2003年7月9日 |
156 参議院・外交防衛委員会、内閣委員会連合審査会−(3)
イラク復興支援特別措置法案について
質問者=山本保(公明)、緒方靖夫(共産)、広野ただし(自由)、大田昌秀(社民)、黒岩宇洋(無所属)
平成十五年七月九日(水曜日)
○山本保君 公明党の山本保です。
私も先日、与党の調査団の一員としてイラクに行かせていただきまして、そこで見聞きしたことを基本に置きながら議論をしたいと思っております。
最初に少し感想めいたことを申し上げますと、見ました町の、いわゆる戦後とか敗戦後、終戦後というイメージというのは本当に一部の官庁街に限られておりまして、民衆の、普通の方の住んでいる住宅地でありますとか商店街、ほとんど変わっておりません。また、農村の方も変わっておりません。
ただ、問題は、その被害というよりは、正に、今日もお話ありましたように、この二十年、失われた二十年ですか、その間の独裁者の正に無策ということで、都市部は下水道、電気などはもう完全に疲弊しておりますし、また農村部につきましても、私はイラクは初めてですが、三十年ほど前にインドの田舎の方を回ったことがあるんですが、それなどと比べましても本当にまだまだ後れているな、水たまりで洗濯をしている女性でありますとか水を頭に運んでいる姿も見えました。
こういうところを助けていくということが大事なんですが、帰ってきましたら、何か非常に、技術的と言っては失礼ですが、自衛隊を派遣することだけが何か非常に問題になっているということを感じましたので、最初に、今日は総理にまずちょっと、端的にお答えしていただきたいなと思っておりますのは、イラク支援ということの本義は、今日いろいろございましたが、まず、日本の外交の国是であります、基本であります国連中心主義、これに基づく国際協調、こういうことで、今回きちんとした決議も出ております。今、占領、事実上占領している人も、その決議の中で、きちんと位置付けられた決議があり、各国が協力しているわけですから、こういうものを当然また我が国としては基本として守っていかなきゃいけない。また第二番目には、これはもう平和主義でありまして、そしてこの中に中東の安定ですとか、様々な日本の国益ということも関係しますし、またあの地域の方たちにもっと幸せな生活を保障するように私たちも応援していく、こういうことが大事だと思っております。
そういう議論の中でちょっと気になっておりますのは、自衛隊というようなこういう実力部隊が行くということは、大きな支援全体の中での当然最初の段階での、治安がまだまだ不確定なわけですから、そういう段階での仕事に当然限定されるだろうと思うわけです。この法案はもちろんそのことを決めている法案ですからそこだけを書いてあるんですが、よく読んでみますと、二十条のところにはそれ以外にも、その後のイラクの復興支援、そのイラク国民の努力に協力をするということも書いてあるわけでありまして、私は国民の皆様に分かっていただくためには、まずこれから、もっと長期的な、より長期的なイラクの復興支援というよりも、復興というよりも、もう私はイラクの国づくり支援だという気がするわけです。こういうものを全部出して、もちろんこれからやっていくわけですけれども、大きなその全体像の中で自衛隊はこの限定的な仕事をするんですよと、こういう説明をされれば理解されるんではないかなと思うわけです。
そういうものを自分でも考えてみようと思ったんですがなかなか力がありませんので、今日はその担当の副大臣にも来ていただいて、その中の幾つかの分野について具体的に、夢のようなことになるかもしれませんが、こんなことをこれからやっていったらどうだろうかということについてお話を伺いたいと思っております。
最初に、今の申し上げたことについて総理から、自衛隊の仕事というのは非常に限定的である、また今後そういうより長期的なものが必要であると、こういう私の意見について御所見をお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 先日、山本議員からイラク調査に自ら行かれたお話も聞かせていただきましたし、その際、御自身が撮られたビデオで現地の状況等も拝見させていただきました。
自衛隊ができること、各方面においてあると思います。もちろん自衛隊でなくてもできることもあると。こういう中で具体的にどのような活動を行っていくかということについては、正に国際協調、これはもう国連で全面賛同の上でこのイラク復興支援が決議採択されたわけですから、その加盟国はその要請にこたえるという点で、今、日本でもできることはやろうということでこの法案を提出しているわけであります。そういう点から考えれば、戦後一貫した日米協調と国際協調の重要性を両立させる、そういう方針に合致した私は法案だと思っております。
復興支援、分かりやすく言えばイラクの国の国づくりですね、国づくり支援。こういうことに対して、これから現地調査も法案成立後いたします、各国とも連携してまいります。そういう中において、私は、今までの自衛隊の海外における活躍ぶり、またそれによって得た経験、そういうものを生かして、このイラク国民が真に必要なものに対して自衛隊なり政府職員なり民間人がどうやっていくかということを総合的に考えていく必要があると思いまして、自衛隊が行くから戦闘行為に参加するというのはとんでもない誤解である。むしろ、戦闘行為でない、武力行使でない国づくり支援にすべての国民が関心を持ってやっていきたい、自衛隊でもできることならやってもらおうという趣旨がこの法案の本旨だということを是非とも御理解いただきたいと思います。
○山本保君 私も全くそのとおりだと思っておりますので。
では、その中で、いろいろもう全部は、主な分野について、まず外務大臣に、今日まだ議論になっておりませんが、これは当然、イラク国民が自主的に自分たちの政府を作りその国を作っていくということを前提として助けなくてはならないと思いますが、なかなか現地でも、実は行きましたら、当初の予定よりは時間が掛かるんじゃないかということも聞いておるんですけれども、外務省として、現地のイラク政府、政権といいますか、こういうものの成立の見通しというものはどのように今考えられておられるのかということを最初にお聞きいたします。
○国務大臣(川口順子君) 当局というのは、イラク人の手で政府ができるまでの間施政を行うということでございますけれども、そのイラクの見通し、新しい政府の見通しですが、今月の三日にブレマー行政官がイラク人、イラクの国民に対してのメッセージを出しました。その中で、今後二週間以内にイラク統治評議会、これを設立をして、その後すぐにイラクの新憲法を起草する過程を開始をする、新憲法が承認をされた時点でイラクの新政府がイラクの初めての民主的、自由かつ公正な選挙により選ばれることになり、その時点で連合国の仕事は終わることとなるということを言ったと承知をいたしております。
新政府の成立の時期という意味では明らかではございませんけれども、我が国としては、イラク人の手によるイラク人のためのイラクの政府が早期に成立をするということを望んでいるわけでございます。
○山本保君 アフガンが今なかなか大変なようでありますけれども、イラクはそうならないようにしてほしいと思っておりますし、このIIAというんですか、なかなか、そういうものができた段階にそうするとこういう実際上の武力というのは、一遍になくなるというものじゃないでしょうけれども、当然徐々になくなっていくだろうなという気もします。
それで、これはちょっとお願いでございます。
先ほど若林委員の方からもお話があったことと同じことを、既にお聞きしております。今度の十月の支援国会議でございますね。一つは、それまでに何か非常にニーズアセスメントの調査があって、これには是非日本も参加していただきたいなということをちょっとお願いと、それから、先ほどのように、アメリカ、EU、アラブ首長国連邦、そして日本と、こうなりますと、アラブ首長国連邦が一番近いとはいえ、いろんな状況から見て私は日本というのは、アメリカも、EUもいろんな意見があるでしょうし、是非次の、この次の段階ぐらいにはこの役割を主体的に担っていくのが大事じゃないかなと思いますので、これはお聞きしませんけれども、お願いをしておきます。
次に、経済産業副大臣おいででございますので、正にこの国は石油という点で日本と結び付いているわけであります。ところが、何か聞きますと、最近は大変その関係も薄くなっているということだそうでありますけれども、これはもう少し安定した後に、この経済関係で当然両国が協力し合っていくということが必要であると、重要であると思いますけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
○副大臣(西川太一郎君) 先生御指摘のとおり、九一年から、湾岸戦争後の国連の経済制裁に伴いまして、経済関係は薄くなったということは御指摘のとおりであります。しかしながら、七〇年代から八〇年代にかけまして大変活発な経済交流がございました。特に一九七九年は、日本からイラクに対しまする輸出はイラクの全輸入の四分の一に当たるぐらい活発に経済関係がございました。
そして、このたび私どもは、政府の身分を、政府職員ということにして民間の方を我が省の職員とともにバスラに赴かせておりまして、特にその中では、テレビのリハビリにつきましては、大変な圧倒的な、八〇%を超える地域をカバーする日本のインフラ整備がかつてあったわけでありますので、そういう経験やノウハウを生かしまして、活発にリハビリに努めていきたいと思っております。
今後は、暫定政権ができまして落ち着きましたら活発な経済交流が望めますので、当省としても全力で御支援をしていきたいと、このように考えております。
○山本保君 それで、次の今度は問題でございます。
行きまして最初、本当に私も、先ほど阿部委員からお話があったように、もう一面の地平線を見ておりましたら、そこに水が光っておりまして、こんな大きな川や海があるじゃないかと。一緒に車に乗っていた三人でそうだそうだ、どうなっているんだろうと、全くだまされておりまして、そういう要するに山がない本当の砂漠でございました。
当初、これを全部緑化してすごいサトウキビ畑でもできないだろうかなんてことを考えたわけですが、その後、生活とかそういうものを見たりしておりまして、ややそういう形、大かんがいをして水を引いてというようなものだとか、又は電力にしましても、大発電所を造って全国に送電線を回すというような、これはコストとしては安いんでしょうけれども、こういう形の開発というものをイラクで行うのではなくて、持続可能な開発というんですか、今正に地球環境でありますとか、又はその地域の文化というものを重要視し、あそこの地域はもう正にメソポタミアのときからオアシスをどのように作っていくのかという形でやってきたわけですから、こういうことから私は環境省の仕事というふうに聞きまして、こういうところにそういう技術面の応援をすべきではないかと思っておりますけれども、環境副大臣にその辺についてお聞きします。
○副大臣(弘友和夫君) 我が国の途上国に対する環境協力につきましては、既にODA等の事業で、例えば植林、砂漠化防止だとか、また先ほどお話が出ておりました水の給排水の対策だとか地球温暖化対策、そしてまた自然保護対策など、既に多くの実績を有しておりまして、そしてまたそれに対する十分な技術力も持っております。
今お話しのように、復興後のイラクに安定政権が成立した暁にどういう環境協力ができるのかということでございまして、今、熱風の中を委員がずっと視察されたということで、そういうことで、石油もありますけれども、太陽も一杯でございますので太陽発電だとか、それからまた今基礎的なトイレ等の衛生施設にアクセスしていないのは二十四億人世界にいるという、そういう浄化槽だとかいろいろなそういう水の処理の問題だとかいう生活に密着した支援も考えられるんじゃないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、今から関係省庁の皆様と話し合って、どういう要望があるのかということで今後検討していきたいというふうに考えております。
以上でございます。
○山本保君 本当に暑いというのを、初めて五十度の熱風というのを、五十度までいっていなかったそうで、もっと暑くなるというふうに言われましたが、木陰に入った方が暑いというぐらいの、正にああいう分厚いものをかぶっておられる方が自分の体温の方が低いわけで涼しいということが分かりました。特に環境省、大臣、副大臣を中心に、今までの公共事業型で全部水を作って下水をするというよりは、地域地域又は各戸ごとに処理していこうという合併浄化槽ですか、そういうのをやっておるということを私聞いておりまして、その発想で、ああ、ああいう地域についてはそういう形の支援がいいのかなと思って、ちょっとお聞きしたわけでございます。なかなか先が見えるんじゃないかと思っておりまして。
次に、外務大臣にお話を伺います。
私は専門が子供のことでございますので、子供の写真も撮りたかったんですが、今回は遠慮して、見るだけ一生懸命見てきたつもりです。学校がありまして、朝早く我々も六時に出発をしていきましたら、まだ七時過ぎの学校始まっていないのに、その門の前に子供たちがたくさん始まるのを待っている姿とか、またちょっと、夕方近く学校が終わって出てくる。実は、今ちょうど試験をやっている最中だというふうに聞いていまして、イラクの国は毎学年ごと試験があるんですね。本来なら夏休みのところを、もうこのことがありましたので遅らせてもやるんだと。その試験が終わった子供たちのさわやかな顔というのが、見ていまして我々の思っている教育とは違う、確かに子供たちに教育をしっかりしていただかなくちゃいけないと思っております。
それで、ちょっと今日持ってきましたのは、ユニセフが、もうお話で出ましたように、こういう子供たちの教育を一生懸命やっておられまして、日本のお金でユニセフがこれは簡単なスクールバッグ、まあかばんであります。(資料を示す)
こういうのを、こっちですね、もう今年の予算で四十万人分ですかね、これは面白いのは、ユニセフと書いて、こちらのあれですが、日本の、ジャパンと書いてあるところがなかなか我々がなるほどなと、こう感心したわけでありますけれども、こういうのも配られている。また、これはちょっと大き過ぎるので持ってこられませんが、スクールセット、学校セットとでも言うんですか、スクールインナーボックスと。八十人分の授業がそれがあればできるという教具・教材、黒板、そんなものを全部セットにしたものを、これも五百ケースぐらいですか、そんな、まだまだだと思うんですが、こんなこともやっておられると聞いておりまして、日本のユニセフに対する支援というのが大変進んでいると。世界でも一、二位とも聞いております。
この辺の現状と、これからの見通しについて、外務大臣、お願いします。
○国務大臣(川口順子君) まず、そのかばんのことでございますけれども、私たちは日本の顔が見える支援ということが大事だろうと思っています。したがいまして、そこにあるような日本のものであるということが分かるようにいろいろな、これは一例でございますけれども、現在努力をいたしております。
それで、ユニセフに対しましては、これは教育関係あるいは水関係で我が国は非常に大きな支援をしております。ちなみに、アフガニスタンにおいても、教育についてはバック・ツー・スクール・キャンペーンということでユニセフにやらせていただきましたが、ユニセフとの関係では、今アメリカが一番大きな拠出国でして、これは全体の二七%、そして二番目が我が日本でございまして、これが全体の一八%ということでございます。ユニセフには非常にこの点については感謝をされております。
今後も引き続き、我が国の発展の経験からしても教育は大変に重要でございますので、ユニセフに対して教育の面で、あるいは水も含めまして、支援をしていきたいと考えております。
○山本保君 もう一つ外務大臣に、私ども子供病院、国立の子供病院というところへ行きました。そうしましたら、立派な建物だったんですけれども、停電なんですか、エアコンは付いておりませんし、お母さん、子供たちでごった返しておりました。毎日何百人と来られるということも聞いておるんですけれども、ところが入口に汚水の流れが出たりして、余計その中通っていった方が危険だというような、危ないんじゃないか。それから、下町の方へ行きますと、もうそういうごみの山の中でヤギと一緒に子供たちが遊んでいたり、そして、そこの院長さんからは、薬がもうない、新生児が戦後もたくさん生まれているんだけれども、いわゆる予防接種もできない、ワクチンがない。これなどはなかなか温度の管理が必要であって、電気がないわけですからほとんどできない。また、運ぶにも危険があって、各センターが実は地域ごとに、バグダッドなんかは大都市ですから、あるそうですけれども、もうほとんど機能していないと。
こんなことも聞いておりまして、こういう部門にも是非、ユニセフを通じてだと思いますが、今後も、ひょっとして今度の自衛隊もできるかもしれませんけれども、この辺にも努力いただきたいと思いますが、外務大臣、一言お願いします。
○国務大臣(川口順子君) 下水があふれているところは写真やテレビで私も見ましたし、医薬品についても非常にニーズがあるというふうに考えております。医薬品についてはNGO経由での支援も行っておりますが、今後引き続き、いろいろな調査の結果を踏まえて、必要性が大きいところに出していきたいというふうに考えております。
○山本保君 それで、総理大臣にここでちょっと、まだほかにも分野があるわけです。今いろいろお話が出てきまして、大変多角的なところに正に戦略的に仕事を考えていかなくちゃいけない。復興の大使はおられるようでありますけれども、私は、こういう仕事はもちろん外務省、外務大臣に頑張っていただくというのが基本だと思いますけれども、これは今までの体制ではなかなか難しいんじゃないかななんということを素人的に考えまして、例えばアフガンとかイラクの担当大臣というのも急遽作られて、そして今話が出たような全面的な長期戦略というものを立てて、それを国民に発表していくという、そして実際細かいことはどんどん調整していかなくちゃいけないわけですから、そんなことはどうだろうかなという思い付きでございますけれども、いかがでございましょう。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 各国の国づくりに日本がどのようにかかわっていくかということについては、これからも十分国連機関とも相談しながらやるべきことと。そして、日本独自、人材の養成、あるいは実際の支援体制のこと、今検討しておりますが、アフガンでいえば例えば緒方さんみたいな方も日本人として非常に国際的な活躍をされている方でありまして、国連でも高く評価されております。今でも元気で、アフガン等の活動については積極的に自ら足を運んでいろいろ助言もしてくれております。
日本としても、外務大臣が行けない場合は副大臣とかあるいはそれぞれの担当の大臣で行く場合もありますし、あるいは特使という形で国会議員の方あるいはしかるべき人を出して、そのときに日本の支援が必要だということについてはそれぞれ考えております。
ただ、担当の大臣を置くかといいますと、例えばイラク担当大臣置くとそれじゃアフガン担当大臣も置かなきゃなくなっちゃうということで、なかなか難しいもので、その辺はよく状況を見ながら政府が一体となって取り組む必要があると思います。
○山本保君 正に、石油から始まってそして環境緑化、生活、民生、子供、教育全部という非常に重要な仕事でありますので、現地だけではなくて、政府内にそのことを、大臣はともかくとしまして、有機的、戦略的に行う頭脳が必要だなと、そういうことを感じましたので提案をさせていただきました。
では次に、この自衛隊の派遣について、私、今日は一点だけ、まず具体的に官房長官にお聞きいたします。
難しい問題かもしれませんが、実は私の支持者、支援者からもこれは是非一度聞いてくださいと言われていることなんでございます。それは、アメリカ軍が劣化ウラン弾というものを使ったというふうに言われておりまして、お聞きしますと、アメリカはイエスもノーも言っていないようであります。ただ、私も有名な軍事評論家などに聞きますと、その方は明らかにこれは使っているということも言われますし、そのことによって過去の戦争においてもそういう障害を持った子供さんが生まれたり兵隊さんがその影響を受けたりということも実際はあるんだと、いろいろ政治状況があるので明らかにしていない国もあるようであると。
問題は、これからのことでございますが、ただ、自衛隊の方が行かれるときにそういうものがもしあれば、これはまずその方たちの命なり健康に大変な害があるかもしれません。この辺の調査というものはきちんとしていただきたいと思っておりますし、当然、その結果についてはその住民の方にも知らせる必要もあるだろうなという気もするわけですが、官房長官、まずこの辺についてお伺いします。
○国務大臣(福田康夫君) 今、委員からおっしゃられたとおり、正にこの劣化ウラン弾があるかもしれないという、そういう地域に我が自衛隊が行く、若しくは文民が行くと、こういう可能性があるわけですね。そういう意味で、このことについて我々としても大変関心は持っております。
そもそも劣化ウラン弾というのはこれはどういう健康被害を及ぼすのかといったようなことについて、国際機関等もいろいろと調査しております。しているんだけれども、まだよく分からないというのが実情のようでございます。
問題は、米軍が今回のイラクの軍事行動でもってその劣化ウラン弾使ったのかどうかと、こういったことにつきまして、じゃそれが明らかにされているかと申しますと、これは委員の御指摘のとおり、明らかにされていないんですよ。
このことについては、我が国も、我が政府も、米軍に問い合わせしております。問い合わせをしておりますが、今のところ回答はないというのが現状でございます。これは、専門家に聞きますと、米軍は軍事上のことでそういう実際の内容について明らかにしないのではないかというようなことも聞いておりますけれども、いずれにしても政府としては引き続き、これは我が方の安全問題ということもありますので、その照会をし、また米軍における検討の結果を知りたい、こんなふうに思っておるところでございます。引き続き検討を続けてまいりたいと思います。
○山本保君 ないということがはっきりしておればよろしいわけですが、分からないわけですからその準備も必要だろうと思いますし、また、今の調査についても、専門家の話ですと、もちろんここで使ったか使わないかというようなことは分からないにしても、正に制服を着た、軍服を着た人同士であれば、当然、簡単な鉄砲で撃つわけではありませんので、それなりの装備をした部隊の配置、こういうものは専門家同士で見れば大体想像が付くんだということも聞いておりますので、その辺を、全体を何も発表することはないかもしれません、少なくとも自衛隊が行かれるところについてはそれなりの準備をしていただきたいと思っております。
次に、この自衛隊の在り方といいますか、自衛隊の海外へ行くことについての少し議論、法律的な議論をしたいと思うんですが、こういうよその国が行っているのに後れてしまうということで、先ほどからもいわゆる自衛隊派遣の手続についての恒久法、一般法というような話が出ておりまして、私個人としてはまだまだ早いのかなという気もいたします。まだ、日本の皆様の状況を見てだと思うんですが。私、それより先にすべき、先といいますか並行でもいいんですが、一つそれは、今回勉強しましたら、自衛隊の仕事ということが自衛隊法に書いてある。それには本来業務ということで、正に我が国を防衛すると、侵略に対して防衛する、これがもちろん一番基本でありますが、それと並んで従たる任務として、これはもう我々、私たちもよく知っておりますように、災害派遣でありますとか、また先般も動き出したような海上警備でありますとか、こういうことが記されていると。
これが当然本務であると思うわけですけれども、本来業務ですが、そのほかに雑則というようなところ、若しくは今回のような時限立法の場合はそこまでもいかない、本体でもない、本法でもない、附則というところに、こういう海外へ、PKOもそうであります。ところが、その雑則のところを見ますとどういう仕事が書いてあるかといいますと、運動競技会に対する協力。これは具体的に何ですかといったら、箱根駅伝のときに応援しておりますとか、こういうお仕事と、正にこういう仕事と海外へ行く、行って平和構築を手伝おうという仕事が同じ、法律上同じであるというのは、どうもこれは納得できないわけでございます。
私は、これは憲法前文にきっちりもう、我々は「平和を維持し、専制と隷従、」云々と、こういう「地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と、非常に文学的表現ではありますが、しかし、世界を平和にするということが私どもの憲法の精神だと思いますので、これが自衛隊の本務の中にきちんと位置付かなければ駄目だと、これを先にきちんとしなければいけないんじゃないかと思うんですけれども、これについては、総理にでもいいですし、防衛庁長官でも構いません。じゃ、お願いいたします。
○国務大臣(福田康夫君) 自衛隊の活動というのは、これは本務というのがございまして、それで、それが自衛隊活動の大宗でございます。そういう大宗の外ではあるんだけれども、しかし、国際平和協力活動というのは、これは自衛隊の仕事としてかなり大きな地位を占めてきたと、こう思っております。特にPKO活動、これはもう十回以上海外でいろいろと活動をしているというそういう実績もございますし、またそれが大変評価されていると、国際的に評価されていると、こういうこともございますので、これは国際社会からも、日本の自衛隊というのは戦争ということでなくて国際平和協力に努力をする、そういう集団なんだという、そういう評価というものも定着してきているのではないかなと、こう思います。
ですから、そういう意味において、これを本務とするということも、これも私はいいと思うんですよ、いいと思うんですが、しかし、国際社会においてはいろいろな懸念もございますから、自衛隊が海外に行くときには一体何のために行くのかといったこの基本的な考え方、若しくは枠組み、若しくは理念といったものを明確にしなければいけないというように思っております。その上で、その上で自衛隊の活動を本務にするというのは順序としてよろしいのではないかと思います。
そういう意味で、昨年の十二月に国際平和協力懇談会の報告書にございます、明石レポートでございますが、これなども大いに参考になるのではないかなというように思っております。
○山本保君 では、防衛庁長官にこれに関連してお聞きします。
実は先般行きましたときに、イギリス軍の司令官、バスラで、それと私も、いろいろ御質問皆さんしているときにふっと気が付きまして、イギリス、そのときはイギリスとデンマークだったですか、の兵隊、幹部がいろいろ御説明、説明していただいて、非常にその時点では国民、住民とうまくやっているんだと聞きながら、あっ、そうか、こういう国はそういうことを、植民地もあったせいもあるかもしれませんが、海外で言葉も通じないようなところでもきちんと仕事をし、そして先ほど言ったようないろんな多難なところに接続させていくというような仕事をやっているんじゃないか。一方、振り返って、我が自衛隊というのを見ますと、海外で活動をするということは、全くこれは前提されてないんではないかという気がしました。ふっと気が付いたんです。
で、そうなりますと、例えば防衛大学校でありますとか幹部候補生の学校ですか、こういうところでどの程度そういう海外で、もちろん侵略するわけでは、今までは侵略ではないとか武力攻撃ではないという、ないというネガティブじゃなくて、こういうことをするんですよということをポジティブリストをきちんと書けばいいわけでありまして、そのための勉強をきちんとしていますかということでございます。防衛庁長官、どうでしょうか。
○国務大臣(石破茂君) 現在、私ども防衛大学校あるいは幹部学校におきまして、そういうような教育を施すべく努力をいたしておるところでございます。防衛大学校の人間文化学科におきまして、アジア、イスラム、ヨーロッパ、アメリカ等の各地域の言語、文化、国民性についての教育を行っております。また、各自衛隊の幹部学校におきまして、キリスト教、仏教、イスラム教等の価値観、文化等々について教えております。
これは本当に大事なことであって、私どものPKO、例えばPKOですね、カンボジアあるいはティモールあるいはゴラン高原において派遣をされております。先生も機会があれば是非御視察をいただきたいと思うのでありますけれども、行ってみて本当に、現地の人たちの生活、文化、言語、そういうものを一生懸命学んでいる。例えば、ティモールなぞというのはポルトガル語があってみたりテトゥン語というものがあったり、いろんな言葉があります。でも、やはりそのコミュニケーションというのは、現地の文化あるいは言語、きちんと知らなければ仕事はできない、そのことを隊員たちもよく存じております。
今後とも、御指摘を踏まえましてきちんとした理解に努めるようやってまいりたいと思いますし、十年間私どものPKOが国際社会から信頼のある部隊だというふうに言われますのは、そういうような努力をしてきたからだと思っております。今後とも御指導を賜りますようお願い申し上げます。
○山本保君 時間がなくなってきましたので、最後に総理に。今のことも関連するんですが、これも実はバグダッドで、向こうの司令官の方といいますか、OCPAでお話ししているときに質問をさせていただいたんですが、日本の自衛隊は戦わない戦力、戦争しない部隊ですよと、こういう部隊が今こちらに来ても役に立ちますか、ちょっと皮肉な質問をさせていただきましたら、その方が、いや、そんなことはよく知っている、もうコンバットは終わった、でもその仕事はあるんですよと、こう言われました。
そこで、このことは別として、私どもは平和憲法である、外国で戦うことはない、そしてその国の建設を手助けするんだ、このことをもっとイラク国民にきちんと知らせていくということが必要だと思います。是非この辺について努力していただきたいと思いますので、総理にそのことをお聞きして、質問を終わります。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今までイラクに対して自衛隊が現地に入って直接活動した経験がありませんので、今回法律が成立すれば、初めてイラク国民と直接接する機会もあり、またイラクの国づくりのために自衛隊の活躍する姿もイラク国民に見てもらえる機会もあるわけであります。
その際、先ほど御意見のありましたように、日本とイラクとは宗教も習慣も文化も違うんだから、よく行く前の教育活動、さらに行ってからのイラク国民との友好関係、そして理解を深める交流、そういう点にも十分配慮して、真に日本の自衛隊がイラクの復興支援、国づくりに活動しているんだということがよく理解し評価されるような活動ができるように、これから十分な配慮をしていきたいと思います。
○山本保君 ありがとうございました。終わります。
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。
私は、日本共産党のイラク調査団の団長として、先月半ばから一週間にわたりまして、衆議院の赤嶺政賢議員と、そして党国際局の森原公敏次長とともにイラク現地の調査を行いました。滞在中、連合暫定施政局、CPAの代表や、人道支援を進めているユニセフなどの三つの国際機関、国連の機関、NGO、在バグダッドのフランス、ドイツなど四か国の代理大使などと懇談いたしました。
それから、バグダッド以外に、そこから南東に二百十キロある町、クートというところ、それから南に百キロあるヒッラという町、そこにも訪問いたしまして、市民と懇談したり、また浄水場とかあるいは発電所などを視察いたしました。私は、昨年十月にやはりイラクに行っておりますので、その当時と今回と情勢がどう変わったか、国民の思いはどうかということ、それを比較できたのではないかな、そんなふうに思っている次第です。
私たちが訪問したときもそうだったんですけれども、その後も、連日イラクで米英兵がねらわれ犠牲になっているという事態があります。ブッシュ大統領がイラク戦争が終結した、そう宣言したわけですね、これは五月の一日。その後の事態は、とても戦争が終わったとは言えないような状況があると思うんですけれども、総理に伺います。イラクの現在の情勢をどうごらんになっておりますでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 主要な戦闘は終結したと思いますが、まだ戦後の混乱といいますか、イラク国民が生活基盤が整備されていないために不自由を被っている状況は依然として続いているなと思っております。
○緒方靖夫君 私は、イラクで見聞したこと、もちろん私は、その私の見たことはほんの一部ですから、それをこうだというふうに言うつもりは全くありません。しかし、私が見たままのことをちょっとお話ししたいと思うんですけれども、イラクで最大の問題は治安と言われております。占領している米軍に対する憎しみ、そんな感情がだんだん強まっていると。最初は本当に歓迎だったというんですよね、広い意味でいえば。しかし、だんだんそれが憎しみとか不満に変わっている。そして、フセインの残党などの標的、これが米英が標的にされている。そういう状況が生まれているというんですね。しかも、この勢力が国民から遊離しているのではない。ごく一部の勢力と必ずしも言い切れない。そこがやはり大変問題だと思うんですね。もちろん、イラク国民はアメリカに協力する人もいます。いろいろいます。しかし、概して国民が占領軍に不満、怒りを持つ、そういう背景があると思うんですね。
私、三つ挙げたいと思うんです。
一つ目、フセイン時代よりも暮らしが悪くなっているために、その不満、怒り、これが高まっていること。二つ目、イラクの人たちはあのメソポタミア文明の末裔で、中東みんな誇り高いですけれども、とりわけ誇りの高い人たちです。彼らにとってこの戦争が不当なものであって、何で外国の人たちが、そういう軍隊が自分たちの国に来たのか、その屈辱感とかあるいは重圧感、あるということですね。三つ目、米英軍のイスラム文明を無視した振る舞い、これは本当に怒りを呼んでいると思いました。
影響力を持つシーア派の指導者が、占領軍はイスラムの敵、反米闘争を宣言した、この影響は私は決して小さくないと思うんですね。占領軍が掃討作戦を強め、治安を強化すればするほど、国民の反発は強まる、そういう構造ができつつある、そういうことだと思います。
ちょうど私、先月十八日にバグダッドでイラク人の仕事よこせのデモ、集会に出くわしました。その状況どうだったかというと、米軍は戦車、装甲車で固めて完全武装して銃をイラクのデモ隊に向けている。大変緊張高まっておりました。また、私が滞在していたバグダッド市内のホテルでも、夜中に自動小銃の音ですね、パンパンパンという音、それが聞こえる、悲鳴も聞こえる、そういう状況がありました。
これが三週間前の話です。もちろん事態は、さっきお話ありましたけれども、変化していると思います。アメリカでも、この戦争、この状態について、泥沼化とかベトナム化とか、そういう言葉も出ているようですけれども、その点で、私は、イラクで国民と占領軍との矛盾が深まって、そして長期化、そういうことが言われていると思うんですけれども、そういうことはないでしょうか。どうごらんになっていますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、できるだけ早くイラク国民のための政府がイラク人によって形成され、よその国々がじかに軍隊等を派遣しなくても自らの力で立ち上がっていくような体制ができるように各国が協力していかなきゃならないと思っています。
また、御指摘の現状に対するイラク人の不満も私は理解できます。フセイン政権のときにそれは不安がなかったかというと、そうじゃないと思います。フセイン政権のときにはフセインに対する支持率一〇〇%でしょう。これは自発的な私は一〇〇%じゃないと思っています。圧政と専制と隷従による独裁政権だからこそ、あのようなフセイン政権支持率一〇〇%が国際社会に示されたと。あれを真に受けたらとんでもないことになる。現に、主要な戦闘が終結した後、フセインの銅像は引き倒されて、イラク国民も拍手喝采の場面も我々はテレビで見ております。
ですから、フセイン政権が崩壊して独裁体制が崩れて自由な生活ができるという安堵感と、かといってアメリカ軍に支配されるのは嫌だという、そういう気持ちもよく理解できます。しかしながら、今、それではアメリカがイラクから手を引いたら別の形でまた混乱が起こるでしょうね。そういう非常に難しい状況でもできるだけイラク人のイラク人によるイラク人のための政府を作ろうとすることで、今、CPA、暫定施政機関というものができている。これを、イランとアメリカとの戦争が始まる前から武力行使については意見の一致を見ませんでしたけれども、今回、イラク復興支援のためには国連安保理で全会一致でこの決議案が採択された。この決議案の中にも米英の施政当局に権限を与えることを認めているわけでありますので、そういう中での国連加盟国はイラク復興支援のためにそれぞれの力に見合った協力をしてほしいというのが国連決議の趣旨でありますので、日本としては当然、イラク国民は自分たちだけのための国づくりができないということに対する不満があると思いますけれども、日本としても国連の決議の要請に基づいて、私は、できるだけ、一日も早くイラク国民が自らの力で立ち上がるような生活基盤の整備なり復興支援のために手をかしていかなきゃならないなと思って今回法案を出しているわけです。
その際に、皆さん、野党の皆さん、特に共産党と我々政府との大きな違いは、自衛隊を派遣するなということと、自衛隊でも戦闘行為ではないんだから、復興支援なんだから自衛隊を派遣してもいいじゃないかと、この意見の違いはもうなかなかうずまらないと衆議院の議論の中でも私は感じました。これはもう見解の相違だから仕方ないけれども、自衛隊でも私は武力行使をしないでイラクの国づくりのために活躍できる分野は多々あると思っております。
○緒方靖夫君 そうじゃないんですよね。総理は国連決議をおっしゃられましたけれども、一四八三には、一番肝心なところはイラクの主権を尊重した国の再建、それだと思いますよ。そして同時に、軍隊を送れ、そうは書かれていない。私はこのことが非常に大事だと思うんですね。
私、質問しているイラクの情勢についてお答えがありませんでした、余り。私は、どんな状況かということについて一言述べたいんですけれども、私が訪問したクート、そこは一般の事務所に自動小銃が何丁も立て掛けられてあるんですね。イラク人は普通武器を持っていますよ。そして、イラクの抵抗勢力は戦車を破壊できるだけのロケット砲、そういう武器を持っている、重装備をしているわけですね。で、実際に使っている。ですから、先ほど総理が言われた用意周到な安全のために万全を取っている米兵が連日犠牲になっている、そういう状況があるわけですよ。
フセイン残党は、米側に立つ者は国籍を問わず、どこにいようと攻撃の対象にする、そう言っているんですね。実際、五日、米軍から訓練を受けている警察の方が、訓練を受けているイラク人警察官七名が殺害されました。イラク人でも例外ではない。しかも、ゲリラというものはどういうものでしょうか。仮に安全とされている地域を一夜にして危険な地域に変えてしまう。しかも、彼らは、地形、風土、国民の気分を熟知している。占領軍だけでなくて、それに味方する同盟軍は当然敵の直接の標的にされる。日本人も当然敵視される。私、イラクで、これまで日の丸を掲げていれば安全だった、しかし今、日の丸を出すとちょっとやばくなった、だからしまっている、そういう話さえ聞きました。
そうすると、自衛隊が仮に派遣されたら、自衛隊がひところ標的にされるという危険性、可能性、これはやはりイラクの現実から見て否定できないんじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 可能性を論ずれば、それは切りがないんです。それは、イラク人でさえも米英と協力すれば殺されると今言われたでしょう。そうしたら日本だけじゃないですよ。じゃ、自衛隊でなくて日本人だったら標的にされる可能性はあるかと言われれば、ないと言えないでしょう。そこまでいったら、もう神学論争じゃないけれども、一%でも可能性があれば、そうしたら、全部危険なところはあるといえばある、安全なところはないといえばない。そういう可能性の議論をすれば、私は切りがないと思うのであります。
その点はよく情報収集しながら、日本として自衛隊でも活躍できる分野があるんだと、そういうことを今後、法案が成立したらば、よく日本独自の調査と、国際関係との協力を得ながら調査して、日本として、民間人でできることは何か、またできる地域はどこか、政府職員ならどこか、自衛隊員ならどこがいいかということをよく十分見極めて、日本にふさわしい活動をしていかなきゃならないと思っております。
○緒方靖夫君 総理、違うんですよ。自衛隊を出すからそうなるんですよ。ですから、それをやめろと、そういうことを私は言っているんですよ。(発言する者あり)いや、違いますよ。日本人は、日本は、自衛隊を出すから日本人が標的にされるという、そういう問題なんですよ。
ですから、私は、そういう点でいうと、やはり私は今、イラクの現状、これはやはり非常に深刻だと思いますよ。深刻ですよ。総理が言われたような戦後の混乱、そんな程度の問題じゃない。そして、イラクの国民と占領軍の間の矛盾、これがだんだん深まる、そういう状況にあると思います。
そうした中で、私は、一つはイラクでは、私、国際赤十字の職員から聞きましたけれども、安全、危険な地域は刻々と変わる、それがイラクだ、そう言っていますよ。ですから、私は、そういう中でイラクに行ったら、一体、自衛隊が派遣されたら、一体どういうことになるのか、そのことをきちっと見る必要がある、このことを指摘しているわけです。
そして、私、ここでちょっと是非、提起したいことがあります。
それは、委員長に申し上げますけれども、先ほどから話を聞いていますと、やはりイラクの情勢、状態、実態、これはどうなっているのか。これがやはり非常に大きな問題で、やはり総理から話を聞いても、戦後の混乱、その程度しか言われない。
ですから、私は、委員会が責任を持って、国会が責任を持ってイラクに調査団を派遣する、そのぐらいのことを責任を持ってやる、このことが必要あると思います。このことを要求したいと思います。
○委員長(松村龍二君) 後日理事会にて検討いたします。
○緒方靖夫君 そこで、イラク国民が本当に願っていること、それはやはり暮らしを支援する援助だと思います。食糧、雇用、医療、教育など、問題は本当に山積みです。私は国連の関係者から様々な話を聞きました。国連開発計画、あるいは食糧計画、そして国連の開発計画のデュボワ所長が、今求められているのは巨大な規模で緊急に援助することだ、そういった言葉を述べましたけれども、大変印象的でした。
私は、その点で、やはりこうした支援、いずれも自衛隊でなければ貢献できないというものは一つもないんですよ。今求められているのは自衛隊による支援ではなくて、各分野の専門あるいは日本の特性を生かしたそういう支援、これをやることが一番大事。非軍事を前提とした大規模なそうした人道支援、復興支援、やるべきじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そうなんです、いろんな支援をやるべきなんです。
自衛隊が行くから軍事支援じゃないんです。自衛隊が非軍事活動をやるんです。そこをよく御理解いただきたいと思います。
○緒方靖夫君 あり得ない。
自衛隊が、いいですか、非軍事活動をする、人道活動をする、あり得ないですよ。同じ部隊が行って、一方で安全確保の活動をする、一方で人道支援の活動をする、そんなことは全くあり得ないと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 各国でやって……
○緒方靖夫君 私は、いや、あり得ないですよ。なぜあり得ないのか……(発言する者あり)あり得ないですよ、そんなことはあり得ないですよ。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 各国でたくさんやって……
○緒方靖夫君 私は、私はその点で強調したいのは、いいですか、非軍事を人道支援のやはり大原則としていく、このことが今本当に求められていると思います。
今イラクでは、今述べましたように、やはり占領軍に対する反感、これが強まっています。その下に入っていくわけですよ、もし送られたら、自衛隊が。そしてその下で、一方で治安維持、領土保全のための活動を正に連合軍司令部の支援として行うと。その同じ部隊、自衛隊が、自衛隊が片や人道支援をする。私は、こういうことをやること自身が、人道支援を行っているその自衛隊、この存在、正に連合軍の、占領軍の仲間と見られてターゲットになる、そういう可能性がある。これが今のイラクの現実ですよ。ですから、私は、自衛隊が行って非軍事、そういう活動をすればいい、それはとんでもないことで、それは成り立たない話なんです。
なぜ成り立たないか。私はそこで問いたいと思いますよ。総理は国際のルール、人道支援をする際に国連が決めているルール、それがあるわけですけれども、それは御存じですか。
○国務大臣(川口順子君) おっしゃっていらっしゃるのは、国連の関連の機関が人道支援をするときに、この間ルールを作りまして、それは拘束的なものではありませんけれども、三つのグループに分けて、直接人と相対するもの、それは例えば配給をするとか水を渡すとかそういうことですけれども。そのカテゴリーに対しては武装をしないで行うというルールを決めたということであるかと思います。
これは三つのカテゴリーに分かれておりまして、ほかの活動、例えば道路の支援、道路を直すとかほかのことをやっているときには、これは非武装というのは該当しない。それから、その非武装ということ自体、これは国連の組織全体がやっている安全確保のための努力、これを前提にしていると、そういうことであるということを申し上げておきます。
○緒方靖夫君 総理は御存じない。しかし、今、川口大臣が述べたことも大変不正確だと思います。
拘束力がないとおっしゃられました。確かにこれは、国連が行う人道支援は原則非軍事、そして直接支援を行うときには非武装にする、武器を持っている者も武器を持たない、武装解除して行う、そういう決まりなんですよ。
私、ここに最近決められたばかりのルール、ガイドライン、これを持ってまいりました。これはどういうものかといいますと、ちょうど今年の三月、イラク情勢、これをにらんで、大変危険なことが起こるかもしれない、そういう状況の下で、実は今年三月に改訂の準備をして、そして実際に先月の二十六日に改訂版が確定した、そういうものです。
起草委員会にはアメリカ、イギリス、フランスなど、また国連三機関も入っております。そして、この改訂作業には日本も含めて、入っていますでしょう、日本、それからNATO、そういう機関が入っております。
そして、ここで核心を成す一番の中心的な原則、三つあります。人道、中立、公平、この三つですよ。そして、その中で特に強調されているのが中立の立場を守ること。どう書かれているかというと、人道支援は政治、宗教、イデオロギー上の紛争で敵対行動やどちらかに味方することなく行わなければならない、そう書かれているわけです。つまり、紛争の一方の当事者とか、関係しているとか、あるいは支援をしているとか、そういうものが本来、人道支援の活動をすべきではない、このことを定めているわけです。
ですから、そういう原則、これ、私、非常に大事だと思うんですけれども、そういう原則がなぜ定められているのか。どうなんですか。
○国務大臣(川口順子君) これは先ほど申し上げたように三つのカテゴリーに分かれているうちの、直接受益者と相対して水を配る、食料を配るということだけですが、間接は異なった取決めになっておりまして、例えばその支援要員の輸送とか物資の輸送とか、そういうことについてはこれとは別なカテゴリーで武装をしていいと、武装を認めているということになっております。
それで、全く、直接相対して配る場合という場合も、全く安全性に配慮をしていないということではなくて、これは国連の人道支援機関が供給、供給といいますか、やっている安全措置に依存をするということとされていると、そういうガイドラインでございます。
○緒方靖夫君 人道支援がなぜ軍との関与について非常に神経質になっているのか、これには歴史があるんですよ。九〇年代の初めから軍隊がいろいろやる中で、入り込む中で人道支援が遅れる、そういう問題が起きてきて、そこできっちり軍についてそれを規制する、参加とかあるいは関与を規制する、そういう方向を作ったわけですよ。そして、イラクの問題についてもこういう方向が作られた。ですから、原則、今三つのカテゴリーたしかありますけれども、原則非軍事で行う、これが国連の原理原則なんですよ。
そして、特にその中では中立の立場を侵すことになる軍、部隊による人道支援、これについては支援従事者が敵対者の直接の標的にされる、そこまで指摘しているわけです。つまり、中立の立場でない自衛隊は客観的に、指針で言うところの敵対者の直接の標的となり得るものであって、自衛隊と連携する支援従事者も同時に敵の標的にされる、そういうことになるわけですよ。ですから、直接のそういう攻撃対象になる。そうした軍による人道支援の参加、関与、これが国連人道支援の援助従事者、それを犠牲にしてしまう、そういうことを指摘しているわけですね。ですから、まあこういう問題がある。
さらに、支援従事者に加えて、援助を受ける側の被災民についても述べられているわけです。それは、被災民への支援のアクセスが断たれる、このことが指摘されております。例えば、人道支援に参加している自衛隊の部隊、敵の標的とされ、攻撃されるとします。指針は、経験からそういうことが起こり得ると指摘しているわけですけれども、そうしたとき、肝心な被災民に支援が届かなくなる。そしてさらに、問題は、その時点の緊急支援が断たれることだけでなく、その後その地域での人道支援も断たれる、そういう困難をもたらす、そうなっているわけですね。
ですから、私は、国連のこうしたこれまで積み上げられてきた人道支援でいろいろ苦労してきた、人道支援の従事者というのは大変危険を伴う、その中でどういうふうに身を守るのか、そのことが知恵として生まれてきている。
したがって、人道支援の分野で自衛隊がイラクに行って、そしてこれをやる、あれをやる、そのことが人道支援を進めている、実際に進めている人たちの活動を妨害することになるわけですよ。ですから……(発言する者あり)そうですよ、ですから、NGOの方々は言っているじゃないですか、もし私たちが活動を続けていて、自衛隊が来ると、そのために私たちの活動がやりにくくなると。(発言する者あり)それはそうですよ、それが現実なんです。ですから、私は、その国連の常識、これをきちっと踏まえていく、このことが私は非常に大事であると、そのことを主張します。
○国務大臣(川口順子君) 我が国の自衛隊も、それからよその国の軍隊も、人道支援の支援をイラクで行う人たちは、これはすべて国連の要請を受けて、一四八三の要請を受けて正に中立的な立場でこれを行うわけです。それが国連の要請であり、それが必要であるから国連が要請をしているわけです。
そういったことをやらない、あるいはやることは適切ではないというのは委員のお考えかもしれませんけれども、イラクの人々とそれから国際社会はそういうことをやるべきであると思っている、これが一四八三が全会一致で採択をされた理由であると思います。
○緒方靖夫君 違います。
なぜ違うのかというと、それは国連決議一四八三、これは軍隊を派遣せよ、軍隊の派遣を要請しているんじゃないんですよ。人道支援は当然ですよ。ですから、人道支援は当然やる、このことを主張しているわけですよ。しかし、大事なことは、軍隊がそうした派遣をしてほしい、援助を、軍隊による人道支援をしてほしい、そうしたことは書かれていないわけですよ。このことが非常に大事です。
そして、もう一つ、私は更に述べたいこと、それは指針が述べていること、それは同時にこういうことを述べていますよ。被災民が敵対者の直接の標的とされてしまうと。この危険性、これが軍隊が人道支援に参加する、そのことによって生まれるというんですね。今、川口大臣はCPAの下での云々云々と言われました。私、手元に資料を持っておりますけれども、CPAと、つまり連合暫定施政局と国連との間で相互関係についてのゼネラルガイダンスというものが作られております。そこには、人道支援の在り方として、原則として、やはり繰り返し、人道、そして中立、公平、この三つの原則が書かれているわけです。
ですから、これをやはり今のイラクの下で進めていく、これは当然なんですよ。国連の中で決められているこのガイダンス、人道支援、これを行う場合には原則非武装にする、そしてなるべく軍隊の関与を行わない、このことは非常に大きな教訓から得ているわけですね。
私は、国際赤十字の委員長のソマルガさんの論文を読みました。中立の基本目標、これを述べているんですけれども、それは目的として、すべての当事者の信頼を確保すること、二つ目にすべての被災者へのアクセスが妨げられないこと、このことを一番大事なこと、自分たちの経験を積み上げてきて一番大事なことというふうに指摘しているわけですよ。そして、その中で、この二つの基本目標を達成する、そのために一番大事なこと、それは紛争に関係していると解釈されるいかなる要素ともかかわり合いを持たない、そういう者がその支援活動に従事する、このことが決定的に大事だということを主張しているわけです。
このことから見ても、私は、今ここで議論されていること、そしてまたその中で政府が答弁されていること、自衛隊が出て人道支援を行います、そして可能なことはできるでしょう、私はそういうことというのは本当におかしいと思います。民間でできること、非軍事でできることはたくさんある、にもかかわらず自衛隊を出す。しかも、その自衛隊を出すということについては、国連のこの取決め、合意、議論され、日本政府も参加して作っているこのガイドラインの中にも、指針の中にも、原則人道支援の活動については、支援者もそして被災民も危うくなるから軍隊の関与はすべきではない、このことがはっきり書かれているわけですよ。ですから、そうした点で私は、自衛隊が人道支援のためにイラクに行く、これは私は、人道支援は民間で行っていく、それが当然だと考えるわけです。
そして、私はその中でもう一つ言っておきたいこと、それは、なぜ自衛隊が行って、そして一方で安全確保の支援を行う。連合軍の活動、これを支援する活動を行う、その一方で人道支援の活動を行う、このことが一体どんな事態をもたらすのか。それは、先ほども言ったようにイラクの事態が非常に証明していると思います。つまり、イラクの抵抗勢力から見れば、全部日本は敵にされてしまう、日本人であれば敵にされる、そういうことになるわけです。私は、そういう中ですべての日本人、オール日本が敵にされるそうした事態、あるいは日の丸を畳んでしまうような事態、こうしたことを決して繰り返してはならない、そういうふうに考えるわけです。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) なかなか変わった意見を紹介していただきまして、ありがとうございます。
国連の決議は、イラクの復興支援のために加盟国は軍隊を派遣するなとは言っていないんです。同時に、緒方議員指摘のとおりに、軍隊を派遣しろとも言っていないんです。国連加盟国はイラク復興のためにそれぞれの国のできることをやりなさいというのが国連決議の趣旨であります。にもかかわらず、軍隊派遣しろと言っていないのに、なぜ現に四十数か国も軍隊派遣してイラクに行っているんでしょうか。
それは、軍隊だからといっても戦争じゃないんです。イラクの復興支援のためなんです。自衛隊が行けばすぐ軍事行動か、武力行使かと。日本は憲法で武力行使を認めていないし、戦闘行為に参加することも認めないし、小泉内閣もそんなことをやろうとはまるっきり考えていません。自衛隊が海外派遣に今まで行って、東ティモールにおいてもカンボジアにおいても、その国の支援作りに汗をかいて高い評価を受けている。今回も、文民であろうとも政府職員であろうとも自衛隊であろうとも、イラクの復興、国づくりのためにできるだけのことをやろうというのが今回の趣旨でありまして、自衛隊がイラクに出ていくから戦争をしようという一方的なこじつけは是非ともやめていただきたい。
○委員長(松村龍二君) 質疑時間が参っておりますので、おまとめいただきたいと思います。
○緒方靖夫君 私は総理に申し上げたい。総理が今述べたこと、それは、日本政府の常識は世界の、国連の非常識だ、このことを私述べておきたいと思います。
これはやはりよく考えていただきたい。人道支援のためにはそうした原則をしっかり守っていく、このことが大事なんだ。そして同時に、何のために人道支援を持ち出すのか。それは私は、これはまじめな動機ではないと思います。世論が通りやすい、そういう形で、私は、正に米英占領軍の側に立って正にイラクに自衛隊を送る、これが目的である。したがって、私たち日本共産党は断固として廃案を求めていく、このことを表明して、質問を終わります。
○広野ただし君 自由党・無所属の会、国会改革連絡会の広野ただしです。
私は、実力部隊の自衛隊を海外に派遣をする、このときはやはり非常に抑制的に、また慎重でなければならないと、こういうふうにやっぱり考えております。そういう中で、今回海外に、イラクに派遣をする、そういう法律でありますけれども、特に国内の有事法制、国内の場合は、国内における国民の生命、財産にかかわる問題だし、人権にかかわる問題なんですね。しかし、海外に行くということになりますと、海外の諸国民にどんなことが起こるかは分からない、特に、歴史あるいは民族、宗教、そして文化というものが違う、そういう国の中でどういうことが起こるか分からない。ですから、やはり極めて慎重に考えなければならないと、こう思っているわけですが。
今度のこのイラクに自衛隊が派遣をされるということになると、英米軍、米英軍、米英占領軍への協力ということが非常に色濃く出るのではないかと、こう思いますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 米英軍とも協力していくし、国際機関とも協力していくし、日本独自としてもやることがあるし、あるいは他の国と一緒にやることもある、いろいろなイラクの復興支援の活動があると思います。
○広野ただし君 それで、私は、その占領軍への協力ということは、これはやはり非常に問題があると思うんです。特に日本の経験に照らして、日本は敗戦を、まあ残念ながら敗戦国ということになりまして、そういう中で、やはり占領されるということを正に経験として持っているわけですね。そしてまた、占領される前段階には、アメリカからはどんな目に遭うかもしれないと、特に女性や子供たちはある意味で大変な覚悟で、実際、沖縄戦争のときには数万人あるいは十万人と言われる人たちが死んじゃったわけですね、アメリカ軍に対する恐れでもって死んでしまったと。そういうところがあるわけです。
やはり、民族ですとか文化ですとか政治の主義主張が変わる、違っているところから占領を受ける、そういうときには、イラク国民、私はフセインはとんでもない独裁者だし問題だと、こう正に思っておりますけれども、フセインとやはり国民というのは違うわけで、今、国民の中には、イラク国民の中には非常に屈折した感情があるんだと、こう思うんですね。
ですから、占領軍とともに日本が来るということになりますと、今まで日本というのは中近東に対して非常に手が汚れていないし、正に親日的な国々が結構多いんですね。そういう中で、占領軍とともに来るということになりますと、これは歴史に、非常な日本の歴史にとって汚点を残すと、こう思うわけですが、総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 現在、米英軍のみならず各国の軍隊が既にイラク国内に入って支援活動を続けております。日本の自衛隊はまだ行っておりません。この法案が成立してから、現地の状況を調査の上、派遣する予定であります。
当然、CPAとも協力をして、どういう支援活動がイラク国民にとって必要かということを考えながらやっていきますので、自衛隊の諸君あるいは政府職員、民間人が活動する場合にも、イラク国民から敵対視されないで評価されるような活動をするように、またできるように、よく調査の上派遣したいと思います。
○広野ただし君 総理は占領軍と考えられてもいいとおっしゃるんですか。そこをちょっとはっきり言ってください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日本は交戦していませんから、占領軍じゃないんです。なり得ないんです。今のCPAは、国連も認めているように、施政機関です。施政当局です。それに協力していくんです。日本は戦っていないんだから、交戦国でもありませんし、ましてや占領軍でもありません。国連決議に基づいてイラク復興支援のためにできることをやろう、そういうための活動を自衛隊でも政府職員でも民間人でもやろうということであります。
○広野ただし君 この一四八三の決議は、治安維持のことあるいはイラクの安定と安全に関することはこの当局ですね、CPAにゆだねるということであり、人道復興支援は国連あるいは国連関係機関がやるんだ、そして人道支援あるいは復興については全加盟国に要請、コール・アポンをしているんですね、出してくれるように。しかし、治安維持に関しては、これはアピールをして、そして全メンバーにとは言っていないんですよ。賛同をしたというところに出てくるという、それをウエルカムすると、こういう表現になっているんですね。歓迎をするということになっているわけで、出さなければならないというわけではないんです。
ですから、そこへ治安維持の、安全の維持のために協力をするということになると、占領軍に対する協力と受け止められかねないということを私は言っているんです。ですから、どうでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 国連決議に沿ってできることを全部やるというものでもないです。できることをやる、非戦闘地域で。イラク国民が必要な、日本として貢献できることをやるということであります。
○広野ただし君 やはり日本の経験に照らして、軍が入ってまいりますと、軍隊が入ってまいりますと、今まで、軍隊でないところがいろんな形で協力するんなら分かりますよ、軍隊が入ってまいりますと、やはりアメリカとイギリス、その占領政策に協力していると、やはり思われるんじゃないですかね。いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) イラクの復興支援のためにアメリカともイギリスとも韓国ともオーストラリアとも、いろいろな各国の軍隊とも協力する。いいと思いますけれども。
○広野ただし君 国連の決議に基づいて出ていくという場合に、私はやはり集団安全保障の問題、集団自衛権の問題、それがしっかりと位置付けられていないと、じゃ何か起こった場合に、結局アメリカに守ってもらうのか、そしてまた日本がさっさと逃げていくのか、こういう問題になるんですね、いざという場合にですね。そういう問題についてどう思われますか。
○国務大臣(石破茂君) これは、我が国は武力を行使しに行くわけではございませんので、この問題は集団的自衛権とは関係のない議論でございます。そしてまた、集団安全保障のお話がございましたが、これもまた武力を行使しに行くわけではございません。私どもとしては、自己を守るために必要な権限、武器を持っていくということでございます。そしてまた、戦闘行為になりそうな、国際的な武力紛争の一環としての行為、そういうような場面に遭遇をいたしました場合には、休止し、回避し、中断するかどうか、これを日本国におきまして主体的に判断を行うということでございまして、集団的自衛権並びに集団安全保障の問題とこの問題は直接の関係を持っておりません。
○広野ただし君 いや、現在まだイラクは非常な騒乱状態にあるということなんですね。
これはタイムのところにも、これは六月三十日ですね、ザ・ポストウオー・ウオー、戦後の戦争と、こういう言葉が使われているんですね。それと、さらに、この最近号になりますと、これはザ・ウオー・ザット・ネバー・エンズ、終わりのない戦争、決して終わらない戦争ということを、これ、七月七日号ですからね、こういうものを示している。これはタイムです。
やっぱり、そういう面では、世界的にこのイラクの情勢をどういうふうに見ているかということになれば、終わりなき戦い、あるいは戦後の戦争と、こういう状態にあるということなんですね。そこへ自衛隊を派遣をする。どういう事態が起こるか分からない。そうしますと、どうやって自衛隊の安全を守るのか、こういうことになるから、私は集団自衛権の問題もあるんだと、こう言っているわけなんです。
ところで、まず、現在の状態について、どういうふうに総理は思っておられますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 主要な戦闘は終わったと思いますが、治安状況はかなり悪いし、混乱も続いている地域もあるし、生活基盤も整備されていないし、確かに戦後の戦いは長く厳しいものだと思います。そういうイラク国民の生活を良くしていこうという戦いに、日本としても国際社会と協力して、できるだけの支援をしていきたいと思っております。
○広野ただし君 これは、ブッシュ大統領は五月の一日、戦争終結宣言をしました。しかし、イラク側は降伏宣言というのはしていないんですね。日本はポツダム宣言に基づいて無条件降伏というのをしました。ですから、その国が無条件降伏ということをしますと、これは戦う意思を捨てるわけですから。しかし、イラクの場合はどういうふうになるか。まだ大規模テロだってどういう事態になって起こるか分からないわけなんですね。ですから終わりのない戦争と、こういうことがやっぱり世界的には言われているわけで、実際、五月一日以前、戦争中にアメリカ軍人が亡くなったのは百三十八名ですか、それに対して、五月二日以降に亡くなっている軍人が六十数名になっているんですね。ですから、相変わらず戦争状態が正にタイムの言うように終わりのない戦争という形で続いている、このことをどういうふうにお考えか、もう一度伺います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 主要な戦闘は終結したとしても、復興への戦いは長いものと思います。イラク人のイラク人によるイラク人のための政府というのは容易じゃない、作るのに。このためにやはり国際社会が協力していかなきゃならないと思っております。
○広野ただし君 私は、やはり自衛隊を出すときはきちんとした大義の下に、そしてきちんとした理由付けで、そしてまたきちんとした装備の下に出ていかないと、これは本当にとんでもないこと、危険なところへただ出すというようなことになります。
私は、イラク周辺国のシリアあるいはトルコですね、またレバノン、エジプトというのを昨年の参議院の国際問題調査会から行ってまいりました。そしてまた、ゴラン高原にも行ってまいりました。そしてこのゴラン高原では五十度の非常に暑い中で、しかもサソリに悩まされながら兵力の引き離しのために日本の自衛隊は貢献をしています。しかし、そのときには、UN、国連の旗の下にきちっとやっているんですね。ところが、今度行く場合はどうなるんですか。日本の旗を掲げて行くんですか、UNの旗の下に行くんですか。そこのところをちょっと。
○国務大臣(石破茂君) 委員、これは別に言葉じりをとらえてと聞こえましたら申し訳ございません、お許しをいただきたいと思いますが、きちんとした目的、そしてまたきちんとした権限を与えるためにこの法律を立法いたしまして、今御審議をいただいておるわけでございます。私ども自衛隊というのは、法的な権限がなければ、法的な根拠がなければ一切動くことはできません。したがいまして、今回イラクに行くということがございまして、この法律を立案し、今御審議をいただいておるわけでございます。ですから、ちゃんとした目的、ちゃんとした権限、それを付与していただくためにこの法律を御審議をいただいている、そういうことだと思っております。
それから、現地において国連の旗で活動するのか、それとも日の丸でやるのかということでございますが、これは日の丸でやることになります。そういう形で活動することに相なります。
それから、なぜ自衛隊でなければいけないかということでございますが、これも委員御案内のとおり、例えば水のニーズがあったといたします。私どもとしては、例えば一日に浄水車十台を出したといたしまして、これ一人四・五リットル使うとして十七万三千人分、一日で水をきれいにすることができます。飲める水が本当にイラクでいつ出るようになるか、それは分かりません。一日で十七万三千人分の四・五リットルの水を浄水できる、そういうような組織は世界にもそんなにあるものではございません。このようなものは民間にはありません。これは自衛隊にしかないものでございます。これをどうやって活用し、イラクの人道支援に使うか、そういうこともまた私どもとしてはお願いをしておるわけで、可能性の一つとして考えておるわけでございます。
○広野ただし君 先ほどのやはり議論に非常に戻るんです。
ですから、日本の旗を掲げて行きますと、日本が占領軍のごとくに思われるおそれがある。しかしUNの、国連決議にきちっと基づいて、UNの下に行きますと、国連は今までPKO等でそれなりの実績があるんです。そしてまた、人道支援でも大変な実績をやってきているんですね。ですから、そういう面では、やはりしっかりと、協力に来たんだ、イラク国民のためにやってくれるんだと、こういうふうになるわけでありますけれども、そこが何か占領政策に、アメリカの占領政策に協力をするという形に陥るんではないかという、また、向こうにそういうふうにとらえられるおそれがあるんではないかということを指摘させていただきたいと思います。
それともう一つ、人道支援、これは、国連は本当にやはりしっかりと今やっていますね。ですから、日本もPKOで基づいてイタリアから食糧あるいは水等をヨルダン、周辺国まで、本来だったらイラクに持っていきたいんでしょうけれども、ありませんから、自衛隊機でもってヨルダンまで持ってくると、こういうことだと私は解釈をいたしておりますけれども、そういう中で、日本もしっかりとしたことをやっています。これはもう資金的な面だけではなくて、例えばこれはイラクの、ユニセフのイラク初等教育再建計画、先ほども同僚議員が指摘をしておりましたが、やはり米百俵の問題ですね。やはり教育からしっかりと立て直さなきゃいけないということで、これは日本だって黒柳徹子さんがアフガンの場合は行かれたり、これはまた、アグネス・チャンというのがユニセフの日本大使というような形でまたやっている。こういうことで、人道支援をしっかりとやっていくということも私は大切なことだと思うんですね。
まず、今の戦争状態がなかなか終結しない段階で前のめりになって自衛隊を出すということではなくて、日本は、ちゃんとイラクの暫定行政機関、これがしっかりとできて、そこからの要請、そして国連の要請というものがきちっとあれば、これはPKOとして出せるわけですから、実際。そういう形で治安を維持することはできるわけですね。ですから、しっかりとした大義の下に出しませんと、それこそいざ何か起こったときに、本当に私は、自衛隊員の人、また家族の方々が、本当に悲惨な目に遭われ、また大変な悲しみに遭われるということになるわけで、ここに私は非常に懸念を持つわけです。
ですから、極めて、実行部隊を海外に出すということは総理の最大の判断なんですね。慎重の上にも慎重に判断しなきゃならない。そういうときに、何か前のめりになって、アメリカ、イギリスというところから要請、そういう要請に基づいてやっている、そういうところに前のめりになってやっていくということになると、正にアメリカの金魚のふんだということで思われるというところを私は懸念をいたすわけでございます。しっかりとした大義の下に出すということを私は要請をしておきたいと思います。
どうもありがとうございました。終わります。
○大田昌秀君 社民党・護憲連合の大田昌秀でございます。
社民党は、他の党と同じように、今回、イラクへ調査団を派遣いたしまして、その報告によりますと、自衛隊を派遣しなくても十分に国際貢献できる分野がたくさんあるというようなことを申しております。
それで、社民党といたしましては、自衛隊の派遣にはあくまでも反対でございますが、今、世論調査なんかを見ますと、国論は正に二分されているというふうに見ておりますが、この件について、総理は国会を解散して国民に真を問うお考えはございませんでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) このイラクに復興支援、どのようにやるかというのが今回の法案の趣旨でありまして、それは民間人にもお願いしたいし、政府職員も行くでしょうし、なおかつ自衛隊員の諸君にも活躍の場があるということで、特に今までの法律の枠内では自衛隊を派遣する場合には無理ですので、今回、自衛隊がイラクに入って活動する場合にはしっかりとした法の後ろ盾があって、根拠の下に出さなきゃいかぬということで審議をお願いしているわけであります。
これは、確かに賛否両論あります、各政党の中で。しかし、国会の役割といいますか、審議をして成立した暁には私は国民の多数も理解していただけると思いますので、この問題のために解散・総選挙という必要はないのではないかと、そういう考えは現時点ではございません。
○大田昌秀君 次に、総理を始め防衛庁長官、外務大臣の御決意を伺いたいわけですが、実は、この法案が提案されるようになりますと、私のところに、このような法律を作るならば、総理大臣、外務大臣、防衛庁長官は御自分の息子さんたちを真っ先に出すべきだという趣旨のことを言ってきておりますし、また沖縄の新聞にもそういう投書が見られます。
なぜ、そういうことになるかと申しますと、実は、去る沖縄戦のときに、いよいよ沖縄が玉砕が間近に迫ったときに、当時の鈴木総理大臣が官民一体となって沖縄の人々とともに特攻精神を持って勝ち抜くというようなことをおっしゃったわけです。公言されたわけですが、そういうことは全く起こらなかったわけですね。
ですから、いざという場合に、まあ、先ほども似たような御質問がありましたけれども、総理を始め防衛庁長官は自らその苦難の道を選ばれるという御決意を持っておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 現在、戦時中と違って、日本の自衛隊は志願制です。自衛隊の諸君は、自衛隊の仕事、自分に向かないなと、不適切だなと思ったら自衛隊に入隊する必要はないんです。強制でも何でもありません。自ら進んで志願してこの尊い任務に就こうとしている、入隊された方ばかりであります。徴兵制じゃありません。そういう諸君に対して、政府として強制しているんじゃないんです。自衛隊の諸君は、自らの任務を立派に成し遂げたいという意欲を持ってインド洋にも東ティモールにもカンボジアにおいても、あるいはゴラン高原にも行っていっている。よく認識する必要があると思います。強制ではないと。
○大田昌秀君 イラクの大量破壊兵器は武力でもってしか排除できないということを言って、アメリカ、米英軍は近代的な兵器をもってイラクを攻撃したわけでございますが、一体、今回のイラク攻撃で米英軍が使用した近代兵器というのはどういう種類があって、どれだけの被害をイラクの一般民衆に与えたか、政府はどのように把握しておられるか、外務大臣からお願いいたします。
○国務大臣(川口順子君) 米軍がいかなる武器を使ったか、そしてどのような武器をもって攻撃目標を攻撃をしたかということについて全貌を知っているわけではございません。ただ、米軍としては当然に国際人道法を遵守をして行動しているというふうに考えております。
それから、特殊爆弾、いろいろあるだろうと思いますし、その幾つかは多分軍事機密であるということであろうかと思いますけれども、それが今後イラクの復興の妨げになるかどうかといったようなことにつきましては、これは必ずしも定かではないわけでございます。若干の問題、例えば不発弾をどういうふうに処理をするかといった、そういった問題は存在をしているだろうというふうに思います。
それから、健康被害、例えば劣化ウラン弾というようなことで健康被害についての議論がございますけれども、この劣化ウラン弾については、先ほど別な委員の方で官房長官の御答弁がございましたけれども、米軍はそれを今回使ったかどうかということについては明らかにしていないということでございます。それで、政府として一回問い合わせをいたしましたけれども、それについては今後開示をする予定はないという返事をもらっておりまして、更に改めて現在、再度問い合わせは行っていると、そういう段階でございます。
○大田昌秀君 本法、本法案第一条「目的」では、国連安保理決議第一四八三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うとなっています。決議の一四八三号では米英軍司令部を当局と呼んでいますが、その当局による占領行政下の活動と新たに設置される国連特別代表の下にある活動との二つが併存することになっています。本法案によって自衛隊が当局の直接的な指揮下に入るかどうかは別として、米英軍の後方支援に当たるというならば、それは占領当局の下での活動と言わざるを得ません。
そこで、官房長官にお伺いします。
一九八一年四月十四日及び同年五月十五日の政府答弁書には、憲法第九条二項で禁止している交戦権とは、相手国の占領、そこにおける占領行政、中立国の船舶の臨検等が含まれるとあります。その解釈に現在も変わりがないとすれば、今回、占領当局の下での自衛隊の活動は占領行政にかかわることになります。とすると、交戦権の行使、つまり憲法第九条に違反することにはなりませんか。
○国務大臣(福田康夫君) 憲法第九条第二項では、「国の交戦権は、これを認めない。」と、こういうふうになっております。ここに言う交戦権というのは、これは相手国領土における占領行政なども含むと、こういうことでございます。
そういうことではありますけれども、今回のイラクに自衛隊が行くということにつきましては、イラクに対して武力を行使したことのない我が国は非交戦国なんですね。それが一つ。それから、そういうような我が国が、安保理決議千四百八十三号に基づいてイラクにおいてこの法案に規定します支援活動を自衛隊がすると、実施したといたしましても、それは、我が国がこの決議に基づいて国際社会の取組に主体的かつ積極的に寄与するために活動するものであると、こういうことでございますから、我が国が米英軍の指揮下に入るものでもないということであります。
我が国は武力の行使に当たる活動を行うというものでもございませんから、我が国自身が交戦権行使するというようなこともないわけでございます。
○大田昌秀君 外務大臣にお伺いします。
今回の米英のイラク攻撃に関連して、在日米軍基地からイラク攻撃に参加した部隊がおりますか。
○国務大臣(川口順子君) 参加の意味がよく分かりませんけれども、我が国の基地から移動をした在日米軍はあるかと思います。その先については存じません。
○大田昌秀君 昨日の沖縄の新聞によりますと、嘉手納基地からF15十機が参加したということが報じられております。それから、中東地域に沖縄の基地から五百名ほどが行っているということも報じられておりまして、現在、そのうちの百名ほどがイラクに残っているということも報じられておりますが、これは事前協議がございましたでしょうか。(発言する者あり)
○委員長(松村龍二君) 質疑時間が参りましたが。──じゃ外務大臣、川口外務大臣。簡潔にお願いします。
○国務大臣(川口順子君) いずれにいたしましても、事前協議の対象となることではないと考えております。
○大田昌秀君 終わります。
○黒岩宇洋君 総理、最後ですので締まっていきましょう。私、無所属の黒岩宇洋でございます。
冒頭、こちら、これ、ニューヨーク・ポストの全面広告なんですね。(資料を示す)これ、実はリーダーではなく、ブッシュ大統領のことをまあミスリーダーとやゆしてありますね、ミスリーダーと。これ、実は、左の部分に今までブッシュ大統領が発言した内容を日付ごとに五項目書きまして、最後にウイ・ウオント・ツー・ザ・トゥルース・ナウと、私たちは真実を求めるということで、ブッシュの今までの発言がうそではないかという、そういう全面広告なんです。
これはNGO団体が出しているんですけれども、ちょっと二点ほどここを読みますけれども。二〇〇三年一月二十八日、諜報機関の推定では、サダム・フセインは、五百トンのサリン、マスタードガス、VX神経ガスを製造する資材を所有していた、二〇〇三年三月十七日、諜報機関によると、イラク政権が今まで講じたことのない最も致命的な兵器、リーサルウエポンを所有し隠していることは明白であると、こうブッシュ大統領はおっしゃったわけです。それに対してこのNGOはこうおっしゃっています。我々は今真実を求めている、アメリカは大量の兵器廃棄の切迫性を求め、それらを所有していることは明白であると証言し、確約したブッシュの下に結集した、今、数か月がたち兵器は一つも見付かっていない、更に悪いことに、諜報機関の報告は意図的に誤って読まれていたことが明らかであり、アメリカ国民を意図的に誤った方向へと導いた、このミスリードによって若者や女性が生死を懸けてイラクに送られるのであれば、それは悲劇の何物でもないと。
私、これを申し上げたのは、確かにイラク戦争勃発時、大変な高支持率でブッシュ大統領というのは米国民から支持を受けていた。しかし、それから数か月たって大義名分に誤りがありそうとなると、やはりアメリカの市民、民主主義というのはこうして立ち上がるという、このことを私は総理に認識していただきたいとともに、我々国会議員も当然国会の場で追及していきますけれども、多くの国民の皆様にも、一体イラク戦争の大義は何であったか、そしてそのことに誤りがこの先あるのかないか、このことに目を光らせていただきたいと、その思いでこれを掲げさせていただきました。
それでは、本論に入らせていただきます。
時間がないんで、幾つか通告しておりましたが、私、多くの条文読みながら、いろいろと疑問点はあるんですけれども、特に腑に落ちない条文がございます。それは第八条の五項です。
衆院の特別委員会でも余り議論されていないのが私には不思議なんですけれども、この八条の五項、一部を読ませていただきます。「自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該活動を実施している場所の近傍」、これ、近い傍らですね。「近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。」と、こうあります。
これを素直に読むと、やはり活動しているところですね、近傍、この近くで戦闘行為が起こるという、それを想定しているわけです。戦闘行為が起こって、それを危険だとして避難していくわけですね。このときに、私は当然戦闘に巻き込まれるおそれがあると思います。そのことについてあるかなしか。それに対して、当然、武器使用基準に照らし合わせて武器を使用することもあり得ると思います。このことについてあるかなしか。この場合、戦闘に巻き込まれた中での武器使用は、それこそ戦闘行為と言えるのではないか。
この三点について、総理、お答えください。
○国務大臣(石破茂君) 戦闘行為にはなりません。
なぜならば、そこで行いますのはあくまで武器の使用でございます。武器の使用として、自分を守るために、つまり、相手が国又は国に準ずる者であったとして、それが組織的、計画的な攻撃を仕掛けてきたといたします。しかしながら、派遣された自衛官が使える武器使用の権限は、あくまで十七条に定められた自己を守るためのものでございます。自己を守るための武器使用を行っております限り、それは戦闘行為ということになりません。そうならないようにこの条文は作ってございます。
○黒岩宇洋君 これは総理、よくお答えいただきたいんです。
私、総理の身上というのは分かりやすさだと思うんです。今、私はあえて読み上げました。これを素直に読んでリアルにその現場を頭で想定すると、やはり戦闘行為に巻き込まれて、その近傍ですから、近い傍らですよ、そこでドンパチが始まって撃ち返す、これこそ私は戦闘行為だと、今これを聞いている国民は皆さんそう思うと私は思っているんです。
総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、正当防衛までが戦闘行為だといえばそう言えるかもしれませんが、自衛隊は非戦闘地域での活動であります。そういう意味において、散発的な、あるいは略奪者等、野盗、強盗のたぐいが全く起こらないとは言えない。そういう場合には、自衛隊の派遣隊員は、これは正当防衛として、まあ戦闘と言っていいのか正当防衛と言っていいのか、これはいわゆる法律の定義による戦闘行為とは違うと。
私は、はっきりしないといえばそうなんですけれども、例えば憲法九条もそうですね。いかなる戦力も保持しない。自衛隊は戦力じゃないのかと言われたら、はっきり答弁できない点もあるでしょう。何でもはっきりしない、わけじゃない。分かるでしょう、そういうの。難しい法律用語。だから……(発言する者あり)いや、自衛隊は戦力だから憲法違反だという政党もいる。しかし、これは自衛のための戦力なんだと。こういう、日本の憲法というのをよく読んでいくと、本当はっきりしない点たくさんあるんですよ。
そういう点も考えて、法律の定義のこの戦闘地域と正当防衛の場合の、その辺、ちょっとやっぱりはっきりしない点もあるといえばあるんですけれども、法律の中でははっきりしているんですよ。それは違うということ。
○黒岩宇洋君 総理、ちょっと自家中毒を起こしていますよ。
いいですか、総理。総理は分かりづらい法律用語を分かりやすくはっきりと述べるのが私は総理の身上だと申し上げているんですよ、分かりにくいの。だから分かりやすく、総理、語ってくださいよ。(発言する者あり)分かっています、分かっている。私も憲法を勉強しました。
総理、じゃ総理、もうあと一問ぐらい聞きますけれども、私、やはりこれ、武器使用基準だ、正当防衛だと言っているわけですから、当然、自衛隊員が殺されるかもしれない、海外で。可能性はあると思いますよね。イラク人を殺傷するかもしれない。
このことについて総理は今まで衆院等でも明言をしておりません。私は、このことは重要なことですので、当然、自衛隊員が死ぬかもしれない、そしてイラク人を殺すかもしれない、このことの認識はお持ちかどうか。その点についてと、それと、そのことを国民は了承しているとお考えか。
二点、お答えください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、自衛隊員でもあるいは政府職員でも民間人でも、野盗や強盗のたぐいに襲われたら、殺される可能性はないといえば、それは言えない、あるかもしれない。そういう場合に、それじゃ野盗、強盗のたぐいと戦って相手を殺す場合がないかといえば、これもないとは言えない。
しかし、戦闘行為に行くというものではないんです。復興支援活動に自衛隊が行くと、これが大事なんですよ。細かいところへ、この戦闘、正当防衛まで戦闘行為と言われると、これはやっぱり法律の定義とは違うんです。そこはやっぱり混同しないように。
しかし、襲われたら戦うというのは、これは人間本来の活動でしょう。やっぱり自分の身は防がなきゃならない。自分の命は守らなきゃならないという場合に、殺されるかもしれないといったら、相手殺すかもしれない。それは絶対ないとは言えないんです、ないとは。それは本来の目的じゃないんですから。本来の目的は、イラク国民のための復興支援活動ですから。それをよく御理解いただきたい。
○黒岩宇洋君 分かっていますよ。私、今、戦闘行為かどうかを議論したんじゃないんです。少なくとも今の総理の答弁、大変重要だったと思います。要は、自衛隊員が殺される可能性はあることをお認めになりましたし……(発言する者あり)いや、そうでしょう。だって、死ぬわけですから、強盗だろうが野盗だろうが。
私ね、このことを、総理、しっかりと国民に言わずして、いざ将来にわたって自衛隊員が死にましたといったときに、これは野盗、強盗のたぐいであって戦闘でないとしても、私は大変国民というのはパニックになると、そう思います。ですから、今、総理が国民に向けて明言したことは重要なことだと思っておりますし、やはり今まで安全、安全と言っていましたが、やはり死ぬ可能性とか殺す可能性というのはあるという、この答弁を承りました。
もう時間ないんで質問、答弁いただきません。私は、将来、総理がミスリーダーと呼ばれることのないことを願って、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○委員長(松村龍二君) 以上で質疑は終了いたしました。
本日の連合審査会はこれにて終了いたしました。
これにて散会いたします。
午後五時六分散会
2003/07/09 |