2002/07/24 |
伊藤議員、有事関連3法案の問題点に改めて言及 (民主党ニュース)
民主党の伊藤英成議員は24日の衆議院武力攻撃事態特別委員会で、有事関連3法案をめぐって、その難解さ・問題点に改めて言及した。
伊藤議員は冒頭、民主党はそもそも緊急事態に備える法整備は不可欠との観点で、大規模災害・テロ対策なども含めて政府の有事法制よりも幅広い見地から検討を進め、国会審議を通じて多くの重要論点を提議してきたと説明。それに引き替え、今回提出された有事関連3法案は有事法制に対する政府の姿勢・考え方がはっきりしないと指摘した。
伊藤議員は有事への対処にあたって枢要な機能を果たすべき防衛庁・外務省の状況は目を覆うばかりだとし、防衛庁による公文書偽造・個人情報リスト作成問題、外務省の機密費事件・鈴木宗男の暗躍・在瀋陽日本総領事館事件などの不祥事を取り上げ、「退職・異動したため、責任は問えない」などとする中谷防衛庁長官、川口外相に対し、処分の甘さを厳しく指弾。法治国家にあるまじき、法の趣旨を歪めるものだと政府の姿勢を批判した。
法案の対象とされる事態の認識が時代遅れであり、テロや不審船、ミサイル防衛など、新たな脅威への対象方針がまったく示されていないなど、冷戦後に激変した国際社会の現状にそぐわない内容となっている点も伊藤議員は改めて指摘。「なぜ、今有事法制が必要なのか。日本を攻撃する可能性がある国が具体的に存在するのか」と質した。福田官房長官は「いつあるかわからないものに対し、備えていくのが有事法制である」などとした。
続いて伊藤議員は「武力攻撃事態の定義・認定の規定が不十分であること」、「国会承認・民主的統制のあり方が不適切であること」などを指摘。伊藤議員は「なぜ国会を軽視したがるのか理解できない」とした。また、今回の法案で具体的なのは自衛隊行動の円滑化のみであり、避難・警報、医療・救助など、国民の安全確保と被害最小化への措置が先送りされている点、地方公共団体や指定公共機関の役割・権限・内容等が不明確である点、周辺事態と武力攻撃事態における米軍との関係の不明確さなどにも言及した。
伊藤議員は、有事法制は国民に理解されるものでなければならないと重ねて指摘し、国民の安全と基本的人権を守るための緊急事態法制の整備こそが必要だ、と強調した。
平成十四年七月二十四日(水曜日)
○瓦委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。
○福田国務大臣 先日の委員会で前原委員からお求めのありました武力攻撃事態における憲法で保障している国民の自由と権利についてを御説明申し上げます。
武力攻撃事態における憲法で保障している国民の自由と権利について
一 武力攻撃事態対処法案(以下「法案」という。)第三条第四項において、「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない」と明記し、武力攻撃事態への対処と国民の自由と権利との関係に関する基本理念を述べているが、これは、憲法における基本的人権についての考え方にのっとったものである。
二 すなわち、憲法第十三条は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めているところである。他方、同条自体が「公共の福祉に反しない限り」と規定しているほか、憲法第十二条その他の規定からも、憲法で保障している基本的人権も、公共の福祉のために必要な場合には、合理的な限度において制約が加えられることがあり得るものと解される。また、その場合における公共の福祉の内容、制約の可能な範囲等については、立法の目的等に応じて具体的に判断すべきものである。
三 したがって、武力攻撃事態への対処のために国民の自由と権利に制限が加えられるとしても、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、合理的な範囲と判断される限りにおいては、その制限は憲法第十三条等に反するものではない。
国民の自由と権利の制限の具体的内容については、この基本理念にのっとり、今後整備する事態対処法制において個別具体的に対処措置を定めていく際に、制限される権利の内容、性質、制限の程度等と権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合的に勘案して、定めることとなる。また、損失補償を含め、救済措置等についても、その際に定めることとなる。
四 このため、具体的な対処措置がすべては定まっていない現段階において、武力攻撃事態において制約される自由・権利と武力攻撃事態において制約されない自由・権利を確定的に区分することは困難であると考えている。
五 ただし、例えば、憲法第十九条の保障する思想及び良心の自由、憲法第二十条の保障する信教の自由のうち信仰の自由については、それらが内心の自由という場面にとどまる限り絶対的な保障であると解している。しかし、思想、信仰等に基づき、又はこれらに伴い、外部的な行為がなされた場合には、それらの行為もそれ自体としては原則として自由であるものの、絶対的なものとは言えず、公共の福祉による制約を受けることはあり得る。
また、憲法第二十一条第二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解しており、検閲について公共の福祉を理由とする例外を設ける余地がないものと解している。
六 このような絶対的に保障されている基本的人権以外の自由・権利の制約については、今後整備する事態対処法制において個別具体的に定められることとなるが、例えば、テレビ、新聞等のメディアに対し報道の規制など言論の自由を制限することは全く考えていない。
七 国民の自由と権利に制限が加えられる場合の救済措置としては、行政上の不服申立て、行政訴訟、国家賠償についての一般的規定として、行政不服審査法、行政事件訴訟法及び国家賠償法が存在している。武力攻撃事態への対処においても、行政事件訴訟法及び国家賠償法は適用され、行政不服審査法も、例外的に不服申立てができないと法律上規定されている場合を除き、適用されることとなる。一方、損失補償については一般的規定がなく、必要がある場合には個別法律に明文の規定を設けることにより救済措置が講じられることとなるが、このような明文の規定がない場合においても、司法による救済が否定されるものではない。
八 なお、武力攻撃事態における対処措置は、法案第二条第六号に定められているとおり「法律の規定に基づいて」実施するとされていることから、対処措置の根拠となる個別の法律の規定がないにもかかわらず、法案のみを直接の根拠として、国民の権利義務にかかわる対処措置が実施されることはない。
以上であります。
○瓦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤英成君。
○伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
まず、民主党は、この場でも従来から申し上げておりますけれども、結党以来、緊急事態に備える法整備は必要である、こういう観点に立って精力的に検討もしてまいりました。
民主党の場合は、緊急事態法制といった場合には、政府の今回の有事関連法案よりも幅広く、大規模災害というような事態、あるいは大規模なテロ等重大な事態とか、あるいは外部から武力攻撃を受けるおそれが高い場合、そしてまた実際に武力攻撃を受けた場合、こういう大きく四つの分類に分けて、そしてそれを緊急事態と考えて、それに対する対処的なことを検討してきたわけであります。
そして、今回、この事態特におきましても、私ども民主党としても、いろいろな問題点を十分に解明すべくといいましょうか、真剣に取り組んできた。しかし、今この時点で考えたときに、後ほどいろいろ申し上げますが、実際には、政府としても一たんこの法案については出し直しをした方がいい、こういう考え方に至っております。
しかし、きょうは、この長い通常国会の実質上最後の質疑のときだと私は思いますので、改めて今日まで、いろいろな再確認も含めて質問したいと思いますし、そして、いわば本日の官房長官ほかそれぞれの皆さん方の答弁のされ方いかんで、今後いろいろどうすべきか考えることになるんだろうな、こう思っておりますので、そういうことを踏まえて、ぜひよろしくお願いしたい、こんなふうに思います。
まず最初に、今回のこの法律案について、いろいろ審議をしてきたわけでありますが、私は、そもそも法律案を出している内閣だとか、あるいは防衛庁とか、あるいは直接関係あります例えば外務省についても、それぞれなかなか大変な状況だなと。そういうそれぞれの行政府が国民から見て信頼できるような状況でないと、有事法制などというのはなかなかできないと私は思っているんですね。
そんな意味で、若干、まず防衛庁長官に伺いますが、幾つかあったうちの一つに、これは私も非常に理事会とかいろいろなところでも強く申し上げてきたりしたんですが、いわゆる初等練習機の話がありましたですね。あの初等練習機の問題について、私どもは、公文書偽造問題、こういうことを申し上げてきたんですが、あの問題で、スイス政府とのやりとりの中で会計検査院のポイントという文書を出された。あのときに、いわば防衛庁が勝手に会計検査院の名前をかたって文書を作成した、こういうことですね。そのときに、私どもは本当に法的措置も含めて責任を明確にせよという話をいたしました。あのときに防衛庁がとったことについて、防衛庁としては、あれは事務的ミスだったという話をされました。何で事務的ミスなんだろうか。
私は、ある他の役所のまさに最高幹部といいましょうか、そういう人であった人に聞いてみたんです、どうでしょうかと。そうしましたら、そのある元幹部は、考えられない、自分が役人生活をずっとやってきて、そして自分のいた役所で考えれば、そんなことはもう絶対に考えられない、どんなに重大なことかという話をされました。
今、そういう意味で、この間も私は、これは全然防衛庁としてはしかるべき対処の仕方をしていないという話をいたしましたけれども、どんなふうに思っているか。そして、あのときに責任のあった担当局長は一体どうしたんだろう、それに対しては。これはどうなりましたか。
○中谷国務大臣 まず、当時の担当の局長につきましては、現在もう退職をいたしております。
それから、この問題におきましては、ほかの委員会におきまして一年近くほかの委員と議論を続けてまいりましたけれども、その経緯を申し上げさせていただきますと、これは国会の議論の中で、会計検査を実施することになりまして、その検査自体が特定検査対象に関する検査状況でございまして、これは防衛庁として、対外的な応答要領として、会計検査院に確認をして、議論をして、特定検査対象に関する検査状況として報告された性格づけについてこの応答要領を作成いたしました。
そして、スイス政府からこの報告書について送付してほしいという旨の要望がありましたので、この報告書を送る際に、この性格づけについて適切に伝えた方が親切であるということで、この対外応答要領の内容についても送付をすることが適当と考えまして、報告書の本文とともにこれを送付したい旨、防衛庁から会計検査院に事前に連絡をいたしました。また……(伊藤(英)委員「いや、どうしたかだけを聞いているの」と呼ぶ)はい。
そういうことで、この会計検査院に調整した内容に基づいて、またパンフレットに書いた内容に基づいたポイントを送ったわけでございまして、当方としては会計検査院の了解がとられていたものと思っておりましたけれども、それが十分でなかったということでございますが、その内容につきましては、会計検査院が性格づけをした内容でございまして、この点におきましては、対外的にはきちんと手続をとっていなかったという点で、私自身も、この点につきましてはミスがあったと思っております。
そういう意味で、当方の認識といたしましては、このような事務的なミスから生じたものと思われまして、しかるべき処置をとったわけでございます。
○伊藤(英)委員 実はそういうのがだめだと私は言っているんですよ。
官房長官、実は私はこういう話になると、本当は、実はいろいろなことがあるんですが、一つだけ申し上げたいんですが、ある責任をとらなければならないようなことをした役人が退職したら、あるいはどこかにかわったら、ああ、何も問えませんよというようなことが今平然と言われるんですよね、実は。これは時々そういう話がある。しかし、それは官房長官、私は、何でそんなことが本当はいいのかなと。そもそも論から考えたときに、今はいろいろなことのちゃんと本質を考えなきゃいけない。そのときそのときに責任のある人に、では、何かしたんですかと。実際、今でも防衛庁の関係ある財団法人か特殊法人かどこかに行っているんでしょう。いいですか、そういうときに、もう関係ありませんというようなことをやるんですね。実は、そんなことをするものだから、役人に対する信頼感はどんどん落ちていくということなんですよ。
今の防衛長官の話にしても、実はこれはただのミスみたいな認識でやるんですが、そのこと自身が間違っているんだよと。どんなにか重大視しなきゃいけない。法を守るというのはどういうことか。そんなことを言っているものだから二流官庁なんて言われるんですよ。だから、なかなか庁から省に昇格できない、まあ昇格といいましょうかね、というような話さえ出るの。いいですか。そういう話さえ出る。だから、もっと責任をしっかりと、何か問題があれば、仕方ない、そのときはちゃんと責任をとらせるとかいうようなことをしなければと思うんですが、どう思いますか、官房長官。
○福田国務大臣 御意見は、私もそれはもっともだと思いますよ。今の問題ということでなく一般論として、それはそれなりのことはあってしかるべきであり、またそれが、無事退職して、そして無事天下りしちゃったとかいうようなことについて、それは何をしたかという、その程度というようなものもあるかもしれませんけれども、それはもう一般論として正しい御意見だと思っております。
○伊藤(英)委員 防衛庁長官、ぜひ、私はこの問題は、今後さらに、防衛庁は本当にどういう対処をするかというのをフォローいたします。フォローいたします、今後も。もっとまともに、世の中の人から見ても、ああ、もっともだなという対処をちゃんとやってほしい。
それから、外務大臣に伺います。
この間、瀋陽の総領事館の事件の問題がありました。あのときに外務省は、主権侵害あるいは不可侵権の云々という話で、中国政府に対しました。あのいわゆる不可侵権問題というのは、現在はどうなっているんでしょうか。
○川口国務大臣 先般、私がバンコクでトウカセン中国の外交部長とお会いをいたしましたときに、その瀋陽総領事館事件について話をいたしました。この件について私から、トウカセン外交部長に対して、我が国の総領事館の不可侵が侵害をされたということについての我が国の立場は全く変わっていない、不変であるということを申し上げました。そして、国内にはこの件については非常に強い意見があるということも言っております。これに対しましてトウカセン外交部長からは、従来の中国の立場についての意見の開陳がございました。
○伊藤(英)委員 先日、アメリカの政府の元高官とお話をいたしました。どうでしょうかと私は話をいたしました。その方は私に言われたのは、信じられないと。国家とか主権とかいうものについてどのように考えているのか、日本政府が、外務省が。その方が言われたのは、アメリカの場合だったら、恐らく、その日じゃないかもしれないけれども、翌日ぐらいには多分ファイア、更迭かやめることになるんだろう、大使が。その方が言われたのは、大使は、日本でいえば在北京日本大使は、恐らくそういうことにアメリカだったらなるだろう、こう言われました。どう思いますか。
○川口国務大臣 その方がどういう方であるか私は全く存じませんけれども、この件につきましては、先般、再度問題点をきちんと精査いたしました上で、当時の関係者についての処分を発表させていただいております。
岡崎総領事につきましては、国家公務員法上の処分をいたしまして、日本に呼び戻しているという措置をとっております。
それから、大使につきましては、これは本件について総領事館と直接の指揮命令系統にはないということではありますけれども、総領事館の担当のといいますか、当時応対をいたしましたその副領事から問い合わせあるいはその報告があったということに関して、大使館サイドとして適切な助言をできたはずであるということから、あるいはほかにも若干ございますけれども、処分をいたしているわけでございます。
○伊藤(英)委員 私は、その話があったものですから、アメリカの国務省の組織図やら、国務長官あるいは大使、総領事館、総領事等の関係等々は調べました。また改めていろいろなことを申し上げたいとは思っていますが、大使の問題についてもそうでありますし、日本の外務省の役人についても、中国課長についてもですが、改めていつかの時点で、どういう行動であったかということを私からも申し上げますが、本当にちゃんとやってほしい、外務省はちゃんとやってほしいということを申し上げておきたいと思っています。
それから、今回のこの法案の問題についてでありますけれども、先日、東京で、ある国際的な会議といいましょうか、国際シンポジウムがありました。そのときに、中曽根元総理が最初にあいさつをされました。中曽根元総理も言っておられました。要するに、今日本に、例えば日本海に原子力発電所がだっとこんなふうになっている。原子力発電の問題やら、あるいはテロの問題やら、あるいは不審船の問題等々、日本にとってどんなにそういうのが非常に心配される状況であるか。有事法制というんだけれども、まさにそういうところこそ今日本にとって必要なので、今回出ている有事法制はというような話が、シンポジウムの冒頭、その国際会議のときにありました。
私なんかもそう思いますよね。日本はまさに、今回の法案なんかを見ると、やはり冷戦構造下のそのままの法律を出してきたのではないかというような気がします。そういう意味で、さっき申し上げたテロの問題やらミサイルの問題やら、あるいは生物化学兵器等々の問題等についてどうするんだというようなことが本当は先なんだろうな、本当は。ちゃんとやらなきゃいけない。あるいは、この法律を見れば、何といったって国民保護法制といいましょうか、そういうものがまずあって、そして自衛隊がどう動くかというふうなことにしなきゃいけない、こう思ったりするんです。
それで、まず聞きますけれども、今なぜ有事法制か。これは今までも議論されましたけれども、今、日本に対してどこかの国が攻撃する可能性がありそうかどうか。あるいは北朝鮮はどうなんだろうか、あるいはひょっとしたら中国がという話も出たりする。そういう可能性は本当にこの近いうちにありそうなのかどうか、まず伺います。
○福田国務大臣 今すぐあるかどうか、こういうお尋ねでありまするけれども、それは、今すぐあるというふうに私ども思っておりません。思っておりませんけれども、いつあるかわからないものにも備えておくというのは国の基本的な必要だということで、今回の法案を提出させていただいたところでございます。
○伊藤(英)委員 なぜ私がそういうことを申し上げたかといいますと、日本にとって緊急度として何が、どういうことが高いかということを考えたときに、本当は、いわゆる有事法制ということを考えるとしても、やはり順序が違うよということなんですね。そういうことをちゃんと踏まえないと、できるべき、できるはずの有事法制もできなくなっていくんだよ、いかにも安易にやっているんじゃないかと。
実は、今回のこの法律案の審議のときに、冒頭からですが、私は政府側の答弁等なんか聞いていますと、本当に有事法制を今やらなきゃという熱意を私自身はもう一つ感じられないなというのが残念でありました。それは、ひょっとしたら政府も、本当に今何が必要か、何を優先しなきゃいけないか、その優先度の高いものからやっているという認識がやはりなかったんだと思うんですよね。
そういう意味で、今本当にもとから考えて、本当にどういうのをつくるべきだ、どういう法律をちゃんと整備すべきだということを考えていただきたい、今こういう意味で申し上げたんです。
今回の法案の中身の問題について伺いますけれども、まず最初に、武力攻撃事態の定義及びその認定の規定、こういうものについて不十分だと私たちは思っているから出し直せ、こう言うんです。今からずっと申し上げたいのは、私たちが考えて、今回の法がどんなにか不十分だ、だから出し直してくださいよということについて、そういう思いでそれぞれのことについて伺いますが、今の武力攻撃事態の定義の問題について非常に不十分だということであります。これは何度もここで議論もされたりしてまいりました。
それは、予測される事態あるいはおそれのある事態、あるいは周辺事態との関係はどうなんだろうか、なかなかわかりにくいですよねと。そして、武力攻撃事態という問題にしても、あるいは自衛権を発動する範囲というふうなことについてもなかなかよくわからない。そういう、内容がはっきりしないから国民にとってももう一つこれはわからぬよということになってしまうんです。
ちょっと具体的に聞きますけれども、この法案の中に「我が国」の定義、「我が国」というものについての定義が非常に不明確だ。政府が、公海上における我が国の艦船に対するものも状況によっては我が国に対する武力攻撃に該当し得ると説明しているけれども、どんな状況ならば我が国に対する武力攻撃に該当することになるのか。公海上だったら、インド洋でもあるいは大西洋であっても何でもいいんだろうか。これはどうでしょうか。
○福田国務大臣 我が国の領土、領海、領空に対するものでない攻撃で、例えば公海上にある我が国の艦船に対する攻撃というような状況というのは、この法案の第二条第一号の我が国に対する武力攻撃に該当し得ると考えております。
いずれにしても、特定の事例が我が国に対する武力攻撃に該当するかどうかということについては、個別の状況に応じて判断をするということになります。
○伊藤(英)委員 では、例えば日本大使館とか在留日本人への攻撃というようなことが、そういう人たちに対して攻撃ということがあった場合に、該当することもあるんですか。
○福田国務大臣 特定の事例が我が国に対する武力攻撃に該当するかどうかということについては、先ほど申しました個別の状況に応じて判断する、こういうことになるわけでございますが、我が国の在外公館とか、今委員の御指摘の在留邦人に対する攻撃が我が国への武力攻撃となるかどうか。理論的には、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるかどうかという問題でございます。しかしながら、一般的に、そういうような攻撃が我が国に対する武力攻撃と認定されることは、余り想定はしがたい問題だと思っております。
○伊藤(英)委員 自衛隊法第七十六条の中にも我が国と書いてありますね。それとこの法案の「我が国」との関係というのは、どういう関係になるんでしょうか。
○福田国務大臣 法案の第二条第一号の「我が国」は、日本国を指すという意味において、自衛隊法第七十六条に言う我が国と同一のものであります。
いずれにしましても、どのようなものが法案の第二条第一号の我が国に対する武力攻撃に該当するのか、また、いかなる場合に自衛隊法第七十六条に言う我が国を防衛するために必要があると認められる場合に該当するか、これは個別の状況に応じて判断することになります。
もっとも、自衛隊は、自衛権発動の三要件を満たした場合にのみ我が国を防衛するために武力を行使することができるということになりますが、我が国に対する武力攻撃の発生のみで自衛権発動の三要件のすべてを満たしているということはありません。
○伊藤(英)委員 自衛隊法の七十六条とこの法の「我が国」というときに、何か地理的な範囲などで具体的に変わる部分はあるんですか、ないんですか。
○福田国務大臣 自衛隊法第七十六条第一項の「外部からの武力攻撃」は、我が国に対するという文言はないのでありますけれども、法案の第二条第一号の「我が国に対する外部からの武力攻撃」と同じ意味でございます。
○伊藤(英)委員 きょうは余り私の時間がないので多くは申し上げませんが、実は、今ずっと私が幾つか聞いてみましたが、全部あいまい。そう思いませんか。官房長官みずから、やはりあいまいだなと。もう笑い事じゃないんですね、本当に。
それから、今までもいろいろ申し上げてきたんですが、予測の事態、あるいはおそれの事態等、政府としても見解も出されたりいたしました。それで、これは法律の中に、書き方はいろいろあるでしょうが、ほぼああいう内容のことをちゃんと書いたらどうかという話を申し上げてきたりいたしました。法律の中に明記する、それはどうですか。今後そういうことを考えたいと思いますか。私は、出直せ、出し直せ、こう言っているんですから、そのときはそういうことを考えることはありますか。
○福田国務大臣 これは、現実に武力攻撃が発生する前の段階におきましても、その時点における国際情勢とか相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測をされることなどから見て、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断されるというような事態におきましては、国全体が一体となって、自衛隊の活動による対処措置、国民の被害を防止するための警報の発令とか、さまざまな対処措置が迅速に実施されることが重要でございます。
このために、本法案では、武力攻撃と関係する事態として、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態から、その時点から武力攻撃事態の対象に含めて一くくりとして、武力攻撃と関係しない事態と画するということにしております。
なお、予測の段階の事態と武力攻撃が発生した事態とでは、自衛隊の行動のように必要となる対処措置の内容は異なるものがあり得ることから、それぞれの段階ごとに事態認定を対処基本方針に明記し、それぞれの事態に応じた対処措置を講ずることといたしております。
したがいまして、予測の段階の事態が武力攻撃が発生した事態、そういうような誤解を受けることはないというふうに考えておるわけであります。
○伊藤(英)委員 法文の中にその定義を。武力攻撃事態の定義について政府が見解も出されましたでしょう。あれをちゃんと法文の中に、あの全文という意味じゃないんですよ、それを法文に書いたら、何か悪いことが、困ることがあるんですか。基準を、そういうことを考えたらどうですか。
○福田国務大臣 お尋ねの件については、政府として、武力攻撃事態について国民に対してわかりやすく説明するという観点から、さきに見解を示しました。そして、具体的な説明を行いましたけれども、この見解における説明内容は、いわば、当該事態の解釈としてお示ししたものでございまして、武力攻撃事態の定義として法文上規定することは考えておりません。
○伊藤(英)委員 実は、後ほどまた触れるつもりですが、今回の法律案は、あの事態法なるものは、私から見ますと、本当にわかりにくい。あえてわかりにくい法律をつくっているのかなと思わせるような内容ですね。わからないんですよ、これはそもそも。何でもっと国民から見てもわかりやすい法律にしないんだろうか。今までで、ますますそうだというふうに思うんです。(発言する者あり)民主党がつくってくれたらと隣で言っていますが、こんなことは当然のことだということであります。
それから次に、私たちがこの法律は本当に今のままだとだめだなという意味は、国会承認あるいは民主的統制のあり方の問題についても、極めて不適切だということであります。
それは、今現在予測される事態で防衛出動の待機命令を出すときは事後承認、おそれの場合になって、防衛出動を出すときには原則事前ですよね。何でこれは両方とも原則事前にしないんだろうか。もちろん、やむを得ない場合は事後ということは考えればいいんですよ。全く可能なはずですよね、これは事前で。予測される事態なんだから、当然可能。だから、これを両方とも原則事前にしたらどうですか。
そして、また同時に、対処措置が終わる場合、これは、本会議でも私からも申し上げました。ほかの党からも話が出ていました。国会決議でそうした場合には対処措置は終了するというふうに、これは答えてもいらっしゃるんですね。法律の中にそういうふうにちゃんと書けばいいではないか、その両方とも。これはいかがですか。
○中谷国務大臣 予測の場合とおそれの場合、国会手続等違っているわけでありますが、これは、先ほど官房長官がお話ししたとおり、現実に武力攻撃が発生する前の段階において処置することが必要でありまして、その場合に、予測事態ということでございますが、特に自衛隊の活動による対処措置、国民の被害を防止するための警報の発令など、さまざまな対処措置が迅速に実施されることが重要でございます。
このために、この法律案では、武力攻撃と関係する事態として、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態と定義をいたしております。
なお、また事態が進みまして、おそれの事態になった場合には、きちんとした手続を経て自衛隊が行動するわけでございまして、それぞれの内容に差がある、また、自衛隊等の活動にかかるために違った手続にしているわけでございます。
○福田国務大臣 後段の御質問でございますけれども、対処措置の終了について、国会の決議で終了できるようにしてはどうかということでございますけれども、この法案におきましては、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、対処基本方針を廃止する閣議決定を行うというように定めております。その結果、武力攻撃事態が終了し、一連の対処措置の必要がなくなれば、対処基本方針を速やかに廃止する、こういうことになっております。
また、仮に、対処基本方針の一部について、これを行うべきではないという国会の意思が議院の議決等により明示されれば、政府としてこれを尊重して対応することは当然のことである、こう考えているところでございます。
なお、例えば被災地の復旧とか避難民の……(伊藤(英)委員「法文に明記をされたらどうですかということですけれども」と呼ぶ)法文に明記をするかどうか。ですから、今申し上げているようなことで、これで私どもは十分だというように考えておるわけであります。
○伊藤(英)委員 実は、今のような話なんかでも、法律上、何で国会をそんなに軽視したがるんだろうか。もっともっと国会で、そういうふうに決めたらそれをやるというんだからそういう法律にすればいいではないかということなんです。
さっき防衛庁長官の話をされた、要するに、両方とも原則事前にしたら云々という話についても、何でそうしないんだろうか。私は、物理的に考えたって、そうしても全然問題はないと思っているんですよ。なぜもっと簡単にしないんだろうか。
もっとさらに言えば、さっき私は法律のことについて申し上げたんですが、例えばこの国会承認のところについても、現行自衛隊法七十六条は、見れば、原則事前ということが物すごくわかりやすく単純に書いてありますよね。今度この事態法ができたら自衛隊法七十六条が変わりますね。今度事態法から持ってくるよね、こちらの方から。あの文章を読んでごらんなさい。何てわかりにくいんだろう、この文章は。ほとんどわからないですよね。現行自衛隊法七十六条よりももっとわかりにくい、わかりにくい法律案に自衛隊法七十六条がなるんですよ、これは。
僕からして、何でこんなばかげたことをやるんだろうか、これはできるだけわかりにくくしようとしているとしか思えないんですよ。ばかだ、ばかだなんて、そんな言葉は使いたくないんですが、いかにもばかげていると私は思っているわけです。みんなによりわかってもらった方がいい。しかも、国会の関与ということを重要視するんだから、そしてそういうふうにやるんだから、そのことがよりわかるようになぜしないんだろうかということです。何か御意見ありますか、官房長官は。
○中谷国務大臣 先ほどもお話をしたわけでございますが、予測される事態につきましては、事態が緊迫をして武力攻撃が予測されるに至った事態においても、国民の被害を防止するための警報の発令、避難の指示等の措置、自衛隊の防衛出動待機、防御陣地構築等の措置を迅速に実施することが必要でありまして、このため、予測される事態においても対処基本方針を定めて直ちに対処する必要がございますが、これは国会の承認を求めるわけでございまして、その後、国会承認を求める、それで中止する場合は中止するわけでございます。
この防衛出動の事態につきましては、原則として事前承認を得なければならず、特に緊急の必要がある場合にも事後直ちに国会の承認を求めなければならないとの現行の自衛隊法の枠組みを維持しつつ、これを行政府と立法府の統一的な意思決定のもとで行うために対処基本方針の必要記載事項としたものでありまして、制度の趣旨は御理解いただけると考えております。
○伊藤(英)委員 僕からすれば、何でそんないいかげんなことをするんだろうかということなんですよ。これはもう絶対直した方がいい、直した方がいいのは当たり前だと私は思っているということだけ申し上げておきます。
それから、官房長官、さっき基本的人権等の問題についてもお話がありましたけれども、私どもからすれば、やはり、この表現の自由など基本的人権の確保に関する規定について、いかにも不十分だな、わからない。それで、今後の法整備において、この基本的人権などを確保するためにどういう規定を設けようとするのか、どういう考えなのか、伺います。
○福田国務大臣 基本的に、基本理念と申しますか、日本国憲法の保障する国民の自由と権利の尊重、これはこの法案に明記をいたしておるところでございますが、今後のこの法制の整備に当たりましては、個別具体の対処措置を定めていく際に、国民の権利に制限を加えることが必要となる場合には、その制限される権利の内容、性質、制限の程度などと、権利を制限することによって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性などを総合的に勘案しまして、国民の権利制限が必要最小限のものとなるように、対処措置の内容やそれにかかわる手続などを明確に規定する考えでございます。
また、国民の権利制限に関する救済措置としましては、一般的規定として、行政不服審査法、行政事件訴訟法及び国家賠償法が存在しておりまして、武力攻撃事態への対処においても、行政事件訴訟法及び国家賠償法は適用され、行政不服審査法も、例外的に不服申し立てができないと法律上規定されている場合を除いて適用されることになっております。
さらに、損失補償については一般的規定がなく、必要がある場合に個別の法律に明文の規定を設けることによりまして救済措置が講じられるということになりますけれども、このような明文の規定がない場合においても、司法による救済が否定されるものではありません。
これらの救済措置等につきましては、今後整備する事態対処法制において、対処措置にかかわる個別の規定を整備する際に具体的に検討してまいりたいと考えております。
○伊藤(英)委員 次に、これは、今までこの委員会の席でも何度も我が党の同僚議員からも申し上げてきたんですが、避難とか警報とか、あるいは医療、救助などなど、国民の安全確保と被害の最小化への措置というものが全く先送りされている。そういうことやら、あるいはジュネーブ条約関連等の話もある。そして、そういう国民生活にとって最も基本的な部分が軽視をされて、そして二年以内を目標に法整備を、このようになっているんです。
きょうこの時点、この国会の会期も既に最終局面ということであります。もちろん、今回の法律はこの国会で成立することはありませんよね。あり得ない。そういうときに、政府が先送りしている国民保護法制など、こうしたことについて、本当に政府一丸となって早く整備をしなきゃいけませんよね。そう私は思うんです。そして、そういうものを全部そろえて提出していただくことも含めて、これは全力で取り組んでいかなきゃならないと思うんです。政府はこれからどうするんでしょうか。ちゃんとやってください。具体的に、日程等も含めて今後どのようにしようとするのか、伺います。
○福田国務大臣 今回提出をいたしました三法案は、武力攻撃事態への対処を中心に国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るというものでございますが、国民の保護のための法制など個別の法制につきましても、この法案に示された枠組みのもとで、整備の方針や項目を示しながら包括的に実施していくということといたしたところでございまして、これは決して、そういう問題点を先送りしていたり、また軽視をしたりするというものではございません。
武力攻撃事態対処法成立後は、これに定めます枠組みに基づいて、国民の保護のための法制を初めとする必要な個別法制を総合的、かつ計画的に整備していくことが重要であると考えておりまして、武力攻撃事態対処法案成立後二年以内を目標に、今国会での御議論を踏まえまして、最大限の努力をしてまいる所存でございます。
このような観点から、国会終了後速やかに国民の保護のための法制などについて検討体制を整え、その内容を深める作業に着手したいと考えておるところであります。
○伊藤(英)委員 今の話は、法案を修正してからみたいな感じのことも言われたような気がするんですが……(福田国務大臣「法案成立後」と呼ぶ)成立後。
では、伺います。法律が成立したら、それから二年以内にというので、それから一生懸命で準備をいたしますという意味ですね。
○福田国務大臣 法律をできるだけ早く成立させていただきたいという思いを持っておりますが、今申し上げられますことは、この法案が成立したらば、国民の保護法制等につきまして検討を直ちに始め、そして二年以内に法案を提出できるようにしたい、こう考えておるところであります。
○伊藤(英)委員 そうすると、官房長官は、何となく僕があれこれ申し上げるのは――官房長官、聞いているの。
○瓦委員長 どうぞ伊藤議員、続けてください。
○伊藤(英)委員 繰り返しますが、官房長官は、この法律を、ともかく、いつか知らないけれども成立をさせて、そしてその後、それから二年の間に準備をいたしますという話なんですね。要するに、今一生懸命準備をして早く出して、それで、いわばできるだけ一緒にして、国民保護法制なんかも一緒にして審議もしたいよというような考え方ではないのですね、これは。終わってから準備するような話をされていましたから。
○福田国務大臣 同じ意味なんです。
先ほど私は、国会終了後速やかに国民の保護のための法制などについて検討体制を整え、その内容を深める作業に着手したい、こう申し上げまして、そして、この法律が、できるだけ早くお願いしたいと申しましたけれども、この国会で法律が成立するということを念頭に置いて申し上げたということで、同じ意味でございます。
○伊藤(英)委員 実は、私は本当に、冒頭も申し上げた、もっといろいろなことを、本質をちゃんと考えてやらないと、我が日本は本当にだめになるなというぐらいの感じなわけですよ。今から本当に参議院まで上げるつもりですね、僕は聞きますが。
○福田国務大臣 国会のことでございますから、国会にお任せするしかないのでありますけれども、思いはそういうことであります、思いは。
○伊藤(英)委員 では、ちょっともう一度、本当に今から、これから政府はどうしようとするのか、もう一度答えてくださいますか。どうしようとするのか。
では、もう一回聞きましょう。もしもこの国会で法律が成立しなかった場合には、準備はしないという意味ですね。
○福田国務大臣 ですから、最初申し上げたとおり、国会終了後速やかに国民の保護のための法制などについて検討体制を整え、その内容を深める作業に着手することといたしたいと考えております。
○伊藤(英)委員 もう少し日程的なことも含めて、どんなふうにしたいかという話もしようかと思いましたが、本気になって今後整備するというふうに言っていたものについても早くしないと、現在出されているものについても、そこから先のことについて聞こうと思えば、今、いつもそういう検討中です、検討中です、あるいは今後検討する、今後検討するという話ばかりですよね。議論にならない、こういうことなんです。
それから、この委員会でも、先般来、地方公聴会等も何度も行ったりいたしました。そのときも、地方の自治体関係者からも非常に厳しい意見なんかも出たりいたしました。この地方公共団体の問題について、どういうふうに今後進められるのか。
ついこの間も、ある地方公共団体の首長さんと会ったら、どういうことかよく教えてほしい、自分たちももっと物も言いたい、意見も言いたい、それがないじゃないかと言っていました。つい最近、私は聞きました。地方公共団体について、これは、どういうふうにこれから進めようとされるのか。これは総務大臣がいいかと思います。
それからもう一つ、指定公共機関の問題であります。
ついせんだっても、日本民間放送連盟からも私も文書もいただきました。そして、そのときに、指定公共機関に、その指定の対象になるのではないかというような意味での懸念も含めて、いろいろお話もございました。この指定公共機関の問題についても、これからどうされるのか、あるいはこの報道機関について、今後どういうふうな姿勢で臨まれるのか、これについて伺います。後者の方は官房長官にお願いしたいと思います。
まず指定、お願いします。
○片山国務大臣 御承知のように、特に国民保護法制では地方公共団体が大きな役割が期待されておりますので、地方の意見を十分聞くということは必要だ、私もこう思っております。
担当者間やそのレベルではかなり聞いてきているんですけれども、まとまってトップに聞いていなかったのですね。そこで、六月十二日に私の方から総理、官房長官に言いまして、官邸に都道府県知事に全部集まってもらいまして、意見をいろいろ聞きました。ただ、急な招集でしたから、全部知事さんというわけにいかなくて、知事さんは六割五分ぐらいでしょうかね。
ただ、相当な意見の表明がございましたので、大変私どもも参考になりましたし、知事さんとしてもある程度納得いかれたのじゃないかと思いますし、その際、こういう機会をもっとつくってくれ、こういうお話でございますので、今後、特に国民保護法制その他地域の安全にかかわる全般について、知事を初め地方団体の意見を十分聞くように、官房長官や防衛庁長官と十分相談してまいりたいと考えております。
○福田国務大臣 指定公共機関について申し上げますと、今回、個別の法制におきまして、指定公共機関に実施を求めることが必要となる対処措置の内容を具体的に定めることとなります。その際に、関係機関の意見は十分聞く機会を設けたいと考えております。
放送事業者につきましては、警報等の緊急情報の伝達のために、指定公共機関として指定することを考えております。また、警報等も、緊急情報の内容とか伝達方法の詳細については、今後、国民の保護のための法制を整備するに当たりまして検討をすることとなりますけれども、武力攻撃事態にあっても、報道の規制など言論の自由を制限するということは全く考えておりません。
なお、事態の状況に応じまして、人命尊重などの観点から、真に必要な場合におきましては報道協定などについてもお願いすることはあり得るものと考えておりますけれども、仮に、報道協定が必要と判断された場合であっても、報道機関の自由意思を尊重するということは、これは当然であります。そのような考え方でまいろうと考えております。
○伊藤(英)委員 外務大臣に、米軍との関係についてちょっと伺いますけれども、これも今までもいろいろ議論されてきたんですが、なかなかはっきりしないなということです。
特に周辺事態との関係とか、あるいはこの法律の第二十二条には、米軍との問題も今後整備する云々というような形になったりしているんです。
さらには、では有事のときに、米軍の行動によって国民に危害や損害あるいは人権侵害等があったときにどうするんだろうかとかいうようなことを思うわけであります。
その意味で、周辺事態と武力攻撃事態とにおける米軍の行動と我が国のかかわり方、さらには有事のときにおける米軍との特別協定、有事のときの特別協定のことについてどういう方針であるのか、考え方なのか、外務大臣に伺います。
○川口国務大臣 幾つかの御質問、まとめてございましたけれども、まず、周辺事態と武力攻撃事態における米軍の行動と我が国のかかわり合い方ということについて申しますと、これはそれぞれ別個の法律上の判断に基づくものであるということでございますので、我が国に対して武力攻撃事態が発生をしているときに、状況によっては、両者、武力攻撃事態と周辺事態の両者が併存することもあり得るということで考えられます。
周辺事態への対応としては、米軍支援は周辺事態安全確保法により、そして武力攻撃事態に対しての対応ということでいえば、今後整備される新しい米軍支援法制に基づいてそれぞれ実施をされるということになるわけでございます。(伊藤(英)委員「今、何と言われましたか」と呼ぶ)新たな法制について、この整備については、この新しい法制に基づく支援対象となる米軍の行動の目的等を適切に規定することによりまして、それぞれに基づいて対米支援を区分して行い得るようにすることが可能であるというふうに考えております。
それから、有事における米軍の行動の円滑化に関する法制、この整備の内容といたしましては、これは、米軍が日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設または役務などの提供が考えられるわけでございますが、このような法制整備に当たっては、我が国の支援は、日米安保条約の目的の枠内及び憲法の範囲内で行う、また、国連憲章を初めといたします国際法に従って行うといった考え方に基づいて検討するわけでございます。また、米軍の行動の円滑のために必要な支援を検討するに当たっての国民への影響につきましては、これが最小限になるように配慮をするということは当然であるというふうに考えております。
いずれにしても、こういったことにつきましては、政府全体の問題といたしまして関係省庁間で協議をする、それから、米側とも協議をしていくということになると思います。
○伊藤(英)委員 有事のときの特別協定のようなものが必要だと思いませんか。
○川口国務大臣 有事に想定をされる米軍との特別協定というものがいかなるものであるか、委員がどういうことを意味していらっしゃるかというのは明らかでは必ずしもないわけでございますけれども、これについて、今後、事態対処法制の整備の中で米軍の行動の円滑に関する法制の整備が検討をされていくということでございまして、これは、関係省庁間で協議をし、米側とも協議をしていく、そういうことになるわけでございます。
○伊藤(英)委員 私は、実は今の外務大臣の話はやはりよく理解できないなと思っているんです。
私は、当然いろいろな協定なりなんなりが必要になってくると思っているんですね。まして、今のままでいいわけがないというふうに思っています、米軍との関係については。
時間もほぼ、私の時間が来てしまいましたので、一、二最後に申し上げたいのですが、これは防衛庁長官に伺いますけれども、自衛隊法八十八条の世界の話がここでも議論されたりいたしました。
例えば、自衛隊法八十八条の部分のいわゆる戦闘地域における自衛隊員の活動等々についての問題ですね。そのときはいろいろなことができますよというふうになっている。それこそ、ある委員はここで、自衛隊法八十八条が何でもできるのなら、この法律は要らないんじゃないかという話がいろいろ出たりしたぐらいですよ。
そしてまた、補償の問題についても、自衛隊法八十八条の世界、いわゆる戦闘地域の場合には、補償を基本的にあらかじめやるようにはなっていませんよ、等となっていますよね。
今回のこの事態法を読んでみれば、八十八条の世界の話なんていうのは全然わかりませんね。わからない。いいですか、いわゆる有事法制と言うんだけれども、本当の戦闘が行われることについての話は、この事態法の中には入っていませんという感じですよね。わかりますか。
私は、今回の法律がどんなにか不備でわかりにくいか。物すごいプロが、自衛隊法も理解し、何も理解していたらそれなりにわかるのかもしれない。この法律読んだって、多くの人はわからない、そんなことは。そういう法律を出しているんですね、これは。いいですか。
もっと言えば、本当に戦闘行動が行われるところのものがこの中には全然入っていません。何でこんないいかげんな法律をつくるんだろうか。いいかげんなという言い方はおかしいかもしれません、わかりにくい法律。もっと全貌がわかるような法律をつくらなければ、国民から見てもわからないじゃないかということなんです。そう思いませんか。思いませんかといって、出しているんだから、いや、これが一番いい、こう思っていると思いますが、あ、もっと本当はわかりやすい法律をつくった方がいいなと。
これは官房長官の方がいいかもしれませんね。要するに、もっともっと何でそういうわかりやすいのをつくらないんだろうかということを、これは鋭意これから検討しなきゃいかぬというふうに思います。どうですか。
○中谷国務大臣 この八十八条は自衛隊法に規定をされておりますが、これは民間人に被害が生じた場合の損失補償については、明文の規定は置かれておりませんが、この場合においても、仮に民間人に被害が生じた場合の損失補てんに関しましては、憲法第二十九条三項の規定する損失補償の趣旨に合致していれば、それを根拠として司法による救済がなされ得るものと考えております。
この損失補償とは、一般的には、適法な公権力の行使によって加えられた特別の犠牲に対して、社会的公平の見地から全体の負担においてこれを調整するための財産的補償と考えられているところでありまして、この八十八条の規定に基づく武力行使により民間人等に被害が生じた場合の損失補償については、同条の規定に基づく自衛隊の武力の行使の被害のうち、社会的に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課する場合に該当するものとしては、類型的にいかなるものが想定されるのか、また、相手国の行為による損害等と自衛隊の行動による損失等を分けることができるかなどの問題もありまして、同条の規定に基づく自衛隊の武力の行使による被害に関して、損失補償の規定をあらかじめ設けることは困難な面があると考えられます。
もっとも、国民に対する権利救済を明確にする観点から、同条に関する損失補償のあり方については今後とも必要な検討を行っていくべきものと考えておりますが、この検討は、武力攻撃事態における被害には相手国による損害などもあることから、武力攻撃事態終了後の復興施策のあり方の一環として行っていくべきものと考えておりまして、現時点で、自衛隊法八十八条に規定する武力の行使に関する規定を抜本的につくり直すことは考えておりません。
○伊藤(英)委員 最後に、官房長官、冒頭申し上げたように、私どもとしては、いわゆる有事法制、緊急事態に対してどういうふうに法的に整備をしておくかということがどんなに重要かという思いで私たちも取り組んでいるという話は申し上げましたけれども、これも本当に国民に理解をされるものにしなければならない。そしてそのときに、何度も申し上げるんですが、国民の基本的人権やらあるいは国民のもちろん命や財産等々をどんなふうに、いかにして守るかということを思いながら、本当にちゃんとしたものを整備しなきゃいかぬ、こういうふうに思うわけですね。
もう一度官房長官に、今後どういうふうに整備していかれるのか改めてお伺いをして、私の質問を終わります。
○福田国務大臣 いわゆる有事法制というのは、安全保障に関する国民の共通の認識を確立するという観点から、長年にわたって懸案でございました。
武力攻撃事態対処法案成立後は、これに定めます枠組みに基づいて、国民の保護のための法制を初めとする必要な個別法制を総合的、かつ計画的に整備していくということが重要と考えております。このような個別法制を整備する作業を着実に行っていくためにも、政府といたしましては引き続き武力攻撃事態対処法案の成立に全力を挙げてまいりたいと思っております。
このような観点から、これまでの国会での御議論も踏まえまして、政府としては、国会終了後速やかに、国民の保護のための法制、米軍の行動の円滑化に関する法制、捕虜の取り扱いに関する法制などについて検討体制を整え、その内容を深める作業に着手することといたしたいと思っております。また、このような検討を行うに当たりましては、国会での御議論を踏まえまして作業を行って、次の国会において十分に対応できるよう準備をしてまいりたいと思います。
○伊藤(英)委員 ありがとうございました。終わります。
2002/07/24 |