2002/05/16

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平成十四年五月十六日(木曜日)

瓦委員長 次に、田端正広君。
田端委員 公明党の田端でございます。
 大臣には、大変御苦労さまでございます。
 大変大事な法案なので私もさまざまな角度からいろいろと確認も含めてお尋ね申し上げたいと思いますが、まず、外務大臣、瀋陽総領事館事件についてお尋ねしたいと思います。
 今回のこの事件は、国家の主権にかかわる問題でもあり、また、それがテレビの映像という画面を通して私たちも大変な衝撃を受けたわけでありますが、国際法上からいっては、これは許されるべきでないことだと思いますけれども、しかし、これは隣の国、中国と日本との関係、また、ことしは国交回復三十周年、こういう非常に大きな佳節の時期でもありまして、そういった意味で、事態が変なことになるということはできるだけ避けなきゃならない、こう思います。
 そういう意味で、まず、この問題に対して、人道上の問題から、この五人の住民の方は今どういう立場にあって、これからどういう方向になっていくのか、今外務省でわかっている範囲でお答え願いたいと思います。
川口国務大臣 ただいま委員がおっしゃられましたように、日中関係というのは、もちろん、言うまでもなく非常に重要であり、特に国交回復後三十年というこの年にこういう事件が起こってしまいましたことは、まことに残念であり、遺憾でございまして、これを大きな問題とすることなく、適切に対応していかなければいけないと私も考えております。
 今回の中国側の対応につきましては、中国側の武装警察が我が方の同意なく我が方の総領事館に侵入をしたということでございまして、これは、領事関係に関するウィーン条約第三十一条、これが規定する領事機関の公館の不可侵に反するものであるということでございまして、極めて問題があると思っております。
 中国側に対しては、この件につきまして北京及び東京でハイレベルで強い抗議を行ったところでございまして、十日には、私から武大偉在京中国大使に対しまして、この五名の引き渡し、それから、本件に関する陳謝、再発防止の保証を求めたところでございます。
 我が国といたしましては、国際法上、それから人道上の観点から、冷静かつ毅然として対応をしていくことが重要だと考えておりまして、本件の早期解決に向けまして全力を尽くす考えでおります。特に、連行されました五名につきましては、人道上の観点が配慮されるということが大変に重要だと考えております。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
田端委員 その五名がどういうふうな身の振り方になるのかをちょっとお尋ねしたんですが、そこのところをもう少し詳しく言っていただけたらと思います。
 同時に、大臣、日本と中国の報告が余りにも食い違っているわけですが、これはぜひ国民に向けて、日本を信用するのか、中国を信用するのかというぐらいの気持ちで、ちょっと御答弁いただきたいと思います。
川口国務大臣 五名の関係者の取り扱いについてのお尋ねでございますが、先ほど申しましたように、人道上の配慮ということが極めて重要であると思っておりまして、すなわち、だれであっても、また、どのような場合であっても、みずから迫害がなされるおそれのある国に送られてはいけないということが重要だと思っております。
 それで、昨今、中国側とどういうような交渉をしているかということでございますけれども、中国側とのやりとりについて、具体的なことを実は申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、報道にございますように合意に至っているということではございませんで、また、第三国への出国に向けての合意もございません。
 いずれにいたしましても、政府といたしましては、人道上の観点からも、中国側との協議を通じまして早急にこの問題を解決したいと思っております。
 事実関係について、これは小野領事移住部長を瀋陽に送りまして調査をいたしまして、その結果を私が十三日に発表させていただいたところでございまして、同意があったかどうかということについて、中国側とは意見が違うということでございます。これについては小野部長と中国側と協議をいたしまして、この違いについて議論をいたしております。今後とも協議を行っていくということでお話を進めたいと考えております。
田端委員 そこで、事件当日、八日の朝の日本大使館における阿南大使の発言が大変大きな問題になっているわけでありますが、つまり、新聞報道によりますと、北朝鮮脱出住民が大使館に入ってきた場合には追い出せというか入れるな、こういう趣旨のことを言われたようであります。
 ここのところ、大変誤解もあるようなことではあるかと思いますけれども、しかし、私は、この問題は、根本的には、日本が、政府として難民をどうするか、受け入れるかどうかということを明確にしていないがゆえに、在外公館としては、現場の対応としてそういうふうなことが発言にも結びついているんじゃないかと。阿南大使個人の発言そのものに対しての責任ということも、それはもちろんありますが、しかし、それだけに責め切れるものじゃないんじゃないか、国の態度がはっきりしていないがゆえにそういうことにもなるわけだろう、こう思うわけでありますが、官房長官、この問題については、どういうふうな政府としての見解でしょうか。
福田国務大臣 確かに、御指摘のように、我が国が難民問題に対してどういう形で向き合うかということについて、これにしっかりとした考え方を持って対応しているというようには言えないような感じがいたします。ただ、人道上の問題として、そういう事態が発生した場合には、的確な対処ということは、これはできると思います。
 そういうことで、やはり政府全体でそういうような考え方が明確でないときに末端の領事館がどういう対処ができるかということについて、いろいろ問題が生ずる原因があるのではないかということがもし指摘されるならば、そういうこともあり得るというように私は思います。
 やはり、ここのところはしっかりした方針を持つべきであろうかと思いますが、しかし、この難民問題というのは非常に難しい問題を含んでおりますので、これはひとつ与党の中でも御議論いただきたいと思いますし、また、これは国民として、国民全体としてどう考えるかという視点というものもあろうかと思いますので、この国会の議論の中においても取り上げていただきたい課題であるというように考えております。
 阿南大使の発言につきまして、私は、極めて常識的な注意というか、発言であったんだろうというふうに思っております。
 万一難民が大使館構内に入った場合には、人道上の保護をするということは、これは当然でございますので、また、そういうことをするという気持ちは、当然、外交官もしくは総領事館の館員たちは持っていただろうというように思います。
 ただ、あの場所の治安の状況とか、昨今のテロとかいったような問題も含めまして、どういう対処をするかというのは、その場その場で大変難しい判断を迫られるというようなことがあろうかと思います。そこの難しいときに、一歩その対応を間違えると大変難しい問題になる。今回のケースもまさにそういうようなことではなかろうかと思いますけれども、その辺について中国側とよくお互いの意見交換をして、理解を深めて問題解決に当たらなければいけない問題だというふうに思っております。
田端委員 この問題は、瀋陽総領事館の副領事が大使館の公使に電話で指示を仰いだ際に、そのときにも、連れていかれても仕方がない、連行されても仕方がないような趣旨のことの答えがあったというふうに報道されておりますけれども、このことも、やはり難民を受け入れるか否かという、その姿勢がはっきりしていないがゆえに現場的対応としてはそういうふうになったのではないのかなという我々としての推測ができるわけであります。
 外務大臣、この大使の発言、あるいは今回の副領事が公使にお尋ねしたときのいきさつの経緯等々踏まえて、この問題に対して、政府としても難民、亡命の受け入れということに対して検討を開始すべきだと我々は思いますが、外務大臣はどういうふうな御所見でしょうか。
川口国務大臣 ただいま官房長官からもお話がございましたように、この亡命者あるいは難民の受け入れ、この問題は非常に難しい問題だと思いますけれども、広く国民の皆さんの御理解と御関心をいただいて議論をしていくということが、幅広く議論をしていくということが重要ではないかと私は考えております。
 先ほどおっしゃった大使の発言については、官房長官おっしゃったとおりでございますし、それから最後、五名が連行される前に両手を広げてとめていた警備担当の副領事が手をおろしたということに関して、公使からあった指示というのは、現場が非常に不測なことが起きかねないような状況であったということがございまして、そういうこととなったわけでございますけれども、これは決して、同意を与えた、そういうことではないということを申し添えさせていただきます。
田端委員 少し、ちょっと具体的なこともお尋ねしたいと思いますが、警備体制というのは一体どうなっているんでしょうか。
 例えば、監視カメラとか、そういったことは必要だと思いますし、それから警察官やあるいは自衛隊出身者の方、そういうプロの方に、プロといいますか、それだけの経験のある方に警護を任せるという、そういうことも考える必要があると思います。
 私は、数年前、ペルーの事件が起こって、占拠事件がありましたが、こういった教訓が、そういう意味では生かされていないんじゃないか、こういう感じがしておりますけれども、その辺についてはどうでしょうか。
田中政府参考人 瀋陽総領事館の警備体制についてのお尋ねでございますけれども、瀋陽の総領事館には、在外公館警備対策官として、この事態の処理に当たった副領事でございますけれども、その副領事一名を配置しているということでございます。それ以外には、中国人の警備員二名、これは契約に基づく警備員でございますけれども、これを正門のゲート付近に配置をして、具体的な、身分証明書、来訪目的の確認という事務に当たらせているということでございます。
 それから、カメラについてのお尋ねがございましたけれども、いわゆる監視カメラというものは館内に五台設置をされているということでございます。
田端委員 この際、在外公館に関してのそういった警備上のチェックも総点検していただいて、今度こそ、そういった意味の危機管理といいますか、そういうこともしっかりとやっていただきたい、こう思います。
 この問題に関しては、やはり外務省の問われている大きな、本質的な問題もあるんだろうと思いますし、外務大臣として、どうぞこの意識改革、そしてまた危機管理の、緊張感を持って仕事に臨むというそういう姿勢、こういったことを含めて、外務省改革の中でどういう位置づけでやっていくのかということを、再度御決意としてお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 今先生が御指摘になられた警備面の問題と並んで、意識面の問題それから指揮命令系統の問題というのは、私どもの調査でも問題であるということで述べさせていただきましたけれども、現在行いつつある外務省の改革の中で、この点に特に留意をいたしまして、改革を深く広く進めていきたいと思っております。
田端委員 今回のこの武力事態安全平和確保法の審議に際して、私は、これはこれとして、万が一に備えてどうあるべきかということを議論する、これは大変大事なことだ、そういう認識でありますが、しかし、ふだんからそういうことが起こらないように、いかに平和外交、そういう努力を日本としてやっていくかということがそれ以上にもっと大事だろう、こういう思いがいたします。
 それで、お尋ねいたしますが、日本が平和外交を貫いていく上でこれからますます大事になっていくだろうという意味で申し上げますが、その基軸といいますか、考え方の基本として、貧困とか飢餓とかエイズとか薬物とか、こういったことが大きな根底にあるわけですから、人間の安全保障といいますか、一人一人の人権を守っていくという、そういう視点に立った政策、そして外交努力、こういったことがこれからますます必要になっていくんではないか、そういう思いがいたします。
 一人一人の人権、生存にかかわるそういう政策を日本外交の基軸に据えてこれからやっていく、こういうことにもっと重心を移してはどうか、こういう思いがしますが、外務大臣、いかがでしょうか。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 地域間の外交それから地球全体の例えば環境問題のようなグローバルな問題へのかかわりと並んで、人権、委員がおっしゃったような人間の安全保障の問題というのは非常に重要な問題だと思っております。委員のお考えに私は賛成でございます。
田端委員 それで、そういう視点に立って、国際平和協力支援センターという考えもあるようですけれども、例えば、NPOの皆さんとかボランティアの皆さんとか、つまり、民間の活力と官の力とで、官民一体になった、PKOではないそういう組織をつくって国際貢献をしていくという、こういうことも大変大事ではないか、こう思います。
 それは、例えば地雷の撤去とか、道路とか上下水道の復旧整備とか、あるいは選挙の立ち上げに対しての応援とか、教育の支援とか、さまざまなことがあるかと思いますけれども、民間の人的平和貢献というものをこれから採用するという意味で、こういう一つのセンターを立ち上げて、そしていろいろな形で平和貢献をしていけば、日本が、国際社会においての地位といいますか、そういった活動が大きくアピールできるんではないか、こう思います。
 だから、これはODAの問題とも絡みますが、ODAとの連携をとりつつ、そういったことをやっていって、世界に対しての日本の外交のあり方ということをきちっと提示していくということもこれから必要じゃないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
福田国務大臣 国際社会による平和の維持活動、これは平和の定着とか国づくりの支援という形でもって広く行われていることでございます。我が国も、こういうような分野における協力を強化する、そしてまた国際協力の柱とするというために、こういう、民間人を活用できるかどうかというようなことも踏まえまして、検討してまいりたいというように考えております。これは、実は小泉総理が今月の一日にオーストラリアのシドニーで行いましたスピーチの中でそういう趣旨のことを述べたわけでございます。
 ここで申します平和の定着と国づくり、こういうための協力と申しますのは、長年の紛争によりまして国民の生活の基盤、基礎的なシステムそのものが崩壊してしまった国に対しまして、難民の帰還、元兵士の市民社会への復帰などへの支援、選挙監視を行うことによりまして平和を定着させるということとともに、政治経済、行政システムなどの国の基礎的な制度づくりに取り組むことによりまして恒常的な平和の構築を目指すものであります。
 例えば、選挙監視というのは、今PKOでやっておるわけであります。しかし、この選挙監視というのは、まさに投票日を中心とした数日間の選挙監視を行うということでありますけれども、それをもう少し広げまして、選挙をする仕組みづくりもするというところからスタートするとか、また、民主主義を定着させるような、そういう何か政治的な指導というか、そういったようなものができれば、そういうこともやっていくということも仕事の一つではなかろうかと思っております。
 このような分野における協力を強化するために、近く有識者の懇談会を立ち上げまして、幅広い議論を行い、提言を行ってもらいたいと考えておりまして、懇談会の開催の形態、メンバーなどにつきまして、今、詳細、検討を行っているところでございます。最終的な結論は、まだいつになるかということは決まっておりません。
田端委員 大変前向きな御答弁をいただいて、ありがとうございます。
 例えば、教育とか、日本のすぐれている部分というのはたくさんあると思いますが、それぞれの国に法律を整備する場合に、日本の専門家が行って相談に乗るとか、そういう準備作業のアドバイスをするとか、そういったことも、いろいろな意味で人的貢献はあろうかと思いますので、ぜひ前向きに御検討、そして具体的に実施していただきたい、こう思います。
 外務大臣、実は、ミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんが先日解放されましたが、向こうは軍事政権でありますから、そういった意味で、日本がこれからミャンマーに対していろいろなかかわりを持っていくことによって、アジアの平和ということに大きく貢献できるのではないかという思いがいたします。
 先日、欧米の大使に続いて日本の津守大使ともスー・チーさんが会われたようでありますけれども、どういう報告が入っているか。あるいは、時期が来れば大臣みずからが、先日来アフガンとかイランとか中東の方も御訪問なさったようでありますが、やはりトップ会談といいますか、大臣がどんどん出ていかれて各国の首脳と直接対話されるというのは非常に大事だと思いますので、そういったことも含めて、アジアの平和、安全ということについて一層の御努力をお願いしたいと思いますが、ミャンマーの問題についてはどういうお考えでしょうか。
川口国務大臣 ミャンマーにつきましては、ただいま委員がおっしゃられましたように、アウン・サン・スー・チーさんの行動制限が解除されるといった一定の前進があったわけでございます。
 私どもは、我が国は、今までもミャンマーの民主化に向けましてさまざまな働きかけをしてまいりまして、先日、津守大使がアウン・サン・スー・チー女史にお会いをしたときも、日本のそれまでの行動に対しての評価をしていただいたと私は承知をいたしております。今後、このミャンマーの民主化の動きをさらに進め、政治犯の釈放を進めていただいて、民主化の流れを不可逆なものにすることが必要だと思いまして、我が国もこの面でさらなる努力をしていきたいと考えております。
 私、アフガニスタンに参りまして、やはり直接にリーダーの方とお会いをしてお話をし、その現場を見るということの重要性を肌身で感じてまいりました。ミャンマーにつきましても、今後、もし国会のお許しをいただけるような状況になりましたときに、この可能性も含めまして、ミャンマーの民主化をさらに進める、あるいは政治犯をさらに釈放してもらう、政府とスー・チー女史との対話を進める、これを、信頼醸成段階から実質的な対話へ進展をするということを働きかける等々、どのような方法が効果的であるかということを考えながら努力をしてまいりたいというふうに考えております。
田端委員 いわゆる有事法制でございますが、マスコミの世論調査によりますと、何回かこれまで各紙に出ておりますが、約五〇%、四八%の人が賛成、反対が二十数%、こういう感じのようであります。そういう意味では、万が一に備えてこの法律を整備することは大変大事だという意識は国民の中にも非常に大きく広がっているんだと思いますが、しかし、その中にあって、なおかつ審議には慎重を期してもらいたいという意見の強いことも、これまた事実だと思います。
 そういう意味で、いざというときに備えての法整備、これは大変大事だと思いますし、慎重にあるべきだと思いますが、まず、官房長官の姿勢といいますか、決意といいますか、どういう認識で今回のこの法律を提案されたのか、そういう心の中をちょっと御披露いただきたいと思います。
福田国務大臣 今回御提案申し上げた三法案につきましては、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心にして、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図る、こういうものでございます。平和なときにこそこうした体制の準備を進めておくことが必要でございまして、その意味で、いわゆる有事法制は、国家存立の基本として整備されていなければならなかったものであるというように思います。
 政府といたしましては、国会審議を通じまして、各党各会派や、広く国民の理解を得るための最大限の努力を続けてまいりたいと思います。また、今後、法案の定める目標期間内に進める国民保護法制などの整備に関しても、国民的議論の動向を十分踏まえつつ、多くの国民から理解を得られるよう努力をしてまいりたいと思います。
田端委員 この法律は、武力事態平和安全確保法、これはつまり、理念法といいますか、基本法といいますか、一般的には包括法と言われていますが、そういう意味合いであろうと私は思います。
 それで、いわゆる第一類、第二類、第三類と、国民保護を初めとした、あるいは米軍の支援に至るまで、こういう法律の整備を今後やっていく、こういうことの基本を示したものである。まず、そういう理念を示し、そして今回、二年以内にというタイムスケジュールを示したことによって、これから時間をかけて法体系をきちっと整備しましょう、こういう意思があらわれたのだと思いますが、まだ国民保護の部分がどういう形なのか見えてこない。そういう意味で、できるだけ早くという声も強いわけでありますから、二年以内というお考えでありますけれども、例えば、できれば、この国民保護に関するところは来年の通常国会に間に合わせるような、そういうぐらいの決意で臨まれるということが大事ではないかと思いますが、官房長官、どうでしょうか。
福田国務大臣 今回は、いわゆる有事法制の枠組みと申しますか、基本的な考え方をお示ししたわけでございますけれども、これから検討いたします国民の保護のための法制につきましては、避難のための警報の発令、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧などの諸措置につきまして、国、地方公共団体または公共機関等の各機関の役割を具体的に定めていく、そういう具体的な検討をしなければいけません。
 そのために、法制の整備に当たりましては、関係機関の意見や国民的議論の動向を踏まえながら十分な国民の理解を得る必要があり、また、その仕組みをつくる必要があると考えておりまして、法案では法制整備の目標期間を二年以内といたしたものでありますけれども、十分な検討をするためにはその程度の時間は必要なのではないかというように考えております。
田端委員 ぜひ、できるだけ早く国民の皆さんに全体の像がわかるような努力を重ねていただきたいと思うわけであります。
 それで、この武力事態法については、こういう考え方をきちっと逆に整理しておかなければ、自衛隊が超法規的になるということにもなりかねないわけですから、そういった意味では、ぜひ早く体制をつくり上げるということだと思いますし、そして、この体制づくりの中で大きな原則をしっかりとわきまえる必要がある、こういうふうに思います。
 一つは、憲法の枠内であるということを明確にすること、そして集団的自衛権の行使は認めないということ、あるいは国民の権利の制限は最小限にとどめる、こういう基本的な原則を明確に、今回、私は法律の中にもそういったことが配慮されているとは思いますが、全体像の中でもそういうことをきちっと訴えていく必要があるのではないか、こう思います。
 この法案の第三条三項に、「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と規定されていますが、これは憲法で認められているところの個別的自衛権の範囲であり、そして先制攻撃はしない、専守防衛である、こういう原則をきちっとここは貫いているんだ、こういう認識でありますが、官房長官のお考えをお願いします。
福田国務大臣 まさに委員の御指摘のとおりでございまして、この法案第三条第三項では、「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」このように明記をされているわけでございます。
 自衛権の発動の要件というものは、いつも三つ挙げておりますけれども、この三つの要件に該当する場合に限られるという、その考え方を規定しているものでございます。すなわち、本項では、いわゆる先制攻撃をしないということも含めまして、専守防衛にのっとったものであります。
田端委員 それから、私権の制限については、八条において、国民の協力ということについて、国民は、「指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。」との努力規定を明記しております。そして、強制することではないということを私は理解しておりますが、二十一条の五項に、「国民が協力をしたことにより受けた損失に関し、必要な財政上の措置を併せて講ずるものとする。」というこのくだりは、そういった意味で人権に最大限に配慮したものだ、こういう理解でおりますが、そういうことでいいのでありましょうか。
 それから、こういった法律の整備はもちろん必要ですが、私は、この法律ができても、宝の持ちぐされといいますか、使わないことが一番いいのであって、そういうことを願いつつ、万が一に備えてきちっと法的整備だけはしておく、ここのところをしっかりと政府としても言い切っていただくことが大事ではないかな、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 もとより、武力攻撃事態を迎えないようにする日常の外交努力、また、あらゆる面における平和的な国民の努力というものがまず第一に必要なことでありまして、ここの武力攻撃事態というのは、万が一ということであります。しかし、この万が一のことに備えるということが極めて国の基本として重要なことであるということで、今回、この法案を示し、御審議をお願いしている、こういうことでございます。
 この法案におきましては、第三条第四項において、基本理念として、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を尊重することを明記するとともに、第二十一条五項におきまして、御指摘のとおり、国民が協力をしたことにより受けた損失に関し、財政上の措置を講ずることを明記するということをいたしまして、国民の基本的人権に最大限配慮したものとなっております。
 国及び国民の安全を確保するためには、国民の方々にも御協力をいただくことは重要でございまして、そのため、法案の第八条に国民の協力に関する規定を置いておりますけれども、その場合においても国民の基本的人権を尊重することは当然のことと考えております。
田端委員 次に、本日、官房長官の方からお示しいただいた、武力攻撃事態についての見解といいますか、政府の考え方に基づいてお尋ねをしたいと思います。
 つまり、ここで言われているところの、この法律で言われている予測、おそれ、発生という三つの事態があるわけでありますが、これが大変わかりづらいといいますか、それでこういう政府の見解の発表になったということであります。
 まず、予測ということでありますが、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」とは、武力攻撃のおそれのある事態よりも時期的には前の段階、おそれよりも前の段階、そして、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測され、武力攻撃が発生する可能性が高いと判断されるそういう事態という認識でありますが、これはつまり、自衛隊法の七十七条で言うところの、事態が切迫して防衛出動が発せられることが予測される場合と同じだというふうに思います。つまり、待機命令が下令される、そういう事態というふうにこの予測事態を考えていいということでありましょうか。
福田国務大臣 委員の御指摘のとおりなんでありますけれども、予測と申しますと、自衛隊法第七十七条、防衛出動待機命令等を下令し得る事態ということでございます。
 先ほど御説明を別途申し上げましたけれども、この事態というのは、武力攻撃の意図が推測される、また、そういうことなどから見て我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態、そういうことを指しているわけであります。
田端委員 そして、そのおそれというのは、その時点における国際情勢、相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危機が切迫していることが客観的に認められる事態、そういうことであり、自衛隊法七十六条で言うところの武力攻撃のおそれのある場合と同じ意味、つまり防衛出動が下令される事態、こういうことだというふうに思いますが、それでいいかどうか。
 そして、さっきは、「例えば、ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させていることなどからみて、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると客観的に認められる場合」、こういう具体例を示されましたが、そういう状態がおそれということでいいということなんでしょうね。確認させていただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 「武力攻撃のおそれのある場合」とは、自衛隊法第七十六条の規定する防衛出動下令の要件の一つである武力攻撃のおそれのある場合と全く同じであるということでございます。
 これは、その時点における国際情勢や相手国の軍事的行動、我が国への武力攻撃の意図が明示されていることなどから見て、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものであるということでございます。このおそれの段階で防衛出動の下令ができるわけでございますから、いわば、もう我が国に対して武力攻撃が行われる寸前である、そういうことが明々白々な状況であると言っても差し支えがないのではないか、このように思います。
田端委員 そして、その発生した事態でありますが、これは、自衛権発動の三要件が満たされれば自衛権の発動が認められる、そういう事態なんだと思いますけれども、つまり、これは基本的には武力攻撃が始まったときという認識なんですが、そこがちょっと微妙な問題があろうかと思います。
 着手したときというふうに先般答えられたと思いますけれども、その着手したときというのは、これは、おそれとそういう事態が発生して攻撃を受けたときとの間といいますか、非常に微妙なところに時間的流れとしてはなるのではないか、こういうふうに感じるわけでありますが、おそれから一歩進んで、発生状態のちょっと前、こういう感じかと思いますけれども、そういう理解でいいのでしょうか。
安倍内閣官房副長官 自衛隊は、今委員のおっしゃったとおり、自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ自衛隊法八十八条に基づいて武力を行使することができるということになっておりますが、武力攻撃の発生のみで自衛権発動の三要件すべてを満たすわけではないということでございます。
 また、武力攻撃が発生したときとは、必ずしも武力攻撃による現実の侵害が発生したときである必要はなく、武力攻撃の着手があったときであると考えているわけでございまして、若干ややこしいわけでございますが、いわば、おそれとは、先ほど申し上げたような状況でございます。おそれの段階で私どもは、これはもちろん武力攻撃事態でございますし、また、このおそれの段階で防衛出動の下令ができるということでございます。
 しかし、私どもが武力の行使をするに際しましては、ただいま申し上げましたような自衛権発動の三条件が満たされなければならないということでございますが、他方、この三条件が満たされれば、相手国側が着手した段階で我が方としては武力行使ができる、こういう考え、整理でございます。
田端委員 そういう事態の認定というのが大変大事になってくると思います。つまり、予測からおそれ、そして発生へ、こういう推移があると思いますが、そういう推移に応じて事態認定を行う、その事態認定が閣議ということになるんだと思います。そして、それが国会承認、こういうことになるわけであります。
 そこで、予測の段階で、対処基本方針、それが閣議決定をされ、そして事態認定をして国会に承認される、こういうことになると思います。続いて、おそれの段階ないしは発生の段階でもう一度対処基本方針がつくられて、閣議決定そして国会承認。こういう二重のシステムになっているという認識でありますが、そういう意味では、この二重の国会承認があるということは、シビリアンコントロールがダブルチェックされるという意味において大変すぐれたシステムであるという評価をできると思います。
 これは、現行の自衛隊法における防衛出動、そのときのみの国会承認に比べれば、そういう意味でははるかにシビリアンがきいている、こういうふうに認識するわけですが、その点について政府のお考えはどうですか。
安倍内閣官房副長官 対処基本方針に定める武力攻撃事態の認定については、政府としての事態の認識を明確に示し、国民の理解と協力を得た上で対処措置を実施していく観点から、認定に当たって情勢認識等を記載することを考えているところでございます。ただいま御指摘がございましたように、予測の段階におきましても対処基本方針を策定し認定をするわけでございますが、その際も国会承認ということになるわけでございます。
 従前でございますと、待機命令におきましては国会承認がなかったわけでございますが、今回は、待機命令におきまして予備自衛官等々、また陣地構築等もあることもかんがみまして、国会承認という大きな新たなハードルをつくって、シビリアンコントロールをより一層強めたということでございます。
 そして、武力攻撃が予測されるに至った段階から、武力攻撃のおそれのある段階、また武力攻撃が発生した段階と、武力攻撃事態の状況が順を追って推移し、従前と異なる対処措置を実施するような場合には、おそれと武力攻撃というのが、事実上おそれの段階で既に防衛出動が下令をした場合はここは一体化するわけでございますが、順番に切れていった場合は、従前と異なる対処措置を実施するような場合ということになった場合は、その都度対処基本方針を変更し、国会の承認を得るということになる、このように考えているところでございます。
田端委員 今の後半のところですが、要するに、対処基本方針が変更になったときは、その都度、これは九条の十二項ですか、準用するというその規定に基づいて国会承認手続、閣議決定、国会承認というのももう一度やる、そういう準用するということでいいんですね、変更の場合。対処基本方針が変更した場合に、九条十二項に、国会承認、閣議決定、国会承認を準用する、こういうようになっているから、だから対処基本方針が変更になれば再度国会承認を必要とする、こういうことですねということです。
安倍内閣官房副長官 御指摘のとおりでございまして、その都度国会承認を必要とするということでございます。
田端委員 予測あるいはおそれ、発生という、武力攻撃事態と周辺事態との併存ということで少しお尋ねしたいと思います。
 例えば、A国がB国の領土を攻める、そしてこの侵攻を排除するために米軍が動き出す。これは周辺事態法に基づく行動だと思いますが、そして、それに日本が後方地域支援活動を行う。A国が例えば弾道ミサイルの攻撃をするような、予測されるような場合、こういう事態が起こってくる。例えば、ミサイル部隊を招集して、禁足令をかけてというふうな情報が入ってきた場合は、つまり、予測と周辺事態が併存している、こういうふうなことだと思います。その場合に、自衛隊は活動がどこまで可能なのかということは、武力攻撃が発生していないわけですから、自衛隊の武力行使はすることができないという私は認識でありますし、当然法律的にもそういうふうにきちっと整理されていると思うわけであります。
 つまり、米軍に対する支援活動と米軍の武力行使との一体化に入っていない、とどまる、そういう認識だと理解しておりますが、まず、それはそれでいいのかどうか、確認したいと思います。
安倍内閣官房副長官 ただいま委員の御指摘のとおりでございまして、いわゆる周辺事態が起こっていて我が国が米国に協力をしているというときに、その当事国が、我が国に対して武力攻撃のおそれのある事態、または予測される事態というときの状況でございますが、そのときの段階では、我が国に対して武力攻撃事態を行っていないという状況でございますから、我が方としては当然武力の行使はできないということでございます。
田端委員 今度は、おそれに発展した場合ですけれども、おそれ事態になった場合と周辺事態、平成九年の日米ガイドラインでも、「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合又は両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るようにする。」ということが明記されていて、その時点でも両者の併存ということが予測されているわけでありますが、そういう意味で、今度は、いよいよミサイルの攻撃が、搭載車両が配備されたとか、そういうふうに明確な事態になってきた場合、その場合でも、原則として、これはおそれですから、自衛隊、防衛出動が下令されるわけですけれども、下令されたとしても、自衛隊がこの武力行使に直結することはない、そしてまた、米軍の後方支援に対しても、武力行使と一体化するものでない、これはそういう考え方でいいのかどうかということです。
中谷国務大臣 おそれの場合は、まだ武力攻撃の事態が発生していないわけでございますので、武力の行使はいたしません。
 したがいまして、武力攻撃事態と周辺事態というのは、それぞれ別個の法律の判断に基づくものでありまして、我が国に対する武力攻撃事態が、おそれの場合は発生しておりません。そういうことで、両者は、併存することはあり得るわけでございますけれども、武力の一体化をすることなく、それぞれの法律に従いまして実施をされるものでございます。
田端委員 次は、今度、発生した事態と周辺事態であります。
 その場合に、例えばA国が日本に向けて弾道ミサイルを攻撃してくる、こういう事態が想定されるわけでありますが、これは自衛隊法八十八条によって必要な武力行使ができる、こうなるわけでありますが、自衛隊と米軍、この関係が非常に微妙だと思うわけであります。
 米軍が周辺事態で活動しているそのことと、そこに自衛隊が後方支援することと、日本が武力事態を排除するために、日米安保条約五条に基づいて日本の防衛のために自衛隊が米軍と一緒になって行動する、この二つのことが同時並行で起こってくるわけでありますが、この場合、憲法との関係で、そこのところは、そういうふうに明確に立て分けることが、理屈の上では可能ですけれども、果たしてこれが実態面でそういうことが言えるのかどうか、その辺が大変心配だと思いますが、その点について、いかがでしょう。
安倍内閣官房副長官 併存するケースはいろいろあると思うわけでございますが、今委員御指摘のケースと、またさらに、併存するケースで非常にクリアなケースは、A国がB国を侵攻して、それに対して米軍が介入をして、その米軍に我が国が協力をする周辺事態が発生していて、一方、全く関係ないC国が突然我が国を攻めてくるということの状況は、これは当然全く併存するということになってくると思います。
 今委員御指摘のケースは、A国がB国を侵略して、そして米軍が対処して、日本が周辺事態法にのっとって協力して、さらにそのA国が我が国に対してミサイル攻撃を発射したという状況だということでございますが、これは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくことでございまして、我が国に対する武力攻撃事態が発生しているときに、状況によっては両者が併存することはあり得るわけでございます。
 また、周辺事態への対処としての米軍支援は、周辺事態安全確保法により、また武力攻撃事態への対応としての米軍支援は、今後整備される新たな米軍支援法制に基づきそれぞれ実施されることとなるわけでございまして、その際、我が国は我が国の個別的な自衛権にのっとって日米で共同対処をしているということでございまして、当然それは憲法の範囲内で行われるということだと思います。
 当然、今私が申し上げましたように、併存することが可能でございますが、他方、周辺事態安全確保法の場合は後方地域でなければならないということでございますから、我が国がどんどん攻められて、着弾すると既にもはや後方地域ではなくなりますので、周辺事態の法律にのっとっての米軍支援というのは、現実問題としては難しくなるケースの方が多いのではないか。
 ただ、これはいろいろな状況が想定されるわけでございますから、純粋にこの法律論だけでいえば当然併存するわけでございますし、また、それはしっかりと個別の法律にのっとっての支援ということで切り分けていける、このように考えております。
田端委員 その点、大変大事なところなのでもう一度確認しますが、同じ国が周辺事態を起こし、そして日本に対しても攻撃を行っている、こういう場合、そのB国を守る米軍、そして日本で武力攻撃を排除しようとして頑張っている米軍と、米軍が二つあると思います。米軍が二つあるんですが、この米軍が横でつながっていて一体になるのではないか、こっちの米軍、こっちの米軍、そんなことは考えられませんから、恐らく作戦上は一体になってやるのではないか、こう思われるわけです。その場合に、つまり、個別的自衛権ということで、理屈の上では本当にそれでいくのかどうか、集団的自衛権のところにひっかかってしまうのではないかという、そこのところをもう一度お尋ねしておきたいと思います。
中谷国務大臣 まず、議論の整理でありますけれども、我が国への武力攻撃を排除するために行動している米軍に対する我が国の支援については、その支援が米軍の武力攻撃と一体化するものであっても、我が国の自衛権の発動の三要件に合致する限り、憲法の関係で問題が生ずることはございません。
 一方で、周辺事態で活動している米軍の支援につきましては、従来の周辺事態法の支援によるものでございまして、これをどう切り分けるかといいますと、ガイドラインにも明記をされておりますけれども、併存するケースについては、調整メカニズム等を通じまして、それぞれの事態に応じてそれぞれの法律に従った支援を行っていくということで、我が国の場合は明確に区別をして支援するということでございます。
田端委員 時間が来ましたので終わりますが、そこの最後のところは非常に大事なところと思いますので、もう少し、今後、丁寧に御答弁いただければと、こう思います。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、西川太一郎君。
西川(太)委員 皆様、大変お疲れさまでございます。私、最後の質問者でございます。できるだけ簡潔にお尋ねをしたいと思います。
 最初に、安倍官房副長官にお尋ねをいたしますが、今回の法案では武力攻撃事態を対象としているわけでありますけれども、私、現下の我が国を取り巻く安全保障環境がいかようであれ、有事という、あってはならないことではありますけれども、それに対してきちっとした法整備をしておくということは、二つの意味で意味があると考えております。
 一つは、これはもうよく言われていることでありますが、シビリアンコントロール。超法規的に突然、こういうものが整備されないところでこうした緊急事態になれば、当然国民の生命財産を守るために次から次と適切な行動をとらなければいけない。その適切な行動が法によってきちっと規制されてないならば、それが適切を超える過剰な可能性だって出てくるわけでありまして、そういう意味では、私は、超法規を抑える意味でも、きちっとシビリアンコントロールの観点からこういう整備をしておく必要があると思います。
 もう一点は、これはそういう効果があるかないか、専門家の御意見を伺いたい。したがってお尋ねをするわけでありますが、いわゆる抑止力という効果はありはしないか。やはり、国を挙げてそうした自衛権というものをきちっと行使できる体制を整備しておく、そういう心構えを持っている国というものは、不心得な気持ちを仮に持っている周辺国があったとしても、それを抑止する力が働くのではないか、こう思うわけでありますが、安倍さんにまず第一問、伺いたいと思います。
安倍内閣官房副長官 ただいま委員が御指摘されたように、抑止理論とはまさにそのとおりなんだろう、このように思うわけでございます。
 私は、二年前に、アーミテージ国防副長官、当時は違いましたが、お話をしたときに彼はこう言ったわけでございます。その国の軍隊の成長性を高めれば高めるほど結果としてその軍隊を使うという必要がなくなってくる、これは皮肉な結果であるが、それが抑止力である、抑止の結果であるということをおっしゃったわけでございますが、そのように、常に防備を高めることが、結果として、平和な地域、平和な国家、平和な世界をつくっていくということにつながっていくということなんだろう、こう考えております。
西川(太)委員 そこで、昨年の九月十一日の米国における同時多発テロ、または我が国に対する不審船事案、こういうテロでございますとか不審船事案のようなものに対処する態勢を整備することが急務であります。
 期限を設定して法整備を行えという意見もあるようでございますけれども、期限を設定するというのはいかがなものか、こう思いますが、法整備をするということは当然のことであると考えますが、政府の御所見を伺いたいと思います。
安倍内閣官房副長官 テロ、不審船等につきましても、この法案の中でも重要性が指摘をされておりまして、私どもといたしましても、また、この委員会でもその必要性が指摘されているわけでございますから、当然、法案の作成に向けて、またその検討に向けて努力をしていきたい、このように考えております。
西川(太)委員 次に、中谷長官にお伺いをしたいと思いますが、先ほど来同じ質問が出ておりまして、重ねてお尋ねするのはいかがなものか、こう思うわけでありますけれども、若干、私も強い関心を持っておりますから、同じようなことをお伺いしますが、お許しをいただきたい、こう思います。
 今回のこの武力攻撃事態法における定義がわかりにくいということをさんざん言われてきたために見解を出されるわけでありますけれども、武力攻撃が発生した事態というのは、くどいようでありますが、田端先生と同じことを伺って恐縮でありますが、どういう時点でというふうに認定をされるのか、これをもう一度お聞かせください。
中谷国務大臣 西川委員におかれましては、防衛政務次官の御経験もございまして、非常に、安全保障、御見識がございますけれども、武力攻撃が発生した時点というのは、基本的に、武力攻撃が始まったとき、すなわち、相手が武力攻撃に着手をしたときであると考えておりまして、武力攻撃による被害の発生が現実にあることを待たなければならないというものではございません。現実の事態におきまして、どの時点で相手が武力攻撃に着手をしたかということにつきましては、その時々の国際情勢、相手国の明示をされた意図、攻撃の手段、態様等々をもって勘案して判断する必要がございますので、一概に言うことはできませんので、個別具体的に判断すべきものであるということでございます。
西川(太)委員 わかりやすい説明を国民にするということも一方ですごく大事ですね。しかし同時に、軽々しく例を示すということは、行動の範囲を狭める、こういう意味もあるんじゃないかなという心配をするんですけれども、いかがでしょうか。
中谷国務大臣 そのとおりでございます。
 国民に知らせるということは世界じゅうに知らせるということでありまして、攻撃する相手国に手のうちを示すということになりますので、そういう点のデメリットは非常に大きくございます。(発言する者あり)
西川(太)委員 いろいろ御意見がある方はまた質問に立たれて、ぜひお聞きいただきたい。どうぞ後ろからの、後方支援は歓迎しますけれども、攻撃は御容赦願います。
 そこで、私は次に、長官に引き続いてお尋ねをいたすわけでありますけれども、これも先ほどと同じことでありますけれども、武力攻撃事態と周辺事態との関係が不明瞭であって、周辺事態まで武力攻撃事態が広がるおそれがあるということが、実は与党のPTの段階でもこのことは大変厳しい論議になったんですね。改めてこの段階でもう一度私にも御説明をいただきたい、こう思います。それをお伺いした上で、さらにお尋ねをしたいと思います。
中谷国務大臣 武力攻撃事態といいますと、武力攻撃、これは、そのおそれがある場合も含みますけれども、武力攻撃が発生した事態または事態が緊迫して武力攻撃が予測されるに至った事態でございます。一方、周辺事態というのは、我が国の周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でございまして、武力攻撃事態のように、我が国に対する武力攻撃に直接関連づけて定義をされているわけではございません。
 西川委員におかれましては、防衛庁での仕事の経験もございますけれども、このように、武力攻撃事態と周辺事態はそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございまして、状況によっては両者が事態として併存することはあり得るわけでございますが、両者の事態は、周辺事態安全確保法と武力攻撃事態対処法のそれぞれの法律に基づいて別個に認定をされます。
 また、周辺事態への対応としての米軍支援は周辺事態安全確保法、武力攻撃事態への対応としての米軍支援は今後整備される新たな米軍支援法制に基づきそれぞれ実施をされることになりますけれども、新たな法制の整備に関しましては、この法制に基づいて支援の対象となる米軍の行動の目的、支援の方法等を適切に規定することによりまして、この法制と周辺事態安全確保法のおのおのに基づく対米支援を区分して行い得るようにすることは十分可能であるというふうに考えております。
西川(太)委員 対米支援の視点から、この武力攻撃事態対処法案といわゆるガイドライン法を関係づけて見てみると、これはいずれも日本の平和と安全を確保するために重要な法案であるという共通項はあるわけでありますけれども、周辺事態法では、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態。
 これは、対米支援措置の要件としては三つありまして、一つは、自衛隊の本来任務の遂行に支障のない範囲で行う。これは非常に大事なことですね。本来任務の遂行に支障のない範囲で行う。それから、後方地域につきましては、支援措置を実施する期間、武力攻撃が発生しないと認められる地域である。そして、支援の内容については、補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務等、こういうふうになっているわけでありまして、ポイントとしては、憲法上も、また、いわゆる集団的自衛権の行使はしないという観点からも、我が国としては、米軍の武力行使と一体化すると見られるような支援措置は行わないということが、これは今までも行い得ない、こういうふうにやってきたわけでありますね。
 ところが、今度の武力攻撃事態対処法案につきましては、武力攻撃またはそのおそれのある場合もあわせて、発生した事態、または事態が緊迫して武力攻撃が予測されるに至った事態。
 こういう場合の対米支援措置の要件というのは、一つは、安保条約五条に基づいて、我が国への武力攻撃が行われたときの共同対処の義務。それからもう一つは、したがって、そういう状況の中で我が国を守るという自衛権の発動でありますから、必要な支援措置を我が国として行うのは当然である。そして、今は残念ながらその法律が準備されていませんが、速やかに、二年以内にこの対処法の法制の一環としてこれらのものがきちっと整備される。こう理解してよろしいんですね。それでいいんですね。
中谷国務大臣 そのとおりでございます。
 周辺事態において米軍が武力を行使している状況下で我が国への武力攻撃の予測またはおそれの事態となった場合には、我が国は武力を行使できず、米軍も我が国の防衛のために武力を行使することはできません。周辺事態に対応している米軍に対する支援は、周辺事態法に基づいて行うこととなりますけれども、この支援については、米軍の武力の行使と一体化をするということはございません。
 状況がさらに推移しまして、周辺事態において米軍が武力を行使している場合に我が国がその相手国から武力攻撃を受けたときには、武力攻撃が発生した事態でございます。武力攻撃に対応して我が国に対する武力攻撃を排除するために共同対処している米軍に対する支援は、今後整備される武力攻撃事態時の米軍支援のための法制に基づき行うこととなりますけれども、この場合の対米支援については、米軍の武力の行使と一体化をしているものを含め、我が国の自衛権行使の三要件に合致する限り、憲法上も条約上も何ら問題はございません。
 なお、我が国に対する武力攻撃を排除することを目的としたものである限り、集団的自衛権の行使に当たるということはございません。
 そして、周辺事態の対米支援措置と武力攻撃事態の対米支援措置は併存する場合もあり得るものでございますが、その場合の我が国の対応は、先ほど先生がおっしゃいましたけれども、周辺事態は、我が国の周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、そのために行動する米軍に対する支援は自衛隊の本来任務の遂行に支障のない範囲で行われるものであるのに対して、武力攻撃事態、これはおそれを含む武力攻撃が発生した事態または緊迫して予測に至った事態でございますが、これに対処することは自衛隊の本来任務であるとともに、米軍も日米安保条約に基づき我が国の共同防衛の義務を有していることから、当然武力攻撃事態に優先的に対処していくものでございます。
西川(太)委員 そうすると、今のことはよく理解できましたが、一つだけ今の長官の御答弁で、周辺事態が推移して我が国に対する武力攻撃が発生した状況下で、米軍に対する支援はどんな法律に基づいて行えるというふうにお考えですか。その部分だけちょっと重ねてお尋ねします。いずれの法律に基づいて行えるのか。
中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃が発生した場合は武力攻撃事態に該当するが、周辺事態と武力攻撃事態とはそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございます。したがいまして、両者が併存する状況におきましては、周辺事態への対応としての米軍の支援は周辺事態法に基づき、また、武力攻撃事態への対応としての米軍の支援は今後整備される武力攻撃事態時の米軍の支援のための法制に基づき、それぞれ実施をされることになります。
西川(太)委員 今の答弁を整理してみるならば、やはりガイドライン法では憲法や集団的自衛権の規制があって、米軍の武力と一体化できない、これはもう明確になった。しかし、今度のこの事態対処法では、我が国が攻撃されるわけですね、またはそのおそれがある、これに対しては、日米安全保障条約の第五条と、そして集団的自衛権ではない我が国固有の自衛権を発動させるという意味で米軍に対して支援ができる。これは明確ですね、この違いは。ここのところが非常に大事なことだ、こういうふうに思うわけであります。
 とんとんとんと来たので、思いのほか時間がかからないでここまで来たわけでありますが、私はあと三問用意してありますので、時間が大分早く終わりますが、委員長、よろしゅうございますか。そんなに早く終わったんじゃ次おまえらに時間やらぬぞと言われないように、これはひとつ。
 そこで、まず……(発言する者あり)
瓦委員長 質問中ですから、静かにしてください。
西川(太)委員 私は、次に、これは官房長官にお尋ねをするわけでしたが、官房長官が戻ってこられないので副長官にお尋ねします。
 国民の生命と財産が脅かされている緊急事態が発生した場合、政府が最大の責務を負うことはもちろんでありますけれども、国民の皆さんから協力を得て国として一丸となって対処することが重要であるということは、これはもう言うまでもないわけであります。
 今度の法律における国民の協力の位置づけというものについて、もう一度明確にお答えください。
安倍内閣官房副長官 武力攻撃事態におきまして国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置を実施する際には、国及び国民の安全の確保のため、国民の方々にも御協力をいただけるものと期待をいたしております。国民の協力について、その中で規定をしているということでございます。
 しかし、この規定は法的に拘束するものではございません。国民の方々に、それぞれの置かれた状況の中で、避難や被災者の保護等に関してできる限りの協力をしていただきたい、このように考えているわけでございます。
 国民の権利あるいは基本的人権等を、これは、最終的に担保するのは国家ではございますが、その国家がまさに危機に瀕しているときでございますから、そういう意味、またそういう見地からも国民の御協力をお願いしているということでございます。
西川(太)委員 安倍副長官、この問題は非常にナーバスなんですよ。
 今まで、職業としての自衛官、こういう方々に国防の責務を負ってもらうということ、または、公安、治安、こういう観点で警察、警務職の方々にその仕事をしていただくということ、これは、一つの職業倫理というか、そういう観点から簡単に議論できたのですね。
 しかし、国民の責務という、これは、いろいろな思想、信条を持ち、いろいろな立場のある方々に、国家の、攻撃を受けるという緊急事態の中で協力をいただくということは、ある意味じゃ非常に、適切な言葉でないかもしれないけれども、バーチャルイリュージョン的な世界も入ってきまして、想像力というものを豊かに使ってもらわないと、そういう事態にどう協力したらいいのか、短絡的な人はすぐ、徴兵制であるとか、何かそういう、危険だ、危ないよというような方向にばかり走っちゃうんですね、この問題は。そういうナーバスな面を非常に持っているんですね。
 したがって、そこのところをもう一度よく、これは国民の皆さんに理解できるように丹念に、いろいろな方法を使って理解をしてもらうということが私は必要だと思います。
 これは、防衛庁の二十数万を超える諸君も、いろいろな意味で、例えば桜祭りとかまたはいろいろな音楽祭とか、所によってはその町の方々と野球の大会なんかしたり、いろいろソフトな面での、本来的なお仕事でない面での接触というのは、かなり、愛される防衛庁、自衛隊を目指してやってきましたよね。
 しかし、こういう真っすぐな、国防という観点から国民の皆さんと議論をする機会というのはなかなか今までなかったはずなんですね。私は、そういうことも、恐れずに真っ正面からきちっとやっていく必要がある、こういうことも含めて国民に、これは責務じゃないんですから、協力をお願いするんですから、総動員法でも何でもないので、そこのところをきちっとやっていく必要があると思います。
 先ほど安倍さんから御答弁いただきましたが、もう一度どうですか。
安倍内閣官房副長官 国民の協力がやはり不可欠でございますが、しかし、一部のテレビ等では、まるで国民が竹やりを持って立ち向かうのではないかという、デマゴーグのような、戦前に戻るといった、お決まりの批判を、間違った短絡的な批判を繰り返しているわけでございますが、これは全く違うわけでございまして、国民の皆様に戦っていただくということでは全くないわけでございまして、例えば地域においての住民の避難や被災者の搬送への協力など、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力といった内容を今私どもは想定をしているということでございます。
 いずれにいたしましても、これは国民の皆様の御理解がなければ成り立たないわけでございますから、国民の皆様と議論をしながら、広く議論をしながら整備をしていきたい、こう考えております。
中谷国務大臣 やはり、国民の皆様方に御協力をしていただく上におきましては、何のために国を守るのか、この国家の意識も考えていただきたいというふうに思っております。
 すなわち、国の独立と国家の主権を守ることでございますが、なぜ必要かといいますと、国家をなくした国民ほど悲惨なものはございません。やはり、国際社会の中で、自分たちの人権や、また生活、社会活動を守っていくというのは、国際社会の中におきましては国家がそのことを国民に保障するものでありまして、そのために国を守るということが必要であり、自衛隊も国を守るという目的でつくられているわけであります。
 そこで、こういう緊急事態、武力攻撃事態におきましては二つのことが必要でございます。
 一つは、侵略をしてくる勢力をいち早くせん滅をしてその被害をなくすということ、もう一つは、国民の皆様方に安全な地域に避難をしていただくことでございますが、こういう外敵と戦う場所をつくって、極力国民の皆様方の被害がないようにしていかなければなりませんけれども、そういった、自衛隊が敵と対峙をして、また戦うという環境をつくっていただくのは、ひとえに国民の皆様方の協力でございまして、その点におきまして、お互いに、やはりこの国を守るという意識におきまして、それぞれの、武力攻撃事態におきまして、お互いの役割を果たして、目的は、国家を守る、外敵をいち早くせん滅するということでございますので、この点をぜひ御理解いただきまして、国民の皆様方の御協力をいただくようにしなければならないというふうに思っております。
西川(太)委員 私は、今委員長をしておられます瓦長官のときに、政務次官としてお仕えをいたしました。日米防衛首脳会談にお供をして、その後、アメリカの各地を視察する機会がありました。
 アナポリスの海軍兵学校には、二名の海上自衛官が教官として、最新鋭のいろいろな機械やいろいろなものを駆使してアメリカの士官を教育する。また、コロラドスプリングスの航空士官学校では、空自の自衛官が、これも教官としてすばらしい指導をしている。そういう国際的に活躍をしている自衛官の諸君は、私どもにとっては、よい意味で我が国の国防レベルを内外に示している。大変誇らしい思いでその諸君の労をねぎらってきた経験がございます。
 私は、誤解のないように申し上げますけれども、何も武力を誇示しろとか我が国のそうした力を誇示しろといって次の質問をするんじゃなくて、とっさの場合の訓練とか、そういうことに対処できているのはやはり自衛官なんじゃないかな、こう思うことと、アメリカなどは海兵隊などを使って在外公館を警備しているという事実があるわけですね。
 最後に、瀋陽のこのたびの事案に対して。
 在外武官制度というのはないわけですね、武官じゃないんですから。在外自衛官としてわずか百数十人しか海外に出ていないはずですね。大きいところでも大使館に二人ぐらい。それも、警護を任務としてではなくて、情報収集というか、そういう意味で行っているんだと思いますけれども。情報収集というのは、意見交換というか、いろいろな意味の政策研究といいますか、そういうもので行っているんだと思いますけれども。
 PKOだとか、これから国際社会にどんどん出ていかなきゃならない、こういうことにかんがみて、在外公館に自衛官をもう少し数多く派遣して、とっさの場合に対処できるような、そんな警備をするということは、周辺国及び対象国に対して誤解を招くようなことになるのかなという懸念も一方ありますが、しかし、そういうことも必要なのかなと思うんですけれども、これについては現時点でまだまだ十分な研究もなされていないと思いますが、防衛庁長官、御所見を承りたいと思います。
中谷国務大臣 在外公館におきましては、我が国の国民や我が国のためにいろいろな事務手続をしていただいているところでございますが、今回の例を見るまでもなく、やはり警備の必要性はあるというふうに思います。
 その際には、やはり日ごろから危機管理につきまして、そのマインドを持ち、知識があり、また経験も積んだ人が警備をするということは非常に意義があることでありまして、防衛庁といたしましては、外務省の要請に応じて、主に所属する在外公館の警備体制の企画立案及び整備等の警備に関する業務を担当させるために、在外公館の警備担当官として、現在三十二の在外公館に三十二名派遣をいたしております。
 一方、欧米の主要国、例えばアメリカは海兵隊、ドイツは国境警備隊、カナダは憲兵隊などにおきまして、欧米諸国は、在外公館の警備の企画立案を行う要員のほかに、在外公館の出入管理等の警備任務を直接行うために軍人等の要員を派遣しておりますが、我が国は、このような警備任務を直接行う要員を派遣いたしておりません。
 在外公館の警備のあり方につきましては、一義的には外務省が所管をいたしておりまして、防衛庁がお答えするということは必ずしも適当ではございませんけれども、在外公館の警備につきましては、現行法、自衛隊の任務、権限とはされておりません。欧米主要国と同様に在外公館の警備を直接行う要員を派遣することにつきましては、我が国自身の法体系との関係等を検討して、今後とも議論を重ねて検討を行う必要があるというふうに考えております。
西川(太)委員 私は、外務省の責任を回避しろとかいう目的で今のことをお尋ねしているんでは毛頭ありません。外務省は外務省としての、国民を守り主権を死守するという決意で臨まなきゃいけない。
 外務大臣いないけれども、これは国会周辺のテレビでも外務省の諸君も見ているんだろうと思いますからはっきり言いますけれども、大体あの報告書は、あの中の文言が気に入らない。立ち入りなんて、あんなもの、侵入であり、乱入ですよ。立ち入りというのは、広辞苑で引くと、他人の領域に奥深く入るなんていう意味もある。わかっています、そんなことは。だけれども、日本語で立入検査という言葉はあるけれども、侵入検査とか乱入検査なんてないんですよ。立ち入りというのはプラスの語感なんですよ。そんなプラスの語感を国家の報告書で、冷静に、毅然として対処するなんという中に、そんな言葉をところどころにちりばめたって、あの報告書の中に、立ち入り、立ち入り、立ち入り。それから、総理の答弁だって外務大臣の答弁だって、立ち入り、立ち入り、立ち入り。そういう弱腰の姿勢では、ばかにされるんだ。
 やはり相手の非を、たとえ、相手の尊厳や主権を尊重し合って国交というのが成り立つのはよくわかっていますよ。私は初めて中国の少年たちに野球の道具を二十組贈った男ですから。私は日中友好は否定しませんよ。当たり前のことだ、こんなことは。だけれども、それは尊厳と主権というものを尊重し合って初めて成り立つということを、これはしっかり外務省はやるべきなんだ。そういう外務省を補助するという意味で、とっさの場合の訓練は外務官僚もなかなかできかねるだろうから防衛庁が行ったらどうかと、こう言っているわけでありまして、研究していただきたいと思います。
 きょうは、官房長官、せっかくお忙しいところお戻りいただいたんですが、私は質問を用意して、ちょっと自分でタイミングをはかってやってみたんですけれども、冒頭に答弁を簡潔にと言っちゃったものだから、そのとおり答弁が簡潔になったために大変時間が早く終わってしまいました。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


2002/05/16

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