まず改革しなければならなかったのは自民党という政官業癒着システムなのです。自民党をぶっ壊すと豪語されていた小泉総理、一体どうなっているのでしょうか。
国民が政治に信頼をなくした国の未来を考えると背筋が寒くなります。現在の小泉内閣は不安・不信増幅内閣でしかありません。総理、これでもまだ改革改革と空念仏を唱えて国民を惑わし続けるのでしょうか。それとも、改革の挫折を認めて自ら座を退く勇気をお持ちでしょうか。この一年半をどのように総括しておられるのか、総理の見解をお伺いいたします。
(大島農相秘書問題)
このようなさなか、さきのスキャンダル国会に続き、またしても秘書による口利きという政治と金をめぐる疑惑が報じられています。総理、自民党総裁として何と情けないことか、国民に対して恥ずかしいとお思いになりませんか。
報道では、大島農水大臣の政務秘書官が大臣の地元青森の公共事業に関する口利きで六千万円受け取ったとされています。事実であれば、さきの国会で議員辞職された井上元参議院議長の問題と全く同じ構造です。
大島大臣は、スキャンダル国会となったさきの通常国会では自民党の国会対策の責任者であり、鈴木宗男衆議院議員の秘書が逮捕されたときには、議員には秘書の監督責任があると強く批判しておられました。当然のことです。大島大臣、疑惑の秘書官を先日解任されましたが、それは疑惑が事実であったことの証左ではありませんか。であるならば、秘書は辞めさせて御本人は大臣職にとどまっていていいわけはありませんね。議員には秘書の監督責任があるのですから、速やかに進退をお決めになるべきではありませんか。大島大臣の見解を伺います。
また、総理が大島大臣を任命されてわずか三週間余りでこのような問題が明らかになった。総理の任命責任が厳しく問われると考えますが、総理の見解を求めます。
民主党は、この問題の徹底した真相究明を求めていくことを明らかにしておきます。
(内閣改造)
さて、このたびの内閣改造についてお尋ねします。
総理は、九月三十日、政権発足後初の内閣改造を行いましたが、今回の内閣改造ほど不可解なものはありません。一内閣一閣僚という原則を貫くと豪語しつつ、他方で六人も大臣を替えたことは、全く説明が付かないではありませんか。この点、総理の説明を求めます。
今回の内閣改造は、総理や各大臣の責任が具体的に問われることもなく、なぜこの人が大臣にふさわしいかの説明もありません。総理は、柳澤氏が公的資金投入への消極姿勢を変えなかったため更迭し、竹中経済財政担当大臣を兼任させました。しかし、ここまで日本経済が落ち込み、財政が破綻寸前の状況にあることを直視すれば、まず竹中大臣の責任や能力を厳しく問うべきであり、その大臣に金融担当相を兼任させるような人事は到底納得できません。総理の見解を伺います。
また、私たちがBSE問題等の責任を問い、辞任を求めてきた武部農水大臣が今回交代になる一方で、東京電力原発検査記録の不正記載等で原子力安全・保安院など国の責任が問われる中、平沼経済産業大臣は留任、さらに、防衛庁長官は交代で外務大臣が留任というのも理解に苦しみます。結局は従来からの自民党の順送り人事にしかすぎないと思いますが、総理、内閣改造の目的、各大臣をなぜその担当大臣とされたのか、明確に説明していただきたい。
(財政・金融)
経済問題についてお尋ねします。
今、日本経済は小泉内閣の経済無策によりデフレスパイラルという底なし沼の状態に陥っています。一体景気はどこまで悪化するのか、全く予想が付かない状態です。失業者やホームレスがあふれ、企業倒産が続いて、自殺に追い込まれる人が後を絶ちません。将来に対する不安で人々は消費を控え、それでますます景気が落ち込むという悪循環に陥っています。就職の夢は絶たれ、若者は未来に希望が持てない苦しみに直面しています。高卒で就職できるのは二人に一人との調査結果が出ています。日経平均株価が一時期八千円台前半にまで下がったことは、日本経済の危機が計り知れないほど深刻であることを示しています。
こうした経済状況に直面し、総理は、過去の政策についての総括も反省もなく、なし崩し的に政策転換を行っています。小泉内閣はペイオフ凍結解除の再延期を決定しましたが、これは、ペイオフは予定どおり実施するとの方針を表明し続けた内閣の重大な政策転換です。総理は、これまで金融システムは健全であると言い続けてきました。仮にそれが事実とすれば、ペイオフ延期などあり得ないのではないでしょうか。また、それが事実に反するならば、なぜ政策転換をしたかについて国民にはっきり説明責任を果たす必要があります。総理の答弁をお聞きしたい。
また、不良債権処理についても、総理は、大臣の首まですげ替えて不良債権処理を急ぐとのメッセージを市場に送りました。ところが、総理がデフレ対策も講じないまま、はっきりした理由も示さず過去の方針を翻したため、日本経済は大混乱に陥っています。これらの政策転換について、総理は国民に分かるような説明を行うべきではありませんか。また、政策転換をするのであれば、その政治責任をどう取るのか、具体的に示すべきです。これは政治の基本であり、いい加減な答えでは国民は到底納得できないと思います。総理より明快なる見解をいただきたい。
日本経済は非常事態に突入しています。今臨時国会は、デフレから脱却し、国民生活を立て直し、日本経済を再生させるための対策を早急に策定し、実行するための国会と位置付けるべきだと考えます。
なぜ日本経済がここまで低迷し、国民生活は危機に瀕しているのか。その答えは極めてはっきりしています。小泉総理が進める構造改革が偽物であり、口先だけのものだからです。総理は単なる破壊者であり、新しい社会へのビジョンもない、日本を再生させる根本的な政策が欠落しているからではないでしょうか。
民主党が主張する構造改革は、口先だけの小泉改革とは違い、長期的なビジョンに立ち、未来に対する安心、安全を取り戻し、国民生活を根本から立て直すことを目的としています。以下、小泉改革との違いについても触れつつ、民主党の主張する経済対策を提唱させていただきます。
第一に、小泉内閣は、自らが約束した国債三十兆円枠に縛られ、小手先の景気対策でその場をしのごうとしていますが、私たちは、長期的な視野に立った安心、安全のシステムを作ることこそ基本だと考えています。
年金制度の抜本的改革、健保、介護の保険制度の根本改革を進めるとともに、雇用保険の給付期間や給付額の拡充、受給要件の緩和などの対策を急ぐべきです。将来年金がもらえなくなるのではないか、失業したときに雇用保険は受け取れないのではないかという不安を除去しない限り、冷え切った消費や投資を回復することはできません。
第二に、小泉内閣は、我々が要求した予算組替えを聞き入れず、旧態依然とした土木型公共事業にこだわり続けていますが、私たちは、環境、福祉、新エネルギーなど、新しい時代のニーズにこたえる産業を育て、多くの雇用を作る未来志向の発想を持っています。
また、NPOを始めとした非営利団体の活動を促進し、新しい形の雇用を作るべきです。民主党を始め野党提出のNPO支援税制法案を早く成立させるべきです。
第三に、小泉内閣は、大銀行、大ゼネコンを救済し、国民や中小企業を切り捨てる政策を取っていますが、本末転倒と言わざるを得ません。民主党の経済対策は、あくまで生活者、中小企業を生かすことを基本としています。
民主党が主張する不良債権処理は、あくまでも金融機関が本来の姿に戻り、地元の中小企業に積極的に融資を行えるようにすることが目的です。そのためには、金融アセスメント法を策定するとともに、中小企業に対する金融上のセーフティーネットを確立することが絶対条件です。大企業の借金は棒引きにして、中小企業への融資を止める政府のやり方とは正反対です。
その他、住宅・教育ローンの利子減税などを断行すべきと考えます。
第四に、政府は内向きの継ぎはぎ政策に終始していますが、民主党は、国際ルールや国際競争力を重視した政策を提言しています。
日本版SECを創設し、公正取引委員会を強化し、自由で透明な経済市場を確立すべきと考えます。また、地域の活力を生み出すためには、現在出されている小手先のメニューを集めただけの特区構想にとどまることなく、権限とともに税財源を大幅に地方へ移譲するなど、大胆に分権を進めることが必要です。
小泉総理の所信表明演説を伺っておりますと、具体的な経済対策にはほとんど触れておられません。本気で、本年をデフレ脱却元年とし、日本経済を再生させる気があるのでしょうか。これでは小泉スパイラル、竹中クラッシュを更に加速させるだけではないでしょうか。
総理は、私たちの提言を真摯に受け止め、政治決断によって実行に移すべきです。この国会で何を実現するのか、具体的にお答えをいただきたい。とりわけ、野党提出のNPO支援税制法、金融アセスメント法の策定はすぐにでもできることです。この点も含め、総理の答弁を求めます。
(人事院勧告について)
ところで、去る八月八日、人事院は、今年度の国家公務員給与を平均二・〇三%引き下げること、一時金を〇・〇五か月削減することなどを中心とする勧告を行いました。勧告始まって以来、初のベースダウンで、年間給与も四年連続してマイナスとなるなど、極めて厳しい内容でした。
給与水準にかかわる勧告内容は、深刻な民間給与実態、経済・雇用状況を反映したものと認識しております。しかしながら、このような民間給与実態を招いた責任は、自民党を中心とする政府の経済失政にあることは明白です。また、官民格差の是正を理由に、官民相互に勤労者の給与所得をいたずらに抑制することにつなげることは、国民経済の観点からも問題が多いのではないでしょうか。特に、勧告の具体的な実施方法については慎重な検討と冷静な労使協議を期待したいと思いますが、不利益不遡及の原則を変更する内容が含まれていることについて、総理の見解を求めます。
(外交安保関係)
(北朝鮮関係)
先週十五日、北朝鮮に拉致された方々のうち五名が待望の帰国を果たされました。御本人はもとより、御家族の皆様にとって、どれほど長い道のりであったことか、この間の心労はいかばかりであったことか、察するに余りあるもので、言葉には到底表現し得ない思いです。五名にとっての一日一日積み重ねられた二十四年、その歳月の重さを考えるとき、生活を急激に変えることはなかなか容易なことではないかもしれません。まずはゆっくりと心をいやしていただきたいと思います。
さて、この帰国の契機になった九月十七日の日朝首脳会談は、国民にかなり唐突なものであったことは否定できません。確かに、北東アジア地域全体の安全と平和の促進を考えたとき、日朝間の長きにわたる不正常な関係を解消することは、米国、韓国、中国、ロシアとの関係の発展、協調とともに不可欠な条件ではあると思います。しかし、この時期に首脳会談が持たれることになったのはどのような判断に基づくものだったのか、総理に伺います。
この日朝首脳会談において、北朝鮮は、国家による拉致を認め、拉致被害者の八名もの方々が死亡という衝撃的な内容を伝えてきました。総理は、この事実を知らされたとき、どれほど事の重大さを認識したのでしょうか。
国と国の対立の中でいつも人々は翻弄されてきました。我が国が植民地支配の反省と償いを忘れてはならないと同様、自国の国民がその生命と人権をないがしろにされ、我が国の主権を侵されたことにどれほど強く抗議したのでしょうか。金総書記は口頭で謝ったと伝えられていますが、正式文書の日朝平壌宣言には拉致のラの字もありません。このように、国による人権侵害という重大な事態が明らかになっても、あらかじめ用意した宣言案をそのまま署名したのはなぜでしょうか。総理の政治的判断の明確な説明を求めます。
その後、拉致問題について北朝鮮から日本政府が聞き出してきた情報は、死因や埋葬等について真偽のほどさえ疑わしく、御家族始め国民の不信感は募るばかりです。そもそも、拉致被害者、御家族に対して直接の謝罪はあったのでしょうか。今後、被害者や御家族への謝罪と補償がなされ、安全が確保され、完全な解放と帰国という具体的で誠意ある対応が取られるべきです。
政府は、厳しく毅然とした態度で北朝鮮と向き合い、まずは拉致問題の全容解明に向けて徹底的な再調査がなされなくてはなりません。そして、調査結果を踏まえ、全面的な解決への道筋を付けるべきです。
政府は、今月二十九日には国交正常化交渉を再開するとしています。そのように決めた理由は何でしょうか。拉致問題の全面解決なくして国交正常化なしと発言されてこられたのですから、その際の拉致問題に対する交渉の方針及び展望はいかなるものなのか、総理並びに外務大臣に伺います。
さらに、北朝鮮が今月初めの米朝高官協議の際、核兵器開発を進めていることを認めたことが判明いたしました。一体、日朝首脳会談で署名された日朝平壌宣言は何だったのでしょう。総理は、首脳会談前に米政府から北朝鮮の核開発に関する情報を知らされていたということですが、会談では核開発について北朝鮮側からいかなる説明があり、どのような話合いがなされたのか、総理、明確に御説明ください。
核開発は、米朝枠組み合意だけでなく他の国際約束にも反し、我が国を含む東アジアの安全保障上の脅威となるもので、看過できるものではありません。何としても国際社会による厳格な査察の実施、開発等の停止を北朝鮮に確約させなくてはなりません。
再開するとしている国交正常化交渉において、拉致事件の徹底的な真相究明と核開発問題が交渉入口での最重要課題であり、交渉進展の条件になると考えますが、交渉に臨むに当たっての姿勢及び交渉のプログラムを総理及び外務大臣に御説明願います。
次に、イラク問題についてお伺いします。
昨年十月七日の米英軍によるアフガニスタン攻撃から一年がたちました。日本は、九月十一日の同時多発テロの大惨事を受け、国際社会とともにテロとの闘いに取り組んでいくことを明確にし、様々な面で米国に協力もしてきました。
しかし、現在、私が憂慮するのは、米国がアフガニスタンにおける戦争の舞台をイラクに移そうとしていることです。ブッシュ大統領は、九月二十日の国家安全保障戦略の発表から、フセイン政権の打倒を主張し、場合によっては単独での先制攻撃も辞さないとしています。さらに、武力攻撃を念頭にした安保理決議案の提出、米国の上下院による武力行使容認の決議案採択など、危険とみなせば単独での武力行使をしてでも他国の政権をすげ替えるという米国の姿勢を総理は支持されるのですか。総理の見解を伺いたい。
いやしくも武力行使を主張する以上は、その正当性を国際社会が承認することが不可欠です。慎重かつ冷静な検討もないままに、自由と人権の理不尽な抑圧につながる事態が生ずるのみならず、イスラム世界をも巻き込んだ国際的な紛争に拡大することを私は強く懸念いたします。
このイラク問題に対し、政府としてどのように取り組んでいくのか、また武力攻撃を主張する米英両国に対して我が国としてどう対応していくのか、総理及び外務大臣に改めてお伺いしたいと思います。
他方、アフガン難民問題をきっかけに、我が国の難民認定、難民支援制度の見直しを求める声が国内外で強まっています。国連からも難民問題に関する我が国の姿勢は厳しく指摘を受けています。緒方貞子さんが国際社会で果たされてきた足跡を私たちは受け継がなくてはなりません。
世界のあらゆる人の自由と尊厳を守る先頭に立ち、国際社会と共生し、尊敬される国になるためにも、難民認定申請者が長期にわたり収容されているような実態は改める必要があり、民主党も検討を進めておりますが、難民認定に関する審査機関の在り方、六十日ルールの廃止などについて、総理、法務大臣はどのように考えておられるか、お伺いいたします。
〔国民生活の不安〕
さて、国民生活において不安を募らせている問題について、以下、伺います。
(原発のトラブル隠しをめぐる問題)
まず、東京電力など電力会社による原発のトラブル隠しをめぐる問題です。
今回の電力企業による点検記録の改ざん問題は、電力会社首脳の総退陣にまで発展すると同時に、国の原子力政策を揺るがしかねない事態になっています。大変深刻な問題です。原発に対する国民の理解を得るためには、国と電力会社は情報の公開、説明責任を果たさなければなりません。トラブルを会社ぐるみで隠ぺいし、国民の原子力発電に対する信頼をおとしめた企業の責任は当然のことながら、経済産業省の原子力安全・保安院など、国の管理体制も厳しく問われなければなりません。
国の検査体制の甘さや不十分な説明など、総理はどのように認識し、原発の信頼回復のために今後どのような方針で取り組むお考えか、答弁を求めます。
今回の事件を契機に、保安院を中心とした原発の安全管理体制に対して疑問の声が出ています。民主党は以前から、保安院を完全に独立させ、内閣府に移すことを主張しており、二〇〇〇年三月には原子力安全規制委員会設置法案を提出しております。自治体や経済界等からも推進体制とチェック体制との分離を求める声が出ています。保安院の内閣府への移行について、総理の見解をお尋ねします。
さらに、保安院の規模及びその専門的能力について伺いたい。
日本の体制は、原発約五十基に対して保安院に二百六十人、内閣府に約百人の人員が配置されています。これに対し米国では、原発百基に対し、原発安全規制機関であるNRCに二千九百人の職員が配置されております。つまり、原発一基当たりで見れば、米国には約三十人の職員がいるのに対し、日本はわずか七人にすぎません。
今後、日本の原発の経年劣化が進んでいく中、米国のわずか四分の一の陣容で本当に十分な安全対策を確保できるのか、総理の見解を求めます。
(食の安全)
次に、食生活の不安について伺います。
牛海綿状脳症、いわゆるBSE問題の発生から一年が経過しました。BSEに対する一定の安全確保体制は整備される方向に進んでいるとは思いますが、BSEの原因や感染経路についてはいまだ明らかになっていません。総理、これらの究明はその後どうなっているのか、明確な答弁を求めたい。
また、農水省が法律による肉骨粉の使用禁止を見送ったことや、EUから日本におけるBSE発生の危険性を指摘されながら何もしてこなかった政府の対応などは明らかに失政ではなかったのか。これらについて、総理はいかがお考えですか、お答えください。
また、大手企業による牛肉偽装問題が発覚したとき、武部前農水大臣は企業に対し厳しい処分を求めましたが、そもそもBSE問題発生時に農水省自身が取った態度はどうだったのでしょうか。問題発生時に高級官僚だった農水省幹部は、八千数百万円の退職金を受け取り、畜産関連団体に天下りしようとしていた。逆に、BSE発生以来、牛肉関連企業は業績を急降下させ、そのために職を失った方々や失いかねない人々もたくさんおられます。政府の失政の被害を受けた方々に政府はどう対応したのでしょうか。身内には優しく、働く人々や消費者には冷たい農水省の態度は全く解せません。総理の見解を伺います。
(個人情報保護法関連4法案について)
次に、個人情報保護法案について質問いたします。
個人情報を保護するための法律の制定は急を要する案件だと私も思いますが、自己情報に本人が関与する自己情報コントロール権が確保されることが最低限必要ではないでしょうか。この点について、総理の御所見をお伺いいたします。
また、政府提出の個人情報保護法案は、憲法二十一条が保障している言論、表現、出版などの自由を侵害するおそれが大です。時の主務大臣の判断によって罰則規定が適用されることになり、その基準のあいまいさが以前から強く指摘されるところで、大臣による恣意的介入が懸念されます。これでは、本来ジャーナリズムが監視する権力が、逆にジャーナリズムを監視するということになりませんか。主務大臣が関与するという仕組みではなく、欧州諸国のように行政から独立した第三者委員会を設置すべきではないでしょうか。総理の御所見を伺います。
私は、個人情報保護法案はOECDの八原則に基づいた明確なものにしなければならないと考えておりますが、政府案には多くの問題点があり、欠陥法案と断ぜざるを得ません。政府の個人情報保護関連法案は撤回し、新たな法案を再提出する以外に選択肢はないと考えます。この場で総理の決断をいただきたい。
(人権擁護法案)
この際、重大な欠陥があるために継続審議となっている人権擁護法案についても具体的に質問します。
まず、人権擁護法案では、人権委員会を法務省に置くとしております。国連からも強く指摘されているように、人権委員会の独立性を確保するためには、人権委員会は法務省ではなく内閣府に設置すべきです。権力を背景にした暴力、虐待、人権侵害が問題となっている刑務所や出入国管理施設を所管しているのは法務省なのですから、法務省が人権委員会を所管することは不適切です。
また、地方にも人権委員会が必要です。
第二点目は、報道機関の過剰な取材方法による人権侵害について人権委員会が介入できる点です。報道機関も社会の一員であり、人権侵害は許されませんが、国家権力が報道へ介入することは民主主義に不可欠な自由な報道への悪影響が懸念されます。直接介入するのではなく、報道機関に対し自主的救済の仕組みを作ることを義務付けるべきではないでしょうか。
これらの点を修正することについて、総理から明確な答弁をお願いします。
(男女共同参画)
次に、二十一世紀の最重要課題、男女共同参画社会実現に向けて質問します。
現在、日本人の平均寿命は男性七十八・〇七歳、女性八十四・九三歳と延びています。こうした長寿社会では、男女ともに多様なライフスタイルを選択することのできる社会システムを確立することが不可欠と考えます。
また、内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査によれば、夫は外で働き妻は家庭を守るという伝統的な家庭観について、男性の賛成は五一・三%、反対が四二・一%という結果になりました。しかし、二十代から四十代では、男女いずれも反対派が半数を超え、賛成派を大きく上回っています。若い世代が持つ家庭観を重く受け止めるべきではないでしょうか。
この調査報告の結果を踏まえた施策を含め、男女共同参画社会に向けた政府の基本姿勢を総理からお伺いします。
このような社会の変化の中、選択的夫婦別姓の導入が叫ばれて久しくなります。多くは申しませんが、機は熟しており、導入に向けた総理の決断あればという状況です。改革を唱える総理であるならば、このようなときこそ本領を発揮すべきではないでしょうか。そうでなければ総理御自身が抵抗勢力と評されることになります。総理の決断の一声をお聞かせください。森山法務大臣も多分期待されておられるはずです。
さらに、社会制度も、多様なライフスタイルに適合し、男女共同参画社会にふさわしい性に中立性を持った制度にすべきではないでしょうか。税制、年金については、世帯単位から個人単位の制度に変えていくべきではありませんか。基礎年金は全額税方式にする、年金負担は個人単位に切り替える、配偶者控除、配偶者特別控除は廃止して、子育て支援などは歳出の方でしっかり手当てをする、こういう施策が必要ではありませんか。総理から明快なる答弁を求めます。
(司法制度改革)
もう一つ、二十一世紀、公平、公正な社会を支えるものとして期待される司法制度改革について質問いたします。
我が国は、欧米諸国と比べ、弁護士や裁判官など法曹の数が圧倒的に不足しており、国民の人権擁護、紛争解決に支障を来しています。民主党も、既に司法制度改革に関する提言として「市民が主役の司法」を取りまとめ、法曹を現在の五倍の十万人に増やすことを主張しており、そのためには、中核となる法科大学院、いわゆるロースクールの創設が非常に重要だと考えています。政府も今国会に法科大学院を創設する法案を提出されております。
そこでお聞きします。民主党は、法科大学院をこれまでの法学部の二の舞にしてはならないと考えています。市民に信頼される法律専門職業人の養成に特化した機関としての教育内容・方法を確保すること、入学者が法学部出身者に偏らないよう適性試験、学部成績、社会人としての活動実績等を総合的に評価すること、設置認可、監督、評価などは文部科学省から独立した第三者機関で実施することなどが必要と考えます。これらについて、法務大臣のお考えをお聞かせください。
(基地関係訴訟)
司法による社会の公正の担保が重要であることを指摘させていただきましたので、最後に最近出された二つの司法判断に関連してお尋ねします。
小泉総理の地元神奈川県は、御存じのとおり、沖縄県に次ぐ基地県でもございます。この米軍基地に関連して過日二つの第一審判決が出されました。一つは十月七日に言渡しがあった基地従業員の石綿じん肺訴訟判決、もう一つは十月十六日に言渡しがありました厚木基地騒音訴訟判決です。いずれも国の責任を厳しく問う内容でした。
じん肺訴訟において判決は、国は雇用者としての立場、地位協定締結当事者としての立場から、米軍が安全配慮義務を十分に尽くしているかどうかを不断に調査、監視し、必要な措置を講ずるよう働き掛ける義務があるにもかかわらず、それを十分に尽くしていなかったとしており、基地騒音訴訟判決においては、国の防音対策は抜本的な解決になっていないとして抜本的な対策の必要性を指摘し、あわせて、日米合同委員会での協議、交渉という手段があり、国が被害の発生を回避する可能性が全くなかったということはできないと不作為の責任を問うています。
基地の存在には、周辺住民の協力、基地機能を維持するための優れた技術力などが必要です。だとすれば、これらにかかわる人々の安全、安心、人権を守ることは国としての義務ではないでしょうか。
国民の信頼なくして日米同盟関係に基づく基地の存続はあり得ません。これからも日米両国が対等の良きパートナーシップを発展させていこうとするのであれば、この際、住民や働く人々の安全、安心を求める声にこたえ、司法が下した判断を率直に受け止め、抜本的な対策を講ずるべきと考えますが、いかがでしょう。総理の答弁を求めます。
じん肺訴訟の原告は、戦後の日米関係の発展、我が国の復興を支えてきた人々ですが、今や高齢化し、亡くなる方も出ています。時間はないのです。また、厚木基地周辺住民が静かな夜を返してと最初の訴訟を提起したのは一九七六年。それから既に三十年近くの時がたっているのです。
じん肺訴訟については、国はほぼ判決を受け入れましたが、一部を控訴しました。しかし、いずれにしても、これ以上国が訴訟を長引かせることは避けるべきです。長年にわたる市民の痛みを和らげるために、ここで一つでも総理の温かい心を示されてはいかがでしょう。問題を最終解決するための総理の決断を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 千葉議員にお答えいたします。
この一年半をどのように総括しているかとお尋ねでございますが、私は、内政にあっては構造改革を断行し、外交にあっては国際協調を基本に主体的な役割を果たすなど、揺るぎない姿勢で、就任以来、山積する内外の課題に取り組んでまいりました。
小泉内閣の改革に協力しないのであれば、私は自民党をつぶすと言ってきました。今、いかに皆さんよく協力してくれるか、よく見てくださいよ。自民党、公明党、保守党の協力によって着実に政策実現に努めているじゃないですか。私は自民党を変えると言って出てきたんです。変わらなければぶっつぶすという考えには変わりありません。
道路公団の民営化にしても、郵政改革の民営化にしても、あるいは医療改革関連法案にしても、今までの自民党だったら一部の反対に引きずられて法案にも出すことはできない。それを最終的には自民党は、全体を考えて、良識を発揮して協力してくれて、全部法案に、改革に協力してくれるんです。そこが自民党のいいところなんですよ。自民党は着実に変わっているんです。変化に対応できない政党は生き残れない。自民党は変化に対応しようと思って努力している。
外交面におきましても、米国を始めとする各国首脳との信頼関係を築き、私は各国との協調関係を強化してまいりました。
新しい体制の下、私は、改革なくして成長なしとのこの改革路線を確固たる軌道に乗せて日本経済の再生を目指すとともに、官から民へ、国から地方への流れを一層加速して、活力ある民間と個性ある地方が中心となった経済社会を実現してまいりたいと思います。
政治と金の問題、大島大臣の元秘書官の問題についてでございますが、政治と金の問題は、常に政治家が襟を正して当たらなければならない問題だと思います。大島大臣に対しましては、農林水産大臣としての職務に全力を尽くすとともに、事実関係を明らかにし、疑惑を晴らすように指示しております。
内閣改造の目的についてでございますが、私は、かねてから一内閣一閣僚ということを言ってまいりましたが、大臣が頻繁に交代することは今でもいいことではないと思っております。今回の改造は、私の改革路線を更に確固たる軌道に乗せるための改造でありまして、各閣僚の任命に当たっては適材適所の考えに立ったものであります。
ペイオフに関してお尋ねがありましたが、不良債権処理の加速により構造改革の加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等金融の円滑化に十分配意することも必要でありまして、このような観点から、ペイオフについては、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施することとしたものであります。これは不良債権処理の加速という構造改革を強化するものであります。改革なくして成長なしという基本方針は全く変更しておりません。
不良債権処理と経済対策についてのお尋ねでありますが、不良債権の処理は、従来から、他の分野における構造改革とともに実施することにより、デフレの克服及び我が国経済の再生に必要なものであり、このため、政府、日銀と一体となって総合的な取組を行う必要があります。今般、こうした基本的な認識を変更することなく、日本経済の再生に向け、平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの基本方針を示し、不良債権処理をこれまで以上に加速することといたしました。
現在、金融担当大臣がその具体策について様々な観点から検討を行っておりますが、この問題につきましては、あわせて、デフレ克服に向けて、不良債権処理の加速を含む金融安定化策とともに、規制改革、都市再生など構造改革の加速策のほか、雇用、中小企業に対するセーフティーネット策を含む総合的な対応策についても今月末に取りまとめることとしております。
なお、御指摘のあったNPO法人に対する支援税制については、NPO法人の実態等を見極めた上で、平成十五年度税制改正の中で検討してまいります。
また、民主党が提案している金融アセスメント法案についても御指摘がありましたが、金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断、すなわち市場メカニズムに従って行われるべきであり、民主党提案のように、何らかの一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価することについては慎重に考えるべきものと思います。
公務員給与についてでございますが、国家公務員の給与は常に社会一般の情勢に適応するように見直しが行われるものとされており、今回の給与水準の改定も、民間における給与実態を踏まえて公務員給与の引下げを行うべきとする人事院勧告を受けたものであります。現下の厳しい経済情勢の下において官民の間に生じた給与水準の格差を是正することが必要と思い、国会に法改正の審議をお願いしたところであります。
また、今回の国家公務員の給与改定法案は、年間給与について民間給与との均衡を図るとの観点から十二月期の期末手当の額の調整を行うものであり、給与を遡及して減額するとの御指摘は当たりません。
日朝首脳会談を行うとの判断に関するお尋ねですが、日朝首脳会談は、七月末の日朝外相会談及び八月下旬の日朝局長協議の結果を踏まえ、私が金正日国防委員長に対して日朝間の諸懸案の解決について直接働き掛けを行い、先方の政治的意思を引き出すことにより局面の打開を図るとの観点から決断したものであります。
なお、米国、韓国、中国、ロシアに対しては、首脳会談の前後にしかるべく通知、説明を行っており、いずれの国も今回の首脳会談を支持すると言っております。
日朝首脳会談及び拉致問題についてでございますが、拉致された方の安否に関して北朝鮮から示された情報は誠に悲惨な内容でありまして、残念であり、また厳しい決断を迫るものでありました。政府としては、北朝鮮に二度とこのような痛ましい事件を起こさせてはならないと思っております。
日朝首脳会談における金正日国防委員長の発言は、拉致問題への北朝鮮の関与を認めた上で謝罪と再発防止の決意を明確に示すものでありました。私は、交渉を通じて日朝間に横たわる深刻な懸念を払拭することが我が国の国益にかなう選択であると判断し、日朝平壌宣言に署名しました。
日朝国交正常化交渉に関するお尋ねですが、拉致問題を始めとする諸懸案の解決のためには、国交正常化交渉の中で北朝鮮に対して日朝平壌宣言に従って誠実に対応するよう強く求めていくことが最も効果的と考え、国交正常化交渉を再開させることとしました。特に、拉致問題及び核問題を含めた安全保障上の問題については、これを最優先課題として日本の立場を明確に主張し、問題の解決に向け最大限の努力を行う考えであります。
北朝鮮の核開発問題と日朝首脳会談に関するお尋ねですが、先般の日朝首脳会談においては、その時点で得ていた情報も踏まえ、金正日国防委員長に対し核問題を取り上げ、責任ある行動を取るよう強く求めました。これに対して金委員長は、関連するすべての国際的合意を遵守すると言いました。
米国の対イラク政策についてのお尋ねですが、イラクの大量破壊兵器開発問題は国際社会共通の問題であります。重要なのは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきであります。この点について、我が国と米国及び英国の意見は一致しており、我が国は国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。
難民認定の審査についてでございますが、この問題については、国の内外における人道、人権に関する意識動向や国際社会における日本の役割も視野に入れて幅広い視点から議論を重ねた上、適切に対応してまいります。
原子力発電に関する国の検査体制についてでございますが、原子力発電所の不正記録問題については、国においても安全規制を見直し、事業者の適正な安全確保への取組を促していくことが必要と考えております。今後は、自主検査の法定化や抜き打ち検査の実施等により検査の実効性を向上させ、原子力安全行政の信頼の確保に努めてまいります。
原子力安全・保安院の内閣府への移行に関するお尋ねですが、原子力安全規制については、経済産業大臣が一次規制を実施し、原子力安全委員会が客観的、中立的立場から再度安全性を確認するという現在のダブルチェックの体制が最も有効に機能するものと考えます。今般の事案が原子力の安全に対する信頼性を損なったことを重く受け止め、再発防止策として何が必要かについて総合的に検討してまいります。
原子力安全規制の実施体制にかかわる規模についてですが、米国原子力規制委員会は、安全研究の要員も含むなど、その業務や組織構成は日本の行政組織とは異なるため一概には比較できません。我が国も、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の規制関係職員のほかに、安全研究等を実施している人員を勘案すれば、十分に安全対策を確保できると考えておりますが、今回の事案を踏まえ、更に検討してまいります。
BSEの原因究明でございますが、BSE発生以来、肉骨粉などの輸入国について、加熱処理が行われていたかどうか、感染牛の配合飼料に肉骨粉が混入していなかったかどうかなど、あらゆる角度から調査を行い、原因究明に全力で取り組んでいるところであり、その進捗状況については農林水産省から随時公表しているところであります。今後とも、専門家の協力を得ながら、原因究明に全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
BSE問題への対応についてですが、牛には肉骨粉がほとんど使われていなかったことなどから、農林水産省が肉骨粉等を牛に使用しないよう行政指導により対応したものと承知しております。また、結果的にはBSEの発生を見たことからすれば、EUの指摘も踏まえて、発生時の対応の在り方等について検討を行っておく必要があったのではないかと考えております。今後、食品安全委員会の設置等により、食の安全、安心の確保に全力を尽くしてまいります。
BSEの発生により影響を受けた牛肉関連企業に対する政府の対応についてでございますが、BSE発生により深刻な影響を受けた食肉関連事業者等に対しては、昨年十月以来、関係省庁の連携により、低利資金の融通やセーフティーネット保証等を措置してきたところであります。今後とも、各省の連携により、関係事業者の経営の安定に努めてまいります。
個人情報保護法案についてでございますが、個人情報保護関連法案は、IT社会が進展する中、個人のプライバシー等の侵害を防止し、国民生活を守るための基盤整備として不可欠なものであり、一日も早い成立が必要なことについては野党におかれても認識をともにされているものと思われます。
本法案では、事業者による個人情報の取扱いに対する本人の関与を制度化することとし、開示、訂正、利用停止等の具体的な規定を盛り込んでおります。表現の自由に関しては、報道機関の報道活動について義務規定の適用が除外され、主務大臣を置かない仕組みとなっております。第三者機関の設置については、既存の行政機関に屋上屋を架すこととなり、責任関係が不明確になるおそれがあるものと考えております。
いずれにせよ、本法案においては、プライバシーの保護と表現の自由を両立させる観点から万全の措置を講じたと考えておりますが、野党からも建設的な御議論をいただければ検討してまいりたいと思います。
人権擁護法案についてですが、委員会を内閣府に設置すれば委員会の独立性が確保されるかのような御指摘は必ずしも当たらないと考えます。
法案の定める人権委員会は、いわゆる独立行政委員会として、その構成と運営に関し高い独立性及び第三者性が確保されております。また、報道機関の取材活動に対しては、報道機関の自主的な取組の尊重を明記するなど、報道の自由に十分に配慮した内容となっております。
政府としては、国会における審議を通じて国民の幅広い理解を得られるよう努めてまいります。
男女共同参画社会に向けた政府の基本姿勢についてですが、男女が互いに責任を分かち合い、性別にかかわりなく各人の個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、社会全体にとって大きな利益をもたらすものと認識しております。今後とも、男女共同参画社会の実現に向けて、いろいろな関係施策を積極的に進めてまいります。
選択的夫婦別姓についてでございますが、この問題は、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題であり、いろいろ議論のあるところでありますが、社会の変化を踏まえ、国民の意識動向に注目しつつ、各党各会派の御議論をいただき、対処する必要があると考えます。
男女共同参画社会にふさわしい税制、年金等についてでございますが、税制における配偶者控除等の見直しについては、あるべき税制の構築に向け、男女共同参画の観点も踏まえつつ検討を行ってまいります。
なお、我が国の個人所得課税制度は、所得を稼得する個人ごとに課税を行う個人単位課税を採用しております。
年金制度については、社会保険方式を前提に、どの程度個人を単位とする考え方を貫くかについて、年金改革に向けた検討の中で、女性の社会進出等の変化に対応できる仕組みとすることを基本に幅広く国民的議論を行ってまいります。
また、少子化対策については、多様な保育サービスの充実を図るとともに、働き方の見直しや地域における子育て支援など、総合的な取組を一層推進してまいります。
じん肺訴訟及び厚木飛行場における騒音訴訟についてでございますが、じん肺訴訟については、判決を真摯に受け止め、今後このようなことのないよう、駐留軍の労働者の安全対策に万全を期してまいります。
また、厚木飛行場航空機騒音問題が深刻な問題であることは十分承知しており、周辺住民の方々の理解を得るための施策の充実、推進に尽力してまいります。
騒音訴訟への対応については、判決内容を慎重に検討した上で判断したいと思います。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣大島理森君登壇、拍手〕
○国務大臣(大島理森君) 千葉議員の御質問にお答えを申し上げます。
秘書官の交代についてのお尋ねでございますが、大臣政務秘書官の職務は、大臣職と政務の調整でございます。例えば、スケジュール調整等があると思います。報道以来その職務に彼が全力で集中して仕事ができる環境と状況でないと判断いたしまして交代させることとしたものであります。
まずは事実関係を明らかにし、説明することが責務と考えております。今後とも、身を律して職務に当たりたいと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
○国務大臣(川口順子君) 日朝国交正常化について私にお尋ねが二つございましたけれども、相互に関連をいたしますので、まとめて併せてお答えをさせていただきたいと思います。
総理がお答えをなさいましたように、拉致問題を始めとする諸懸案の解決のためには、交渉の中で北朝鮮に誠実な対応を求めていくことが効果的であると考えておりまして、十月中に日朝国交正常化交渉を再開するという日朝平壌宣言にのっとりまして二十九日に交渉を再開することといたしました。
この交渉におきましては、これも総理がお答えをいたしましたように、日朝平壌宣言の精神と基本原則に従って北朝鮮側が諸懸案の解決に向け誠実に対応するように働き掛けてまいる所存です。特に、拉致問題及び核問題を含む安全保障問題の解決に、この問題につきましては最優先課題として取り上げ、問題の解決に向けて最大限の努力をしていく考えでおります。
イラク問題についてのお尋ねがございましたが、これにつきましても、総理がお答えいたしましたように、重要なことは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れて大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理の決議を履行することであります。このために必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきだと考えます。この点につきまして我が国と米国及び英国の意見は一致をしております。我が国は国際社会と協調しながら外交努力を継続してまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
○国務大臣(森山眞弓君) 千葉議員にお答えいたします。
まず、難民認定申請者の長期収容、難民認定に関する審査機関の在り方及び六十日ルールの廃止などについてお尋ねがございました。
これらの問題に関しましては、総理が述べられました視点に立って取り組んでおります。そのうち、六十日ルールなどにつきましては、私の私的懇談会であります出入国管理政策懇談会の下に設置されました難民問題に関する専門部会におきまして検討していただいており、できるだけ早い時期にその検討結果を報告していただく予定となっております。
なお、難民認定申請者の収容に関しましても、適切かつ柔軟に対応してまいりたいと考えております。
また、選択的夫婦別姓についてお話がございました。
この問題は、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題であります。社会や国民意識が著しい変化をし始めているということも先生御指摘のとおりでございますが、各党各会派におきまして議論を進めていただき、なるべく早く結論を得る必要があると考えております。
法科大学院についてのお尋ねがございました。
法科大学院については、法曹養成のための中核的な教育機関として入学者選抜における多様性を確保するとともに、その教育内容を充実させることが重要であると考えております。
また、国による法科大学院の設置認可等に当たりましては法曹を始めとする学識経験者の意見を十分に反映させるとともに、法科大学院に対する評価については第三者機関によって実施されることが適当であると考えております。(拍手)
2002/10/22 |