2002/06/10

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平成十四年六月十日(月曜日)

瓦委員長 次に、工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございますが、御答弁をよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 今回の核をめぐる福田官房長官の御発言、これは、先ほど来の議論になっておりました、安倍官房副長官が早稲田大学で学生さんたちに講義をした際に、核兵器の保有とか使用が我が国の憲法上許されるか否かということに言及をされた、そのことが物議を醸してこういうような状況になった、こういうことだろうと思うのであります。
 安倍官房副長官、講義の内容を報じた週刊誌を、報道関係を一切入れないで、オフレコの状態での講義だったので突っ込んだ話をした、それを外部に持ち出して揚げ足取りをする、ひきょうでルール違反だ、このように批判をされたというように聞いているわけでありますが、ただ、当該週刊誌がどういう方法で入手したかということを抜きにしても、やはり内閣官房の中枢におられる副長官としてのお立場、あるいは、今この委員会で何を審議しているか、有事法制を今真剣に審議しているような、そういうときのことを考えれば、やはり何といっても、余りにも不用意な発言だった。
 官房副長官、先ほど来、弁解でもない、何でもないといったようないろいろなことを言われておりますけれども、何を言われようと、例えば同じことを、何も悪いことをしていない、また別なところで、あす大学に行って言いますよといったようなことを仮に言ったとしても、いろいろなことをおっしゃっておるわけですから、どんな弁解をしようとも、これは不用意だったと思わなければならないだろう、私はこのように思うわけであります。――よろしいですよ、まだ。ちょっと待ってください。僕はあなたに御答弁を求めているわけじゃないんです。
 これに対して、福田官房長官、核兵器の保有に関して、政治論では持てないけれども、憲法上もしくは法理論的には持ってはいけないと書いてはいない、最近は憲法も改正しようというぐらいになっているから、国際情勢や、国民が持つべきだということになれば非核三原則も変わることもあるかもしれない、このように発言をされたと聞いているわけであります。
 非核三原則を国是としている我が国の政府の中枢におられるお二人、官房長官、副長官でありますけれども、簡単に核保有の問題に言及をして、しかもお二人とも、何か先ほど来お聞きしておれば、第三者的な発言に聞こえるんでありますが、その発言の内容が、国是を厳守していくんだという姿勢も気迫も全く感じられない。このことはゆゆしき事態だ、私はこのように思うわけであります。
 これらの発言について、韓国におられた小泉総理は、大した問題じゃない、どうってことない、このようにコメントをされたということでありますけれども、冗談ではありません。これは内閣総辞職に値するような、私は大変な問題だ、笑っておられますけれども、私は本当にそのように思うんですよ。総理の御認識は今でも韓国での、大したことない、どうってことないとおっしゃったような、同じお考えなのかどうか、まずお伺いをしておきたいと思います。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 非核三原則、変わらないんですから、問題ないです。
工藤委員 非核三原則、変わらないから問題がないと。
 例えば、仮に、小泉内閣の官房長官、副長官というような方が、もちろん先ほどから、非核三原則には変わりがない、政府の方針を変えたわけではない、ずっとそういうような御答弁がありましたよ。ただ、官房長官とか内閣の中枢におられるようなそういう方が、しからば何を言っても、実際は言っただけだ、そう言っただけなので、訂正もしたし、それで、方針は全く変わっていないんだから別に問題はないんじゃないか、そんなような、何でも発言をしていいということになりますよ。だから……(発言する者あり)何か言いましたか。ですから、私は今の小泉総理の御答弁、全く解せないんですよ。
 特に、官房長官は軽率であったというようなことも言われたといいますけれども、そういう弁明だけで……(発言する者あり)軽率だと言っていないんですか。しかし、例えば、この問題で同盟国とかあるいは近隣諸国に無用の懸念を与えたということは、これは事実でありますよ。また、唯一の被爆国として、我が国の国民感情、これを逆なでした。ですから、国民もマスコミもあんなに騒いで警鐘を鳴らしているわけですよ。警鐘を鳴らしているということは、これはお考えいただかなければならない。
 そんな簡単な、どうって問題じゃない、大したことじゃない、そういうようなことではないというふうにやはり政府の責任者は考えていただかなければならないと思いますし、我々野党は官房長官の罷免を要求しているわけでありますけれども、これは当然しかるべき責任をとらせる問題だ、私はこのように思うんでありますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 罷免する考えはありません。
工藤委員 ということは、先ほどから何度も申し上げて恐縮なんですが、官房長官の御発言というのは、どうって問題ではない、大したことじゃない、非核三原則を守るんだから、言うことは何と言ったとしても、守るんだから、それは大したことがない、そういうふうなことなんですか。もう一度お願いします。
小泉内閣総理大臣 非核三原則は小泉内閣、変わりません。問題はありません。
工藤委員 いやいや、これはもう一国の総理として、失礼ながら真剣にその辺を考えておられるのか。ただ守るために、例えば一内閣一閣僚とかそういうようなことで守るために、火をきちっと早く消さなきゃならない、そのためにというようなことなんですかね。いずれにしても、資質を問われるようなそういう御答弁だ、私はこのように思うんです。
 それでは、当事者たる福田官房長官に今度はお尋ねをさせていただきます。
 一連の記者会見で、福田官房長官は、日本には非核三原則がある、長距離ミサイルや核爆弾は、理屈からいえば持てるけれども政治論として持っていない、このように話されたと私は聞いておりまして、さらに、記者に追い打ちをかけられて発言内容が二転三転したあげくに、秘書官から耳打ちをされて、ICBMは持てない、このような発言をしていわゆる軌道修正をした、このように聞いているわけであります。
 核兵器の従来からの政府見解からしても、大陸間弾道ミサイル、ICBMは持てないことは自明の理なわけであります。それを官房長官は、最初には長距離ミサイルや核爆弾は理屈からいえば持てるというように発言をして、修正をしたわけでありまして、このような基本的な見解もわきまえずに話されたということでありまして、内閣のかなめにおられるお立場としては極めてふさわしくない、私はこのように思うわけであります。
 しかも、発言されたときは小泉総理が韓国を訪問しておられて、そして内閣総理大臣臨時代理というお立場でもあったわけでありまして、みずから責任を明確にするということは当然だと私は思うんでありますけれども、官房長官、従来の政府見解を踏まえて御答弁をいただきたいと思います。
福田国務大臣 私の会見とそれから懇談が一緒になって、私に都合の悪いような部分だけを取り上げますと、そういうふうなことになるんだろうと思います。
 私の真意は、もちろん、何度も申し上げておるところでございますけれども、非核三原則を厳守する、堅持するということですね。これはもう歴代内閣がずっと言い続けてきていることでございまして、また、この内閣においてもこの考え方を一切変えることはない、これはもう何度も申し上げているところでございます。
 なお、私の発言で誤解を招いたということでありますけれども、私の真意は今申し上げたことでございまして、そういうことを前提にした上での話であるということでございます。
工藤委員 小泉総理は、我が国が核拡散防止条約に加盟をして、さらに包括的核実験禁止条約の早期発効を国際社会に働きかけているということは、当然忘れてはいないわけでありますが、我が国がどのような手段というか方法で、核廃絶という究極の目標に向かって世界に働きかけをしているのか。官房長官の発言が、我が国の核政策に関して内外に無用な疑念を抱かせたり、国益に反したとお考えにならないのか、その点を伺います。
小泉内閣総理大臣 我が内閣の政策、変わりません。問題はないと思っています。
工藤委員 非核三原則は、沖縄返還交渉時に佐藤内閣が明確にした基本方針でありまして、その後、衆議院でも遵守するということを決議した、まさに国是なわけであります。
 小泉内閣は、歴代内閣の方針を踏襲して、先ほど来からおっしゃっておりますように、堅持するというようなことで再三おっしゃっておられるわけでありますが、ちょっとお尋ねをしておきたいのは、歴代内閣が堅持してきた、そして、みずから、いわゆる小泉内閣も、堅持をする、守っていくんだ、自分の以降の内閣もやはり、我が国としてはこの非核三原則は堅持するべきだというようにお考えなのか、後の内閣では見直すことがあってもやむを得ないとかいいとか、どうお考えになるのか、その辺を伺っておきたいと思います。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
小泉内閣総理大臣 我が内閣は、非核三原則、堅持いたします。後の内閣、どの政党が内閣をとるかわかりませんけれども、非核三原則を堅持してもらいたいと私は思っております。
工藤委員 まあ、同じ話をしてもあれですから、ちょっと当委員会の質疑についてお尋ねをしたいのでありますけれども、いわゆる武力攻撃事態関連法案、これはずっと今、私も理事としてこの運営に携わってきているわけでありますが、いかにも問題が多い、そういう法案だと。
 先ほど総理は、自民党の方の質問に対して、全部これを通してもらいたいと思っているといったような、そういう御答弁をされたのでありますけれども、いろいろな問題からいって、今国会での成立は、物理的に見ても困難ではないか、私はこのように思っております。
 何しろ三十年も前に、旧ソ連時代に、北海道にソ連が攻め込んでくることを想定して研究したものをもとにして防衛庁がつくった法案なわけでありまして、それを、いろいろ今日まで、まだまだ精査したり検討したりする、そういう時間は十分あったわけですけれども、それをせずにぼおんと今出してきたといったような法案でありまして、仮に会期を延長したとしても、これを成立させる必要があるのかどうか。
 自民党の大幹部の方々は、これは欠陥法案だというようなことをはっきりおっしゃっている方々がたくさんおられるわけですから、そういう中で……(発言する者あり)いや、言っていますよ。言っている。新聞にもちゃんと載っているんだから……(発言する者あり)
瓦委員長 質疑は続けてください。静かにしてください。
工藤委員 ですから、修正の話なんかも、審議を一回もする前から出ていますよ、いかようにも修正に応じるとかなんとかというのが新聞等で。まあ新聞も、さっきから、週刊誌で出ていたのも信用もできない、適当なことを書いているとか、新聞もそうだと。ところが、どの新聞もそういうふうに書いているんですから。まあみんな、その新聞がどうもおかしいと言われればそれまでなんですけれども。ですから、修正、そういうようなことをやろうとしても、だれもこんな欠陥法案に乗ってくる政党、考え方はないだろう、私はこのように思っております。
 ただ、一つ言えることは、有事法制というものは我が国にとって極めて大事な、必要なる法案だ、これは絶対やらなければならない。ただ、やるについては、きちっとしたものをつくって出さなければならない。例えば自衛隊を守るための法案とかそういうんじゃなくて、真に、むしろもっともっと国民を本当に守っていくんだという、そういう法律案でなければならないわけでありますので、私は、この際一たんこれを撤回して、そして二年間なら二年間、そういう期間をつくってもいいと思いますよ。これまで、いろいろな議論がこの委員会で出てまいりました。それを踏まえてきちっとしたものをつくって、そして再度提出をするのが妥当だろう、私はそのように思っているところでございます。
 これについて、総理から一言御見解を賜りたい、このように思います。
小泉内閣総理大臣 委員も有事法制の必要性を認めているわけでありますので、建設的な議論を進めて、ぜひ成立を期したいと思っております。
瓦委員長 時間が参りました。
工藤委員 時間が参ったようでありますので御答弁は求めませんけれども、どうかこの政府提出の有事法案、よくお考えになって、そして一たん引っ込めた方がいい。そして、今我が国にとって最大の有事は、やはり景気を回復させることだと私は思っております。ですから、景気対策に全力を尽くすことを御要望申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
瓦委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章です。
 二度にわたる原爆投下で、一瞬のうちに二十万人を超える人々の命が奪われました。今なお数十万人の方々が苦しめられているのが核兵器、大量殺りく残虐兵器です。この悲劇を世界でただ一つ体験した被爆国がこの日本です。
 小泉総理にまず伺いたいと思います。
 この日本の総理として、日本が非核三原則、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず、これを国是としていることの重大性について、これをどう認識されているか、まずお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日本としては二度と戦争を起こしてはならない、これが政府としても国民としても最も外交・安全保障上の大基本方針だと思います。だからこそ、平和に徹する、経済大国になっても軍事大国にならない、非核三原則を堅持する、これは、平和国家に徹するという意思表示を内外に明らかにしているところであると私は考えております。
春名委員 歴代政府は、例えば三木首相、七五年二月十三日、「日本の不変の原則」だと、この非核三原則を。不変の原則。それから、七八年三月六日衆議院予算委員会、福田首相、いかなる政府ができても、非核三原則の国会決議は「いかなる政府によっても守られなければならないし、守られる」。一九八〇年十月二十日衆議院決算委員会、鈴木善幸首相、「この非核三原則を国是として堅持していく、今後においても変わりはございません。」つまり、非核三原則を不変の原則として将来にわたって守り抜いていくという、そういう態度表明をしてまいりました。
 ところが、先ほど来のお話を聞いていますと、長官は、先の話を聞かれても困るというニュアンスのお話をされている。小泉総理自身も、自分の内閣ではそれはないが、将来の内閣のことは言えない、できれば守ってもらいたいということを言いましたが。
 そこで、私はお聞きしますが、小泉内閣になって、この三原則というのは不変の原則ではなくなったというふうになるんでしょうか。違うんですか。
福田国務大臣 それは、私どもは不変の原則だと思っておりますよ。その上で、そういうような不変が変化しては困るということも含めて、私どもは、いろいろと機会があれば、そういうことにならないようにという、そういう教育は若い人たちにはしているつもりでございます。
春名委員 それでは、お聞きをしますけれども、福田長官は、国の安全保障のあり方については、それぞれの時代、状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的な議論があり得るということを、この間の六日の参議院の外交防衛委員会でもお答えになっているし、先ほどの委員のいろいろな質問にも、そうお答えになっている。要するに、情勢によって変わり得るという認識を繰り返し吐露されているわけなんです。
 私は、これが問題の核心ではないかと思うんですが、将来にわたって守り抜く、堅持するという歴代内閣の立場と今おっしゃっていることは、私はだれが聞いても明らかに違うんじゃないかと思うんですが、どうですか。
福田国務大臣 この間の報道された部分は、これはもう極めて短い時間のやりとりだったわけであります。そしてまた、その他のこともいろいろ話しているわけでございますので、そんな突き詰めた話でももちろんないし、また私は、そんな誤解を受けるような発言をした覚えは全くありません。
 国の安全保障の問題ということになれば、核の問題も当然議論される対象になるわけでしょう。そういうようなことで、これからも議論そのものはさまざまな議論があるんだろうというふうに思います。そのことが私は当然だと思っております。
春名委員 国の安全保障のあり方については、それぞれの時代、状況、国際情勢を踏まえた国民的な議論があり得る、これは国会答弁で言っている。
 もう一度確認しますが、国の安全保障のあり方の中には当然非核三原則も入るでしょう。
福田国務大臣 日本の場合にはそういうことは当然入ると思います。
春名委員 そういうことでしょう。だから、情勢によっては、国民の変化によっては、この安全保障、その中の大きな部分を占めている非核三原則の問題についても検討の対象になるときが来るかもしれない、そういうニュアンスのことを少なくともおっしゃっているということを今お認めになっているわけですよね。それが問題の核心ではないでしょうか。――待ってください、質問しますから。
 そのことが世界に大きな衝撃となって走っているわけですね。
 韓国紙の朝鮮日報二日付、世界平和と北東アジアの秩序に対する重大な挑戦、日本の国際感覚の水準を見せたもの、小泉首相は福田長官を即刻更迭し、非核三原則を厳守する意思を明確にしなければならない。
 それからニューヨーク・タイムズ、九日付の一面ですね、先ほども出ました。ここでは、「日本で核兵器のタブーが挑戦受ける」という見出しで一面に掲載をされる。「一部の有力政治家が半世紀の平和主義政策を破って核兵器保有を検討し始めた」、ニューヨーク・タイムズの一面です。東アジアだけではなくてアメリカでもこのような衝撃が走っている。この責任を、この重大性をどうお感じになっているんでしょうか。
福田国務大臣 そういうことですから、報道というのは極めて慎重にあらなければいけないと私は思います。報道の責任は私は問うつもりはありません。報道というものは、時としてひとり歩きすることもあるし、また間違った取材で間違った報道をすることも当然あるわけでございますから、そういうときは謙虚に反省をしていただきたいと思います。
春名委員 何か、報道した記者の方に責任をなすりつけるようなとんでもない発言なんですね。いいですか。産経新聞の一日付、「非核三原則は、今まで憲法に近いものだった。でも今は憲法も変えようという時代だから、国民が持つべきだとなったら、これからは分からないかもしれない。」これが一日付。東京新聞の一日付、非核三原則は憲法のようなものだ。しかし、最近の世論は「憲法も改正しようというぐらいになっているから、非核三原則も変わることもあるかもしれない。」朝日新聞の二日付、「非核三原則は憲法に近いものだからねえ。しかし、今は憲法改正の話も出てくるようになったんだから国際情勢や国民が持つべきだということになるかもしれないよ。」読売新聞の二日付、「まあ非核三原則も憲法に近いものだったが、いまは憲法改正も(国民の意見として)出てくるのだから、何か起きたり、国際情勢の変化があれば、国民の中に「(核兵器を)持つべきだ」という意見が出てくるかもしれない」。ほとんど同じことなんですね。国民の世論の変化、国際情勢の変化があればそういうことも検討の対象になり得るかのような、全部同じ報道になっているんですね。
 そこで、六日の外交防衛委員会の質疑では、福田長官は、安全保障全般の議論のことを言ったんだとおっしゃった。先ほども言った。しかし、その安全保障の全般の議論の中にも非核三原則という問題は大きな柱としてある。このことについて、情勢の変化でどうなるかという話をしているわけじゃないですか。ですから、こういう報道が次々と出るのは私は当たり前だと思うんですよ。
 真意でないとおっしゃるのは、それは勝手ですけれども、しかし、そこに問題の核心がある。私は、非常にそのことを憂慮せざるを得ないわけです。
 そこで、総理に私は聞いておきたいと思うんですが、非核三原則の核心は一体何かということです。ただ一つの被爆国として、この日本が三原則を国是として今も将来も守り抜くというのは当然だろうと思います。同時に、この持たず、つくらず、持ち込ませずという三原則は、二十一世紀の世界から核兵器をなくすという決意が込められているものだと私は思いますけれども、総理はこういう認識はおありでしょうか。
小泉内閣総理大臣 核廃絶を訴えている日本としても、最も大事な原則の一つだと認識しております。
春名委員 もう一回聞きます。
 二十一世紀の世界から、この非核三原則を日本が守るだけではなくて、核を一刻も早くなくしていく、そういう決意がこのメッセージに込められているというように、当然国民みんな受け取っているわけですが、総理も同じ御認識でしょうか。
小泉内閣総理大臣 核を廃絶したいという国民の願いと、そして日本として、核兵器をつくる能力があるにもかかわらず持たない、経済大国になっても軍事大国にはならないんだという決意を表明した大事な原則であると思っております。
春名委員 いや、私が聞いているのは、日本の決意として、それはそうなんです。持たない、これからも持ち込ませない、つくらせない。当然なんですけれども、世界から、今核兵器がある、核兵器をなくすという決意を日本の立場として表明しているものであるという認識でいいかどうかと聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 核廃絶への努力をしている、当然だと思っているんです。今まで言っている答弁はそのことでございます。
春名委員 要するに、将来どうなるか、あるいは国際情勢がどのようになっていくか、そういうことにかかわらず、今私は、非核三原則の精神が世界の流れと合流しつつある、非常に大事なときに来ていると思うんですね。つまり、核兵器の廃絶が、今や究極の課題ではなくて、期限を切った課題となってきている、ここが大事だと思うんですね。直ちになくすというのが今本流になり始めている。
 一昨年の四月、五月に、NPT、核不拡散条約再検討会議が開かれました。そこで、新アジェンダ連合、これはブラジル、エジプト、アイルランド、スウェーデン、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカなどの国々ですが、この新アジェンダ連合とASEAN、東南アジア諸国連合、その提案で、核兵器廃絶の目標から究極的の言葉が外されました。自国の核兵器の完全な廃絶を達成することが核兵器保有国による明確な約束だとする最終文書が、アメリカを含めて確認をされています。この年の国連総会では、この決議が圧倒的多数で採択をされています。アメリカも否定できないところまで国際世論が、究極ではなくて期限を切った課題として盛り上がっている、そういうとうとうとした流れがある。
 そこで、総理に御確認をしたいと思います。究極的ではなくて、期限を切った核廃絶に全力を尽くす、努力をする、そのことを言明していただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 核軍縮に向けて、今米ロも努力を継続している。日本としても、核廃絶へ向けての努力は今後も継続していきたいと思っております。
春名委員 一般的に核廃絶の努力を聞いているのではないのです。世界では、期限を切って、究極的ではなくて核廃絶をする、二十一世紀の早い段階にこれを実現しようというとうとうとした流れがある。いいですか。その流れの最先頭に立って、あなた方が言うのであれば、非核三原則をこのように守ると言うのであれば、そういう立場に立った努力をするということを、きょうテレビが入っていますから、明言していただくということが大事じゃないでしょうか。
小泉内閣総理大臣 核廃絶への外交的努力は、今後も継続してまいります。
春名委員 いや、そうではなくて、今問題になっているのは、努力をするのは当たり前なんです。期限を切って、明確に、一日も早く核廃絶を実現するというのが流れになっている。その流れの先頭に立ってほしい、立つべきだ、これが非核三原則の精神じゃないかということを言っているんです。その点どうですか。
小泉内閣総理大臣 一日でも早く核廃絶ができればいいと思っております。
春名委員 一日でも早く核廃絶できればいいとおっしゃったんだが、実際、日本政府がやっていることはどういうことですか。昨年の国連総会、二〇〇〇年の決議の中で最も重要だった内容である、核保有国は自国の核兵器の完全な廃絶を達成することを明確に約束、明確に約束ですね、というふうにするという合意事項をあいまいにする決議案を日本政府が出して、新アジェンダ連合それからNGOから大変な批判を浴びる、こういう失態を演じているじゃないですか。全然違うじゃないですか。
 それから、もう一点、小泉総理大臣に聞きますが、ブッシュ政権は今、テロとの闘いで核兵器を使うこともあり得る、こういう大変な発言をされる。包括的核実験禁止条約からの離脱、あるいはミサイル防衛構想、核使用の拡大、新しい核兵器の開発という大変危険な逆流が生まれている。しかし、私が知る限り、小泉総理は、アメリカにはアメリカの事情があるという立場しか言っていないんじゃないでしょうか。なぜこういう新たな逆流に対して毅然として立ち向かわないんですか。そこを私は聞きたいです。
小泉内閣総理大臣 政治家として、理想を見きわめつつ現実を直視するということも大事なんです。世界情勢、軍事情勢、よく見ながら、核廃絶に向けて日本の立場を進んでいきたいと思います。
春名委員 その現実が、世界では、核兵器を期限を切って廃絶しようという流れになっているということを私は言っているんです。指摘しているんです。なぜそこの先頭に立つと言えないんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、共産党の見方といろいろな見方は必ずしも同じじゃない。日本としては、核廃絶に向けて、現実を見きわめながらもこの理想に向かって進んでいきたいというのが、日本の、小泉内閣の立場でございます。
春名委員 では、総理にお聞きしますけれども、先ほど私、二番目にお聞きしましたけれども、ブッシュ政権になって非常に重大な発言が相次いでいますね。核兵器を使うこともあり得る、小型の核兵器を新しく開発する、包括的核実験禁止条約からの離脱、ミサイル防衛構想、大変憂慮していますよ、ほかの国々はみんな心配していますよ、こんなことでいいのかと。そういうときでしょう、今。
 そのときに、アメリカ、そんなことをやっちゃだめだと、非核三原則を守る立場からきちっと世界の中でそういう立場を表明する、間違っているというふうに言う、それが日本の首相の姿勢じゃないんですか。政府の姿勢じゃないんですか。その点はどうお考えなんですか。
小泉内閣総理大臣 核を保有しながらも、核削減に核保有国は努力しようとしている。一見矛盾していながらも、いかに現実を平和な世界にしていこうかという努力もしているんです。よく理想と現実を見きわめながら理想に近づける努力をする、私はこれが大事だと思っております。
春名委員 ですから私は言っているんですよ。理想と現実がギャップがあるとあなたが言う。だから、今、その世界の中で、核兵器を期限を切ってなくそう、残虐兵器は直ちになくしたい、そういう強い流れがあるわけでしょう。その強い流れを推し進めれば、その理想を早く現実のものにできるじゃないですか。
 歴代の政府は、私も全部調べましたけれども、残念ながら、アメリカに追随して、核兵器廃絶の決議について賛成するというどころか、棄権をしたり、あるいは反対をするという場合も時にありました。そういう態度から、きょう皆さんがおっしゃる、非核三原則を本当に守り抜く、国是としていくということが本当であれば、こういう今の現実を見たときに、このことに対して能動的に、核廃絶が一日も早く実現するように全精力を注ぐというのが日本の政府の当たり前の務めであって、その現実を早くするというのが当たり前の務めだと思うんですよ。なぜそのことが言えないのか。期限を切ってやります、そういう提案もしますという立場に立つべきじゃないんですか、総理大臣。
小泉内閣総理大臣 現実はすぱっと一面で切れないんです。核廃絶に向けた努力をしつつも、あらゆる事態においては核の使用も辞さないという国がある、現実に。とうとうと核廃絶の流れといいながら、あくまでも核兵器を保有しておきたい、あるいは開発したいという国もあるんです。そういう中で、日本としては、非核三原則を堅持しながら核廃絶に向けてどういう努力をしていくかということが大事なのであって、それが、共産党みたいに、日米安保条約は戦争に巻き込まれる、自由民主党は、日米安保条約こそは日本の平和を守るものだ、百八十度違うんですから、いろいろ見方は違います。
 できたら、日本は軍事力を一切持ちたくないんです。しかし、我が国の安全を守るためには、我が国の必要最小限度の軍事力も必要だろう。そういう中で、日米安保条約を締結しながら、協力しながら日本の平和と安全を守るという現実を見きわめなければならないと思うのであります。
 世界から軍事力が一切なくなればいいですよ。そうじゃないんですから、理想と現実というのをよく見きわめながら進まなきゃいけないというのが我々の立場であります。
瓦委員長 春名君、時間が参りました。
春名委員 安保の話とは別次元でありまして、国民の総意として、核兵器を廃絶、非核三原則を守る、これを世界に生かす、これが国民の総意、だから国是なんですよ。安保の次元の話じゃないんですよ。その先頭に立とうと当たり前のことを言っているのに、そのことがあいまいなままにされる。私は、これでは国民、被爆国民の気持ちは本当におさまらないということを申し上げて、そして福田長官の罷免を求めて、私の質問を終わります。
瓦委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。私は、被爆長崎県民の一人として、これから、小泉総理を初め、質問を行いたいと思います。
 本日のこの審議の中で私が最後になるわけですが、きょう一時から始まったこの審議を聞いていまして、例えば安倍官房副長官の力み方、あるいは、特に与党、とりわけ自民党の席からきょうはいつも以上に激しい不規則発言が見受けられますが、何をそんなにあせがっているのかなというのが実感であります。
 さて、非核三原則、この問題は、実は非核三原則というふうに呼ばれるのは一九六七年あたりからであります。といいますのも、当時は、ベトナム戦争の拡大、あるいは私が住んでいる佐世保に米海軍の世界初の原子力空母エンタープライズが寄港しまして、全国規模の激しい闘いがございました。また、七〇年安保を間近に控えている、あるいは沖縄の返還交渉、こういった当時のもろもろの背景があってこの非核三原則は大きな議論となったわけであります。
 そこで、まず福田官房長官にお伺いをしたいのであります。
 先ほど、安倍副長官も含めまして、いわゆる真意が正しく伝えられていない、こうおっしゃっていました。あたかも、週刊誌や新聞など、いわゆるマスコミに責任を転嫁するかのごとき御発言だと受け取ったんですが、仮に、おっしゃるように、報道されたのが真意ではないんだ、それは誤解だというのであれば、このように今、インド、パキスタンは御存じのように非常に軍事的緊張が高まって、一つ間違うと核戦争だってあり得るかもしれない、そういう厳しい時期であり、一方では日韓のワールドサッカーが行われている。あるいは、この委員会では非常に重要な有事法制の今審議の途中である。こういう時期に余りにも時期が悪いのではないかという気がしますし、報道によると、与党の内部からも、安倍副長官の発言や福田官房長官のおっしゃったことが余りにも時期が悪いんじゃないかという声が聞こえてくるわけですけれども、そこをどのようにお考えですか。
安倍内閣官房副長官 今の御質問は、時期がよければいいという意味なんでしょうか。
 これは時期いかんにかかわらず、私が先ほど来申し上げましたように、早稲田大学での授業で述べましたことは、これは授業の場で質問があったものでございますから、従来の政府の見解あるいは一々答弁を紹介したということでございます。
 そのときに、もちろん先ほど来申し上げておりますように、非核三原則についてお話をしております。そして、非核三原則がございますから政策的な選択肢としては排除されているということも申し上げております。そして、憲法解釈論と政策論は別でありますということを誤解のないように申し上げたわけでございまして、先ほど、日本人が誤解しておるじゃないかと私が言ったということでございますが、私が言ったポイントは、政策論、いわゆる憲法論あるいは法律でできるということになれば何でもやるんだということではないのだ、むしろ、たとえ憲法上それができるということになっても、国が主体的に意思として、政策としてやらないということはあり得るということを私は申し上げたわけでございまして、そのところが誤解をされているということでございます。
 私が、週刊誌等々が必ずしも私が述べたことを、真実を伝えていないということを申し上げたわけでございますが、要するに、週刊誌に書いてあることがすべて本当ではないということはもう委員がよく御承知のとおりではないだろうか、このように思うわけでございます。そういう意味におきまして、私は先ほど来申し上げておりますように、核を保有するというような話を政策論として述べたことは全くないということを申し上げておきたい。今までの、従来の政府の見解をそこで紹介をしたというだけでございます。しかし、念のために非核三原則も言及をしております。そしてまた、さらには政策論と憲法解釈論は違うということも申し上げております。
 従来、自民党内閣は毎年毎年、核廃絶決議案を国連の場に提出をし続けているわけでございます。そしてまた、CTBTが発効せしめるように各国に主体的に働きかけているというのも、これは自民党政権がずっとやってきたことでございまして、小泉政権も同じでございます。その前提に立っての私の早稲田での講義であるということも申し添えておきたい、このように思います。
今川委員 では、次は小泉総理にぜひお伺いをしたいと思います。
 先ほどの野党の委員の質問に対しまして、まず福田官房長官は、記者懇の中で、最近は憲法も改正しようというぐらいになっているから、国際情勢や国民が持つべきだということになれば非核三原則も変わることもあるかもしれない、このようなことをおっしゃり、しかし小泉総理は、少なくとも小泉内閣である間は核を保有することはあり得ないということをはっきりおっしゃいました。
 しかし、福田官房長官のこのお話、文脈を読みますと、国際情勢が変化をしたりあるいは我が国の国民の意識に変化があった場合には、核武装の選択肢、その余地は残っているというふうに聞こえますし、国民の核武装してもいいのじゃないかという声が仮に出てくる、そうした場合には国民の意識に任せてしまうのか。そうではなくて、この非核三原則を含めまして日本の非核政策の立場から、国民が誤った選択をしようとするときにはやはり政府が主導をして、そういう方向ではいけないという主体的な立場を堅持なさるのかどうか、そこをまずお答えください。
小泉内閣総理大臣 福田官房長官の発言は、記者とのやりとりの中での話だと思います。憲法論あるいは法律論の中で話したのでしょう。小泉内閣として、政策論としては全く関係ありませんから、小泉内閣、この政策は全く変わりません。
今川委員 福田官房長官にお尋ねしたいと思いますが、繰り返しです。
 いわゆる国際情勢が変化をしたり、あるいは、きょうの産経新聞にありますのは、九日付のニューヨーク・タイムズの中で、先ほどもちょっとありましたが、例えば中国の台頭や米国による安全保障の効果への不安などから、国民の中に、日本も核武装していいんじゃないのか、そういう声が仮に出てきたときに、我が国の政府として、あるいは内閣官房として、どのように対応をなさろうとするのか、そこをお聞きしたいんです。
福田国務大臣 国の安全保障に関しまして、これまでもいろいろな意見がございました。そして議論もあったとおりでございますけれども、今後もさまざまな議論があるだろうと思います。
 ただ、民主主義国家において、政治家が国民の声に謙虚に耳を傾ける、このことは極めて大事なことで、当然のことでございますけれども、その一方で、流れに身を任せるというのではなくて、国のあるべき姿、政策について見識を示すということは、政治家、特に政権を担う者の責任であります。
 私も、予見され得る将来において、非核三原則を変更する必要性は全くないと考えております。各国でもって誤解を生ずるということが仮に起こるのであれば、その誤解は解く努力をしなければいけないと思います。
今川委員 ところで、我が国の原子力基本法あるいはいわゆるNPT、この建前からも、日本は二重、三重に、やはり核兵器を持つことはまかりならない、そういう法律上、制度上の仕組みはあると思うんですね。
 そこで、これは防衛庁長官に、中谷長官にお尋ねをしたいと思うんですが、いわゆる歴代内閣、それからここ数十年来の国会の議論の中で、日本のいわゆる必要最小限度の自衛力の範囲内に入り得る核兵器だったら、憲法の法理論上は許される、こういう議論がありますね、考え方がありますね。
 そうした場合に、例えば、核兵器にかかわって、攻撃的あるいは防御的、もしくは戦略的核兵器あるいは戦術的核兵器、八〇年代以降は、その相中に戦域的核兵器という概念も生まれてきましたね。そこの区分けというのをどのようにお考えですか。
中谷国務大臣 一般論といたしまして、どのような装備が自衛のための必要最小限度の実力を超えて憲法九条二項が禁じる戦力に当たるのか、また、どのような装備が自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまるかにつきましては、基本的には我が国が保有する実力の全体の評価の問題でありますけれども、個々の装備のうちでも、その性能上、専ら他国の国土の破滅的破壊のためにのみ用いられる装備を保持することは許されないということでございます。
 したがいまして、核についてどうかというお答えでございますが、我が国は現実に核兵器を保有できないのは明らかでありまして、保有できないものについて、保有を仮定して検討したり議論することは控えたいと思っております。
 それから、攻撃的、防御的ということで、戦略核兵器、戦術核兵器の用語でございますが、戦略核兵器というのは、相手国の都市、工業中心地、重要軍事施設、戦略的目標の破壊を目的とした核兵器をいうのに対して、戦術核兵器というのは、相手国において、相手国の部隊、施設、また戦術的目標の破壊を目的とした兵器をいうものでございます。
今川委員 これは中谷長官、通常は飛距離による、例えば長距離ミサイルだと一万キロを超えるとか、あるいは戦術核兵器だとそうではないだとかありますが、今中谷長官もおっしゃったように、他国に壊滅的な打撃を与え得るかどうかという基準からしますと、たとえ戦術核兵器であっても、相手国の水際まで行って、届く距離から仮に発射した場合には、壊滅的打撃を与えることも可能なんですね。そういった意味では、いわゆる戦略核兵器はだめだけれども、戦術核兵器はいいだとかという議論は成り立つ余地はないと僕は思うんです。
 それからもう一つは、これはもう釈迦に説法でしょうが、通常兵器も含めて、攻撃的兵器であるか防御的兵器であるかというのは、これはコインの裏表に等しいんですね。攻撃的でもあり防御的でもある。
 そういった意味で、これは小泉総理にぜひ決意を伺いたいのでありますが、世界で唯一の被爆国だからこそ、これまで延々と議論をされてきた、国会答弁が繰り返されてきましたが、この際、少なくとも核兵器は憲法の法理論上も持たないということをはっきりさせる、国際社会にはっきりメッセージを送る、そのことの方が解釈の余地も生まれてこないんではないでしょうか。そういった意味で、これまでの内閣法制局を含めたそういう法理論上の解釈をきちんと変更するということの方が、要らざる誤解を国際社会に与えないで済むのではないかと思うんですが、小泉首相、どうですか。
小泉内閣総理大臣 解釈となると、法律学者がたくさんいますから、今でも憲法についてはいろいろ解釈があるわけです。
 解釈はどうあれ、我が内閣は非核三原則を堅持して変わらないんです。問題ないんです。
今川委員 ところで、これは外務大臣にちょっとお尋ねしたいと思いますが、時期も時期、今月の六日、横須賀を母港としている米海軍のミサイル駆逐艦カーチス・ウィルバーが被爆地長崎に入ってきました。これは川口大臣は御存じだと思いますが、金子長崎県知事や伊藤長崎市長は、少なくともこういう時期に被爆地に核搭載可能な米艦船が入ることは回避していただきたいということを再三申し入れをなさっております。これをどうして断ることができませんか。
川口国務大臣 長崎県知事それから長崎市長が、今委員がおっしゃったようなお申し入れをいただいたということについては、外務省から事前に米側にはお伝えをしておりまして、地元のお気持ちを認識するようにということを申し入れておりました。
 一般的に言いまして、米軍の艦船の日本の港への寄港につきましては、これは日米地位協定第五条に基づきまして、我が国の港へ出入りをする権利が米軍艦船は認められているところでございます。我が国としては、このような米軍の権利が円滑に行使されるように、これを確保する条約上の義務を負っているわけでございます。
今川委員 およそ答弁になっていないんですよ。
 例えば、これはもう一度小泉総理にお聞きしたいと思いますが、日本時間で今月の八日、アメリカは再び臨界前核実験を行いました。これはCTBTの手前も、核爆発までは伴わないといいながらも、一番アメリカにとっての同盟国であり、友好国の総理大臣として、これから世界の核軍縮を進めていく上においても、やはりアメリカに言うべきことはきちんとおっしゃっていただく、臨界前核実験もやはりやめていただきたい、そういう具体的な言動が伴って初めて、大事な非核三原則の精神が生きてくるんではありませんか。
 その点、小泉総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは核軍縮という重要性を認識した中での実験であると私は理解しております。
今川委員 冗談じゃないんですよ。
 この臨界前核実験というのは、幾つかの目的がありますが、既に保有している核兵器を保存していくための検証、それからさらに、極めて超小型の新型核兵器を開発していく、そういう目的もあるわけですね。核軍縮をしていくために臨界前核実験をやっていいんだという、こんな乱暴なお話はないと思いますよ。
 さらに、七八年のこの国会での決議の中で、非核三原則を国是とするということとあわせて、非核武装地帯を設置し、日本はこれに努力をしていくということも決議をされたわけですね。
 そうしますと、我が党の土井党首が昨年我が党として構想を出しましたが、東南アジアにはASEAN地域フォーラムという安保の対話の場が出てきました。今度は北東アジアの方にそういう非核地帯を設置していく、それで全アジア的に対話の枠組みをつくっていくということを構想として出しております。
 我が国政府として、そういうアジア地域の非核地帯構想というものをどういう形で推進しようとされるのか、小泉総理の具体的な決意なり考え方をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 安全保障上の問題というのは、一国だけではなかなか成り立ち得ません。関係諸国との協議の上に、安全保障上の問題、軍縮の問題、外交の問題というものを協議していくべき問題だと思っております。
今川委員 もうほとんど時間が参ったようでありますが、小泉総理を初め皆さん方は当然御存じだと思うんですが、今全国で、昨年五月時点での集約では二千五百九十八自治体、全自治体の中で七九%の自治体が非核都市宣言を採択いたしております。これは人口比でいきますと九割を超えるんですね。そうした国民の九割以上の皆さん方が、非核三原則に対する信頼感、そして、我が国はもとより国際社会で一日でも早くやはり核兵器を廃絶してほしい、そのように願っているわけであります。
 そういった観点からしますと、今回の福田官房長官の発言であれ、安倍副長官の発言であれ、私は、必ずしも誤解を招くような発言というよりも、やはりそういう事実上オフレコの場でついつい本音が出てしまったんだ、そういうふうに受け取らざるを得ないと思います。そういった意味で、私は、少なくとも福田官房長官の罷免を要求して、私の質問を終わります。


2002/06/10

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