2003年4月11日 |
民 主 党
1. 基 本 認 識
民主党は、国連安保理等を通じた国際協調体制が重要であるとの観点から、武力行使によらない平和的解決を訴えてきた。
イラクに対し累次の国連決議を遵守し、とくに大量破壊兵器に関する疑惑を完全に払拭するよう強く求める一方、米国等に対し国連憲章に定める武力行使の原則に則り単独主義的な行動はとらないよう重ねて自制を促してきた。
ブッシュ政権等が国連安保理での問題解決を放棄し、武力行使に至ったことは、断じて容認できないが、フセイン政権が崩壊しつつある中、政府は、仏・独等と連携しながら、早急に米国等を国連の場に引き戻し、イラク復興及び中東和平に関して、国連を通じた問題解決を図っていくべきである。
2.復 興 支 援 等
民主党は、イラクに対する武力行使が新たな国連安保理決議なしに行われたことから、戦費の負担は言うに及ばず、戦後の占領に係る経費についても支出すべきではないとの基本的立場に立つ。しかし、イラクの復興支援については、人道的見地から、我が国として果たすべき役割を主体的に判断し、取り組んでいくべきものと考える。
1) 政府は、イラク・周辺国に発生する難民・被災民等を救済するため、PKO協力法に基づき、国際機関・NGOと密接に連携しながら、医療チームの派遣、緊急物資の供与など、既存の枠組みの中で行える緊急人道支援等を実施すべきである。
2) 戦争終結後のイラクのあり方については、国連など国際機関・地域機関の枠組みの中で、検討されるべきである。
- イラクの統治形態については、戦争の終結のあり方を踏まえながら、イラク国民の立場を尊重しつつ、国連の枠組みの中で検討されるべきである。仮に米軍等の占領統治がとられた場合、国連主導により、イラク国民による統治に速やかに移行していくことに主眼が置かれるべきである。
- 復興支援については、戦後の状況を見極めつつ、国連等により中・長期的な復興支援ビジョンの検討を含め、周辺諸国や地域・国際機関との協調のもと、イラク国民が主体となる態勢を整備していくことに重点が置かれるべきである。
- 国連やイラクの復興支援に関する国際会議等の場で、わが国としては、諸会議に主体的に参加しつつ、イラク国民の福祉とイラクの再建のために可及的に必要と認められるものに関し、インフラ整備等我が国が実績を有する分野の支援等を検討すべきである。
- 自衛隊の派遣については、必要な場合、既存の枠組みのもとで行える支援をまず検討すべきである。政府が検討中といわれる新法による自衛隊の派遣については、慎重な検討が必要である。また、政府与党の中には、1991年湾岸戦争と比較した援助負担を主張する向きがあるが、武力行使に至る経緯や、日本の経済状況など、当時と今回の状況は全く異なり、慎重に対応すべきものと考える。与党内にある総額の2割負担論等は、到底容認できるものではない。
3)OPEC等の産油国に対し、必要に応じ石油の安定供給に向けた取り組みを求めるべきである。また、戦後のイラクの主要な財源となる石油の関連施設の復興に対しては、日本の技術を提供する等、民間企業が積極的に参画できるよう検討していくべきである。
4)イラクに対する武力行使で、航空業界・観光業界などが打撃を受けているのをはじめ、すでに国内外の経済に多大な影響が見られる中、政府は、戦争に伴う被害を最小化するために、必要となる経済施策や国際協調の場を検討していくべきである。
5)緊急時に内外で不測の事態が起こらぬよう各国・国際機関と連携しつつ、十分な監視体制を敷くとともに、邦人輸送を初めとした邦人保護等、危機管理体制に万全を尽くすべきである。
3.中 東 和 平
民主党は、イラクそして中東に平和と安定を構築するには、中東和平の前進が極めて重要と認識し、イラクの戦後復興のためにも、日本が仏・独等や国連等に対して、新たに中東和平イニシアティブを提示するよう強く呼びかけていくべきものと考える。今回、従来からの中立的な日本の対アラブ外交を踏み越えて、イラクに対する武力行使を支持したことから、中東諸国の日本への信頼感等に対する影響が懸念されるが、今後、日本政府は、地域の平和と安定のために、より影響力の大きい米国や英国等に対し、中立的立場に立った中東和平への取り組みを求めるべきである。
パレスチナに対する人道支援・経済援助と並行して、日本はイスラエル・パレスチナ間の暴力の連鎖を根本的に立ち切る施策を国連などに働きかけていくべきであり、その際、「領土と平和の交換」の原則を謳った安保理決議第242号、338号をはじめとする一連の国際合意等が土台とされるべきである。
1991年のマドリッド和平プロセス以来、日本が議長を務める環境ワーキング・グループでの実績などを踏まえ、日本は、水資源の確保問題など、側面的支援を中心に、建設的な役割を果たしていくべきである。反米感情の高まる地域において、日本の貢献に対する期待はこれまで以上に高まる可能性が高く、政府はそのような状況に適切に応えていくべきである。
日本は、トルコ・ヨルダンなど周辺諸国の安定化に努め、アラブ諸国との関係を強化すべきである。同時に、「文明間の対話」の促進にイニシアティブを発揮し、イスラエルの安全確保にも尽力すべきであり、このような信頼醸成への取り組みを通じて、国際社会と連携しつつ、中東の人々の自立と共生に向けた環境を作っていくべきである。以 上
2003年4月11日 |