2003/03/24-2

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156 衆議院・予算委員会会  イラク問題集中審議 2

質問者=中山太郎(自民)、田端正広(公明)、松浪健四郎(保守)/前原誠司(民主)/一川保夫(自由)、木島日出男(共産)、今川正美(社民)


2003年03月24日 (民主党ニュース)
前原議員「米空母の横須賀出撃は安保条約違反」

 衆議院予算委員会における24日の質疑で、民主党の前原誠司議員が質問に立ち、米英軍らによるイラク攻撃の国際法的根拠、日本の基地を出撃拠点とした米軍の行動と日米安保条約との関係などについて政府の見解を質した。

 前原議員はまず、政府が今回の米英軍らによるイラク攻撃の国際法的根拠として国連安全保障理事会の決議1441、687、678を挙げていることについて、「国連決議の有権解釈権は安保理にある。現にアナン事務総長は米国らの(イラク攻撃の)決定は国連憲章違反だと言っている。加盟国の勝手な解釈で攻撃が可能なのか」と質した。これに対して川口外相は、「アナン氏に有権的解釈の権利があるのか」などと暴言を吐いて居直った。前原議員は、「一国の外相の発言として重大だ」と厳しく抗議し、国連決議の有権解釈権に対する政府の統一見解を示すよう求めた。

 また前原議員は、横須賀を母港とする米空母キティホークがペルシャ湾に出動しイラク攻撃に参加することについて日米間で事前協議がなされていないことを確認し、「こちらから求めるべきこと。主体性のかけらもないではないか」と厳しく指摘。同時に、米軍に対して極東の平和と安全に寄与する目的で日本の基地の使用を認めた安保条約6条に反する、と追及した。しかし、川口外相は「キティホークは日本から移動しただけ。移動は軍隊の運用の一部であり、問題ない」などと稚拙な論理でごまかした。前原議員は、「安保条約の逸脱は明白だ。いつまで米国のために拡大解釈を続けるのか」と強く批判し、キティホーク出撃をめぐる安保条約6条の解釈についても政府統一見解の提示を求めた。

 さらに前原議員は、米国のイラク攻撃が大量破壊兵器の廃棄ではなく明確にフセイン政権の転覆を目的としていることを指摘し、これについても国連憲章違反だと追及した。しかし川口外相は、「武装解除をフセインが認めない以上、イラク攻撃とその最大の障害たるフセイン政権の打倒は重なる」などと、ブッシュ大統領顔負けの論理を展開し、あくまで米国の行動を支持する姿勢を明らかにした。


平成十五年三月二十四日(月曜日)

前原委員 民主党の前原誠司でございます。
 総理初め出席をいただいている各大臣に質問させていただきたいと思います。

 まず、今回のイラク攻撃につきまして、我が党の考え方というものをしっかり述べさせていただきたいと思います。

 湾岸戦争以降、十二年間にわたり十七の国連決議違反を繰り返してきたのは紛れもなくイラクであり、イラクが責められるべきである、また、イラクが自浄作用というものをしっかり発揮してこなかったということは、これは大前提として指弾されるべきであろうというふうに考えております。

 さはさりながら、国連、国際社会のルールというものの中で、国連による査察が行われておりまして、そして、その真摯な努力が、UNSCOMからUNMOVICに変わりましたけれども、行われてきたわけでありまして、イラクも、もちろん国連の努力とともに、総理が時々おっしゃっているように、アメリカのおどしというものも効果があったのは間違いないことだと私は思っております。

 実際問題、イラクが、化学兵器弾頭では、廃棄実績が四万発以上、しかしまだ九百発残っている、そして、VXなどの化学剤、廃棄したのは六百九十トン、しかし、今川口外務大臣が前の委員に答弁されたように二・四トン以上残っているということで、この残っているものについての査察というものが行われていたわけであります。

 したがって、我々の立場というのはあくまでも平和的な解決を求めるべきであり、どうしてもイラクが最終的に、おどしても、国際社会のルールの枠組みの中でも協力しないということであれば、新たな国連決議をもって、そして国際社会として正式なルールの上でイラクに対応するのが筋であろうというのが我が党の考えであるということを、まず明確に申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、総理に幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 今回のイラク攻撃の法的な根拠、正当性について、もう一度ポイントを絞ってお話をいただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、一連の決議と言っておりますが、昨年十一月の国連におきます一四四一、もちろん六七八、六八七を含んだ一連の決議に根拠をなしているものと私は考えております。

前原委員 総理はよく、危険な大量破壊兵器が危険な独裁者の手に渡ったらどんな危険な目に遭うかわからない、日本も他人事ではない、こういう答弁あるいは説明をされておりますけれども、では、これは、法的根拠とは関係なく実際の問題をおっしゃっているということで認識してよろしいんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、実際の脅威をどう感じているかということで、危険な大量破壊兵器を危険な独裁者が握ったらどのような危険な状況になるかというのは、多くの国民が、また全世界の人々が認識していることだと思っております。

前原委員 それでは、その一四四一やら六七八、六八七という国連決議に基づいて、今回のアメリカ、イギリスなどによる武力攻撃というものは国際法上正当性がある、こういう御答弁ですね。

 ということは、裏返して言えば、国際法上正当性のない攻撃については、たとえ同盟国であるアメリカであっても日本としては認めるわけにはいかないということを意味されているのかどうか、そのことについて御答弁ください。

小泉内閣総理大臣 私は、正当性があるから支持しているわけであります。

前原委員 もう一度御答弁いただきたいと思います。国際法上正当性のない行動については、同盟国であっても支持しないということですね。

小泉内閣総理大臣 私は、どういう事態が正当性がないかということでありますが、正当性のないものは支持すべきではないと思っております。

前原委員 そこは、これ、ずっとこれから今の総理の答弁というのは有効性を持ち得るわけでありますので、ぜひそのことは肝に銘じて、これからの外交をやっていただきたいと思うわけであります。

 なぜこういう話をするかといいますと、二月の末にアメリカに私も行かせていただきまして、いろいろな方々にお話を伺いましたけれども、正当性の問題について、やはり九・一一テロの後に、アメリカとしては戦争の概念が変わったんだと。つまりは、テロ支援国家に対しては先制攻撃も辞さないんだ、こういう考え方の中で今回のイラク攻撃を説明される方が非常に多かったんです。

 確かに、アメリカの政府高官、特に戦闘が始まって以降の説明は、先ほど総理が答弁されたような、国際法の根拠に基づいているということをおっしゃっていますけれども、しかし、アメリカの国内でいえば、例えば議会がイラク解放法という国内法をつくっている。そして、ブッシュ大統領に対して、戦争をしてもいいという権限を上院、下院が渡している。その流れの中で来ていて、国際法上の正当性、特に、国連決議の解釈というのは後からついてきているものだと実は私は解釈をしています。これは私なりの解釈でありますから、それが正当性を持つかどうかは別の話でありますが。

 ということは、イラクに対しては、うがった見方かもしれませんけれども、たまたま国連決議があったと。しかし、これからテロへの脅威という中で、アメリカが他の国を、例えば先制行動、後でまた質問しますけれども、先制行動というものを前提にした行動を起こした場合、これは、今総理が答弁されたことからすると、正当性がなければだめだと。もちろん、その先制攻撃については後でしっかり詰めたいと思いますけれども、そういうことをおっしゃっているということで、ぜひその御発言は、私は重きを置いていただきたいと思います。

 さて、国連決議の六七八の解釈なんですが、今総理が御答弁されたように、国連決議の六七八というものが武力行使の根拠になっていると。確かに、これを読ませていただきますと、つまりは、二番目の決議のところでありますけれども、国連決議の「六六〇及び全ての累次の関連諸決議を堅持かつ実施し、」これは要は、クウェートから撤退しろという話。それから、もう一つ書いてあるのは、「同地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段を取る権限を与える。」こう書いてあるわけです。

 それで、多分お答えになっているのは、後段の同地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段を取る権限を与えられている、だから武力行使の法的根拠はあるんだ、こういう話になっているんだと思いますが、総理、では、この解釈というものは、それぞれの国連加盟国が勝手に行っていいものなんですか。つまりは、この解釈というものを、ある国が、同地域における国際の平和と安全を回復しなきゃいけないというふうに考えたら、こういう決議があるから、どの加盟国もこの行動をとっていいんですか。御答弁ください。

川口国務大臣 六七八の解釈でございますけれども、例えば、一四四一を読んでいただきますと、ここに……(前原委員「いや、六七八の有権解釈権だけ」と呼ぶ)有権的解釈は、もちろん国連の安保理の決議については安保理でということでございますが、我が国としては、我が国の解釈もしております。

 それから、国連の安保理の決議の安保理における解釈という意味では、一四四一において、この六七八について、ちゃんとその前文に書いてあるということで、安保理もそのように解釈をしているということが明確に言えると思います。

前原委員 今御答弁されたことなんですけれども、要は、有権解釈権は国連安保理にあるとおっしゃったんですね、今。そのとおりなんですよ、国連安保理にある。

 しかし、アナン事務総長が、アメリカ、イギリスの行動は国連憲章違反である、こういうことを言っているわけですよ。事務総長が言っているんですよ。事務総長が言っていて、今おっしゃったように、安保理がその有権解釈権を持っているとすれば、アメリカ、イギリスが勝手に、いや、これは同地域における国際の平和と安全が回復されていないんだ、だから攻撃できるんだと言うことについては、おかしいんじゃないですか。

川口国務大臣 アナン事務総長は、何回かその発言をしていらっしゃいます。その最近の発言で、ちょっと引用させていただきますと、もう少し長くやったならば、査察をやったらば、世界は集団的な決定により、今よりも大きな正当性を持って、したがって、より広範な支援を得てこの問題を解決するための行動をとることができたかもしれないということでして、より大きな、今よりもより大きな正当性を持ってと言っているわけですから、アナン事務総長の前提は、今のことが正当性を持っているということでございます。

前原委員 都合のいいアナン事務総長の発言だけを取り上げてそういう説明をするのは、私はおかしいと思いますよ。国連憲章違反だと明確にアナン事務総長はおっしゃったじゃないですか。

 では、その一四四一のどこを指して一四四一が認めておるとおっしゃるんですか。だったら、なぜに他の安保理事国が、つまりはイギリス、フランス、スペインなど以外はすべて、そういう解釈によらずに、新たな国連決議が必要だ、そして一方的な武力攻撃には反対すると言ったんですか。

川口国務大臣 逆に伺わせていただきますと、アナン事務総長に安保理の決議を有権的に解釈をする権限がなぜあるのか。アナン事務総長は安保理の事務局長でございます。事務局長が、安保理の事務局長が安保理のメンバーの決めた決議を有権的に解釈をするという立場にはないということでございます。

 それから、決議六七八でございますけれども、一四四一で言っていることは……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 「一九九〇年八月二日の決議六六〇及び決議六六〇に続くすべての関連する決議を支持及び履行するために、並びに同地域における国際の平和及び安全を回復するために、」ということで二つ言っているわけでございまして、これは、先ほど申し上げたように、六七八が目的として二つのことを持っている、クウェートの解放と、それから中東地域の平和と安全ということを、二つを言っているということでございます。

 これは、イラクが今後この地域の平和を脅かすということがないというように、という意味で、この地域の安全と、国際の安全と平和ということがつけられたということでございます。

前原委員 後段については、また質問いたします。

 総理、アナン事務総長が、有権解釈はない、単なる事務局のトップである、ですから安保理決議に対して有権解釈権はないんだ、こういう発言ですけれども、そのアナン事務総長の、権威を、一国の外務大臣がそういう発言をすることは妥当だと思われますか。それとも、今のことについては認められるんですか。国連中心主義――いや、総理に聞いているんですよ。外務大臣が言ったことに対して、総理に私はお伺いしているわけです。

小泉内閣総理大臣 安保理の理事会の参加国が解釈で違った、これが違えば決議ができないわけでありますので、そういう状況のもとで、正当性については若干疑義があるという発言は、私は十分理解できると思っております。

前原委員 正当性について疑義があるとはどういう意味ですか。正当性に疑義があるということになったら、米英の攻撃の正当性に疑義があるということになりますよ。

小泉内閣総理大臣 正当性に対する解釈が違ってもめたんです。しかし、私は、あの一連の決議から、武力行使の根拠にはなり得ると思っておるわけであります。

前原委員 アナン事務総長について川口外務大臣がおっしゃったことについては、今どう判断されているか。本当に国連の事務方のトップですよ。非常に権限のある人で、これは安保理、例えば前の事務総長は、アメリカの拒否権で更迭されたわけですよね、認められずに。それぐらい権限のある人を、そういう発言を認めていいんですか、外務大臣が。そのことを御答弁ください。

 いや、総理に聞いている、総理に聞いているんですよ。だって、外務大臣が言ったことについて総理はどう思いますかと聞いているのに、外務大臣に答えさせるというのはおかしいじゃないですか。外務大臣の言ったことについて総理御答弁くださいと言っているわけですよ。違う違う、総理に伺っているんですよ。

小泉内閣総理大臣 それは、有権解釈についての発言だと思います。事務総長のやはり権威というものは尊重すべきだと思いますけれども、有権解釈という言葉について外務大臣が発言したことですから、そういう質問については、外務大臣にまた答弁させます。

前原委員 つまりは、アナン事務総長が国連憲章違反だと言ったことについては、事務方のトップは口出すな、そういう話をしているわけでしょう、川口外務大臣は。有権解釈権がないと言ったんだから。それについては認める必要がないと言ったんでしょう。どうぞ。(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 まず、いずれにしても、アナン事務総長は、アメリカ、イギリスのとった行動が国連の安保理の決議に反しているということは一度も言っていないということでございます。それが一つ。

 それからもう一つは、この解釈、安保理決議の有権的な解釈は安保理が行う。先ほど申し上げた、有権的解釈は安保理が行うということは、これは全く間違いはございません。

 それから、もう一つあえて追加させていただきますと、六七八というのは、加盟国に対してあらゆる必要な措置をとることができるということを授権しているわけですね。メンバーが授権をされている。この授権というのが武力行使を含むということについては、これは確立された解釈でございます。

 それで、各加盟国は授権をされているわけですから、六七八によって。授権をされているわけですから、今の状況において武力行使をするということはできるということでございます。

前原委員 アナン事務総長に対する発言については、これは私は、重大な発言として抗議をします。そして、外務大臣の資質を疑うものとして、厳しく指摘をしておきたいと思います。

 それから、今の有権解釈権について、安保理の理事会にあるということですけれども、安保理の理事会は、決議六八七を含む関連の決議に基づく義務の重大な違反をこれまで犯し、また依然として犯していることを決定するということは、大量破壊兵器の問題であって、それが三段論法で、六七八の、いわゆる地域の国際の平和と安全を回復するためにという問題まで一四四一が認めているというのは、それは飛躍ですよ、三段論法ですよ。そんなことはおかしい。

 では、なぜ外務大臣も総理大臣も、新たな国連決議が望ましいと言い続けてきたんですか。それは、法的な解釈、根拠に乏しいからこそ、有権解釈権が安保理にあるんだから、安保理が新たな国連決議を認めなければ武力行使には根拠が希薄だ、だから、今のような苦しい答弁にならざるを得ないんでしょう。三段論法ですよ、今のは。

川口国務大臣 当然のことを申し上げているだけなんですけれども、もう一度説明をさせていただきますと、一四四一……(発言する者あり)

藤井委員長 答弁中です。

川口国務大臣 一四四一ということによって、イラクが六八七に重大な違反をしているということが決定されているわけですね。それで一四四一は、その後、イラクに対してそれを是正する機会、これを、最後の機会を与えたというわけですけれども、イラクはその機会を生かすことをしなかったということであるわけです。

 そして、その結果として、六八七の基礎が揺らいだ、要するに、それがなくなったということであるわけです。そして、これは停戦の決議で、終戦の決議ではありませんから、六七八という、侵略をしたイラクに対してあらゆる措置をとることを授権した、必要な措置をとることを授権した六七八、これを停戦させたのが六八七ということですけれども、六八七の基礎がなくなったということでして、したがって、六八七の基礎がなくなったので六七八に戻る。六七八によって武力を行使していいということは、先ほど委員も御指摘になられた、この地域の国際の平和及び安全を回復するということであるということです。

 それから、それならば、何で新しい決議を追求したかということですけれども、これは武力行使をする際に不可欠だ、武力行使の根拠として不可欠だという意味でこれをやったわけではない。これは、国際社会が一丸となってイラクに対応するということがイラクにメッセージを送る上で必要であるというふうに考えた。そして、イラクに迫るということでやったわけですけれども、これについては、うまく結果が実らなかったのは残念だということでございます。

前原委員 二点について外務大臣に対して質問させていただきたいんです。

 ちょっと私は知らなかったんですが、今、同僚議員の末松議員からアドバイスをいただきまして、国連憲章の第九十九条、「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる。」ということが書いてある。ということは、先ほどの答弁は、事務総長の権威、権限を無視した話になりますよ。それについて反省があればしっかり答弁してください。

 それから、二つ目は、今累々と説明されましたよ。説明されたのはいいですけれども、じゃ、我々は、今、国会の権限として、私は、一議員の権限、個人の権限として、フランス、中国それからロシアの外務大臣あるいは国に対して、今川口外務大臣が答弁されたことを認めているのか。つまりは、一四四一から波及をして、六八七、六七八に至るまでの有権解釈権を一四四一で与えたと認めるのかどうか。そのことについてノーと言った場合、あなた、どう責任とられますか。今、国会の場であなたは発言されたんですよ。

 そのことについて拒否権を持つ国が一国でも、それについては、そんなミス・カワグチの言うことはおかしい、そういうことを言ったときには、今の答弁は崩れるわけですよ、論理的に。有権解釈権は安保理事会にあるとおっしゃったんですから。拒否権を持つところがしっかりとそのことについてノーと言ったら、今の答弁は根底から崩れるんですよ。

川口国務大臣 最初の方の点でございますけれども、末松委員がおっしゃられた、注意をすることができるということは、そのとおりです。ただ、それと、私が申し上げたのは、安保理の決議の有権的解釈、これは安保理がやるということを申し上げたので、違う話をしているということでございます。

 それから二番目の、有権的解釈についてということですけれども、先ほどちょっと申しましたけれども、六七八において、加盟国はあらゆる必要な措置をとることができるということを授権しているわけですね。(前原委員「だれが」と呼ぶ)加盟国に対して授権をしている。それは、六七八にそう書いてあるわけですね。

 それで、その六七八に書いてある、授権をされたその中身として、あらゆる必要な措置の中身として武力行使を含むということは、これは既に確立された理解であります。それに従って、現に、九三年、九六年、九八年、武力行使が行われたということであるわけですね。それで、フランスもそれに加わっているということであります。

 ですから、授権をされたことについて、中身は、この解釈は確立をしているということでありますので、六七八に従って武力行使ができる、そういうことでございます。

前原委員 全然わかりません。
 後半の問題については、私がさっき申し上げたとおり、他の安全保障理事会常任理事国が、今川口外務大臣がおっしゃったことについてはそういう理解をしていないと言えば、すべて崩れるわけですよ、話は。それは、日本国の外務大臣としての見解じゃないですか、アメリカ、イギリスの攻撃に対して支持をした。そうでない解釈に立った場合、安保理に有権解釈権があるんだったら、その今の解説は全く成り立ちませんよ。

 そのことについて、もしほかの国が認めなかった場合には、本当に責任をとられるんですか、今の答弁に対して。そのイエスかノーかだけで結構ですから。

川口国務大臣 もちろん、安保理が今後そういうことではないということを決めればそれは別ですけれども、今まで決めていない。それから、一国がそういうことを言ったということではない。現に、先ほど言いましたように、九三年、九六年、九八年において、そういう先ほど私が申し上げたようなことで武力行使が行われているわけですね。イラクが六八七に違反をしたことが原因であって、九三年の当時にそういうふうに言われているということであるわけです。

 ということですから、これは先ほど私が申し上げた解釈、これについてはそういうことが成立をする。もし違うということであれば、今の時点でそうではないということを安保理が決めているかというと、決してそれは決めていないわけです。

前原委員 安保理が今決められていないということと、安保理が有権解釈権があって、今この地域における国際平和と安全を回復するための状況ではないということとは全く違う話なんですよ。全然違う話を今同じように答弁されているんですよ。違いますよ。しかも、デザートフォックスの話をされるのであれば、一四四一からコールバックすること自体の論理性がおかしくなるじゃないですか。その前の話をされるのであれば、一四四一から説明されること自体がおかしくなるじゃないですか。まともな答弁じゃないんですよ。

 つまりは、アナン事務総長のことについても、そしてまたこの有権解釈権の問題についても、このことについては、私は、政府としてアナン事務総長の問題については全く問題ないというふうなことをおっしゃるのか、あるいは有権解釈権の問題について、今私が説明をしたように全く問題ないという解釈なのか、政府の統一見解を出していただきたいと思います。

 委員長にお願いします。政府の統一見解を図るように促していただきたい。

藤井委員長 これは理事会で協議いたします。

前原委員 ほかの問題について質問をしたいと思います。

 私は、今回のアメリカ、イギリスの攻撃については幾つか腑に落ちないことがあります。一番初めに申し上げましたように、イラクに対して、私は、過去の十七の国連決議を履行していない、そして、非はイラクにあるということは改めて申し上げたいと思います。そして、新たな国連決議をやるんであれば、私は、武力行使もやむなしというふうに思うわけでありますけれども、しかし、今回の問題については、先ほど総理は、国際法的な根拠のないものについては、同盟国であるアメリカの行動にしても支持するわけにいかないとおっしゃいましたけれども、その法的根拠そのものが私はおかしいと思うところが幾つかあります。そのことについて、さらに詰めていきたいと思います。

 まずは、キティーホークがペルシャ湾で活動していますね。このペルシャ湾で活動しているキティーホーク、事前協議は日米間で行われましたか。

川口国務大臣 ございません。

前原委員 今まで事前協議というのは一個も行われていないし、答弁をされる時間を省くために申し上げましょう。ベトナム戦争のときも、つまりは、空母はその母港に、横須賀、そのころはエンタープライズ、今はキティーホークでありますけれども、解釈としては、政府の統一見解を言いますと、

 航空母艦から搭載した飛行機が飛び立ちまして敵地を爆撃するというのはまさに戦闘作戦行動でございますけれども、航空母艦それ自体が日本の港に入って補給を受けて、そして出港する場合には、航空母艦自体が日本の基地を作戦行動の基地として使用するという場合には該当しない。

 つまりは、事前協議の対象にしないということをベトナム戦争当時からずっと言い続けているわけです。

 私があえてこのことについてもう一度、当然ながら事前協議なんか行われているわけないと思いましたよ、なぜこれを言うかというと、事前協議というのは、これは物すごく歴史的には重い話なんです、実は。私は、一九六〇年、旧安保条約から新安保条約に改定されるときの議事録、これも読ませてもらいまして、必死になって事前協議の議論がされている。なぜこの事前協議の議論がされているかということを幾つか説明をさせてもらいたいと思います。

 総理大臣は岸さんでありますけれども、「今度の改正の条約と国連憲章との関係を明らかにするとか、あるいは事前協議制を設けて、従来米軍の行動というものが野放図であったのに対して、国民の意思によりまして、政府が代表してこれに抑制を加える道を講じたというようなこと、」こういう答弁が繰り返しされているわけですよ。しかも、質問者は自民党、自由民主党の人たちがしているものに対してこう答えているわけです。

 旧安保から新安保への移行の一つの大きなポイントというものは、岸さんが言っているように、米軍の行動の野方図なものを国民の意思によって政府が抑制を加える、立派な答弁じゃないですか。つまりは、この事前協議というものが決められた背景というのは、いかに主体的に日本が米軍基地を制限して米軍の活動というものをコントロールするか、そういうものにあったわけでありますのに、野方図じゃないですか。事前協議、やられていない。出ていって、途中で命令が下ったんだから事前協議の対象にならないと。全く私は政府の意思というものを疑いたくなる。

 つまりは、政府の解釈というものは、向こうがなかったんだから、いかに事前協議がなかったかということを説明しようとするだけなんですよ。本来であれば、こういう問題に対して事前協議を要求するのが筋じゃないですか。キティーホークは、だって、武力攻撃が始まる前にペルシャ湾にもう展開していたんですから、訓練、ずっとしていたんですから、事前協議をこちらから求めるのが筋じゃないですか。総理大臣、御答弁いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 事前協議の主題となる戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事するための軍事行動であって、運用上の都合により米軍が我が国から他の地域に移動することは事前協議の対象とならないということになっております。

前原委員 きょうは赤城副大臣が来られていますけれども、お父さんが防衛庁長官のときに……(発言する者あり)おじいさん、失礼しました。おじいさんが防衛庁長官のときに、補給などについても、やはりロジスティックについてはちゃんと言及されているんですよ。補給をしていったものについては、それは作戦行動だ、作戦行動のいわゆる日本はバックアップをする基地になっているんだ、こういう話をされているわけです。

 今の総理の答弁というものは、まさに従来の政府の答弁、まさに日米安保条約を日本国の主体的な考え方の中でコントロールしようなんて意思のかけらもない。だって総理、そうでしょう。事前協議、これは岸さんの答弁、改めて読みますけれども、野方図な行動をいかに国民の総意として抑制するかというもので事前協議をつくったんだと。自民党の古井喜實さんという方に対しての答弁ですよ。もともと事前協議というものはそういう意思であったわけです。

 確かに、沖縄返還のときに秘密協定があったんじゃないかと言われています。しかし、これは私の知る限りでは、朝鮮半島に直接行くことについてはもう事前協議の対象にしない、こういう話だったと思いますが、遠く離れた中東に行くのに事前協議を求めない。まさに、補給をして、そして弾薬も積んで出発したわけじゃないですか。途中で命令が下るのは当たり前じゃないですか。事前協議を求めるのが筋だと思いますが、総理、もう一度御答弁ください。

川口国務大臣 先ほど総理が御答弁になったとおりでございまして、これは、戦闘作戦行動というのは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、米軍の運用上の都合により米軍の部隊等を我が国から他の地域に移動させることは事前協議の対象となるものではない、この解釈は、従来から一貫して政府として御説明を申し上げているわけでございます。

前原委員 それはアメリカの立場に立った説明なんです。アメリカがわざわざ、横須賀を出るときに、何週間もかかるわけですよ、ペルシャ湾まで行くのに。そのときに、作戦行動がもう決まっているとか、そういう話するわけないじゃないですか。そうであれば、横須賀を母港としている空母が出てペルシャ湾に展開をしている、事前協議の対象にすべきだというぐらい言うのが政治家の筋じゃないですか。なぜアメリカの立場に立ってそういう答弁を繰り返すんですか。総理、もう一度御答弁ください。

小泉内閣総理大臣 それは、今まで答弁しているとおりなんですよ。日米安保条約の信頼性、そして日米同盟によって日本の安全を確保している、それでアメリカの軍隊に基地を提供している、そういう運用上の問題、これは日本として、先ほど私が答弁したとおり、戦闘行為の問題については事前協議の対象にならない、今までの内閣の答弁、軍事上の……(発言する者あり)戦闘行為じゃなくて、正確に言いますと、事前協議の主題となる戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事するための軍事行動だ、この運用上の都合により米軍が我が国から他の地域に移動することは事前協議の対象とならないというこの文章から判断しているわけであって、私は、今回の問題についてもこれが当然当てはまるのではないかと。

前原委員 では、次の質問にちゃんと答えてください。

 第六条、日米安保条約、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」基地提供は、極東における国際の平和及び安全の維持のためということに使われているんですよ。

 ベトナム戦争はぎりぎりアジア。中東じゃないですか、今度は。極東じゃないじゃないですか。キティーホークは今ペルシャ湾で展開しているんでしょう。バグダッドに空爆しかけたりしているときょう言ったじゃないですか。極東の範囲の中に入っていないじゃないですか。これは中東を極東とおっしゃるんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、キティーホークであれ、どこに移動しているか、極東地域から中東地域に移動する場合もあるじゃないですか。そこまで日本が一々、寄港した艦隊に対して、いや、極東に行きますよと。事態の変更があった場合に、それはもう極東からアメリカはどこの地域に行くかということは当然考えられる。これは何の不思議な答弁でもない、当たり前の解釈をしているだけだ。

前原委員 これはたまげたひどい答弁ですね。

 極東の地域からほかの地域に行ったら、極東の平和と安全のためでオーケーだ。これはもう、条約遵守を生命線に置く政府の一番トップの人としては、全くもって、答弁、おかしいですよ。これはおかしい。こんな答弁、おかしい。

川口国務大臣 日本の基地を使用する……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に。御静粛に。
 外務大臣、答弁ください。

川口国務大臣 日本の施設・区域を使用するということの目的としてそういうことを、今おっしゃったようなことが書いてあるわけですけれども、米軍というのは、日本の基地に来て、日本の安全あるいは極東の平和と安全に資するということをやるわけですけれども、その後、移動できないということはないわけですね。当然に移動をしなければいけない。

 これは、米軍部隊というのは常にローテーションをしている、これは、イラクに対して軍事行動をしている、していないにかかわらず、従来から、湾岸地域において活動している米軍部隊のローテーションのために、世界の他の地域から湾岸へ米軍航空機や要員が一時的に移動をするということは行われているということでございます。これは、米軍のローテーション、運用の一部でございますから、日本に来たら日本から全く離れないということではなくて、それは移動をするということであるわけです。

 ということでございまして、米軍の運用の一つ一つについて我が方として申し上げる立場にはないということでございます。(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。

前原委員 これはびっくりしましたね。アメリカのために日本の政府が安保条約を拡大解釈し続ける。本当にアメリカの走狗と言われても仕方がない。

 大臣、もう一遍読みますよ、これ。

 安保条約の第六条、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」んですよ。ほかの極東の地域へ行っていて、それから別のところに行ったものについては知らないなんということは、この第六条に逸脱している、範囲を逸脱していることは明々白々じゃないですか。今までの統一見解でも、そんなひどい統一見解、答弁はなかったですよ。いや、これは本当におかしい。(発言する者あり)

 テロはどこから来るかわからないと言う斉藤斗志二さん、そうしたら、これは、安保条約は九月十一日以降改定しなきゃいけない、内容を変えなきゃいけない。あなたも防衛庁長官やったんでしょう。やった人がそんなやじを飛ばすというのはおかしい。全くもってひどい。これが防衛庁長官をやった人かと思うと、石破さん、これはおかしいですよ、この国は。

 政府の統一見解、言いましょう。もう一遍これ言いましょう。

 一般的な用語として使われる極東は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし、日米両国が、条約に言うとおり共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で現実問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国、今は台湾地域と読みかえる、の支配下にある地域もこれに含まれている。

 これが今までの政府の答弁ですよ。統一見解ですよ。(発言する者あり)いや、冷戦構造が変わったんだったら、これは条約を変えなきゃいけないですよ。第六条の意味を変えなきゃいけない。だって、今のお話でしたら、これは、六条の問題は極東じゃなくて全世界の平和と安全のためになりますよ。

 もう一度答弁してください。

川口国務大臣 従来の政府の答弁としてずっと申し上げていることですけれども、第六条の「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というのは、これはアメリカの陸軍、空軍、海軍等が日本で施設・区域を使用することができる目的であるわけですね。

 それで、今、先ほど委員が御質問になったことについて言えば、我が国の施設・区域を使用する在日米軍が、その抑止力をもって我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するとの役割を現実に果たしているとの実態がある以上、在日米軍を構成するある部隊、艦船等が、日米安保条約の目的達成のための役割に加え、それ以外の任務を有して移動することは日米安保条約上問題はない、これはずっと政府として申し上げている見解でございます。

前原委員 このイラク攻撃が日米安保条約上の目的だとは、驚きました。日米安保条約を達成するための目的ですか、これ。そうしたら、日本は自衛権を発動したらいいじゃないですか。もう支離滅裂ですよ、この答弁は。

 このままでは私は質問を続行できません。今の答弁でしたら、安保条約は全世界に適用できることになります。

藤井委員長 川口外務大臣。(発言する者あり)指名しています。
 川口外務大臣、指名していますよ。

川口国務大臣 私が申し上げた答弁は、もうずっといろいろなところで答弁が行われておりまして、例えば一九九〇年のときにも外務省の柳井政府委員が、「時として米軍が極東の外の地域に移動してほかの任務につくということがありましても、これがために我が国の安全及び極東の平和と安全に寄与しているという実態が損なわれるものではないというふうに考える次第でございます。」という答弁がございます。それと同じことを申し上げたわけでございます。

前原委員 同じことじゃないんですよ。川口大臣、私も国会に送ってもらって十年、安全保障をずっとやらせてもらってきて、余りなめた答弁をしてもらっては困ります。

 つまりは、日米ガイドラインのときでも、極東の問題というのは非常にイシューになったんですよ。だから周辺事態という名前に変えたんですよ、あれは。つまりは、極東の近接概念までは今まではオーケーだったけれども、ペルシャ湾で日本に基地を持っている戦闘機なりあるいは空母が行動したのは初めてですよ。何を言うんですか。いいかげんな答弁しないでくださいよ。

 初めてですよ、横須賀を母港にする空母が中東で行動したのは。今まではベトナムだったから、近接地域ということでクリアできてきたんだ。そんないいかげんな答弁はしないでください。だめです。こんなのじゃ質問できないですよ、まともに答弁できないんですから。

川口国務大臣 私が先ほど申し上げた答弁、そして先ほど申し上げた当時の柳井政府委員の答弁、いろいろな、ずっと過去において同じ答弁が行われているわけでございまして、米軍が極東の外の地域に移動してほかの任務につくということがあっても……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 これがために我が国の安全及び極東の平和と安全に寄与しているという実態が損なわれるものではないということは、これはもうずっと申し上げている答弁でございます。

前原委員 その次の質問を、関連で統一見解を続けますよ。

 新安保条約の基本的な考え方は右のとおり。右のとおりというのは、私がさっき言ったとおりであるが、この地域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威とされるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。

 今の話でしょう、移動の話は。

 しかし、次にもちゃんとこう書いてあるんです。

 しかしながら米国の行動には、基本的な制約がある。すなわち米国の行動は常に国連憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることになっているからである。

 今回の行動は国連憲章に基づくものでしょう。米国の行動は自衛権に基づくものではないでしょう。しかも、今までの答弁とは前提条件が全然違うじゃないですか。日本を母港にしている空母がペルシャ湾まで行って、そして今バグダッド市内を攻撃しているんですよ。戦車部隊の後方支援しているんですよ。そういう事態がありましたか。前提条件が変わったのに、今までした答弁と同じですって、全くもって意味をなさないじゃないですか。

川口国務大臣 委員が何を問題にしていらっしゃるのかということがよくわからないんですけれども、申し上げていることは、極東の外に移動をするということについては日米安保条約との関係では何も問題がないということを言っているんですね。

 これは米軍の運用ですから、実際に米軍が日本にいて、そして、安保条約の、その抑止力をもって我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するという役割を現実に果たしているという実態がある以上、在日米軍を構成するある部隊、艦船等が日米の安保条約の目的達成のための役割、これは極東とか日本の平和と安全ということですけれども、申し上げているのは、それ以外の任務を有して移動することは日米安保条約上問題がない。要するに、極東の外に移動するということを申し上げているわけですね。ですから、日米安保条約との関係では、そういう移動をするということについては全く問題がない。

 これは、今までもずっと政府がお話をしている統一的な見解でございまして、私が言っていることは何ら新しいことでもなければ、今まで言っていることと何ら違うことではないということでございます。

前原委員 移動について、では、日米安保条約のどの部分をもって日米安保条約で認められていると言うんですか。

 それともう一つ、今までの答弁と異ならないとおっしゃいましたけれども、行っている地域が違うんですよ、全く。今までは極東、では、全世界どこでも行けるんですか、第六条に基づいて。

川口国務大臣 移動という意味では、これは移動するのは軍の特性でございますから、日本で……(前原委員「どこに書いてあるのかと聞いているんです。日米安保条約上、どこに書いてありますかと聞いているんです」と呼び、その他発言する者あり)ですから、それは……

藤井委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 当然運用の一部である、米軍の一部であって、それは、ちょっと終わりまで話をさせていただきたいんですけれども……(前原委員「どこに書いてあるかと聞いているんです」と呼び、その他発言する者あり)

藤井委員長 答弁中です。答弁中です。御静粛に聞いてください。

川口国務大臣 日本で、安保条約に従って、その抑止力をもって我が国と極東の平和と安全の維持に寄与している、これは安保条約で書かれていることですけれども、それを果たしているという実態があるわけですね。実態がある以上、これは軍の性格として、在日米軍を構成するある部隊あるいは艦船が、日米安保条約の目的達成のための役割に加えて、それ以外の任務を持って移動する、これは軍は一度日本に来たら全くそこに、もうそこから動けないということではないわけですね。当然いろいろなことをやって、アメリカの軍隊として、ローテーションをするということであるわけですね。ですから、それは日米安保条約上問題がないというのは、これはもう政府の統一的な、ずっとある解釈でございます。

藤井委員長 前原君、質問を続けてください。

前原委員 私の質問に明確に答えてください。

 どこに移動を認めると書いてありますか、第六条。解釈を拡大し続けていることについての後乗りをするだけじゃないですか、今の答弁は。

川口国務大臣 今申し上げたのは解釈でございまして、安保条約の六条に移動と書いてあるわけではない。

 要するに、そういう解釈であるということを申し上げているわけで、もう一つ、今委員がおっしゃっていることと非常に似た答弁がございますので御紹介をしますと、これは五十四年の十一月三十日、金子満広委員の御質問でして、これはまさに同じようなことなんですが、「わが国の横須賀を母港とした米第七艦隊がいまインド洋、アラビア海に出動していることが広く報道されています。しかも、その出動が、カーター大統領がイランへの軍事介入を示唆しているもとで行われていることはきわめて重大」であるという、これは質問でございます。

 それについて、答えは、我が国の施設・区域に寄港することの……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。委員長が答弁、聞こえませんから、委員長も。

川口国務大臣 我が国の施設・区域に寄港することのある艦船が、我が国を出港後、どういう地域、どこをどう運航するかですか、航海するか、ちょっと読めませんが、ということは、安保条約の適用の拡大を意味するものとは考えておりませんと。これは大平内閣総理大臣が御答弁をなさっていらっしゃいます。

 要するに、安保条約の、ここで日本の施設・区域にいて、安保条約の目的を果たしているという実態がある以上、出てどこかに行くということはあり得るわけで、米国の軍隊が日本に来て、それで全くそこから出られないということではないわけですね。当然に、来て、運用、米軍の運用でどこかに行くということは、安保条約上問題はない。これはもうずっと、何も私が新しいことをここで発明をして申し上げているわけではなくて、もう代々そういうことで説明をさせていただいているということでございます。

前原委員 川口外務大臣、私は、外務大臣という仕事は、日本の国益をいかに代弁するかというのが外務大臣ですよね。少なくとも、もし私があなたの席に座っていればそんな答弁は絶対にしないですよ。

 先ほどの事前協議の問題、そして今のアメリカの地域の範囲の問題、まさに先ほど私が披瀝をした岸さん、これは旧安保条約から新安保条約に移行するに当たって、一九六〇年、どんな思いで先人たちが議論してきたか。つまりは、先ほど、もう一遍言いますよ、これ。(発言する者あり)世界情勢が変わったんだったら、条約変更しなきゃいけないでしょう。

 もう一遍読みますよ。これは、本当に先人たちのこの安保条約を結んだときの懸念とか、そして思いというものをもう一度新たにする必要があると私は思う。

 今度の改正の条約と国連憲章との関係を明らかにするとか、あるいは事前協議制を設けて、従来米軍の行動というものが野方図であったのに対して、国民の意思によりまして、政府が代表してこれを抑制する道を講じ得たということ、あるいは条約区域というものを、施政下にある領域内に限るというような限定をした。

 つまりは、旧安保から新安保に変えたものについては、いかに日本の主体性を保つかということにおいて、こういう文言がいろいろ書かれているんですよ。

 極東条項というのは幾つ書かれているか御存じですか、外務大臣。三カ所も書かれているんですよ。前文と第四条と第六条。この極東ということに限定する意味、これを、つまりはアメリカのなし崩し的なものに対して、いかに日本が追随をするかということについて拡大解釈をし、そしていかにアメリカをバックアップするかというわけのわからない答弁を繰り返してきたのが、今川口さんがおっしゃったことじゃないですか。私が申し上げているのは、この極東条項というものがやはりアメリカの野方図な行動をいかに抑制するかということで設けられているということなんですよ。そして、今まで適用された範囲というのは、あくまでも、少し隣のベトナムぐらい。これも明確に運用したらだめですよ。

 今、ペルシャ湾にキティーホークがある。日本を母港にしている、横須賀を母港にしているキティーホークが、まさにバグダッドに攻撃を加えているんですよ。だれが第六条を読んで、これがオーケーだと思いますか。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」では、キティーホークに母港を変えるように言うべきじゃないですか。私はそういうことを申し上げているんですよ。

川口国務大臣 恐らく、委員のおっしゃっていることと私が申し上げていることと食い違っていることがあると思うんですが、私が申し上げていることは、これは、極東条項とは関係がない話なんですね。極東条項というのは、我が国の施設・区域を米軍が使って、使うことの目的である極東の安全、平和と安全でございますね。

 私が申し上げているのは、先ほど来お話をしていますのは、そういう、もう一回読ませていただきますと、我が国の施設・区域を使用する在日米軍がその抑止力をもって我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するとの役割を現実に果たしているとの実態がある以上、在日米軍を構成するある部隊、艦船等が日米安保条約の目的達成のための役割に加え、それ以外の任務を有して移動することは日米安保条約上問題がない。要するに、私がずっと申し上げているのは、極東条項の話ではなくて、その移動をするということが安保条約に照らして問題がないということを申し上げている。これはずっと我が国の政府が申し上げている解釈である……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 これはもう統一見解でございまして、歴代の御質問をなさった金子先生とかいろいろな委員の方がそれで了承なさって、政府がずっと申し上げているということでございます。

前原委員 ということは、今の論拠に立てば、その前提に基づいて日本の裏側で活動することも可能だということですね、ロジックとして。

川口国務大臣 おっしゃるとおり、キティーホークがアラビア湾で活動をしているということは、安保条約に基づく活動ではない、そういう認識をしているわけです。日本から移動をした、そういうことでございます。

前原委員 いや、しかし、これは、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許されていると書いてあるじゃないですか。これがそもそものことじゃないですか。

 それは、今答弁されたのは、昔から言っていることだとおっしゃっているのは、いかに米軍に対してバックアップをするかという後追いの解釈を政府が続けてきただけじゃないですか。

 さっきの事前協議だってそうなんですよ。つまりは、日本の主体的な立場であなたは物をおっしゃっているんじゃないんです。つまりは、この六条というのは空文化されて、アメリカの全世界行動に対して移動するのは構わない、こういうことをおっしゃっているわけです。ということは、私は、六条は全く空文化していると。

 つまりは、そういう安保条約、つまりは、アメリカが行動したいことについてはどんどんどんどんオーケーですよということを認めているということは、私は、安保条約の根本から、時代が変わって大きく変化している、そう認めなきゃいけないですよ。認めるということですね、総理。

小泉内閣総理大臣 今まで何回も答弁しているとおり、外務大臣の答弁のとおりなんです。

前原委員 では、そのとおりを答えてください。そのとおりを答えてください、総理。(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に願います。
 前原君、続けて。

前原委員 いやいや、もういい。子供のけんかみたいなことはやめますよ。

 つまりは、総理、いい、もういい。読むんだったら、そんな、わかって、頭で理解しているような答弁の仕方をしないでくださいということを私は言いたかったんだ。
 では、総理……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に。

前原委員 これについて、委員長、もう一度、つまりは、ペルシャ湾に展開しているキティーホークが今まさにバグダッドを攻撃している、そして、これについては、第六条の解釈については全く問題ないということをおっしゃいましたけれども、それの統一見解という形でもう一度出すように、委員長にお取り計らいをいただきたいと思います。

藤井委員長 理事会で協議いたします。

前原委員 では、さらに質問いたしたいと思います。まあしかし、少し今のは私はあきれました。

 日本がアメリカのイラク攻撃を支持しなかった場合、どういうデメリットがあるかについて、総理と議論させていただきたいと思います。

 先ほどの法的解釈については、国連安保理の決議に基づいてだということをおっしゃいました。これについてはまだ詰める必要があるので、それは政府の統一見解を待ちたいと思うわけでありますが。

 同盟関係があるんだから、あるいは北朝鮮の問題があるんだからということを総理初めいろいろな首脳の方々がお話をされますけれども、では、イラク攻撃を日本が支持しなかった場合、アメリカは第五条に基づいて日本有事というものを守らないんでしょうか。そういうふうに判断されたから、この場合についてはアメリカを支持しなきゃいけないという話になっているんですか。総理、御答弁ください。

小泉内閣総理大臣 これは、私は、アメリカの方針に正当性があるから支持したのであって、前から言っているように、なぜか、それは一連の国連決議、これに根拠をなしている。さらに、危険な大量破壊兵器を危険な独裁者が持った場合に、どのような危険な状況に直面するか。大量破壊兵器廃棄、これはもう国際社会が一致結束してイラクに求めていることであります。

 同時に、日米同盟、この日本の防衛力だけでいかなる攻撃にも対処できるものではない。日本が攻撃された場合、アメリカは、アメリカへの攻撃とみなすといって、今、日米安保条約を締結している。だから、いかなる目的であろうとも、日本を攻撃しようとする意図を持つ国は、アメリカと戦うという覚悟がなしに攻撃はできない。それが大きな抑止力になっている。

 これを総合的に考えて、アメリカを支持することは日本の国家利益にかなう。どういうデメリットということではない、支持することが国家利益にかなうから支持しているんですよ。それが私の答弁です。

前原委員 今の質問は、イラク攻撃を日本が支持しなかった場合、アメリカは五条事態の不履行ということを辞さない可能性がありますかという質問をしたんです。

小泉内閣総理大臣 私は、アメリカは日本の信頼に足る同盟国だと思っております。日本の信頼に足る同盟国だと思っております。そういう面において、私は、これまで平和を維持してきた、そういう中で、日米同盟を重視しているし、アメリカの主張に正当性があると思っているから支持している。

 私は、今後もアメリカは、日本の同盟国として、日本の防衛のためにも責任を持って対処してくれるものだと思っております。

前原委員 日米安保条約というのは非対称性がありますけれども、私は双務性があると思っているんです。

 つまりは、五条については、日本有事のときにアメリカが支援をする、その期待をするということ。ただ、そのかわりとして、先ほどから話になっている六条、これが全世界で適用されるなんという答弁は私はたまげますけれども。

 日本の基地を提供し、そしてホスト・ネーション・サポート費用、これはかなり出していますよね。六千億以上ですよ、一年間。今までの累積だと物すごい額になる。つまりは、日本の安全保障を考えたときには、日米安保体制というのは一つの保険なんですよ。保険を担保するために第六条というものは設けてある。日本が基地を提供する、そしてホスト・ネーション・サポート費用を払う。

 私は、自民党の方々が、あるいは与党の方々あるいは政府高官、福田官房長官もそうだけれども、北朝鮮の問題があるんだから言うことを聞かないといけないだろう、言うことを聞かざるを得ないだろうと。これは一番国民にわかりやすいんですけれども、そこまで卑下する必要があるのか、卑屈になる必要があるのか、私は声を大きくして申し上げたいと思う。

 つまりは、日本は第六条の責務をしっかり果たしてきたんです、今まで。したがって、イラクの問題があろうがなかろうが、この五条の問題については、我々は責任を果たしているんだから、イラク問題、支持するしないは関係ない、そういうことでアメリカが同盟国としての責務を果たすのが当たり前だと私は思いますよ。

 そのことについて、川口大臣、御答弁いただきたいと思います。

川口国務大臣 我が国が米国を支持したということの理由は、何も安保条約のバーターということではなくて、大量破壊兵器、これが大きな問題であって、我が国にとっても大きな問題であって、これに対して国際社会として毅然とした態度を示す必要があるから、そして米国がこの問題について国際社会として毅然とした態度を示すためのリーダーシップをとっているので、我が国もその考え方を同一にいたしますから、これを支持する、そういう考え方であるわけですね。

 ある特定の事情を意識して、そこで米軍に助けてもらうために我が国は米軍のイラクの進攻を支持している、そういう関係では全くないということでございます。

前原委員 そういう答弁をする、あるいはそういう答え方をする人がいるから私はあえて申し上げたわけです。

 最後に一つだけ。今大量破壊兵器の問題、おっしゃいましたね。イラクへの攻撃は、もともとアメリカはフセイン政権の転覆じゃないですか。大量破壊兵器の破棄というものが本来の目的であったはずであります。国連憲章違反になるんじゃないですか、これは。

 つまりは、国連憲章の第七章には国連加盟国についての内政不干渉が明確に記述してある。それについて、はなから体制転覆というものを目的にする行動というものは、アメリカの国内法にはかなうかもしれないけれども、国連憲章については違反するんじゃないですか。

 ですから、政府の考え方に立脚するとしても、大量破壊兵器の破棄までが武力行使の正当性が認められることじゃないんですか。今のアメリカだと政権転覆が目的になっていると思いますが、答弁ください。

川口国務大臣 まず、法的な根拠としては武装解除である、これはネグロポンテ大使も言っているとおりです。実際に、サダム・フセインがそれを認めない以上、サダム・フセインが武装解除をするときの最大の障害であるということは言えると思います。

 六七八がありとあらゆる権利、必要な行動をとるということを授権しているわけですから、武力行使をした、そして、そのこととサダム・フセイン政権がかわるということはほぼ重なる意味を持ってくる、そういうことであると思います。

前原委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、アメリカは国内法を持って、イラク解放法というのを持っているんですよ。要は、政権の転覆そのものがまずありきなんですよ。

 そんな答弁は全く事実と反しているということを指摘して、私の質問を終わります。

藤井委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。
 次に、一川保夫君


2003/03/24 イラク問題集中審議  2 

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