2003年6月24日

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156 衆議院・本会議

イラク復興支援特別措置法案とテロ特措法改正案の趣旨説明と質疑
質問者=中川正春(民主)、渡辺周(民主)、太田昭宏(公明)、一川保夫(自由)、佐藤公治(自由)、木島日出夫(共産)、児玉健次(共産)、金子哲夫(社民)、北川れん子(社民)


平成十五年六月二十四日(火曜日)

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣福田康夫君。

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) ただいま議題となりましたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際連合安全保障理事会決議第六百七十八号、第六百八十七号及び第千四百四十一号並びにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、促進しようとする国際社会の取り組みに対して、我が国が主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動について必要な事項を定めることを目的として提出するものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、基本原則として、政府が対応措置を適切かつ迅速に実施すること、対応措置の実施は武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないこと、対応措置は戦闘行為が行われることのない地域等で行うことなどを定めております。

 第二に、この法律に基づき実施される対応措置を人道復興支援活動及び安全確保支援活動とし、これらの活動のいずれかを実施することが必要な場合には閣議の決定により基本計画を定めることとしております。

 第三に、基本計画には、対応措置に関する基本方針、対応措置の種類及び内容、対応措置を実施する区域の範囲、外国の領域で対応措置を実施する場合の自衛隊の部隊等の規模等を定めることとしております。

 第四に、内閣総理大臣は、基本計画の決定または変更があったときは、その内容、また、基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果を、遅滞なく国会に報告しなければならないこととしております。

 第五に、内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、原則として当該対応措置を開始した日から二十日以内に国会の承認を求めなければならないこととしております。

 第六に、対応措置の実施を命ぜられた自衛官は、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員等もしくはその職務を行うに伴い自己の管理下に入った者の生命または身体を防衛するために一定の要件に従って武器の使用ができることとしております。

 なお、この法律案は、施行の日から起算して四年を経過した日に、その効力を失うこととしておりますが、必要がある場合、別に法律に定めるところにより、四年以内の期間を定めて効力を延長することができることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 続きまして、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃がもたらした脅威が依然として存在していることを踏まえ、我が国として、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに引き続き積極的かつ主体的に寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として提出するものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 この法律案の内容は、現行法の有効期限をさらに二年間延長し、施行の日から四年間とするものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中川正春君。

    〔中川正春君登壇〕
中川正春君 民主党の中川正春でございます。
 私は、党を代表して、イラク人道復興支援特別措置法案につき、総理及び関係大臣に質問いたします。(拍手)

 最初に、国際政治の枠組みに対する基本的な認識について意見を述べ、あわせて、総理の認識をただしたいと思います。

 ブッシュ政権誕生後に起きた九・一一テロ事件が、アメリカの姿勢を先鋭化させています。私たちは、この一国主義的なアメリカの姿勢に強い懸念を持っております。

 イラク問題に対し、民主党は、当初から、徹底的な国連査察を通じた平和的解決を訴えました。さらに、イラク攻撃に対しては、既存の安保理決議では不十分として、新たな国連決議の採択を訴え、単独主義的な姿勢をとった米国等による対イラク攻撃に反対いたしました。

 私たちは、イラクの現状がここに至り、改めて、国連の枠組みを有効なものに組み立て、アメリカによる一国主義的な占領政策から、国連主導によるイラク国民の自己決定権を基本にしたネーションビルディング、国家建設の枠組み構築を目指すべきだと考えております。その枠組みの中でこそ、日本が惜しみなく援助を実行していく道筋ができるのであります。

 改めて、ここで総理に伺います。
 日本政府として、アメリカに対し、一国主義を改めて国連主導の枠組み構築を目指すことを強く主張していくべきだと考えますが、そうした主張をこれまで総理は国際会議の場でアメリカ・ブッシュ政権に対してはっきりと表明したことがあったのかどうか、明確に答えていただきたいと思います。(拍手)

 ここで、イラク人道支援法の論議に入ります。
 私は、今回のイラク支援法を議論するに当たり、二つの基本的な論点があると認識しております。

 第一に、イラクのトータルな復興支援のニーズに対して日本が何をもって貢献するのが一番ふさわしいのか、このことであります。第二は、日米の同盟関係に立って連合国暫定統治機構、CPAを中心にしたアメリカの占領政策に具体的にどのような協力ができるのか、あるいはまた、それはやるべきではないということなのか、この議論であります。

 まず、イラクの現状認識とニーズの問題であります。
 民主党は、先般、党独自の調査団をイラクとその周辺地域に派遣いたしました。以下は、その調査団の報告をもとにした私たちの主張であります。

調査団の報告
 統治機構の再構築のため、国連主要国との緊密な連携のもと、暫定政権の設置に向け、日本政府は、連合国暫定統治機構、CPAや国内諸勢力への働きかけを強めていくべきであります。その際、私たちの主張は、米英の占領行政から、国連主導によるイラク統治機構再編の動きに切りかえていくべきだということであります。

 また、連日のように強盗団などによる発砲事件や米軍をねらった攻撃が発生しており、イラクの治安状況は悪化してきております。警察国家だったイラクの警察機構を民主化し、治安を早期に回復させるため、民主的な交番システムの紹介や、文民警察官や民間警備会社の積極的な活用など、我が国警察などによる協力は、有効であり、地元のイラク国民に歓迎される貢献と言えます。

 また、六〇%を超す大量の失業者の出現が社会不安を増幅しています。教育水準や技術水準が高いイラクの人々がみずからの力でイラク再建を手がけるべきだという基本認識に、復興支援事業の原点を置くべきであります。

 民主党は、略奪などに遭った学校・医療施設や上下水道、放送・通信施設などの復旧事業について、失業中のイラク国民を緊急に臨時雇用し雇用を創出する、イラク復興ジャパン・プランを提案しております。(拍手)

自衛隊派遣問題
 次に、この法案の主なる目的、自衛隊派遣について質問いたします。
 端的に伺います。国会を延長してまでも自衛隊派遣にこだわるのは小泉総理の総裁再選に向けた政局的思惑があるからだと、自民党内部の反対勢力の声が聞こえてきます。国際政治の根幹にかかわることを政局に利用することがあるとすれば、それだけで、総理大臣並びにそうした内部議論を前提に政局運営をする自民党は政権政党として失格であります。総理、事実を明確に答えていただきたい。(拍手)

 第二に、政府が自衛隊の派遣の論拠にしている国連決議一四八三は、国連の枠組みによるトータルな支援要請であります。各国の軍隊派遣を特定しているものではありません。そんな中で、小泉総理がどこまでも自衛隊支援にこだわるのは、アメリカから、特にブッシュ大統領から小泉総理に要請があったからではありませんか。国連ではなく、アメリカの要請による自衛隊派遣だと理解しますが、総理、その事実をお答えいただきたい。

 さらに、最近の英米の国会内部の議論で明らかなように、イラクの大量破壊兵器の保有について、故意に情報操作が行われた疑惑が持ち上がっております。日本も独自の情報源を持ち得ず、ただアメリカの追随をすることで小泉総理は日本の外交を進めてきたのではありませんか。総理、このイラクへの武力攻撃の米英の大義が崩れかかっている現状をどのように考えますか。

 以上の重大な問題点があります。しかし、もう一方で、これからの具体的な法案の審議を通じて、さらにはっきりとしていかなければならない論点があります。

 まず第一に、現地に本当のニーズがあって、現在の憲法の枠組みの中で間接的に貢献できる可能性があれば、自衛隊派遣を私たちは頭から否定するものではありません。しかし、具体的な復興分野では、民間の専門家、民間業者やNGOが、失業中のイラクの専門家、公務員を雇って事業を推進した方が効率的かつ雇用創出にもつながると、民主党調査団は報告しております。このことを考えると、現時点で自衛隊でなければ果たせない緊急ニーズの特定は困難と言わざるを得ない状況であることも事実であります。

 さきにイラクに派遣された茂木外務副大臣からも、医療部隊や施設部隊のイラク派遣には現地のニーズはないと、消極的な報告があったように聞き及びます。政府の言う自衛隊派遣のニーズとは、何を根拠に、どのような内容を想定して提案しているのか、総理、外務大臣、そして防衛庁長官から改めて聞かせていただきたいと思います。

 それでは、以下、具体的に政府の法案の内容について伺います。
目 的
 まず、政府案では、国連安保理決議六七八、六八七、一四四一等に基づくイラク攻撃を受け、安保理決議一四八三号等を踏まえ、人道復興支援活動等を行うものとなっています。

 民主党は、イラク攻撃に際し、既存の国連決議では、国際法上、イラク攻撃を正当化するのは不十分として、新たな国連安保理決議の採択を求めました。それを拒んだ政府が、今回、この法案のかなめでは、一連の国連決議を前提としておるわけでありますが、イラク攻撃に大義があったのか、改めて総理の見解を伺います。

基本原則
 そして、自衛隊の活動に関し、対応措置の実施は戦闘行為が行われていない地域に限るとされています。現地の治安情勢から判断すると、戦闘地域と非戦闘地域の峻別あるいは戦闘員と非戦闘員の区別は事実上できないということであります。相変わらずのフィクションに依存する姿勢にはあきれるほかありません。本当にこれで任務を達成できるのか。自衛隊のトップに立つ防衛庁長官及び総理から所見を伺いたいと思います。(拍手)

 また、この法案では、受け入れ国の同意にかわって、安保理決議等に従って施政を行う機関の同意を要件としております。これは、現在、占領行政を行うアメリカの連合国暫定統治機構、CPAの同意を前提としていることであり、占領行政を行う米英軍の指揮下に入る状態というのは、交戦権を否認する憲法上の制約に抵触するおそれがあります。総理及び外務大臣から、憲法との関連も含め、CPAの同意を前提とし、しかも、その指揮下で自衛隊が活動することの是非に対する明確な答弁をいただきたい。

活動内容
 次に、安全確保支援活動について伺います。
 今回の法案では、従前と違い、武器弾薬の輸送については否定しておりません。確かに、治安の維持のために、現地でしなければならない支援ニーズはある。しかし、反対勢力は重火器を携帯しており、自衛隊の装備の点から安全に任務達成できる見込みがないこと、また、本来、国連派遣の部隊となることが望ましいにもかかわらず、実質的には米軍指揮下の活動となり、反対勢力から占領軍の一翼を担うものとして攻撃の標的となる危険性が生じるのであります。

 これでは、現地で良好と言われる対日感情に悪影響を及ぼす可能性が否定はできません。イラク周辺国からも、日本がアメリカの占領政策に自衛隊によって直接携わるべきでないという意見が聞かれます。これからの対イラク外交、対中東外交のあり方を想定すると、国益の見地から、このような関与の仕方は妥当ではないと考えますが、総理及び外務大臣の所見を伺います。

国会承認
 私は、原則的に国会による民主的統制を徹底する意味で、自衛隊が海外で活動するような場合には、国会の事前承認とすべきだと考えています。

 この点に関しては、過去、テロ対策特別措置法の議論の際も、民主党の主張に対して、おおよその理解は得られていたものの、当時の与党の政局的な思惑によって排除された経緯があります。今回は、政局ではなく、国益を踏まえた政策上の慎重な判断をすべきであり、総理からこのことを踏まえたしっかりとした答弁をいただきたいと思います。

民主的統制
 さらに、民主的統制の見地より、国会の議決による撤退規定と国民に対する情報提供義務規定について、官房長官から答弁をいただきます。

特別措置
 次に、法律の有効期限が施行から四年とされていますが、その期間の根拠となる情勢判断について、総理及び官房長官の明確な答弁を求めます。

武器使用基準
 最後に、武器使用基準について伺います。
 聞くところによると、与党内での議論では、法案を軽いものとするために、今回は、懸案となっていた武器使用基準の正面からの見直し緩和は行わず、PKO法に準拠したものとなったということであります。今回の法案審議で、私たちは、与党の期待する軽い議論を行うつもりは一切ありません。小泉政権は無責任であります。

 一体、現行の武器使用基準によって、重火器で武装する反対勢力が濶歩する地域で自衛官が安全に任務を達成できると、何を根拠に考えているのでありますか。また、法律の改正ではなく、部隊行動基準、ROEの変更で重火器の携帯を認めるとの話も聞こえてきます。現場に携わる自衛官からは、このような議論が前提となっていては、任務の達成と部下のモラルに責任が持てないとの声が出ていると聞き及んでおります。

 実際の部隊を預かる防衛庁長官、このような規定で、あなたは、自衛隊の諸君の命を危険にさらすことに同意するのですか。

 以上、この法案に対する具体的な論点について述べました。

 最後に、大切なポイントを指摘したいと思います。
 この先、中東についての論議は、イスラエルの和平プロセスはもちろんのこと、イランの核疑惑に対するアメリカの強硬姿勢など、大きく動く可能性があります。そんな状況の中で、総理、アメリカへの追随のみを日本の国是とする小泉外交は破綻するときが来る……

議長(綿貫民輔君) 中川正春君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

中川正春君(続) 私たちは、日本の真の国益を見据えて、独自の国際戦略を構築するときに来ているのであります。このことを指摘して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中川議員にお答えいたします。
 米国に対し国連主導の枠組み構築を目指すことを主張していくべきではないかとのお尋ねでございました。

 米国は国際社会の諸問題につき同盟国、友好国等と協議しており、一国主義との御指摘は当たらないと思います。日米両国は、さきの日米首脳会談でも、世界の問題を世界の国々と協調しながら解決していく原動力としての世界の中の日米同盟、これを強化することで一致しております。

 イラク問題に関しても、米国は、関連安保理決議の採択のための努力、イラク復興支援に関する国際会議の提唱等、国際協調に尽力しております。

 今回の自衛隊の派遣と国会延長についてでございます。
 五月二十二日の決議一四八三の採択など、イラク復興への国際社会の取り組みが具体化する中で、我が国にふさわしい貢献のあり方につき幅広い見地から検討を行ってきた結果、速やかに自衛隊及び文民による人道復興支援等の活動が必要と考え、法案を提出したものであります。

 自衛隊派遣について、アメリカの要請によるものではないかとの御質問でございます。
 本法案は、安保理決議一四八三を踏まえ、イラク国家再建のための努力を支援、促進しようとする国際社会の取り組みに対し、我が国が主体的かつ積極的に寄与することを目的としております。

 先般の首脳会談においても、私は、ブッシュ大統領に対し、日本自身の問題として、日本としてできることを主体的に検討したい旨述べており、米国の要請による自衛隊派遣との指摘は当たりません。

 イラクに対する武力行使の大義についてでございます。
 イラクには多くの大量破壊兵器に関する疑惑があり、査察への非協力を初め、イラクが関連安保理決議の重大な違反を犯してきたことについては、国連の査察団による累次の報告を通じて明らかにされていたとおりであり、同国における軍事行動の大義がなかったのではないかとの御指摘は当たらないと思います。

 現在、米軍等が大量破壊兵器を捜索しており、我が国としてもこれを注視していく考えであります。

 自衛隊派遣の必要性についてでございます。
 国家再建に向けたイラク国民の努力を支援する国際社会の取り組みに対し、我が国としてふさわしい貢献を行うためには、厳しい環境においても効果的な活動を遂行できる自衛隊を活用する必要があると考えます。

 自衛隊派遣の具体的必要性については、引き続き情報を収集し、その把握に努めてまいります。

 危険が伴う現地での自衛隊の活動についてでございます。
 本法案に基づく活動の区域を、いわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定するに際しては、我が国が独自に収集した情報や諸外国等から得た情報を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて、合理的に判断することが可能であると考えます。

 また、隊員の安全確保については、政府全体として、基本的な方針の策定から活動の実施の際に至るまで、最大限の配慮を行う所存であり、自衛隊の任務は十分達成できるものと考えます。

 自衛隊の派遣の根拠と憲法上の制約についてでございます。
 イラクの領域において活動を実施する際に必要とされる同意については、決議一四八三において米英の統合された司令部の権限とされている範囲内で、当該機関より取得することとしています。

 他方、我が国の活動は米英軍の指揮下に入るものではなく、また、本法案に基づく自衛隊の活動は武力の行使に当たるものではありません。非交戦国である我が国が本法案に基づく活動を行ったとしても、交戦権を行使することにはならず、憲法九条に違反するものではありません。

 イラクへの自衛隊派遣が対イラク外交、対中東外交に及ぼす影響についてでございます。

 我が国が自衛隊を派遣して積極的なイラク復興支援を行うことがイラク国民や中東諸国との関係に悪影響を及ぼすとは考えておりません。

 なお、無用な懸念や誤解を避けるために、イラク国民及び中東諸国に対しては、必要に応じて、この法律の趣旨及び目的等を十分に説明し、理解を得たいと考えます。

 国会承認についてでございます。
 本法案が成立すれば、イラクの復興支援のための自衛隊の派遣について、いわば国会の承認が得られたとみなし得ることに加え、迅速な派遣を目指す観点から、国会との関係については、事後承認を規定しているものであります。

 法律の有効期限についてでございます。
 四年を有効期限としたのは、イラクの復興にはある程度期間がかかると見込まれること及び我が国による国際協力の観点からは余り短い期間は適当でないことから、テロ対策特措法と同様の二年は短いと考えられます。他方、余りに長い期間を設定することも適切ではなく、四年という期間は適切なものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 中川議員にお答えします。

 まず、国会の議決による撤退と国民に対する情報提供義務についてお尋ねがございました。
 本法案におきましては、基本計画の決定、変更があったときは、その内容を国会に報告することとしており、また、自衛隊が実施する対応措置の実施について、国会の承認を求めることとしております。これらの規定により、国民への情報提供を確保するとともに、国会の御判断を十分に反映させることができると考えております。

 次に、法律の有効期限についてお尋ねがございました。
 これは、ただいま総理大臣からも答弁されたとおりでございます。四年を有効期限としたのは、イラクの復興にはそれなりの期間がかかるということでございます。また、我が国による国際協力の観点からは、余り短い期間は適当でない一方、余りに長い期間を設定することも適切ではないということを考えたためでございまして、四年という期間は適切なものと考えております。
 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) 自衛隊派遣の必要性についてのお尋ねがございました。
 これにつきましては、総理がお答えいたしましたとおり、厳しい環境においても効果的な活動を遂行できる自衛隊を活用する必要があると考えます。

 今後、自衛隊派遣の具体的必要性については、在外公館を通じた関係国や関係国際機関からの情報収集や現地における直接の情報収集などにより、引き続き必要な情報の把握に努めてまいります。

 自衛隊の派遣根拠と憲法上の制約についてのお尋ねがございました。
 総理からも御答弁ございましたように、イラクの領域において活動を実施する際に必要とされる同意については、本法案に基づく活動のように決議一四八三において米英の統合された司令部の権限とされている範囲内であれば、当該機関から取得することで、問題ありません。現時点においては、連合暫定施政局がこれに当たると考えています。

 本法案に基づく自衛隊の活動は、武力の行使に当たるものではなく、また、非交戦国である我が国が本法案に基づく活動を行ったとしても、交戦権を行使することにはならず、憲法第九条に反するものではありません。

 いずれにせよ、我が国の活動は、米英軍や連合暫定施政局の指揮下に入ることはありません。

 イラクへの自衛隊派遣が対イラク外交、対中東外交に及ぼす影響についてお尋ねがありました。
 我が国が自衛隊を派遣して積極的なイラク復興支援を行うことがイラク国民や中東諸国との関係に悪影響を及ぼすとは考えておりません。

 なお、無用な懸念や誤解を避けるために、イラク国民及び中東諸国に対しては、必要に応じて、この法律の趣旨及び目的等を十分に説明し、理解を得たいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕
国務大臣(石破茂君) 中川議員にお答えいたします。

 まず、自衛隊派遣のニーズについてのお尋ねがございました。
 政府は、国連安保理決議第千四百八十三号を踏まえ、イラクの復興への協力のあり方について検討してきたところであり、その結果、自衛隊による活動を盛り込んだ本法案を策定したところであります。

 各党とも現地での調査を実施されているものと承知しておりますが、政府といたしましても、自衛隊派遣のニーズについて、現地調査チームの報告等を通じて必要な情報の把握に努めてきており、日本の約一・二倍という広大なイラクの国土においては、それぞれの地域の実情によりさまざまなニーズが存在すると聞いております。

 イラクの復興に当たり、我が国としてふさわしい貢献を行うためには、厳しい環境にあっても効果的な活動を遂行できるよう、建設、輸送、通信、医療、給食、給水、発電等の活動をほかの力をかりずにみずからの組織だけで実施することができるという自己完結性を備えた自衛隊の能力や、PKO活動等への参加など、これまでに積み重ねてまいりました他国の軍隊との協力に関する自衛隊の経験等を活用する必要があると考えております。

 いずれにせよ、自衛隊派遣のニーズ等につきまして、今後とも、引き続き必要な情報の把握に努めてまいりたいと存じます。

 次に、危険が伴う現地で自衛隊が任務を達成できるかとのお尋ねがございました。
 本法案第九条におきまして、「対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、イラク復興支援職員及び自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。」と定めております。

 また、同法案におきましては、対応措置の実施は、いわゆる非戦闘地域において実施することとされておりますが、これは、我が国が憲法の禁ずる武力の行使をしたとの評価を受けないよう、他国による武力行使との一体化の問題を生じないことを制度的に担保する仕組みの一環として設けたものであります。

 したがって、自衛隊の活動を実施する際には、各種の情報に基づき、現地の治安状況等を正確に把握しつつ、実施要項において、このようないわゆる非戦闘地域の要件を満たすよう実施区域を指定し、また、自衛隊の活動の指揮監督に万全を期してまいる所存でございます。

 本法案に基づく武器使用や隊員の安全確保についてのお尋ねがございました。
 派遣される自衛隊員の安全確保につきましては、現地の治安状況等を考慮し、活動する区域や実施する業務を定めますとともに、携行する武器の種類や現地での部隊運用につきましても、安全確保の観点から十分に検討してまいります。

 他方、活動を実施する自衛官は、いわゆる非戦闘地域内において活動を実施するといたしましても、不測の事態に遭遇する可能性が全く排除されるわけではございません。そのため、当該自衛官は、自己等を防衛するため、やむを得ない理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができ、そのために必要とされる武器を携行するのでございます。

 これらの措置等により、派遣される自衛隊員の安全確保には特に万全を期してまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 渡辺周君。

    〔渡辺周君登壇〕
渡辺周君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、テロ対策特別措置法の一部を改正する法律案について、小泉総理大臣に質問いたします。(拍手)

 法案への質問に先立ちまして、お尋ねいたします。
 今月十四日、私は、ソウルで、元朝鮮労働党幹部ファン・ジャンヨプ氏とお会いしました。御存じのとおり、ファン氏は、一九九七年に亡命し、現在、韓国政府の保護下にあります。家族よりも二千万北朝鮮国民の命あるいは極東平和、世界平和のためにと、家族、親族への粛清を覚悟の上で、北朝鮮の実情を世界に訴えるために亡命を決行しましたが、氏は、現在、韓国政府の方針によって、自由な行動が許されておりません。亡命から六年、よわいを重ねられて八十歳、北朝鮮の瀬戸際外交がエスカレートし、国際社会に緊張が増す今、黄氏は、日本にぜひ呼んでほしい、すべてお話ししたいと、訪日を希望していらっしゃいました。

 韓国政府は、身の安全を理由に国外渡航に難色を示しておりますけれども、拉致問題を抱え、核を保有する対北朝鮮戦略が急がれる我が国にとりまして、西側社会で最も北朝鮮の内情、北朝鮮の金正日政権を熟知している氏は、何としても御本人の希望をかなえて我が国に迎え入れたい。そう思うのは、我が国にとって国益を利することになると深く思い至ったわけでございます。

 そこで、お尋ねいたします。
 ファン・ジャンヨプ氏のその意向、日本政府は、日本国家として、御本人の訪日の希望をかなえるためにどのような手だてを講じることができるか、あるいはその覚悟がおありか、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)

 それでは、続きまして、法案の質問に移ります。
 民主党は、九・一一テロが国際社会、国際秩序に対する新たな脅威であることを認め、派遣期間、活動範囲等を妥当なものと判断し、一昨年、第百五十三国会におきまして、対応措置の承認に賛成いたしました。

 その後、九・一一テロ首謀者のオサマ・ビンラディンの消息は途絶え、アルカイーダの幹部が拘束されるなど効果を上げ、ことしの五月一日には、ラムズフェルド国防長官が、カブールにおいて、アフガンは戦闘活動の場でなくなったと述べ、アフガニスタンでの主要な戦闘が終わったことを表明し、軍事行動から安定、復興のための活動に役割は移り、対テロ戦の主力はアフガン国軍部隊に引き継ぐ方針であります。

 そこで、この戦闘終結宣言を我が国はどう判断し、法改正しての継続支援の根拠、正当性について御説明いただきたいと考えるわけであります。

 これまで、政府は、掃討作戦はいまだ終結せず、各国も諸活動を継続していると繰り返すのみで、具体的な支援措置の根拠、必要性について、十分納得のいく説明はありませんでした。現地ニーズの検証はその都度されているのでしょうか。ぜひとも説得力のある御答弁をいただきたいと考える次第であります。

 今申し上げましたように、現在のアフガンの状況はこの法律が施行された二年前から大きく変化しており、基本計画には、当然、大幅な修正の余地があると考えますが、この点について、また、二年延長の意味及び妥当性をどう説明するのか、重ねてお伺いいたします。(拍手)

 テロの脅威に対する認識は、私ども民主党も共有しております。しかし、かつての法案審議の際にも議論したように、我が国は独自にテロ終結の判断ができるのでありましょうか。だれがどう判断するのか、だれがどのような基準で判断するのか、全く明らかでありません。

 政府は、これまで、国会への十分な説明責任を果たさず、再延長を重ねてきました。国会による民主的統制を徹底する見地から、民主党は、一昨年のこの法案の審議に際して、対処措置を原則として事前承認とする修正案を提出しましたが、政府・与党の政局的思惑から拒否されたいきさつがあります。反面、今国会で成立を見た有事関連三法案、事態対処法の修正協議においては、我が党の主張どおり、国会の議決による撤退規定と国民に対する情報提供義務規定が盛り込まれました。

 海外での自衛隊活動という極めて重要な国策遂行において、我が党が一貫して主張してきた民主的統制をより徹底する国会関与は意義あることと考えますが、以上申し上げた対処措置の事前承認、国会の議決による撤退、国民に対する情報提供、この点について総理の見解を伺いまして、民主党を代表しての質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 渡辺議員にお答えいたします。

 ファン・ジャンヨプ氏の訪日の可能性についてでございます。
 現時点で、ファン・ジャンヨプ氏より、政府に対し、正式な訪日希望は表明されておりません。
 いずれにせよ、政府としては、北朝鮮の大量破壊兵器開発問題や拉致問題について、今後とも、適切な機会をとらえ、情報収集を初め必要な取り組みを行っていく考えであります。

 テロ特措法の二年延長の意味、現地の活動及び基本計画の修正に関するお尋ねでございます。
 九・一一同時多発テロによる国際テロの脅威は依然として深刻であり、テロとの闘いは、引き続き国際社会にとって大きな課題であります。このため、我が国の支援が必要とされていると考えております。このようなことを踏まえ、テロ対策特措法の延長が必要と判断したものであります。

 また、基本計画については、これまでも現地の状況の変化に応じて適切に変更してきたことは、国会に御報告しているとおりでございます。

 なお、五月一日の米国大統領の演説等では、対テロ戦争が継続している旨が述べられているものと承知しております。

 国会の民主的統制に関するお尋ねです。
 自衛隊の活動に関する国会の関与は、自衛隊の活動の趣旨、活動内容等に応じ、適切な方法で行われるべきものと考えます。

 なお、テロ特措法について申し上げれば、対応措置の迅速性を確保するため、国会への報告の規定のみが設けられていた政府原案について、一層広範な国民の理解と支持を得ていくとの趣旨から、衆議院において、国会の事後承認を要する枠組みに修正されたと承知しております。

 法律に規定が置かれているかどうかにかかわらず、国民に対する随時の情報提供に努めるほか、国会における決議のように確定的な意思の表示があれば、これを尊重するのは当然であると考えます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 太田昭宏君。

    〔太田昭宏君登壇〕
太田昭宏君 私は、自由民主党、公明党、保守新党を代表し、ただいま趣旨説明のありましたイラク人道復興支援特別措置法案及びテロ特別措置法の一部改正案について、総理並びに関係大臣に御質問いたします。(拍手)

 私は、イラクへの人道復興支援へ向けて、我が国は何をすべきか、そして、何ができるのか、この目で直接確かめようとの思いで、六月上旬に、イラク、そして隣接国のイランを訪問してまいりました。

 私の実感したことは、イラクへの人道支援並びに復興支援へ向け、我が国が貢献できる仕事は数多くあり、しかも、緊急を要するということであります。

 特にニーズが大きかったのは、医薬品の充足や病院の再建、医師の派遣など、医療関係の支援です。また、水や電力不足も深刻で、上下水道や電力施設の復旧も急務であります。さらには、イラクでは、労働力人口の多くが公務員であったため、フセイン政権の崩壊とともに国民の大半が失業するという事態に陥っており、生活の糧となる雇用の問題も深刻であります。バグダッドでは、ごみも散乱し、衛生状態も悪いと聞きます。社会基盤を整備し、ごみ収集など公共サービスを実施することも急務であります。

 クルド人自治区を中心に八十万人以上いると言われる国内避難民への支援、さらには、周辺国などに居住しているイラク難民も四十万人以上いると見られ、これらの難民への支援や元居住場所への帰還支援も重要であります。

 そして、経済援助、民間投資など、課題は山積していますが、我が国が貢献できる分野は広く、日本の支援を期待する声は極めて大きいものがあります。

 五月二十二日に議決した国連安保理決議一四八三は、国際社会の一致した意見として、すべての国連加盟国に対し、イラクへの人道支援、復旧復興支援等への協力を求めております。この決議に沿って、我が国は、主体的判断のもとに、人の貢献も含めた幅広い貢献ができるのであります。

 イラクの治安情勢やインフラが破壊された状況を考慮すると、自己完結的に行動できる自衛隊の役割は重要であります。

 さらに、現在、最も緊急を要する医療、電気なども含めての復旧支援策が大事であり、自衛隊の派遣にとどまらない、幅広い支援策が重要であると考えます。法案審議と並行し、広範かつ重層的な我が国の貢献について、政府は国連や関係国と密接に連携をとりながら検討すべきだと思います。

 そこで、お伺いいたしますが、今回のイラク支援特措法案に対する総理の認識及びイラク支援への我が国の重層的な対応について、御見解をお尋ねいたします。

 次に、イラク支援特措法案について、次の四点について確認をさせていただきたいと思います。

 第一点は、イラクへの自衛隊派遣の際には、事前に十分な現地調査を実施し、派遣隊員の安全の確保に万全を期すこと。現地調査結果は国民にも詳細に報告すること。

 第二は、自衛隊の派遣内容などに関する基本計画については、第五条によって、国会への報告事項になっておりますが、その報告に際しては、質疑時間を確保し、国民に対し情報公開に努めること。

 第三は、活動地域の選定は、いわゆる非戦闘地域で活動を実施しなければならないという基本原則にのっとって、厳格に行う必要があります。また、これまでの国際貢献でも行ってこなかった武器弾薬の輸送は、慎重に対応すべきであります。公明党としては、自衛隊の活動は、食糧や医薬品の輸送など人道的な見地からの活動を主な任務とし、武器弾薬の輸送を主任務としないなどの配慮が必要と考えます。

 第四は、イラクへの支援はできるだけ早く実施する必要があると考えますが、政府として、いつごろ実施する考えか。

 以上四点について、総理の御答弁を求めます。

 私が今回訪問したイラク北部のクルド人自治区は、治安が安定しており、非戦闘地域であると言えますが、ここでは、民間企業による設備投資や経済援助などを要請する声が聞かれました。

 大事なことは、各地域ごとの実情とニーズを把握することであります。そして、できることは今すぐにでも行うべきだというのが私の実感であります。

 六月二十日、与党三党の調査団がイラクに派遣されました。政府においても、数回、調査を重ねており、努力されていることは承知しておりますが、日々刻々と状況は変わりつつあります。

 各地域ごとの実情とニーズを常に把握するための体制づくりを強化しつつ、民心と民生を安定させ、再び戦闘状態を惹起させないための国づくりに向け、今直ちに行う支援策、地域別のきめ細かな支援策を検討すべきだと思いますが、官房長官並びに防衛庁長官の答弁を求めます。

 クルド人自治区のスレイマニア市とアルビル市近郊の国内避難民キャンプを視察した際、我が国のNGO、ピースウィンズ・ジャパンがイラク住民と一体となって難民支援を行っている姿に、大変感動しました。

 イラクで人道復興支援に当たっているNGOへの支援も重要であります。米国やスウェーデン等では、ODA予算の一定額を自国のNGOへ還元するシステムをつくり、自国のNGOを支援しております。

 そこで、提案でありますが、我が国が拠出するODA経費については、その一定割合について、我が国のNGO団体の活動費に充てることが可能な仕組みを検討するなど、NGOへの支援拡大に努力すべきだと思いますが、外務大臣の御見解を承りたいと存じます。

 今回の視察で、クルド人自治区で、自治政府のホシナウ保健大臣と会見しましたが、同大臣によれば、サダム・フセインはクルド人自治区内の少なくとも二百カ所で化学兵器を使用したとの話を伺い、さらにまた、八八年三月、化学兵器によって一瞬のうちに六千人以上が亡くなったハラブジャを訪問し、私は大変に衝撃を受けました。その場所もほとんど特定されているとのことでありました。

 大臣からも要請がありましたが、我が国として、この被害調査、環境影響調査などを行い、かつ、後遺症に苦しむ人々への医療支援を行うべきであります。化学兵器の被害者はDNAへの損傷をこうむっているとの研究もあり、そういう意味で、被害は数世代にわたる可能性があります。早急に手を打たなければなりません。総理の御見解を求めたいと存じます。

 今回のイラクへの人道復興支援へ向けての各国の取り組みによって、国連を中心とする国際協調体制が再構築されることを強く望んでいるのは、私一人ではないと思います。政府は一致結束し、イラク及び周辺地域諸国の平和と安定のために全力を挙げていただきたい。そして、一日も早く、イラク人自身による政権の樹立、そして、生活の安定と平和が構築できるよう、総理の強靱なるリーダーシップを期待するものであります。

 最後に、テロ特措法の改正案については、法律の期限を二年間延長するものであり、他の内容については変更がないと理解するものでありますが、国際テロの活動の現状認識と日本の貢献の意義について総理の所見を求め、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 太田議員にお答えいたします。

 本法案に対する認識及びイラク支援への見解についてでございます。
 本法案は、国際協調のもと、イラクが一日も早く再建されるよう、我が国として速やかにできる限りの支援措置を講ずるとの考え方に立ったものであります。

 我が国としては、本法案に基づく措置を含め、イラク復興支援のためのさまざまな施策に積極的に取り組み、幅広い分野において、我が国にふさわしい貢献を行ってまいりたいと思います。

 十分な現地調査を実施し、自衛隊員の安全確保に万全を期すべきだとの御指摘であります。
 政府は、既に、関係省庁の職員から成る調査チームを派遣したところですが、今後も、必要な実態調査を重ね、現地における的確な活動計画の立案と、派遣される隊員の安全確保に万全を期してまいります。

 調査結果については、しかるべく国民の前に明らかにしたいと考えております。

 基本計画の国会報告についてでございます。
 本法案においては、基本計画の決定があったときは、遅滞なく、その内容を国会に報告することとしております。

 国会における報告の取り扱いについては、国会の意向も踏まえ、政府として、国民の理解が得られるよう真摯に対応してまいります。

 活動地域の選定のあり方と自衛隊の任務についてでございます。
 活動地域の指定は、我が国が独自に収集した情報や諸外国等から得た情報に基づき、いわゆる非戦闘地域の要件を満たすよう厳格に行います。

 武器弾薬の陸上輸送については、御指摘の点も十分踏まえつつ、業務の円滑な実施について適切に対応してまいります。

 イラクへの支援の実施時期についてでございます。
 イラクの復興は国際社会の急務であり、イラクにおいては既に多くの国が支援活動を実施していると承知しております。

 政府としては、引き続き現地の状況等の把握に努めるとともに、本法案が成立後、できるだけ早く、事前調査を整えた上、時期を失することなく対応措置を実施したいと考えます。

 化学兵器による被害者に対する医療支援についてでございます。
 我が国は、国際協調のもと、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々の生活が正常化するよう、御指摘の点も含め、現地の状況等を踏まえ、速やかにできる限りの措置を講じていく考えであります。

 国際テロの活動の現状認識と日本の貢献の意義についてでございます。
 米国同時多発テロ以降も、世界各地でテロが発生するなど、テロの脅威は依然として深刻であると認識しております。

 テロ対策特措法に基づく活動を含め、国際テロの根絶に向けた国際社会の幅広い分野における取り組みに我が国として積極的かつ主体的に寄与することは引き続き重要であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕
国務大臣(福田康夫君) 太田議員にお答えします。

 実情とニーズを踏まえたイラク支援の必要性についてお尋ねがございました。
 我が国は、これまで、人道上の観点及び地域の不安定化を回避するとの観点から、対イラク緊急人道支援及びヨルダン、パレスチナへの、周辺地域への支援を行いました。さらに、先月には、政府調査団の視察結果を踏まえ、約五千万ドルのイラク支援策を発表し、今月にも政府調査団を再度派遣し、支援のさらなる具体化に努めているところでございます。

 また、国家再建に向けたイラク国民の努力を支援する国際社会の取り組みに対して我が国としてふさわしい貢献を行うためには、厳しい環境においても効果的な活動を遂行できる自衛隊を活用する必要があると考えております。

 今後とも、現地の実情とニーズを踏まえたきめ細かな支援の実施に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕
国務大臣(石破茂君) 太田議員にお答えいたします。

 議員御指摘のとおり、日本の一・二倍という広大な国土を有すイラクについては、各地域ごとの実情とニーズの把握に努めるとともに、できることは今すぐにでも行っていくことは極めて重要なことであると認識いたしております。

 そうした観点から、我が国は、イラクの復興に貢献していくため、関係諸国等との意見交換や政府調査チームの報告等の結果に基づき、約五千万ドルの支援策を発表したほか、医療、補給、輸送等を内容とする人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うことをメニューとして提示し、本法案を提出することといたしました。

 政府としては、イラクの復興に対し、我が国にふさわしい貢献をするため、今後とも、引き続き必要な情報の把握に努め、議員御指摘の、地域の実情に応じたきめの細かい支援を実施してまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣川口順子君登壇〕
国務大臣(川口順子君) NGOの支援についてのお尋ねです。

 NGOによる国際協力活動は、開発途上国・地域の多様なニーズに応じたきめ細かな援助や、迅速かつ柔軟な緊急人道支援活動の実施という観点から、極めて重要です。

 このようなNGOの重要性にかんがみ、政府としては、我が国NGOの活動に対して積極的な支援を推進しており、イラク及び周辺国において緊急人道支援を行っているジャパン・プラットフォームに対しても、これまで、総額約七億円の支援を行っています。

 政府としては、今後とも、NGOに対する支援、連携の強化に努めていきたいと考えています。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 一川保夫君。

    〔一川保夫君登壇〕
一川保夫君 私は、自由党の一川保夫でございます。

 党を代表いたしまして、ただいま提案されましたイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対し、質問いたしたいと思います。(拍手)

 先日、小泉内閣及び与党は、このイラク支援法案等の審議を理由に、無理やり国会の会期を延長することを決めました。

 しかし、イラク支援法案等については、政府・与党内でかねてからその是非が議論になっていたものであり、もし、政府が本当にこれら法案は必要不可欠と考えていたのであれば、早くから国会に提出し、堂々と議論を求めるべきでありました。

 ところが、九月の自民党総裁選をにらんだ与党内政局でごたごたしたあげくに、会期末ぎりぎりに提出してきたものであります。

 しかも、この法案の内容たるや、相変わらず、憲法解釈をごまかし、我が国の軍事力を海外に派遣する基本原則も定めないまま、ただやみくもに自衛隊をイラクに送り込むという、全く支離滅裂であり、むちゃくちゃな内容であると思います。(拍手)

 かてて加えて、小泉政権が国会の会期を強引に延長してまで今国会で成立させようとしているイラク支援法案等の本日のこの本会議での趣旨説明、質疑に当たり、小泉総理は、昨日の夕方まで、出席をはっきりしませんでした。ようやく、この本会議への出席を決めたわけでございますけれども、本来であれば、総理がみずから進んで出席して、堂々と説明すべき問題であります。

 私たちは、こういった行動は本当に信じがたい無責任ぶりであると考えております。まさに、無定見、無原則、無責任という小泉内閣の三無政治、ここにきわまれりであります。

 そのことをまず指摘いたしまして、本題に入らせていただきます。(拍手)

 最初に、我が国の国際安全保障の基本原則についてお伺いいたします。
 日本の存亡にかかわる安全保障は、本来、政府が明確な基本原則を確立して内外に宣明し、それに基づいて自衛隊等の行動原則を定めるべきであります。

 ところが、歴代自民党政権は、いいかげんな憲法解釈でその場をしのぎ、なし崩し的な運用を重ねてまいりました。特に、湾岸戦争以来、安全保障面での我が国の国際協力をめぐって、国会で多くの議論が行われてきたにもかかわらず、政府は、終始、安全保障の原則を明示することを避けてきました。

 軍事力である自衛隊の海外派遣にしても、小泉総理自身、憲法のすき間と称して憲法解釈をごまかしつつ、米国の自衛戦争であるアフガン戦争に自衛艦を派遣する一方、国際社会が一致して当たるべきアフガニスタンでの国連平和維持活動には自衛隊を派遣しませんでした。

 先進諸国の中で、国連の平和活動などのために軍事力を海外に派遣するときに、明確な原則がなく、したがって、その場その場の新規立法で対処している国は日本以外にあるでしょうか。残念ながら、寡聞にして聞いたことがありません。

 なぜ、このような国際社会の非常識がいつまでもまかり通るのか。国際社会の共同行動であります国連の平和活動に参加、協力することは、国際社会の一員としての責務であり、我が国の自衛権とは全く関係がなく、憲法が禁止している国権の発動たる戦争あるいは武力の行使とは明らかに異なるものであります。

 それにもかかわらず、歴代自民党政権は、政府の一官僚集団にすぎない内閣法制局の憲法解釈を盾に、憲法第九条を国連の平和活動に参加しない隠れみのにしてまいりました。

 その無責任な政治姿勢を改めない限り、我が国の自衛隊が国際社会の平和と安全のために国連の旗のもとで各国の軍隊とともに堂々と胸を張って活動し、我が国に国際社会での名誉ある地位を与えることなど、できるわけがありません。

 自衛隊の海外派遣が必要となるたびにケース・バイ・ケースで法律をつくるなどということは、政治家として恥ずべきことであると考えます。まず、そのあたりを認識していただきたい、そのように思っております。

 政府は早急に憲法解釈を確定し、安全保障の原則を明確にすべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。(拍手)

 我々自由党は、かねてから、我が国の国際安全保障について、まず第一に、国連の安保理または総会で決議が行われ、かつ、国連から参加要請があれば、日本は国連の平和活動に積極的に参加し、軍事力の行使を含むいかなる協力も行う、第二としまして、しかし、国連の武力行使容認決議のないままでは特定国が独自に行う戦争には参加しないことを原則とすべきであるということを主張してまいりました。それが日本国憲法の理念であると考えるからでありますが、この点について、あわせて総理の見解をお聞きしたいと思います。

 次に、イラク支援法案そのものについてお伺いいたします。
 自由党は、さきに申し上げた原則に基づき、今回のイラク復興支援についても、国連が平和維持活動として加盟国の軍隊の派遣を決議し、かつ、国連から日本に派遣の要請があった場合には、我が国は当然、自衛隊の派遣も含めて全面的に協力すべきものであると考えております。

 しかし、政府がイラク支援法案の根拠としております国連安保理決議第一四八三号は、その内容を分析してみますと、人道支援については国連及びその他国際機関の任務、治安維持は占領国の業務としておりまして、国連が加盟国に対して占領国への協力を要請したものではなく、自衛隊をイラクに派遣する根拠とはなり得ないと見られております。

 しかも、イラクは、現在、実質的に米英軍を中心とする占領軍の支配下にあり、イラク人による新政府は、樹立のめどさえ立っておりません。また、今、自衛隊をイラクに派遣した場合、自衛隊に対して支援活動の内容や展開地域について協議、指示するのは、国連ではなく、占領軍であることは明白であります。

 このまま自衛隊を派遣することは、国連の平和活動への協力ではなく、占領軍に協力することになり、憲法に違反すると考えますが、総理、現在のイラクに自衛隊を派遣できるという憲法上の根拠をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)

 そもそも、いつ、いかなる形で国連から我が国に自衛隊派遣の要請があったのか、はっきりとお答え願いたいと思います。米国あるいは英国から、いつ、だれが、いかなる形で自衛隊派遣の要請を受けたのか、あわせてお答えいただきたいと思います。

 まことに遺憾ながら、国連の武力行使容認決議のないままに米英両国が独自にイラク戦争を始めて以来、国連の安保理は機能が著しく低下しております。国連の機能をいかに高めるかが我が国の外交・安保政策の基本でなければなりません。今回の自衛隊派遣は、国連機能の再生に全く役に立たないことは明らかであります。

 また、本法案では、自衛隊の派遣地域について、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域と定め、その地域においてのみ活動することといたしております。

 しかし、イラクでは、今なお、全域においてフセイン軍の残党が散発的に占領軍への攻撃を繰り返し、毎日のように占領軍に死者が出ているのが実態でございます。戦闘地域と非戦闘地域を区分することは不可能であり、イラクの現状からすると、非戦闘地域で活動していてもいつ攻撃されるかもわからない、実際には占領軍とともに戦闘に参加しているのも同然だというのが専門家の見方であります。

 戦闘状態は常に変化し、戦線も移動していくというのも、また常識であります。非戦闘地域で突然戦闘が起こることは日常茶飯事であり、もしそうなっても、自衛隊は逃げて帰ってくることなどできないのであります。そんなことをしたら、日本は国際社会において全く笑い物になってしまいます。

 しかも、イラクに派遣される自衛隊の装備は、国際基準から大きくかけ離れ、小火器しか認められないと言われております。これでは、自衛隊員はどうやって身を守ればいいのでありましょうか。自衛隊員に対して、余りにも残酷ではありませんか。

 これらについて、総理の見解をお伺いいたします。(拍手)

 第一、イラクがまだ占領国による統治下にあり、しかも、混乱状態が続いているとしても、国連機関を通じた人道民生支援は現行法で十分に可能であります。

 国連安保理決議一四八三号は、人道支援について、加盟国が国連及びその他国際機関に協力するよう明確に要請しているのでありますから、人道民生支援こそ、国連機関を通じて今すぐにでも実施すべきであります。

 そして、イラク人自身による新たな政府が樹立されたときは、新政府あるいは国連を通じて、食糧、医薬品の供与、経済インフラの復興を初め、あらゆる支援を本格的に行うべきであると考えますけれども、総理の見解をお伺いいたします。

 以上、今回のイラク支援法案は、その根拠も、個別具体的な内容も、極めて重大な問題を残しております。

 それよりも、まず、私自身もこの法案の提出者の一人でもありましたけれども、我々が提出しました自由党の安全保障基本法案を速やかに成立させ、自立国家として、安全保障の明確な原則を確立すべきであります。それをしないまま自衛隊を海外に派遣することは政治の最大の怠慢であると考えますけれども、総理の見解をお伺いいたします。

 最後に、申し上げたいと思います。
 すべてにおいて場当たり的な自民党政権のもとで、大義もなく、安全保障の原則も確立しないまま、体裁だけの国際貢献、その実、占領軍への協力のために、非現実的な装備で、戦闘の続くイラクに自衛隊を派遣することは、だれよりも、派遣される自衛隊員自身にとって悲劇であります。もし、この法案が成立すれば、大義なき戦場に送られ、それでもなお命をかけて、誇りを持って職務を全うしようとする自衛隊員に対して、どんな言葉をかけることができるでありましょうか。申しわけないと言うしかありません。総理大臣はこういったことに対してどのようにお考えでしょうか。

 このような無定見で無責任な小泉政権をこれ以上許してはならないと私は思います。
 以上をもって、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一川議員にお答えいたします。

 安全保障の原則を明確にすべきとのお尋ねでございます。
 我が国は、憲法のもと、適切な防衛力を整備するとともに、日米安保体制を堅持し、また、国際の平和と安全を確保するための外交努力を推進することにより、国の安全を確保することを基本としております。

 また、我が国の国際貢献については、自衛隊の活用も含め、適切な形で枠組みを整備してきたところであります。

 今後とも、憲法の基本的考え方に立ち、国民的議論を踏まえながら、国際社会の平和と安全に寄与してまいりたいと考えます。

 我が国の安全保障と憲法の理念についてのお尋ねです。
 憲法上、我が国による国連平和維持活動の実施は武力の行使に当たるものであってはならないとともに、国連決議の有無にかかわらず、我が国が自衛権の行使以外で武力の行使を行うことはあり得ません。

 自衛隊の派遣の憲法上の根拠についてでございます。
 本法案に基づく自衛隊の活動は、武力の行使に当たるものではありません。非交戦国である我が国が本法案に基づく活動を行ったとしても、交戦権を行使することにはならず、憲法上も許されるものと理解しております。我が国のそのような活動は、国際協調のもとに恒久の平和を希求する我が国憲法の平和主義の理念に合致するものであると考えます。

 自衛隊派遣の要請についてでございます。
 本法案は、安保理決議一四八三を踏まえ、イラク国家再建のための努力を支援、促進しようとする国際社会の取り組みに対し、我が国が主体的かつ積極的に寄与することを目的としております。

 自衛隊の派遣は、このような目的を達成するため、日本自身の問題として主体的に実施するものであり、米国や英国等の要請によるものではありません。

 活動区域の設定と派遣される自衛隊の装備についてでございます。
 本法案に基づく活動の区域を、いわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定するに際しては、我が国が独自に収集した情報や諸外国等から得た情報を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて合理的に判断することが可能であると考えます。

 自衛隊が携行する武器については、実施する業務、現地の治安情勢等を勘案し、派遣される隊員の安全確保のために必要なものを基本計画において定めることになります。また、当該武器の使用については、現地の状況に応じ、法案の趣旨に従って適切に行うべきことは当然であります。

 イラク支援の迅速な実施及び今後の支援についてでございます。
 我が国は、これまでに、約八千六百万ドルの対イラク人道復興支援を国際機関等を通じて行ってきております。今後とも、国際協調のもと、イラクが一日も早く再建され、イラクの人々の生活が正常化するように、イラク復興のための支援に積極的に取り組み、我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。

 自由党提出の安全保障基本法案についてでございます。
 政府が提出し、国会に審議をお願いしている法案は、国際協調のもと、イラクが一日も早く再建されるよう、我が国として速やかにできる限りの支援措置を講ずるとの考え方に立ったものであります。

 御指摘の安全保障基本法の制定については、国民的議論の推移を見守りたいと考えます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 佐藤公治君。

    〔佐藤公治君登壇〕
佐藤公治君 私は、自由党を代表して、ただいま提案されましたテロ対策特別措置法の一部改正案に対し、質問いたします。(拍手)

 まず申し上げたいことは、自衛隊という武力組織を海外へ派遣することは政治の最も重い決断であり、あえてその決断をするのであれば、従来の政府のあいまいな憲法解釈、運用を反省し、安全保障の基本原則を明確に示した上で行わなければならないということであります。

 歴代自民党政権は、これまで、武力組織、つまり自衛隊という究極の強制手段を軽々しく扱い過ぎてきました。我が国の自衛権の発動と国連平和活動について、憲法解釈を場当たり的、なし崩し的に行い、安全保障の原則を明確にしてきませんでした。自衛隊の海外派遣についても、その場しのぎの新規立法で対応しているありさまです。テロ対策特別措置法、そして今回の延長法案は、その典型であります。

 このような無責任な政治は、結局、国家の根幹を崩壊させてしまいます。これは歴史の教えるところであり、しまいには政治そのものが軍隊に圧殺されることも珍しくありませんが、小泉総理はそのような厳しい歴史認識をお持ちなのでしょうか。お答えください。

 そもそも、二年前、小泉政権がテロ特措法を強引に成立させたのは、アフガニスタンに対して米英両国が自衛権を行使したアフガン戦争で、人道支援あるいは国際協力という名目で米軍等を支援するために自衛隊を派遣するのが目的でした。

 しかし、日本は、集団的自衛権を行使してアフガン戦争に参戦したNATO諸国等とは全く事情が異なります。政府がこれまで、集団的自衛権の行使は憲法で認められていないとの憲法解釈を示し、小泉総理も、テロ特措法の審議で、政府の憲法解釈に変わりはないと明言したからです。

 日米安保条約の改定を含め、米国との集団的自衛権の行使を認めなければ、アフガン戦争に参戦して米軍を支援することなど、憲法上、できるはずがないのであります。国連の武力行使容認決議のない戦争に自衛隊を派遣するには、米国との集団的自衛権を認める以外にありません。

 それにもかかわらず、新しい憲法解釈を国民に明示することもなく、場当たり的、無原則に自衛隊を派遣したことは、国民を欺いたと言わざるを得ません。諸外国に対しても、日本は、自分の都合で、あるいはその場の雰囲気で、へ理屈をこねてでも何をしでかすかわからない不気味な国という不信感を植えつけてしまいました。

 今回、再び、憲法解釈を変更しないまま、テロ特措法を延長して、なし崩し的に自衛隊を派遣し続けることは、断じて認めるわけにはいきません。集団的自衛権の行使に関する政府の憲法解釈を変えるのか否か、小泉総理、はっきりお答えください。(拍手)

 我々自由党は、これまで、国会審議を通じて、幾度となく、安全保障の基本原則を早急に確立するよう求めてきました。しかし、小泉総理は、そのたびに、問題のすりかえと詭弁によって、ごまかし続けてきました。今度こそ、与野党が真摯に議論し、我が国の安全保障の原則を明確にすべきであると考えますが、総理の見解をお聞かせください。

 とりわけ、自由党が提出している安全保障基本法を速やかに成立させるべきであると申し上げ、私の質問を終わります。

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 佐藤議員にお答えいたします。

 我が国の安全保障の原則に関するお尋ねです。
 我が国は、憲法のもと、適切な防衛力を整備するとともに、日米安保体制を堅持し、また、国際の平和と安全を確保するための外交努力を推進することにより、国の安全を確保することを基本としております。

 また、我が国の国際貢献については、自衛隊の活用も含め、憲法のもと、国民的議論を経て、適切な形で枠組みを整備してきたところであり、なし崩し的、無責任という指摘は当たらないと思います。

 戦前における旧軍の果たした役割については、反省も込めて、常に正しい認識に努めております。

 集団的自衛権に関するお尋ねです。
 テロ対策特措法に基づく我が国の活動は、それ自体は武力の行使に当たるものではなく、また、その活動の地域等にかんがみれば、米軍等の武力の行使と一体化するものでもなく、従来から、憲法上問題ないと考えております。

 また、集団的自衛権についての政府の見解は、従来から述べているとおりであり、かかる解釈を変更することは考えておりません。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕
副議長(渡部恒三君) 木島日出夫君。

    〔木島日出夫君登壇〕
木島日出夫君 私は、日本共産党を代表して、イラク特別措置法案について、小泉総理に質問いたします。(拍手)

 本法案は、三月二十日に始められた米英両軍による無法なイラク戦争とそれに続く軍事占領に対し、自衛隊を派兵してこれに参加、加担することを核心とするものであります。

 ブッシュ米大統領が戦闘終結宣言した五月一日以後も、イラク国内において、米占領軍とイラク国民との武力衝突が繰り返され、五十人以上の米軍兵士が死亡したと伝えられています。

 このような地域に軍事占領支援のために自衛隊を派兵することは初めてのことですが、これは、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した憲法九条に違反し、到底許されるものではありません。総理の答弁を求めます。(拍手)

 軍事占領のもとになった米英両軍のイラク戦争の合法性について聞きます。
 米英両国が戦争遂行の最大の口実にし、総理が戦争支持の最大の理由とした大量破壊兵器の問題をめぐって、今、情報の不正な操作が国際的に大問題になり、両国においても、政府当局に対する厳しい責任追及すら始まっています。

 大量破壊兵器廃棄問題について、イラクの安保理決議違反を判定する権限は国連安保理にのみ与えられており、安保理は、圧倒的多数でそれをきっぱりと拒絶したのです。もともと、米英によるイラク攻撃には、国際法上の正当性、合法性は全くなかったのです。

 違法に始められた戦争は、勝利したからといって合法化されるものではありません。

 ところが、本法案は、第一条には、国連決議六七八号、六八七号、一四四一号に基づき国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使と、米英による無法な戦争を追認、合法化しようとする、とんでもない記述があります。

 日本政府は無法なイラク戦争をこの法律によって合法化してしまうつもりなのですか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)

 米軍によるイラク占領の合法性について聞きます。
 違法に行われた戦争の結果、始められた軍事占領は、国際法上の合法性を持つものではありません。

 法案第一条には、国連安保理決議一四八三号を踏まえ、我が国が占領米軍に対して支援活動をするとありますが、安保理決議一四八三号は、軍事行動の合法性や軍事占領の合法性については、直接触れてはおりません。

 軍事占領をした占領軍が、戦争の合法性とは切り離されて、ハーグ陸戦法規やジュネーブ諸条約などの人道法の占領法規が適用され、その義務を履行しなければならないことは、国際法からも当然なのです。

 米英両国のイラク戦争に反対したフランス、ドイツ、ロシア、中国初め世界の多くの国々が占領米軍支援のための自国の軍隊の派兵をしようとせず、フランス、ドイツなどが軍隊の派遣は問題外だと言っていることには、十分な根拠があるのです。

 日本政府は米軍によるイラク占領の国際法上の合法性についてどのように考えているのですか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 米軍占領下にあるイラクの現状について聞きます。
 我が党は、十三日から九日間、緒方靖夫参議院議員を団長とするイラク調査団を派遣し、イラク戦争による破壊の状況、治安の状況、イラク住民の実態と要求、占領軍の行動など、現地の状況をつぶさに調査してまいりました。

 占領米軍が今、力を注いでいるのが、イラクの旧政権武装勢力の掃討作戦であります。イラク住民の心情や国民性、人権を無視した米軍の手荒な行動や、一向に改善されない雇用情勢、水、電気などの不足によって、イラク住民の占領米軍に対する反感が高まっており、それらが、米軍とイラク国民との衝突が繰り返される最大の要因になっているのです。

 政府はイラクのこのような現状を一体どのように認識しているのですか。

 法案第二条は、占領米軍を支援する自衛隊が行う対応措置は、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施する」と規定しています。

 しかし、さきに指摘したようなイラク国内の現状のもとで、戦闘行為が行われる地域と行われない地域の区別など、できるのですか。占領米軍支援活動をする自衛隊がイラク住民から見れば占領米軍と同一視されるであろうことは容易に想定されることですから、非戦闘地域がいつ戦闘地域に変わるか、だれも予測できないのではないですか。

 自衛隊員が襲撃されるおそれがないと言えるのですか。

 法案には、自衛隊が携行する武器の種別については、何の規定、制限もありません。どのような武器を携行するつもりなのですか。不意の襲撃に対して自衛隊が反撃すれば、それは、憲法の禁ずる武力の行使そのものではないですか。正当防衛としての武器の使用と武力の行使とを使い分ける、これまで政府がとってきたこそくな解釈は、このような状況下のイラクにあっては到底通用しないのではないですか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 イラクに派遣された自衛隊が何をやるのかという問題です。
 法案第三条は、安全確保支援活動として自衛隊が行う活動として、イラク国内における安全及び安定を回復する活動を支援するために、医療、輸送、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理もしくは整備、補給、消毒を挙げています。

 そこで、お聞きします。自衛隊は、占領米軍に対する武器弾薬の輸送、保管、備蓄、補給、修理ができるのですか。戦闘で負傷した米兵に対する輸送や治療、野戦病院の建設、占領米軍のための兵舎や武器庫などの建設をすることができるのですか。

 イラク国内において占領活動を続け、イラク住民との間で戦闘行動を行っている米軍に対する支援活動としてこのような活動をする自衛隊は、明らかに、占領米軍の一部となるということではありませんか。

 法案が自衛隊のイラク派兵の動機にしている国連安保理決議一四八三号は、「すべての関係者に対し、特に一九四九年のジュネーブ諸条約及び一九〇七年のハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を完全に遵守するよう要請する。」と規定しています。イラクに派兵される自衛隊はジュネーブ諸条約、ハーグ陸戦規則の適用を受けるのですか。

 憲法九条のもとで、このような海外での自衛隊の軍事行動がどうして可能なのか、重ねて総理の答弁を求めます。(拍手)

 イラク、イスラム社会と我が国との友好についてお聞きします。
 イスラム社会を初め圧倒的多数の国際社会の反対の声に逆らって米英両国によって行われたイラク戦争とこれに続くイラク占領に対して、我が国が自衛隊を派兵して占領米軍に対する軍事支援をするということは、明らかに、日本がイラク住民を初めイスラム社会全体と敵対的な関係に入るということを国際政治の上では意味します。

 戦後、我が国は、憲法九条を持つ国、戦争をしない国として、アラブ・イスラムの国々と友好的な関係をつくり上げてきました。世界最大の産油地帯であるアラブ・イスラム諸国との友好的な関係を維持してきたことは、エネルギーの多くを中東の産油国に依存してきた我が国にとって、死活的に重要なことでした。

 イラク住民からも、イスラム社会からも、何らの要請もないにもかかわらず、我が国が自衛隊の派兵を占領米軍支援のために強行するようなことになれば、我が国とイスラム諸国との友好関係に重大なひびが入ることは明らかです。

 小泉総理はこのような外交上の大問題をどのように考えているのですか。答弁を求めます。

 安保理決議一四八三号は、イラクの主権、領土保全を再確認し、イラク国民が自由にみずからの政治的将来を決定し、みずからの天然資源を管理する権利を強調しています。そのためには、イラク国内の治安の回復、イラク国民自身による新政府の早急な樹立、国連を中心とした本格的な復興支援、人道支援こそが必要です。

 イラク国内で治安の確保、健康や衛生、雇用の確保など人道支援に取り組んでいるUNDP、国連開発計画やユニセフ関係者らも共通して、治安対策では、地域の状況に精通している警察組織の確立が大事であり、軍隊の力は効果的な対策にならないと、我が党の調査団に語っています。

 今、我が国がなすべきことは、国連を中心とした人道復興支援を本格的に進めることであり、無法な戦争の継続としての軍事占領に自衛隊を派兵してこれに参加、加担することではありません。本法案の廃案を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 木島議員にお答えいたします。

 自衛隊の派遣と憲法九条との関係についてでございます。
 本法案に基づく自衛隊の活動は、武力の行使に当たるものではありません。我が国は、イラクに対して武力を行使していない非交戦国であり、本法案に基づく活動も、交戦権の行使に当たるものは含まれていないことから、憲法九条に反するものではありません。

 米英による違法なイラク攻撃を本法案によって合法化するのかとのお尋ねでございます。
 本法案は、国際社会全体の支持を得て多くの国が取り組んでいるイラクの復興に関し、我が国としても我が国にふさわしい貢献を行うためのものであります。

 なお、政府としては、米英によるイラク攻撃は、累次の安保理決議に合致した活動であり、違法なものとは考えておりません。

 米軍によるイラク占領の国際法上の合法性についてでございます。
 安保理決議一四八三は、占領国としての米英の関係国際法のもとでの特定の権限、責任及び義務を改めて確認した上で、実効的な施政を通じたイラク国民の福祉に関する権限等を付与しております。こうした点から、米軍等によるイラク占領は国際法に従って行われているものと考えます。

 イラクの現状に関する認識でございます。
 イラクでは、フセイン政権の残党による散発的、局地的な抵抗があるものの、戦闘は基本的に終了しているものと承知しております。

 こうした中で、連合暫定施政局が正常な市民生活の回復に努めているほか、年金や給与の支払い等を実施するなど、イラクの国民による統治への移行に向けた努力が行われているものと認識しております。

 非戦闘地域と自衛隊の安全についてでございます。
 本法案に基づく活動の区域を、いわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定するに際しては、我が国が独自に収集した情報や諸外国等から得た情報を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性なども含めて合理的に判断することが可能であると考えます。

 本法案に基づき活動する自衛隊員の安全確保については、政府全体として最大限の配慮を行ってまいります。

 自衛隊が携行する武器についてです。
 自衛隊が携行する武器については、実施する業務、現地の治安情勢等を勘案し、派遣される隊員の安全確保のために必要なものを基本計画において定めることになります。

 また、当該武器の使用については、現地の状況に応じ、法案の趣旨に従って適切に行うべきことは当然であります。

 武器の使用と武力の行使についてでございます。
 本法案に定める武器の使用は、自己または自己とともに現場に所在する一定の者の生命、身体の防衛を目的とするものであります。

 御指摘の不意の襲撃に対する反撃の場合を含めて、本法案が認める必要最小限の武器の使用は、憲法九条で禁止された武力の行使に当たるものではありません。

 自衛隊の活動内容と憲法九条です。
 本法案に基づく自衛隊の活動は、イラクの安全及び安定を回復するための活動を行う国連加盟国の軍隊に対する医療、輸送、建設等であり、それ自体、武力の行使に当たるものではありません。

 また、活動する地域をいわゆる非戦闘地域に限っていることなどから、他国による武力の行使との一体化の問題も生じません。

 さらに、我が国は、イラクに対して武力を行使しない非交戦国であり、これらの支援を行ったとしても占領行政そのものを行うことにはならず、憲法九条に反するものではありません。

 ジュネーブ諸条約、ハーグ陸戦規則の適用についてでございます。
 本法案に基づいて我が国が行う活動は、武力の行使に該当せず、また、いわゆる非戦闘地域で行われるため、我が国は、武力紛争の当事者とはなり得ません。さらに、我が国は、イラクを占領するものでもありません。

 したがって、本法案に基づく活動について、ジュネーブ諸条約及びハーグ陸戦規則は適用されないと考えます。

 我が国とイスラム諸国との外交上の問題です。
 我が国がイラク復興のため積極的な支援を行うこと自体がイスラム諸国との関係に悪影響を及ぼすとは考えておりません。しかしながら、無用な懸念や誤解を避けるために、これらの諸国に対しては、必要に応じ、この法律の趣旨、目的等を十分に説明し、理解を得たいと考えております。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 児玉健次君。
    〔児玉健次君登壇〕

児玉健次君 私は、日本共産党を代表して、テロ特措法の二年延長案について、小泉総理に質問します。(拍手)

 テロ特措法は、九・一一テロ攻撃の脅威を除去するとの名のもとにアメリカが開始した報復戦争に自衛隊を海外出動させる、憲法違反の法律です。

 第一に、報復戦争によってテロの土壌がなくなったのかという問題です。

 九・一一の後、ニューヨークで、アメリカの女性が、「ウオー イズ ノット ジ アンサー」、テロに対して戦争だけが答えではないと訴えている写真を、私は、テロ特措法案の特別委員会で、小泉総理、あなたに示し、戦争は憎悪と報復の連鎖を引き起こすと指摘したことを御記憶でしょう。

 アムネスティ・インターナショナルの事務局長は、アメリカが進めるテロとの戦争が世界をより危険にしたと表明しています。

 総理は今なお、アメリカの軍事力によってテロの土壌をなくせるというのですか。答弁を求めます。(拍手)

 第二に、テロ特措法のもとで自衛隊がどのような活動をしてきたのかという問題です。
 自衛隊派遣の基本計画には、米軍等に対する補給、輸送、捜索救助活動の実施が盛り込まれています。しかし、自衛隊がいつ、どこで、どのような活動を行ったのか、秘匿されています。活動の実態を国会にも国民にも明らかにしないまま法律を延長することは、絶対に許されません。(拍手)

 端的に聞きます。
 輸送では、自衛隊の航空機、艦船が米軍等の兵員、武器弾薬の輸送を行ったのか。行ったとすれば、いつ、何を、どこからどこへ輸送したのか、示していただきたい。

 捜索救助活動はどうか。待機態勢に入ったことがあるかも含め、示していただきたい。

 補給では、米軍などに燃料を二百五十一回、三十万八千キロリットルを補給したとしています。重大なことは、イラク攻撃に参加した米空母キティーホークへの給油です。

 政府は、テロ特措法では、九・一一テロの脅威を除去する任務の軍隊にしか給油できないと答弁してきました。今、防衛庁は、キティーホークはイラク攻撃任務と対テロ任務の双方に従事していた、自衛隊補給艦から直接給油していないなどと弁明しています。これでは、国民は納得しません。法律を踏み外した給油について、総理の責任ある答弁を求めます。

 第三に、アメリカのラムズフェルド国防長官は、五月一日、カブールで、アフガンは戦闘活動の場ではなくなったと述べ、在アフガン米軍のマクニール司令官は、来年夏までにアフガンから撤退すると表明しました。米軍が一年後には撤退するというのに、この法律を今なぜ二年間延長するのか、総理の明確な答弁を求めます。

 米軍は、イラクに重点を移し、アフガニスタンは他国軍隊に肩がわりさせる意向だといいます。総理はアメリカからどのような要請を受けているのか、明らかにしていただきたい。

 最後に、許すべからざる犯罪であるテロに対しては、司法と警察の国際的協力によって解決すべきであり、日本は、憲法九条を持つ国として、このことを基本に国際社会に貢献すべきであることを強調し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 児玉議員にお答えいたします。

 米国の軍事力によるテロの撲滅についてです。
 国際テロの根絶のためには、幅広い分野において、国際社会が緊密に協調して、あらゆる手段を講じることが重要であります。

 我が国としては、テロ対策特措法に基づく支援のほか、情報収集、テロ資金対策等について、諸外国との協力関係を強化しながら、引き続き主体的に取り組んでまいります。

 テロ対策特措法に基づく輸送についてです。
 テロ対策特措法に基づく協力支援活動として、海上自衛隊の輸送艦等が、本年二月から三月までの間に、タイからインド洋湾岸国まで、タイの建設用重機や人員の輸送を実施しております。

 また、航空自衛隊の輸送機等が、平成十三年以降、在日米軍基地間及びグアム方面等への米軍の人員及び物品の輸送を合計百八十九回実施しております。

 テロ対策特措法に基づく捜索救助活動についてです。
 捜索救助活動については、出動待機を含めて、現在までのところ、実施したことはありません。

 テロ対策特措法に基づく補給についてです。
 我が国の支援は、テロ対策特措法に基づくものであることが交換公文に明記される等、相手国との確認された信頼関係のもとに行われるものであり、我が国が提供した物品については、御指摘の例も含め、同法の目的に合致して適切に使用されているものと承知しております。

 テロ対策特措法を二年延長する理由についてです。
 九・一一同時多発テロによる国際テロの脅威は依然として深刻であり、テロとの闘いは、引き続き国際社会にとって大きな課題であります。このようなことを踏まえ、テロ対策特措法の延長が必要と判断したものであります。

 なお、米国政府とは連携を図っておりますが、政府としては、米軍が一年後にアフガニスタンから撤退するとの情報については承知しておりません。

 アフガニスタンに関する米国からの要請についてです。
 米国から具体的な要請は受けておりません。アフガニスタンとその周辺におけるテロの脅威に対処するための活動を継続する必要があり、自衛隊の支援は引き続き必要とされている旨の説明を受けています。

 我が国は、テロの脅威が依然深刻との認識のもと、今後とも、状況を見きわめて、我が国の活動のあり方につき主体的に判断してまいります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 金子哲夫君。

    〔金子哲夫君登壇〕
金子哲夫君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました政府提出のイラクにおける人道復興支援活動等の実施に関する特別措置法案について質問いたします。(拍手)

 まず最初に確認しておかなければならないことは、米英両国によるイラクへの武力攻撃は完全な国際法違反、国連憲章違反であったということであります。そして、米国がイラク攻撃を行う理由とした大量破壊兵器はいまだに見つからず、米英両国では、意図的な情報操作があったのではないかと深刻な問題になっています。

 そもそも、国連決議に基づかない武力行使は許されませんが、大量破壊兵器の脅威という大義すら不確かなものであったとすれば、イラク戦争には一片の正当性もなかったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)

 国際法に反する不当なイラク侵略・占領を肯定し、これに加担するこの法律は、そもそも前提からして認めることができません。また、このような米英軍のイラク攻撃にいち早く支持をした小泉首相の責任もまた重大と言わなければなりません。

 イラクの大量破壊兵器がいまだに発見されていないことをどうお考えですか。また、このまま発見されない場合のイラク戦争の正当性についてどう説明されるのですか。総理、はっきりとお答えください。

 大量破壊兵器はいずれ見つかるといった、あなたの希望的観測は聞き飽きました。また、大量破壊兵器疑惑がただの口実であり情報操作であったことがはっきりした場合、どのように責任をとられるおつもりか、はっきりと具体的にお答えください。

 私は、本法案のような拙速な立法を行うよりも、公正な査察の再開と真実の解明こそが優先されるべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。(拍手)

 さて、今回のイラク戦争の一番の被害者は、間違いなく、イラクの一般市民であります。長らく、フセイン政権の圧制のもとで苦しみ、今度は、米英軍の軍事攻撃とその後の軍事占領の中で苦しめられています。

 米英の攻撃の巻き添えや誤爆によって、さきの湾岸戦争を上回る三千人以上とも五千人以上とも言われる罪なき市民のとうとい命が奪われたのです。そして、多くの人々が傷つきました。我が党の現地調査団は、空爆で夫を奪われ、その後に子供を出産したという悲惨な女性の訴えを聞きました。

 国連決議なしの正当性のない攻撃であっただけでなく、大量破壊兵器保有そのものが証明されないとするなら、米英両国やその支持国は重大な責任を負うのは当然のことです。

 私は、復興支援より先にまず行うべきことは、このようなイラク国内の正確な被害調査を行い、すべての被害者に対する補償を行うことが必要だと考えています。

 特に、これらの犠牲者について、総理はどうお考えでしょうか。

 また、この無法なイラク戦争によって物理的にイラクの政府そのものをなくしてしまったのですから、この戦争によって奪われた罪なき民間人の犠牲者に対する米英や我が国の責任は重大だと考えます。このことをどうお考えか、あわせて総理にお尋ねいたします。

 本法案が根拠としている国連安保理決議一四八三は、加盟国に人道的支援とイラク復興を呼びかけたものです。決議は、自衛隊の派遣を求めるものではありません。医療や食糧援助、生活インフラの再建などの人道的支援こそが日本に最も求められている役割であり、国連決議の精神であると考えるべきであります。

 そのために、自衛隊の派遣ではなく、医療チームの派遣やNGOなどの協力を得て、真の意味でイラク国民の役に立つ復興支援を行うことが求められています。既に、NGOはイラク国内での支援活動を開始し、成果を上げています。

 自衛隊の派遣に固執するためのこの法案は、国連決議や国際貢献を名目にしながら、ブーツ・オン・ザ・グラウンドという米国からの要求にこたえ、対米軍事支援を行うことが目的であることは明らかであります。

 イラクでは、いまだ新たな政権樹立の見込みすら立たず、米英軍の占領状況にあります。ここに自衛隊を派遣するということは、占領行政への参画にほかなりません。相手国の領土、そこにおける占領行政などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えられるので認められないとしてきたこれまでの政府見解にも真っ向から反するものであります。

 なぜ、あえて憲法に違反してまで自衛隊を送る必要があるのか、明快にお答えいただきたいと思います。

 イラク特措法による自衛隊の活動地域は、テロ特措法と同様、非戦闘地域に限定されるとのことであります。しかし、主に海上での補給、輸送を想定したテロ特措法とは異なり、陸上が中心となるイラクでの活動に際して、非戦闘地域と戦闘地域の線引きは事実上不可能であります。

 イラクでは、いまだに散発的な戦闘が続き、米軍も、イラク全土はまだ戦闘地域としており、さらに今後、武装組織の反乱が拡大するおそれも指摘されています。

 現実に、イラクは全土が戦闘地域であり、自衛隊の活動を非戦闘地域に限るというイラク特措法の前提は机上の空論にすぎないのではないでしょうか。石破防衛庁長官は、戦闘行為を、国や国に準ずる組織による組織的、計画的な武力の行使と説明され、治安の悪化は戦闘ではなく、フセイン政権崩壊後のイラクには戦闘地域はないと説明されていますが、まさにへ理屈であり、全くの詭弁であります。

 政府は本当に現状のイラクで戦闘地域と非戦闘地域の区分けが可能だと考えているのでしょうか。

 また、政府はどのような調査に基づいて判断しようとされているのでしょうか。現在のイラクは米英の占領状況にあり、すべての情報を両国が把握しているのですから、我が国が主体性を持って判断することは到底できないはずであります。またもや米国の情報をうのみにされようとするのでしょうか。明快にお答えください。

 次に、本法によって派遣される自衛隊の活動は、イラクの治安維持に当たる米軍に対する補給、輸送などの後方支援が中心になると予想されています。

 しかし、武器弾薬の輸送は武力行使と一体と言わざるを得ず、米英軍を敵視する勢力が両者を区分けしてくれるとは考えられません。実際に、補給部隊がねらい撃ちにされるケースが現在も相次いでおり、武装した米兵を輸送する自衛隊が襲撃される可能性は極めて大きいと考えられます。

 武器弾薬の陸上輸送は、まさに補給部隊の役割にほかならず、憲法の禁止する武力行使との一体化そのものであります。自衛隊員が輸送する米兵とともに反撃すれば集団的自衛権の行使に当たると考えられ、絶対に反対であります。

 さて、イラクの情勢が極めて危険であることから、派遣する自衛隊に適用する武器使用基準の緩和を求める声がありました。任務を妨害する相手への威嚇射撃などを認めた国際基準に武器使用基準を改めることは、憲法が禁じている海外での武力行使に直結するものであり、断じて認められません。

 今回、イラク特措法がそこまで踏み込まなかったことは賢明でしたが、こうした議論が何の抵抗もなく政府内で議論されること自体が問題であります。平和憲法をどう考えているのでしょうか。仮に、イラクの情勢が従来の武器使用基準では対応できないものだとすれば、そのような地域へ自衛隊を派遣すること自体が問題なのであり、危険だから基準を緩和するという発想は本末転倒も甚だしいと言わざるを得ません。

 武器使用基準の見直しを行わないかわりに無反動砲などの重火器を携行する方針とも伝えられておりますが、イラクがそれほど危険であるというなら、そもそも、自衛隊が行くべきではないのであります。使用装備の内容という重大な問題を基本計画にゆだね、安易に携行武器を強化することにも断じて反対であります。

 重火器を持たなければみずからの安全を守れないほど、イラクの情勢は危険なのでしょうか。であるなら、そもそも、自衛隊は派遣できないはずであります。御見解をお伺いいたします。

 次に、国会の関与の問題です。
 イラク特措法に基づく自衛隊の派兵は、国会の事前承認が義務づけられておらず、原則二十日以内の事後承認でよいとされています。

 周辺事態法ですら原則事前承認であることを考えれば、緊急性の全くないイラクへの派兵が事後承認とされるということは到底理解できません。事後承認とする理由をはっきりとお示しください。

 イラク戦争では、多数のクラスター爆弾、劣化ウラン弾などの非人道的兵器が使用されました。特に劣化ウラン弾は、その被害が長期にわたって続き、子供たちに集中的に被害が出る非人道的な兵器であります。

 湾岸戦争時よりも大量の劣化ウラン弾が使用されたと言われています。どのような形であれ、イラクの復興支援活動を進めるために今必要なことは、残留放射能の測定など、劣化ウラン弾が使用された実態をしっかり調査し、復興支援活動時における二次被害を防止する措置を講ずることが必要だと考えていますが、どのような対策をお考えでしょうか。お伺いします。

 この問題では、イラクで支援活動を続けるNGOからも危惧と不安の声が出されていることをあわせて指摘しておきます。

 イラク国内では、既に、さきの湾岸戦争時に米軍が使用した劣化ウラン弾によって深刻な被害が、特に子供たちに出ています。私は、この劣化ウラン弾による被害者に対する救援活動こそ、被爆者治療の経験と知識を持つ我が国が行うべき最大のイラク支援活動でなければならないと考えています。(拍手)

 さらに、今次戦争に使用された劣化ウラン弾によって、今後ますます被害が深刻化することが危惧されています。

 このような劣化ウラン弾による被害について、どのようにお考えでしょうか。また、日本政府としてこの劣化ウラン弾問題にどのように支援を行おうとしているのか、明確にお答えください。

 大量破壊兵器に関する不確かな疑惑に基づいて、非人道的兵器を大量に使用し、何の罪もない子供たちを長期にわたってむしばんでいく米英のイラク攻撃は、断じて許されるものではありません。こうした実態からも、最も必要とされるのは医療や食糧援助などの人道支援であり、米国の顔色だけをうかがい、イラクの困難を口実に、とにかく自衛隊の派遣ありきとする本法案は、イラク国民からも歓迎されるはずがありません。

 私は、広島の出身です。一発の原子爆弾で一瞬にして廃墟と化した広島の町から、平和の願いを届けるために国会に来ました。広島の原爆犠牲者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。

 今、この誓いを破り、憲法を無視して、自衛隊が次々と海外に派兵されようとしています。私は、絶対にこれを認めることはできません。再び過ちを繰り返してはならないからであります。私は、そのことこそが、今ここにいるすべての政治家の責任であると考えています。そのことを申し上げ、社会民主党・市民連合としての代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 金子議員にお答えいたします。

 イラクの大量破壊兵器についてです。
 イラクには多くの大量破壊兵器に関する疑惑があり、査察への非協力を初め、イラクが関連安保理決議の重大な違反を起こしてきたことについては、国連の査察団による累次の報告を通じて明らかにされていたとおりであります。

 現在、米軍等が大量破壊兵器を捜索しており、我が国としてもこれを注視していく考えであります。

 復興支援の法整備よりも公正な査察の再開を優先すべきとのお尋ねです。
 イラクの大量破壊兵器の廃棄を確認することは、我が国を含む国際社会全体の問題であり、国連査察団の活動再開については、安保理における議論を含め、今後の動向を注視しているところであります。

 他方、イラクの復興も、国際社会にとって重要かつ喫緊な課題であり、本法案は、我が国としてふさわしい貢献を行うために必要なものであります。

 イラクの被害調査及び犠牲者に対する責任についてです。
 我が国は、そもそも武力行使の当事国ではなく、賠償を含む犠牲者に対する責任を有しておりません。

 なお、被害調査については、イラクの再建に向け、国際機関等が復興のためのいろいろな調査を実施しているところであります。

 自衛隊の派遣と憲法の関係についてです。
 我が国は、イラクに対して武力を行使していない非交戦国であり、本法案に基づく活動も、交戦権の行使に当たるものは含まれておりませんから、憲法に違反するものではありません。

 戦闘地域と非戦闘地域の区分けについてです。
 政府としては、みずから現地の状況を幅広く調査するとともに、諸外国等から得た情報を総合的に分析することにより、本法案に基づく活動の区域をいわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定することは可能であると考えております。

 自衛隊が携行する武器についてです。
 自衛隊が携行する武器については、実施する業務、現地の治安情勢等を勘案し、派遣される隊員の安全確保のために必要なものを基本計画において定めることになります。また、当該武器の使用については、現地の状況に応じ、法案の趣旨に従って適切に行うべきことは当然であります。

 国会の承認についてです。
 本法案が成立すれば、イラクの復興支援のための自衛隊の派遣について、いわば国会の承認が得られたとみなし得ることに加え、迅速な派遣を目指す観点から、国会との関係については、事後承認を規定しているものであります。

 イラクにおける劣化ウラン弾の被害状況についてでございます。
 劣化ウラン弾の影響については、国際機関等による調査が行われております。例えば世界保健機関がコソボで行った調査報告は、人体及び環境に対する影響はほとんどないとの内容でしたが、確定的な結論が出されているとは承知しておりません。

 我が国としては、今後の調査の動向を引き続き注視していく考えであります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 北川れん子君。

    〔北川れん子君登壇〕
北川れん子君 私は、ただいま議題となりましたいわゆるテロ対策特別措置法一部改正案について、社会民主党・市民連合を代表して、質問をいたします。(拍手)

 二〇〇一年九月の同時多発テロ後、ブッシュ政権は、ビンラディン氏が率いるテロ組織アルカイーダを犯人として、アルカイーダと関係の深いアフガニスタンのタリバン政権に対する軍事報復に踏み切りました。ブッシュ氏は、自国に対するテロを世界人類に対する攻撃と位置づけ、世界をテロとの闘いに協力せざるを得ない構造に巻き込んでいきました。

 社民党は、当初から、テロを厳しく糾弾すると同時に、アメリカの報復攻撃にも強く反対してきました。

 軍事力による報復は、新たな憎しみを生み、果てしない暴力の応酬を生むだけであります。テロはあくまで犯罪行為として司法の枠組みによって処罰されるべきものであり、軍事力による報復は何の解決にもなりません。

 必要なことは、テロと報復の悪の連鎖を断ち、その温床となっているグローバリズムがもたらした貧困や差別といった現実を改善することであり、そのための国際協力であったはずです。

 ブッシュ政権が軍事力を振りかざした結果、世界はテロの恐怖から逃れ、より安全になったと言えますか。今後、ブッシュ政権の一国大国主義による力の政策に対する反発が高まり、テロが一層広がるのではないかと危惧します。

 アメリカが新しい戦争と定義したテロとの闘いについて、本法成立後二年を経過しようとしている今のお考えを、まず最初に総理にお尋ねいたします。

 アフガニスタン攻撃に際して、小泉内閣は、自衛隊をアメリカの戦争に参加させるため、強引にテロ対策関連三法を成立させるという道を選択しました。今回延長しようというテロ対策特別措置法もその一つです。

 米軍の後方支援を行うことを可能としたテロ対策特措法は、まず武力行使ありきのブッシュ政権に追従し、同時に、自衛隊派兵まずありきの内容で、平和憲法の理念に真っ向から反する参戦法と言わざるを得ないものであります。

 政府がいかに言い繕ってみても、長い間積み上げてきた自衛隊に関する議論や最高規範たる憲法を踏みにじり、アジア諸国との友好関係や中東諸国との信頼関係を台なしにするものであったことは否定できません。

 同法の国会審議は、小泉総理自身が憲法との間にすき間があると認めざるを得ないほど矛盾に満ちたものとなり、政府側の答弁は、戦争参加の実態を覆い隠す、すりかえ、詭弁に終始しました。このような国の根幹にかかわる重大な内容の法案が、衆議院で実質五日間、参議院も四日間という驚くべき短期間の審議で強行採決されたのであります。

 時限立法である本法の期間を延長しようとしていらっしゃいますが、アメリカが五月一日に出した対テロ戦争の終結宣言との整合性をどう考えていらっしゃるのか。このような時期に、なぜ今、延長する必要があるのでしょうか。また、具体的にどうなったらこの法律は効力を失うのかもあわせてお答えください。

 イージス艦まで派遣して自衛隊を無料のガソリンスタンドとすることが本当に必要なのでしょうか。日本がテロの根絶のために果たすべき役割、平和国家としての理念に即した役割がほかにあるのではないかと総理はお考えにならないのでしょうか。お尋ねいたします。

 アフガニスタンでは、タリバン政権の崩壊後も、日本から給油された米軍機による空爆が続き、罪のない人々が巻き添えや誤爆で亡くなっています。一体、これがどうしてテロの根絶につながるのでしょうか。私には全く理解ができないのであります。

 最後にお伺いいたしますが、日本が支援しているアメリカの軍事行動によって現実に一般の方が犠牲になっている中で、総理は何の責任もないとお考えなのでしょうか。具体的に何らかの対応、補償をされるおつもりなのか、お聞かせください。

 ブッシュ政権の力の政策によって安易に軍事力に依存する風潮が世界に蔓延し、しかも、日本は先頭を切ってアメリカに追随している国として世界からも認識されています。私は、早期にこうした姿勢を転換し、平和憲法を持つ日本として武力に頼らない道を進むべきであるということを改めて訴え、社会民主党・市民連合としての代表質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 北川議員にお答えいたします。

 テロとの闘いについてです。
 米国同時多発テロ以降、テロの根絶に向け国際社会は緊密に協力しており、多くのアルカーイダ構成員の拘束等、一定の成果を上げていると認識しております。

 国際テロの根絶のためには、国際社会が幅広い分野で息の長い取り組みを行うことが重要であり、我が国としては、諸外国との協力関係を強化しながら、引き続き主体的に取り組んでまいります。

 テロ対策特措法の延長についてです。
 九・一一同時多発テロによる国際テロの脅威は依然として深刻であり、テロとの闘いは、国際社会にとって大きな課題であります。このようなことを踏まえ、テロ対策特措法の延長が必要と判断したものであります。

 また、我が国によるアフガニスタンの人道復興支援の措置などと相まって、テロ対策特措法に基づく給油活動も、国際テロの根絶に向けた国際社会の取り組みに寄与しているものと考えます。

 テロ対策特措法の失効時期に関するお尋ねです。
 テロ対策特措法は、九・一一同時多発テロによる国際テロの脅威を除去することを目的としております。したがって、かかる脅威が除去されれば、対応措置を実施する必要性を失い、廃止されるものと考えます。

 なお、五月一日の米国大統領の演説等では、対テロ戦争が継続している旨が述べられているものと承知しております。

 米軍の軍事行動による犠牲者に関するお尋ねです。
 米軍等による爆撃により民間人に死傷者が出ていることは遺憾なことでありますが、我が国は、アフガニスタンを空爆する米軍機に給油を行ったことはありません。

 その上で、テロ対策特措法に基づく我が国の活動は、世界の人々が希求するテロの撲滅という目的に資するためのものであると考えます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。


2003/06/24

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