2002/06/05-2

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鳥取公聴会、国民保護の欠落に批判集まる (民主党ニュース)

 5日、鳥取市内で、衆議院武力攻撃事態特別委員会の地方公聴会が開かれた。民主党からは、永田寿康、肥田美代子両委員が出席し、各界から招かれた意見陳述者から、今法案の問題点など様々な意見を聴取した。

 永田議員は、陳述人に対する質疑で「現行法でも対応できることが多くあるにもかかわらず、あえてこのような法案を出してきたのは、自分たちの権限を拡大し、高いおもちゃ(イージス艦等)を使いたいがためのものではないか」と政府・防衛庁を批判。昨今の事件を見ても、運用を任せるられるかは、はなはだ疑問であるとした。さらに、いわゆる有事の際の医療態勢について、鳥取大学名誉教授の小倉道雄陳述人に意見を求めた。小倉陳述人は、「核兵器、生物兵器、化学兵器、などの多種多様な兵器が使われることも想定されるなかで、国民保護の観点が抜けている今法案では対処ができない」という意見を述べた。

 肥田議員は、「この法案は国民もそうであるが、とりわけ子どもを守りきることができない法案」だとし、各陳述者にこの法案をどうするべきと考えるかと意見を求めた。陳述人の答えは、以下のとおり。

片山善博氏(鳥取県知事):徹底的に議論すべき。また、防衛庁など役所の問題は、政治の責任で正さなければならない。
杉原弘一郎氏(印刷会社社長):早急に可決をして、2年以内に不備の点を整備。
小倉道雄氏(鳥取大学名誉教授):多くの問題を解決し、国民のコンセンサスが得られたならば、緊急事態法は必要。
大西龍夫氏(税理士):徹底的に議論をするために、継続審議に。
井上文伸氏(尾道市議会議員):もっと地方の意見を聞いて議論を。
渡辺久丸氏(島根大学名誉教授):憲法上武力行使は許されないので、廃案にすべき。
生田幸広氏(JR総連島根県協議会議長):即刻廃案にすべき。


   派遣委員の鳥取県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月五日(水)
二、場所
   玉姫殿
三、意見を聴取した問題
   安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(内閣提出)、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、安全保障基本法案(東祥三君外一名提出)及び非常事態対処基本法案(東祥三君外一名提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 瓦   力君
         石破  茂君   大野 松茂君
         浜田 靖一君   永田 寿康君
         肥田美代子君   白保 台一君
         樋高  剛君   赤嶺 政賢君
         今川 正美君   宇田川芳雄君
 (2) 意見陳述者
      鳥取県知事        片山 善博君
      鳥取県西部地区日韓親善協会会長
      東京印刷株式会社取締役社長
          杉原弘一郎君
      鳥取大学名誉教授    小倉 道雄君
      税理士           大西 龍夫君
      尾道市議会議員     井上 文伸君
      島根大学名誉教授    渡辺 久丸君
      全日本鉄道労働組合総連
      合会鳥取県協議会議長  生田 幸広君
 (3) その他の出席者
      内閣官房副長官補    大森 敬治君
      内閣官房内閣参事官   稲葉 一雄君
      防衛庁防衛局長     守屋 武昌君
      外務省大臣官房審議官  原田 親仁君
     ――――◇―――――
    午後二時三十二分開議
瓦座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員長の瓦力でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、安全保障基本法案及び非常事態対処基本法案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、各案審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分程度お述べいただきました後、委員から質疑を行うことになっております。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 まず、派遣委員は、自由民主党の石破茂君、大野松茂君、浜田靖一君、民主党・無所属クラブの永田寿康君、肥田美代子君、公明党の白保台一君、自由党の樋高剛君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の今川正美君、無所属の宇田川芳雄君、以上でございます。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。
 鳥取県西部地区日韓親善協会会長・東京印刷株式会社取締役社長杉原弘一郎君、鳥取大学名誉教授小倉道雄君、税理士大西龍夫君、尾道市議会議員井上文伸君、島根大学名誉教授渡辺久丸君、全日本鉄道労働組合総連合会鳥取県協議会議長生田幸広君。
 なお、本日御意見をお述べいただくことになっております鳥取県知事片山善博君は、公務のため、後ほど御出席をいただくことになっております。
 以上七名の方々でございます。
 それでは、杉原弘一郎君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
杉原弘一郎君 本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 しかし、有事関連法案に対しまして大変不勉強でございまして、お恥ずかしい意見になることを初めにお断り申し上げます。私の感じていることを一市民として素直に申し上げたいと思います。
 まず、阪神大震災の際、自衛隊の出動に大変時間がかかり、しかもその際、道路が大渋滞の状況となったわけでありますが、救助活動に向かう自衛隊の車両が迅速に移動するための道交法関係の規定が不備であったため、スムーズに通行ができなかったこととか、神戸沖に米軍の軍艦を入港させ、その船上で治療すれば相当の人が助かったのではないかと聞いております。五千人以上の多くの人々が死亡されましたが、もし、こうした緊急事態に対応するための法制ができていれば、相当数の人が助かったかもしれません。
 世界の中で、憲法等の中に有事の規定のない国は珍しく、あるのが当たり前のことと聞いております。自分の国を愛する気持ち、そして、自分の国は自分の手で守る気概が希薄になってしまっております。自分の国を、そして自分の家族を自分で守る、ごく普通のことですらできない国になってしまっているのではないでしょうか。
 今回、こうして有事のことをお話しさせていただくことができる、あるいは、こうして審議することができるということは、普通のことであり、ごく当たり前のことであると思います。そして、日本もようやく普通の国の仲間入りができるんだと、今回の有事関連法案の成立を心から望んでおります。日本の常識は世界の非常識などと言われないようになりたいものであります。
 私は小さな企業を経営しております。社員が百名ほどおりますが、企業にとっても有事はございます。昭和四十年代、ある日突然、お得意先が倒産をいたしました。当時としては大変な金額のために、不法とは知りながら、夜、社員とともども、その商品を運び出したこともあります。私は、企業を守る上で、その商品の現金化も覚悟した時期もあります。
 このこととは少々話は違いますが、若さのせいでしょうか、企業を愛する気持ちも旺盛でした。これは、国を愛する気持ち、国を守る気概と通じるような気がいたします。今、デフレ不況で、企業も社員も大変な時期であります。私は、企業にとって、社員との間で交わした就業規則がありますが、この時代、お客様の御意向であれば正月でも深夜でも仕事をしよう、そしてお役に立とうと思っています。そうしなければ生きていかれないからであります。これは社員と交わした就業規則に反しますが、会社にとっての有事は、正月でも深夜でも仕事をしなければなりません。その際、社員との間に有事のルールをつくらなければなりません。国の場合は、特に、命にかかわることであります。必ず有事立法はなくてはならないものであると言えます。
 最近、いじめが問題になっておりますが、いじめやすいところがいじめられるということがあります。有事立法により、自分の国は自分で守る態勢を考え、すぐにいじめに対処できれば、いじめにくくなるということも考えられます。
 現在の法律では、相手から攻撃を受けて初めて動くとなれば、最初の攻撃が大きければ、もう私たちは立ち上がることすらできない事態になってしまいます。法律がなければ、その際に、超法規的行動をとらざるを得ないということになりますが、法治国家でそういうことがあってはならないことであります。きちんとした有事立法をつくってこそ、普通の国であると言えます。法律がなければ、有事に際しての行動指針がないために統制がとれず、後悔することになります。これが整備されておれば、有事の際の抑止力にもなると私は思います。そうすれば、自衛隊の行動がどこまでやれるのか明示され、国民を守る上での法整備は、かえって国民の安心感にもつながることになります。
 日本が戦争に負けて、今日まで経済の繁栄を享受してまいりましたが、一方で、国を愛する心、国を守る心が欠落した特殊な国になってしまいました。小泉総理もおっしゃられていますように、備えあれば憂いなし、平和なときにこそ、我が国の平和と独立、国民の生命財産を守るため、国民一人一人が真剣に考えなければならないのではないでしょうか。
 今回政府が提出している法案には、国民の保護に関する法制が何も定められていない等の批判がされておりますが、全体が明らかにならなければ何も決められないということはないと思います。今回の法案は、有事における対応の基本的な考え方、全体の設計図をつくり、今後二年以内を目標に、国民全体で、自分で自分の国を守るためにはどうしていかなければいけないのか、真剣に議論をするための土台をつくるものであり、大変に意味のあることだと思います。
 ぜひとも、今回の有事関連法案の速やかな成立をお願いしたいと考えていますが、最後に、今後、国民の保護のための法制など個別の法整備に当たっては、国民に対して十分な情報提供を行い、国民一人一人がみずから国を守るという意識を持って、積極的に議論に参加できるように配慮しながら作業を進めていただきたいものと考えております。そして、一日も早く有事関連法案成立のための第一歩をしるしていただきますよう一市民として心からお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、小倉道雄君にお願いいたします。
小倉道雄君 本日は、本委員会の御要請によりまして、いわゆる有事法案についての意見を開陳いたします。
 私は、昭和時代の初期に生まれまして、日本帝国主義の最盛期に教育を受けましたが、日本国民を悲惨のどん底に陥れ、全国土を焼け野原としてついに壊滅した、かの軍閥の末路も目の当たりにしてまいりました。その後は、新生日本の平和憲法の大切さを身にしみて感じながら、これまで暮らしてまいりました。
 このように、我が国は、二十世紀の前半は戦争に明け暮れしましたが、後半は焦土から立ち上がりまして、敗戦時のどん底経済からの復興、再建をなし遂げてきたのであります。しかしながら、さきの大戦後の処理はいまだに完結していないのが実情だと思います。例えば、沖縄の米軍基地の問題、また、たびたび問題になります靖国神社の問題、さらには従軍慰安婦の問題、またロシアとの平和条約の締結の問題など、半世紀を経た現在、まだ尾を引きずっているのが実情でございます。
 このような時点において、仮想敵国を想定したような有事法案につきましては、その根拠が薄いと考えます。例えば、これまで政府から提出されております周辺事態法や自衛隊による米軍の後方支援などの動きには、さきの太平洋戦争の体験からすると、いささかながら危険なものを感じるわけでございます。
 私の居住地である米子市及びその周辺地域には、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上保安庁、さらにレーダー基地といった施設が集積しておりまして、軍事的には特異な拠点であると考えられます。したがって、それだけ余計に、平和に対して私たちが考えなければならないこと、そして、今何が起きているのか知っておく必要があると強く感じておる次第です。
 私は、個人的には、職業として長らく医育機関におきまして医学教育に携わってまいりましたが、その中で、命の重さがはがき一枚に例えられた時代の体験から、命の尊厳について深く考える機会も多くありました。このことは、いわゆる緊急事態とも深いかかわりを持っております。
 以上のことを踏まえまして、今回の有事法案について、幾つかの問題点を中心にして、以下に意見を述べたいと思います。
 まず第一に、国等の究極の役割は、国民、住民の生命、身体、財産を保護することにあると考えます。したがって、緊急事態法制の整備におきましては、それらに対する被害の防止、軽減や被害者の保護などといった、国民生活の保護を直接の目的とした事項を優先して進められるべきでありまして、これが法制定の必要かつ十分条件であると考えます。
 ところが、今回の有事法制案では、国民の保護法制の部分が先送りされております。しかも、それは、将来整備される保証はどこにもありません。国民の立場からすれば、これはとんでもないことでありまして、この部分があわせて提案されていないことには議論のしようがないと思います。
 第二に、このたび有事法制が提案された背景としては、昨年の米国でのテロ事件や日本近海での不審船事件があったかもしれません。しかし、今回提出された法案は、冷戦時代に想定されたような大規模な武力侵攻に対処する仕組みになっております。テロや不審船にきちんと対処できる仕組みを整備するのは理解できますが、その点が欠落しているのなら、何のために今ここで急いで論議するのか、理解に苦しむところであります。
 もし、現在、我が国が何らかの武力侵攻を受ける脅威にさらされているという現実があるのなら、その情報を国民に伝えて、有事法制への理解を得るように努力しなければならないと思います。国民は現在、何らそのような情報を知らされておりません。そのことがない以上、有事法制についての論議への入り口がありません。
 第三に、法案によれば、日本への武力攻撃事態について、「発生した事態」「おそれのある場合」「予測されるに至った事態」の三つに分けられておりますが、「予測されるに至った事態」は、周辺事態と重なる可能性があります。つまり、日本周辺での米国と他国との緊張が、直ちに日本の有事として拡大してとらえられる可能性があると思います。
 このように、武力攻撃事態の概念があいまいであるということは問題であると思います。各事態の定義が明確でなければ、到底、法律として役割を果たし得ないのではないでしょうか。武力侵攻の脅威について、いたずらに幻におびえているということになり、国民に対する説得力はありません。
 第四番目に、法案によりますと、武力攻撃事態への対処基本方針では、総理大臣が国会に承認を求めることになっております。これは、シビリアンコントロールの原則からすれば当然のことであります。ところが、事態の終了に関しましては、国会が関与する仕組みがありません。このことは大きな問題であると考えます。
 つまり、だれが見ても既に事態は終息していると考えられる時点においても、総理大臣の一存でいつまでもその事態の処理が終了していないこととしておけるわけであります。この法案の裏にどのような意図が隠されているか、全く理解できません。
 五番目に、有事法制は憲法上、疑義があるのではないかという指摘が国民の中に多数存在することは事実であります。憲法上にはそのよって立つべき明確な根拠がないので、それは当然であると思います。こうした国の根幹にかかわる重要な課題は、時間をかけて国民にわかりやすい形で審議するのが民主主義におけるあるべき姿だと考えます。
 政府・与党は、一たん単独で公聴会を設定し、評判が悪いと見るやこれを撤回されましたが、本来なら、十分な時間をかけて世論に問い、すべての疑問が解消され、国民の理解が得られるまで徹底的に審議すべき問題であると思います。この点について見ても、このたびの法案審議には疑義を抱かざるを得ないわけであります。
 以上、幾つかの点について指摘してまいりましたが、今回の有事法案にはさまざまな問題が多いので、私は、全面的に反対の意向を表明いたします。自衛隊の超法規的行動を規制するのであれば、一たん法案を撤回され、指摘した点を踏まえて、国民の合意を得ながら、もう一度練り直していただきたいと思います。
 平和こそ、世界各国が外交交渉や外交努力によって守っていくべき人類の貴重な究極の価値であると思います。今日の政府、外務省の現状を見るとき、この視点が最も欠落しているように思います。
 ついでながら、さきに福田官房長官が、我が国が国是としておる非核三原則の見直しに言及され、その政治感覚には耳を疑ったわけであります。
 私は、個人的にも、広島で原爆による惨状を身をもってつぶさに体験し、これこそ人類を破滅に導く凶器であると信じております。世界で唯一の原爆被害国として、予防外交の推進役として各国の先頭に立つことこそ、二十一世紀における我が国の進むべき道であると確信いたします。
 さらにまた、防衛庁では、法にのっとり情報公開を求めた国民についてのブラックリストが作成され、広く流布していた事実が発覚しております。歴史は繰り返し、またも、かつてやってきた道を歩むのかという思いがあります。
 以上でございます。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、大西龍夫君にお願いいたします。
大西龍夫君 税理士をやっております大西でございます。
 私は、御承知のとおり、多くのタックスペイヤーの方々と接しながら、税金はしっかりとお支払いくださいということをいつもお伝えしております。その反面、やはりどのようにその税金が使われていくのかということが大きな問題でございます。新しい法案ができまして、その法案に伴い、また多くの支出がなされる場合においては、その支出が本当に有意義なものであるかどうかということは非常に大きな問題と考えております。
 まず最初に、私の基本的なスタンスを述べさせていただきます。
 皆さん、もちろん、この全世界が平和で共存できれば、すばらしい世界でございます。これには深い愛情と理性が必要でございます。しかし、人間が、この非常にわがままな生き物がそこに到達するためには、まだ当分時間がかかるのではないかと考えております。私の好きな一節で、正義の戦争より不正義の平和という言葉がございますけれども、非常に情緒的で感傷的な言葉であるなと、一方では感じております。
 世界の争い事をなくしていくための第一歩としましては、貧困と差別を排除することでございます。しかし現在、この貧困と差別を排除していくことすら、どれだけの年数がかかるのか、はかり知れない状態でございます。三十年なのか五十年なのか百年なのか、全くまだ予想もつきません。その間、一定期間においては、いろいろな手法を使って、その時期その時期に対応しながら生きていかざるを得ないという状況もございます。
 もちろん、理想的な国家モデルとして、非武装中立を掲げて国家としてのモデルをつくっていくというものもございますけれども、現在、私が感じる中では、日本国国民自体もそのパワーを十分には持ち得ないし、また、行政能力もそれほどの能力を持っていないと感じております。
 残念ですが、仮に我が国がそのような理想国家を旗印といたしましても、過去の実績等々を見ますと、他国から非常にそのことを称賛され、敬意の念で見ていただけるようには感じておりません。それは、過去の実績の積み重ねの中でそのような国づくりをすれば、やはり他の国々の方々もそのように見ていただけましょうけれども、御承知のとおり、約百数十年間の間に、我が国はいろいろなことをやってまいりました。その積み重ねは必ず、他国の方の記憶の中に残っております。その中で非常にきれいな形で言葉を発したところで、実際にその形をつくったところで、信じていただけるかどうかはよくわかりません。
 また、私なりの憲法九条の解釈でございますけれども、簡単に言えば、侵略戦争はいたしません、国際紛争には武力を用いません、また、世界大戦のような大戦には参戦いたしませんということでございます。
 ただ、この憲法の制定時、私どもの国は焼け野原でございました。GHQが入ってまいりまして、彼らは、言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、非常にしつけのよい、ペット的な理想的な国をつくろうというふうな考え方をしたのではなかろうかと思っています。憲法自体、非常に理想的な憲法でございます。ただ、これは、しつけのよい中で成立するものであろうと考えております。
 もちろん現在、私ども、日米安保条約がございます。私なりのこの解釈というのは、日米安保条約に関しては、非常に腕のいい用心棒を雇っているという感覚でございます。いわゆる基地のスペースを提供し、相当の金銭的支払いも行っておる、また、地域住民への理不尽な行為も相当我慢しながら、地位協定というわけのわからぬ協定を無理やりのみ込んでおります。食事と寝床をつけて、我々の税金から相当の用心棒料を払っておるなというふうな形で考えております。もちろん、いろいろなわがままも聞きながら、かつ、人的な犠牲もその中にございます。
 私は、このアメリカ軍と、例えば我が国が共同作戦を展開するなどとは一切考えたくございません。ただ、仮に全世界が認めるような国連軍があるのであれば、それは一つの形として、考えの中に入ってくるのではないかと思っております。ただし、いろいろなペイをしているから国の守りはすべて他国任せでよいんじゃないかというのでは、一個の独立した国として、なかなか認知されないのではないかと考えております。
 ここで、具体的に、今回の武力攻撃事態法等の件でお話をさせていただきます。
 先ほどもお話がございましたように、「武力攻撃」「武力攻撃のおそれ」「武力攻撃が予測されるに至った事態」と、非常にわかりにくい言葉、三つの表現がございます。
 この中で一つ大きな問題は、私どもの国家の能力としまして、情報収集力、その情報の分析力、また現状認識の過程で判断力がしっかりとあるかないかということでございます。さきの大戦におきましても、我が国はこの幾つかの要素を非常に甘く考え、奈落の底へ落ちていったわけでございます。
 今回、中谷防衛庁長官の委員会答弁からの一部抜粋でお話をさせていただきます。
 「その時々の国際情勢」という表現を長官はされております。非常に難しいことでございます。先ほども申しましたように、その時々の国際情勢を的確につかむためには非常にいろいろな、機器、設備、人材、経験、資金、ネットワークというものが必要でございます。この各要素で私どもの日本国が十分に足りているとは考えておりません。
 例えば、今現在私どもの国内にございます地上レーダーは、ほぼ陳腐化しておるはずです。ステルスの偵察機、そのような立派な偵察機も持っておりません。偵察衛星もございません。情報収集の専門家もおりません。実績のある国際情勢分析機関というものも我が国にはございません。また、各国大使館勤務の外務省の方々でございますけれども、先般もございましたように、このような事態を想定しながら各地区において活動されておるとは考えられません。すべてないない尽くしでございます。このような中で、的確な判断ができ得るかということが大きな問題だと考えております。先ほどの三つの表現がございましたけれども、それぞれの表現の中でこのすべてのものがそろっていかないと、適切な判断ができるわけがございません。
 またこの後に、中谷長官は、「相手国の明示された意図」という言葉をお使いになっています。戦国時代の武将ではございませんので、名乗りを上げて、意趣を懇々と述べて戦いに挑むなどということはございません。私の父もさきの大戦で、十六年の十二月にはフィリピンの沖の洋上におったそうでございます、その時点で。開戦時にはコレヒドールへ向かっていたそうでございまして、いきなり来るものであるということでございます。
 また、その御答弁の中で次に、いろいろとその状況の中で「一概に申し上げるのは困難」というお言葉をお使いでございます。この困難というのが、非常に事例が多過ぎて、一々、その一例一例を挙げていくのが困難であるとおっしゃったのか。これならばまだよろしゅうございますけれども、具体的にいろいろな例を想定する知識、経験、情報が不足していてその想定ができないという意味であれば、これは大問題でございます。
 例えば、リスクヘッジをしていく場合におきまして、そのリスクの想定が幾つできるかで、そのリスクヘッジの効果が決まってまいります。リスクの想定の時点でほぼ七〇%から八〇%は成功に至っております。あとは、そのリスクをヘッジする方法を考えていけばよろしい。いかに幾つのものを想定していくかでございます。このようなことを考えますと、今の法の中で、この法が完全に機能していくのであろうかということが、何度も申し上げますけれども、一番心配事でございます。
 また、一つはテロと戦争というお話でございましたけれども、ここに「被害としては四千人以上」と、これは昨年のアメリカの同時多発テロの件でおっしゃっております。しかし、これは、数が問題でございましょうか。例えばテロを行っているイスラム教徒の聖戦士たちは、テロ行為を聖戦などと呼んでおります。彼らにとっては戦争という概念なのでございましょう。また、私が考えますには、パレスチナの人々は毎日戦争をしておるのではないかと思います。
 我が国でも北朝鮮の拉致疑惑がございますけれども、二、三十人程度の拉致疑惑など問題ではないと言い放たれた方もいらっしゃるとか聞き及んでおります。しかし、国家は、国民の生命財産を可能な限り守る義務がございます。たとえそれが一人の場合でもであります。それが国のプライドというものと考えます。国家が義務を果たすための費用を国民は税金として応能負担しております。私は税理士として、子供を拉致されたであろう御両親に税金を負担せよなどととんでもなく、よう言いません。
 またこの中で、いわゆる事態、おそれがある事態等の場合においては「国会の承認に係る」ということがございます。これまた今現在、与党内におかれても、この法案に対し、知識、認識、データ、情報、価値観等で全く共通の土俵に皆さんがいらっしゃるとは私は考えておりません。この中でもし審議された場合は、その審議の結果はいかなるものになるかと想像しますと大変なことでございます。実際に不可能な承認行為を前提に武力攻撃を限定するというのは非常に矛盾しておるのではないかと考えております。
 また、いわゆるテロ行為等につきましても、なかなかいろいろと、現在検討中でございますというお話がございますけれども、これは日本国におきましても、過去におきましては日本赤軍という立派な、大きな集団のテロ組織がございました。これについてもケーススタディー、シミュレーション等を全くおやりになっていないんでしょうか。非常に、学習効果がないのであろうかというふうな疑問を持ってしまいます。
 以上のようなことを考えまして、私は、最終的に、法案につきましては極端な選択肢をしております。もちろん、ここにいらっしゃる方で戦地に赴く方は、まずほとんどいらっしゃいません。ただ、私の息子の戦死通知が私の手元に来るのと、私の娘が辱められ殺される場合と二つを想定した場合に、あえて選ぶなら、息子の戦死通知を選んだだけのことでございます。ただそれだけでございます。
 以上でございます。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、井上文伸君にお願いいたします。
井上文伸君 紹介されました井上でございます。
 私は、広島県の尾道市で市議会議員をいたしておるわけでございますが、きょう、こうして有事法制の問題につきましていろいろと意見を述べさせていただく機会を与えていただいたことを感謝いたしております。
 国の自衛権を認めれば、当然、有事法制の整備に至らなくては、首尾一貫した防衛体制はとれなくなってくる。憲法解釈上、我が国が自衛権を持てるという以上、その具体的な行使のために、有事に伴う法整備が必要になるのは論理的必然的な問題だろうと思います。
 現に自衛隊法は、第三条、直接・間接侵略への対処、第七十六条が防衛出動、第九十五条が武器の使用、第百三条が防衛出動時の物資の収用を規定し、有事法制としての性格を持っております。自衛隊はいいが、有事法制は認めないというのは矛盾をいたしているのではないかと私は思うわけでございます。
 それでは、有事法制は必要であるかどうかという問題でございますが、私は、有事法制を整備しておかないと、有事の際、自衛隊が超法規的行動をしてひとり歩きをするおそれがある、あるいは、いざというときに慌てて緊急立法し、国会の審議がおろそかになる可能性があるなど、いずれにいたしましても、結果的には、法に基づいて自衛隊を運用することを放棄し、シビリアンコントロールを空洞化することになるのではないかという心配があるわけでございます。
 次に、安全保障の原則確立の重要性でございますが、有事法制が現在まで整備されなかったのは、戦後、我が国の平和と安全について、国会での不毛の議論の結果ではないかと思っております。自民党、社会党両党が国会で多数を占めたいわゆる五五年体制を通じて、戦争か平和か、自衛隊が合憲か違憲かといった議論が毎日のように繰り返されて、我が国の安全をどのように確保していくか、そのために自衛隊はどのように行動するのかという大事な議論が置き去りになったのが大きな原因になったのではないかと思います。
 我が国の安全保障の原則、自衛隊の行動の原則といったものが明確にされてなかったために、湾岸戦争の多国籍軍への参加についても、PKOへの参加協力につきましても、昨年の米国テロ事件の際の自衛隊派遣につきましても、日本がどのように行動すべきかという基準のないまま、その場しのぎの対応を繰り返しているのが現状ではないかと思います。我が国唯一の実力組織であります自衛隊の行動の原則が明らかでない有事法制に先立って、まず、これを明確にすべきではないかと思います。
 我が国の場合は、過去の戦争経験や国民感情を考えた場合、自衛権の行使はあくまで抑制的に行うべきであり、米国のように、世界の警察官のごとく集団的自衛権を行使するという行動はもちろんとるべきではございません。これは憲法上、許されないことでもございます。現在示されている政府案には、自衛隊を、どういう場合にどのような活動をさせるか明確な方針がないため、なし崩し的に拡大していく危険性が十分あるのではないかと心配をいたしております。
 いずれにいたしましても、いざというときに国民の生命と財産を守ることのできる法制の整備が必要であるが、法律さえ整備すればよいというものではございません。今日我が国の置かれている国際環境、起こり得る事態を想定して、真に有効な体制を整備することが必要であろうかと思います。
 しかしながら、国民保護に関する目配りが後回しにされており、先日の新聞報道でも、国民の生命財産の保護などの法整備は二年以内とは遅過ぎると苦言を言っておられた方もございましたが、まさにそのとおりだと思います。
 有事関連三法案をめぐり、地方議会などでも賛否の議論が熱を帯びております。首相が地方公共団体の長に指示できる権限や、対処措置が行われない場合の代執行権が盛り込まれ、法案に、いわば国への白紙委任、自治の破壊ではと危ぶむ声も多く、六月の議会でも議論が各都市で行われるのではないかと思います。
 私も広島県人であり、このたびの福田官房長官の非核三原則の見直し発言、また、核兵器を保有できる、この発言は被爆県人として許すことのできない発言であります。今この時期に官房長官、官房副長官の相次いでの発言は、何か考えがあって意識的な発言としか思えません。もしこれが何の意図もなく発言されたとしたら、余りにも無責任過ぎる発言であると思います。非核三原則は、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずとする日本の基本政策であります。
 以上のことから、有事関連三法案に対してお願いしておきたいことは、国会審議だけでなく広く地方の声、特に自治体の意見をよく聞いていただきたい。さきにも述べたように、地方公共団体の長に指示できる権限を持つことや、対処措置が行われない場合の首相の代執行権が盛り込まれているのであります。新聞報道されておりますように、全国四十七都道府県の知事に行っているアンケートが、地方の声を聞く必要性を明確に物語っているからであります。大半の知事が法整備の必要性は認めているものの、三法案の賛否では「どちらとも言えない」が多数を占めております。有事の定義や、国と自治体の役割分担が不明確なことに対する戸惑いがあろうかと思います。
 有事法制とは、結局、自衛権と自衛力の保持及び緊急事態における国家の権限、国民の義務が憲法に規定されていないという制約の中で有事に関する国家の枠組みを整備しようとしているものであって、法整備の道のりは非常に長いものではないかと思います。そのことを十分に念頭に入れて、国家のあり方を模索していただきたいと思います。
 最後に、せっかくの場でございますので、国会議員の先生方もたくさんおられますので、一言お願いを申し上げておきたいと思います。
 最近の、政治家の行動による国会運営の混乱、また官僚の問題等、余りにも国民にはかけ離れた政治が現在なされております。そのため日本の社会も混乱しており、それがすべてとは言わないまでも、政治家の責任は極めて重いものがあろうかと私は思います。いま一度初心に返っていただき、国家国民のために生命をかけた政治活動をしていただきますようお願いをいたしまして、私の陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、渡辺久丸君にお願いいたします。
渡辺久丸君 渡辺です。
 私は、いわゆる有事三法案、とりわけ武力攻撃事態法案(以下「法案」)について、日本国憲法との関連で意見を述べるものです。
 まず、結論を先に一言すれば、法案は、明白かつ全面的に憲法に違反するということです。
 第一に、だれしも抱く素朴な疑問ですが、有事立法制定の根拠は、一体、憲法のうちに存在するのかどうかです。
 戦前の憲法には、天皇の非常大権、兵役の義務など戦争にかかわる一連の諸規定が存在したから、それらは、有事立法の典型である国家総動員法などの制定の根拠になり得たのです。しかし、戦後の憲法は、平和主義原理などとのかかわりで、戦前の一切の軍事立法、弾圧立法の廃止の上に成立したものです。もちろん、憲法のこの原理は戦争、戦力を全面否認するから、過去の有事立法のみならず、現在と将来のものも否定する立場です。
 だとすれば、戦争に備える今次法案は、憲法に根拠を持ち、これを具体化する合憲的な法律として成立する余地は、憲法論としてはおよそあり得ません。非戦・平和憲法のもとでは、有事立法は超憲法的かつ違憲なものにならざるを得ないでしょう。
 第二に、法案第二条等は、憲法第九条に違反し、日本の領域外で専守防衛の枠を超えて、違憲の集団的自衛権の行使に踏み込む可能性を持つということです。
 そもそも、武力攻撃事態が何かは法案において明確ではなく、政府答弁によれば周辺事態と重なる部分があるのだから、その限りで、後方地域で米軍を支援している自衛隊は米軍と共同作戦をとらざるを得ないのではないか。同じ自衛隊が、周辺事態法では逃げ、武力攻撃事態法では武力を行使するということはあり得ないからです。アーミテージ米副国務長官らが、周辺事態法の制定直後に、それをさらに超えて、集団的自衛権の行使や新有事立法の制定を要請していたねらいもそこにあるのではないか。日本の領土が攻撃されることが想定されていない以上、法案は結局、対米軍事支援法という性格を帯びざるを得ないのではないか。
 第三は、法案第三条が、武力攻撃が予測される段階から、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」一般を包括的に制限するのを当然視している点にかかわるものです。
 その制約の理由は、「武力攻撃事態に対処するため」です。しかし、第九条はそもそも戦争、軍事力一般を禁止し、軍事的公共性なるものを否定しているから、この人権制限の理由は成り立たないはずです。また、制限は必要最小限にとしていますが、これを第三者ではなく執行当事者が判断するのだから、何ら歯どめにならず、事実上、無制限になるでしょう。
 人権相互間の矛盾、衝突を調整するために、公共の福祉の名で人権を法律で制限せざるを得ない場合でも、人権の永久不可侵性原則から極めて慎重な取り扱いが求められます。戦前の憲法が規定していた臣民の人権は、治安維持法、国家総動員法など法律の範囲内においての存在でしたが、戦後の憲法においては、人権保障は軍事治安立法による制約を受けず、戦前と同質のものではあり得ず、法律による制限を軽々に容認することはできません。
 第四に、法案が、「国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。」と規定し、国民に戦争協力義務を課している点でも、憲法上、大いに問題があります。
 この義務に違反しても罰則を科せられるわけではありませんから、法的には拘束力がないかもしれません。しかし、この規定を単純に過小評価はできません。戦争協力を法的義務にすることによって、やがては、戦争協力をする者は正しく、非協力的な者はけしからぬ非国民として扱われかねないからです。
 こうした点で、自衛隊法改正案第百二十五条が既に、自衛隊用物資の保管命令に違反した者に対して六カ月の懲役、罰則を科し、協力を強制しているのは極めて重大です。本来、絶対無制限たるべき思想、良心の自由に基づいて戦争協力を拒否し、物資保管命令に従わないのは、そもそも、憲法が戦争、軍事力を全面的に否定している以上、正当な合憲的行為にほかなりません。防衛庁長官の答弁のように、これを犯罪視し、戦争非協力者の思想、良心の自由を処罰したり、防衛庁ぐるみで思想調査をしたりするのは、法律による憲法破壊、停止というほかはなく、言語道断です。
 ちなみに、徴兵制を認めている国でさえも、例えばドイツの憲法では「何人も、その良心に反して、戦争の役務を強制されてはならない。」(第四条第三項)と規定して、いわゆる良心的兵役拒否を基本権として容認しています。こうしたグローバルスタンダードに照らしてみても、思想、良心という内心の自由を処罰するこの法案は極めて異常です。
 第五に、法案は、現行憲法の定める国会中心の統治機構を改悪して、軍事行政中心の戦争指導国家体制づくりを目指しているということです。
 一つは、議会との関係で見れば、総理大臣は戦争計画を閣議で決定した後で事後的に国会の承認を求めることになっているから、防衛出動の場合と違って、国会は最高機関として事前にコントロールすることはできません。
 もう一つ、地方公共団体との関係では、法案が総理に、地方公共団体の長等に対し戦争計画を実施すべきことを指示する権限や、場合によっては直接執行する独裁的権限等を与えている問題です。武力攻撃事態においては、首相は、この独裁的権限によって自治体を中央に従属させ、戦争協力機関化し、いわゆる非核神戸方式などは認めず、地方自治、否、憲法そのものを一時的に停止することができます。
 以上の簡単な分析で、平和主義、人権及び統治機構の全分野において、法案は憲法の諸原則をじゅうりんするものであって、その違憲性は既に明瞭になったと思いますが、最後に一点だけつけ加えたいことがあります。
 憲法は、前文で、「日本国民は、」「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と不戦の決意をした上で、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」しています。これは、日本政府に対して、日本国民が被害者にも加害者にもならないためにも、全世界の国民に対して平和的生存権を非軍事的方法で積極的に実現するよう責務を課しているということではないでしょうか。
 今日の核時代においては、平和に備えるのには、もはや軍事力、したがって戦争に備える有事立法は有効ではなく、むしろ周辺諸国に不安を与え、軍拡競争を引き起こし、かえって、みずから有事を招くだけです。非戦、非核、非同盟、中立の平和外交の推進によって平和に備えることこそ、憲法の求める道であり、第九条の具体化です。法案がこれに逆行する点でも、廃案にすることが至当と考えるものです。
 以上です。
瓦座長 ありがとうございました。
 次に、生田幸広君にお願いいたします。
生田幸広君 まず、意見陳述に入る前に、派遣委員の皆さんに、三枚物の新聞の切り抜きのコピーを用意しております。これは私が四月から五月、約二カ月なんですけれども、いろいろな新聞の切り抜きを自分で張ってつくったその中の一部資料ですので、写りが悪いかもしれませんけれども、御容赦願いたいと思います。
 私は、現在、JR西日本米子支社の鳥取鉄道部に勤務し、JR西日本労働組合と貨物労組で構成するJR総連鳥取県協議会の議長をしております生田といいます。
 私は有識者でも学者でもありませんが、いざ有事となれば、真っ先に引っ張られるのは労働者です。そういう一労働者という立場から、素直な意見を述べたいと思います。
 まず、現在特別委員会で審議されている有事関連法案は憲法違反であると明確に申し上げます。
 日本国憲法のどこを見ればこんな法案を出すことができるのか、そのあたりのことが、テロ、不審船問題に乗じてあいまいにされ、法案提出そして審議開始となっています。これは、民主主義の根幹である憲法が侵されているという異常事態と言わざるを得ません。
 これまで政府・与党は、憲法を拡大解釈してPKO、PKF法案を決め、そして三年前には周辺事態法などの法案を強行的に成立させましたが、今回の法案は、戦争を名実ともに行うことができる仕上げの法律と言えます。しかし、本法案は明らかに、戦争放棄をうたう憲法前文や九条を真っ向から否定するものと言わざるを得ません。それをあえて、憲法違反してまで何が何でも成立させようとする小泉内閣、こんな憲政の根幹を否定する小泉内閣のやり方を許すわけにはいきません。
 今法案について、国民はどのように受けとめているのでしょうか。
 昨年の九・一一テロ、日本近海における不審船銃撃事件は大きな衝撃を与えました。JR総連は、反テロ、反報復の立場で、アフガニスタン難民支援を初めとする取り組みを行っています。国民の意識は、テロは怖い、日本はそんなことがないように空港など万全なチェック体制をしてほしい、海上保安庁も、もっとしっかり沿岸警備をしてほしい、それが多数ではないのですか。
 国民の側から、諸外国からの攻撃がありそうだから、対応できる法律をつくれと言いましたか。そうじゃないでしょう。国民へ、テロへの恐怖心をあおって、知らぬ間に、戦争ができる国との内容をすりかえた法案になっていることを見逃すことはできません。
 しかし、国民はよく見ています。新聞の投稿欄を見ても、有事は戦時のごまかしだ、有事体制は国民一人一人の権利をなくす、かつての国家総動員法を思い浮かべ身震いがする、日本が五十数年、戦争の被害者にも加害者にもならなかったのは憲法九条のおかげだ等の声が多数上がっています。また、野党はもとより、労働組合、民主団体などからも反対の行動が全国的に広がり、五月二十日には大阪で、陸海空の交通労働者がナショナルセンターの枠を超えて数千人が集まり、有事法制反対関西大集会も開催されました。
 さて、鳥取県民はどう受けとめているのでしょうか。
 県は、環日本海交流を積極的に進めており、悪の枢軸と名指しされている北朝鮮との友好関係も強めていますし、私どもJR総連の加盟する連合も、中国との交流を深めています。こうした人間の交流を積み重ねていくことこそ、軍隊の備えより大切なことではないでしょうか。このことが平和憲法の精神と合致していると考えます。
 また、鳥取県西部には航空自衛隊美保基地や、二十四時間体制で電波傍受をし、北朝鮮や中国を監視している象のおりという通信所があります。そして、その目と鼻の先には島根原発もあります。その意味では、仮に有事を想定するなら、原発が襲われる可能性が高いと専門家は言っています。原発が襲われたときを考えただけでも恐ろしいことです。そんなことにほおかむりし、備えあれば憂いなしで国民をあおることは、とても危険だと言わざるを得ません。
 今法案のねらいは何か。アメリカの戦争体制の片棒を担ぐものだと思います。他国からの侵略や武力的な攻撃を想定したものではないと思います。
 防衛庁の元官房長に、竹岡勝美さんという方がおられます。過日、お話も聞きましたし、先日も毎日新聞に記事が掲載されていました。元防衛庁の竹岡さんがおっしゃっているエキス部分は、今日、他国が日本に上陸して攻めてくるなどというのは妄想である、あの冷戦下でもなかったのであると。
 また、一橋大学の渡辺治教授は、主張を新聞に載せられています。その要旨は、今法案のねらいは、アメリカの戦争の後方支援を円滑にするための色合いが強いと言われています。アメリカは、北朝鮮、イラン、イラクのことを悪の枢軸と名指ししています。特にイラクに対しては、言うことを全く聞かないということで緊張は増してきていますが、渡辺教授いわく、仮にアメリカがイラク攻撃をすると、自衛隊の参戦もさることながら、日本の民間企業の修理、補給、調達能力が必要とされていると指摘されています。
 私には、従わない者は力ずくでたたくというアメリカの一国支配戦略、傲慢なやり方に、日本はただただ追従しているようにしか映りません。もしこのまま法案を通したら、靖国参拝問題も絡め、近隣のアジア諸国への緊張感をさらに高め、これまでの友好的な取り組みが水泡に帰す、そういう危惧があります。別に、私は反米をあおっているのではありません。いけないことはいけない、もっと話し合えと、同盟国なら、なぜ日本政府は言えないんですか。北朝鮮の拉致問題や、先般の中国瀋陽総領事館への亡命事件にしても、やはり日本はかつての植民地支配の反省に立って、外交的な努力をすべきです。
 最後に訴えたいことは、この法案提出に賛成された国会議員は、どんな気持ちで賛成されたかということです。
 昨年十一月に、呉港から海上自衛隊補給艦「とわだ」が、戦争地域に入るインド洋沖に、戦後初めて出動しました。私は、出港反対の立場で現地に行ったわけです。後で見送りの御家族の様子をニュースで見ましたが、奥さんや御家族が涙を流して、一生懸命手を振っていました。
 私は労働組合の者であり、自衛隊員の方とは組織は違います。しかし有事となれば、基本的に兵隊にとられる立場ですから、この御家族の気持ちはわかります。しかし、小泉首相初め法案推進派の人に、この戦地に駆り出される者の気持ちがわかるとは思えません。なぜなら、政治家や官僚は行かないからです。自分たちは安全なところにいて、国民へは戦争に行ってくれ、協力してくれなんて、こんな道理を認めることはできません。
 今法案をめぐっては、自民党内でも御高齢の議員から慎重論が出ていることは御存じのとおりです。戦時というものを肌身で実感されているからだ、そう思っています。しかし、二世、三世議員の方からはこのような意見が出ないばかりか、積極的に進められている。福田官房長官の非核三原則見直し発言に至っては、まさに本音が出たのではないですか。次は徴兵制度が準備されているんではないですか。これらの危険な動きは、現在審議中のメディア規制三法と歩調を合わせていると言わざるを得ません。
 多くの国民は争い事や戦争は望んでいない、殺すのも殺されるのも嫌なんです。戦後五十数年、だれが何と言おうと、日本が戦争当事国にならず、巻き込まれなかったのは、平和憲法九条のおかげだと私は思っています。その憲法を否定する今有事関連法案審議の即時中断、廃案を求めるものです。
 以上、終わります。
瓦座長 ありがとうございました。
 片山知事に御出席をいただいておりますので、御紹介させていただきます。
 鳥取県知事片山善博君です。本日はよろしくお願いいたします。
 それでは、片山善博君にお願いいたします。
片山善博君 まず、遅くなりましたことをおわび申し上げたいと思います。
 せっかくの機会でありますので、今次の法制に対しまして私の意見を申し上げさせていただきたいと思いますが、私は鳥取県知事という立場にありますので、専ら知事として、これらの法案をどう見ているかということを中心に意見を申し上げたいと思います。
 レジュメを用意しておりますので、それをごらんいただきたいと思います。
 まず、自治体の長として、知事としてこの有事法制をどう考えるかということであります。
 私は、一昨年の十月に、鳥取県西部地震という大きな自然災害に見舞われました。この際は、鳥取県の災害対策本部長として、できる限りのことを本当に一生懸命、私なりにやりました。それは、災害対策基本法制がありまして、もちろん不備ではありますけれども、十分ではありませんけれども、しかし、知事の役割というのは明定されているわけであります。知事と市町村との関係も明定されているわけであります。その中で、やるべきこと、どこまでが限界かということがあるわけでありまして、ある意味では自信を持って、災害対策に真剣に取り組むことができたわけであります。そのことは大変よかったと私は思っております。
 しからば、自然災害ではなくて有事の場合、例えば先般の不審船がありました。あれは海上の出来事でありますが、例えばあれが陸上に展開をされて危機が生じたような場合に、それでは現時点で知事として、県民の皆さんの生命、身体、財産を保護するに当たって何をすればいいのかというのは、大きな戸惑いを覚えるのであります。
 例えば、潜水艦が上陸をしたということが韓国でありましたけれども、あんなことがあったときに、では、自治体の長として何ができて、何ができないのか。今のままだと何をする義務もありませんから、一緒になって逃げるかというと、これもおかしな話でありまして、やはり自治体の長として、県民の皆さんの生命、身体、財産を保護する立場にあれば、仮に有事法制がなくても何らかのことはしなくちゃいけない。
 そう考えますと、やはり有事法制として、自治体の長が何をすべきか、自治体が何をすべきかということがあらまし決まっていた方が、私の立場としては大変いいわけであります。ですから、有事法制は自治体の長として賛成か反対か、こう言われますと、私は、やはりきちっと自治体の役割、知事の役割を決めていただいておいた方がいいだろうという見解を持っております。
 しかし逆に、例えば、自治体はそういう有事の際に関与すべきではないという意見もあると思います。現にそういうことを言われている方もおられます。そうなれば、実は、私のような立場の者としては非常に楽なのであります。楽なのでありますが、しかし、何かあったときに地方自治体の長として、自治体の、地域のことをよく熟知していて、そして県民の皆さんの人権に最大限配慮する、そういう観点からいえば、やはり自治体がこの問題にも関与した方がいいだろうと私は思っております。難儀なことでありますが、それぐらいのことはやはり自治体として、長としてやるべきだろうと私は思っております。したがって、今回の有事法制に、地方公共団体というものがその法律の中に組み込まれるということは、私は決して不自然ではないと思っております。
 しからば、今回の法制が具体的にどうかと言われますと、それは必ずしも、ベストであるとか理想的であるということは言えないと私は思っております、大変失礼でありますけれども。
 例えばどんなことかといいますと、先ほど自然災害の場合のことを申し上げましたけれども、自然災害の場合にはある程度一体的に、地方レベルでその災害対策に対応できるという仕組みがあります。有事の際には、やはりもっと地方レベルでも一体的な取り組みができなきゃいけないだろうと思うんです。それは政府のレベルでも同じでありまして、政府も有事の際には政府一丸となって対応ができるように、各省が協力をするということで対策特別本部を設けられる、それは私は必要だろうと思うのであります。そうであるならば同じことで、地方のレベルでも、やはり国と連携しながら国民の保護に努めるという意味で、一体的、一元的にこの対応ができるような、そういう仕組みが必要だろうと思うのです。
 今回、そういう観点からこの法制を見てみますと、例えば都道府県と市町村との関係、それから都道府県知事と市町村長との関係、もっと言いますと、都道府県と消防機関との関係、消防は市町村でやっておりますから。そういう関係が全く出ていない。
 これは、後からつくられるということを言われるんだろうと思いますけれども、私たちにとってはこれが一番基本的なことでありまして、本当に有事の際に、県民の皆さんの保護に当たるときに、一元的、一体的、ばらばらでなくて対応できるかどうかという観点になりますと、今回の法制ではそういうことが欠落しているのではないかと思います。地方公共団体という名前が出てまいりますけれども、また地方公共団体の長その他の執行機関という名前が出てきますけれども、県と市町村との関係というのはあいまいである。
 それからもう一つは、都道府県の中の問題も実はあるのであります。これは平時の場合でも今大きな問題を抱えておりまして、都道府県は国と違いまして、国は、内閣が一体的に処理するということになっておりますけれども、都道府県の場合には、例えば教育行政は教育委員会がやる、警察行政は公安委員会がやるということで、独立行政委員会がそれぞれ、やや独立をして分掌しているわけであります。
 そこで、平時においても、首長すなわち知事や市町村長と、独立行政委員会である公安委員会や教育委員会との関係がどうなのかということがしばしば問題になるのでありますが、有事の際に、首長と独立行政委員会である各種の委員会、執行機関でありますけれども、これらとの関係をきちっと整理しておいていただく必要があるのだろうと私は思うのです。
 警察は警察、ばらばらということではやはり困るわけでありまして、責任を持って自治体の長が県民の皆さんの保護に当たるということになりますと、警察というのは大きな戦力であります。その警察を駆使できない、警察は全く別に動くとか、国の指示によって動くとか、そういうことではやはり困るのであります。今回の法制を見ますと、消防はちょこっと、一文字、二文字出てきますけれども、警察はケの字も出てこないというのも、何か私どもにとっては非常に不自然な感じがいたします。やはり有事の際の首長と警察との関係、都道府県と消防機関との関係などは、ちゃんと明定をしておいていただきたいと思います。
 それからもう一つは、国と地方団体との関係であります。
 私は、ここはぜひ先生方に御理解いただきたいと思うのでありますが、法案を読んでみますと、「地方公共団体は、」「武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する。」と書いてあります。それはそうだろうと思います。そうであるならば、その地方公共団体の長が責任を持って、その地域においてはその責務を一元的に実施できるような体制が望ましいわけであります。
 ところが、この法案を見てみますと、十四条でありますが、十四条では、対策本部長、これは通常総理だと思いますが、この対策本部長と地方公共団体の長その他の執行機関がそれぞれ各別にその分野ごとに総合調整を行う、または意見具申が地方の側から出てくる、そういう仕組みになっているわけであります。これは具体的に言いますと、対策本部から知事にこういう総合調整がある、それから知事が意見を申し出るという道はもちろんありますが、別途、例えば警察に対して国から総合調整が行われる、警察から国に対して意見具申があるということになるわけであります。
 それから十五条でも同じようなことでありまして、十五条は、内閣総理大臣が地方公共団体の長その他の執行機関にそれぞれ対処措置を実施すべきことを指示する、そういう根拠規定であります。したがって、この場合は総理大臣から知事に対して、こういうことを実施しなさいということが来るのでありましょうが、別途、公安委員会、警察の方にもこうしなさいとか、場合によっては文部科学省系統で教育委員会に対して、子供の保護はこうしなさいとか、そういうものがあり得るかもしれない。
 そういうことが国の各省の、ばらばらの今の縦割りの中から、地方団体の方にばらばらにおりてくる可能性を秘めているわけであります。こういうのは、自治体の長として責任を持って一元的に国民の保護に当たろうとする場合に、非常に厄介な問題なのであります。
 これは実は今でもありまして、例えば先ほど申しました自然災害のときに、私は一生懸命、災害対策本部長として指揮をするのでありますけれども、今の災害対策の法制、これはかなりよくできておりますけれども、その中にもやはり欠陥がありまして、例えば警察でありますと、どっちかというと警察庁の方に早く報告しようということに躍起になる。それは、例えば国の縦割りの中で、だれが一番最初に総理に情報を提供するか、持ち上げるかということで先陣争い、功名争いをするようなところが多分あるのだろうと思いますけれども、そうしますと、どこが先に上げるかということですから、それぞれ、その縦割りの中で報告をする傾向がなきにしもあらずなのであります。
 有事の際に、そういうことは非常に困るんです。やはりそんな、だれが一番最初に功名争いで報告をするかじゃなくて、本当に現場がうまくワークするかどうか、国民の保護がうまくいくかどうかということに専念してもらわなきゃいけない。そうであるならば、地域で一体的に物事に当たれる、そういう態勢が必要なのであります。ですけれども、先ほど来申し上げておりますように、この法制には大きな欠陥があると私は思っております。それは国が知事や公安委員会や教育委員会にばらばらに指揮をする、そういうことが含まれているからであります。
 これは、なぜこういうことを書いたのかなと思って、私もちょっと不審に思ったのですが、どうもこれは、先行いたしております災害対策法制の中に同じ規定があるんですね。それをそのまま引き写したのではないか。
 実は、災害対策基本法というのは古い法律でありまして、そのときにはまだ機関委任事務というのがあったのです。機関委任事務は、それぞれ先ほど言った、国家公安委員会は都道府県の公安委員会を指揮する、それから文部大臣は教育委員会を指揮する、そういう、それぞれその執行機関を直接指揮するという法制があったわけです。そのときに災害対策基本法はできていますから、実はこれも本当は直さなきゃいけないのですけれども、今回、有事法制をつくる際に、どうも安易にそういう先行する、今となってはもうオールドファッションドな条文をそのまま持ってきているというのはいかにも安易で、イージーゴーイングなやり方ではないかなと私は思います。
 これは先生方が法案審議をされるときに、役人の皆さんも一生懸命やりますけれども、こういう見落としとか、いいかげんなところはやはりあるのでありますから、ぜひチェックをしていただきたいと思います。正直言いまして、今のままですと、有事の、本当に体を張ってのるか反るかの事態に対応するときに、私はこのままでは首長として責任を持って県民の皆さんの保護に当たれない、そういう欠陥を含んでいるということを御認識いただきたいと思います。
 それから、「その他」と書いてありますが、これは巷間よく言われていることでありますが、国民保護法制が欠如しているというのは明らかであります。
 これも自治体の長としての立場から言わせていただきますと、自治体の長は、今の法案によりますと責務を負うわけであります、国民の保護という責務を負う。これはいいと私は思います、責務を負いたいと思います。ですけれども、では何ができますかといったときに、その保護法制の作動する部分が全く欠如しているわけであります。例えば避難を命ずる、誘導する、消防をどう使うのか、そういうのは二年間待ってください、こういうのんきなことになっているわけであります。
 それはこれから一生懸命やられるんだろうと思いますけれども、例えば、仮の話、こんなことはないとは思いますが、万が一、この二年の間にこういう有事が発生したときに、私は一体どうすればいいのだろうかと、実は真剣に悩まざるを得ないのであります。責務はあります。責務はありますが、手段はとれない、いわば手足を縛られたまま責任だけ背負わされるということがこの二年間続くことはもう明らかなのであります。
 二年間で本当に国民保護法制がちゃんとできれば、まあまあそれでもいいと思いますが、本当にできるのかどうか。何か宣言規定のようなものが最後の方にちょっと入っていますけれども、いろいろな、政党の離合集散だとか、内閣がかわるとか、国会が選挙があるとかで、本当に二年の間にできるかどうかわからないわけであります。そうすると、これがずっと延びると、手足を縛られたまま責任を背負わされるという状態がずっと続くというのは、これは耐えがたいことであります。ですから、私は知事として、首長として、ぜひ、この国民保護法制の作用の部分、運用の部分と責任の部分はセットにしていただきたい。というのは、これは本当に、私は真剣に考えれば考えるほどそう思います。
 それから、国民保護法制が欠落しているということについては、私はやはり、内閣の一体性がもうちょっと発揮されてもいいのではないかという気がするのであります。
 今回の法案を見ますと、防衛庁の関連の部分が非常に鮮明に出ております。私は、これは防衛庁が悪いとかというのじゃなくて、防衛庁が本当に真剣に考えられているんだと思うのです。もし有事があったときに我々は何をしなきゃいけないのかというのは、防衛庁は本当に真剣に考えられて、だからこそ、こういうきちっとした、防衛庁が仕事がしやすいようなことが出ているのだと思うのですね。
 その割には、防衛庁は国民を守るためにあるわけですから、自衛隊はその前面に立つわけですから、その国民を守る方のところが欠落しているというのは、ちょっと私は寂しい気がしまして、本当に内閣の他の分野の皆さんがこの問題に真剣に今日まで取り組んできたのかどうか、そのことは疑問なしとしないわけであります。ぜひ、この際、内閣の一体性を発揮していただいて、縦割り行政で、あっちだ、おれじゃない、こっちだとかいう醜い省庁間の省益の争いをやめて、本当に、いざというときに国民を保護するためにどうすればいいのかというのは、みんなで省利省益を捨てて考えていただきたいと、私は切にお願いを申し上げたいと思います。
 そんなことで、いろいろ問題もありますし、議論もまだ不十分でありますから、延長の話は私が言う話じゃありませんが、延長でも何でもして、もっと十分に議論をして、ぜひ、大方の国民の合意が形成されるような、そういう国会審議にしていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
瓦座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
瓦座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
石破委員 陳述人の皆様、本日はありがとうございました。心から厚く御礼を申し上げます。
 自由民主党の石破でございます。
 限られた時間でございますので、皆様方からの御意見すべてにお尋ねできるかどうかわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 私どもも、今片山知事がお述べになったようなことは党内で相当議論をしてまいりました。要するに、第一分類、第二分類というのは、昭和五十年代に研究成果というのか公表文が出ているわけですね。それからもう二十年たって、いわゆる国民を守るための法制が何にも出ていないというのは一体どういうことであるかということ、それが出ないで本当に国会で議論をしていいのかという話は自民党の中でもさんざんいたしました。
 しかしながら、今回の法案を提出するに至りましたのは、まさしく仰せのように二年という期限を区切る、今までもう二十年近く何もしてこなかったのを二年というめどをつけて、私はこのめどという言葉を落としてもいいと思っているんです、二年以内というふうにきちんと決めて、これは閣議決定でもなくて法案にきちんと書く、国会も責任を負うという点において、できれば一年でもいい、そこできちんとしたことを、今までのような怠慢は許しませんということを国会の意思としてもはっきりさせるということでいくしか仕方がないのではないだろうか。そこで国民を守るための法制がすべて明らかになる、これは御案内のように、警察、自衛隊、消防、海上保安庁、自治体の権限調整をどうするんだという話だけで、もう考えただけで気が遠くなるような話でありまして、これをとにかく二年以内にやるということで私は大きな前進だという判断をしておるわけであります。
 また、テロとかゲリラについての法制が欠けておるではないかという御指摘もありました。これはただ、全くないわけではなくて、例えば海上警備行動、治安出動、領空侵犯措置、いわゆる自衛権ではなくて警察権を使うという意味での自衛隊の行動において相当部分カバーされるものであって、そこの抜けた部分をどう補うのかという議論が必要なんだろうと思っております。
 そういう認識のもとに、私はまず、片山知事にお尋ねをいたします。
 今申し上げましたように、全部そろって本当にきちんとした形で出るのが理想ですが、それを待っておったら何がどうなるかわからない。二年以内という期限を区切って、その間に、各界の御意見を聞きながら、より確実なものにしていくという手法が今とるべきやり方ではないだろうかと思っておりますが、その点、いかがでしょうかということが第一点です。
 それから第二点は、これも知事にお尋ねをいたしますが、正直申し上げて、この国民保護法制の中で、警察をどのように使っていくのか、消防をどのように使っていくのか、そういう議論をきちんと詰めたことは正直ございませんでした。そのことは認めざるを得ないと思っております。
 ただ、これをどう使うかという場合において、御存じのように、災害対策基本法においてもあるいは警察法においても、有事に近い状態もしくはそれに近い災害になりますと、恐らく緊急事態の布告ということになるんだろうと思うんですね。警察法における緊急事態の布告ということが行われますと、各都道府県の警察は内閣総理大臣の指揮下に入ることになるはずなんです。
 平時においては知事さんが公安委員を任命し、議会が承認しという形で、間接的ながら知事がコントロールをする形に相なっているのが自治体警察だと思いますが、緊急事態の布告がなされると、内閣総理大臣の指揮下に入る警察という事態が現出をするわけです。その場合に、消防は市町村長がこれを管理するわけであって、有事において、知事さんと警察と消防と自衛隊というものがどういうふうに有機的に連携をするのが望ましい姿だというふうにお考えになりますか。
 つまり、大規模震災対策法などには、対策本部長である知事のもとに警察ですとか自衛隊ですとかそういうものが入るスキームが考えられているわけですが、そういうような類似の法律、確かに災害対策法は古い法律です、しかしながら、大震災対策法においてはかなりそこが直されている部分がありまして、そういう仕組みを活用するということも今後考えられてしかるべきではあるまいかというふうに思っています。
 整理して申し上げますと、警察の指揮命令系統、消防の指揮命令系統、自衛隊の指揮命令系統と都道府県知事、それがどのようにあるのが望ましいと知事はお考えでしょうか、まずお尋ねをいたします。
片山善博君 最初に石破代議士から御質問がありました二年内でという話は、私は、二年なら二年、ちょっと長いなと思いますが、一年なら一年と区切って絶対にパスはない、先送りはないということは必ず必要だろうと思うんです。
 ただ、そうなったとしても、今の段階で概略ぐらいはお示ししていただかないと、何か項目だけ、短冊だけ書いていて二年内に消防は考えますというのでは、幾ら何でも手抜きではないかと思うのであります。大体こういう形の国民保護法制ができますよと、全部でなくても、例えば私の立場からいうと、私が非常に関心のあることなどについてはやはり概略何かオフィシャルな形で示されるということは少なくとも必要ではないかなという気がします。
 それから、権限争議が大変だというのは、これは私もかつて霞が関にいましたからわかるのでありますけれども、その権限争議をなくさせるとか、もっと上の立場で調整してしまうのが政治の力だろうと私は思うんですね。今、霞が関の自然状態の権限争議に任せている状態があって、調整できたものを上げてきなさいというのはいけないと思うのであります。やはり政治がリーダーシップをとってつまらない権限争議はやめさせる、そういう調整が、私は健全な政治のリーダーシップだと思うのであります。それをぜひこの際、有事立法をする際には、いいチャンスでありますから、やられたらどうかなと思うのであります。
 それから警察、消防について、どういうのがいいのかというのは、いみじくも石破代議士がおっしゃられましたけれども、いよいよになったら警察は総理の指揮下に入る、消防はとにかく市町村の機関なんです。しかも、我が県もそうなんですが、往々にして一部事務組合という形になっていまして、市町村からまたちょっと離れているわけですね。そういうあいまいな存在。
 自然災害のときがそうなんですが、知事が災害対策本部長として采配を振るうという形態はあるんですけれども、では警察はどうかというと、自分の指揮下に入っていない、消防はどうかというと、市町村に遠慮しなきゃいけないということで、名目と実態がかなり乖離があるわけです。しかし、もちろん、皆さんよく協力していただけますから、それなりにかなりのことはできるのであります。しかも、全く私どもの権限外であります自衛隊も、地震のときには本当に献身的に協力をしていただきました。自衛隊が本当に一番協力的だったんです。
 ですから、やりようによっては一体的に、そういう実力を持っている集団を使うということは知事としてできるのでありますけれども、しかし、いつもそういう人間関係が築かれているとは限りませんので、やはりある程度制度的に、有事の際に都道府県知事が県レベルでの対策本部長になるんだとすれば、そのもとで警察と消防は動けるというような仕組みをつくっていただかないと、いざとなったら、警察はぽんと国にとられてしまう、消防は市町村ですといったら、もう本当に何も当てにならないわけであります。では、県の職員だけでやりますかといっても、それは限界があります。
 ですから、その辺は、この立法の中で都道府県知事の立場、私は別に権限が欲しいわけでも何でもないんですけれども、本当に体を張ってやろうと思ったらそういう整理をしておいていただかないと、十全なる責務は果たせないだろうと思います。
石破委員 この議論をもう少しさせていただきたいんですが、今知事がおっしゃいましたように、大規模地震対策特別措置法というのがあって、これの十七条にどういう規定があるかといいますと、知事を長とする対策本部が設置される、その本部員として都道府県警察本部長、陸上自衛隊の方面総監、国の機関である指定地方行政機関の長も参画する、これで対策本部ができる、こういうようなスキームがあるわけですね。もし活用するとすればこのスキームが一番それに近いのかな、これに消防をどう組み合わせていくかというアイデアではないかというふうに思います。
 つまり、鳥取県の場合には西部地震があった。あの後、知事のリーダーシップによって、全三十九市町村の防災体制は本当に十分なのかということで、ユニホームの自衛官を鳥取県が採用されて、現職の消防官の方々と一緒にチームをつくられて、三十九市町村の防災体制というのはきちんきちんと点検をしておられる。まさしくその鳥取県の経験というものを生かすがためにも、このような大規模地震対策特別措置法のスキームというものは考えられてしかるべきではないか。
 それをここ二年の間に、例えばこういうやり方があるだろう、実際に知事さんが責任を負えといっても何も手足がなくてどうするんだというようなことをこれから二年の中に、まさしく知事さん方の意見を承り、市町村長の皆さん方の意見を承り、あるいは消防の方々、警察の方々の意見を承ってつくっていくのが一番あるべき姿ではないかなと思いますが、いかがですか。
片山善博君 私、ぜひそういうことをお願いしたいと思うんです。警察も消防も、仮に知事が今回の対策本部長になるのであれば、そのもとで一体的に活動ができるようなことをしていただきたい。
 それで、その際、できれば大規模震災のときよりはやはりもう少し糾合力といいますか、求心力を強めるような仕組みにしていただきたい。これは本当に私、繰り返し言いますが、自分が権限亡者で権限が欲しいから言っているわけじゃないんです。やはり機動的に、一体的に活動をしようと思ったら、もう少し強い権限がその長には必要であると私は思います。
石破委員 災害と有事、これがどう違うかという話なんですね。私もこの法律を考えたときに、ベースとなるのは災害対策基本法だろうな、こうは思ったんです。
 ただ、こういう言い方をすると誤解を招くといけませんが、大は小を兼ねますけれども、小は大を兼ねないのですね。つまり、災害というのはある意味、もちろん不幸な事態ではありますが、言ってしまえば一過性のものなんですね。何度も繰り返して起こるということはない。ぐらぐらっと地震が来たら、大体一回、大きなものは一回である。自然災害ですからね。それから、一回起これば基本的にはだんだん終息していくものですね。そして、阪神大震災のときもそうですが、被害を受けたアセットもありますが、基本的には自衛隊も来てくれる、警察も来てくれる、消防も来てくれる、いろいろなものが来てくれる、そういうものが災害だと思うのですよ。
 ところが有事の場合には、日本人はこういうことを考えるのも嫌なのかもしれませんが、有事に当たって、自衛隊は来てくれると思わないでもらいたいんですね。自衛隊というのは基本的に、我が国を侵略してきたそういう勢力と戦うのが第一義の仕事であって、いかに早く侵略を撃退して平和な事態を回復するかということは自衛隊でなければ基本的にできない仕事であって、全勢力をそれに傾注するのが普通であろうというふうに思われるわけですね。
 そうしますと、まず自衛隊というのは災害派遣のようなことは考えにくいというふうに想定した方がよろしいと思うんです。そして、被害がだんだん終息していくどころか、どんどん拡大をしていくということも当然にあるだろうということが有事の特徴であり、災害との基本的な相違点だろうというふうに私は思っているわけですね。
 それを含めて、では、どのようなスキームをつくっていくべきかと考えたときに、我々鳥取県、中国地方の中にありますが、隣は岡山、広島、島根、兵庫とありますね。そうすると、この地域の連携というものをどのようにとっていくのか、そのときに、だれがどのようなイニシアチブを発揮するシステムをつくるべきなのかというふうに思うわけです。
 それは、知事はそれぞれ独立をしておられますけれども、国と地方というのが指揮命令の関係に立つことが場合によってはあり得べしなんだろうと私は思っている。代執行のような手続をのんびりととっている暇がないことはあるだろうと私は思っているんですね。その場合に、有事に限って申し上げれば、国と地方というものがある意味で指揮命令関係に立たないと、早い時点での終息というのは難しいことがあるのではないだろうかというふうに思われますが、いかがですか。
片山善博君 私は、一時的に、有事の際に国と地方が、指揮する側と指揮される側に立つことはあり得ると思います。地方分権推進一括法で、一般的には国、県、市町村は対等である、これはそうだろうと思うんです。ですけれども、こういう有事の際には、国と県、国と市町村との関係も、一時的に指揮する、指揮されるという関係はあり得るだろうと思います。ただし、その状態が終わったときには速やかに回復をするということが大前提でありますけれども。
 その場合に、石破代議士がちょっと言われた、例えば県をまたがるような有事というのはあり得るわけで、その場合に、県同士が今のようにばらばらといいますか、今のような状態だとうまく機動的に対応できないので、それこそ、まさに政府が対策本部をつくられるわけですから、政府からそれぞれの県に実施すべき事項が指示される、そういうことでいいのではないかと私は思うんです。
 私が申し上げるのは、そういう指示された事項を本当にやろうと思ったときには、その県の中でやはり一体的に処理できないといけない。県の中でさえ、警察は警察で別途動いている、消防は消防で別途動いている、知事は知事で全責任を負うということでは、私はとても責任を全うできない。ですから、国から実施すべきことを指示されたときには、県の中で一体的に長が取り扱えるようにしていただきたいということであります。それに対して、例えば鳥取県にはこうしろ、岡山県にはこうしろということが内閣総理大臣を長とする対策本部から来ることについては、私は異論は特段ありません。
石破委員 そうしますと、鳥取県は鳥取県なりの対処方針があると私は思うんですね、島根県は島根県なりの、岡山県は岡山県なりの。それは霞が関で考えても、その地区に合った対処方針が出るとは私は思えないんですよ。災害対策基本法に、例えば地域防災計画というのがありますね。では、有事において鳥取県は、島根県は、岡山県は、広島県は、それぞれの地域においてどう対応するんだという計画みたいなものは、都道府県知事が長となって、いろいろな計画をあらかじめつくっておくべきではないかと思うのですよ。
 その計画をつくるときに、自衛隊の方も、市町村長も、警察も、消防も、全部知事がそういう本部長になって、いろいろな事態を想定して、どの場合にはどのように行動する、そういうようなオプションをいっぱいつくっておいて、鳥取県版の、それぞれの地方行政組織版の地域対処計画みたいなものをつくり、それを国へ持ち寄って、国の目で判断をしてみる。それは、いいとか悪いとかそういう話ではなくて、では、それを中国地方全体で見たらどうなるか、西日本全体で見たらどうなるか、海と空をあわせて見たらどうなるかみたいな形で、それがやがて全国に広がっていくという形が一番実態に即したものになるんじゃないかと私は思っているんです。
 これから先必要なものは、どういう事態にだれがどのように対処するか、何か事態が起こったときに、さあどうしましょうか、総理大臣どうしましょうか、防衛庁長官どうしましょうか、これは防衛出動でしょうか、治安出動でしょうか、災害派遣でしょうか、条文は一体どうなっていますでしょうか、そんなことをやっていて間に合うはずは絶対にないのであって、事前に、それぞれの地域に合った地域防災計画の有事版みたいなものをつくっておく。その過程において市町村長の意見、住民の意見を一番身近な地方の自治体がくみ上げていき、それを国において集大成するような形。そうでないと、私は、この対処方針というのは絵にかいたもちになるような気がするんですよ。
 ここ二年間にそういう作業を進めていくということが、この法案をきちんとしたものにするために、そしてまた国民の権利をきちんと担保していくためにも必要なことではないか、そういう仕組みをつくるべきではないかと思いますが、お考えを承ります。
片山善博君 私も大筋賛成であります。
 災害対策で地震に対応したとき、私はたまたま選挙に出るときに防災というのを公約に掲げていたものですから、災害対応の機構を拡充して、地域防災計画以下のマニュアルを逐一点検して、自衛隊等の関係機関との連絡をやり、それから訓練もやったんです。それが本当に役に立ったわけです。
 ですから、一たん有事の際のことも本当に真剣に、だれが何をやらなきゃいけないのかというのはあらかじめ考えておいたらいいだろうと私は思います。もちろん、我々はフロントに立つわけにいきませんから、フロントは自衛隊の方がやられるんでしょうけれども、国民保護の方について、その地域の実情においてどういう対応をすればいいのかというのは考えておくべきだろうと思うんです。それに必要なら計画をつくったらいいと思います。
 ですけれども、その前提としては、それならば地方公共団体で、当該地域においてはだれが本当に一体的な責任を持つのか、だれがその役割を果たすのかというのはやはり法律の中で明示されませんと、今の状態だと本当に、地方公共団体と書いているだけですから、県が前面に出るのか市町村なのか、それも今わからない状態なんですね。今の段階である程度、県と市町村との役割とか、国と地方団体との関係というのはどこが一番の接点になるのかとか、それから計画をつくったりするような場合にだれがコーディネーターになるのかとか、そういうことぐらいはやはり今の段階で本当は、法律上、示しておいていただいた方がいいと私は思います。
石破委員 終わります。
瓦座長 これにて石破君の質疑は終了いたしました。
 次に、永田寿康君。
永田委員 意見陳述者の方々、お集まりいただきましてありがとうございます。貴重な時間でございますので、てきぱきといきたいと思います。
 さて、まず民主党の、この法案に対する一つの審議の姿勢というものを簡単にお話をしておきたいのです。
 戦争準備法案であるからけしからぬというような声も聞こえてくるわけですが、しかし、私たち民主党は、やはりこれはきちっと問題点を洗い出してチェックをして、皆様の御意見も伺いながら、果たして、この法案が国民の目から見て納得できる形で通すべきものなのかどうか、そこを国会の議事録に残る形で審議していきたい、そのような姿勢でおりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
 それからもう一つ、この法案は、文章でも書いてありますし、審議で答弁もなされているわけですから、中身は大体わかってきた。しかるに、この法案に書かれている国家の一つの権限、これを発動する主体というものが果たして信頼できるものなのかどうかということを思ったときに、大変疑わしい事件が幾つか起こっています。
 例えば直近のもので言えば、防衛庁が、情報公開で資料請求してきた人たちをプロファイリングしてリストをつくっておった、思想調査に近いものまでやっておった。このような人権感覚を持っている役所が、この有事法制というのは、場合によっては国民の、平時であれば当然守られているべき人権をある程度制限する内容を含んでいるわけですから、防衛庁のあるいは政府の人権感覚というものをつぶさに見ていかなければならない。そこで見てみると、今回の防衛庁のリスト作成事件における人権感覚というものはとてもとても恐ろしくて、この有事法制に基づく権限を与えるのはちょっと怖いなというふうに思うのが一般的な国民感覚ではないのかなと思います。
 またさらに、この防衛庁の中で重要な役目を果たしておる事務次官、官房長、これらの二人が今度、このリストの作成事件にかかわって処分されることになりました。しかし一方で、本件事件に関する内部の調査は、これらの人たちを中心に進められているわけであります。果たして、自分たちが処分をされるような立場にいながら、自分たちが中心となって調査をして、一体、何の信頼が置けるのか。こんなことで果たして実態解明ができるのか。ましてや、官房長は国会の中で、今回のリスト作成は組織的なものではなかったと、議事録に載る形で平然とうそをついていた。このようなうそつきの人たちが果たして法律の運用をどのようにするのかということに大変危惧を抱くわけであります。
 また、先日も防衛庁の高官とお話をしましたけれども、防衛庁としては、正直、イージス艦は出したくてしようがないんだ、海外に出したくてしようがないんだというお話を本音で語っていました。イージス艦というのは子供のおもちゃじゃないわけですね。これを出したくてしようがないという気持ちの裏には、やはり今回の有事法制についても、国民を守るという観点から法案をつくったのではなくて、ひょっとしたら、与えられたおもちゃを喜んで使いたいという気持ちがなかったのか、私たちは法案審議の中で明らかにしていかなければならないというふうに思っています。
 さらに、テロ対策特別措置法が去年成立して、インド洋に今でも自衛艦が派遣されています。しかし、この法律が成立をする前に、この自衛艦は既に日本を出発していました。当初は、防衛庁の設置法に書かれている、防衛庁は調査研究をなし得るんだ、このような規定に基づいて自衛艦を海外に派遣したということであります。
 しかし、果たして、そのような調査研究をするのに自衛艦を出す必要があったでしょうか。防衛庁だって調査船はたくさん持っていると思います。何も自衛艦を出す必要はないと思います。また、かつて、このような規定をもとにして自衛艦を海外に出したことがあったでしょうか。そして、この後も行われる見込みはあるのでしょうか。
 このようなことを考えると、やはりテロ対策特別措置法が成立する前にインド洋に向けて船を出発させたかった、このような法律を超えた発想が防衛庁の中で平然とまかり通っていて、そして、防衛庁出身の中谷防衛庁長官がこれをまた認めたんだというような構図が透けて見えるわけであります。
 今回の有事法制の議論の中でも、政府は、防衛出動の前に準備出動というものを自衛隊に対して命ずることができる、このようなことが検討されています。果たして、防衛庁設置法であのような自衛艦を出すことができるのならば、何もこんな法律などつくらずに、防衛庁設置法の調査研究のためだといって鳥取県に自衛隊の部隊を出せばいいわけですよ、ちゃんと道路交通法に従って堂々と高速道路を通過して、ここに今、調査研究のために部隊が参りましたと。なぜ、このようなことをしないのか。
 こういうことを考えると、どうも防衛庁というものは、国民を守るためにこの法律を必要としているという発想ではなくて、自分たちの権限を拡大したい、与えられたおもちゃを使いたい、そのような考え方でつくっているのではないかという思想が透けて見えるわけであります。ですから、きょうお越しになった鳥取の方々あるいはその周辺の方々も、こうした観点からもぜひ、この法案審議を見守っていただきたいと思います。
 さて、せっかくですから本体の質問に入りたいのですが、この有事法制、特にきょう小倉先生がお越しになっているので、医療の現場のお話をお伺いしたいのです。
 有事の際に必要となる医療体制というのは、平時の場合と比べて異なる部分というのがあるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
小倉道雄君 お答えします。
 先ほど陳述いたしましたように、この法案につきましては私は反対の表明をいたしておりますが、有事をちょっと読みかえまして、緊急事態という意味での救急医療体制ということにつきましては、いささか基本的には考えております。
 有事の際といいますか、非常時、そういうときと平常時とは、それは内容的にやはり違うと思います。取り扱う疾患も違いますし、量的にももちろん、有事の際の医療体制では、一時に大量の治療を必要とする患者ができると思います。
永田委員 今、量的な問題、つまり例えば爆弾が爆発したら一時にたくさんの傷害を負った方が出るということを考えれば、量的な差があるということはわかりますが、一方で、やはり戦争の意図を持って他国が攻撃をしかけたということになれば、通常の医療では扱わないような、質的な差のある患者さんも出てくると思うんですが、その辺についての御意見はいかがですか。
小倉道雄君 お答えします。
 もちろん、質的な内容が違ってまいることは当然でございます。
 平常の救急医療体制の中では、重大な交通事故とか、それから最も一般的なのは、脳卒中であるとかあるいは心臓病によって緊急を要する患者の医療というのが最も多いと思いますが、ただいまのお話のように、軍事侵攻となりますと、これは大部分が、かつて太平洋戦争でも経験があると思いますが、外傷が多いと思います。特に銃撃や爆撃による場合は、そういう外傷が大量発生するということが多いと思います。
 ただ、現在の戦闘、戦闘ということにつきましては私よくわかりませんが、例えば核が使われますと放射性物質による傷害、それから化学物質によるもの、例えばこの前のオウム真理教の場合のようなサリンといった毒物、こういうことも今後はもっと多くなってくるかとも思いますが、さらに生物兵器、微生物によるもの、これが非常に多くなってくる。
 そうすると、サリンの場合でも、御存じのようにこれを特定するという技術が、なかなか時間がかかりまして、すぐそれに対応して対処するというのが非常に難しくなってくる。そうしますと、どうしてもそれぞれの傷害に対する専門家の集団といいますか、そういう体制が必要になってくると思います。
永田委員 時間が来たようなのであれですが、質的な差があるということをお伺いいたしたので、これでとりあえず終わりたいと思います。
瓦座長 これにて永田君の質疑は終了いたしました。
 次に、肥田美代子君。
肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 陳述人の皆さん、本当にきょうは貴重な御意見をありがとうございました。
 私は、先日、国連の子ども特別総会に出席いたしまして、その席で、これは史上初めてなんですが、子供が壇上に立ちまして演説をしたんですね。そこで、子供にふさわしい世界はすべての人々が住むにふさわしい世界であるという、とても印象的な発言があったと私は感心いたしておりますが、冷戦構造が終わりまして十年が過ぎましたけれども、やはり平和の配当はまだまだ世界の子供たちに行き渡っていない、それが出席した大人たちの実感でございました。ですから私どもは、法整備をするときには、やはり未来から来た子供たちに、この法律をつくったときにどういう影響を与えるか、そういうことをしっかりと考えてつくっていかなければ未来に禍根を残すと思っております。
 それで、今回の有事関連三法案を見ましたときに、本当にこの法案が、国民とりわけ子供たちを守り切る法案であるかどうか、それを考えますと、いささかというよりも大変不安な思いでございます。残念ながら、法案のどこを透かして見ても、そういう大切なことが抜け落ちているように思うわけでございます。
 ここで小倉陳述人にお聞きしたいのですが、国民の保護に関する法制のあり方について、今後の審議の中でいろいろ具体的なことは詰めていかなければなりませんけれども、今先生がお考えの、国民保護法制の中にどのようなものを盛り込むべきかということをちょっとお話しいただきたいと思います。
小倉道雄君 お答えいたします。
 私は、先ほどの陳述におきまして、第一番目に、今回の法案には人権の擁護といいますか、国民の生命財産を保護するというところが欠けておるというふうに陳述いたしましたが、ただいまおっしゃいましたとおり、その点につきましては、やはり憲法が保障する人権の擁護ということが基本的になると思います。そうしますと非常に広くなりまして、いかなる事態においても、現在平時において守られておる人権が保障されるということが大切ではないかと思います。
肥田委員 ありがとうございます。
 それでは、あと五分を残しておりますので、きょうお越しいただきました皆さんに御意見をちょうだいしたいと思いますので、本当に短くて恐縮でございますが、端的にお答えいただきたいと思います。
 もう、きょうが六月五日でございます。今国会の会期は六月十九日、そうしますと二週間を残すのみでございますが、私どもはこの国会で、では、この法案に対してどういうふうに接し、そして対処することが必要なのかということを考えるわけでございます。
 その中で、先ほどから御意見がございましたけれども、この法律の国民に対する情報公開がまだ十分できていないという御意見もございました。それから、保護法制が欠落している。もう一つは、知事さんもおっしゃいましたが、地方公共団体の運用と責務がセットで出されていない、そういう欠陥がある法律であるということもございました。
 しかし、では、これから二年以内にそれが本当につくれるかどうか。これは、政権がかわったり何かすることもございますし、本当に保証することはできないだろう。そしてさらには、同僚議員からもございましたけれども、官房長官そして防衛庁長官への国民の不信感もございます。
 こういう中で、それではこの法律を一体、廃案にするのか、継続審議にするのか、それでも何が何でも通してしまうのか、それとも、もう二年ぐらいかけて十分にじっくりと与野党で審議していく、そういうことが必要なのか。いろいろな考え方があると思いますが、端的にお答えいただければありがたいと思います。お一人ずつお願いいたします。
瓦座長 なかなか難しい問いでございますが、それでは、どうぞ片山さんから順番にお答えください。
片山善博君 私は、徹底して議論されたらいいんだろうと思うんです。いろいろな意見がありますし、私も不明な点がありますのできょう申し上げましたけれども、徹底して議論されたらいいと思います。
 その際、例えば役所が信頼できないとか、情報公開の体質がないとか、不信感があるとか、私もそう思うんです。永田議員もおっしゃったこと、私もそのとおりだと思うんです。それを正すのは政治の役割だと私は思うんです。皆さんが愚痴を言ったり、悪口を言ったりしても始まらないんですね。我々が選んだ国会議員の皆さんが役所を正さなければいけないんですよ。役所が不実であったら、それをちゃんと暴いてやる、それが皆さん方の仕事だと私は思うんですけれども、役所がだめだからこの法律はだめだというのは、我々国民から聞いていますと、何か責任放棄しているみたいなんです。ぜひ役所を正してください。
杉原弘一郎君 とりあえず出発点を早くやっていただきたい、迅速に対処していただきたい、そして、あとは二年以内に内容を詰めていただければ結構だと思います。
小倉道雄君 いろいろな条件がクリアされまして、国民のコンセンサスが得られた状態では、緊急時に対する法制ということは必要だと思います。
大西龍夫君 徹底的に議論していただいて継続審議でございます。
井上文伸君 やはり地方の声を本当によく聞いていただいて、少々時間がかかってもいいと思いますよ、地方の声をよく聞いていただいて、国家のあり方を模索していただきたいと思います。
渡辺久丸君 冒頭発言で申し上げましたけれども、一言言いますと、周辺事態法それからテロ特別措置法でも、武力の行使はやらないといって明文で書いてあるんですよ。ところが、今度の法案は武力の行使を行う、そういう立場で、違憲性はもうはっきりとしているので、だからこれは廃案にすべきだというのが僕の意見です。
生田幸広君 私は、廃案を求めます。
 以上です。
肥田委員 ありがとうございます。
瓦座長 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。
 次に、白保台一君。
白保委員 公明党の白保台一でございます。
 きょうは、意見陳述者の皆様方には、大変お忙しい中、また大変貴重な御意見をお聞かせいただきました。
 そこで、まず、私どもの立場を若干申し上げますと、九九年十月に連立政権に参加をいたしました。その際に、やはり有事の際の危機管理体制、こういった問題についてもしっかりと研究をして、できるところからしっかりと整備をしていかなければ国の本来のあり方としていけませんねということで、これは研究をし、そして積み上げて、しっかりした形でもって対応をしていきましょうという取り決めで、考え方を決めて今日に至りました。したがって私どもは、憲法の枠内、そういった中で、しっかりとした形でもってやっていかなければならない、国民の生命財産、そしてまた平時のときからそれを守るための危機管理体制というものをしっかりさせていく、そういうことは非常に重要であるという立場で、今回も与党の一人として参加をさせていただいているわけであります。
 きょう、皆さんの御意見をしっかりとお聞きしましたし、同時にまた、戦後、長い平和の中で、いろいろと今、この法律を出すことによって、なぜ今なんだ、なぜ必要なのかというような意見もあることも承知しております。先ほどの意見の中にもございましたが、慎重に審議すべし、こういう御意見がございました。まさに、そういった一環としての地方公聴会であると私どもも認識をしているわけでございまして、そういう面では慎重に、しかしきっちりとした形でもってつくり上げていかなきゃならないかな、こういうふうに考えているところであります。
 それで、まず小倉参考人にお聞きしたいんですが、先ほどお話を伺っていて、議論がきちっとやられた、そういった中で、究極的には法制定の必要性はある、このようにお考えでしょうか。
小倉道雄君 先ほど申しましたように、いろいろな不備な点とか反対意見がございましたが、その反対となっておる根拠、そういうものがすべてクリアされてということを申し上げたと思います。国民のコンセンサスが得られてということを申し上げたと思います。
白保委員 大変大事なことだと思います。
 そこで、大西参考人にお伺いいたします。
 先ほど、おそれだとか予測だとか事態だとか、そういったことの中で、大西参考人が一番御関心をお持ちのようでございますが、情報収集、どういう判断をするか、その情報がしっかりしているのかどうかというお話がございました。
 そこで、情報収集をどうしたらいいのかという問題が一つあると思いますが、同時に、国民への伝達の方法の問題というふうに受けとめましたが、そのお考えがございますれば御意見を伺いたいと思います。
大西龍夫君 例えば、先ほど永田先生のお話にもございましたように、イージス艦、非常に立派な機能を持っておる船でございます。ただ私ども、昔からよく言われていますように、機械にはたくさん資金をかけていくけれども、人にはかけていない。
 昔、米軍でありますと、ファントムのパイロットの場合は約一〇%の教育費をかけておったというふうに聞き及んでおります。平たく言えば、私どもが新しいパソコンを導入いたしましても、その使い方が、全部とは言いませんけれども、相当わかっていないときっちりした情報は引っ張り出せないということでございます。
 まずイージス艦あたりでも、多分、自衛官の方々は十分に使った満足感はないのではないかと思います。と申しますのは、その持っておる機能をすべて頭にたたき込んで防衛のための情報収集を実際にはやっておられるのかなというふうに考えます。やはりそういうものを十分に使いこなせる条件の中でこの日本近海の、もちろん領海内でございますけれども、情報収集というのはできるのではないかと思っております。
 また、今まで、仮にそのような不審な潜水艦等があったとしても、なかなかそれを国民の方々にお知らせすることはなかったと思います。
 例えば、アメリカ軍のレーダー網によれば、旧ソ連のことでございますけれども、彼らがスクランブル発進する場合の命令の声まで聞こえてくるという状況でございます。そのような収集力を持っております。いわゆる現場の声まで聞けるとか、現場の人の動きまで見えてしまうものも、今はハイテク機能として持っております。こういったものをやはり必要であるならば十分に、人材にも機器にも投入すべきだと思います。必要でないのであれば、先ほど私も冒頭に申しましたように、仕事柄、いかにお国が上手にお金を使っていただけるかということが大事でございます。
 国民が、その方向に確かに行った方が自分たちの幸せが近くなると大多数――先ほどもお話がありましたように、法案等につきましても、一〇〇%のものを求めてでき上がることはございません。私どもが新しい事業を始める場合も、一〇〇%の自信を持って事業を始めることはございません。できれば七、八〇%あたりまで構築できれば、私どもは大体、ゴーサインを出します。ただ、五〇%五〇%、いわゆる五分五分の確率で物事を進めていくことはございませんので、今現在の状況では、まだ五分五分あたりの状況ではないかというふうに私は感じております。
 以上でございます。
白保委員 では、最後になると思いますが、片山知事にお伺いしたいと思います。
 先ほどから、知事として、県民の生命財産そしてまた保護ということを考えた、責任あるお立場での発言が多くありました。大変感じ入っておるわけでございます。
 知事の基本的な考え方は大体わかりました。県内の各市町村長の皆さん方はどのような考え方を持っておられるか、把握しておられますか。
片山善博君 正式に調査したとかヒアリングしたということはありませんので、私の感覚でありますけれども、余り御関心がないのではないかなという印象を率直に持っております。
 これは実は有事の前の、自然災害の場合にもそうなんでありますけれども、やはり関心がそんなに強くないというのが実態でありました。私は、防災について大切ですからということを訴えるんですけれども、なかなか専門のスタッフをそろえてくれないとか、そういうもどかしさがあるものですから、今しきりに、防災面での強化をしてくださいという話をお願いしているのですけれども、まだ有事の方について関心が深いということはないと思います。
白保委員 終わります。
瓦座長 これにて白保君の質疑は終了いたしました。
 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方、お忙しい中を御高説を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げます。
 今回は中国地方の公聴会の機会を与えていただきましたけれども、きょう、広島の井上先生の意見を伺うことができました。意見陳述の際にも少し触れられておりましたけれども、大事なことでありますので、あえて最初にお伺いをさせていただきたい、このように思います。
 井上先生は先ほど、広島県人であり、福田官房長官が非核三原則の見直しの可能性に言及したことについては、被爆県人として許すことのできない発言であると怒りを述べられたわけであります。
 ましてや、ただいま有事法制が国会で議論されている真っただ中でありまして、地方でもこのような公聴会を開いて国民各層の意見を募っているところでありますけれども、日本は、御案内のとおり、唯一の被爆国であります。中でも、広島と長崎は被爆地であります。そして言うまでもなく、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則について、このような発言が今回の法案を提出した政府首脳の官房長官、いわゆる主務大臣から出されること自体、考えられないことであると私は思います。
 今回の福田官房長官の発言について、地方の声、特に被爆県であります広島の声として、井上先生の思いをもう少しお聞かせいただけませんでしょうか。
井上文伸君 御承知のように、今、インドとパキスタンの軍事的な緊張感が非常に高まってきている中、核兵器の廃絶に逆行するような官房長官の発言に対して、被爆地広島では非常な怒りが、先ほど隣の小倉先生も広島出身ということでございましたが、そのように言われておりましたが、今、非常に怒りが広がっているのは事実でございます。
 戦後五十数年になりますが、広島ではまだまだ多くの被爆者の方が病院で治療を続けておられますし、広島は戦争の傷跡がまだ非常にたくさん残っておるところでございます。そうした中で、官房長官もこういう発言をすればどうなるかということはわかっておったろうと思いますが、この発言に対して、余りにも緊張感がなさ過ぎる思いが私の方ではいたします。
 以上です。
樋高委員 率直な御意見、ありがとうございました。
 今回、有事法制の議論を広島の地から、外から見られて、聞いていらっしゃって、率直にどのような感想をお持ちでしょうか、同じく井上先生にお伺いします。
井上文伸君 まず、今回の有事法制そのものについてでございますが、有事法制とは名ばかりのような気がちょっといたしております。何か古い戦争概念にとらわれたような、冷戦後の安全保障を踏まえていないような、非常に言葉は悪いのでございますが、時代錯誤の印象さえ受けるような気がいたします。
 政府のいろいろな答弁を聞いておりましても、大臣によって肝心なところの定義や解釈が違ってきたり、また合理的な説明がないことも多く、支離滅裂な印象も受けることが多くあります。我々国民の生命財産を本気で守ろうと考えて政府はこの法案を提出したのだろうかという懸念さえ抱かせております。それが私の率直な感想でございます。
樋高委員 ありがとうございます。
 また同じく井上先生にお伺いしますが、意見陳述の中で、我が国の自衛隊の行動の原則が明らかでないというふうに述べられておりますけれども、このことは、我が国日本の有事法制を考えるに当たりまして入り口の部分、非常に重要なことであると思いますので、もう少し詳しくそのことに関しての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
井上文伸君 本来ならば、我が国の安全保障の原則や自衛隊の行動原則につきまして憲法に規定がなければならないわけですが、残念ながら、現憲法にはそれがないようでございます。
 私は、そんな現憲法を補うために、安全保障に関する基本法と非常事態に対する基本法を制定すべきではないかというような考えもいたしておるわけでございますが、先ほども述べましたように、日本の安全保障は、これまで政府の憲法解釈によってなし崩し的に、恣意的に行われてきた。これは、自衛隊をどういう場合に、どのように活動させるのか明確な方針がないために、国民または諸外国に対しましても無用の心配をかけてきたというようなことでもあろうかと思います。
 今回の有事法制の整備に際しましては、安全保障の原則と、それに基づく自衛隊の行動原則を確立していただきまして、内外に言明すべきであると思います。
 以上です。
樋高委員 ありがとうございました。
 それでは最後に、一言ずつ七人の先生方にお伺いしたいのです。
 実は、きょうの日経新聞に、世論調査の数字が発表になっております。最新の状況ですが、この有事法制に賛成が四〇%、反対が四六%、いわゆる賛否が逆転をしたということであります。この日経さんの調査によりますと、二月は賛成が五四%であったのに対しまして、最新の数字は四〇%、マイナス一四ポイント。そして反対が、二月時点では三六%であったのが、プラス一〇ポイントで四六%。賛否が逆転している。これは、全国の男女三千人の電話調査による数値なのだそうであります。
 この状況を踏まえた上で御所見を、一言ずつで結構でございます、大変恐縮でございますが、全員の意見陳述者の先生方、お願いいたします。
瓦座長 時間が迫っておりますが、質疑者からの御要請でもありますので、短目に御返事いただければ幸いです。
片山善博君 それは、そういうことを踏まえて、皆さん方が御議論されて決定されることだと私は思います。
杉原弘一郎君 こういうことが、こういうふうに議論できることが私はありがたいことでありますので、別に比率にこだわらずに、大いに議論をしていただきたいと思います。
小倉道雄君 内容がだんだん明らかになってきて、実体に対して反対がふえてきたのだと思います。
大西龍夫君 一つの出来事で世の中の動きというのはころころ変わっていくもので、断片的な世論調査のみで云々はありません。
井上文伸君 先ほども申しましたように、いろいろな御意見をいろいろな範囲から聞いて、時間をかけて慎重に進めていかれたらいいんじゃないかと思います。
 以上です。
渡辺久丸君 本質が今後さらにわかればわかるほど、これは恐らくもっと上がる。そういうことで、僕は、先ほど言いましたけれども、やはり廃案という方向が正しいんじゃないか、それをますます確信した次第です。
生田幸広君 日経ですか、かたい新聞ですね、余り読まないんですけれども、ただ、統計のとり方あるいは新聞社の論調の仕方、そういった部分があろうかと思いますので、一つの参考ではないか。
 ちなみに、昨日の地元紙、日本海新聞には、賛否を問うんじゃないんですけれども、「有事法案優先 わずか二〇%」というような大見出しが出ているんですね。これだけ見ても、さっき言ったことを自分で言うのもなんなんですけれども、やはりこういったこともあるということで、ぜひともそういうふうに受けとめていただきたいと思います。
 以上です。
樋高委員 慎重に審議をしてくれということでありました。
 どうもありがとうございました。
瓦座長 これにて樋高君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方、大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。
 そこで、私は渡辺先生に、憲法の問題と関連して幾つか質問をしたいのです。
 先ほどから、地上戦の話が大分出ておりました。国会で私が取り上げたところ、武力攻撃が予測されるに至った事態とは、つまり周辺事態も一つのケースだ、このように防衛庁長官が答弁しておられます。私は、率直に言って、この法律は、周辺事態法でかなわなかった米軍支援をより強化していく法律じゃないかとふだん考えているわけですが、先生はどのようにお考えでしょうか。
渡辺久丸君 政府の答弁で、周辺事態法と武力攻撃事態法が重なる部分がある。これは先ほど僕が発言しましたけれども、だとすると、重ならない部分があるのかどうかですね。
 といいますのは、これは武力攻撃事態と言っているんですけれども、日本の本土が攻撃されるということはおよそ想定されていないんですよ。だから、これは重ならない部分はないんです。だから、周辺事態と武力攻撃事態が全く重なって、イコールだというふうに僕は考えているんです。
 周辺事態法では、先ほどもちょっと触れましたけれども、あの法律の中では危なくなったら中断するんだ、そういう話でしょう、武力行使はやらない、それから危険な地域には行かないということで。そうだとしますと、同盟国であるアメリカ軍から見れば、これは本当に同盟国の軍隊なのかということになるんですよ。ですから、現場では、これは一緒にやるということが当たり前の話じゃないかと思いますね。そういうことから、周辺事態法にはいろいろな欠陥があるというふうにアメリカは見ているんですね。
 そういうところで、この周辺事態法ができた翌年の十月に、アーミテージ国務副長官や何人かの人が報告書を出しました。その中で、新ガイドラインと周辺事態法では実はまだ足らないんだ、もっとやってほしいんだ、新ガイドラインというのは単なる基盤にすぎないので、あれを上限というふうには理解しないでほしいと。そういうことで出てきたのが今回の法案じゃないか。
 ということで、先ほど申しましたように、周辺事態と武力攻撃事態が全く重なるということでありますと、周辺事態で出動している自衛隊が、攻撃のおそれがあるということで今まで逃げ帰ってきたものが、いや、逃げ帰ってはだめだということにしようというのが今度の法案じゃないかというふうに僕は理解していますので、今度の法案は、本来なら周辺事態法の改正案として提起すべきなんですよ。別の法律で実は周辺事態法の改正というか改悪をやろうとしているのが今度の法案じゃないかというふうに僕は考えているわけです。
赤嶺委員 そうしますと、周辺事態という事態は、アメリカのアジア地域への武力介入が先にあって始まっていくわけです。一方、武力攻撃事態法には、事態の認定という手続が書かれております。安全保障会議で決めていく、対処専門委員会で事態を判断していく。
 少なくとも、予測される事態、おそれの事態、これらの事態については、今先生のお話ですと、それは日本が主導的に判断をするのか。それともアメリカが主導的に判断をするのか。その判断ができた場合にはこの法律が発動し、国民の協力体制が強制をされていくという仕組みで、大変重要なところだと思うんですが、そこの点はいかがお考えでしょうか。
    〔座長退席、石破座長代理着席〕
渡辺久丸君 周辺事態法では、実は周辺事態の認定についての手続、システム、これは規定がなかったんですよ。
 今度の法案は、安全保障会議法の改正案の中で、先ほどおっしゃいました専門委員会ですか、そこが総理の諮問を受けて答申するという形で、この専門委員会というもので日本は独自に判断できる、自主的なものなんだというふうに恐らく考えている、そういう節があるんですが、僕は、周辺事態法のときにも議論されましたけれども、周辺事態の認定、武力攻撃事態かどうかの認定は、実は、今回の場合は専門委員会のメンバーである自衛隊の幹部、この人たちはアメリカの軍人参事と一緒に常に協議をする、そういう枠組みが新ガイドラインの中でつくられたのですね。ですから日常的に協議していますし、それから、日本側が情報を本当に持っているかどうか。これはやはりアメリカの方で重要な情報は握っておりますので、結局、この武力攻撃事態の認定については、恐らく日本側で自主的に判断をするということは大変困難ではないか。
 これは僕だけが言っているわけではありませんで、軍事専門家がそういう評価をしているということですね。
赤嶺委員 どうもありがとうございます。
 渡辺先生はふだん、憲法の専門家としてずっと研究を続けていらっしゃるわけですが、そうなりますと、明らかな憲法違反ということのお話が先ほどありました。
 私は、九〇年の湾岸戦争以来今日まで、日本の憲法が、対米協力、対米支援という形で少しずつ風穴があけられてきているんじゃないかというぐあいに感じているんですが、その辺は先生、いかがお考えでしょうか。
渡辺久丸君 これはおっしゃるとおりで、僕は、やはり湾岸戦争というのが一つの大きな転機になったと思いますね。
 湾岸戦争の後、九一年四月に、日本の海上自衛隊が、ペルシャ湾に敷設されている機雷を掃海するために出動しましたね。あれが、日本の自衛隊が海外に出動していった一番初めだと思いますね。その後、一九九二年にPKO法ができまして、九二年にカンボジアに出動しました。そして九四年の四月から六月ぐらいに、御承知のとおり、北朝鮮の核疑惑問題というのがありましたね。あのときに、アメリカは北朝鮮を攻撃しようとしたんですよ。日本に対しては後方支援をしてほしいということで要請したけれども、当時の日本としては、やはり有事立法をつくるとかというふうな余裕がなかったわけですね。
 そういう中で、結局、ガイドラインが一九九七年につくられて、周辺事態法が一九九九年、それから昨年はテロ特別措置法、それから今回の法案。これはいずれも自衛隊を、アメリカがアジア太平洋地域で起こす周辺事態戦争、それに参加していくために動員しようということで、これはやはり、憲法の風穴がますます大きく広がってきているというのが現在の状況じゃないかというふうに思います。
    〔石破座長代理退席、座長着席〕
赤嶺委員 時間が残り少なくなりましたが、片山知事に、先ほど、災害に対する大変御熱心な姿勢、意気込み、勉強になりました。
 実は私、沖縄でして、地上戦が繰り広げられたときの住民保護ということについては、いろいろな体験からして意見を持っております、どんな住民保護をとってみてもというのはあります。
 ただ一点だけ、今度の法律の中で、地方自治体も、結局は港湾、空港などの米軍への提供だとか、そういうものが強制される中身も一方であるわけですね。米軍支援と地方自治体は無関係ではないと思うんですが、そこの中身は全く明らかになっていないんですけれども、知事はその辺はどんなふうにお考えなのか、よろしくお願いします。
片山善博君 私は、今度の有事法制が米軍支援のためにつくられているという気はしないんですけれども。
 やはり自衛隊という存在があって、あってはならないことですけれども、有事というものがあるかもしれない、その場合に自衛隊は前線に立って国民を守ろうとする、後方の国民の保護法制がいずれできて、本当は今がいいんですけれども、その際に地方団体が一定の役割を果たす、そういう法制だと思っていますので、私は、その中でできる限り地方団体が国民の保護のために動きやすいようにしていただきたい。そうなった暁には、もし万が一あってはならないことがあったときにも全力を尽くします、そう私は考えております。
赤嶺委員 終わります。
瓦座長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。
 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美でございます。
 きょうはお忙しい中、意見陳述者の皆様方、このように御出席いただきまして、心からお礼を申し上げます。
 限られた時間でありますので、何点かお尋ねをしたいと思うのでありますが、まず生田議長にお聞きしたいと思うんです。
 私も各地に参りまして、いろいろ有事法制に関する率直な感想を求めるんですが、多くの国民の皆さん方の平均的な受けとめ方というのは、この御時世に、我が国に本当に本気で武力攻撃をしかけるような国はあるんだろうかという、ごく率直な受けとめ方がほとんどなんですね。
 私は、今度のこの特別委員会で審議に加わっていますが、普通、どの国でもそうなんですけれども、その国の安全保障のあり方ということを考え、議論するときには、当然のことながら、順序からいきますと、特にこういう時代ですので、外交努力をどうしていくのか。日本の場合だと、国際社会といっても、特にやはりアジアと日本の関係だと思うんですね。
 そうしますと、外交を一生懸命重ねてみてもやはり破綻したんだというときが有事というふうにつながっていくと思うんですが、その外交努力とあわせてもう一つ必要なことは、現に今日本は、ODAを含めて、アジアの国々に対して大変な経済援助、経済協力をやっていると思うんですね。それだけの経済援助をしながら、なおかつアジアのどこかの国がいきなり、どういう理由かわからないけれども武力攻撃をしかけてくる、そういうことは、中学生でもわかるんじゃないかなと思うんだけれども、あり得るんだろうか。
 問題なのは、今回一番特徴的なのは、いざというときに自衛隊がどう円滑に行動ができるか、そのための法整備だということがぼんと表に出ていまして、そうすると、それ以前に、外交がどうすれば破綻するのか、あるいはこれだけの経済協力をしながら、なおかつ日本が憎まれなければならない、恨みを買うような事態というのは具体的にどういうことであろうか、そこの議論がすぽんと抜け落ちたまま、いきなり第三段階といいますか最後の、究極のときには武力で対応しなければならないという、ここにいきなり来てしまっているから、やはり非常に現実感に乏しい議論になっているんじゃないかと私は思っているんですけれども、その点、生田さん、いかがですか。
生田幸広君 お答えいたします。
 何点かおっしゃったんですけれども、まず、全国各地でいろいろな意見を聞いている、それで、果たして日本に攻めてくる国があるのか、そういった現実的かつ具体的にどうかということの問いだと思います。
 私は軍事の専門家でもありませんし、あるいはそういった知識も持ち合わせていませんけれども、先ほどもお示ししました、そういった有事の関連法案あるいは平和問題に関心がありまして、いろいろ私なりに新聞等で学んだこと、あるいは労働組合の中で学んだことを総合してお答えしますと、あり得ないんじゃないか。それと、先ほども申し上げましたとおり、防衛庁のOBの方でもいろいろあるかと思うんですけれども、竹岡勝美さんのそういった御講演を目の当たりで聞いて、そういった意を強くしたということであります。
 次に、経済援助をアジア諸国にしている。まず経済援助の関係ですけれども、そういったことをしているにもかかわらず、逆にそういった武力で攻めるということは、先ほどと似たような答えになるかもしれませんけれども、あり得ない。
 最後に、一番重要だと思ったんですけれども、外交努力ですね。これは本当だと思います。僕も戦後生まれの一人なんですけれども、やはり歴史をひもとけば、外交が軍事にといいますか、当時の陸軍とか海軍、そういったことに最後は負けた、それで戦争が始まったというのが、我々市民からいえばそういうふうに映るんですね。
 そういう意味では、朝鮮半島の南北朝鮮、中国というのは非常に、いい意味でも悪い意味でも、この間歴史的にかかわりが強い国であります。そういう意味で、確かに北朝鮮とは国交がないかもしれませんけれども、いろいろな形で外交努力ができると思いますし、あとの二国についても、またほかの諸国についても、やはり日本のそういう真摯な姿勢、具体的に言えば、まだまだ大戦の傷はいえていないと思うんですよ。そういったことを踏まえながら謙虚に話し合う、外交努力をとことんする、そういったことが大事でありますし、そのことが今の審議の中で、僕の知らない部分もあろうかと思いますけれども、抜け落ちているということが非常に大事だなと。
 また、これははっきり言わせてもらいますけれども、マスコミの皆さんの報道のあり方も少し一面的な面もありはしないかな、そういう思いはします。
 以上です。
今川委員 次に、渡辺先生にちょっとお尋ねしたいんです。
 実は、私は長崎県の佐世保なんです。それで、九州では沖縄に次ぐ米海軍基地なり海上自衛隊の基地もございますが、実は今回、有事法制を議論するある意味で前提として、いろいろな情報が、有事か平時かを問わず、どのように国民にオープンにされているのかということでちょっとお伺いしたいんです。
 実は、今まだテロ対策という名目で、インド洋、アラビア海方面に自衛艦が三隻行っております。そうしますと、この中の護衛艦の一隻の乗組員が、この間、非常に不幸なことに亡くなられたんですが、自衛隊の護衛艦とか補給艦がどういう港に立ち寄っているのか、亡くなられた方はどの港に停泊中に亡くなられたのか、委員会で質問しましても、国会の中で明らかにしてくれないんです。
 それから、今、佐世保と沖縄と横須賀にアメリカの原子力潜水艦がたびたび出入りしているわけですけれども、これは御承知かと思いますが、入ってくるときには二十四時間前に事前通告が米海軍から外務省にあり、外務省から当該の地方自治体に来るわけですね。これが去年の九・一一テロ以降、外務省から地方自治体にまでは来るんですが、これまであったようなマスコミとか一般市民にそれを知らせないということがありまして、これは現在でも続いているんです。既に長崎県とか佐世保市の首長さんは、外務省に対して、もうオープンにしていいではないかということを申し入れしておりますけれども、日本政府、外務省は、それをなかなかオープンにしようとしない。
 つまり、はるかかなた、有事といえばアメリカにとっての有事を日本が支援しているわけですけれども、これが、日本の国土が有事になったときということになりますと、かつての戦争のような大本営発表じゃありませんが、今日の国民に対してどの程度きちんと我が国の政府が正しい情報を公正に知らせてくれるのかということに非常に私は疑念を感じるものです。
 どのようにお考えでしょう。
渡辺久丸君 先ほどの自衛艦の問題は、これはやはりどこの港に立ち寄ったかは軍事機密なんですね、それが事前にわかっちゃうと、例えばアルカイダに攻撃されるんじゃないかとか、そういう口実で。ですから、この軍事機密というのはかなりきついもので、これは当然、言論、報道機関を統制するというのは必ずつながりますよ。
 それで、実はここにアーミテージ報告書を持っているんですが、こういうことを言っています。日本の指導者は、機密情報保護法の立法化に向けて国民の支持を得なければならないと。要するに、軍機保護法を日本はつくらないと、アメリカが日本に情報を出しても、危なくてこれはどうしようもないというふうなことで、こういう法律をつくれと。これは、国会で福田官房長官が、軍機保護法を将来つくるようなことをちらっと示唆したこともあるんですね。
 ですから、そういうことになってきますと、言論機関は当然、あれは指定公共機関ですか、今度の法案ではそういうところで位置づけられていますから、これは言論統制というのは必ず始まりますよ。始まりますよというよりも、もう既に始まっているというふうに見た方が僕は正解じゃないかと思います。
今川委員 ありがとうございました。
 時間が来たようでありますので、最後に一言だけ。
 いわゆる戦後半世紀余り、我が国日本は、アジアとの関係においては、二度と戦争をしませんという平和憲法、プラス、先ほど申し上げたようなアジアの国々に対する経済協力、経済支援、この二つの面でこれだけ豊かで平和な今の日本があると思うんですね。だから、そういうアジアの国々に対する信頼関係を損なうような法律だとか行為だとかというのはやはり厳に慎みたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
瓦座長 これにて今川君の質疑は終了いたしました。
 次に、宇田川芳雄君。
宇田川委員 無所属の宇田川芳雄でございます。
 無所属だけではおわかりにならないと思いますが、この間まで21世紀クラブの代表をしておりました。
 私がこの公聴会の最後の発言者でございますので、大変長時間にわたって貴重な御意見をちょうだいしてまいりましたが、あとわずかでございますので、どうぞよろしく御指導をお願い申し上げたいと思います。
 私は、個人的には、今の国際環境の中で日本の立場というものを明確に打ち出すためにはやはり有事立法というものが、いろいろ御批判はあるでしょうが、御議論をいただいた上で有事立法というものをやはりしっかり持って、自分の国は自分で守るんだという独立国家としての意識をはっきりとすべきじゃないかな、そう思っております。外交上の問題も出ましたが、外交をきちんとやるためにも、やはり独立国家としての権威、責任というものをしっかり持っていなかったら外交努力も功を奏さないということでありますから、基本的には、この有事の法制はつくるべきだと思います。
 しかし、先ほどから有識者の、きょうの陳述者の先生方のお話を伺っておりまして、多分、ここへ来て、先生方からのお話はこういうことなんだろうなと想像をしていたとおりでありまして、それぞれのお立場で、それぞれの御意見をちょうだいしたところでございます。
 私ども、瓦委員長のもとでこの特別委員会を開催して、もうかなりの時間がたってきたんですが、国会の中でも、今先生方がお話しになったようないろいろな問題が出されました。出されて、それでは解決したかというと、なかなかそういうわけにはいかないというのが実態でありまして、今もって、先生方のお話の中で疑問点あるいは賛成する点、あるいは理解を深めなければいけない点がまだたくさん残っているわけであります。したがって、きょうの御陳述は、今後の国会の議論の中で大変大きな成果を上げさせてくれるんじゃないかと思います。また、そうしなければいけないと思っております。
 実は、先ほどから片山知事さんのお話、地方行政の中での問題、有事あるいは災害対策等についてお話を伺いながら思っていたんですが、私は東京都議会議員を六期やってまいりまして、どっちかというと地方行政寄りの人間でございまして、いつもそう思っているんですが、知事さんや、きょう尾道の市会議員の井上さんもお見えでございますが、地方行政の中でお考えになっていると、何でこんなにみんなにわからない法律が出てくるんだろうということになるだろうと思います。先ほど知事さんのお答えの中に、関心がないんですよというお話が期せずしてありましたけれども、そうだろうと思います。それではいけないわけです。
 今回、この国会でこの有事法が通ったとします、成立したとします。そして、すぐには起こらないかもしれないけれども、いつ武力抗争というのは起こるかわからないわけですから、武力抗争が起こったとします。起こったとした場合に、自衛隊についてはここに決められたとおりにぱあっと動くと思うんですが、国民が、それじゃというので一緒に腰を上げるかというと、ここがなかなか難しいところじゃないかなと私は思うんです。
 太平洋戦争のお話も出ましたけれども、あの太平洋戦争というのは軍閥が練りに練ってやっただけに、国民に、それはそれは行き届いた教育をやってきましたですよ。私どももその当時の若い者ですけれども、死ぬことは怖くなかった、どうせ死ぬのなら友達よりおくれをとりたくないというところまで、きちっとした教育をして国民に浸透させた。それがいいとか悪いとかは別としまして、やはり有事の大事なことは、国民がもっと理解しなければいけないんじゃないかなと思うんです。
 それでは、これからすぐに国民が理解するような方策を通じてやれよといってもなかなかできないと思いますが、これがここで通過したとしても、早く国民にこの点を理解させなければいけない。そのためには、都道府県を中心として区市町村、東京には区というところもあるものですから、区市町村などが、それぞれの自治会であるとか地域の団体を通じて指導をして、こういう形で持っていくんだよ、こういうことになったんだよ、だから地方の行政としても、あるいはそれぞれの地域の自治体としても理解して協力しようじゃないかという気持ちが沸き上がってこないと、もうこれは魂の入らない法律になってしまうということじゃないかと私は心配をしているわけであります。
 すぐには間に合いませんけれども、しかし、片山知事、後で井上さんにもお聞きするんですけれども、いわゆる知事の立場において、どうやったら住民の間にこういったことを理解させることができるか、国にこういうことをやるべきじゃないかという御注文をこの際出していただければありがたいなと私は思っております。
 そして同時に、井上市会議員さんには、一番身近な地域自治体である市という行政の中で、住民に対してこれを理解させるためには、一体、国が県を通じてどういう形でこれを協議してもらうのがいいんだろうか、そういうお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
片山善博君 今先生のお話を伺っていて、国民みんながこぞって何か臨戦態勢みたいになるのは、これはちょっとどうかなという気が私はするんです。むしろ、地方自治体、特に県とか市町村が、一たん有事の際には国民保護のために何をなすべきかということをしっかりとわきまえておくということがまず第一だろうと思います。
 しかし、おっしゃるとおり、自治体だけがわきまえていても国民の皆さんが全くというのではこれはいけませんので、それは適宜訓練をするということが有効だろうと私は思います。
 災害のときにも、防災訓練というのをやるんですけれども、年中行事みたいになってしまいかねないんです。私は三年前から、それではいけないというので、実は本当に真剣な訓練をやったんです。先ほど来ちょっと出ていた意見と関係するんですけれども、まさか地震なんか起きませんよ、特に鳥取県の西部なんて地震が起きたことないんだから、ありっこないよという意見が大勢だったんですけれども、でも、ひょっとしたらというので訓練もしたんです、それは自衛隊や消防や警察の皆さんと一緒に。そうしたら、案の定、訓練した二月後に起きてしまったんです。
 そのときに思いましたのは、ああ、訓練して本当によかったと思いました。それは我々の行政機関が、自分が何をなすべきかということがしっかり身についていましたし、それから周辺の関係の皆さんが、やはりそれなりの認識ができていた。では、県民、住民の皆さんがすべて知っていたかというと、それはありません。ですけれども、核になるところが知っていて、対応方針を過たなければ、住民の皆さんは協力をしていただけます。だから訓練ということだろうと思います。
 あとは、私はやはり最終的には、この問題というのは政治に対する信頼があるかどうかということだろうと思うんです。正直言って、今、本当に信頼を崩すようなことがぼつぼつ出ていますので、それは本当に皆さん方の力で、役所の問題点などはきちっと整序していただきたいと思うんです。
 やはり国民の信頼のためには情報公開というのが一番であります。その情報公開をめぐって今、国民の不信を招くようなことが起きているというのは、これは本当に悲しいことなんですね。絶対にああいうことがないようにしていただきたい。
 それから、本当にきちっと、政治家の皆さんも、それから中央官庁の皆さんにも、国民が信頼を寄せるような素地をつくっていただくということが、私は、この問題を国民の皆さんが広く認識をして、いざというときにはみんなで一致協力して被害を最小限にとどめようという、その力を合わせることにつながるんだろうと思います。ぜひ、そのことをお願い申し上げたいと思います。
井上文伸君 有事の際に、私の場合は市民にどのように徹底させるかということですが、有事にもいろいろ内容はあろうかと思います。
 災害的なものなら、今知事さんが言われたように、本当にまさに訓練以外に道はなかろうかと思います。
 私はもともと、議員になる前は尾道の消防の方におったわけですが、私がやめると同時に神戸の震災があったわけでございます。尾道からも、広島県からもかなりの応援部隊が集結したということもございますが、ああした大きな災害になりますと、今まで日本でもそう例はないわけでございますが、地方から応援に行ったところはなかなか思うようには行動がとれないということもありますし、またその中で、いろいろな反省点を私も聞いたわけです。
 ちょうどメディアの方もおられますけれども、六千人近く、ちょっと何人亡くなられたか人数を忘れましたけれども、あのときに、まだまだふだんなら助ける余地があったということを隊員が言っております。それから、悲鳴とか助けてほしいという言葉が相当なところでしておるんだけれども、上空のヘリコプターの音で全然聞き取れないんだと。これが一番捜すのに、相手の声を聞き取るのに時間がかかったというようなこともありますので、そういうことで、今度はいろいろな面での訓練も、そういう上空のヘリコプターの取材も含めた、いろいろな大がかりな訓練をこういう災害ならやっていかなければならぬのだと思います。
 それで、今片山先生が言われましたように、政治家の信頼が落ちておると。いろいろありますが、私も二、三回ほど国会の傍聴をさせていただいて、たまたまきのうもちょっと本会議を、三分か五分しか時間がなかったんですが、傍聴させていただいたんです。
 その都度私が一番気になるのは、きのうは盛んに一般の人も言われたですけれども、先生方が本会議のときにどういう態度をしておるか、上からみんな見ているんですよ。それで、きのう圧倒的に多かったのは、政治家がこれだけ態度が悪いとは思わなかったというのが出てきたんですよ。議長がいろいろなことを言われても全然聞こえぬのです。先生方も、何か知らぬけれども、メールの電話を持ってこういうふうに一生懸命している人がおる、うちわを持って隣と話をしておる人がおる。その雑談がきのうは特にすごかったということで、きのう観光客の方もかなり大勢傍聴されておるようでございますが、まあちょっとここからも、やはり日本の最高機関の国会議員があの程度ではなかなか教育の問題もできぬのだろうと思いますので、そういうことを含めて、政治家が信頼されるようにひとつやっていただきたいと思います。
 要らぬことを申しまして済みません。
宇田川委員 国会議員の立場で、今の問題についてはみんな拳々服膺しまして、これから気をつけるようにしますけれども。
 地方自治体の行政の方が、国の行政より取り組むことが早いんですね。もちろん、法律を凌駕した条例はできませんけれども、やはり動くことになったら自治体の方が早い。そういう行動力と知恵を私どもにまたこれからも遠慮なくお与えくださいますようお願いいたしまして、終わります。
 ありがとうございました。
瓦座長 これにて宇田川君の質疑は終了いたしました。
 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のために格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げます。きょうはありがとうございました。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後五時三十五分散会


2002/06/05

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