2002/07/03-1 |
肥田議員、国民保護法制への認識の甘さを追及 (民主党ニュース)
3日、民主党の肥田美代子議員が衆議院武力攻撃事態特別委員会で、国民保護法制の整備に関して質問を行った。
始めに、肥田議員は「緊急事態にあたり、国家や自衛隊が超法規的な行動に走らないようにルールを作って自衛隊の行動範囲を定め、かつそれが一度も発動されないように国際環境を整えることが外交の基本であり、最大の国益である」と国防のあり方を提起。続けて「しかし今回の有事法制に関しては、自衛隊の自由自在な行動を保障した反面、国民の安全保障の法整備を後回しにしたため、残念ながら国民に大きな不安を抱かせる結果となっている」と有事法制の進め方の誤りを指摘した。
さらに肥田議員は「これから法整備される国民保護法制はどのような手順で進めるのか」と福田官房長官に質した。福田長官は「2年間を目標に説明会を継続し、国民の理解を得るように努力する。そのためには時間は必要であり、現段階では具体的に示せるものはない」と言うにとどまり、政府の認識の甘さを露呈するかたちとなった。
とりわけ肥田議員は、自治体と国との関係において「緊急事態になった場合に学校などの子供集団の保護・避難・誘導の際の指揮命令系統はどうするのか」と質問。福田官房長官は「現在具体的な答えはなく、今後検討して決めていく」としか述べられなかった。
最後に肥田議員は「全ての質問に対して一つも具体的な答弁を得ることができなかった。今回の法案は憲法の枠内に収め、明日を担う子供たちの未来に一点の曇りもないものになるよう国民的な議論をしっかりやるべきだ」と締めくくった。
平成十四年七月三日(水曜日)
○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。
私は先日、本院の派遣で、国連の子ども特別総会に出席してまいりました。その総会で、ボリビアの少女、十三歳でございましたが、その少女が、私たちは子供たちにふさわしい世界を欲しております、なぜならば、私たちにふさわしい世界はだれにでもふさわしい世界ですから、そういう趣旨の演説を行いました。国連総会の演壇に子供が立ったのは、歴史上初めてのことでございます。
私は、その演説を聞きながら、人類の歴史で起きたすべての戦争は大人が始めたものである、子供は常にその犠牲者であった、そのことを改めて思い起こしました。特に、第二次世界大戦におきまして、広島、長崎、沖縄の惨劇においても、ベトナム戦争や冷戦後の地域紛争においても、時には軍人、兵士たち以上に女性や子供たちが犠牲となっております。こうした教訓からしましても、国防の要諦、哲学は、国民の安全保障でなければならないと私は痛感いたしております。
私は、緊急事態に当たって国家や自衛隊が超法規的な行動に走らないよう、ルールをつくって自衛隊の行動範囲を定め、かつ、それが一度も発動されないような国際環境を整えることが外交の基本であって、それがまた最大の国益だと考えております。しかし、今審議中のいわゆる有事法制三法案は、自衛隊の自由自在な行動を保障しようとしている反面、国民の安全保障に関する法整備を後回しにしたために、残念ながら国民の大きな不信を招いております。
そこで、お尋ねをいたします。
国民保護法制の整備につきまして、緊要性を認めながら、二年以内を目標とするという期限設定をしておりますが、なぜ、緊要性にかんがみ、同時提出ができなかったのでしょうか。
○福田国務大臣 委員がいわゆる有事法制についての必要性というものを重要と考えていらっしゃるというお話でございまして、大変そのことについて私どもの考えていることを御理解いただいているというように考えて、ありがたく思っております。
ただいまの、二年以内、こういうことでございますけれども、国民の保護のための法制におきましては、避難のための警報の発令とか、また被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧等の諸措置につきまして、国とか地方公共団体、また公共機関等の各機関の役割を具体的に定めていく、こういうことが必要になるわけでございます。そのために、法制の整備に当たりましては、関係機関の意見や国民的な議論を踏まえまして、十分な国民の理解を得られるように仕組みをつくっていく必要があると考えております。
法案では、法制整備の目標期間を二年以内というようにしているところでございますけれども、この法案が成立した後には、関係省庁と協議を進めまして、早急に国民の保護のための法制の策定作業に着手をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
○肥田委員 今、官房長官から十分な国民の理解というお言葉がございましたけれども、今回提出された法案につきまして、国会審議に入りました後も、国民の大半の方々が内容を知らないとおっしゃっている。今後こういうことが絶対に起こらないように、国民保護法制の整備につきまして、国民の十分な理解を得るためにどんな手順と方法を考えておられるか、お聞きしたいと思います。
○福田国務大臣 実は、今から二週間ほど、三週間になりますか、全国知事会、知事の方々に全国からおいでいただきまして、そして、そこで説明会をいたしました。それまでも、各地方自治体に対する説明ということは緊要だということでございますので、このことにつきましては、この法制の準備をして、時期的にはちょっとはっきり覚えておりませんけれども、四月ぐらいから、いろいろと説明をする機会を設けて、地方自治体に対する説明をしてまいっておるところでございます。
今後も、十分なる御理解をいただくために、いろいろな形でもってそういう場を設けて、そして説明をし、そして国民に十分な御理解をいただくように努力をしてまいる所存でございます。
○肥田委員 例えば、地方公聴会である知事さんから、この法案によって、自治体の長は国民保護の責務を負うことになります、しかし、何ができますか、住民に避難を命ずる、誘導する、消防署をどう使うのか、そうしたことは二年間待てと、そんなのんきなことになっている、そういうことをおっしゃっておられましたけれども、確かに、国民の保護法制に係る内容はすべて今後の検討事項にされております。
そこで、不幸にして二年以内に法整備ができなかった場合は、法案に盛られた内容の多くは発動できませんから、法律の一時凍結または別途緊急法を制定するとか、いろいろ検討しなければならなくなると思いますけれども、発動できないような事態になった場合、どのような法的措置を考えておられますか。
○福田国務大臣 これから二年を目標として、いろいろと御理解をいただくために説明もしてまいりますけれども、国民との関係における法制については、国民の十分な理解をいただかなければいけない。そのために多少の時間はいただきたいという考え方をしておるわけであります。
仮に、この法制が未整備の間に武力攻撃事態が発生した場合という御質問でございますけれども、これは警察法とか消防法などございますが、現行法の規定に基づいて、国民の生命、身体及び財産の保護や国民生活の安定のための必要な措置を可能な限り講ずる、こういうことになるわけでございます。
このような、現行法におきましても国民の生命身体等を保護するための措置を講ずることはある程度可能でございまして、武力攻撃事態においても、現行法の規定のもとに国、地方公共団体その他の関係機関が最大限の努力をするということは当然でございます。
しかしながら、武力攻撃に伴う国民の被害への対処は、災害等の現行制度での対処とは異なる側面も多いと考えられます。そのために、政府としては、武力攻撃事態対処法案が成立した後は直ちに国民の保護のための法制の整備に着手する、こういう段取りになっておるわけでありますけれども、国とか地方などの各機関の権限、対処措置を実施するための体制とか、それから財政措置、そういうことを可能な限り早期に具体化していく、そういう考え方をいたしております。
○肥田委員 国民保護法制の内容は多方面にわたり、さまざまな国内法それから国際条約との調整も必要になると思っております。そうした複雑な作業を二年以内に実施できるようにするためには、私は、今官房長官がこの法律が通ってからとおっしゃいましたけれども、既に相当の準備が進んでいるはずであるというふうに考えます。
国民保護法制に関する法整備の検討は現在どこまで進んでいるのか、改めてもう一度お聞きしたいと思います。それから、きょうまでの到達点がもしあればお知らせください。
○福田国務大臣 国民の保護に関する法制につきましては、いろいろな可能性というものは考えておるところでありますけれども、それを具体的にお示しする、そういう段階には今ございません。並行作業しなければいけないと思っておりますけれども、それも国民の御意見を聞きながらということもございますので、しばし猶予をいただきたいというように思っております。
○肥田委員 すべてはこれからという御答弁でございますけれども、私が先ほどから国民保護法制にこだわっておりますのは、この法律が私権の制限にかかわる部分が相当比重を占めている、その理由からでございます。基本的人権の尊重や憲法上の適正な手続保障といった、戦時の私的制限、それに対する考え方を国民にはっきり明確に示さなければ、私はこの法案が国民の信頼を得ることはできないと思うわけです。
もちろん、本法律案でも、その基本理念の中で、権利制限が加えられる場合は、必要最小限度のものであり、公正な手続のもとで行われると定めておりますけれども、私はこれは極めて抽象的だと思うわけです。私的制限に関するもっと具体的な歯どめ策が国民にわかるように、私は国会審議を通じてその方向性ぐらいは示すべきではないかと思うんですけれども、官房長官、いかがですか。
○福田国務大臣 国民の権利、そういうことにつきましては、これはこの法制に定めております。大きな枠組みにおいては、ちょっとその具体的な場所が出てこないのでありますけれども、そういう定めはしっかりいたしておると考えておりますので、そういう大きな枠組みのもとでこの法整備も行われていく、こういうようにお考えいただきたいと思います。
○肥田委員 ちょっと、私、今官房長官のおっしゃったことについて、お答えをいただいていないような気がするんです。私的制限、これに関してもう少し国会審議の中で丁寧な御答弁をしていただかないと、幾らたっても、あれはどうですか、これはどうですかというやりとりになっちゃうんですけれども、もう少し方向性ぐらい示していただきたいと思います。これ以上申し上げません。
それから、武力攻撃事態法二十二条では、武力攻撃から国民の生命、身体、財産を保護するための措置として、警報の発令、避難の指示など六項目が列挙されております。さらに、武力攻撃事態を終結させるための措置として、捕虜の扱いに関する措置など三項目が列挙されておりますが、これだけではなく、まだいろいろな検討課題があると思います。法整備をする際の優先順位があれば教えていただきたいし、大まかな所管官庁の割り振りがどのようなものとして想定されますでしょうか。
○福田国務大臣 ただいまの御指摘の二十二条各号に定めておりますそれぞれの措置につきましては、いずれも国全体としての危機管理体制の整備を図る上で極めて重要なものでございます。法案が成立した後に、これらの措置をどの省庁の所管とするかを含めまして、関係省庁と協議を進め、国民的議論の動向を踏まえながら、法案の定める二年という期間内を目標として、事態対処法制の取りまとめに全力で取り組んでまいりたいと思います。順番につきましても、二年という期限の中でございますので、同時並行ということになるんではなかろうかと考えております。
○肥田委員 所管官庁の割り振りもこれからということでございますが、この法律が閣議決定されましたのが平成十四年四月十七日、その日、武力攻撃事態対処法案外二法案が提出されまして、本委員会でも論議が重ねられてまいりました。地方公聴会でも、いろいろな角度から論点が指摘されております。
その大きな論点の一つに、国民の保護に関する法整備の問題がございます。二年以内を目標としてというのであれば、せめて、所管が不明であります、いわゆる第三分類ですね、その分野について、大まかな割り振りとか、このように考えられるとか、その構想ぐらいは私はあると思うんですけれども、いかがですか。
○福田国務大臣 そのことは今検討作業をしておりますけれども、しかし、正式にどこの官庁が所管するかといったようなことにつきましては、これは、この法案が通って直ちに決定し、そして本格的な作業に入る、こういう段取りで考えておるところです。
○肥田委員 これまでの御答弁を伺いながら、私は、「二年以内を目標として実施する」という条文はあくまでも目標であって、期限内に法整備が実現しなくても許されるという考えをお持ちではないかという印象を受けたんですが、本当にできるとお考えですか。
○福田国務大臣 やらなければいけないと思っております。
○肥田委員 それでは、具体的なテーマについてお尋ねしてまいりたいと思います。
いわゆる子どもの権利条約、日本は既に批准しておりますが、この第三十八条におきまして、「締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。」と規定し、「児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。」と明記しております。この条文は、国際社会では、紛争下における子供の生存、成長、保護、自由のための基準になっております。
国民の保護法制の策定に当たっては、こうした条文の趣旨は十分に配慮されるんでしょうか。
○福田国務大臣 ただいま、子どもの権利条約三十八条のことに関してお尋ねがございましたけれども、当然のことながら、国民の保護のための法制の整備に当たりまして、このようなただいまの子どもの権利条約の規定を十分に踏まえて取り組んでまいるという考え方であります。
○肥田委員 外務大臣にお願いします。
○瓦委員長 外務大臣に同様の質問でございます。
○川口国務大臣 冒頭の委員のお話を伺いながら、子供は常に紛争の犠牲者であるということは全くそのとおりだと私も思って伺わせていただきました。
そして、御指摘のございました児童の権利に関する条約でございますけれども、三十八条でございますが、武力紛争において自国に適用される国際人道法上の規定で児童に関係を有するものを尊重すべきこと、並びに、国際人道法に基づく自国の義務に従って、武力紛争の影響を受ける子供の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとること等が定められているわけでございます。
今後整備することとなる国民の保護のための法制につきまして、このような児童の権利条約の趣旨を十分に踏まえられますように、外務省といたしましても努めてまいりたいと考えております。
○肥田委員 私は、この法案のもとで、子供や女性、お年寄り、心身に障害を持つ市民、病虚弱者はどのように保護されるかということに強い関心を持っております。緊急事態という混乱した中で、障害者、病虚弱者、妊産婦、乳幼児、高齢者に対しては、本当に特別の保護が必要になると考えております。国民の保護に関する法整備に当たって、有事弱者とでもいいましょうか、そういうハンディキャップを持つ市民のための緊急のインフラの整備とか特別な配慮、そういうものが必要であると思いますが、そうしたものをこの法文に明記される予定がございますか。
○福田国務大臣 国民の保護についてはさまざまな状況が想定されるのでございまして、具体的な方法について、これは関係機関の意見を踏まえながら、例えば今のお話のような子供とかそれからハンディキャップを持つような住民なども含めまして、住民の安全の確保のために万全を尽くす、そういう措置を講ずるように、国民の保護のための法制の整備の中で十分検討していかなければいけないと考えております。
○肥田委員 担当大臣としての厚生労働大臣からも御所見をいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、非常に弱い立場の皆さん方をどうするかという問題は、非常に大きな問題だというふうに思っております。
平素から、救急医療あるいはまた自然災害等に対しましても、この人たちを、弱い立場の皆さん方を守っていくという立場から、インフラの整備等を進めていかなければなりませんが、武力攻撃といいましたときには、その規模あるいはまた時間、すべての面におきまして、やはり規模が違うんだろうというふうに思っております。そうしました場合に、平素からやっておりますインフラの整備、それだけで十分とは言えない事態になる可能性がございます。
また、化学兵器でありますとかあるいは生物兵器でありますとか、そうしたふだんは起こり得ないことが起こる可能性も想定をして、それらに対してどう対応するかということも考えなければならないというふうに思います。
それら万般にわたりまして、やはり総合的に考えなければなりませんので、今官房長官からお話がございましたように、法整備の上におきましては、そうしたことも念頭に置いて、ひとつ広い角度からの検討が必要であると思っておるところでございます。
○肥田委員 冷戦後の地域紛争において見られますように、非常事態にあって女性が性的暴力を受ける、そういうことが多くございます。性的暴力やその地の非人間的な行為から女性を保護するために、どのようなことを考えておられますか。官房長官に伺いたいと思います。
○福田国務大臣 これも、先ほどの子供またはハンディキャップのある人という、その状況により対応の仕方というのは違うのかもしれませんけれども、いずれにしても、国民の権利というものは、これは十分に確保されなければいけないということであります。
○肥田委員 私は、先ほどからとりわけということでお願いをしておりますので、ぜひ強く心の中に印象づけていただきたいと思っております。
次に、国民の協力及び業務従事命令の対象者に十八歳未満の未成年者も含まれますでしょうか。含まれるとしたら、どのような協力を求め、どのような役割を期待していらっしゃいますか。
○福田国務大臣 この武力攻撃事態におきましては、これはもう何度も繰り返すことでありますけれども、国、地方公共団体及び指定公共機関が対処措置を実施する際に、国及び国民の安全の確保のために国民の方々にも御協力いただくということを期待しておりまして、これは八条に国民の協力について規定をしておるところでございます。
そういう中でもって、例えば、地域における住民の避難、被災者の搬送への協力、国民の生命、身体等の保護のために地方公共団体が実施する措置への協力というような内容を想定しておりますけれども、子供の協力とかそれから外国人の協力とか、そういうものを対象とすることは想定いたしておりません。
○肥田委員 ということは、例えば十八歳未満で、ひょっとしたらそういう従事を求められる職業にある、例えば土木でありますとかそういうところで働いている子供でも、十八歳未満は全部除外されるというふうに見ていいんですか。
○中谷国務大臣 従事命令につきましては、自衛隊法の中で規定されておりますが、これの従事命令の対象となる場所が自衛隊の行動に係る地域以外の地域ということで、戦闘が行われている地域からは離れているが、近接または周辺にある地域であって、一項地域で活動している自衛隊の部隊に対する後方支援活動が必要とされる地域であり、一般的には、住民の避難誘導がいまだ想定されていない地域ということでございます。
そこで、法案によりますと、医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して業務従事命令を発することができる旨、定めております。
これは政令で定めるわけでございますが、内容については現在検討中でございますが、例えば昭和五十六年の有事法制の研究においては、医療等に従事する者の範囲は、「災害救助法施行令に規定するものとおおむね同様のものとする」というふうになっておりまして、これらのものにつきましては、医師、歯科医師または薬剤師のように、法令に定める一定の公的資格がなければ当該業務に従事し得ないことから十八歳未満の者が想定されない場合と、大工、左官等のように、一定の技能を有していれば当該業務に従事し得ることから十八歳未満の者も想定される場合があると考えております。
以上のことを前提としながら、今回の政令の制定に当たりましては、適切に業務に従事する者の範囲を定めるべきものと考えているところでありまして、十八歳未満ということで当然に業務従事命令の対象とはならないとは考えておりません。
なお、労働基準法の第五十六条において、満十五歳に満たない児童を労働者として使用することを禁じておりますが、たとえ武力攻撃事態という国家の緊急事態であるといえども、そのような児童に対し業務従事命令を発するようなことは想定をしておりません。
○肥田委員 防衛庁長官と官房長官のお答えが違いましたが、官房長官、十八歳未満も業務従事命令はあり得るというふうなお答えなんでしょうか。もう一度お願いします。
○中谷国務大臣 官房長官は国民の協力という観点でお話しされまして、これは事態対処法の第八条でございますが、武力攻撃事態において国や地方公共団体が対処措置をする際は、国民は必要な協力をするように努めるものとする基本的な考え方を示してありまして、何ら法的義務を課しているものではございません。
他方、自衛隊法百三条に基づく業務従事命令は、特定の技能、能力を有する者に対して一定の義務を課して業務に従事していただくものでありまして、武力攻撃事態法八条の国民の協力とは異なる趣旨の規定でございます。
したがいまして、十八歳未満の者に対する取り扱いがおのおのの法律において異なっていたとしても、特段の問題はないと考えております。
○肥田委員 それでは、改めて官房長官の御答弁をお願いいたします。
○福田国務大臣 これは、指定公共機関というふうに、先ほど……(肥田委員「いえいえ、国民の協力」と呼ぶ)そうじゃないですね。一般的に国民の協力ということですね。
それは、例えば防衛庁に所属しているということになれば、ただいまの防衛庁長官の答弁ということになりますけれども、一般的に言えば、十八歳未満の人が組織の長であるというのはちょっと考えにくいと思うんですね。
個人に対しては、これは私はないと思うんです。ないと言ってよろしいと思います。しかし、組織の長であるとかいったようなときに、その長が十八歳未満のときに、業務に従う、そういうようなことを命令するとかいったような対象には、一般的にちょっと考えられないということでありますので、その辺は厳密に申し上げることはちょっとできないと思います。
○肥田委員 私が申し上げたいことが官房長官に伝わっていないと思うんですね。
もう一度お尋ねしますけれども、国民の協力及び業務従事命令の対象者に十八歳未満の未成年が含まれますかという問いでございます。
○福田国務大臣 ただいまの、十八歳未満の人を対象に国民の協力を求めるという、そういうことであるならば、その対象には入らないというように考えております。
○肥田委員 自治体と国の関係についてお尋ねしたいと思いますが、武力攻撃事態法の第七条それから八条は、国と地方公共団体の役割分担や国民の協力について触れております。具体的な国と自治体の役割分担がはっきりと書かれていないために、自治体関係者の間に大きな戸惑いがあるわけですね。
例えば、学校現場の子供や幼稚園、保育所の子供たちを集団で避難誘導しなければならないことが起きることも十分に想定されます。しかし、教育にかかわるのは、文部科学省を初め教育委員会、都道府県の知事、市町村の長など多岐にわたっておりまして、関係機関の役割分担が明確にされていなければ、それぞればらばらに動き、現場は非常に混乱すると思うんですけれども、こういうことを私は心配するわけですが、これはあくまで一つの事例としてお尋ねしたいと思いますが、学校にいる子供集団の保護、それから避難誘導に当たって、どこが指示し、責任を負うんでしょうか。
○福田国務大臣 住民の避難なども、これは一つの典型でございますけれども、こういう事態における国民の生命、身体、財産の保護のためのいろいろな措置がございますけれども、今後、国民の保護のための法制において、そういう指揮命令系統についても具体的に定めていくということになります。避難の指示とか避難の誘導に関する事項についても、その際に検討をしていくということになります。
ただいま教育のお話がございましたけれども、教育の保護や避難の方法についても、関係省庁、地方公共団体などの意見も聞きつつ、検討をしていかなければいけないと考えております。
○肥田委員 具体的なお答えがないようでございますけれども、これに関連して一つお尋ねしたいんですが、学校内にシェルターをつくろうというような考え方はあるんですか。
○福田国務大臣 ただいま現在、シェルターを設けるかどうかということを想定はいたしておりませんけれども、しかし、これはやはり、例えば国際情勢とか、また、いろいろな兵器が開発されるのかわかりませんけれども、その必要があるというような状況が生じたときにはそういうことも考えるかもしれない、こういうことでございます。
○肥田委員 周辺事態安全確保法の九条では、地方公共団体の長への協力要請に当たって「権限の行使について必要な協力を求めることができる。」と記されております。これは現行法令を超えた対応を求めるものではないと理解されておりますけれども、武力攻撃事態法案は現行法令を超える協力要請があると見なければいけないと思います。
現行法令を超える協力の内容はどのようなものとして想定されるのか、お尋ねしたいと思います。
○福田国務大臣 この法案の十五条一項に、内閣総理大臣の指示とは、国の対策本部長の総合調整に基づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律に定めるところにより行われるという規定がございます。この対処措置は、法案の第二条六号において、法律の規定に基づいて実施することとされております。
武力攻撃事態において必要となる地方公共団体の長などの権限につきましては、今後、事態対処法制を整備するに当たりまして具体的に検討をしていくということになっておりますが、地方公共団体が万全の措置を講ずることができるように、新たな権限が付与されることはあり得ると考えております。
○肥田委員 武力攻撃事態法案の十五条の規定によりまして、内閣総理大臣は、地方公共団体や指定公共機関に対して指示権や代執行権を持つことになります。
地方自治の本旨からすれば、代執行はないにこしたことはございません。もし代執行に入った場合、当該地方公共団体における武力攻撃を排除するための業務遂行はどのような指示命令系統のもとで行われるんでしょうか。
○福田国務大臣 代執行の命令系統ということでありますけれども、それは本部長がするということ、そしてまた対策本部長が内閣総理大臣に指示をする、これは同一人物でおかしいんですけれども、法的には、形式的にはそういうことなんでありますけれども、内閣総理大臣が指示をする、直接指揮をとる、こういうことにもなるわけでございます。
○肥田委員 内閣総理大臣が指示をするんですが、例えば、その知事さんが嫌だよと寝転んだ場合、総理大臣が指示して、その総理大臣の指示を受けて動くのはだれですか。
○福田国務大臣 それは、結局、国の機関としてやるわけでございますから、ですから、国の機関として行うということになるわけであります。
○肥田委員 ということは、総理大臣が指示して、あと担当大臣がその仕事を代執行するわけですか。ほかの大臣が代執行するんですね。
○福田国務大臣 それは状況いかんでございまして、総理大臣がみずから行うこともあるし、また、担当大臣が行うこともあるということであります。
○肥田委員 総理の指示のもとで関係大臣が指揮に当たるというふうにおっしゃいましたけれども、指定公共機関である輸送とか通信産業、それから日本放送協会等に関しても、この代執行の形は地方公共団体と同じように行われるんでしょうか。
○福田国務大臣 指定公共機関というのは、これは国とは別の組織でございまして、国が行うという、そういう組織体でないということでございます。ですから、代執行という形にはならないと思います。それは、その組織が考えることであるということであります。
いろいろな協力について何をするかといったようなそういう判断というのは、その組織で考えていくことであります。
○肥田委員 今お尋ねしておりますのは、その組織が嫌だよと言ったときに総理は代執行されるわけですが、その代執行の仕組みは、総理が指示して、各所管大臣が地方公共団体と同じようにやはりやっていくわけですかというお尋ねです。
○福田国務大臣 指定公共機関の場合に、例えば放送局を想定した場合に、嫌だというふうに言われて代執行をやろうと思っても、実際にそれを動かすような、そういうことはできないだろうと思うんですね、いろいろな技術的な問題もあろうかと思いますし。ですから、事実上そういうことはできないということになるわけです、その場合には。それは、できればやってもいいということになりますけれども、そういうのは非常に専門性がありますので、事実上はできないんだろうというふうに考えます。
○肥田委員 武力攻撃事態法案の二十一条で、国民が協力したことで受けた損失に関し、財政上の措置をあわせて講じるとしておりますけれども、財政上の措置とあるだけで具体的な内容は不明でございますが、例えば、国民の土地を自衛隊が使用し、化学物質で土壌が大変汚染してしまった、そういう場合には、都道府県とか国は原状復帰の義務を負うことになりますか。
○中谷国務大臣 自衛隊法の百三条に基づく土地の使用につきまして、この第一項のただし書きによりまして防衛庁長官などがみずから土地の使用権限を取得する措置を講じた場合を除き、都道府県が、通常生ずべき損失を土地の所有者等に対して補償しなければならないこととされております。その際、土地の使用により土地が使用前と異なる状態となった場合には、可能な限り原状回復を行うべきものと考えております。
また、今般の法案によって、都道府県がこのような損失補償に要する費用については、国庫において負担するとの趣旨を明記したところでございます。
御質問の土地の土壌汚染がいかなるものか明確でないため、確定的には申し上げることは困難でございますが、損失補償によって対応すべきものである場合には、さきに述べた考え方に基づきまして、都道府県が土地の所有者等に対して補償を行う場合も考えられますけれども、その際、可能な限り原状回復を行うこととなります。しかしながら、自衛隊員の故意、過失によりまして土地の所有者に土壌汚染による損害を与えたような場合には、国が直接土地の所有者、所有権者等に国家賠償法に基づいて賠償すべきものと考えております。
○肥田委員 今回の法案は、これまでの安全保障政策の大きな転換を図り、日本国憲法や地方自治法とも抵触しかねない部分を多く盛り込んでいると思います。憲法の枠内にきちんとおさめ、国内はもとよりアジア諸国の信頼を得、あすの日本と世界を担う子供たちの未来に一点の曇りもないような緊急事態法に仕上げるためには、私は、拙速に成立を急がず、先ほど官房長官がおっしゃいましたように、国民的な論議を十分に積み上げることが必要だと思います。
きょう、お話を伺いながら、やはり具体的な御答弁をほとんどいただけなかったというふうに感じました。ですから、秋の臨時国会をまたぎながらさらに論議を深めてほしい、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
2002/07/03 |