2002/05/20

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平成十四年五月二十日(月曜日)

瓦委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 五月八日の当委員会での質疑に続きまして、武力攻撃事態法第二条第六号対処措置イ(1)についてお聞きをいたします。
 二転三転がありましたが、五月八日の官房長官の答弁は、このイの(1)の武力攻撃はおそれや予測を含まない概念だった、そういう答弁でありました。
 それでは、「武力攻撃を排除」、この概念についてお聞きをいたしますが、「武力攻撃を排除」、これもおそれも予測も含まない、そういう概念だと聞いてよろしいんですか。
福田国務大臣 そのとおりでございます。
木島委員 では、さらにお聞きします。
 ここには、「武力攻撃を排除するために必要な」、こういう言葉になっております。この概念も、おそれも予測も含まない概念だとお聞きをしてよろしいですか。
福田国務大臣 この文には、予測、おそれも入っております。
木島委員 非常に大事な概念ですから、確認しますよ。
 「武力攻撃を排除するために必要な」、この概念には予測やおそれも入る、そういう答弁ですか。
福田国務大臣 これは、その下にございますように、「部隊等の展開その他の行動」、この段階においては、準備活動がありますね。武力攻撃に備えるための準備行動というものがありますので、予測をする段階も入るということでございます。
木島委員 そうしますと、「武力攻撃を排除するために必要な」というこの形容句は、前回私も聞いて、官房長官も答弁しましたが、まず何よりも、「自衛隊が実施する武力の行使」、この言葉にかかるんですよ。そうすると、大変なことですね、この答弁は。「武力攻撃を排除するために必要な」、この概念の中におそれや予測を含むという今答弁が出ましたが、そうしますと、先制自衛ができるということにつながりますが、それでいいんですか。
福田国務大臣 「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」という表現は、ここで言う武力の行使が、憲法上認められている自衛権の発動の三要件を満たした場合における武力の行使であるという趣旨を表現したものであります。本条に言います武力の行使は、予測やおそれの事態といった武力攻撃の発生以前の段階で実施されるということはありません。
木島委員 それは前回もお聞きをいたしました。しかし、この対処措置のイの(1)の武力の行使という概念には、官房長官が今答弁したように、武力行使の三要件を満たした場合の概念なんだとおっしゃいましたが、そんなことはこの文章に書いてないでしょう。それは政府の一貫した答弁ですし、どこからそういう答弁が出てくるかと聞いたら、自衛隊法八十八条を持ってきているわけでしょう。しかし、この対処措置、イの(1)には、そんな修飾語はついていないじゃないですか。そんな修飾語はつかずに、「武力の行使」という生の言葉が出てくるじゃないですか。そして、武力行使を修飾している言葉、「武力攻撃を排除するために必要な」、この修飾句の中におそれや予測も含むと今答弁しました。そうしたら、間違いなく、武力の行使はおそれや予測でできるんだ、これはこれまでの政府答弁の根本的な転換、事前自衛反撃、予防自衛反撃、これができるんだというとんでもない解釈になってくる。それでよろしいんですかと聞いているんですよ。
福田国務大臣 よろしくないんです。(木島委員「よろしくないんでしょう」と呼ぶ)はい。これは、憲法上認められない行動をすることはできないんですね。憲法上認められるのは、三原則は、自衛のための発動三要件、これが満たされていなきゃいけない、そういうことになっております。
木島委員 そうしたら、私は、この法律のつくり方はとんでもないことになると思うんですよ。文理解釈からいったら、武力の行使はおそれや予測の段階ではできないんだという政府の一貫した答弁があります。今もここでやっています。前回もやりました。しかし、文理解釈からはそれが出てこないということになるんですね、「武力攻撃を排除するために必要な」という概念は予測、おそれも入るんだとなれば。武力行使は予測やおそれの段階ではできないんだ、日本政府としては、日本の国は先制自衛はできないんだ、先制攻撃はできないんだということは、では、この武力攻撃事態法からは出てこない。辛うじて、これまで政府が答弁してきた、武力行使の三要件があるからできないんだ、そういう答弁になるんですか。
津野政府特別補佐人 この武力攻撃事態法の第二条の定義でございますけれども、これは対処措置についての定義が定められているわけであります。
 そして、この対処措置というのはどういうことを意味しているかということが、ここの柱書きで「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置をいう。」ということにされておりまして、そのイといたしまして「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」ということで、(1)で「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」というふうに定義されているわけであります。
 当然、その法律の解釈といたしまして、まず、憲法の従来からの政府の解釈というのは当然の前提になっているわけでありまして、このところが、法律で憲法の規定を変えることはできないわけですから、したがいまして、この部分につきまして、武力攻撃が発生していないにもかかわらず、武力攻撃のおそれとか、あるいは武力攻撃が予測されるような事態において、自衛隊が武力の行使をするというようなことは当然含まれていないわけでございますので、そこは文理解釈のみならず、これは当然、憲法の規定とか、それから、もちろん、柱書きのところにあります「法律の規定」といいますのは、自衛隊法の規定等もございますけれども、そういったものを含めて総合的に解釈するのが当然のことであるというふうに考えております。
木島委員 憲法の規定の解釈から、ここの「武力の行使」には、おそれや予測の段階ではできないということが導き出されるんだというんですね。
 それだから私は、大体、憲法九条一項、二項の解釈を、とんでもない文理解釈を政府は続けてきたではないですか。軍隊は持てないと明文の規定が書いてあるにもかかわらず、いや、あれは戦力ではないんだ、だから軍隊ではないんだという、言ってみれば、国際社会には通用しない理屈を立てて政府は憲法解釈してきたではないですか。
 憲法九条には、先制自衛ができないなんという言葉は書いてないんですよ、一言も。だから、私はこの文言を詰めているんですよ。この武力攻撃事態法の対処措置、一番肝心かなめのイの(1)、これは自衛隊がやる行動をここで律しているわけです。その自衛隊のやる行動のまず第一が、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」この言葉でしょう。その「武力攻撃を排除するために必要な」という概念の中に予測やおそれの場合も含むんだ、そういう答弁がここで飛び出してきたら、これは、では憲法解釈、幾らでも政府変えますよ。そうしたら、この「武力の行使」は先制自衛もできるんだということになる。
 大変な答弁が飛び出したということだけ、きょうは私はここで指摘して、そんな解釈は到底認めるわけにいかない、そんな解釈の余地があるようなこの法律には断じてこれは賛成できないということを重ねて指摘しておきたいと思います。
 次に、対処措置イの(2)についてお聞きをいたします。
 これは、米軍に対する有事ACSAを規定したものだと思われます。これまで我が国の法律では、平時における日米共同訓練、そしてPKO、さらには三年前につくられた周辺事態においてのみ米軍への物品、施設、役務の提供が認められてきたわけであります。有事ACSAは認められてこなかったわけでありますが、この第六号、対処措置イ(2)、これは、今度はこの有事ACSAを、我が国に対する武力攻撃があったときにもできる、いわゆる有事にも拡大しようとするものであると解釈されますが、官房長官、それでいいんですか。
津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 このイの(2)の、これはあくまで武力攻撃事態を終結させるために実施する措置でございますから、「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」で、かつ「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置」ということで、この武力攻撃と申しますのは、二条の一号の定義で我が国に対する外部からの武力攻撃と言っておりますので、まさに我が国に対する武力攻撃が起こった際の、我が国に対する武力攻撃がある際の関係の規定でございます。
木島委員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。だから、この条文は、今まで我が国法律上認める規定が全くなかった有事ACSAを規定したものなんですねということだけですよ。
 これは、官房長官、答弁してください。――官房長官、こんな、基本じゃないですか。そんなの、すぐ答えられないんですか。
福田国務大臣 日米安保条約第五条に基づきまして米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためでございますが、武力攻撃以前の段階において必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動が安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになります。
 また、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものとするために必要な諸措置を我が国がとることは、日米安保条約の目的の範囲内であると考えております。
木島委員 中身はこれからじっくり私が聞こうとしているんですよ。だから、これは有事ACSAを規定した条文ですねということだけ聞いたんですよ。解釈はこれから逐一聞こうとしているんですよ。
 だから、有事ACSAを取り決めようとする条文ですね。イエスかノーかだけで答えてくださいよ。――法制局なんか関係ないよ。解釈はこれから聞くんだから。有事ACSAですよ。外務大臣。全然こんなのだめだよ。
津野政府特別補佐人 お答えします。
 有事ACSAと申しますのは、米国と日本の間でこういった武力攻撃事態が起こった際に、いわゆる協定、いわゆる条約のような形で取り決めを結ぶのを有事ACSAというんだろうと先生はおっしゃっておられるんだと思いますけれども、それにとどまらず、これは当然……(木島委員「いや、有事において米軍に物品供与できるというのが有事ACSAじゃないかと聞いているんです。それを書いているんだろうと」と呼ぶ)協定ではなくて、我が国の法律とかそういうものに基づいてでもそういうことを整備していくということを含んだものでございます。
木島委員 全然だめですね、こんなのは。要するに、有事における米軍への物品、施設、役務の提供ができる、それを初めて法律に書き込んだ、そういうものだ。そうでしょう。(発言する者あり)いや、これから書くんでしょうが、まず基本法で書いたんでしょう。
 では、外務大臣、イエスならイエスとだけ答えてください。
川口国務大臣 有事ACSAを排除するものではないと。
木島委員 もっと素直に答弁してください。そういうものじゃないですか。
 周辺事態法において、周辺事態において行動する米軍に物品等を供与できるというのは、周辺事態法にちゃんと書いてありますよ。しかし、有事、戦時に戦闘行動する米軍に物品を供与できる法律は、いまだにないんです。これが最初なんですよ。
 そこで、聞きます。これから解釈なんですよ。
 この第六号「対処措置」イ(2)、ここにも「武力攻撃を排除」という言葉が使われております。これは、現実の武力攻撃の発生の場合だけですか。それとも、おそれや予測の場合を含むのですか。
福田国務大臣 この対処法におきましては、武力攻撃事態の中に武力攻撃のおそれ及び予測の事態が含まれておりますが、このような武力攻撃発生前の事態において、米軍は、武力攻撃事態対処法に言う我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動をとり得るかどうかということについて、日米安保条約第五条に基づいて米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合でありまして、武力攻撃が発生する以前の段階において米軍が必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動を安保条約及び地位協定の範囲内で行うこととなっております。先ほど答弁したとおりです。
木島委員 いや、それは、言葉の一つ一つの定義をきっちり聞き出してから私は全体を聞こうとしているんです。
 単純な質問です。このイの(2)も「武力攻撃を排除」という言葉があるから、これにはおそれや予測は含むんですか、含まないんですかという質問ですよ。それだけですよ、まずは。答えてください。
中谷国務大臣 この武力攻撃事態における対米支援措置がどのようなものになるかにつきましては、今後、整備の中で検討されていくものでございますが、我が国に対する武力攻撃が予測される場合または武力攻撃のおそれのある場合など、我が国に対する武力攻撃が発生していない段階で、米国の武力行使と一体化するような支援措置や我が国としての武力の行使が行い得ないということは、当然のことでございます。
 他方、武力攻撃が発生した場合は、我が国防衛のために共同対処をしている米軍に対して、武力の行使と一体化していると見られる支援を含めて必要な対米支援を行うことは、我が国の自衛権行使の三要件に合致する限り、憲法上も条約上も何ら問題がないものだと考えております。
木島委員 いや、ですから、現に武力行使をしている米軍に対して、それと一体化しているような対米支援がまさにできるのかできないのか私は質問しようとしているんです。しかし、まさにできるのかできないのかを、この(2)の三行の法律、ここから読み取らなきゃいかぬのですよ。だからこそ私は、「武力攻撃を排除」という言葉にはおそれや予測は含むのか否か、まず質問したんですよ。まだ答えてないんですよ。
 では、その次に私が聞こうとしていること、「武力攻撃を排除するために必要な行動」、こういう言葉を使っていますから、では、この「武力攻撃を排除するために必要な行動」、この言葉にはおそれや予測は含むのか含まないのかということを二番目に私は聞くんですよ。事前に予告しておきますよ。
 なぜかというと、よく見てください、この法律を。(1)の自衛隊の行動を律する条文には、よく聞いてくださいよ、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」という言葉になっているんです。ところが、こっちの米軍に対する有事ACSAを規定した(2)には、「武力攻撃を排除するために必要な行動」という言葉になっているんです。「武力の行使」じゃなくて、こっちは「行動」という言葉に膨れ上がっているんです。だから私は、この「武力攻撃を排除するために必要な行動」の中にはおそれや予測は含むのか含まないのかということを、まずは文理解釈から聞こうとしているんですよ。まともに答えてください。
福田国務大臣 ただいまの御質問の「武力攻撃を排除」、ここでは予測、おそれは入っておりません。しかし、「必要な行動」、これには準備活動があるわけですね、ですから予測、おそれが入っている、こういう考え方であります。
木島委員 はい、結構です。
 それでは、米軍のこの場面での「武力攻撃を排除するために必要な行動」、これには予測やおそれは含むというんですから、いつからできるのかという質問です。おそれや予測の段階からできるんですね。
中谷国務大臣 これは、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものとするために必要な措置を我が国がとるということで……
木島委員 措置じゃない。措置を聞いているんじゃない。必要な行動、米軍が必要な行動をいつからできるのかという質問です。その後のことは次の質問で私します。
 だから、まずは米軍の行動ですよ、「武力攻撃を排除するために必要な行動」というのは。だから聞いているんですよ。米軍の行動を書いているんですよ、ここは。だからおそれや予測の段階でできるのかと聞いているんですよ。日本がやる対処措置はその次です。私の質問もその次に来るんです。
川口国務大臣 米軍が我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を開始する時点というのは、個別具体的な状況で決まってきますので一概には申し上げられないわけですけれども、この武力攻撃事態対処法に基づく対処措置の対象となる米軍による我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が、この武力攻撃事態が認定される時点よりも前に開始されることはないということでございます。
木島委員 おかしいんじゃないですか。これまでの答弁で、「武力攻撃を排除」、この言葉には予測やおそれは入らないという答弁が出ました。しかし、「武力攻撃を排除するために必要な行動」、これには予測、おそれ、要するに準備段階ですね、これも含むと答弁が出ました。そして、この行動には恐らく、「武力の行使、部隊等の展開その他の行動」と、非常に包括的な広い概念で行動というのは使われているんでしょう。そうしたら、今の川口外務大臣の答弁はおかしいじゃないですか。全然成り立たぬですよ。予測、おそれの段階での米軍の行動は入らない、文理解釈からそんな解釈は出てこないじゃないですか。どうなんですか。日本語としてもそんな解釈、出てこないんじゃないですか。本当にそんなことでこの法律を皆さんつくり、提案してきているんですか。
中谷国務大臣 安保条約の第五条には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というふうに書かれております。この「共通の危険に対処するように行動する」ということでございますが、この第五条に基づき米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためでありますが、武力攻撃以前の段階において必要な準備行動をとる場合には、武力の行使に至らない活動が安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになると考えております。
木島委員 よくわからない答弁ですね。安保条約第五条というのは、我が国施政下にある米軍の基地とか自衛隊の基地とか我が国のいろいろな施設、要するに我が国施政下にあるという修飾語で限定がついているんです。これは、前回私、大問題にいたしましたが、我が国施政下というのは我が国領土、領空、領海内ですよ。それに対する攻撃があったときにのみ安保条約第五条が動き出すと限定がついているんです。前回、私、聞きましたね。領海外にあっても、それが組織的、計画的な外部からの武力攻撃と認定されれば、領海外にある、公海にある、あるいは場合によっては相手国領域内にある日本の自衛艦に対する攻撃も排除されない。だから、非常に安保条約五条が大事だ、私、そういう観点でこれは聞いているんですよ。
 それじゃ、聞きます。この第六「対処措置」のイの(2)には「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動」、そういう組み立てになっていますね。安保条約五条という縛りがこの文章から出てこないんですよ。何でですか。安保条約五条というのと安保条約全体とはちょっと違うんですよ。だから聞いているんです。
川口国務大臣 武力攻撃が発生をしたときに安保条約五条によって共同対処をするということが必要なわけでございまして、そのために準備が必要だという準備は、安保条約の第五条の範囲内であると考えているわけでございます。
木島委員 新しい、大変な、安保条約第五条の、これまで政府が再三答弁してきた答弁をとんでもなく拡大する答弁になるんじゃないかと私は感じます。その点だけ指摘しておきます。
 では、最後の結論の質問に移りましょう。
 このイの(2)の、いわゆる有事ACSAとして「実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置」とあります。もうずばり聞きます。これは、では、おそれや予測の段階でこの提供ができるとこの定義を読んでいいですか、予測やおそれの段階ではそういう提供はできないと読むんですか。きちんと答えてください。
福田国務大臣 これは、武力の行使に至らない活動の範囲の中で、今言いました「物品、施設又は役務の提供その他の措置」をとることができるということであります。
木島委員 今の答弁の武力の行使というのは、米軍の武力の行使という意味ですか。
福田国務大臣 我が国に対する武力攻撃が発生する以前の段階、その段階において米軍が必要な準備行動をとる、そういう場合において今申し上げたことはできるということです。
木島委員 ずばり聞きますが、我が国に対する外部からの武力攻撃のおそれが認定できた、予測が認定できた、そういう局面において米軍は、もう相手方に対して武力攻撃、いわゆる先制自衛といいますか予防的自衛といいますか、それは米軍はできるんですか。
福田国務大臣 武力攻撃がなければ、これは我が国も反撃することはできないし、また当然米軍もできないんです。これは、米軍が必要な準備行動をとる場合は、武力の行使に至らない活動を安保条約及び地位協定の範囲内で行う、こういう考え方をしているわけです。
木島委員 重大な答弁だと思うんです。
 政府は、これまで一貫して、我が国自衛隊は、現に武力攻撃を受けた後でなければ反撃ができない、いわゆる武力行使ができないという答弁をし続けてきました。しかし、その武力攻撃の発生時をいつと見るかについては、確かにミサイル等の場合には、ミサイルの発射台からまさに発射されなんとするときには、座して死を待つのはいかがなものかという理屈で、いつから武力攻撃が発生したかを認定する段階では、必ずしも着弾の時点ではないという答弁は再三この国会でしてきたわけであります。
 しかし、米軍がいつの段階から、相手が我が国に武力攻撃をしようとしている段階、予測の段階、おそれの段階に対して、米軍がいつから動き出せるのか、いつから反撃、自衛できるのかについての明確な政府の答弁は、今まで私、なかったんじゃないかと思うんです。どうですか、明確にできないとここで答弁するんですね。
中谷国務大臣 我が国に武力攻撃が発生してからでございます。
木島委員 そうしますと、このイの(2)はどう読み取るんですか、結論的には。物品、施設、役務の提供その他の措置は、まさに、概念はいろいろ難しいけれども、米軍に対する有事ACSAですよ。それは、では日本としては、この主語は何かといったら、自衛隊だけじゃないですよね。よく見てください。指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関が主語なんです。
 では、いつの段階から米軍に対してこういう物品、施設、役務の提供ができるんですか。最後の結論の質問です。
中谷国務大臣 これにつきましては、まず、米軍が我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を開始する時点は、個別具体的な状況によって決まってくるものでありますから一概に申し上げられませんけれども、武力攻撃事態対処法に基づく対処措置の対象となる、米軍による我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が、武力攻撃事態が認定される時点より前から開始されることはないわけです。つまり、予測される事態の認定がされる前に支援を行うことはないということです。
木島委員 そういう質問じゃないですよ。
 ですから、予測の認定ができたらもう米軍に対するACSAはできるのかという意味です。予測の認定の前からできるなんというのは、幾ら何でもこの法律は読めないのは、そんなのは当たり前じゃないですか。だから、予測、おそれの段階でできるのか、それとも現に武力攻撃を受けてからでないと有事ACSAは発動できないのかという質問です。
津野政府特別補佐人 この六号の柱書きをよく読んでいただきますと、対処措置につきましては、「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、」と書いてございますから、第九条第一項の対処基本方針が定められてからでございます。
木島委員 米軍に対する有事ACSAは、武力攻撃事態のおそれや予測の段階からできるという答弁であります。これは大変なことですね。日本に対する武力攻撃が現に行われる前段階から、指定公共機関や地方自治体が米軍に対して物品、施設、役務の提供ができるという答弁です。
 それでは聞きます。この物品の中には武器弾薬は入るのですか、排除されますか。
中谷国務大臣 この支援の内容につきまして、いかなる支援を行うかにつきましては、今後、この武力攻撃事態対処法案に基づく事態対処法制整備の中で検討していくことになるので、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと存じます。
木島委員 まことに重大な答弁だと思うんですね。政府は一貫して、今度の法律はプログラム規定だ、枠をつくる法律だ、これで枠がつくられた後、二年の間に具体的な個別法をつくるんだ、そういう答弁でしょう。だから、枠がどこまで、天井がどこまでかというのは決定的に大事なんですよ。だから聞いているんですよ。武器弾薬を有事に提供できるのかどうか、決定的に大事な問題なんですよ。なぜか。周辺事態法でも排除してきました。テロ特措法でも排除してきました。これはそれが排除されないのか。そんなことを今決めていないんだ、決めていないで、この法律を通してくれ、二年間の間にじっくり検討するんだ、そんなばかな答弁ないじゃないですか。こんなのはだめですよ。
中谷国務大臣 まず、発生する前におきましては我が国は武力の行使はないわけでありまして、武力の行使を伴うような支援はもちろんのことできないわけでございます。
 武器弾薬につきましては、憲法上の枠は提供することはございませんが、相手側のニーズ等ございますので、今後協議を通じて検討していくことになろうかと思います。
木島委員 我が国が、有事ACSAが武力行使と一体化していると見られるような物品の提供はできない、一体化していると見られないような物品の提供はできる、そういう答弁なんでしょう。
 しかし、そんなことこの法律に何にも書いていないじゃないですか。白紙委任をせよというのですか。要するにそういうことですか。そんな白紙委任できないですよ。法律にも書いていないんだから、勝手に解釈であなた方がそう言っているだけなんだから。
 非常に大事なところですよ。大事なところだからこそ、周辺事態法では排除したんですよ、武器弾薬の提供を。全部排除したでしょう。PKO協力法だって排除したんですよ。テロ特措法だって排除したんですよ。それはまさに憲法九条の問題があるから法律に書き込んだんでしょう、武器弾薬は除くと。これは除いていないじゃないですか、この法律。だから白紙委任せよというんですか。それで、二年間の間に状況を見て、場合によっては武器弾薬も含むこともあり得るというような法律が出てくる可能性もこの法律からは残るという答弁なんですか。
 これは本当に大事なところですから、白紙委任をしてしまうかどうかにかかわるものですから、きちんと答弁してください。
中谷国務大臣 周辺事態の安全確保法やテロ対策特別措置法で武器弾薬を除くと書いておりますのは、米側からのニーズがなかったからでございまして、憲法上それができないというからではございません。
木島委員 大変な答弁ですね。では、米軍からニーズ、要求があれば、憲法に違反しようと何しようとどんどんやるんだ、ニーズがないからたまたま周辺事態法では武器弾薬は除いただけだ、そういう答弁ですか。
 こんなに憲法九条をないがしろにする答弁というのはないと思うんですよ。まさに憲法九条で武力行使が禁じられているからこそ、政府はいろいろな理屈を立てて、武力行使と一体化するものはだめだ、この地域では武力行使と一体化すると認められるから、この地域は戦闘地域か否か区分けした、そういう非常にガラス細工のような理屈をこれまで立ててきたんじゃないですか。
 今の防衛庁長官の答弁は、これまで政府が、国際社会では通用しないんでしょうけれども、憲法違反に当たっちゃいかぬ、憲法九条に触れちゃいかぬというので、ガラス細工のような理屈を立ててきたのを全部ぶち壊して、米軍の要請があったら、もう憲法九条なんて関係ない、何でも、物品も、施設も、役務も提供できるんだ、そういう恐るべき答弁が出たということだけ指摘して、時間が来たようですから、きょうのところは終わります。
瓦委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 私は、まず、昨日沖縄県で行われました復帰三十周年記念式典について、二点ほどお伺いしたいと思います。
 昨日の復帰三十周年記念式典で、小泉首相は、沖縄の米軍基地の整理縮小について、SACOの最終報告を踏まえ、県民の負担軽減に取り組むと述べられました。しかし、たとえSACOの最終報告が完全に実施されても、なお七〇%余の米軍専用施設は沖縄に残るということ、そしてSACOでは普天間の返還は一九九六年から五年ないし七年で行うことになっています。それなのに、今もってめどは立っていないということから、SACOは既に破綻していると言えるにもかかわらず、いまだにSACOを言い続けている政府ですが、これからどのように県民の負担の軽減に具体的に取り組まれていかれるか。
 沖縄の経済的自立、これから十年をかけて、新しくスタートした振興新法のもとで振興計画を立てて沖縄の自立を目指すというそのスタートのときに、やはり基地の整理縮小というのは絶対に不可欠だと思われます。それに関しまして、沖縄担当大臣として、尾身大臣にお願いいたします。
尾身国務大臣 現在、沖縄の在日米軍施設・区域につきましては、日本全体の七五%が〇・六%の沖縄に集中しているということで、この在日米軍の存在は、我が国はもとより、アジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与していることは事実でございますが、同時に沖縄県民の皆様に多くの負担をかけているというのも実態でございます。
 昨日、総理が三十周年記念式典でも申し上げましたが、私どもとしては、SACO最終合意の線に沿ってこの沖縄基地の整理、縮小、統合を進めていくということが私どもに課せられた大変大事な課題であると考えている次第でございます。
 まだ進んでいないではないかというおしかりをいただいているところでございますが、我々としては、普天間代替施設の移転も含めまして、誠意を持ってこれに取り組んでいきたいと考えている次第でございます。
東門委員 次に外務大臣にお伺いしたいと思いますが、昨日、やはりその式典でのベーカー駐日米国大使のスピーチ、私は正直言いまして、初めてあのようなスピーチをお聞きしまして驚きました。大臣はどのような感想を持たれたのか、お聞かせいただければ、お願いします。
川口国務大臣 昨日、ベーカー大使は、御自身の上院議員であったときの沖縄の返還についてのかかわり合いも含めまして、沖縄がこの地域の平和と安定のために果たしている役割について述べられたと思います。また、米軍人、その家族に対しての沖縄の県民の方々の温かいホスピタリティーといいますか、それについても感謝の念を示されたと思います。そして、ここまで、三十年の間に沖縄が来たことについての沖縄の努力、沖縄の方の努力もたたえられたというふうに私は聞かせていただきました。
 また、こういったベーカー大使の発言は、米軍の駐留に関しまして、沖縄の県民の方々が抱えていらっしゃるといいますか、負担をしていらっしゃるその負担、これを踏まえて、感謝と、これを減らしていくための努力について述べられたというふうに私は思いました。
東門委員 ベーカー大使のスピーチは、沖縄県民に対して、米軍基地があれだけ過重にあるためにいろいろ起こってくる事件、事故に対する一言の言及もありませんでした。おっしゃるのは、友人だとか友情という言葉を繰り返されただけで、前方展開している米軍にとって沖縄はホスト役として非常に重要、そういうことだけをおっしゃったように私は覚えております。
 沖縄県の中では、本当に市町村長さんたちからもいろいろなそれに対する反応が出ております。一番外務省にどうしても聞いていただきたいものは、やはり日米関係を重要視する余り、アメリカの機嫌を損ねてはいけないという配慮で、言うべきことも言わないでいる、そういう姿勢が問題ではないかという声が上がっていることを、外務大臣、ぜひ覚えていていただきたいと思います。
 その場におられなかった先生方にはちょっとおわかりにならないかもしれませんが、時間がないのでその件については別のときにしたいんですが、ベーカー大使のスピーチを伺って驚いたということを伝えておきたいと思います。
 さて、今回の法制について質疑をしていきたいと思いますが、その前に、沖縄戦について少しお話ししたいと思います。
 沖縄戦の特質を示す資料に、一九四五年四月二十日、大本営陸軍部が作成した国土決戦教令の第二章「将兵ノ覚悟及戦闘守則」というのがあります。その第十四条に、「敵ハ住民、婦女、老幼ヲ先頭ニ立テテ前進シ、我ガ戦意ノ消磨ヲ計ルコトアルベシ。斯カル場合、我ガ同胞ハ、己ガ生命ノ長キヲ希ハンヨリハ、皇国ノ戦捷ヲ祈念シアルヲ信ジ、敵兵殲滅ニ躊躇スベカラズ」と書かれています。
 国体護持、すなわち、天皇を守るためには、老幼婦女子、一般住民の生命が犠牲になることをためらってはならないということであります。敵が一般住民を盾に使ってきても、ちゅうちょせずに攻撃しろということです。日本軍の住民殺害、虐殺は、大本営の方針であったのです。
 この戦闘守則は沖縄戦で実際に適用されましたが、本土がもし地上戦の戦場になっていたのならば、このような事態が全国各地で起こっていただろうことは容易に想像がつくことであります。
 国家の県民指導方針は、軍・官・民共生共死の一体化、軍と一緒に死ねということでした。天皇のために死ぬ教育が貫徹されたゆえに、米軍の上陸を知った翌日には、集団で死を選ぶという悲劇が起こりました。
 また、牛島満第三二軍司令官は、沖縄に着任するや、現地自活に徹すべし、一木一草に至るまで戦力化すべしと訓示し、戦闘に必要なものはすべて現地調達せよと、学校、民家を次々接収し、食糧は供出させました。住民は、老若男女、国民学校の学童まで徴用され、飛行場建設、陣地構築、ごう掘り、物資や弾薬運搬などに従事させられました。男子学徒たちは通信隊、切り込み隊、女性は看護隊などに動員され、残る十七歳から四十五歳までの男性は防衛隊、女子青年団は救急看護や炊事係と、住民を根こそぎの動員でした。
 そういう戦時体制下で起きたのが、戦争の足手まといになる老幼婦女子を排除して、軍人の食糧確保の目的で強制的に疎開船に乗せ、疎開先へ向かう途中、米軍の魚雷攻撃で沈没した学童疎開船対馬丸等の惨事であり、本土出身兵士が理解できない沖縄の方言を使用する者はスパイとして処分せよという命令であり、空腹と恐怖で泣き叫ぶ乳飲み子を、敵に居場所を知られるから黙らせろと命じて絞め殺したことであり、住民が隠れている洞窟や墓を軍命で追い出して、鉄の暴風下にさらしたことであります。また、八重山では、マラリア有病地と知りながらそこに住民を強制移住させ、多くの住民がマラリアに罹患し死亡した戦争マラリア問題等々、数えれば切りがないほどです。
 沖縄戦の教訓は、軍隊が守るのは軍隊自身であり、住民を守るのではないということです。全国で唯一そのような体験をしてきた沖縄から、小泉内閣が今強行しようとしています有事法案について、四点ほど質問をいたします。
 まず、復帰して三十年。三十年もたっているのに、いまだ米軍基地が集中し、米兵による事件、事故、人権侵害が続発する沖縄の県民は、この法案の国会提案に大きな衝撃を受けております。不安と怒りが渦巻いています。こんな祖国ではなかったはずだ、平和憲法のもとへの復帰だったはずなのにと強い憤りを覚えています。有事の際には、基地が集中する沖縄が真っ先にねらわれるのではないかという不安があるからです。
 官房長官、このような県民の気持ちをどのように受けとめられますか。それとも、国を守るためにはやむを得ないとお考えなのでしょうか。ぜひお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 沖縄における戦争の悲惨さ、想像を絶するものがありまして、今お話を伺っておりまして、その光景を何か目の当たりに見るような感じがいたしました。
 その悲惨さに対して、我々は、二度とそのような戦争がないように、こういうことをこれから願い、かつまたそのために努力をしていかなければいけない、そのように思っております。そのために、当然のことながら、外交努力も必要でしょうし、さまざまな行動をとらなければいけない、世界が平和になるように努力をしていかなければいけない、そのように思っております。
 その上で申し上げますけれども、今回このいわゆる有事法案を提出させていただきましたのは、我が国が本当にそのような努力をして、しかし万が一というときに、もし他国から軍事的な攻撃を受けたときにどうしたらばよいのかというその基本的な考え方、そのときにどうすればいいか、自衛隊の活動のこともございますけれども、あわせて、国民をどのように守るか、その視点からの取り組み方、これもこの法案の極めて大事なところでございますので、軍事活動並びに国民の保護ということについてこれからいろいろと、法制整備もございますので、皆様方の御意向等も伺いながら、また国民議論を深めながら、本当に国民に理解されるような法制を整備したいと思っております。
 また、平和を維持するために我が国が自分で守るんだというその意思を明らかにするということは、他国が攻撃をしてこなくなるという抑止力につながるのではないかというように考えております。
 なお、申し上げれば、この法案は憲法の範囲の中の行動であるということでございますので、決して、先制攻撃をするとか他国と好んで戦争をするとか、そういったような趣旨でないということをよく御理解いただきたいというように思っております。
東門委員 二度と戦争はしないとうたっている平和憲法のもとに私たちは復帰したと思っておりました。しかし、憲法の保障する財産権のみならず、日々平和的生存権さえ脅かされている沖縄県民に、この法案をぜひ説明していただきたいということです。
 米軍基地が集中しているからといって、沖縄が決してぬきんでて危険な状態になるということはあり得ないのか、それともあり得るのか、それが県民が理解できるように、そして納得できるように、この法案についてぜひ説明会あるいは公聴会を持っていただきたいと思いますが、尾身大臣、そして官房長官、お二人の御見解を賜りたいと思います。
尾身国務大臣 沖縄が、あの太平洋戦争のときに二十万人の方々が亡くなられまして、まさに地上戦が行われたただ一つの場所でございまして、そういう意味で、沖縄県民の皆様が太平洋戦争において大変に大きな犠牲を受けたということは事実でございます。
 私は、この法案は、相手が武力攻勢をかけたときに日本としてどう対応するかという、まさに我が国の国民の命及び財産を守るという観点からなされていることでございまして、いろいろなところで国民の皆様に御理解をいただいた上で法案を通していただくことが大変大事だというふうに考えております。
福田国務大臣 この法案を御提出する段階におきまして、これまで全国の地方自治体の方々に御説明を申し上げるということはしてまいりましたけれども、これはまだ十分でございません。今後、全国の町村会とかそういったような地方公共団体、また大きな団体等についても十分なる説明をしていかなければいけないと思っております。
東門委員 両大臣にもう一度だけお尋ねします。沖縄県に出かけていって、そこで説明会、公聴会ということを考えていただきたいということなんですが、尾身大臣、よろしくお願いします。
尾身国務大臣 この法案は、日本全体の問題でございまして、いろいろな機会を通じて日本国民全体に、自分の問題として、一たん武力攻勢を受けたときにどうするかという観点から理解をしていただくということが大変大事だと思っておりますが、私自身は、沖縄の担当でございますが、この法案の担当ではございませんので、委員会においていろいろと御検討いただきたいと思います。
東門委員 それでは、官房長官、この法案の適用によって沖縄県民が受ける負担とはどのようなものか、どのようなものが考えられるか、お聞かせいただきたいと思います。
 要するに、私が申し上げたいのは、米軍基地があれだけあります。そういう中で、米軍基地を抱えている県と基地の存在していない県で、県民の負担の程度に差があるかというふうに置きかえた方がいいかもしれません。どうでしょう、それはあり得ますか。
福田国務大臣 特別に今より負担がふえるとかいったような、そういうものではないと思います。
 この法案は、日本全国国民に対して御協力を願うというような、そういう条項もございますけれども、これは特別に沖縄というあの地域、もちろんあの沖縄の地域には米軍基地がたくさんあるということを考えれば、その基地が基地としてのいろいろな活動をするということになれば、その分の負担というのは追加的にあるということはありますけれども、しかし、この有事法制ができて特別に何かあるかということが考えられるかどうかということであれば、私は特別な考えというか、追加的な負担というものはないように思っております。
東門委員 有事法制ができてすぐ変わりますかということではなくて、有事にはということなんですね。
 では、伺いますが、昨年の九・一一、テロリストによって米本国が攻撃をされました。日本の米軍基地は当然のことながら厳戒態勢がとられました。少なくとも沖縄はそうでした。本当に非常事態ということを感じさせるような緊迫した沖縄県内の状況でした。
 今回のこの法案はもう言うまでもなく米軍支援法だという声もよく聞こえます。そういう中で、基地があれだけある沖縄県が、全国の問題だから全国同じようにということで、特に沖縄県がぬきんでて有事のときに攻撃されるおそれがあるというふうには考えられない、要するに米軍とは無関係だというふうにとらえてよろしいのでしょうか、官房長官。
福田国務大臣 基地がございます。また、基地の警備というのは、例えばテロが起こったときに、昨年の秋のことでございますけれども、そのときに基地を警備するといったような、そういうことがあった、これはもう事実でございますね。それを負担ということであるならば、それは負担になるんだろうというように思いますけれども、今回のこの法制は、あくまでも武力攻撃があった、あるというときにこの法律を使うわけでございますので、そのときにどういうような事態が発生するか、これはなかなか想像するのは難しいと思いますね。
 例えば、武力攻撃が、沖縄でない、例えば東京にあったというようなことになれば、それは東京の方がはるかに大変な事態になるというようなことはございますので、これは一概に、ちょっと考えにくい問題、申し上げるというのは難しいことじゃないかなというふうに思っております。
東門委員 そうしたら、九・一一の米本国のテロ、ああいったことが起こったときに、あってはほしくないのですが、あの事態は、今の法案でいくと武力攻撃事態なのですか。それとも、日本の側から見ると、受けるおそれのある状態というふうに認定するのか。それをお伺いしたいと思います。これは防衛庁長官、お願いします。
中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃というのは、いろいろな形態がございますので一概に言えませんけれども、その攻撃が組織的また計画的なものでありまして、大変大きな被害が出た場合は、武力攻撃の一形態になり得ることもあるわけでございます。
東門委員 長官、私がお伺いしているのは、アメリカで、アメリカが攻撃をされた、本国で。それで、米軍基地が海外にあります。沖縄はそれだけたくさんあります。そうすると、さきの九月十一日の件のように、本当に厳戒態勢がしかれました。機動隊が住民に顔を向けて基地をバックにして立っているという姿はとても信じられないような情景でしたけれども、あの事態です、私が申し上げているのは。日本が攻撃されたとかなんとか言っていません。本国、アメリカが攻撃をされて、そして日本でそういう状況が起こった、それは日本はどのように受け取るんですかということなんですが。
 そのときは、関係ないというふうにとらえるのか、あるいはおそれがある事態ととらえるのか、しかし厳戒態勢に入っているから武力攻撃が行われた、発生したととらえるのか。そこをお聞きしているのですが。
中谷国務大臣 あの事態は、米国に対する攻撃でありまして、我が国に対する事態ではございません。
 なお、米国の対応等につきましては、それぞれ事態に応じて対応すると思われますが、基地内の警備につきましては、あくまでも基地の敷地内で、基地内の警護のための措置でございまして、住民の皆様方に心配をかけたり、また負担をかけたりしない、あくまでも米国基地内の警戒であったというふうに考えております。
東門委員 そうすると、別に、アメリカが攻撃されたから即日本がというふうにではないとおっしゃったと理解しております。
 次の質問に移ります。
 昭和二十一年十一月三日に公布された日本国憲法は、第九条で、戦争を放棄し、国の交戦権は認めないと明確に規定しています。そもそも憲法は、公布当時から、有事に際してどの機関がいかなる手続によって何をなし得るのかという国家緊急権の規定を明記しておらず、憲法そのものが有事を想定していないということがもちろん言えます。
 小泉総理は、武力攻撃事態における国民の権利の制限について、こうした権利の制限は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため合理的な範囲と判断される限りにおいては、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」との憲法第十三条の趣旨に沿ったものと理解されると答弁しておられます。
 確かに憲法十三条には総理がおっしゃったことが記載されていますが、もともと有事を想定していない憲法の条文に基づいて有事の際の国民の権利の制限を正当化することには大きな矛盾が感じられますが、政府の御見解を官房長官から賜りたいと思います。
福田国務大臣 憲法九条でもって戦争の放棄とございますけれども、しかし、これは必要最小限度の自衛権は認める、こういうことでございます。
 国民の権利という観点、自由と権利の尊重ということでございます。
 この法案で、基本理念として、国民の自由と権利の尊重を明記いたしております。今申しました基本理念は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、必要最小限の範囲において人権を制約し得るとするにとどめてあるわけでございまして、今委員の御指摘の十三条の趣旨には沿ったものであるというように考えております。
東門委員 憲法九十九条ですが、それには、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記されています。法治国家であれば、権力の中枢にある者や政治家こそ、襟を正して憲法尊重擁護義務を率先して果たすべきだと思うのですが、長官、どうでしょうか。
福田国務大臣 法治国家における一員として、憲法を遵守いたしております。
東門委員 次の質問ですけれども、本当にいろいろ質疑をお聞きしていまして感じるのは、我が国は主体的に有事ということが判断できるのかなという疑問なんですが、周辺事態でも、テロ特措法でも、米国が有事と判断したとき、日本は後追いで対応しているという状態です。米国が有事と認定した事態が最終的に日本有事となりかねないというのが本当のところだと思います。
 有事認定の明確な定義がない限り、政府による都合のいい、主観的、恣意的な運用となる余地が生じます。実際に武力攻撃があればだれにでもわかるが、予測される事態というのをどうやって判断するのか。首相が判断するということですが、結局は専門家である制服組の判断に従わざるを得ず、それは、いつも言われている文民統制ではなくて、軍事統制になる可能性があると思いますが、政府の見解はいかがでしょうか、防衛庁長官。
中谷国務大臣 米軍追随というお話がございますが、これは我が国に対して武力攻撃が行われた場合でございまして、自国を守るのに相手国の意思に追随する必要はございません。日本の武力攻撃事態は、まさに我が国自身の問題でありまして、他国が協力しようがしまいが、当然協力してくれる方がありがたいんですけれども、自分で決めて最善を尽くす問題でございます。
 もう一点はシビリアンコントロールの話でございますが、この事態につきましては、内閣が対処方針を決定し、閣議にかけまして、その後、国会承認の手続がございます。国会の皆様方の御承認によってコントロールを受けるわけでございまして、民主的な手続がとられているわけでございます。
東門委員 ということは、決して制服組、いわゆる軍事統制になる可能性はないということですね。はっきりした文民統制だということなんですね。わかりました。
 自衛隊法百三条について伺いますが、自衛隊法第百三条において、自衛隊が円滑な行動が行えるよう、国または地方自治体が、物資の保管命令、業務従事命令、立入検査等を民間人に命令できるようになっています。さらに、保管命令、立入検査に関しては、これらに違反した場合の罰則規定を同法第百二十四条及び第百二十五条で規定しています。
 これらの規定は、災害対策基本法等に規定される従事命令、保管命令、立入検査及びこれらに違反した場合の罰則規定に非常によく似た規定となっていますが、今回の改正には、災害対策基本法等に準じてこれらの規定が盛り込まれたと考えて差し支えないのでしょうか。
中谷国務大臣 災害と戦争による被害というのは状況や概念も違う面がございますが、受けた被害に対して国民を守るという点では一致しているわけでございます。
 この点につきまして、百三条の罰則につきましては、まず取扱物資保管命令につきましては、物資を隠匿したり、毀棄したり、または搬出した場合、そして立入検査を拒み、妨げるなどの行為をした場合について罰則規定を整備することといたしておるわけでございますが、こういったものは、通常の犯罪と同様に、警察機関等による捜査や検察官による公訴などがされるとともに、罰則が科されるか否かは、最終的に裁判所による司法判断によるものでございます。
 この点につきましては、やはり人々を助けるという観点で、それに対する行為に対してわざと妨害をしたり、悪質に物を隠したり、そういうものについてのみでございます。
東門委員 全然私の聞いていることとは違うんですね、答えが。これは、もう時間の都合でこの次にまたさせていただきます。
 次に移りますが、国または地方自治体が物資の保管命令、業務従事命令、立入検査等を民間人に命令できるようになっているわけですが、ここで言う国の中に現場の自衛官は含まれますか。
中谷国務大臣 基本的には都道府県知事さんがされるわけでございますが、どうしてもやむを得ない場合におきましては、長官並びに政令で定める者となっておりまして、その場合にも、非常に見識を持って間違いがないような幹部クラスにとどめたいと考えております。
東門委員 ということは、現場の自衛官にはそういう役割はできないということですか。そういうことですね。
中谷国務大臣 非常に位の高い者でありまして、現場で直接号令をかけたりする者ではないということでございます。
東門委員 罰則規定が設けられていますが、違反したか否かを判断するのは現場の自衛官ですか。それも聞かせてください。
中谷国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたけれども、この立入検査等につきまして、罰則規定に該当する行為が行われたと認められる場合には、通常の犯罪と同様に警察機関等による捜査、検察官による公訴などが行われるとともに、罰則が科せられるか否かは最終的には裁判所による司法判断によるものでございます。
東門委員 そうしたら、違反をしたというそのことを認定して罰則を科すまでのプロセスはどうなっています。
中谷国務大臣 通常の司法手続と同じでございます。
東門委員 内閣総理大臣は、地方公共団体あるいは指定公共機関等に対し、所要の措置を講じるよう指示できると定めて、所要の措置が実施されないときは内閣総理大臣みずから対処措置を実施できることになっていますが、その対処措置について内容が明らかになっていないわけです。罰則がなくとも、中央と地方の上下関係に照らせば、地方が協力を拒むことは事実上できません。
 そういう意味で、この法案は地方自治の根源的否定につながりかねないものであると考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
福田国務大臣 指定公共機関ですね。(東門委員「両方ですね。地方公共団体、指定公共機関等に対して」と呼ぶ)
 武力攻撃事態において、その業務について必要な対処措置を実施することは、これはその団体に求められているのでありますが、他方、このような事態においては国全体として万全の措置が講じられなければならないということから、別に法律で定めるところによりまして、内閣総理大臣による指示や代執行を求められる、こういうことになっておるわけであります。
 この指示や代執行につきましては、組織として指定公共機関等に対して行われるものでございまして、当該機関の職員個人に対して行われる――これはちょっと間違えました。
 この指示や対処措置の実施については、この法案によって内閣総理大臣に対して包括的に権限が与えられるものではないんです。個々の法律においてその要件等を具体的に定めた上で実施するということになります。
 武力攻撃事態という状況のもとにおきましては、国全体として万全の措置を講ずるということを担保するこういう仕組みが必要でございまして、地方自治等の本旨に反するというふうには考えていないというところでございます。
東門委員 国と地方公共団体が主従の関係のようになると思うんですね。それで、地方自治の根底を揺るがすと私は思うんですが、今官房長官はそうではないとおっしゃったんですが、どのような枠組みで対処措置が実施されるのか。その枠組みを構築するには莫大な予算と労力が必要とされると思いますが、今、どのような枠組みを構築するお考えなのか。そこもお聞かせいただけたらと思います。
福田国務大臣 御指摘の点につきましては、これから国民の保護のための法制というものを考えていくわけでございます。そういう中でもって、避難とか被害とか復旧とかいったような問題について細かく規定をしていかなければいけない。
 そんなことでございますので、そういう問題につきましては、国民的な理解を深めるということをしながら、また国会等の議論も進めていただきたいと思っておるところでございます。
東門委員 最後に一言だけ。
 五月十六日の本委員会で、ある委員が沖縄戦に触れられて、民間人は軍と行動しては絶対にいけない、民間人はいかに軍と別に戦場ではない安全なところへ避難するかを考えれば、あのような犠牲は起こらなくて済んだという趣旨の発言がございました。
 沖縄地上戦の実態及び本質を知らないゆえの発言で、実際は米軍は全くの無血上陸であり、民間人は隠れていた防空ごうや墓、洞窟を軍隊に追い出されて多くの犠牲者を出したのだという歴史的事実を正しく認識してほしいと思います。
 質問を申し上げてまいりましたが、私は、沖縄戦の極限状況を追体験し、戦後の米軍統治下の無憲法、無権利状態の中を生き、基地の島の不条理を見てきた者として、憲法九条の戦争放棄を実践することこそが、前文にある恒久平和を達成する道につながるものであり、人類の永久の悲願につながるものだと確信しています。この地球上に、戦争を放棄し、戦力と交戦権を否認した国日本が存在することこそ、世界の宝であります。人類初の被爆国日本だからこそ、積極的平和主義に徹すべきであります。
 有事法制制定の動きは、戦争体制の具体的準備であり、国民や自治体すべてを国の統制下に置こうとするものであることから、この三法案の撤回を強く求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。


2002/05/20

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