2003/04/30 |
【対案】
「緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案」
※立法の趣旨 〜 緊急事態における基本法であり、下記の点を併せもつもの。
(1) 緊急事態における国の責務や、対処のための指針・理念を規定するもの。
(2) 国家権力の濫用・暴走を防ぐため、侵してはならない基本的人権、民主的統制の原則を明らかにするもの。
(3) 危機管理の権限を集中し、十分な人員と予算を確保した新たな組織=危機管理庁の設置を明記するもの。〇 基本原則
〔基本的人権の保障〕 〜 緊急事態においても憲法で定める国民の自由・権利は保障されなければならず、制約がされる場合であっても、必要最低限かつ下記の事項を確保。(第6条)
・ 人権保障について差別的取り扱いの禁止
・ 報道・表現の自由の不可侵。
・ 特別な犠牲に対する正当な補償。・ 思想・良心の自由の絶対的な保障。
・ 国民の協力は強制にわたってはならない。
・ 不服申し立てその他の救済手続の必要性。〔国会による民主的統制のあり方〕 〜 緊急事態における国の安全確保・公共秩序維持のための重要施策は、民主的統制を確保するため、国会による関与を保障。(第8条)
・ 原則として事前の国会承認が必要。(できない場合は事後)
・ 国会は措置の中止の決定ができる。〇 緊急事態においてとられた対処措置に関する事後的検証。
・ 対処措置が終了した場合にあたり、措置の相当性にかかる事後的検証を行う旨を規定。(第9条)
→ 自衛隊法88条「防衛出動時の武力行使」に基づく行動については、国際法・慣例かつ事態に応じ合理的必要限度を超えない限り、民事・刑事・行政上の責任が問われないとされているが、これに関連して適切な制約を課すため。
〇 緊急事態における国民の保護
〜 緊急事態において、国・地方公共団体が行う国民保護のための措置について列挙。(第10条)
〇 危機管理庁〔日本版FEMA〕の設置
・ 現状では、危機に対応する中核組織が存在しないため、緊急事態おける国民保護に関する中枢機能を担う新たな組織を、内閣におく旨を規定。(第12条)
・ 危機管理に関する専門家の確保を規定。 (第13条)
〇 テロ・不審船等をはじめとする多様な事態への対応
〜 テロ・不審船の事態等への対応のため、警察機能の充実、出入国管理体制の強化、自衛隊の補完機能等に言及。(第16条)
〇 我が国の安全を確保するための国際協力など
・ 予防外交(第18条)
・ テロ防止(第21条)・ PKO(第19条)
・ ODA (第22条)・ 軍備管理・軍縮(第20条)
・ 安全保障分野における協力(第23条)
【修正案】「武力攻撃事態対処法案」に対する修正案
(1) 武力攻撃事態の定義及び認定について
・ 武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)の認定にあたり、その客観的基準が明確でなく、恣意的な運用を避ける必要がある。
→ 「認定の根拠となった具体的事実」を対処基本方針に書き込むよう修正。(第9条2項)
(2) 基本的人権の保障
・ 政府案では、基本的人権の保障につき、極めて簡略な規定にとどまっている。
→ 別途法制化をめざす「緊急事態基本法」の規定にあわせ、下記の点について確保すべき旨を明示。
・ 人権保障について差別的取り扱いの禁止
・ 報道・表現の自由の不可侵。
・ 権利制限に対しては正当な補償。・ 思想・良心の自由の絶対的な保障。
・ 国民の協力は強制にわたってはならない。
・ 不服申し立てその他の救済手続の必要性。(3) 国会承認・民主的統制のあり方について
・ 対処措置を実施する必要がなくなったと国会が判断した場合の規定がない。
→ 「緊急事態基本法案」の中で、民主的統制のあり方の原則を規定する(基本法第8条)とともに、「武力攻撃事態対処法修正案」において、国会の議決による対処措置の終了手続を規定。(第9条14項)
(4) 国民への情報提供について
・ 政府の説明責任を明示し、適切な情報公開がなされないと、民主社会を脅かす危険がある。
→ 政府が適時適切に国民に情報提供を行う旨を義務付ける規定を盛り込む。(第3条5項)
(5) 指定公共機関の定義について
・ 放送事業者が含まれることになれば、報道の自由の侵害につながる恐れがある。
→ 別途法制化をめざす「緊急事態基本法案」の中で、表現・報道の自由の不可侵を定める(基本法第6条)とともに、「武力攻撃事態対処法修正案」における指定公共機関の定義から、「民間放送事業者」を除外する旨を規定。(第2条6項)
(6) 国際法及び国際慣例の遵守
・ 外部からの武力攻撃を排除するための武力行使にあたっては、「国際法及び国際慣習を遵守すべき」旨を明記。(第3条3項)
(7) 施行期日について
・ 事態対処法制(国民保護法制等を含む)について「2年以内に整備」とのプログラム規定を削除するとともに、「武力攻撃事態対処法修正案」の施行期日を、これら事態対処法制の整備を待って施行することとする。
国会答弁等で確認すべき事項
(1) 総理の代執行権について
「武力攻撃事態対処法案」では、地方公共団体や指定公共機関が実施すべき対処措置につき、これが実施されない場合は、内閣総理大臣は自ら又は所管大臣を指揮することによって、当該措置を実施又は実施させることができるとしている。(第15条2項) これにつき、
A) 日本赤十字社等の指定公共機関や、地方公共団体に対し、内閣総理大臣が強制力をもって当該措置の実施を迫ること(とりわけ警察や自衛隊を用いること)は、憲法18条に定める「苦役の禁止」に抵触することである。(1)政府はこのような手段により強制することを想定しているか?(2)仮に想定しているとすれば、憲法上許されるものではないと考えるが、如何か?
B) 上記の通り強制できないのであれば、このような代執行権を規定することによって生じる法的効果は、極めて限定されると考えるが、如何か?
(2) 事態認定にかかる国会の関与について
「武力攻撃事態対処法案」では、事態認定を含む対処基本方針について、閣議で決定した後「直ちに」国会の承認を求めなければならないとしている。(第9条7項)
A) 「直ちに」の意味するところについて、政府は具体的にどのような運用を想定しているのか。
B) 事態の承認について国会の関与を適切あらしめるためには、国会承認の手続きがいたずらに遅延されることがないようにする必要があるが、それにつき政府はどのように担保するのか?
C) 仮に国会が開会できない状況が生じた場合、政府は国会の関与のあり方についてどのような対応を想定しているか。
(3) 我が国領域外における武力攻撃事態の発生について
「武力攻撃事態対処法案」では、武力攻撃の定義につき「我が国に対する外部からの武力攻撃」としており(第2条1号)、ここにいう「我が国」とは、必ずしも我が国領域に限定していない。
しかしながら、仮に我が国領域から遠く離れた場所(例えば地球の裏側)において攻撃が発生した場合、これを武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)と認定することは、我が国の国是である専守防衛の観点から問題が生じかねない。これにつき、
A) 政府はこのような具体的事例を、現時点で想定しているか。
B) このような事例が生じないよう、政府はどのような歯止め策を考慮しているか。
(4) その他
委員会質疑を通じ、政府の方針に不明確な事項が生じた場合、別途、新たな論点として提起する。
2003/04/30 |