2002/07/03-2 |
平岡議員、対処基本方針の法的効果を問う (民主党ニュース)
民主党の平岡秀夫議員は3日の衆議院武力攻撃事態特別委員会で、対処基本方針の法的効果に対して質問を行った。
始めに平岡議員は、対処基本方針に定められるべき事項を限定する根拠について問題にし、「目的次第では何でもできてしまう可能性がある。法律を作ること自体の意味があるのか」と提起。さらに「対処措置の中で国民の権利を制限したり、義務を課したりする場合、公正かつ適正なものになるのか」と福田官房長官に質した。福田長官は「今後の個別の法制整備において制限される権利の内容や手続きについては、法案の枠組の中で検討する」と抽象論のみの答弁になった。
さらに平岡議員は、対処基本方針が国会で不承認された場合の効果について「全ての対処措置を終了する必要がないとされる場合や自衛隊の撤収が必要ないとされる場合もあり得る。部分承認を認めても良いのではないか」と述べ「政府のやり方だと法律自体、何の法的拘束力もなく意味がない。こんな法律は必要ない」と矛盾した仕組みを批判した。
また、対処基本方針の廃止や防衛出動した自衛隊の撤収について、「なぜ国会の議決による廃止や撤収の義務付けが認められないのか」と追及。福田長官は「閣議決定で決めるものであり、国会決議については尊重する」と述べるにとどまった。
7月3日 有事法制に関する質疑 (平岡議員 今日の一言)
今日、衆議院の「武力攻撃事態への対処に関する特別委員会」で、有事法制関係三法案の質疑を行いました。三法案とは、「武力攻撃事態対処法案」、「自衛隊法等の一部改正法案」と「安全保障会議法の一部改正法案」の3つですが、質問の中心は、「武力攻撃事態対処法案」に関するものです。
今日の質問は、三分野について用意をしていました。第一が、武力攻撃事態になると、内閣によって策定され、国会で承認される「対処基本方針」とその中で定められる「対処措置」についてであり、第二は、民主的統制が如何に図られているかについてであり、第三は、我が国に武力攻撃があった場合の米軍の行動規範についてです。
そのうち、民主的統制については、次のような点について質問をしました。
先ず、有事に関する国会の権限についてです。国会承認を得ないで総理大臣が自衛隊に「防衛出動」命令を出した場合、総理大臣は、直ちに、事後承認を国会に求めなければいけないのですが、その決議をする期限が定められていません。そこで、決議を何時までに行わなければいけないのかの期限を設けるべきではないか、との質問をしましたが、「その必要性があるとは思えない。」との官房長官の答でした。
また、法案では、対処基本方針の廃止や防衛出動した自衛隊の撤収は、総理大臣が行うこととなっていますが、ドイツなどと同様に、国会の議決があった場合には、総理大臣に、対処基本方針の廃止や防衛出動した自衛隊の撤収をすることを法律上義務付けることにすべきではないか、と質問しました。この質問に対しても、「国会の意思は尊重するから、法律上の義務付けは、必要ない。」との官房長官の答でした。某知事のような人が総理大臣になっても、国会の意思を尊重してくれるのでしょうか。
次に、民主的統制の一つの柱である、「文民統制」についてです。憲法66条は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」としていますが、「例えば、武力攻撃事態において、制服組を辞職させて、防衛庁長官に任命することもできるのか。」と聞いてみました。この質問に対しては、「現職の自衛官でなければ問題はない。」との官房長官の答でした。
また、「この法案で、防衛庁長官不在の時にその代行をすることとしている防衛庁副長官に、制服組の自衛官を任命することはできるのか。」、「この法案では、対策本部が設置されたとき、防衛庁長官は、その所属する職員である自衛官に、対処措置を実施するために必要な権限のすべてを委任することができるのか。」を質問しましたが、いずれも「できる。」との答弁でした。
しかし、制服組の自衛官が、防衛庁長官の職務を代行する防衛庁副長官や、防衛庁長官によって対処措置実施の権限が委任される職員になれるとすると、文民統制の趣旨に反することになると思います。私は、「法律で、制服組を除外する旨を明定すべきではないか。」と迫りましたが、受け入れてはもらえませんでした。
今日与えられた時間では、私が確認したいと思っていたことの3分の1も消化することができませんでした。その理由の一つは、今日答弁に立った官房長官、防衛庁長官と外務大臣のいずれもが、質問の度に、秘書官や事務方に答を教えてもらうという状況だったからです。責任大臣なのですから、もっとシッカリ準備をして出席して欲しいものだと思った次第です。
平成十四年七月三日(水曜日)
○平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
これまでこの委員会では、有事法制三法案について多くの論点が出ていると思います。私も議事録でいろいろ見てみましたけれども、その議事録を読んでみても、いろいろな疑問点がさらにどんどんと出てくるようなこともございますし、さらに、これまで論議が余りされなくて、これからまだ論議をしなければならないといった問題点もたくさんあるようにお見受けいたしました。
そこで、きょうはそうした問題の中から少し選んで質問してみたいと思います。
まず、法律の第九条に対処基本方針ということで書いてあるのでございますけれども、この対処基本方針は国会の承認を得なければならないものという位置づけになっておりますけれども、一体この対処基本方針というのはそもそも何のために策定するんでしょうか。そして、その策定の法律的効果というのは一体どういうものなのか。この辺、最初にまず御説明いただきたいと思います。
○福田国務大臣 武力攻撃事態への対処におきまして、国、地方公共団体などが国民の協力を得ながら相互に連携協力し、万全の措置を講ずる必要があるわけでございます。そのために、この基本方針は、武力攻撃事態への対処に当たりましての国としての基本的な方針を明らかにするものであります。対策本部長が、国、地方公共団体等の対処措置を総合調整するとともに、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するための根拠となるものであります。
また、国、地方公共団体等が法律の規定に基づき実施します対処措置につきまして、対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に実施されるものであります。
○平岡委員 いろいろなことを言われましたので、それぞれ何か書かれている内容によって法律的な効果が違ってくるものがあるのかなというような印象も受けたのでありますけれども、せんだっての中谷防衛庁長官の答弁の中に、この対処基本方針には、公表によって国の安全を害するような内容まで含めるということは考えていない、そういう答弁をされているのでありますけれども、本来、対処基本方針に示さなければ国としての基本方針がようわからぬとか、あるいはいろいろな、先ほど来、総合調整の根拠となるとか、あるいは地方公共団体にいろいろなことを要請していくための根拠になるとかというようなことを言っておられたのですけれども、そういうようなものが国の安全を害するような内容であるかどうかというのはちょっとわからないところもありますけれども、こういった公表によって国の安全を害するような内容まで含めなくてもいい、そういう限定をする根拠というのは、どこかに法律の中にあるんでしょうか。
○中谷国務大臣 この対処方針につきましては、総理大臣が、国、地方公共団体の対処措置を総合的に調整するとともに、行政各部を指揮監督するための根拠となるものでございます。また、武力攻撃事態への対処は、国民の理解と協力を得て適時適切に行われる必要がありまして、このため、対処基本方針についてはその内容を公示することといたしております。
法案は、このような観点から、対処基本方針において、武力攻撃事態の認定、事態の対処に関する全般的な方針及び対処措置に関する重要事項を定める旨を定めているところでありまして、公表することにより国の安全を害するような内容が含まれることは想定をされないわけでございます。
そこで、どこに規定をするかということでありますが、この法律の目的を読んでまいりますと、「武力攻撃への対処について、基本理念、国、地方公共団体の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態への対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。」というところでございまして、そもそも国及び国民の安全の確保に資することを目的とするからでございます。
○平岡委員 何か、目的規定を読んだらすべて何かその目的に資することは何でもできちゃうんだというような答弁に聞こえてしまって、それではこの法律をつくる意味がどこまであるのかよくわからないということになってしまうわけで、では、もうちょっと具体的に聞いてみようと思うのです。
対処措置の中にはさまざまなことがあるんだろうと思うのですけれども、例えば、国民の権利を制限したりあるいは国民に義務を課したりするような対処措置の場合、例えばこの法律の第三条の第四項なんかを見ますと、日本国憲法で保障する国民の自由と権利について制限を加えられる場合には、「公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」というふうに書いてありますけれども、この対処基本方針の中に定めるという手続自身は、こうした公正かつ適正な手続というものになるんでしょうか。
逆に言うと、対処措置で国民の権利を制限したりあるいは国民に義務を課すことになるようなものについては、この基本方針の中でちゃんと明記してない限りはそういうことはできないというふうに解するんでしょうか。いかがでしょう。
○福田国務大臣 この対処基本方針は、基本理念として、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」というふうに明記しておるわけであります。
権利の制限を伴う対処措置につきましては、その基本理念にのっとって、制限される権利の内容や制限の程度と、達成しようとする公益の内容や緊急性を総合的に勘案して、今後策定される個別の法制に基づいて行われるということになります。
いずれにしましても、政府としては、今後の個別の法制整備におきまして、制限される権利の内容やその手続などについて、この法案の枠組みのもとで慎重かつ適切に検討してまいりたいと考えております。
なお、対処基本方針には、対処措置に関する重要事項について定めることとなっておりますけれども、実施することとなる個別の対処措置の具体的な内容までを定めるものではございません。また、実施することとなるすべての対処措置についても必ずしも網羅的に記載するものではございません。
○平岡委員 今の答弁を聞いていますと、例えば個別的な法律というのがこれからできたら、その法律に基づいてやる限りにおいては、この対処措置のところに何も書いていなくても、その権利の制限をしたりあるいは義務を課したりすることができるんだということを意味しているわけですね。
そうすると、では逆に、対処措置について規定をここに書きなさいというふうに言っていることの意味は一体何があるんですか。そういうことを書かなくたって、個別の法律に基づいて権利を制限したり自由を制約したりすることはできるんでしょう、今の答弁だったら。いかがですか。
○福田国務大臣 私がただいま答弁しましたとおりです。基本理念というものを申し上げたわけでございますね。
それは、「憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」ということが明記されておるわけでございますので、委員の御質問はそのことで御理解いただけるものと思います。
○平岡委員 全く抽象論的な答えで、私が聞いていることには答えられていないんですけれども、余りやっても仕方がないかもしれませんので、ちょっと質問の角度を変えまして、対処措置に関する重要事項を定めなきゃいけない、こう書いてあるわけでありますけれども、ここの対処措置として書かれるものには、必要的記載措置、例えば、記載されなければいけない、記載されることが義務づけられ、そして記載していなければ実施できないような措置というようなもの、あるいは、任意的記載措置というべきなのかどうかはわかりませんけれども、そういうものとして、例えば、記載することは義務づけられていないけれども記載すれば実施できる措置といったような区別があり得るんでしょうか。そしてまた、逆に言えば、対処基本方針に記載されていなくても実施できる対処措置というものもあり得るのか。そこを端的にお答えいただきたいと思います。
○福田国務大臣 対処基本方針は、対策本部長が国、地方公共団体等の対処措置を総合調整するとともに、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するための根拠となるものであります。
そういうような観点から、この法案では、対処基本方針に必要的記載事項として、まず武力攻撃事態の認定、次に武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、そして対処措置に関する重要事項、この三点を記載することといたしております。
このうち、対処措置に関する重要事項としては、法案に定めます自衛隊の行動にかかわる事項について、必要的記載事項としてこれは記載しなければならないということになっております。その他の対処措置につきましては、実施することとなります個別の対処措置の具体的な内容までを定めるものではなくて、また実施することとなるすべての対処措置について必ずしも網羅的に記載するものではないと考えております。
○平岡委員 ちょっとどうもかみ合わないところもあるのでありますけれども、いずれにしても、この対処基本方針というものがどういう法律的な効果をもたらすものであるのかというところについてはやはりいろいろ疑問が残っているというふうに思うわけであります。
そこで、今度は、この対処基本方針が国会で承認されるべき対象になっているわけでありますけれども、これが不承認された場合の効果としては、例えば第十条の第十項に、「不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。」あるいは「防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。」というふうに書いてあって、不承認された場合の効果ということが書いてあるわけでありますけれども、例えば不承認の場合でもいろいろな理由があるんだろうと思うんですね。
すべての、対処基本方針の中に書かれていること全部がだめだというのもあれば、その中にごく一部書いてある対処措置の重要事項について納得いかないところがある、あるいは出動を命じられている自衛隊のこの部分について承認ができないといった、さまざまなケースがあり得ると思うんですけれども、どうしてこれは部分承認という仕組みを認めていないんでしょうか。まずそれをお伺いしたいと思います。
○福田国務大臣 対処基本方針についての国会の承認の求めに対しまして不承認の議決がある、こういうときは、法案第九条十項の規定に基づいて、この議決に係る対処措置は速やかに終了しなければいけないということになっております。この国会の承認は、対処基本方針について、これを全体として承認するか否かという観点から国会の決定を求めるものであると考えておりますが、そういうことで部分承認等は想定をしておりません。
しかし、仮に対処基本方針にかかわる国会の意思が、対処基本方針の一部についてこれを行うべきではないというものであるならば、当該対処基本方針を変更した上で改めて国会の承認を求めるなど、これを尊重して対処するということになります。
○平岡委員 その変更するのにどれぐらい時間がかかるんですか。変更すること自体は多分閣議決定でできちゃうんだろうと思うんですけれども、そうすると、変更した閣議決定に基づいて、例えばここに「対処措置は、速やかに、終了されなければならない。」と書いてあるような対処措置であっても、直ちに変更の閣議決定をすることによって終了されなくても済むという事態が生じるんじゃないですか。いかがですか。
○福田国務大臣 その「速やかに、終了」ということであるならば、それはできると思います。それは、その必要性に応じてということかもしれませんけれども、そういうことになるんだと思います。それは、安全保障会議を開いて、そこで方針を決め、閣議で承認を得る、そういう手続を経てやるわけでございますけれども、それに非常に時間がかかる、かけなければいけないということもあるかもしれませんけれども、急ぐ場合にはそれなりに急いでやることもできると考えております。
○平岡委員 私の質問の趣旨は、不承認の議決があったら、これは不承認の議決の対象というのは基本方針そのものですから、すべての対処措置を終了しなきゃいけないということがこの法律で義務づけられるわけですね。だけれども、先に質問しておけばよかったかもしれませんけれども、この基本方針というのは、定めるのは、内閣が閣議決定して決めればすぐに決まるわけですから、不承認の対象となった対処措置を含む基本方針をすぐに閣議決定して、我々やりますよとやってしまえば、終了する必要もなく、できちゃうということになるわけですね。逆に、この終了しなければならないという義務づけをしたって何の法的な拘束力もない、そういう事態が生じてしまう、それはおかしいんじゃないか。だから、部分承認という仕組みをつくらないとこれは機能しないんじゃないかということを言っているんです。
○福田国務大臣 わかりました。
国会がこの基本方針のすべてを否決する、もう全部だめだというのであれば、これはもうそこで廃止しなければいけないわけですね。しかし、国会の判断が、その一部はだめだけれども残りはいいという判断をされた場合には、ただいま申し上げたような、これを変更した上で改めて国会承認を求める、こういうことができるわけであります。
○平岡委員 今の答弁の前半部分は、部分承認を認めるという内容の答弁だと思いますね。
オール・オア・ナッシングなんですね、この法律の承認か不承認かというのは。この部分については認めるけれども、この部分については認めない、それは審議の中である程度そういう意見がいろいろあるかもしれませんけれども、そういう採決はどこでもとらないわけです。だから、反対している人もいれば賛成している人もいて、いっぱい、委員の人がそれぞれみんな違うでしょうから、どれが国会の総意かということは議決をとらない限りわからないわけですね。そういう状態の中で不承認だということは、オール・オア・ナッシングのナッシングなんです。
ナッシングだったら、すべての、基本方針に定められている対処措置はすべてやめなきゃいけない。やめなきゃいけないんだけれども、だけれども、定めることは、すぐにまた変更ができるわけですから、内閣がすぐにまた決定して、この部分はやりたいということをやってくれば、法律に書いてある「速やかに、終了されなければならない。」ということは実際に起こらないじゃないですか。こんな法律は意味がないじゃないですか。もう一度どうぞ。
○福田国務大臣 委員のおっしゃるとおり、これはもう大原則、国会で承認を得られなければこれは廃止するしかないわけですね。
ただ、これはその先の話でございますけれども、もし国会でもって、この部分を修正すればよろしいということであれば、それはそういうこともあり得るということであります。
○平岡委員 この問題ばかりやっていても仕方がないんですけれども、我が党の質問主意書の中にも、この部分承認という仕組みを認めてもいいんじゃないかという質問主意書を出しておりまして、その答弁は否定的な答弁であったんですけれども、部分承認を認めないということと、この九条の十項の仕組みというのは矛盾した仕組みになっているということを指摘しておきたいというふうに思います。
次に、この法律の中で民主的統制というのがどのようにできているかという点についてちょっと質問したいと思うんですけれども、この対処基本方針の中で防衛出動についての承認の求めを記載するというような形になっておりまして、この対処基本方針が閣議決定されたら直ちに国会の承認を求めなければならないということで義務づけられているんですけれども、では、いつまでに国会の承認を得なければいけないのかについては、全くこれは規定がないということになっているわけですね。
そうすると、いつまでたっても承認も不承認もしないというような状態が続いたときには、防衛出動した自衛隊が、何らの国会の判断も受けないままに、出動した状態のままになっているということもあり得るわけでありますけれども、そういう意味でいくと、これは承認の期限というものを設けるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○福田国務大臣 この法案は、対処基本方針について閣議の決定があったときは、内閣総理大臣が直ちに当該対処基本方針について国会の承認を求めなければならず、また、自衛隊の防衛出動については、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合であっても、内閣総理大臣が防衛出動を命ずる旨を対処基本方針に記載しなければならない旨を定めているところでございます。
他方、武力攻撃事態への対処の重大性にかんがみて、対処基本方針の承認にかかわる国会の審議については、これに期限を設けるのではなく、不承認の議決があったときには、対処措置を速やかに終了し、防衛出動を命ぜられた自衛隊については直ちに撤収させる制度とすることが適切と考えております。
○平岡委員 そこは、民主的統制がどうあるべきかということについての見解の違いみたいなものがあるのかもしれません。これ以上言っても仕方ないので、ちょっと次に移ります。
今度は、対処基本方針の廃止あるいは防衛出動した自衛隊の撤収の問題について、これもこの委員会の中で議論がされているんですけれども、国会の議決によって、内閣に、対処基本方針の廃止とかあるいは防衛出動した自衛隊の撤収を義務づけるということをすべきではないか、それが国会による民主的な統制ということのあらわれではないかと思うんですけれども、どうして国会の議決による対処基本方針の廃止とかあるいは防衛出動した自衛隊の撤収の義務づけが認められないというふうに考えておられるのでしょうか。
○福田国務大臣 法案におきましては、対処基本方針の必要的記載事項とされております自衛隊の防衛出動を含めまして、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、対処基本方針を廃止する閣議決定を行う旨を定めてございます。武力攻撃事態が終了し、一連の対処措置の必要がなくなれば、対処基本方針を速やかに廃止することとなっております。
また、仮に、対処基本方針の一部について、これを行うべきでないとの国会の意思が、議院の議決等により明示される、そういう場合には、政府としてこれを尊重して対応することは当然のことでございます。
○平岡委員 確かに、今の政府は強いリーダーシップのもとにおられますから、国会の意思を尊重されるということはあるのかもしれませんけれども、一応今までの仕組みの中では、やはり国会が議決をすれば、それに対して何らかの法的な拘束力があるという仕組みにして、政府の暴走を防ぐということはあり得るわけですね。
今、政府としては国会の意思を尊重すると言われましたけれども、尊重するという気持ちを持っておられる方が政府の中におられるのならいいかもしれませんけれども、そうでないときは、やはり国会が議決すれば、ちゃんとそれが対処基本方針の廃止やあるいは防衛出動の撤収ということについて法律的な拘束力を持つものとして存在する意義があると思うんですけれども、どうでしょう、もう一度答弁いただけませんでしょうか。
○福田国務大臣 それは、日本の政治制度において国会の意思というのは、これはもう極めて重大なことであり、これを尊重しなければいけないことも当然でございます。
○平岡委員 それなら、なぜこの法律の中でちゃんと法的拘束力があるものとして位置づけないのか。位置づけたっていいじゃないですか。それは尊重するということであって、国会の意思を無視することはあり得ないんだというのなら、ちゃんと法律で、国会の意思として法律できちっと決めて、そして国会がいろいろな形で示した議決という意思に基づいて政府が拘束されるという仕組みをとることには何ら問題はないと私は思います。
そこで、これ以上やってもまた水かけ論になるかもしれませんから、ちょっと次へ行きたいと思います。
民主的統制の問題。憲法六十六条第二項に、もうよく御存じの話であります、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」中谷防衛庁長官が文民であるかどうかということについては、質問主意書でもちょっと書かせていただいたことがございますけれども、それはともかくとして、武力攻撃事態になったときに、例えば今まで制服組だった人を形式的に辞職させて、その人を防衛庁長官に任命するというようなことは、憲法の趣旨に反していると言えるんでしょうか、どうでしょう。
○福田国務大臣 武力攻撃事態に至ったときであるかとかそうでないということを問わず、自衛官を退職して現に自衛官の職務を行っていない者を防衛庁長官に任命したとしても、一般に憲法六十六条第二項に違反するものではないということになっております。
しかし、枢要な職にある現職の自衛官を退職させて、すぐ防衛庁長官に任命するということは、これは政治論としてもあり得ないと思っております。
○平岡委員 この法律の十一条の六項に「国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣がその職務を代行することができる。」というふうになっているんですけれども、防衛庁副長官に制服組を任命することはできますか。
○福田国務大臣 副大臣、防衛庁の場合には副長官でありますけれども、国家行政組織法十六条三項には、副大臣、副長官というのは、「大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、政務を処理」する、こういうことにされております。
したがいまして、内閣は副大臣及び防衛庁副長官に、それぞれの省庁の政策の企画や国会対応等の政務を担当するにふさわしい者を任命することとなりまして、こうした職務内容にかんがみまして、これまで副大臣等には国会議員を任命してきたところでございます。政治主導の徹底、そういう趣旨で設けられました副大臣及び防衛庁副長官につきましては、こうした考えで今後とも任命に当たるべきであると考えております。
○平岡委員 それはどこにも示されていない話なんで、私は、法律的に防衛庁副長官に制服組を任命することができるのか、法律的にできるのかということを聞いているんです。いかがでしょう。
○福田国務大臣 これは、法律的にはやってはいけないということはありません。しかし、これは、先ほど申しましたような政治主導といったような、そういうふうな観点でこういう制度が設けられた、そういう趣旨から考えて、実際上にはないと考えております。
○平岡委員 それともう一つ、第十三条ですけれども、対策本部が設置されたときには、対処措置を実施するために必要な権限を指定行政機関の長が委任するということができるようになっているんですけれども、この指定行政機関の長に防衛庁長官は含まれますか。
○福田国務大臣 この法案二条三号に基づきまして、政令で定められた場合には指定行政機関というように防衛庁もなるわけであります。したがいまして、防衛庁長官は、法案に定める指定行政機関の長、こういうことになります。
○平岡委員 そうすると、防衛庁長官は、この第十三条の規定に基づいて、制服組の職員に自分の権限を委任することもできますか。
○福田国務大臣 防衛庁長官は、文民たる国務大臣をもって充てられまして、内閣総理大臣の指揮監督を受けて自衛隊の隊務を統率しております。
その権限は、現行制度においても、一定の範囲内で、自衛官を含む同庁職員に適切に委任されているところでございまして、防衛庁長官が指定行政機関の長として、防衛庁が実施する対処措置にかかわる権限を防衛庁の職員に委任するということによりまして文民統制上の問題を生ずるものではないと考えております。
○平岡委員 この第十三条の規定を見ると、対処措置を実施するため必要な権限の全部をその職員に委任することができると書いてあるんですね。
つまり、防衛庁長官は、制服組の人に対して、自分の持っている対処措置を実施するのに、対処措置というのは、前からありましたように、防衛出動とか部隊の展開とか全部あるわけですね。その権限を自分の職員、つまり制服組の職員に委任することができるという法律の内容になっているわけですね。これはそういう理解でいいんでしょう。そういうことができる法律ですよ。どうでしょうか。
○福田国務大臣 防衛庁長官は、文民たる国務大臣をもって充てられまして、内閣総理大臣の指揮監督を受ける、今申し上げたとおりでございます。そういうことによって自衛隊の隊務を統括しております。そういう制度でございまして、この制度下においては、一定の範囲内で、自衛官を含む同庁職員に適切に委任されているところでございます。
したがいまして、防衛庁長官が指定行政機関の長として、防衛庁が実施する対処措置にかかわる権限を防衛庁の職員に委任するという場合にも、同様に適切に委任されているというように考えられることから、文民統制上の問題を生じない、同じことを繰り返しておりますけれども、そういうことであります。
○平岡委員 若干の見解の違いがあるから答弁は否定的になるのかもしれませんけれども、私が今質問の中でいろいろ指摘したような、実際、制服組の人が副長官として防衛庁長官を代行するような状況とか、あるいは、防衛庁長官が全権を制服組の職員に権限委任するというような事態は、本来の憲法の趣旨に私は反すると思うんですね。
そういう意味では、そうした副長官あるいは権限の委任をされる対象となる職員には制服組は入らないのだということをこの法律の中で規定するわけにはいかないんでしょうか、どうでしょうか。
○福田国務大臣 防衛庁の副長官でございますけれども、副長官は、防衛庁長官の命を受けまして、政策及び企画をつかさどり、そして政務を処理するということになっております。仮にこれに自衛官がなる場合についても、同様に文民統制上の問題を生じるものではない、このように考えております。
○平岡委員 今のは、防衛庁長官が文民として存在しておって、そのもとで何か指導を受けているような副長官の場合はそうかもしれませんけれども、さっき私が言ったように、十一条の中では、防衛庁長官が不在のときには副長官がそれを代行すると書いてある。代行するときには、副長官は防衛庁長官と同じようなことをするわけですね。だから、非常に希有なケースなのかもしれませんけれども、そういう細心の注意をした文民統制、民主的統制ということをこの法律の中で図っていかなければいけないんじゃないかということを指摘したいと思うんです。
ちょっと時間がないので、米軍の関係について少し触れたいと思います。
私の地元は米軍基地を抱えておりまして、こういう武力攻撃事態における米軍の行動というものに対して、非常にやはり心配をしているといいますか、関心を持っているということでございますので、確認をしておきたいと思うんです。
我が国が自衛権を発動する場合は、三要件、急迫不正の侵害、他の適当な手段がない、あるいは必要最小限の実力行使ということがよく言われておるわけでありますけれども、日米安全保障条約のもとで行動する在日米軍も、この自衛権発動の三要件が適用されて行動されるということでよろしいでしょうか。いかがでしょう。
○川口国務大臣 御案内のように、一般国内法上の自衛権の発動の要件ということでございますけれども、三つございます。
それから、国際法上、集団的自衛権というものは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利をいうわけでございますけれども、こうした集団的自衛権の行使に当たっては、武力攻撃を受けた国の要請または同意が必要でございます。日米安保条約五条に基づきまして行動する米軍は、こうした、さきに申し上げた国際法上認められた自衛権の範囲内で行動するものであると考えます。
○平岡委員 今の答弁でいきますと、在日米軍の方は出動したいと思うんだけれども、日米安全保障条約があるから、自分たちが出動するかどうかということについて日本側に同意を求める、あるいは協議があるということの中でこの自衛権発動の三要件が守られるというふうに答弁されたということでよろしいでしょうか。
○川口国務大臣 先ほど申しました武力攻撃を受けた国の要請または同意というものの中には、集団的自衛権の行使について、条約等により同意をする場合というのも含まれるわけでございます。
ということで、先ほど簡単に省略をして申しましたけれども、自衛権というのは、国家または国民に対する外部からの急迫不正な侵害に対しまして、これを排除するのに他に手段がない場合、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利であるというふうに一般国際法上考えられているわけでございます。そして、米国は、日米安保条約五条に基づいて、こうした国際法上認められた自衛権の範囲内で行動をするということでございます。
○平岡委員 そうしますと、この前の米国同時多発テロに対して米国がとった軍事行動、あれも、自分たちは個別的自衛権に基づく軍事的行動であるというふうに説明しているわけでありまして、もしそれが、先ほど言いました自衛権発動の三要件を満たしているということであれば、例えば日本の米軍基地に対してテロがあった、あるいは日本でどこかテロがあったということになると、これは米軍は、今回のケースでいくと、アフガンなんかに出かけていって攻撃をするということは日米安保条約上も認められる、逆に言うと、日本もその三要件を満たしているということなんで、日本の自衛隊も出かけていける、こういうことになるんですか。
○川口国務大臣 先ほどのお尋ねの同時多発テロ、これについて米軍がとった軍事行動ということですと、これは、個別的、集団的自衛権の行使として、国連憲章第五十一条に従って安保理に報告がなされているわけでございます。
先ほど申しましたように、一般国際法上、自衛権とは、国家または国民に対する外部からの急迫不正な侵害に対して、これを排除するのに他に手段がない場合、当該国家が必要最小限度の実力を行使する権利であるというふうに考えられているわけでございまして、我が国として、米国から得た情報その他の各種の情報をもとに、米軍の軍事行動は自衛権の行使に当たるというふうに私どもは判断をしているわけでございます。
○平岡委員 今の答弁を聞いていると、やはり何か自衛権発動の三要件というのを満たしている限りは、今回のテロのケースと同じように、アフガンまで出かけていってあんな攻撃をしてもいいというようなことになってしまうという感じがするんですよね。どうも、我が国が自衛権発動の三要件として考えているのは、そんなところまで考えてはいないんじゃないか。
そうだとすると、在日米軍においても、やはり日本が考えているような自衛権発動三要件のもとで行動するということでなければいけないんじゃないかと思うんですけれども、それが担保されていないような気がするんですけれども、いかがでしょう、外務大臣。
○川口国務大臣 御質問の趣旨を多分私はきちんと理解をしていないのかもしれませんけれども、これはまさに、この間のテロに対しての米軍の軍事行動は、個別的、集団的自衛権の行使として、国連憲章五十一条に従いまして安保理に報告がなされているわけでございます。
この件につきましては、米軍から得た情報その他で、米軍の行動は自衛権の行使に当たるという判断を私どももしているわけでございますし、一般国際法上の自衛権の行使であるというふうに、米国のこの間のテロについての行動については考えるということでございます。
○平岡委員 ちょっとかみ合っていないのかもしれませんけれども、国連憲章五十一条に基づいているのであれば、我が国が個別的自衛権を発動する形として、例えばテロがあったときに、この前と同じように、アフガンに行って自衛隊ががんがんミサイルを撃ち込むとかいうようなことをやっても、それは自衛権発動の三要件を満たしているということになるんですね。いかがですか。
○川口国務大臣 昨年の九月の米国におけるテロの攻撃といいますのは、高度の組織性、計画性が見られるなど、通常のテロの事例とは次元が異なって、武力攻撃に当たるというふうに考えられるわけでございます。
我が国は、ある国及びその国民を標的として計画的、組織的にテロ行為が継続して行われる場合には、これを総じて急迫不正の侵害と位置づけるということはあり得るという立場を従来からとってきているわけでございます。
今回のテロ攻撃に対しまして、安保理で、一三六八号の決議、それから一三七三号が採択をされたわけでございますけれども、これは、個別的または集団的自衛権が国連憲章第五十一条で加盟国の固有の権利とされていることを認識して、今回のテロの攻撃に対応して、米国等が個別的または集団的自衛権を行使し得るということを確認したというものだと考えられると思います。
○津野政府特別補佐人 ちょっと補足しますけれども、御承知のように、我が国の憲法のもとにおきましては、従来から、これは海外派兵の問題として、我が国の自衛隊の行動として議論がされてきているわけであります。
いわゆる海外派兵につきましては、この用語についての明確な定義はないわけでありますけれども、海外派兵が憲法九条のもとにおける自衛権の限界との関連で従来から問題とされていたものでありますが、このような観点から、一応、いわゆる海外派兵とは、一般的に言えば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することであるというふうに定義をするとするならば、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないものであるというふうに解してきているわけであります。
したがいまして、我が国の自衛権の行使として、外国の領土において、一般的には、いろいろな武力攻撃をするということは憲法上許されていないというふうに解しているところでございます。
○米田委員長代理 平岡君、質問時間が終了いたしました。
○平岡委員 はい。
その限りにおいてはわかるんですけれども、さっき私がアメリカ軍も我が国の自衛権発動の三要件というのに制約されるんですかということを聞いたのは、日本では確かに憲法があるから必要最小限の実力行使として制約はあるけれども、アメリカ軍は別に、自分の国の憲法はありますけれども、日本の国の憲法にどこまで制約されるかというのは、それはよくわからないので、やはり日本の国の憲法を守るような形で、当然、必要最小限度の実力行使というのは、日本の自衛隊が持っている三要件の中で必要最小限度の実力行使という範囲に同じようにおさまるんですねということを聞きたかったわけであります。
ちょっと時間が来ましたので、これで終わります。
2002/07/03 |