2003/03/20

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156 衆議院・本会議

小泉総理大臣のイラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告

質問者=高村正彦(自民)岡田克也(民主)冬柴鐵三(公明)都築譲(自由)志位和夫(共産)土井たか子(社民)二階俊博(保守)


平成十五年三月二十日(木曜日)  午後三時三十三分開議

議長(綿貫民輔君) 内閣総理大臣から、イラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣小泉純一郎君。

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) イラク問題についての政府の基本的な考え方を明らかにし、皆様の御理解と御協力を得たいと思います。(拍手)

 数時間前、米国を初めとする国々は、イラクが国際社会の平和と安全に与えている脅威を取り除くための最後の手段として、イラクに対する武力行使を開始しました。

 イラクは、昨年十一月に全会一致で採択された国連安保理決議一四四一によって、国際社会から、大量破壊兵器を廃棄するための最後の機会を与えられました。私は、イラクへの総理特使の派遣を含め、イラクが直ちに国連査察団に対して無条件かつ積極的に協力することによって平和への道を選ぶよう、繰り返し呼びかけてきました。国際社会も、一致して、イラクの全面的協力を強く求めてきました。平和へのかぎはイラクだけが握っているのが明らかだからです。しかし、大変残念なことに、イラクは、国際社会の真摯な努力にこたえず、みずから平和への道を閉ざしてきました。

 サダム・フセインは、これまで、隣国に対しても、また、驚くべきことに、イラク国民自身に対しても、違法で残酷な化学兵器を使用したことがあります。イラクは、今から十三年前、突然、クウェートを侵略し、併合を宣言しました。国際社会は、イラクの国際法を無視した蛮行を厳しく糾弾し、多数の国々の軍事力によってこれをただしました。停戦に当たって、イラクは、地域の平和と安定を脅かす大量破壊兵器を廃棄することを約束しました。この約束は完全に実行され、イラクが大量破壊兵器をすべて廃棄したことが確認されなければなりません。それができて初めて、この地域の平和と安全の確保が可能となります。しかし、イラクは、これに応じようとしませんでした。

 大量破壊兵器は、大量かつ無差別に市民を殺害し、傷つける恐ろしい兵器です。私たちは、このような非人道的な兵器が自国民を圧政のもとに置く独裁者の手中にあることを、真剣に考えなければなりません。(拍手)特に、一昨年九月十一日の同時多発テロ以来、国際社会は、テロリストが核物質や生物兵器、化学兵器を入手した場合の恐怖を強く認識するようになりました。今日の国際社会において、大量破壊兵器の保有の有無は、うやむやに放置しておけるような問題ではないのです。我が国を取り巻くアジア地域も、決して、この問題と無縁ではありません。

 イラクは、国際社会に対して、かつて保有し使用した大量破壊兵器を廃棄したのかどうかを十分に説明しませんでした。イラクは、VXガスやマスタードガスのような化学兵器、炭疽菌やボツリヌス菌のような生物兵器など、何億人もの人々を殺傷できる量を保有していたと言われています。しかし、イラクは、このような恐ろしい兵器の行方について必要な説明を行わず、国際社会に対して誠意ある回答を示さなかったのです。

 国際社会は、十七本にも上る国連安保理決議を採択し、一致してイラクに対する説得に当たってきました。しかし、イラクは、十二年間にもわたって国連安保理決議への違反を続けてきました。これは、イラクによる国連に対する挑戦であり、国連の権威の侮辱です。このような状況のもとで、私は、安保理が一致団結し、国際社会の平和と安全に対して責任を果たすべきことを、ブッシュ米国大統領やシラク・フランス大統領を含む関係国首脳に対して、直接訴えてきました。

 最終的に安保理での意見の一致が見られず、安保理が一致団結できなかったことは残念です。しかしながら、何度も何度も平和的解決のための機会を与えられたにもかかわらず、イラクがその機会を一切生かそうとせず、安保理決議違反を繰り返してきたことは、決して見逃されてはなりません。(拍手)問題の解決をいつまでも先延ばしにすることは許されないのです。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考えます。(拍手)

 今、米国は、このような大量破壊兵器を廃棄する国際的な動きの先頭に立っています。米国は、我が国のかけがえのない同盟国であり、我が国の平和と安全を守るための貴重な抑止力を提供しています。我が国を取り巻くアジア地域の平和と安全の確保にとっても、米国の役割は不可欠です。そのような米国が国際社会の大義に従って大きな犠牲を払おうとしているとき、我が国が可能な限りの支援を行うことは、我が国の責務であり、当然のことであると考えます。(拍手)

 いかなる場合においても、武力行使を支持することは容易な決断ではありません。戦闘なしに大量破壊兵器が廃棄されることが最善の策であることは、言うまでもありません。しかし、それが不可能な状況のもとでは、我が国としては、国際社会の責任ある一員として、このたびの米国を初めとする国々による行動を支持することが我が国の国家利益にかなうとの結論に達しました。(拍手)

 今般の事態に際し、政府は、直ちに安全保障会議を開催し、緊急性を有する措置に関する対処方針を速やかに決定するとともに、その後の臨時閣議において、事態の推移を見守りつつ検討すべき措置に関する対処方針もあわせて決定いたしました。同時に、内閣にイラク問題対策本部を設置し、この対処方針に基づき、政府が一体となって総合的かつ効果的な緊急対策を強力に推進することといたしました。

 政府は、イラクとその周辺における邦人の安全確保のために万全の措置を講じてまいります。また、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備等、国内における警戒態勢の強化・徹底を図ります。さらに、我が国関係船舶の航行の安全を確保するため、所要の措置を講じてまいります。

 政府は、原油の安定供給を初め、世界及び我が国の経済システムに混乱が生じないよう、関係国と協調し、状況の変化に対応して適切な措置を講じてまいります。このため、原油等物資の市場動向や供給状態、金融・証券市場の動向を監視します。また、関係諸国等と連携しつつ、必要に応じて、原油の安定供給のための適切な措置を実施します。さらに、外国為替市場の安定化、金融システムの安定の確保、国内の流動性の確保に努めます。

 我が国は、このたびの武力行使によって被災民が発生するのに応じて、国際機関やNGOを通じた支援や、周辺国に対する国際平和協力法に基づく自衛隊機等による人道物資の輸送等の支援を含め、緊急人道支援を行います。

 我が国は、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復が我が国にとっても重要であるとの認識に立って、このたびの事態に対して積極的な対応を行ってまいります。

 我が国は、今後の事態の推移を見守りつつ、次のような措置を検討してまいります。

 第一に、このたびの武力行使によって経済的影響を受けるイラク周辺地域に対して、影響を緩和するための支援を行います。第二に、イラクにおける大量破壊兵器等の処理、海上における遺棄機雷の処理、復旧復興支援や人道支援等のための所要の措置を講じてまいります。

 また、これらの措置とは別に、我が国は、アフガニスタン等におけるテロとの闘いを継続する諸外国の軍隊等に対して、テロ対策特措法に基づく支援を継続・強化します。

 私は、戦闘が一刻も早く、しかも、国際社会に対するイラクの脅威を取り除く形で終結することを心から望んでいます。同時に、イラクが一日も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧復興のため我が国ができる限りの支援を行っていく考えであることを、ここで明らかにしておきたいと思います。

 中東地域の平和と安定は、我が国自身の平和と繁栄に直結する重大な問題です。我が国は、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復に寄与することに加え、中東和平問題への真剣な取り組みを続けていきます。また、悠久の歴史と文明を有するイスラム世界との対話を継続・強化し、幅広い交流と相互理解を進めていきたいと考えます。

 私は、以上のような政府の考え方について、国民の皆様の御理解と御協力を心からお願いいたします。(拍手)

議長(綿貫民輔君) ただいまの発言に対する質疑は後刻行います。


    午後九時三十二分開議
議長(綿貫民輔君) これより内閣総理大臣のイラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告に対する質疑に入ります。高村正彦君。

    〔高村正彦君登壇〕
高村正彦君 私は、自由民主党を代表して、イラク問題に関し、小泉総理に質問いたします。(拍手)

 本日、米国等がイラクに対し武力攻撃を開始いたしました。今回のイラク問題がこのような最終手段に及ばざるを得なかったことは、一貫してイラクに大量破壊兵器を廃棄させることによる平和解決を求めてきた我が国として、まことに残念でありますが、万策尽き、最後の手段としてアメリカの下した判断に対し、我が党は、理解し支持するものであります。同時に、総理の支持表明を我々は評価いたします。(拍手)

 今回のイラク問題の根源は、一九九〇年のイラクによるクウェート侵攻にさかのぼります。このクウェート侵攻に対し、国際社会が一致して安保理決議六七八を採択し、武力行使を容認したのが、あの湾岸戦争であります。その停戦決議六八七によって、イラクは、大量破壊兵器の廃棄を国際社会から義務づけられたのであります。しかし、イラクは、五年前に査察団を追い出したのであります。このため、米英は、停戦決議六八七の重大な違反により停戦の基礎が損なわれたとして、六七八決議に基づいてイラク攻撃を行いました。これを、我が国初め多くの国が支持しました。

 このたびのイラク攻撃も、基本的には同じ構図であり、全会一致で決議された一四四一決議が、最後の機会を逃した場合、深刻な結果を招くとしていることをあわせて考慮すれば、国連憲章上容認できると考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

 イラクがいまだ隠し持っていると見られている大量破壊兵器は、多岐にわたっておりますが、例えば、VXガスは三・九トン以上と言われます。くしくも八年前のきょう、地下鉄サリン事件が起こりましたが、単純に計算すると、同等の事件を十万回以上起こせる量だと言われております。

 実際に、イラクは、マスタードガスをイラン人、クルド人に対して使用した前歴があり、その脅威は現実性を帯びております。また、これらの大量破壊兵器がテロリストの手に渡る危険性は、国際社会のはかり知れない脅威となっているのであります。

 今、イラクに対して断固とした対応をしなければ、テロ支援国家やテロリストが、今後、大量破壊兵器を開発、使用する意図を助長しかねません。北朝鮮は、まさに核開発を再開しようとしており、かたずをのんでイラク問題を見守っているのであります。

 言うまでもないことでありますが、イラクがかつて持っていたと認定されている大量破壊兵器を廃棄したことを証明する責任、いわゆる挙証責任はイラクにあるのであります。イラクは、即時、無条件、無制限に査察に協力し、その挙証責任を果たすことが義務づけられていたのであります。それにもかかわらず、イラクは、最後まで、即時、無条件、無制限の協力をしようとしませんでした。

 米国が軍事的圧力をかけた結果、確かに、イラクは小出しに譲歩、協力のそぶりはしましたが、それは、引き延ばし、国際社会を分断するため以上のものではありませんでした。今後、幾ら査察を継続しても、イラクの姿勢が抜本的に改められない以上、問題は解決されず、イラクに永久に時間稼ぎをされることになります。

 国際社会は、これまで、イラクに対して、十分過ぎるほどの時間を与えてきたのであり、アメリカの最終判断はやむを得ないと考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

 北朝鮮がおよそ日本全土を射程におさめるノドンミサイル約百基を実戦配備している上、核開発を目指していることは、我が国にとって最大の脅威であります。北朝鮮が日本を攻撃しようとすれば、世界最強の軍事力を持つ米国からの反撃を覚悟しなければならないというのが、日米安全保障条約の抑止力であります。みずからの国の青年の血を流してまで米国は日本を守らないだろうという誤解を北朝鮮に与えてはならないのであります。日米の同盟関係が緊密であるというメッセージを北朝鮮に送り続けることが必要であります。(拍手)

 このような状況を総合的に考えれば、ここに至って米国がとる行動を同盟国として我が国が理解し支持することは、当然の対応であります。これらの考えを総理はどのように受けとめられるのか、お伺いしたいと思います。(拍手)

 今回の最終手段の選択は、善良なイラク国民に対してではなく、大量破壊兵器の廃棄に協力しないフセイン大統領に対してであることは言うまでもありません。我が国は、これまで、アラブ諸国とは友好関係を築いてきており、今後とも、この考えに変わりはありません。今回、このような事態に至ったことはまことに遺憾でありますが、イラク国民のため、その復興に対しては可能な限りの協力をし、我が国は国際社会の一員として責任を果たしていくべきと考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

 イラク及び周辺国の邦人保護はもちろんのこと、国内における安全の確保に万全を期していただきたい。テロは他国の問題ではなく、我が国でいつ起こっても不思議ではありません。国民の安全を最優先にした対応を望みますが、総理の決意をお伺いしたいと思います。

 安保理が分裂してイラクに誤ったメッセージを送っているというあるアラブ要人の言葉を、私は忘れることができません。今回の安保理の結果を教訓にして、今こそ、我が国がリーダーシップを発揮し、国連改革を国際世論に訴えていくべきではないか。我が国は、国連の分担金を二〇%も負担しており、アメリカに次ぎ、世界第二位のドナー国であります。特に、現在の国際情勢を反映した、新しい世紀にふさわしい常任理事国のあり方を検討すべきであると考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

 多くの人が戦争に反対することは十分に理解できますが、冷静な議論が必要であります。我が国は国益を優先して米英の行動を支持すること、この理由を総理みずから国民の皆さんに対して引き続き丁寧に説明していただきたい。必ず理解されるものと確信いたします。このことを最後に総理にお願い申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 高村議員にお答えいたします。

 今回の武力行使が国際法上容認できるものかというお尋ねでございます。

 累次の査察団による安保理への累次の報告等においても明らかなとおり、決議一四四一に言う、さらなる重大な違反が生じていると言わざるを得ません。したがって、湾岸戦争の停戦条件を定めた決議六八七の重大な違反が現在も継続的に生じていることから、同決議に基づく停戦の基礎が損なわれ、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えます。(拍手)

 今回の米国等の行動についてのお尋ねでございます。

 イラクが最近になって査察に小出しの協力をしてきたのは、米国等の強力な軍事的圧力があってこそであります。イラクの姿勢が根本的に改められない限り、査察は有効たり得ないと思います。我が国を含む国際社会による懸命な努力も尽くされ、イラクの対応を根本的に変えるための見通しが全く見出せない状況のもとで、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考えます。(拍手)

 我が国の米国支持の背景についてのお尋ねでございます。

 米国は、我が国にとって、かけがえのない同盟国であります。我が国を取り巻くアジア地域の平和と安全の確保にとっても、米国の役割は不可欠だと思います。そのような米国が大量破壊兵器廃棄という国際社会の大義に従って米国自身も大きな犠牲を払おうとしている今、我が国が同盟国として可能な限りの支援を行うことは日本の当然の責務であると私は考えます。(拍手)

 イラクの復興のための協力についてでございます。

 我が国は、イラク及びその周辺地域の平和と安定の回復が我が国にとっても重要であるとの認識に立ち、イラクが一日も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧復興のため、できる限りの支援を行ってまいります。

 国内テロ対策を強化すべきとの御指摘でございます。

 我が国は米国等の武力攻撃を支持する旨を明確に表明しており、現時点で具体的な情報はありませんが、今後の情勢によっては、国内でテロが発生したり、我が国がテロの標的となる可能性は否定できないと考えます。

 このため、我が国では、関係機関が一体となってテロ対策に万全を期しており、具体的には、出入国管理、テロ関連情報の収集・分析、ハイジャック対策、NBCテロ対策、重要施設の警戒警備を強化するなどの措置を講じています。

 今後とも、テロを未然に防止するため、情勢の変化を踏まえまして、必要に応じて、警戒態勢を強化・徹底してまいります。

 国連安保理常任理事国のあり方を検討すべきとのお尋ねでございます。

 二十一世紀の国際社会の平和と安全の維持に引き続き主要な役割を果たすためには、安保理を国際社会の現状を反映するよう改革し、その機能を強化することが必要だと思います。

 我が国としては、安保理改革の早期実現に向けて、今後とも積極的に取り組んでまいります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 岡田克也君。

    〔岡田克也君登壇〕
岡田克也君 民主党の岡田克也です。

 本日昼に始まった米国などによるイラク攻撃に関し、我々の見解を述べつつ、小泉総理に質問します。(拍手)

 とうとう戦争が始まりました。この戦争によって、多くの犠牲が生まれ、罪のない命が奪われることは確実です。何とかこの戦争を回避し、イラク問題の平和的な解決ができなかったのか、本当に残念に思い、同時に、私自身、無力感を感じています。私だけではなくて、この議場の皆さんの気持ちも同じだと思います。一日も早く、戦争が終わり、平和が訪れることを強く願いつつ、質問します。(拍手)

 まず、民主党の基本的な考え方を述べます。

 民主党は、イラクがこれまで累次の国連決議を守らず、大量破壊兵器に関する疑惑をみずから払拭してこなかったことを、強く批判してきました。同時に、査察を強化し継続することで大量破壊兵器の完全廃棄を行うことは可能であるとし、そうすべきと主張してきました。しかし、今回、ブッシュ政権が国連安保理での問題解決を放棄し、単独主義的な武力行使を開始したことは、国連憲章など国際法の原則に違反する行動であり、これを容認することはできません。(拍手)

 武力行使の中止を強く求めます。小泉総理がブッシュ政権の武力行使に支持表明したことは誤りであり、その撤回を強く求めます。(拍手)

 小泉総理、まず最初に率直にお聞きします。

 あなたは、この数カ月、イラク問題は国際社会とイラクの間の問題であるべきと主張されてきました。しかし、あなたが一致してイラク問題に対応すべきと主張した国際社会は、米国の武力行使をめぐり厳しく賛否が分かれ対立する最悪の状況になっています。あなたは失敗したのです。

 また、小泉総理は、かねがね、日米同盟と国際協調の両立を目指すことが重要だと言われてきました。しかし、小泉総理は、国際協調をあきらめ、日米同盟を選択しました。

 小泉総理、あなたが目指してきた外交目標は、いずれも達成されず、大失敗に終わったのです。総理大臣として、外交に失敗したことについて、率直に反省し、国民に対し謝罪すべきだと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。(拍手)

 小泉総理、あなたは、外交に失敗しただけではありません。あなたは、イラク問題について、先日のブッシュ大統領のイラクへの最後通告がなされるまでの間、国民に対し、説明責任を全く果たすことがありませんでした。

 さきの党首会談で、米国の新たな国連決議なき武力行使を認めるのかと問われて、そのときに考える、その場の雰囲気でなどと述べたのは、その典型であります。国連安保理の非常任理事国に対しては、経済協力などを背景に米国支持を求めながら、国内では全く説明しない。そこにあるのは、小泉総理の国民無視の姿勢であり、国民の共感を得ながら外交を進めるという姿勢は全くありません。

 英国のブレア首相が国民に対して理解を求めようと必死になって説明する姿勢には、私も同じ政治家として共感を持ちます。総理は昨日の党首討論でもいろいろ言いわけをしましたが、ブレア首相との違いは余りにも大きい。国民への説明責任を果たしてこなかったことを謝罪すべきです。答弁を求めます。(拍手)

 小泉総理、あなたは、米国ブッシュ政権の決定したイラク攻撃を支持すると表明されました。小泉総理は、その理由として三点挙げています。

 第一に、国連決議一四四一号を初めとする一連の国連決議が武力行使の根拠となっており、国連憲章違反との批判は当たらないこと。第二に、大量破壊兵器が独裁者やテロリストの手に渡った場合、何十万人の生命が危機に直面すること。第三に、日米関係の信頼性を損なうことは国益に反する、その国益の中には北朝鮮問題も含まれる。

 以上の三点です。いずれも説得力に乏しいと言わざるを得ません。(拍手)

 以下、それぞれについて質問するとともに、米国のイラク攻撃支持の撤回を求める我々の要求に対して、受け入れる意思があるかどうか、総理の見解を伺います。

 まず、第一の問題についてお聞きします。

 総理は、いつから、国連決議一四四一号が武力行使を容認しているとの考えに変わったのでしょうか。

 総理、私は、二月三日のこの本会議場での代表質問で、フランス、ドイツ、ロシアなどは、国連決議一四四一号が武力行使を容認するものではなく、イラク攻撃を行う場合は新たな決議が必要との立場に立っている、日本も同じ立場に立つべきだと主張しました。総理に、再質問、再々質問、三度にわたり質問しました。総理は、当初は逃げの答弁に終始しましたが、三度目の私の質問に対して、一四四一号の決議を守らなかった場合に自動的に武力行使を容認しているものではない、自動的に武力行使を容認しているものではないと答弁されました。このときの答弁は誤りだったのでしょうか。いつ、なぜ、考え方を変えられたのでしょうか。答弁を求めます。

 安保理の理事国の多くやアナン国連事務総長は、新たな国連決議が必要であるとしています。総理は、新たな国連決議は必要ないと言われますが、そのことを最終的に決めるのは、あなたではありません。国連安保理であり、あなたが勝手に決めることはできないのです。今回の武力攻撃に正当性がないことは明らかです。もし、総理に異論があれば、明快に述べていただきたい。答弁を求めます。(拍手)

 次に、第二の点についてお聞きします。

 大量破壊兵器がテロリストや独裁者の手に渡ることは、確かに大変な問題です。しかし、だからこそ、イラクに対して国連の査察団が査察を行ってきたのです。小泉総理は、イラクの大量破壊兵器が確実に存在し、それが今後、確実にテロリストの手に渡るという確かな証拠をお持ちなのでしょうか。査察団が証明できていないことを、いかなる根拠で言われているのでしょうか。また、仮に確たる根拠があったとしても、そのことが直ちに国連無視の武力行使を正当化するものではないはずです。(拍手)

 先ほど、問題の先送りを許すべきでないと総理は述べられましたが、なぜ、査察委員会のブリクス委員長が言うように、数カ月の査察の継続まで待てなかったのでしょうか。小泉総理の論理には飛躍があり、粗雑過ぎます。反論があれば述べてください。

 第三に、日米関係の信頼性を損なうことは国益に反すると言われました。

 確かに、日米同盟関係の信頼性を損なうことがあってはなりません。特に、九・一一テロ事件以降の米国国民の意識の変化を十分に踏まえることは大切です。注意深く、慎重に行動しなければなりません。しかし、だからといって、国連憲章に反し、大義なき戦争を始めていいはずはありません。

 そして、日米間のきずなは、そんなにも弱いものなんでしょうか。同盟国であればこそ、率直に語り、ブッシュ大統領を説得すべきだったのではありませんか。そして、国連安保理の手続を無視し、国連の権威と機能を弱めることこそ、国益に反するのではないでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 北朝鮮問題との関係についても、今回、米国の単独武力行使を認めたことは、北朝鮮問題の解決をより困難にしたと思います。北朝鮮問題の解決は、中国やロシアとの協力が欠かせません。国連安保理の取り組みも重要です。すなわち、重要なのは、国際協調の中で北朝鮮の問題を解決するという姿勢です。ブッシュ政権とこれらの国々や安保理との間に重大な亀裂が入った状況で、いかにして北朝鮮の問題を解決するのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 最後に、極めて重要なことを小泉総理にお聞きします。

 ブッシュ政権がイラクへの武力行使を正当化する最大の根拠は、国連決議ではありません。昨年九月に発表されたブッシュ・ドクトリンにあります。その中で、従来の自衛権の考え方を大きく変え、単独行動、先制攻撃を認めています。先日のブッシュ演説でも、米国は自国の安全を守るために武力行使の権限を持つ、行動しないことによるリスクの方がはるかに大きいことから我々は今行動するのだ、敵が先に攻撃した後に反撃するのは自己防衛ではなく自殺行為だとまで述べています。

 このようなブッシュ大統領の、従来の自衛権では説明できない先制攻撃論を、小泉総理は認めるのですか、認めないのですか。答弁を求めます。(拍手)

 また、このような先制攻撃を認めることは、自衛権の行使と国連安保理の決議がある場合を除いては武力行使は認めないとする国連憲章の考えを大きく変え、今までの平和維持のための国際的な仕組みの根本的な見直しにつながります。唯一の超大国アメリカが国連を無視し、単独行動、先制攻撃を行うとすれば、国連の権威は失われ、世界は極めて不安定になります。米国といえども国家である以上、自国の国益を基準にして武力行使することになりかねません。

 ブッシュ大統領は正義を掲げてみずからの戦争を正当化しようとしていますが、国際社会において、正義は一つでは必ずしもありません。だからこそ、国連という協議の場が設けられているのです。(拍手)

 私は、以上の点についても小泉総理と認識を共有していると期待しておりますが、いかがでしょうか。二月三日のこの場での代表質問で、この点、小泉総理に三度にわたり質問しましたが、全くお答えはありませんでした。責任ある答弁を今度こそ求めます。(拍手)

 小泉総理、あなたは、同盟国の一員として、ブッシュ大統領と、このブッシュ・ドクトリンについて、昨年九月以降、意見交換をしたことがありますか。国連を軽視する米国の姿勢は、将来的には、日米同盟の本質をも大きく変えかねない重大な問題であります。そんな危機感を持って、ブッシュ大統領に、単独行動・先制攻撃論の問題点を指摘し、自重を求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

 小泉総理、我々は今、二十一世紀最初の大きな戦争の始まりに直面しています。戦争は多くの罪なき命を奪います。そして、国連安保理の決議がないままの大義なき戦争が今後の世界の平和に及ぼす影響ははかり知れません。今日の事態を招いたことについて、政治家として、そして一人の人間として、この議場にいる我々一人一人が大いなる反省を求められていると思います。とりわけ、日本国総理大臣の職にある者として、小泉総理、あなたの責任はとてつもなく重い。しかし、私には、あなたにその認識があるとは到底思えない。そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田議員にお答えいたします。

 日米同盟と国際協調の両立及び国民への説明責任についてのお尋ねでございます。

 国際社会も、一致して、イラクの全面的協力を強く求めてきました。私も求めてまいりました。残念なことに、イラクは、国際社会の真摯な努力にこたえず、みずから平和の道を閉ざしてきました。

 イラクの大量破壊兵器を破棄する国際的な動きの先頭に立っている米国に対し、同盟国として可能な限りの支援を行うことは当然だと思っております。

 また、日米同盟によって、日本は日本の安全を確保してまいりました。これからも、この日米同盟関係、信頼性を維持していきながら、日本国民の安全を図っていかなければならないと思っております。

 同時に、安全が確保されて初めて、さまざまな政策が推進できるわけであります。国際協調を図りながら日本の発展を図っていく。日米同盟と国際協調を両立させる。今後も、この両立を図っていくよう努力してまいります。(拍手)

 また、イラク問題に対する政府の考え方について、説明責任についてのお尋ねでございますが、私は、その都度、政府として説明をしてまいりました。しかしながら、自分の考えと合致していないと答えになっていない、見解が違うと説明していない、こう言われるんじゃ、幾ら説明してもお気に入りの説明責任を果たしたとは言えない。

 政府には政府の立場があるんです。私は、今までも、はっきりと説明しております。今後も、国民の理解と協力が得られるように、さまざまな機会を利用してはっきりと説明して、御理解、御協力を得たいと思います。(拍手)

 米国のイラク攻撃支持の撤回についてお尋ねでございます。

 武力行使を支持することは容易な決断ではありません。しかし、大量破壊兵器の脅威は、決して、我が国を取り巻くアジア地域も無縁ではありません。武力行使なしに大量破壊兵器が廃棄され得ない状況のもとでは、今般の行動を支持することは、私は、国家利益にかなうと考えており、撤回する意思はありません。(拍手)

 イラクへの武力行使に関する法的根拠についてでございます。

 岡田さんは、国連憲章違反だと言っていますが、私は、そう思っていないのです。国連憲章に合致する。

 その理由は、決議一四四一自体に武力行使を容認した規定がなく、同決議に従って安保理の審議が行われたことは、これまで繰り返し述べてきているとおりであります。

 我が国としては、査察官の累次の報告等で明らかなとおり、イラクが決議一四四一で履行を求められている武装解除等の義務を履行していないことから、さらなる重大な違反が生じていると言わざるを得ず、停戦条件を定めた決議六八七の重大な違反が生じていることから、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えており、アメリカ、イギリスも同様の解釈をとっております。

 イラクでの査察の継続が認められなかった理由に関するお尋ねでございます。

 イラクが最近になって査察に小出しに協力しているのは、米国等の強力な軍事的圧力があってこそであります。イラクの姿勢が根本的に改められない限り、査察は有効たり得ないと思います。我が国を含む国際社会による懸命な努力も尽くされ、イラクの対応を根本的に変えるための見通しが全く見出せない状況のもとで、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと思います。

 私は、ブッシュ大統領にも、また、シラク大統領にも、他の首脳にも、できるだけ平和的解決が望ましいということを何回も繰り返し訴えてまいりましたが、このような段階になって武力行使に至ったことは、私も残念だと思いますが、これはやむを得ないことだと思います。

 日米関係と我が国の国益についてでございます。

 我が国は、イラク問題につきまして、アメリカと率直な対話を行ってまいりました。武力行使を支持するということについても、日本国民の多くの方々が反対していることも私は承知しております。しかし、大量破壊兵器の脅威というのは、決して人ごとではありません。武力行使なしには大量破壊兵器が廃棄され得ない状況のもとでは、私は、同盟国として今般のアメリカの行動を支持することが国家利益にかなうと考えまして、これからも、日米、緊密な連携のもとに国際協調を図っていくつもりでございます。

 北朝鮮問題についてでございます。

 核問題を初めとする北朝鮮に関する諸問題を平和的に解決することについては、アメリカや韓国、中国、ロシアを含む国際社会の中で、意見が一致しております。政府としては、今後とも、日米韓三カ国の緊密な連携を維持し、また、中国及びロシアを初めとする他の関係国や関係国際機関とも協力していく考えであります。

 アメリカのいわゆる先制行動についてのお尋ねでございます。

 我が国として他国の国際法の解釈について有権的な評価をする立場にはありませんが、いずれにせよ、アメリカは国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えます。

 なお、米国の国家安全保障戦略には、米国が脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているわけではなく、先制を侵略のための口実としてはならない旨が明記されています。また、国家安全保障戦略は、国防政策を中心に広範な安保政策の基本的な考え方を述べたものでありますが、政府としては、特に、米国がテロや大量破壊兵器の拡散といった冷戦後の新たな脅威に対して断固たる姿勢で臨み、国際社会と連携しつつ強力なリーダーシップを発揮するという決意を同戦略において示している点を評価しております。

 国連という協議の場の必要性についてでございます。

 御指摘のとおり、二十一世紀の国際社会が直面している諸課題への取り組みに当たり、唯一の普遍的、包括的な国際機関である国連は各国の協議の場としても重要な役割を果たしていると私も考えております。今回の武力の行使は、関連安保理決議に基づくものであり、国連憲章の規定に合致していると考えております。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 冬柴鐵三君。

    〔冬柴鐵三君登壇〕
冬柴鐵三君 私は、公明党を代表し、小泉総理から御報告がございましたイラクに対する武力行使後の事態への対応について、質問いたします。(拍手)

 今、世界が直面する最大の脅威は、大量破壊兵器の拡散です。そして、これらの大量破壊兵器とテロリストが直結することほど恐ろしいことはありません。世界じゅうのどこでもテロが起きる脅威にさらされ、当然、我が国の平和と安全にも重大な影響を及ぼすからであります。

 いかにして国民の生命身体を守るか、いかにしてこの国際テロを封じ込めるか、それはひとえに、国際社会と一致結束してこれらの問題に毅然と取り組むしかありません。それこそが我が国の国益にかなった道だと確信するものであります。

 さて、この大量破壊兵器拡散の危険性が最も高い国こそ、独裁者サダム・フセインに支配されているイラクなのであります。

 一九九〇年、イラクによるクウェート侵攻に対し、国連は、安保理六六〇号で、イラクの侵略を認定し、直ちに、イラクへの非難と即時撤退要求を突きつけました。また、イラクは、過去十二年間で、実に十七本にもわたる国連安保理決議を無視し続け、大量破壊兵器の完全廃棄の義務を怠ってきました。これは国連への明らかな挑戦です。

 また、国連査察団の報告によると、イラクが疑惑に答えていない二十九項目の武装解除問題が公表されています。その中でも特に脅威なのは、マスタードガスやVXガス等の化学兵器、また、炭疽菌などの生物兵器などの存在であります。

 廃棄が証明されていないVXガスは三・九トン以上と言われ、その量は約三億人を死に至らしめるとの試算まであります。さらに、スプーン一杯分で約二百万人の殺傷能力があると言われる炭疽菌を約一万リットル保有している疑惑など、極めて危険な大量破壊兵器である生物化学兵器の行方すら解明されていないのが現状であります。

 実際に、イラクは、極めて非人道的な化学兵器であるマスタードガスをイラン兵や自国民であるクルド人に対して使用し、三万数千人を殺傷した前歴があります。その脅威は現実性を帯びているのであります。

 今、国際社会が一致結束してイラクに対して厳しい圧力をかけなければならない最終局面で、まことに残念なことに、安保理が一致結束できませんでした。

 そこで、お伺いします。
 総理のイラク問題に対する認識及び今回の安保理の対応についての御見解をお尋ねしたいと思います。

 あわせて、指摘しておきますが、国連決議や国際社会の要求を無視し続けるイラクをこのまま放置しておくことは国際社会全体の脅威であるというイラク問題の本質を、今、政府は国民に対しきちんと説明しておくべきだと思います。総理の答弁を求めます。(拍手)

 さて、イラクが国際社会の要求に誠実に対応していれば今回の悲しむべき事態は避けられたという意味でも、非はイラク、なかんずくサダム・フセインの責任に帰着する極めて遺憾な事態であると言わざるを得ません。(拍手)

 今回の武力行使について、米国は、安保理決議六七八、対イラク武力行使容認決議、六八七、対イラク停戦決議、大量破壊兵器完全廃棄に基づき、決議一四四一で最後の機会として与えられた大量破壊兵器の廃棄についての誠実な履行義務を怠ったものとしており、その点では、法的には国連を中心とした国際協調の枠組みの文脈のもとに行われていると主張しています。

 そこで、総理にお伺いいたします。
 この米国の主張及び解釈をどのように受けとめられていますか。また、かつて、一九九八年十二月、砂漠のキツネ作戦においても、イラクの当時の重大な停戦違反として、国連決議六七八及び六八七に基づいて米英等の多国籍軍がイラクへの武力攻撃を行った歴史がありますが、今回も同様な解釈ができるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。

 ただ、公明党としては、なお重ねてもう一押しの安保理各国の努力が望ましかったと思っております。国際社会もぎりぎりまで平和的解決を願っていただけに、最終局面での安保理の一致ができず、米英などの有志国が苦渋に満ちた決断を下し、武力行使という最後の手段に至ったことは、極めて残念であり、悲しむべき事態であると考えます。一刻も早く、国連の枠組みを尊重する形で、軍事行動の速やかな終結、事態の解決が図られることを強く望みたいと思います。(拍手)

 米英両国は、軍事行動後について、安保理決議を求めてイラクの復興と平和の回復に努めることを表明しています。アナン国連事務総長も復興への国連の尽力を訴えているように、イラクの復興に国際社会は協調して取り組むべきであると考えます。それは、結果として、国連の信頼回復にもつながるからであります。そして、この点での日本の果たす役割は大きいと思います。

 軍事行動の開始に伴い、既に発生している難民支援も含め、いわゆる人道支援の面で日本が積極的にかかわり、国際社会の信頼を得るような貢献を早急に開始すべきだと思いますが、政府はどのようなメニューを検討されているのか、お伺いしたいと思います。

 なお、日本政府は今回の事態に対し国民の安全確保及び経済の混乱回避に万全を期すべきだと思いますが、具体的な策をお聞かせいただきたいと思います。

 今回の一連の安保理協議をめぐり、国連は必ずしもオールマイティー、万能ではないことを身につまされました。しかし、国連を離れて、平和を維持し回復する機能はありません。そういう意味で、今こそ国連改革を論議すべきとの声も高まりつつあります。改革の方向としては、安保理方式など今のやり方でいいのか、安保理の構成国やその数のあり方、さらには、拒否権行使の問題などであります。

 我が国は、国連中心の、対話を重視する外交を推進することを基軸としています。日本は既に国連の通常予算の約二〇%を分担し、発言権を確保しているところでありますが、今後、常任理事国入りを目指すのであれば、例えば国連本部で働く有能な邦人をふやすこと等、一層の顔の見える貢献を行うべきであります。そして、国際平和と安全の維持について、より実効的な対応を行うべく、我が国がリーダーシップを発揮し、安全保障理事会の改革を具体化することが必要であります。総理の御見解を承りたいと存じます。

 最後に、ただ口で反戦反戦、平和平和と叫んでいても、本当の平和は構築できません。平和をつくり出すためにどう行動するかが極めて大事であります。

 このような強い思いで、公明党は、米国、イラク両国の駐日大使あるいは臨時代理大使を初め在日要人や、国連を訪ねてアナン事務総長、あるいは国務省を訪ねてアーミテージ米国務副長官、また一昨日は、イランを訪ねてイランの要人等と会見し、ぎりぎりまで、私たちは党独自の外交努力を展開してまいりました。今後は、一刻も早く事態が終結し、イラク及び周辺地域諸国の平和と安定のために全力を挙げてまいる所存であります。

 大量破壊兵器拡散の断固たる阻止、国際テロの撲滅へ向けて、総理の強靱なるリーダーシップを期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 冬柴議員にお答えいたします。

 イラク問題の本質についてでございます。
 イラク問題の本質は、イラクが長年にわたり関連の安保理決議を履行せず、恐ろしい大量破壊兵器を廃棄してこなかったことにあると思います。大量破壊兵器の問題は、決して人ごとではありません。また、大量破壊兵器に対して厳しい態度をとり続けている我が国にとって重要な問題だと認識しております。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使に至ったことは、残念ながら、やむを得ないことだと考えます。

 以上のような政府の考えについては、国民の理解を得ることができるように、これからも努力を続けてまいります。

 米国の対イラク武力行使の法的根拠についてでございます。
 ブッシュ大統領は、十七日に行った演説で、決議一四四一に言及した上で、現在でも有効である決議六七八及び六八七のもとで、米国とその同盟国は武力を行使してイラクの大量破壊兵器を排除する権限を与えられている旨、述べました。我が国も同様の解釈をしており、イラクに対する武力行使は国連憲章に合致するものと考えます。また、御指摘のとおり、平成十年時のアメリカ、イギリス両国の対イラク武力行使時にも、アメリカ、イギリス両国は同様の解釈を行っています。

 軍事行動開始に伴う人道支援についてでございます。
 我が国は、このたびの武力行使によって被災民が発生するのに応じて、国際機関やNGOを通じた支援や、周辺国に対する国際平和協力法に基づく自衛隊機等による人道物資の輸送等の支援を含め、緊急人道支援を行ってまいります。

 安全確保及び経済の混乱回避のための具体策についてでございます。
 イラクとその周辺における在留邦人の安全確保のために危険情報を速やかに発出するとともに、周辺国の在外公館において、在留邦人との連絡、避難の体制を確立しています。さらに、一部の国については、政府チャーター便や政府専用機の派遣も考慮しており、必要な準備を行っています。

 国内でのテロを未然に防止するため、テロ関連情報の収集・分析を強化するとともに、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備など、国内における警戒態勢の強化・徹底を図ります。

 我が国関係船舶の航行の安全を確保するため、航行警報などを通じて情報を提供するとともに、関係国に対して警備強化の要請を行っております。

 経済に混乱を引き起こさないよう、各国との協調のもと、引き続き、為替、原油、株式などの経済・金融市場の動向を十分注視しつつ、不測の事態が生じないよう、原油の安定供給、金融システムの安全確保などについて、日本銀行とも一体となって万全を期していく考えであります。

 国連安保理改革や邦人職員の増強についてでございます。
 二十一世紀の国際社会の平和と安全の維持に引き続き主要な役割を果たすためには、安保理を国際社会の現状を反映するよう改革し、その機能を強化することが必要であります。我が国としては、安保理改革の早期実現に向けて、今後とも積極的に取り組んでまいります。

 また、顔の見える貢献を行うべく、邦人職員の増強についても、引き続き積極的に取り組んでまいります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 都築譲君。

    〔都築譲君登壇〕
都築譲君 私は、先ほど行われた、イラク戦争に関する小泉総理の報告に対し、自由党を代表し、質問をいたします。(拍手)

 まず、国連及び関係諸国の懸命の努力にもかかわらず、米英両国等とイラクが戦争に突入したことは、極めて残念であると申し上げなければなりません。事ここに至った以上、米英両国等がイラク国民の被害を最小限に抑えつつ早期に戦争を終結させることを願うしかありません。

 特に、国連安全保障理事会において意見の一致に至らないまま戦争が開始されたことは異常な事態であり、国際連合を中心とする国際安全保障機能を早急に強化、再構築することが国際社会の喫緊の課題であります。私は、この観点から、我が国と国際社会の安全保障について、総理の見解を伺います。

 最初に、安全保障の原則を確認したいと思います。
 日米安保条約第一条では、国連憲章に定めるところに従って国際紛争を解決すると明記し、国連の強化をうたっています。そのことでも明らかなように、日本の安全保障体制は、二国間の日米安保体制と国連を中心とする多国間の国際安全保障体制が相互補完関係をなし、その二つが不可分一体の基盤となっているのであります。そもそも、総理はその認識をお持ちなのかどうか、明確にお答えください。

 また、我が国の国際安全保障は、日本国憲法に基づき、一、国連の安保理または総会で武力行使容認決議が行われ、国連から参加要請があれば、国連平和活動に参加し、いかなる協力も行う、二、国連の武力行使容認決議がないまま米国などが独自に行う戦争には参加しないことを原則とすべきであります。それを誠実に実行することによって初めて、日米安保体制と国連の国際安保体制は一体的に機能するのであります。それについてどうお考えか、お答えください。

 次に、今回のイラク戦争について個別に伺います。
 イラクのサダム・フセイン独裁政権がこれまで、数多くの国連決議に反して大量破壊兵器を隠匿してきたのは事実であると思います。また、ナチス・ヒトラーがそうであったように、独裁者にはいかなる妥協もしてはならないということも、歴史の教える真実であります。その意味で、最終的には軍事力によって独裁政権を倒し、武装解除するしかないという米国の主張は理解できます。

 しかし、武力の行使は、どんなに国際社会の合意形成が困難であっても、国連憲章に基づく国連の軍事行動として実施すべきであります。今回のように、国連の武力行使容認決議のない戦争を強行することは、今後の国際政治、国際安全保障において、唯一の超大国であるアメリカにとっても、その他の国々にとっても、マイナス面が極めて多い。大量破壊兵器等の軍備管理やテロの抑止・根絶の上でも、かえって不安定要素を生み出す結果になると思います。

 その点について総理はどうお考えか、そのような重大問題が生じることを米国に伝え、自制を求めなかったのか否か、はっきりとお答えください。
 小泉総理は、先ほどの記者会見でも、また、国会報告でも、我が国と国際社会の安全保障について、何一つ原則を示しませんでした。しかも、何の理由も根拠も明らかにしないまま、国連決議なき武力行使と米国への支持を表明したのであります。

 十二年前の国連決議六七八、同六八七を根拠に挙げるなら、なぜ、フランス、ロシア、中国、ドイツなどが賛同しないのか、行動をともにしないのか、説明がつきません。小泉総理は、つまるところ、アメリカが武力行使に踏み切るから支持するというだけにすぎません。そこには、日本の最高指導者としての自覚も見識も全くありません。(拍手)

 このようなその場しのぎでいいかげんなやり方は、日本国民はもとより、米英両国を含む国際社会をも欺くことになり、かえって我が国の安全保障を危うくするものであります。そのことをどうお考えなのでしょうか。見解を求めます。

 総理は、日米同盟を重視したと説明しました。しかし、それは、日米安保体制と国連の国際安保体制が一体となっている我が国の安全保障体制の核心を見誤った愚かな議論であると思います。日本の平和と安全の基盤そのものを総理みずから崩壊させかねない、とんでもない考え方であります。総理に猛省を求めます。

 総理が、もし、国益上あくまでも日米同盟を最優先すると言うのなら、それも一つの政治選択であるとは思います。つまり、激動する国際社会の中で日本が生き抜いていくために、英国のように、米国と対等の同盟国として生死をともにするというのも、日本の選択肢の一つとしてはあり得るでしょう。

 しかし、総理には、その考えも覚悟もないのではありませんか。それでは、改革を絶叫するけれども改革は何一つ実現しない、いつもの小泉語と同様で、言葉だけの日米同盟重視にすぎず、むしろ、アメリカからも軽べつされるだけであります。総理の所見を伺います。(拍手)

 特に、総理が、新たな国連決議がなくても日本は武力行使も戦闘行為もしないのだから米国を支持しても問題はないと弁明している姿は、日本人として見るにたえないものがあります。その姿勢こそが偽善的であり、体裁だけの対米協調の最たるものです。

 政府のこれまでの憲法解釈によれば、たとえ国連の武力行使容認決議があっても日本は参戦できないという見解であります。しかし、国連決議があってもなくても参戦しないというのでは、どの国も我が国の外交努力に真剣に耳を傾けるわけがありません。口先だけでへらへら言ったって、だれが耳を傾けるでしょうか。他人のために真剣に汗をかかない者が、他人から本気の支援を受けたり、努力を評価されるはずがないのであります。国際政治のこの冷厳な事実をどう受けとめているのか、お聞かせください。

 この国家としての自立は、とりわけ日米同盟関係において重要であります。みずから立ち、率先して国際社会の平和と安定に努力してこそ、米国に従属せず、米国の耳に痛いことも直言できるのだと思います。それによって初めて、日米安保体制は両国の真の信頼関係の上に確実、不動のものになると思います。総理の認識をお示しください。(拍手)

 最後に、私たち自由党の主張を簡明に申し上げます。
 我が国は、第一に、自立国家として、以上申し上げたような安全保障の明確な原則を確立し、それを内外に宣明すべきであります。その上で、国連においてイラク戦争に関する意思統一を図り、戦争を早期に終結させるために必要な決議を早急に行うよう、あらゆる外交努力を行うべきであります。この二点について、総理の所見を伺います。

 終わりに、この重大事態に臨んでも、今まで同様、理念も原則もなく、そのときの状況とその場の雰囲気でただ右往左往するだけであれば、小泉総理は日本にとっても国際社会にとっても百害あって一利なし、即刻退陣すべきであると申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 都築議員にお答えいたします。

 国際社会の安全保障に関するお尋ねでございます。
 イラク問題に関し、最終的に安保理が一致団結できなかったことは残念でありますが、イラクが十二年間にもわたり安保理決議への違反を続け、国連の権威を無視してきたことは、決して見逃されてはならないと思います。

 我が国は、今後とも、国際的な安全保障の問題について、国連を初めとする国際社会との協調を基本に、米国との同盟関係を踏まえつつ主体的に取り組んでまいります。

 我が国の安全保障体制についてでございます。
 日米安保条約は、我が国の安全保障政策の基軸であります。また、国際の平和及び安全を維持することを目的とする国連の諸活動に積極的に寄与していくことは、我が国の平和と安全を確保するとの観点から重要であります。このように、日米安保体制と国連の活動が相まって我が国の平和と安全の確保に寄与するものであると認識しております。

 憲法のもとにおける安全保障の原則についてでございます。
 我が国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本としております。この基本原則を踏まえ、今後とも、適切な安全保障政策の運営に努めてまいります。

 国連の武力行使容認決議のない戦争を強行することは今後の国際安全保障においてマイナスではないかとのお尋ねでございます。

 さきに述べたように、今回の米国等の武力行使は一連の国連決議に根拠を有するものであり、国連決議の根拠がない戦争であるとの指摘は当たらないと思います。我が国としては、引き続き、大量破壊兵器等の軍備管理やテロの抑止・根絶に努力してまいる考えであります。

 イラク問題と我が国の安全保障についてでございます。
 私の国会への報告においては、大量破壊兵器の拡散防止のため国際社会と一致して努力すべきこと、また、我が国の平和と安全のために日米同盟が不可欠であること等を明確に示しております。また、一連の国連安保理決議が今回の武力行使の根拠となり得ることは、これまでも累次申し上げているとおりでございます。

 日米同盟についてのお尋ねでございます。
 武力行使を支持することは容易な決断ではございません。しかし、大量破壊兵器の脅威は、決して人ごとではありません。武力行使なしには大量破壊兵器が廃棄されない状況のもとで、我が国としては、国際社会の責任ある一員として、同盟国である米国と他の国々の行動を支持することが国家利益にかなうと考えたのであり、言葉だけの日米同盟ではありません。

 米国は、日本への攻撃は米国への攻撃とみなすと明言しております。日本にとって最も信頼できる同盟国であります。日本も米国にとって信頼に足りる同盟国でありたいと思います。(拍手)

 我が国の外交努力についてお尋ねがありました。
 我が国は、従来より、紛争の解決と平和で安定した国際社会の構築に向け、さまざまな和平努力を積極的に行っており、こうした我が国の貢献は国際社会からも高い評価を得ていると思います。

 我が国の外交姿勢についてでございます。
 日米同盟関係は我が国外交の基軸であり、イラク問題についても、これまでと同様に、日米双方が言うべきことを言い、行うべきことを行ってまいりました。米国も我が国のこのような姿勢を高く評価しており、今後とも、米国と緊密に連携していく考えであります。

 今後あらゆる外交努力を行うべきではないかという御指摘でございます。
 我が国は、従来より、専守防衛を旨とする日本国憲法のもと、日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努めるとともに、国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本としています。

 イラク問題については、安保理が一致団結し、国際社会の平和と安全に対して責任を果たすよう、ブッシュ大統領やシラク大統領等、関係国首脳に直接訴えてまいりました。しかしながら、イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使に至ったことはやむを得ないことだったと考えます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕
志位和夫君 日本共産党を代表して、質問します。(拍手)

 本日、米英軍によって、イラクに対する軍事攻撃が開始されました。この戦争は、一かけらの道理もない、無法な戦争であります。地球的規模で広がった平和の願いを踏みにじり、戦争という暴挙に訴えた米英両国政府に、我が党は、厳しい抗議を表明します。そして、野蛮な軍事攻撃を直ちに中止することを強く求めるものであります。(拍手)

 小泉首相はこの戦争に直ちに支持を与えましたが、憲法九条を持つ国の政府として、こんな恥ずかしい態度表明はありません。

 私は、三つの角度から、首相の基本的立場をただすものです。
 第一に、この戦争は、国連憲章に基づく世界の平和秩序を覆す、無法な先制攻撃の戦争であるということです。

 首相は、国連安保理決議六七八、六八七、一四四一を持ち出し、武力行使の根拠となり得ると述べました。しかし、昨年十一月に採択された決議一四四一が武力行使の根拠になり得ないことは、政府も認めてきたことです。決議六七八も、十三年も前、湾岸危機の際に、クウェートからのイラク軍の排除のための武力行使を容認したものであり、今回の戦争の根拠になり得ないことは明瞭です。決議六八七は、湾岸戦争の停戦の条件を定めたものですが、停戦協定違反をもって武力行使の根拠にすることも不可能であります。停戦協定の当事者は国連であり、その違反と失効を決めることができるのは国連だけですが、国連安保理はそのような決定をしていないではありませんか。(拍手)

 首相の持ち出した三つの安保理決議は、どれも戦争を正当化する法的根拠になり得ないものではありませんか。だからこそ、米英はあれほど執拗に新しい決議の採択を安保理に迫ったのであり、それが孤立し、失敗したことは、この戦争が国連を無視した無法の戦争であることをみずから証明するものではありませんか。(拍手)

 首相は、この戦争が一体どのような国際法上の根拠に基づいていると考えているのですか。答弁を求めます。

 この戦争が国連憲章をじゅうりんした先制攻撃の戦争であることは明瞭です。こんな無法の横行を許すなら、事はイラク問題での無法にとどまらず、国連憲章を土台に置いた世界の平和秩序を正面から破壊することになります。人類が多年にわたって築いてきた平和のルールを覆すこの暴挙を、絶対に許すわけにはいきません。(拍手)

 第二に、この戦争は、ようやく本格的軌道に乗りつつあった国連の査察による大量破壊兵器の廃棄という平和解決の道を、力ずくで断ち切るものであります。

 昨年十一月の決議一四四一によって再開された国連による査察は、本格的な軌道に乗りつつありました。国連査察団のブリクス委員長が三月七日に行った報告では、ミサイル廃棄を初め実質的な成果が上がりつつあることを指摘し、イラクの協力姿勢は十分とは言えないものの、積極的、自発的な方向への変化が起こっていることを歓迎し、武装解除のための残された未解決の問題点を具体的に列挙し、それを解決するための作業計画を近く安保理に提出すると述べ、数カ月の査察延長があれば問題は平和的に解決できると述べていました。作業計画は、十七日、安保理に提出され、査察を本格的軌道に乗せるための協議がまさに始まろうとしていたのであります。

 国連の査察の継続・強化による平和解決への道は、大きく開かれていたのであります。戦争は、この国際社会の努力を力ずくで断ち切り、台なしにする暴挙と言わなければなりません。(拍手)

 ブリクス委員長は、三月十八日、三カ月半で査察の門戸を閉じることは筋が通らないと、査察が打ち切られたことへの厳しい批判を述べました。一体、首相は、査察を断ち切り、戦争に切りかえなければならないどういう理由があったと説明するのですか。お答え願いたい。

 首相は、フセイン政権に武装解除の意思がないことが断定されたとして、戦争支持の理由としました。しかし、昨日の党首討論で、私が、その断定を行ったのは一体だれかとただしたのに対して、首相は、答弁ができませんでした。

 国連安保理は、そのような断定を行っていません。査察はもはや意味がないという勝手な断定を行ったのは、米国です。アメリカが勝手に下した独断を唯一のよりどころにして戦争支持の理由とする、これは、まともな独立国の政府なら到底恥ずかしくてできない、思考停止の対米追従の態度そのものではありませんか。(拍手)

 平和解決の道を戦争で無理やり断ち切る米国政府の行為は、アメリカにとっては、大量破壊兵器の廃棄が実は目標でなく、フセイン政権の打倒こそが本来の目的だったことを示しているのではないか。そのことは、ブッシュ大統領が、この戦争の目的を、イラクの現政権を転覆し、米国言いなりの体制を中東諸国に押しつけることにあることをあからさまに表明したことにも証明されています。

 ある政権がどのような問題を持っているにせよ、そのあり方を決める権利を持っているのは、その国の国民だけであります。首相は、米国ならば、勝手に他の国の政権を転覆し、自分の気に入る政権を押しつける特別の権利を持っていると考えているのですか。このような横暴は、どの国であれ、国連憲章で厳しく禁止されている他国への主権侵害、内政干渉そのものとなることは余りにも明瞭ではありませんか。(拍手)

 第三に、この戦争がもたらす罪なき人々への犠牲は、はかり知れないものがあります。

 米英軍による爆撃にさらされているのは、罪なき民間の人々、お年寄り、女性、子供たちであります。国連の内部文書では、戦争によって五十万人の死傷者、三百万人の難民、避難民が生まれることを予想していますが、一体、首相は、この戦争がどれだけの罪なき人々の犠牲をもたらすと認識しているのですか。

 ユニセフのベラミー事務局長は、イラクの総人口二千二百三十万人の半数、一千百三十万人が十八歳未満の子供であること、四人に一人の子供が栄養失調、八人に一人の子供が五歳までに死亡すると指摘し、戦争は子供たちに最も大きな犠牲を強いると訴えています。首相はこの訴えをどう受けとめますか。

 首相は、イラクが大量破壊兵器を持っているかもしれないという疑惑だけで、このような非人道的な犠牲をやむを得ないことと合理化するつもりですか。しかと答弁を願いたい。(拍手)

 日本共産党は、無法で野蛮なイラク戦争を直ちに中止すること、日本政府が恥ずべき戦争支持の態度を直ちに改めることを強く求めます。平和を願う世界と日本の人々と手を携え、この無法な戦争をやめさせるために全力を尽くすことを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 志位議員にお答えいたします。

 米国等の武力行使の法的根拠についてでございます。
 イラクは諸義務の履行のための完全な協力を行っておらず、決議一四四一の規定に基づきさらなる重大な違反が生じており、いわゆる湾岸戦争の停戦決議六八七の重大な違反が生じていることから、停戦の基礎が損なわれ、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えます。このような我が国の見解については、米英が表明している見解とも一致しています。

 査察を断念する理由についてのお尋ねです。
 イラクが最近になって査察に小出しに協力するようになったのも、米国等の強力な軍事的圧力があってこそであります。イラクの姿勢が根本的に改められない限り、査察は有効たり得ないと思います。我が国を含む国際社会による懸命な努力も尽くされ、イラクの対応を根本的に変えるための見通しが全く見出せない状況のもと、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考えます。

 米国の姿勢についてですが、米国政府は、従来より、達成すべき目標はあくまでも関連安保理決議により義務づけられた大量破壊兵器の廃棄であると明確に述べています。我が国としても、いわゆる湾岸戦争の停戦条件を含めた決議六八七の重大な違反が生じていることから、停戦の基礎が損なわれ、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えます。

 武力行使の結果もたらされる被害についてでございます。
 私は、イラクにおける戦闘が一刻も早く、人的、物的被害もできるだけ少なく終結することを、心から望んでおります。同時に、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧復興のため、国際社会と協調してできる限りの支援を行っていく考えであります。

 戦争の犠牲についてでございます。
 御指摘の数字は、サダム・フセイン政権のもとでのイラク国民の厳しい状況を指摘したものと理解しています。武力行使なしに大量破壊兵器が廃棄されることが最善であることは、言うまでもありません。しかしながら、平和的解決のための機会を与えられたにもかかわらず、イラクがその機会を生かそうとせず、安保理決議違反を繰り返してきたことが問題なのではないでしょうか。(拍手)

 なお、ブッシュ大統領は、紛争となった場合には、米国はあらゆる方法で無辜の市民を守る責任を受け入れると述べております。

 イラク問題に対する我が国の立場でございます。
 イラクは、かつて、隣国イランに対しても、また、自国民に対しても、残酷な化学兵器を使用し、多数の犠牲者を出しました。大量破壊兵器廃棄は、湾岸戦争の停戦条件です。しかし、イラクは、国際社会との約束を破り、十二年間もの間、国連決議を破り続けてきました。武力行使なしに大量破壊兵器の廃棄を実現することが不可能な状況下においては、米国等による行動を支持することが、私は適切であると考えます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。

    〔土井たか子君登壇〕
土井たか子君 社会民主党・市民連合を代表いたしまして、質問をいたします。(拍手)

 私は、たった今、この時間にも、ミサイル攻撃にさらされ逃げ惑う、罪のない子供たちや女性や多くの市民のことを思うと、胸が張り裂けんばかりです。そして、この理不尽なアメリカのイラク攻撃の引き金に手をかけた人たちに、激しい憤りを禁ずることができません。(拍手)

 小泉総理、あなたは、アメリカを支持すると言われました。平和憲法を持つ日本国の総理大臣が、アメリカの戦争を支持すると言われたのです。しかし、あなたの言葉の中には、この戦争で犠牲にさらされる多くの人々に思いをいたす言葉はただの一言も聞くことができませんでした。

 総理に伺います。
 この戦争で犠牲にさらされる人たちのことをどう思っておられるのでしょうか。一人一人の命のとうとさや命の重みをどう考えておられるのですか。

 日本は、かつて、戦争の加害者となり、被害者となりました。その経験の中から、戦争放棄と戦力不保持を誓ったのが日本国憲法です。その憲法に最も忠実であるべき総理大臣が道理のない戦争を支持することは、真っ向から憲法に背くことであることを断言いたします。(拍手)

 総理は、三月十三日の木曜日、野党の党首との会談で、国連決議なしのイラク攻撃への対応についてお尋ねしたとき、まだ考えていない、まだその段階でない、こう述べられただけでした。

 しかし、三月十八日、ブッシュ大統領の演説が終わるや否や、衆議院の本会議が予定されているその時間に、記者団の質問に答える形で、アメリカを支持する、前から支持していたと述べられたのです。総理は、私たちに対しては、その場しのぎだったのでしょうか。

 しかも、我が国の基本方針にかかわる問題を、わずか十分足らずのインタビューで表明されたのです。それは、本会議が開かれる、ちょうどその時間でした。なぜ、本会議において報告されなかったのですか。

 今まで、ただの一度も、本会議で、みずから国民に対して説明しようとはなさいませんでした。そして、アメリカのイラク攻撃が始まってしまってからこのような本会議を開くようなことは、国会を冒涜し、国民を愚弄する以外の何物でもありません。(拍手)

 しかも、報道によりますと、小泉総理がアメリカのイラク攻撃を支持する方針を決定、表明するまでの過程で、全閣僚に意見を諮る場面はなかったとあります。これは本当なのかどうか、はっきりしていただきたいと思うのです。国会と民主主義に対する総理の御存念はどういうことか、お尋ねいたします。

 アメリカの戦争に、国際社会の大義は全くありません。これに関連する問題を四点、明確にお答えいただきたいと思います。

 まず、ブッシュ大統領は、イラクは危険な大量破壊兵器を隠していると言われます。しかし、国連はその兵器の査察をしていた真っ最中ではなかったのですか。

 国連安保理でのブリクス査察委員長は、イラク政府のより真摯な査察への協力を促すとともに、あと数カ月、査察を継続すれば、その危険な兵器があるかどうか、ほぼ確実にわかると報告していました。また、十七日には、十二項目の作業計画が提案されたばかりでした。さらに、ブリクス委員長は、きのうからきょうにかけて、わずか三カ月半で中止する理由はないし、決議一四四一の趣旨も、このような短い査察をするためのものではなかったと思うと述べておられます。

 このブリクス発言を頭から否定されるのですか。どう受けとめられているのですか。ここは大事な焦点ですから、はっきりとお答えいただきたいと思います。(拍手)

 二つ目は、国連安保理でのフランス、ロシア、ドイツが共同で提案した査察継続という案を無視されている論拠は何なのですか。このこともはっきりお答えいただかなければなりません。(拍手)

 そして三つ目は、アナン事務総長の、安保理承認なしの攻撃は国連への侮辱であり、国連憲章、国際法に違反と言われる見解は重いものです。どのように受けとめられているのか。きのうの党首討論でこれを取り上げましたが、お答えがありませんでした。きょうというきょうは、ひとつこの場ではっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)

 そして四つ目は、ブッシュ大統領は、この戦争の目的をフセイン政権の追放にあると強調しています。一国の政治体制を覆すことを目的とする戦争は、国家の主権と民族自決権に対する侵害であって、軍事的侵略のそしりさえ免れることはできません。この戦争は主権国家に対する内政干渉にほかならないと考えますが、総理の明確な御見解をお伺いいたします。(拍手)

 さて、日本国憲法第九条は、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こう規定いたしております。だからこそ、国際協調によって平和を維持することを目的とする国連中心主義を戦後外交の基本としてきました。日本国憲法と国連中心主義が政治の基礎であり、外交方針の基本です。

 総理は、このアメリカの戦争を支持する大きな理由として、日米同盟の重要性を挙げておられます。総理は、国際協調と日米同盟を両立させると言い続けておられますけれども、それはサギをカラスと言いくるめるに等しいと言わねばなりません。(拍手)

 日米同盟の根拠となるのは日米安保条約です。日米安保条約の第一条と第七条には何を規定しているかを総理は御存じでしょうか。そこには、国連中心主義と国連憲章優位が明記されているのです。日米同盟は、国連中心主義を基礎に置いているものなんです。しかし、アメリカは国連を無視し、そのアメリカを総理が支持された今、日米同盟は国連中心主義を逸脱いたしております。日米同盟そのものが変質したと言えましょう。

 日米同盟を金科玉条とする小泉総理、あなたは、この矛盾に気がついておられますか。お答えいただきたいと思います。(拍手)

 アメリカのカーター元大統領は、三月十一日付のニューヨーク・タイムズに一文を寄稿され、「米国政府は、世界の圧倒的多数の反対を押し切ることによって、世界平和の将来性をはらんだ機関としての国連の基礎を掘り崩すことでしょう。」と警鐘を鳴らしておられます。

 私は、攻撃の即時停止を強く求めます。総理が、日本国憲法の前文にあるように、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と思われるならば、直ちに、盟友ブッシュ大統領に対して、勇気を持って、戦争の即時終結を直言すべきだと思います。国際協力による平和の秩序回復に取り組まれるべきです。

 あくまでもアメリカにつき従い、戦争支持の立場に固執されるならば即刻退陣を強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土井議員にお答えいたします。

 武力行使の結果もたらされる犠牲についてでございます。
 私は、イラクにおける戦闘が一刻も早く、人的、物的被害もできるだけ少なく終結することを、心から望んでおります。同時に、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧復興のため、国際社会と協調してできる限りの支援を行っていく考えであります。

 イラク問題に関する国民への説明責任についてでございます。
 イラク問題に対する我が国の立場あるいはまたその理由については、私は、先刻の本会議及び記者会見においても、政府の基本的な考え方を明らかにいたしました。今後とも、さまざまな機会をとらえてイラク問題に関する政府の考え方を申し上げ、国民の方々の御理解と御協力を得るよう努力をいたしていき、また、説明に努めてまいりたいと思います。

 米国の立場への支持の表明についてのお尋ねでございますが、政府として、政策判断の最終的な責任者である内閣総理大臣として私が支持を判断いたしました。

 ブリクス委員長の見解についてでございます。
 ブリクス委員長は、十九日、安保理において、これ以上査察を続ける時間が残されていないこと等に悲しみを覚える旨、発言しております。これは、査察に尽力してきた同委員長の感慨の吐露として理解できるところであります。他方、査察継続の有効性について、事実、ブリクス委員長は、同じ機会に、イラクが最近提出した情報にも問題の解決に資するものは限られていると述べています。

 このように、イラクが最後までその態度を根本的に改めなかったために、査察は有効たり得なかったのだと思います。

 査察継続案を断念する理由についてでございます。
 イラクが最近になって査察に小出しに協力するようになってきたのは、米国等の強力な軍事的圧力があってこそであります。イラクの姿勢が根本的に改められない限り、査察は有効たり得ないと思います。

 国連事務総長の見解についてでございます。
 アナン事務総長は、米国及びその他の国が安保理の枠組みの外で軍事行動を行う場合は、それは国連憲章と整合的ではない旨述べたと承知しています。米国等は、今回の武力の行使は関連安保理決議に基づくものであると説明しており、我が国もそのように理解しています。

 イラクに対する武力行使が主権国家に対する内政干渉に当たるのではないかとのお尋ねでございます。
 米国政府は、従来より、達成すべき目標はあくまでも関連安保理決議により義務づけられた大量破壊兵器の廃棄であると明確に述べており、我が国もそのように理解しております。

 国連中心主義と日米同盟についてのお尋ねでございます。
 米国は、我が国にとってかけがえのない同盟国であり、我が国の平和と安全を守るための貴重な抑止力を提供しています。同時に、日本の発展を考える際に、国際協調は不可欠であります。

 今回、最終的に安保理が一致結束できなかったことは残念であります。イラクの将来については、安保理理事国の中でも協力できる可能性はたくさんあると思います。我が国は、これからも、日米同盟重視と国連重視外交を追求していきたいと考えます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕
二階俊博君 私は、保守新党を代表して、小泉総理に質問をいたします。(拍手)

 ブッシュ大統領の最後通告がなされて以来、イラクのフセイン大統領が国際社会の要求を真剣に受けとめ、武装解除に応じることを、最後まで祈るような気持ちで見守っておりましたが、その期待もむなしく、ついに武力行使の事態を招くに至ったことは、まことに残念であります。

 イラクへの武力行使を決断された米国、英国等の同盟国の決意を、保守新党は、断固として支持するものであります。(拍手)

 その第一の理由は、武力行使に至った責任は挙げてイラク側にあるからであります。
 イラクは、今から十三年前、クウェートに侵攻して以来、九一年の湾岸戦争を経て今日に至る十二年間、大量破壊兵器の廃棄と武装解除を求める国連決議に違反し、世界平和への脅威となる行動をとり続けてまいりました。こうした事態に対応し、国連は、昨年十一月、一四四一決議において、イラクに対し、武装解除のための最後の決断の機会を与えました。しかしながら、イラクは、一向にそれに応ずることなく、米軍等が周辺国に多数の軍隊を駐留させ、力による圧力を加えることによって初めて、一部解除に応じただけであります。

 フランスやドイツ等は、イラクは一部査察に応じており、今後、査察を継続すれば武装解除に応ずるとの主張がなされました。しかし、この十二年間、国際社会や国連決議を無視し続けてきたイラクが、みずから進んで武装解除に踏み切る保証は全くありません。

 間もなく、砂あらしと熱風などにより、米軍等の戦闘行為は著しく制約されることになり、米英等の同盟国が武装解除のための行動に踏み切る判断をするぎりぎりの時期であり、武力行使の決断はやむを得ないと考え、改めて、これを支持することを明らかにするものであります。(拍手)

 一部には、今回の武力行使には法的根拠がないとの意見がありますが、加盟国によるイラクへの武力行使を容認した六七八号、核兵器や生物化学兵器の開発・入手禁止を恒久停戦条件とした六八七号、そして一四四一号といった国連の一連の決議は、武力行使に法的根拠を与えるものであります。

 第二は、国際協調による紛争の解決を願っても、フセインにそれに従う意思が全くない限り、限界があることを認めざるを得ないのであります。

 日本政府がイラク問題に関して、今日まで国際社会の一致した対応を求めて各国に積極的に働きかけてきたことは、当然のことであり、正しい選択であったと考えます。政府はもとより、連立与党の幹部や外相経験者等が関係各国を訪問され、我が国として、平和的解決を目指し、努力を重ねてまいりました。保守新党としても、海部元総理を団長とする訪米団を派遣し、ブッシュ元大統領やアーミテージ国務副長官ら米国政府高官とも会談を持ち、米国に対し、国際協調を強く求めてまいりました。

 米英も、昨年の十一月以来、国際的協力を得るため、新たな決議案を提出し、また、その修正案を提出するなど、最後の最後まで真剣な外交努力を行ってきたのであります。米国等が国際協調を無視し、一方的に武力行使に踏み切ったとの野党の批判は当たりません。平和的解決と国際協調を唱えるだけでは全くむなしく、問題の解決にはならないのであります。(拍手)

 第三は、世界の秩序と平和の維持は、国際的なルールが守られ、それを破った者は厳しく罰せられることによって保たれるということであります。

 イラクのフセイン大統領は、自国民に対してさえ生物兵器を使用した事実があります。また、イラクが大量破壊兵器や化学兵器、生物兵器を保有している事実があり、これらが独裁者やテロリストの手に渡った場合、世界のはかり知れない多くの人々の生命が脅かされる現実を、私たちは直視しなければなりません。イラクの国際ルール違反は明白であり、世界平和の脅威であります。

 法治国家において、社会のルールを破った者は国家権力によって罰せられるのは当然のことであり、国際社会においても同様であります。一昨年のアフガンのタリバン政権、アルカイダの例によっても明らかであります。

 国際社会において、今日、残念なことでありますが、米国以外にその力と強い意志を持った国が存在しないのが現実であります。武装解除の意思のないフセイン大統領に対し、武力により国際的なルールを守らせようとする米英等の同盟国の行動は、当然のことであります。

 第四は、日本にとっての日米同盟関係の重要性でありますが、今改めて申すまでもなく、まさに我が国の命綱であります。

 我が国は、御承知のとおり、専守防衛を国是として、他国から侵略を受けた場合にのみ、自衛権の発動としての防衛出動ができます。しかしながら、核開発、弾道ミサイルなど大量破壊兵器の開発が進んだ今日、これらの兵器により先制攻撃を受けた場合、壊滅的打撃をこうむる可能性があります。特に、高度に都市化が進んでいる我が国の場合、その影響は甚大であり、自衛権の発動どころではありません。このような時代にあって、我が国の防衛と国民の生命を守る上で、日米安保条約に基づく米国の抑止力が不可欠の存在であります。

 北東アジアの情勢が不安定さを増している今日、日米同盟の意義は極めて重要であります。その米国がみずから血を流し、世界平和に向けて真剣な努力をしようとしているとき、我が国がこれを積極的に支持し、国家として可能な限りの支援を行うことは、極めて当然のことであります。(拍手)

 以上の点につき、総理の基本的な見解と御決意のほどをお伺いしたいのであります。

 次に、武力行使に踏み切った以上、できるだけ早期にその目的を達成しなければなりません。政府として、米英等の同盟国に対する協力体制を確立するとともに、人道的見地からの周辺国での難民支援、戦後の復興支援などに積極的に役割と責任を果たすべきであります。総理の決意のほどをお伺いしたいのであります。

 武力攻撃事態に伴い、国内においてもテロ等の不測の事態の発生が予想されます。また、経済や国民生活に重大な影響を与えることが憂慮されています。政府は、原子力施設を初め国内重要施設の警備、出入国の管理の強化、テロ対策などを発表いたしましたが、さらに、総理は、適切な金融・経済対策を講じ、経済的混乱の防止に努め、輸送機関の安全の確保や、電力、ガス、水道等のライフラインの確保に取り組む方針を述べられました。改めて、国民の皆さんの不安を払拭するためにも、総理の決意をお伺いするものであります。

 さらに、緊急の課題は、有事法制の整備であります。有事に備えた国内体制を整備し、国民の安全の確保に万全を期さなくてはなりません。この際、有事関連法案の国会審議を急ぎ、その早期成立を図り、国民の期待に積極的にこたえるべきであります。総理の御見解を伺うものであります。(拍手)

 最後に、戦後の日本の安全保障政策の再検討について申し上げます。
 我が国はこれまで、専守防衛、非核三原則、武器輸出三原則、集団的自衛権の不行使等を安全保障政策の基本原則としてまいりました。このことは、日米安保条約と並んで、我が国の平和と繁栄に大きく貢献してまいりました。

 しかしながら、安全保障をめぐる世界の環境は、今、大きく変わりつつあります。核兵器、生物兵器等、さらに大量破壊兵器の開発は、自衛のための戦争を無力化する可能性を有し、世界的規模でのテロ、ゲリラの発生は、国と国の紛争を前提とする今日の国際的秩序のあり方に疑問を投げかけております。

 このような情勢にかんがみ、我が国の安全保障の基本原則についての総理の見解をお伺いするとともに、安全保障政策の再検討を必要とすべきではないかとの考えを申し述べ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 二階議員にお答えいたします。

 イラクへの武力行使に対する我が国の立場についてでございます。
 イラク問題の本質は、イラクが長年にわたり関連の安保理決議を履行せず、恐ろしい大量破壊兵器を廃棄してこなかったことにあります。大量破壊兵器の問題は、人ごとではなく、また、大量破壊兵器に対して厳しい態度をとり続けている我が国にとって重要な問題であります。イラクの対応を根本的に変えるための方策も見通しも全く見出せない以上、武力行使に至ったことはやむを得ないことだと考えます。

 以上のような政府の考えについて、国民の理解を得るべく、今後も努力していきたいと思います。

 難民支援、復興支援等への我が国の役割についてでございます。
 我が国は、このたびの武力行使によって難民、被災民が発生するのに応じて、国連、国際機関やNGOを通じた支援、周辺国に対する国際平和協力法に基づく自衛隊機による人道物資の輸送等を含む支援を行います。

 また、イラクが一日も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるよう、イラクの復旧復興のため、できる限りの支援を行ってまいります。

 国民の安全確保及び経済的混乱の防止に全力を尽くすべきとの御指摘であります。
 イラクとその周辺における在留邦人の安全確保のために危険情報を速やかに発出するとともに、周辺国の在外公館において、在留邦人との連絡、避難の体制を確立しています。さらに、一部の国については、政府チャーター便や政府専用機の派遣も考慮しており、必要な準備を行っています。

 国内でのテロを未然に防止するため、テロ関連情報の収集・分析を強化するとともに、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備など、国内における警戒態勢の強化・徹底を図ります。

 我が国関係船舶の航行の安全を確保するため、航行警報などを通じて情報を提供するとともに、関係国に対して警備強化の要請を行っております。

 経済に混乱を引き起こさないよう、各国との協調のもと、引き続き、為替、原油、株式などの経済金融市場の動向を十分注視しつつ、不測の事態が生じないよう、原油の安定供給、金融システムの安全確保などについて、日本銀行とも一体となって万全を期していく考えであります。

 有事関連法案についてでございます。
 有事法制は、武力攻撃事態に政府全体として整合のとれた対処を行い得る体制を整備することにより、国及び国民の安全を確保するためのものであります。我が国の安全保障政策上、極めて有効に機能するものと考えており、国民から幅広い理解を得て、今国会において成立するよう努力してまいります。(拍手)

 我が国の安全保障政策の基本についてでございます。
 国の安全を確保し、国民の生命財産を守ることは、政府の最も重要な責務であると考えます。

 我が国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本としております。今後とも、これを堅持していく考えであります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後十一時三十分散会


2003/03/20

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