2003年7月10日

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156 参議院・外交防衛委員会−(2)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=佐藤道夫(民主)、若林秀樹(民主)


平成十五年七月十日(木曜日) 

○佐藤道夫君 それでは、続いて私からお尋ねいたします。
 基本的な問題、いつも私、言うことでございますけれども、国民が大変注目をしている、あるいは関心を持っている、そういう問題についてのお尋ねでありますので、どうか大臣、その質問を横投げしないで直接御自分の口からお答え願えれば。
 それから、この問題について、所管があっちだこっちだということもないと思います。これは全世界が今注目をしているような問題ですから、当然、政治家として仲間内で議論をする、あるいはまた閣議の席でもこういう議論をしているはずですから。選挙区に帰ればまた選挙民が、先生、あれはどうなんでしょうか、おかしいと思いますよと質問をしてくる、それについてお答えをする。それはおれの所管ではないからと、そんなことを言う政治家は次の選挙は間違いなく落選だろうと、こう思いますけれども、それやこれやで、どうか申し訳ありませんけれども、直接お答えしていただければと、こう思います。
 そこで、桜井議員がただいま最初、トピックスということで何かちょっとした質問をいたしました。私もトピックスを三つほど挙げてお尋ねしたいと思います。
 実は、昨日の委員会でも出た質問であります。それからこれは党首討論でも菅民主党代表に対して小泉総理が答えていたことでもありまして、例の大量破壊兵器が発見されないじゃないか、あれはイラクになかったんじゃないかと。アメリカがいろんな理屈を付けて、口実を付けて戦争を開始したけれども、そもそも大量破壊兵器は存在していなかったんじゃないかと、こういう質問に対して小泉さん、どう答えたかというと、からからとうち笑って、何を言いますかと。フセインだって今いないだろうと。それじゃフセインはイラクに存在していないことになるのかと。同じ問題ではないのかと。これは党首討論のときにも使いまして、私ね、ふざけてこれ言っているんだろうと思った。まともな大学を出ている人の言うようなことじゃありませんからね。しかし、昨日も言っている。どうも小泉さんはこれ自分で考えて、これ間違いないと、この答弁で国民全体が、さすが小泉総理だ、我々の思っていることを言ってくれた、ありがとうよと、こう考えているに違いないと、こう思っているんでしょうね。でなければあんなことを二回も続けて言うわけがない。
 皆さん方も閣僚と一員として、恥ずかしいことだと、こんなばかげたことをうちの総理大臣が言っていると、すぐ、私ね、ひざ詰め談判をして、ああいうことは二度と言わないでくださいと言ったかと思うんで、多分言ったでしょう。それにしても、二度とも小泉さんがまた言っていることを見ますると、閣議では議論も何もしていないんじゃないかと。
 この話はね、何でもない、法律論でも何でもない、子供の常識なんです、子供の常識。いいですか、フセインがイラクにいたことを疑う人は世の中だれ一人いないわけですよ。あそこの大統領をやっていたと。それがいなくなったと。あれどこに行ったんだと、こういうことを聞いているわけですよ。こういう問題、それだけの問題。だれ一人疑っていないことなんですね、フセインがイラクにいたと。疑っているのは小泉さんだけなのかなと、こういう気もしないわけではない。
 でも、大量破壊兵器は全然問題が別で、アメリカはイラクは大量破壊兵器を保有していると口を酸っぱくするほど大声でどなり立てておりますけれども、見た人はだれもいないし、それを出して、普通テレビでこういうものが放映されてね、ここにちゃんと隠匿してあると、どうだといって世界の人たちに示してくれるはずですけれども、そういうことも一切ない。それから、フセインの命令で大量破壊兵器はあそこに隠しましたと言って出頭してきた者がいて、それの案内に従って現場に行ってみたら破壊兵器があったと。これならば世界の人も、間違いなくイラクは大量破壊兵器を隠していたと、こう考えるでしょう。そう考えることについてだれもまた異論を挟まないでしょう。
 しかし、いかなる証拠もなしに、イラクは大量破壊兵器を隠していたと。それは証拠がないじゃないか、あなたうそ言っているんじゃないかと。こういった、それに対する答弁として、何を言うかと、フセインだって今いないじゃないか、あいつはイラクにいなかったことになるのかと、こういう答えをすれば皆笑い出すでしょう、あなた何言っているんですか、問題が全く違うでしょうと。
 この点について、小泉内閣の閣僚であるお二方はどう考えておられますか、この小泉答弁について。やっぱり正当だと、拍手喝采したと、そういうことですか。それならそれでいいですよ。

○国務大臣(川口順子君) イラクに大量破壊兵器がかつて、少なくともかつて存在をしたということはだれも疑っていないわけですね。これは、イランに対しても使い、それからクルドに対し、クルド人に対しても使ったということでございます。それから、その後、国連の査察団、これが入っていろいろ調査をした結果として、これは様々な疑惑が具体的にある場合には、数量を含めて提示をされているわけでございます。そういった様々な疑惑については、国連の決議一四四一を見ても分かるように、これについては国際社会が一致をして存在をしている、疑惑が存在をしているということの認識をしているということであります。
 したがいまして、我が国としてはイラクにおいてその大量破壊兵器が存在をしなかったというふうに想定をするということは難しいというふうに思っているわけで、それをずっと申し上げているわけですけれども。
 小泉総理の御発言について、これは具体的に私が小泉総理に成り代わって解釈をするということはふさわしくないと思いますが、そういった我が国の大量破壊兵器についての考え方、それを非常にシンボリックにおっしゃられたんだろうと私は個人的には考えております。

○国務大臣(石破茂君) 外務大臣がお答えになったとおりだと思いますが、それに加えまして、総理は、六七八、六八七、これはいろんな御議論があることはよく承知をしておりますが、六七八、六八七、一四四一ということに基づいてイラク攻撃の正当性を支持したというふうにおっしゃっておられるわけでございます。
 したがいまして、総理全体の答弁の整合からいたしますとそれは論理の通ったものだというふうに私は考えておるところでございます。

○佐藤道夫君 フセイン大統領の存否について国民に分かりやすく説明したつもりでおるんでしょう、彼はね。あの大量破壊兵器との問題を絡ませて、あなた方皆間違っていますよ、大量破壊兵器は間違いなく存在したんですと。フセインはいなくなった、じゃ、こっちがなくなったのか、そんな問題じゃありませんよと、そういうことを分かりやすく説明したつもりでしょうけれども、聞いている国民は、一体何をこの男はしゃべっているんだ、もっと分かりやすくきちっと説明しろ、フセインが出てくる問題でもないだろうと。
 今のような、いろいろ国連決議がありました、何でしたこうでしたと言うんですけれどもね。私、今度はイラク戦争が、戦争を始めているわけですから、ただ単にかつて持っていたに違いないとか、国連が間違いなく持っていたと決議までしているじゃないかと、そんな問題ではないわけですよ。大事なことですけれども、軍隊を派遣して、その結果としてイラク人民の何千人、何万人という何の罪とがもない者が命を落とすこともあるべしと。それから、派遣したアメリカ軍隊の中からも戦死者、血を流す者が出てくる。それだけ重大な問題なんですよ。それならば、何ら疑念の余地のないぐらい調べに調べ上げまして、世界にその事実を示して、こういうことで幾ら言っても言うことを聞かない、やむを得ず軍隊を派遣するんだ、御理解いただけますかということをやるべきでしょう。
 それを何か、何年も前の国連決議を持ち出してどうだこうだとか、十年前に持っていたから今も持っているはずだとか、まじめに査察に協力しない。しかし、国連の査察委員長、何て言いましたか、彼ははっきりとイラクは査察に協力的だということを言っていましたよ、新聞にも大きく出ておりましたしね。それにもかかわらず、査察団をはねのけましてアメリカ、イギリスは軍隊を送り込んで、そして何千人、ひょっとしたら何万人という死者まで出ている。何ら証拠もなしに殺人事件を犯したと、こう言われても仕方がないように思うんですけれどもね。
 やっぱり、軍隊を派遣して血を流すこともあるべしと言うならば、アメリカの全国力を挙げてイラクを徹底して調査を行って、そしてその結果としてイラクはこういう核兵器、大量破壊兵器を保有していたことは間違いないということを全世界に示した上で軍隊を派遣する、そして戦後復興にも協力してくれと言う責任があるわけですよ、当然のこととしてね。それを分かったような分からぬような、うじゃうじゃうじゃうじゃと言いながらいつの間にか軍隊を派遣して、さあ、おまえらも協力しろと。一体これは何なんでしょうかね。
 ただ単に国連の会議で議論する、おれはあったと思う、いや私は保有していなかったと思う、そんな議論することは一向自由なんですけれどもね。先ほども言いましたけれども、軍隊を派遣して徹底して妨害を排除して捜すんだと言う以上は、それだけの証拠を国民の、全世界の人たちの前に示すべきでしょう。
 犯罪だってそういうことなんですよ。地域社会で犯罪が起きる、窃盗事件でも起きると、一体だれだ、あいつが怪しいよ、あのどら息子がやっているに違いないよと、地域の人たちはそう言って、そう言えば何かそれらしい書類を持ち歩いていたよということを地域社会の人たちは言う。それを聞き込んで、警察がどら息子を捕まえて署に引っ張っていって、さあ自白をしろ、おまえやったんだろうと。おまえ無罪だという証明をしない限りおまえはもう有罪だからな、地域の人があんなことを言っているんだから、おまえの有罪は間違いないと。こんな調べをしたら、本当に警察は非難されますよね。当たり前のことなんです、これ。
 だれだって自分の言っていることは自分で証明しなきゃいかぬわけです。特に、軍隊まで派遣して血を流してまで探索をやるという以上はですね。まあ多分持っていたろう、取りあえず行ってみて、なかったらまあそのときはそのときだと、そんな発想だったんじゃないでしょうかね。そうとしか思えない。その点、いかがでしょうか、お二方。

○国務大臣(川口順子君) イラクが国連の決議、例えば六八七というのは停戦の決議でありますけれども、それに違反をしている。これは大量破壊兵器を持ってはいけないということも含めて違反をしているということは、国際社会全体が一致をして決定をしているわけです、これが決議一四四一であるわけですけれども。
 そういう意味で、国際社会全体としての認識が、イラクの大量破壊兵器の疑惑についてはあったということであります。

○国務大臣(石破茂君) 私は、国内法的に見ればそういうこと、委員の御指摘のとおりなのだろうと思います。それはもう検察官でいらっしゃった、今一番専門家でいらっしゃいます。しかし、それを今回、国連の決議に基づいて攻撃を行っておる米英軍とパラレルに論じるということは、私はそれは少し違うのではないかなという印象を持っております。

○佐藤道夫君 全く同じ問題なんですよ。末端の警察官ですら、人を有罪と言う場合には、それだけの証拠を集めた上で、皆さん、この男は犯人に間違いありませんということを言うわけです。ましていわんや、国家が他国に侵入、侵略する場合にはその理由をきちっと説明する責任がある、もう十八世紀や十九世紀と違うんですからね。何や、イラクなんて勝手なことをやっているに違いないと、ちょっと行って調べればすぐ出てくるに違いないと、だから行くよと、そういう何か本当にやくざと同じじゃないでしょうか、そういう発想自体はね。こんな言葉で言いたくないんですけれども、アメリカのやっていることはそうだと。
 現に、行ったら何にもないと、一体どうなっているんですかと皆さんが疑問を持って聞くでしょう。国会でもそういう疑問があって、なかったんじゃないのかと、そう聞きますと、フセインを持ち出してきて茶化してしまうと。これは許されることだというふうにお考えのようですから、私も許すことにしますか。いやいや、冗談ですよ。とてもこれは納得できない問題で、やっぱりはっきりさせる必要がある。
 それから、今、立証責任、泥棒なら泥棒で、おまえ、無実を証明しろと、そうじゃないと有罪だと。そんなことはあり得ないわけで、これは法律用語として立証責任、人を殺したといえば証拠を突き付けて、おまえは間違いなく人を殺したといって裁判所は有罪にするわけで、無罪を証明、無実を証明しない限りおまえを有罪にする、そんないかな低開発国だってそんな裁判をしているところは今ありませんからね。
 それで、ブッシュ大統領と、それを受けて小泉さんもそうだと思いますけれども、イラクは証明しない限り、核兵器がない、大量破壊兵器がないということを証明しない限り持っていたものと考えてよろしいと、これは泥棒の断罪についてだって使えない論理なんです。それを、一国の大統領と総理がにやにやしながらそんなことを言う。
 私の去る学生時代の恩師でもう九十歳近い大学教授が電話を掛けてよこして、おれはテレビを見ていたら本当に腹が立って腹が立って仕方がないと、あの総理大臣は大変失礼だけれども学校出ているんだろうかと、君知っていたら教えてくれたまえと。
 今のフセインと大量破壊兵器を引っ掛けた論理、それから立証責任を加害者と疑われている者に転換しようとする考え、外務大臣もそういう発言しておりますよね、もうイラクが説明すべきだと。今でもそういうことなんで、国連が何回も何回もイラクは保有している、そういう決議をしている以上は、もうイラクが本当に持っていなかったことを証明しない限り、これはやむを得ない、今回の戦争もやむを得ないことなんだと、小泉さんと歩調を合わせて同じ答弁をしておりますけれども、これは本当に大学の一年生だって知っている法理論ですからね。人の有罪あるいは人の間違ったところを追及する場合には、おまえ、潔白を言わない限り、おまえは間違ったことをしたと認めるぞなんて、そんなことを言う大人があるいはいるからこそ、ああいう福岡辺りであんな事件でも起きるのかな、十二歳の子供が子供をつかまえて投げ捨てちゃったなんてね。やっぱり大人が毅然として、そういう考え方は違っているんですよと、世の中の物事、道理というのはこうやって判断していくんですよということを教える義務があるんだろうというふうに思います。
 それから、これは立証責任で、イラクに説明しろ、持っていなかったことを説明しろなんと言うことは絶対におかしいことだということだけを記憶しておいてください。
 その次の……

○国務大臣(川口順子君) 委員長。

○佐藤道夫君 いや、結構です。私が問題と考えているのは法律の明文化。法律というのは国民に対して適用され、国民に権利を与えたり国民に義務を課したり手足を縛ったりする。ですから、国民に非常に分かりやすいものであることが要求されるわけです。
 そして、今度イラクに派遣するが戦闘地域には行かせないようにするということをしきりに言っておりますけれども、それを一体、今のイラクを頭に浮かべて考えてみて、どこが一体戦闘地域なんだ、どこが戦闘が行われていない地域なのか、それを分かる人はまず一人もいないと思いますよ。テロがある、じゃ、あそこどうなんだ。自爆テロがあって五、六人死んだと、あそこは戦闘が行われているのかと。それから、フセイン派が今暴れ回っているというようなことを言われています。一体あそこは戦闘地域なのかどうなのか、自衛隊の一人一人が皆考えるでしょう。我々行くと、ここは一体どうなんだと。上官に聞きますと、そんなことおれはよく分からないな、自分らで考えろというしか答えられないんじゃないかと、こういう気もするわけです。
 一人の自衛隊員の背後にはやっぱり何十人、何百人という友人、知人がいるわけで、彼らも心配でしょう。そして、おまえ、これからイラクに行くのか、本当に心配だ。いや、大丈夫だと。政府はもう法律を作って危険地帯にはやらないと、こう言っているから、おれはけがすることはない、命は守れるはずだと。そうかな、そうかなと言って親兄弟の心配はなくならない。そのときに法律を持っていって見せて、法律はこうなっているから、おれは危ないところには、我々は危ないところに行かないんだよと、それで済むんだよと。
 こういうのが法律というものなんですね。適用を受ける人に分かりやすい書き方をする。これは幾ら議論、国会で幾ら議論をしても、その辺はさっぱりあいまいもことしているんじゃないですか。そのときの上官のあるいは防衛庁の気分次第で、おまえらあそこに行けと。危険地帯に行って、そして何人かが亡くなったと、不幸にして戦死したと。戦死という言葉今使えるかどうか分かりませんけれども、不幸にして死んでしまった。
 今は国家賠償の時代ですから、隊員が死んだとすると、すぐ国を相手に裁判が起きますよ。安全なところにしかやらないと言ったのに、彼らはあそこで死んじゃったじゃないかと。ゲリラが何人か出てきて、テロリストが一杯出てきて殺されたんじゃないかと。そんなところに送り出したのはおまえらの責任だと、国家、何億円賠償しろと、こういう時代。そのときに賠償を課するかどうかということは、裁判官が法律を見て、分かりやすい法律を見て判断をするわけです。
 それはもう戦地同様だから、そこに行くのも危険は織り込み済みだと、やむを得ないことだと、それを承知で行ったんだと、こう言うか、政府は絶対そういうところにやらないと言っておきながらやったんじゃないかと、やっぱり政府、つまりは国家に賠償責任ありと判断するか。法律というのはそういう意味を持ってくるわけですよ。目先で国会だけごまかしておけばそれでいいやと、そんなものじゃないんであって、現実に適用を受ける人たちの将来を縛るわけですから。
 そういうふうに、戦闘をこう幾ら議論してもはっきりしない。一体どこまで行けって、ここから先は行かないのかということを、何か防衛庁長官はよくジェスチャーで、ここは戦闘地域、ここは戦闘地域ではないと、そういう区分けはしておりませんと、こういうことを言います。その気持ちも分からぬじゃないんだけれども、ただ国民のサイドから見たら、そんなことを言ったって、あそこでテロが、ここでゲリラがやっている、いやどうだこうだと、こういう議論、疑問が出てくるわけで、それにこたえる、国会の場を通じて国民の疑問にこたえる、それもまた政府の義務ですからね。
 今の点、いかがでしょうか。分かりやすい法律を作っていくという気持ち。

○国務大臣(石破茂君) 先生御指摘のように、ここが戦闘地域、ここが非戦闘地域というような、そういうことを明示的に定めることはこの法律は予定をいたしておりません。この条文にはそのようなことは書かれておりません。
 ここの第二条に書かれておりますのは、我々の活動は非戦闘地域で行わなければいけないということが定めてあるわけでございます。二条はそういう書き方をしてございます。それは、日本国憲法によって我が国は海外における武力の行使をしてはならないということを制度的に担保をするためにこの第二条というのを設けてあります。これは、日本国は海外においては武力の行使をしない、逆に申し上げれば、この自衛隊の活動は非戦闘地域、すなわち国又は国に準ずる者による組織的、計画的な、国際的な武力紛争の一環としての武力の行使が行われていない場所でなければやってはいけないという、憲法の要請を制度的に担保をしたものでございます。そのことは法律家である先生は御理解をいただけることだと思います。
 加えて、では安全なのか、そうではないのかということと非戦闘地域という言葉は、そのままぴったり重なる概念ではございません。非戦闘地域だからイコール安全なのか、それはおかしいじゃないかということに基づいていろんな御議論がございますが、私は衆議院でも答弁を申し上げましたし、参議院でも答弁を申し上げておりますが、私、防衛庁長官が定めます実施区域というものは、非戦闘地域であることは当然でございますが、その中で丸腰で行くわけではございません。
 そして、現地の状況というものをよく把握をした上で、自らの身を守るために必要な権限、あるいは自らの身を守るために必要な武器、十七条に基づきます、それを持っていって危険が回避できる、一般の全くの訓練も受けていない普通の市民であれば危険であるけれども、日ごろから訓練を積み、自らの身を守るために必要な権限を与えられ、自らの身を守るために必要な武器を携行していく自衛官であれば回避できる危険というものもあるのでございます。一般人にとって安全なところと自衛官にとって安全なところ、それは当然異なるものでございます。そうでなければ一般人が行けばいいというお話になってしまいます。この考え方に基づきまして私どもは御説明を申し上げておるわけでございます。

○佐藤道夫君 戦後のイラクで憲法が予想していたような戦闘が起こる、そんなばかげたことはあるわけがないんであって、もう皆、一応、国家対国家のぶつかり合うような、あるいは国家と準ずるような組織と国家とのぶつかり合うような戦争なるものが起こるわけはない。やっぱりテロ活動、それも一人の自爆テロと、それから十人、二十人と組んだような、施設の、米軍の詰所を襲撃するような事件、せいぜいそんなものだろうと思うんですよね。その場合に自衛隊の詰所だって襲われないとも限らない。二十人ぐらいのテロリストたちが襲ってきました、それで防戦しましてお互いに相当な死傷者が出ましたと、こういう場合には一体どうなのかという議論が必ず起きるわけですよ。
 それを解決しておくのが法律であって、戦争のことを、戦争以外なら何やってもいいように聞こえるんですよ。そんなこと一々細かな議論をする必要もないように聞こえるんだけれども、現実に起こり得るというのは、私、今例として挙げた、二十人、三十人のテロリストたちがグループを組んで軍隊の詰所、自衛隊の詰所を襲ってくる、その場合にどうするのか、そこまで派遣した上官の責任はどうなるのか。あそこは危ないからやめておきましょう、いや構わぬ、どんどん行け、おまえらが行けばテロリストたちも逃げていくから襲われることはあるまいということで送ったりする、そのときに一体どうなるのか。賠償責任の問題に関連して議論になるわけです。
 それをあらかじめ解決しておくのが法律の責任なわけですよ。上官のそのときの気分次第で、おまえらあっち行け、こっち行け、あそこはちょっと危険だけれども、まあ大したことはない、おまえらは武器を持っていればそんなやつが五人、十人、ひょっとして二十人襲ってきたって大丈夫だ、行ってこいと、これだって大変問題になりますよ。一体どっちに入るのかと。
 そういう事態しか考えられないのがイラクの現状なんでして、言葉の上で、国又は国に準ずる者とのぶつかり合い、これが戦争で、それには参加しないと、そんなことはイラクで起こるわけもないんですからね。あなたの説明まつまでもない。やっぱり、私が挙げているような例が起きたらどうするのかということをあらかじめ法律で解決しておく、それが国の義務、仕事、最大の仕事なんですよ。
 いざ起きてみてから考えようやと、そういう気持ちなんでしょう、多分。何回もこういう議論しておりながらさっぱり話は進んでいかない。もう私も多少うんざりぎみなんですけれどもね。やっぱり文章に書いて、法律の上に明文化しておいて、そしてそれは入りません、これは入りますということをこの場できちっと説明してほしい。この地域には派遣するようなことはいたしません、読めば分かるでしょうと。これが、何度も言いますけれども、国の責任なんですよ。それがないような法律、これは悪法と昔から、明治以来、悪法、悪い法律、悪法の代名詞。起きてしまってから法律の解釈がいろいろ出てきて、こうだああだ議論するわけですよ。こんなの作ったやつはだれだと、最後はそういう議論になりまして、あいつか、あのばかかと、いやいや失礼、利口かと、利口過ぎてこんな法律作ったのかとも言いたくなるんでしょうけれどもね。
 やっぱり法律というのは作るときにあらゆることを想定して解決しておく、そういうことを気を付けていただければと、こう思います。

○国務大臣(石破茂君) 私が役所でよく申しておりますのは、裁判になってみなければ分かりませんみたいなことは絶対に言ってはならないということは何度も申し上げております。そのときになってみなければ分からない、そのような法律を作ってはいけないというのは先生御指摘のとおりだというふうに私は思います。
 実際に行くのは自衛官であります。その自衛官に迷いが生じたり、あるいは判断の遅れがあって犠牲があってはならないということは私も、そしてまた自衛官の命を預かっておる幹部たちも、これはもう制服の人たちも含めて、それは防衛庁では制服も交えまして朝から晩まで先生がおっしゃったようなことが起こらないように議論はいたしております。政府としてそのようないい加減なつもりでこの法律を出しておるわけではございません。
 先生にはそのように映るのかもしれませんが、防衛庁におきましては、本当に制服自衛官、実際に行く人間たち、そういう人たちも併せまして、本当に先生が御指摘になったようなこと、この場合にはどうだ、この場合にはどうだということを、それは命が懸かっておることでございますから、そのことはきちんと議論はいたしております。先生がそのようなことをお思いにならないようにきちんとした形で派遣ができますよう今後とも努めてまいりたいと考えております。
 ただし、ルール・オブ・エンゲージメントと申しますが、このときにはどのように行動するかということも定めます。そういうことを定めずに出すということはあってはならないと考えております。しかし、この場合にどのように行動するかというようなルール・オブ・エンゲージメントは、これは表に出すものではございません。交戦規則というふうに訳す場合もありますが、私どもは部隊行動基準というふうに申しております。この場合にはどうするか、この場合にどのように判断するか、シビリアンコントロールの下で指揮官が判断に誤りがないように、これがルール・オブ・エンゲージメントでございます。このことは、表に出しますと、非常に俗な言葉で申し上げれば手のうちをさらすことになりますので、このことまで全部明らかにしておる国はございません。
 いずれにいたしましても、先生御指摘のようなことが起こらないように、お説を踏まえまして今後とも努力をしてまいりたいと存じます。政府がそのようにいい加減なことを考えておるものではないということだけは申し上げさせていただきます。

○佐藤道夫君 長官の御答弁、具体的なようであって最後は抽象的になって何かよく分からないと。
 私、言いましたけれども、三十人、五十人の集団テロリストが自衛隊の詰所にいきなり襲ってきて、そして戦争まがいの戦闘行為になって、お互いに二十人、三十人の戦死者というのか死亡者が、死傷者ができたと、この場合は一体どうなるんですか。これぐらいは教えてくださいよ。

○国務大臣(石破茂君) 委員は、先ほど、日本国憲法が予定しているような武力の行使というものが起こるはずがないとおっしゃいました。私は決してそうは思っておりません。
 そういうことがなければ大変に結構なことでございますが、私どもは、憲法九条からいたしまして、我が国が武力の行使と評価されるような、そういうことがあってはならない。少なくとも私どもは憲法の下で行動いたしておりますし、憲法の改正もいたしておりませんし、解釈の変更もいたしておりません。そういたしますと、日本国憲法九条において、海外における武力の行使と評価されるようなことは断じてしてはならない、そのことは変わっておりません。
 その上で、先生が御指摘の三十人、四十人のテロリストが襲ってきたらどうなのかということは、その三十人、四十人のテロリストというものが国際的な武力紛争の主体足り得る者かどうかということで判断をされることになります。
 このことは何度か答弁を申し上げましたが、例えばバース党の残党、フセインの残党というものがいたとして、それが組織性や計画性や継続性や国際性、それはそれぞれまた御要請があれば答弁を申し上げますが、そういう形で国際的な武力紛争の主体として現れました場合には、これに対して私どもが武力を行使するということはあってはならないことでございます。
 他方、これが相手がそのような者であれそのような者でないとしても、そういうような武力紛争の主体であったとしても、あるいは強盗、野盗のたぐいであったとしても、この法律十七条に定められた武器使用の権限は何ら変わるものではございません。すなわち、相手がどんな者であったからといって自分の身を守るための武器使用の権限は十七条において変わるものはございません。
 したがいまして、その場合の対応というのはどうなるか。それは戦闘行為というふうに判断をされる、あるいはそのおそれがあるということになれば、活動を一時休止し、危険を回避し、防衛庁長官が実施の区域の範囲、実施の区域を変更する等々のそういうような指示を待つということになります。それは憲法に抵触しないということは、きちんと担保をすることは、先生がそんなことは起こり得ないとおっしゃるかもしれませんけれども、この法律を作りますときにきちんと制度的に担保をしておくことは私は必要なことと考えております。
 三十人、四十人のグループというものはそれがどういう性格であるかによって違いますが、しかし、部隊が自分の身を守るために使える武器使用というのは十七条、いずれにしてもそこに根拠を持つということでございます。

○佐藤道夫君 もう余りこういう議論はしたくないんですけれども、結果として、バース党の残党だとかフセインの残党だとかそういう連中が武器を、一つのグループを作って武器を持って襲ってきたらこれはどうも入るみたいだと。しかし、地域住民がアメリカにあるいはまた日本の自衛隊にちょっとやってみようかということで有り合わせの武器を持ってやってきたらこれは一体どういうことになるのかと。いや、それは入るんだ、いや入らないんだ、法律見たって分からないでしょう。それを書きなさいということを言っているわけですよ。そして、自衛隊に、君たちの仕事はこういうことなんだと、この範囲内でやることなんだということ、安心感を持たして送り出してやると。
 今、隊員の親たちは大変心配していると思いますよ。政府の説明幾ら聞いても、一体何をやるのか、どこに行って、残党が、バース党の残党が来たらどうもドンパチはやるのかやらないのか、そんなことだって本当は法律で一目瞭然分かるようにしておかなきゃならないわけですよ。

○国務大臣(石破茂君) 委員長、委員長。

○佐藤道夫君 もう結構です。いや、いいです。いいです。
 そこで、これまでトピックス、これで時間が大体半分たっちゃったので、今度いよいよ本論に入りたいと思いますけれども、皆さん方はイラクが大量破壊兵器を保有していたと、間違いないと、こういう考えなんですね。それじゃ、なぜ発見されないのか、その理由を付してちょっと答えてください。あるいはまた、間もなく発見されますと、そういうふうにアメリカのさる高官から聞きまして、いろいろ疑問も呈したけれども間違いないと思いまして、今月中には発見されることになっておりますということなのか、もう少し具体的に分かりやすく説明して、今日は傍聴席もたくさん来ておりますから、皆さん方にも分かるように答えてもらえれば有り難いと思いますよ。

○国務大臣(川口順子君) まず、結論から先に申し上げますと、私は、政府としてはと申し上げていいと思いますけれども、大量破壊兵器、これそのもの、あるいはそれを隠匿をした証拠、あるいは査察団に通告をしないで廃棄をしたその証拠等が最終的に発見をされないということは想定し難いというふうに考えております。
 なぜかということをこれから申し上げますけれども、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、イラクは過去において現実に大量破壊兵器を使った、これは全員が、国際社会すべてが知っていることであります。クルド人に対して使った、イランに対して使ったという事実があるわけです。少なくとも、その時点で持っていたということはこれは事実であります。
 それで、その後、六八七という決議ができまして、イラクはこれを従うということを約束をしたわけで、その中の一つに入っていることというのは、イラクが武装解除の義務を持っている、それを遵守しなければいけないということであります。
 それで、その後、いろいろな国連の査察団が、最初はUNSCOMというふうに呼ばれ、その後UNMOVICというふうに名前を変えましたけれども、国連の査察団が入ってこのイラクの武装解除の状況について様々な報告を出しているということです。もうそれについてはいろいろなもう事細かに例示を挙げることができますが、時間の限りもあるでしょうから、例えば例を幾つか申し上げたいというふうに思います。

○佐藤道夫君 一つ、二つでいいよ。

○国務大臣(川口順子君) 例えば生物化学兵器用の特殊弾頭、これについて言いますと、UNSCOMの時点でこれはイラクが七十五発持っていますとイラク自身が申告をいたしました。それで、これに対して三十発をUNSCOMの監視下で廃棄をしました。そして、残り四十五発あるということでして、イラクはこれは自分で廃棄をしたということを言いましたけれども、それは未確認であります。これについてUNMOVICは例えば何を言っているかといいますと、信頼性に疑問があるということを言っております。
 このほか、例えばVXガス、これをイラクの申告した量では三・九トンあるということを言いました。そして、廃棄の実績、これはイラクが申告をしただけということですけれども、一・五トン廃棄をしたとイラクは言いました。それで、UNSCOMの評価としては二・四トン以上が未確認であるということを言っています。そして、UNMOVICの報告では廃棄量については検証ができていないということを言っています。
 さらに、例えば化学剤の前駆物質、これについて言いますと、イラクの自己申告をした生産量、これは三千九百二十トンあります。そして、廃棄実績、これはUNSCOMの監視下で廃棄をしたものですけれども、これについては二千六百十トン、廃棄を現実にいたしました。UNSCOMのその後の評価として、約一千三百トン以下、これが残っているわけで、これについては未確認であるということを言っている。そして、UNMOVICの評価としては、VXの主要な前駆物質の計量に重大な不一致が存在をする、タブン等の前駆物質の申告、説明は不十分である。
 これは、私が今読み上げておりますのは実際に、国連のUNSCOMあるいはUNMOVICが実際に外に出した報告の一部を御説明をしているわけでございまして、これについて時間があればもうたくさん申し上げますが、二十九項目の未解決の武装解除問題ということで、UNMOVICの評価については、最後の、武力行使に入る前の最後の段階で出したものを申し上げているわけです。
 これだけ、これは国際社会として先ほど全会一致でイラクが武装解除の義務を怠っているということを決定をしたというふうに申し上げました。これが一四四一でありますけれども、にそう書いてあるわけですが、それの中身というのは、UNMOVICの報告書の評価でいえば、一例を挙げれば、二十九分の三ですからまだまだたくさんありますけれども、そういうことであるわけです。
 それで、我が国としては……

○佐藤道夫君 簡単にしてよ。

○国務大臣(川口順子君) そういった疑惑について、関係国の情報を参考にしながら、基本的には今申し上げたような累次の国連査察団による報告書に基づいて評価をしているわけでございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたように、そういった報告等に照らせば、大量破壊兵器そのもの、それを隠匿した証拠、あるいは査察団に通告をすることなく廃棄をした証拠等が最終的に発見されないということを想定することは難しいというふうに考えています。今査察団、失礼しました、米英を中心としまして大量破壊兵器については捜索が行われているわけでして、我が国として、それを引き続き注視をしていきたいというふうに考えております。
 あえて誤解を恐れないで、先ほど委員が有罪であるということを証明しなければいけないということをおっしゃいましたが、先ほど申しましたように、国際社会は一四四一において、イラクが武装解除の義務を怠っている、義務の重大な違反をこれまでも犯し、また依然として犯していることを決定するということを言っているわけでして、あえて誤解を恐れず委員の使われた比喩を使えば、国際社会が一致してイラクが有罪であるということを言ったということであると思います。

○佐藤道夫君 官房長官が戻られましたので、一番最初にお二方に聞いた問題についてお伺いしておきたいと思います。
 昨日の特別委員会での、合同委員会での審査でも出ましたし、それから、この前の党首討論会でも菅代表との間で小泉さんが答弁として使った言葉でありましてね。大量破壊兵器は今まで発見されないと、これはもうなかったとしか言いようがないじゃないかと、こういう問い掛けに対して、そんなことを言ったら、フセインが今どっかに消えちゃったと、じゃ、フセインは地球上に存在しなかったのかと、こういうことを言って、みんな、かかかっと大笑いをして、聞いた人も唖然として、それで話は終わっちゃったと。
 こんなばかげたこと、あるわけないでしょう。問題が全然別でしょう。改めて説明するまでもないんだけれども、フセインがイラクにいたということを疑う人は地球上だれ一人いないわけですよ。それはそれでいい。それがいなくなったと、それでどうしたと、こう言っているだけのことなんで。
 ところが、イラクが大量破壊兵器を保有していたということについては、国連の決議は一杯あるけれども、やっぱり一枚の写真でもいいから、どうだと、こういうことを示してもらえれば、ああ、なるほどなと。そして、アメリカが侵攻してもう三か月ぐらいにもなるんだけれども、大量破壊兵器を発見したよ、やっぱり隠していたんだよという話も一切出てこない。
 ここまで来ると、これ、なかったんじゃないかと、世界の人たちは皆、首かしげていますよ。アメリカがいろんなことを言っているけれども、そんなことは信用できないと。何か分厚い国連の決議があるにしても、そんなこと言うまでもないと。写真一枚で分かることを何で余計なことに逃げているのかと。やっぱり自信がないからだろうと。軍隊を派遣して、イラクの人民、全然、罪とがのない人たち、何千人という人が死傷したと。それから、アメリカの従軍した軍人の中からも相当な戦死者が出ていると。こういうことについて、もっとはっきり説明すべきではないのかと。
 いずれにしろ、小泉さんの説明、フセインがいなくなったことと大量破壊兵器とを関連させて議論して、はははと笑っている、あれはとても許し難いという国民の見解だと思いますけれども。
 これ、閣議でもやっぱり議論が出ているんでしょう。首相、あれは、あの答弁おかしかったですよ、問題が違いますよと。ところが、党首討論でも言っておるし、昨日もまた言っておるし、全然反省していない。また言うかもしれませんよね。一度、官房長官が提案をしまして、そして閣議で、一体こういう、率直に言うと人を食ったような、人をばかにしたような答弁、総理大臣としておかしいんじゃないかという立場で議論、その立場取られるかどうか分かりません、あなたもフセインいないのと同じだと、こう言うかもしれませんけれどもね。お考え聞かせてもらえればと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 大量破壊兵器がイラクにあったのかなかったのかと、こういったような議論はいろいろ今されておりますけれども、ただいまの外務大臣の答弁にもありましたように、国際機関があるということを、これを証明というか報告をしているわけですね。これはもう国際社会の共通認識と考えていいのではないか。そのすべてがどうかということについて一つ一つ検証されているかされていないかというようなことについて、議論はあるかもしれませんよ。しかし、それはその時点において皆が認めたことであるというように考えていいのではないかというように思います。
 そういうことを前提として、今までずうっと過去の経緯というのは流れてきているわけでありまして、したがいまして、今イラクに大量破壊兵器が全くなかったんだというようなことを、これはなかなか言えないことじゃないかと思います。そういう認識の上に立って、いろいろな重大な判断をされてきたということであります。
 まあ大量破壊兵器のこととそれからフセインのことと一緒にしてどうかという、そういうお話でございますけれども、まあフセインという名前が、個人名が出てきて唐突だったので、それは皆さんもどういう受取方されたか分からないけれども、分かりやすい例示ということでいろいろ努力をされて総理も発言をされたんだろうというように思います。
 しかし、そのことはともかくとして、大量破壊兵器は、これはあったと、そしてその疑惑が、疑惑を解明するための努力をイラクに対しても求めてもそれに応じなかったということが武力行使の原因になったんだというように考えても、これは問題はないんであろうかというふうに私は思っております。
 そういうことでありますので、今後、大量破壊兵器の有無については、これから国際機関が中心になって徹底的な捜査をしないとこれは分からないものだというふうに思います。ですから、それはそれでやってもらわなきゃいけないと思います。これは、その結果を必ず報告してもらわなければいけない、明らかにしてもらわなければいけない、それはそういうふうに思っております。
 今までの経緯については、これは経緯的に言えば問題はなかったことだというように思います。戦争することが問題だといえばそれは問題かもしれませんけれども、あのときの、あの時点においてそういう判断というのはなかったわけではない。じゃ、戦争しなければどういうことになっているのかということについて各国の意見が一致していたわけではない。やはりイラクという国の体制、フセインがしいていた独裁体制、そのことによっていかにイラクの国民が虐げられていたか。また、殺りくも平気で行われていたというようなことも聞いておりますので、そういう状況を国際社会が黙視するわけにはいかないと。こういうことで、この解決のための決断をしたのだというように考えております。

○佐藤道夫君 小泉総理に対して、あのような茶化したような言い方は少なくとも神聖な国会の場ではやめてほしいということだけはお伝え願いたいと思います。私からのたってな願いでありますので、よろしくお願いします。
 そこで、これから、これもまたお二人に聞いたことですけれども、間もなく発見されるのかされないのか、どちらだというふうに今、日本の政府は考えておるんでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) これは、千三百人とも四百人ともいうように言われております専門家の調査団がだんだんと入っていくんだろうというふうに思います、一挙にということではないと思いますが。そういう調査団による調査結果に基づくものでございますから、いつそれが分かるのかというようなことについて、それから程度の問題もございますので、それはある程度の時間が必要なんだろうというように思っております。

○佐藤道夫君 アメリカの情報機関というのは、何と何と十二万人もおるんですね。年間予算も膨大なものであって、それを使って、例えばイラクなんかの場合には、政府関係の職員を金をやって買収して情報を聞き出す、もうお手の物です。本当に、私自身もちょっと知っているんですけれども、我々の知らない日本国内の情勢まで彼らはもう逐一把握している。ですから、大量破壊兵器をどっかに隠したと、そうすれば、隠したときに運搬の役に当たった政府職員だとか、あるいは運送の人夫、現場作業員ですね、そういう者、簡単に買収して聞き出して、ああ、そうかということでぱっと発掘、発見しちゃうと。これがアメリカの情報機関の実態なんですよね。
 イラクにも、恐らく戦争前からアメリカの手足となって動くスパイ、何十人、何百人といたはずですよ。それらから何の情報も上がってこない。何か空理空論みたいにして、昔の調書を見るとあれがあったはずだから、国連も決議をしているとか、そんな昔のこと言っているんじゃなくて、わざわざ軍隊まで派遣して、関係者の血を流してまでやったわけですからね。何の成果も収めないと、これは本当に真面目にやっているんだろうかと思いたくもなるわけですよ。昔の日本の武士、腹を切ってもう自害をすると、そういう問題だと思います。
 イラクはけしからぬ、大量破壊兵器を隠している、それで侵攻、戦争をして摘発するんだと。それが、三か月もたってまだ何も姿を現していない。聞いてもはっきりしないわけですよ。皆さん方、アメリカの首脳の方々と会えば必ずこの問題は出すでしょう。一体どうなっているんだと、説明してほしいと。具体的に国連の決議がどうだこうだなんて、そんなことはみんな分かっていますからね。国民だってそんなことは知りたくない。あそことあそことあそこに隠していたと、それを今こうやってやっているんだと、具体的な説明があるでしょう。それについてこの場で御説明していただければ、アメリカも若干の手違いはあったけれども、こういうことがあってもう見当が付いているから、今月中には五か所、十か所ぐらいで発見があるはずだと、それを期待しておいてくださいと、それぐらい説明する義務は彼らにあるわけですよ。どうなんですか。

○国務大臣(福田康夫君) 私も米軍が実際にどういうふうにやっているか分からない。ですから、想像と私が聞いた情報というものをミックスして申し上げるんでありますけれども、米軍は今までやっている仕事というのは、これはもう主に治安活動なんですね。治安活動、また物資の輸送、必要物資の輸送といったような、そういうことが中心でございまして、大量破壊兵器の捜査ということは本務では、本来の任務ではないということです。ですから、このことについて米軍がどの程度やっているかということは、私は余りやられていないんではないかというふうに思います。
 また、仮に米軍が捜査をしたと、それは専門家でない人が捜査したということで、それで信頼性があるかどうかという問題もあるわけですね。それからもう一つ申し上げれば、米軍がありましたと言って、信用なさいますか。信用しないというふうに言われる可能性もあるわけですね。やっぱりこれは国際機関が入って、そして調査をするということがいいのではないかというように思いますので、私はこれからの調査というものが非常に大事だというふうに思っております。

○佐藤道夫君 国連の調査団、これを追い出したのはアメリカでしょう。退去を要求しまして、そして侵攻していったわけで、この侵攻した、当然のこととして専門家を何百人となく世界じゅうから集めて連れていって、我々は戦闘行為だ、君らはすぐに調べろということにしたはずですよ。当然のことですよ。それが終わってみて、まだやっていないんですか。あきれた話だね。一体何なんですか、これは。
 何かもうイラクも民情が安定しつつあるからいいじゃないかとか、民生安定のためにやっている戦争じゃないんですからね、これは。あくまでも大量破壊兵器を発見すると、イラクが隠していることは間違いないと、それも調べた結果、あそことあそことあそこに隠している、これはもう軍隊を派遣して専門家を連れていって、あっという間もなく発見するんだと、こういうことだふうに、こういうことのようにみんな世界の人たちは思っていたわけです。それが何にも出てこない。何だ、一体何なんだと。
 石油に、やっぱり石油利権かと。何か、イランの石油については、アメリカは日本がイランと協定を結ぶことについては反対だと、こういうことまで言い出してくる。やっぱり彼らのねらいは中近東の石油にあるのかなと、こういうふうに考える人もいるわけです。
 そこで、次の問題は、フセイン大統領は一体どこに行っちゃったのか、これも不思議としか言いようがない。
 不思議でしょう。あれは、もうそういうことまで想定の上、大統領官邸を急襲して、ぱっと押さえてしまうとか、これ、初歩的な軍事常識と言ってもいい。私がああしろ、こうしろと言う問題でもないんであって、当然に米軍が考えて、こうやって急襲して、フセインの身柄を確保しようと、うん、そうだと。そんなことをやらずしてやったとすれば、一体何なんだと。素人の集まりかと、こういうふうに言われても仕方がない。
 そこで、フセインは一体どうなったんですか。どこに連れていかれたのか、あるいは、どこかに隠れているのか、それがなぜ発見できないのか。簡単でいいですよ、あなたの説明は長くなるから。

○国務大臣(川口順子君) できるだけ分かりやすく御理解をいただけるようにと思って御説明を申し上げておりますけれども、フセイン大統領の生死については、これはその生死は確認をできていないということをアメリカもイギリスも言っているというふうに承知をいたしております。
 例えば、七月の二日にフライシャー報道官が言ったことですけれども、もしフセインが死んでいるんであれば彼は脅威ではない、これはそういうことだと思いますが、生きているならば身を隠しているのであり、以前のようなミサイルの発射、大量破壊兵器の保持といった現実の真摯な脅威ではなくなったということを言っているわけです。
 ごく最近のテープについては、CIAの判断として、これはフセインの肉声の可能性が大きいというふうに言っていると承知をしていますが、ただ、どの時点でこのテープが作られたかということについては判断できない、分からないということを言っているわけです。
 今、米英軍等がフセイン大統領については懸賞金を付けてこれを情報収集をして探索をしているということをやっていますので、我が国としてはこれを注視をしていきたいというふうに考えています。

○佐藤道夫君 実はアフガニスタンでも同じことが起きているんですね。もう忘れている人が多かろうと思いますけれども、あそこの米軍が侵攻して、オサマ・ビンラディン、九・一一テロの黒幕だと言われたラディン、それからオマルですか、あそこの、アフガンのタリバンの指導者であるオマル師、あれも所在不明になっちゃったんですね、もう二年余りたつのにかかわらず。一体どこへ行っちゃったのかと。何か、米軍が侵攻するところのリーダーはどこかに行っちゃうと。不思議な気がするわけでしてね。余り日本の人も忙しいものだから、もう前のことは、そんな昔のことは知らないと、こういうようですけれども、絶対これ不思議ですよね。いないんですもの。
 そして、仮にどこかに隠れているとすれば、これは次第次第にうわさとなってアメリカの情報機関の耳に入るわけです。金を使って、どうだどうだと、情報を何か持っているかということをやっているわけですから。こういう情報がありましたと、あそこにいるようですよと、それですぐぱっと情報局員が行って取り押さえてくるということも可能なわけですよ。
 ところが、そういううわさが出たというのも、たまに一件、二件ぐらいありますけれどもね。そんなうわさが出る前に、耳に入ったらすぐ情報局あるいは軍隊が飛んでいって、取り押さえ、フセインやあるいはオサマ・ビンラディンなどを取り押さえるということをするんでしょうけれども、そういうことが一切報道されていない。
 私の知り合いにあるアメリカの推理作家がおりまして、彼は、それは米軍が始末しちゃったんだと、そんなこと信じ難いと、でもそうとしか思えないでしょうと、こう言うんですよね。なぜかと、こうだれだって聞くでしょう。彼らを身柄を拘束したら裁判にかけねばならないと、まさか無罪放免というわけにもいかぬ。しかし、フセインを罰する証拠というのはないんですよね。
 国連の規定に違反したと、あるいは大量破壊兵器を隠していたと、そんなこと犯罪じゃないでしょう。大量破壊兵器を持っているのはアメリカだって同じことですからね。あるいは、インドとかパキスタンなんかで、あれだって同じことなんですよ。なぜフセインだけが犯罪になるのかと、こういう基本的な問題も出てくる。
 それで、彼らをかける裁判所というのは、多分軍法会議か、軍法会議か国連が特別裁判所を創設して、そこで裁判をする。しかし、証拠がゼロなんですよ。いかな軍法会議といえども、証拠がないのにおまえは死刑だと、こうやるわけにはいかぬ。大量破壊兵器を隠し持っているだろうと、国連の命令に従わなかったろうと、そんなことはもう国家の考え、自由ですからね。それが犯罪だなんということは聞いたこともない。
 太平洋戦争で、東京裁判で死刑の判決が出たりして日本の指導者が罰せられました。あれは、戦争を始めて、理由もなしに戦争を始めて世界を征服しようとしたと、そういうことで特別に犯罪と、こういうふうにしたわけですけれども、今回のケースは何も証拠、何の証拠もないわけです。イラク国内で暴政をしいたと、権力を濫用して人民たちを虐殺した、そんなことはイラクの問題であって、国際裁判所で裁く問題じゃないわけでしょう。
 それやこれやで、一体この問題をどう考えればよろしいのか。あなた方も当然これは問題だということで議論をする、あるいは海外に行って向こうの指導者たちに会うと、一体どうしたんですかと当然質問投げ掛けるでしょう。それに対するアメリカの指導者あるいはイギリスの指導者の回答はどういうことだったのか。自分ながら、なるほど、それはもう当然のことだ、フセインがいない、それはそういうことかとそれなりに了解しておられると思いますけれども、その辺のところ、自分の考えをベースにして答えていただければと思います。

○国務大臣(川口順子君) 佐藤委員もこのイラクの問題については大きな関心を持っていただいているわけですから、当然に、クルド人が子供も含めてイラク軍の使った化学兵器の犠牲となって町ぐるみで倒れて死んでいるという写真をごらんになったと思います。それから、今イラクのあちこちで政治犯が大量に処刑をされたそれの遺体が発掘をされているという記事も十分に写真も含めてごらんになっていると思います。一体、じゃそういうことがだれの犯罪であったのか、これはもちろん今ここで断罪をすることは当然できないわけですけれども、いろいろな問題がイラクの過去のフセインの政権下であるわけです。こういったことに目をやらずして、フセイン大統領は全く罪を犯していないということをここで明言をするということは私は非常に難しいことであるというふうに思います。
 いろいろなお考えはあるかもしれませんけれども、こういったフセイン大統領の犯した罪、リーダーとしての罪、これは今後国際社会において十分に明らかにされていかなければいけない問題であるというふうに私は考えております。

○佐藤道夫君 アメリカは非常に気が早い国で、もうイラクの復興、そして日本の自衛隊も参加をする、こういうことになっているようでありますけれども、私、昨日もしきりに使われていましたけれども、リンカーンの言った人民の人民による人民のための政治、これが民主主義の根幹だと。ですから、イラクについても、イラク人のイラク人によるイラク人のための改革、復興ということで、これはもう外部から、速やかにもう本当はアメリカは撤退すべきなんですよ。大量破壊兵器を発見すると大言壮語して出ていって何も発見していないんですから。
 失敗しました、申し訳ありませんでしたと言って撤退して、その後のイラクの復興はもう国連にお任せしますということで国連が乗り出してやることであって、それも、食うものもない、水もない、何もない、そんなことを言い出したら切りがないんです。彼らはもう砂漠の中で何千年と生きてきた民族ですから、もう頑張っておまえらでやってみろと。それに尽きるわけで、中には殺し合いもするかもしれません。本当に残虐な殺し合いが毎日続いておれば、国連がやっぱりもう少し落ち着いて話し合う機会を持ちなさいよ、そして国家再建ということを考えなさいよということで、すべてをイラク人の手にゆだねて進んでいくべきなのにかかわらず、私、その辺も理解できない。何でアメリカが乗り出して、それに日本がまた参加をするのか。
 しかも、戦争が終わって三か月ぐらいたって、もうやるべきことは大体終わっているんじゃないですか、軍隊が乗り込んでいってやるべきことは。今も、法律をどうしましょう、いやいやここを修正しましょうかという議論をしている。
 備えあれば憂いなしというのは小泉さんの常套語ですよ、あれも。ですから、こういう問題が想定されたら、もうイラク戦争が始まったときからイラクの復興ということを頭に描いて、どうするのかと。我が方も自衛隊を出すべきだ、それならすぐ国会でイラク法案を出して、そして議論をして、もうイラクの戦争が終わった、自衛隊を派遣しよう、もちろん国会が否決すれば駄目ですけれども、そういうことを備えあれば憂いなしと、こう言うんですよ。やるべきことはやっておく、そしていざとなった場合に慌てないと。
 小泉さんという人は、言葉は知っているけれども、それを実地に生かす気は全然なさそうですね。それも閣議の際にちょっと言っておいてくださいよ。あなたのああいう言葉はいろいろ変に使われていますよ、やっぱり自分できちっと、そういうことを言うのもまた閣僚の私責任だと思うんですよ。偉いやつがこうしろと言うからやっています、それだけの問題じゃないんであって、やっぱりいろんな意見があればきちっと申し上げて、そして閣議で議論をしてやっていくと。
 本当におかしいですよ、今ごろ自衛隊派遣の問題について、派遣の可否は別としまして、議論をして、法案をこれから作ろうとしているなんて。世界じゅうから笑い物ですよ、これ。しかも、これから何か月後かに初めて自衛隊が行く。何でおまえら来たんだ、今ごろ来やがってと。それだけのことでもう相手にされないと思いますよ。
 そういう意味で、今ごろこの法律を国会に出している理由を簡単にちょっと説明していただけますか。

○国務大臣(福田康夫君) お気持ちはよく分かります。また、その御趣旨は総理にもお伝えをしたいと思っております。
 我が国の自衛隊の活動については、これは非常に限定的であるということがございます。したがいまして、何かの根拠がないとこれは出動できないんですね。今回は五月二十二日に国連決議一四八三というものが出ましたので、これに基づいてイラクの復興に貢献しよう、こういうことになったわけであります。それから、いろいろとその必要性、法律の必要性、内容等について検討して行ったということでありますので、随分早く作業は進んだというように思っております。
 御指摘のとおり、何だかの法律があって、自衛隊の活動について何かこういうニーズがあれば、それも国際平和協力のためだというのであればすぐ飛び出せるというような法律があれば、それはそれにこしたことはない。しかし、このことについては、ようやく私は、自衛隊の国際的な活動についての国民的な認知また国際社会の中における理解というものが進んで、ようやく今こういうことがお願いできるようになってきたということでございますので、本格的な自衛隊の活動というのはこれから平和活動に限りできるんではないかというふうに考えております。

○佐藤道夫君 大体時間でありますので、これで終わりにいたしますが、なお気持ちは全然晴れておりませんので、次の機会にお尋ねさせてください。よろしくお願いします。

○委員長(松村龍二君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時七分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(松村龍二君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○若林秀樹君 民主党・新緑風会の若林でございます。昨日の連合審査に引き続いて、今日も質問させていただきたいと思います。
 昨日、省エネルックでしたけれども、今日はちょっと、別にテレビに映っているときだけそうしようと思ったわけではありませんので、まだ一着、ワイシャツ二枚しかないので、それで回っていかないので取りあえず今日はこういう格好をしておりますので、また改めて作ろうと思っていますので、よろしく。
 現実に朝は、午前中二十三度でしたから、とてもじゃないけれども半袖はやっぱりちょっと寒いんじゃないかなという感じはしますので、二十八度にすべきだなと思いますけれども、さっき委員長が、五十度にすべきじゃないかと、そしてイラクと同じ温度で考えたらちょっと違う発想も出るんじゃないかというような話もありましたけれども、正に温度とか気候というのは非常に考えとか風土、文化を作るのに重要なことじゃないかなという感じはしているところでございます。
 もう一つ、参議院の役割でございますけれども、確かに衆議院は通過しておりますけれども、参議院は参議院の役割がありますので、慎重審議すべきではないかなというふうに思っています。
 午前中、桜井委員の御意見を伺いながら、与党の立場でありながら、やっぱり不備を直そう、正すべきは正そうということに対しては私は賛辞を送りたいなというふうに思っています。そういう意味では、武器使用基準等、本当に変えるべきことがあればむしろここで議論して変え、衆議院に送り返すぐらいの、やっぱりそれを行動で示すことじゃないかなと思っています。民主党の場合にはちょっとほかの面で引っ掛かるところがありますので、ちょっと難しい面があろうかというふうに思いますけれども、(発言する者あり)はい、はい、ということでございますが、一生懸命質問してまいりたいと思いますので、緊張感を持ってまたお答えいただきたいなというふうに思っています。
 もう一つ、午前中でちょっと感じたのは、今回のイラク支援法を通じて、やはり恒久法というんでしょうか、基本法の必要性の認識がやっぱりかなり全体で高まってきたんではないかなというふうに思っております。私もやはり、昨日申し上げましたように、かなりテロ特措法のころからやっぱり限界が来ていた、やっぱり原理原則をきちっと作った上で今回の法律もやっぱり審議すべきだというふうに思っているところでございます。
 先ほど官房長官の方から、大きな法律になるのでおいそれとは簡単にはいかないんだというようなお話もありましたけれども、じゃ、昨年から本当にじゃ審議をし始めたかというと、必ずしもそういう形跡は残念ながら見えないということでございます。昨日も小泉総理が、時期が来たらとか議論が煮詰まったらとかというお話がありましたけれども、今回のイラク支援法を機にすぐやるべきだというふうに思いますけれども、冒頭、ちょっと福田官房長官にお伺いしたいのは、じゃ、いつになったらやるかということについて具体的にお答えいただければ有り難いなと思っています。

○国務大臣(福田康夫君) 私も、恒久法と申しますか、自衛隊の活動を含めた国際平和協力活動について更に恒久的な法体系を持つべきであるという、こういう御意見がこの法案審議の中でかほど与野党問わずいろいろな方々から提案と申しますか要望があったということに実は驚いているんです。ここまでやっぱり国際平和のために日本がやっぱり何かしなければいけないんだというその意思が明確になってきたんではないかというように思いますので、そういうような御意向を受けて、政府としてどういうふうに取り組むか、それも早くというお話ございました。国会日程その他ございます、また、この政権がいつまで続くかという問題もありますので、にわかにお約束し難い問題がございますけれども、しかし、ただいまの御発言はしっかりと受け止めて頑張ってまいりたいと思います。

○若林秀樹君 今おっしゃられたことを私なりに判断すると、できる限り早くということで承ったというふうに理解しておるところでございます。
 本題に少しずつ入りたいと思うんですけれども、大量破壊兵器の問題については私はやはり大きな問題だというふうに思っておりますし、我々もイラクが大量破壊兵器を使用しないというふうに思っているわけでは全くありませんので、確かに、使用しあるいは持っていたという事実は現実にあるわけです。しかし、あの時点で本当にあったかどうか、やはりそれはいろいろ議論の分かれるところだというふうに思いますけれども、先ほど、午前中、官房長官の発言で気になったのは、アメリカが調べて発見しても信用できないというようなお話もありました。現実にIAEA等、UNMOVICも含めて、排除したのはアメリカであり、それを支持したのは日本政府であります。
 私は、四月の時点だったと思いますが、それではもうバグダッドは陥落したんだから、国際機関を入れてインスペクションしたらどうだということを私は川口大臣に申し上げました。そうしたら、川口さんは明確に、明確ではなかったかもしれませんが、それを是としないような発言をされましたので、私はここは非常に矛盾するところではないかなというふうに思いますけれども、その辺について、川口さんの御見解があればお伺いしたいなというふうに思います。その前に、はい。

○国務大臣(福田康夫君) 川口大臣にこの後答弁をお願いいたしますけれども、その前に、私、午前中に質問ございまして、答弁いたしました。それで、そこでもって、これから千三百、千四百というそういう要員が行く、これは国連の調査団だと、こういうふうに申し上げました。これは実際にはそうじゃないんです。これは間違いでございまして、後で話を聞きましたらば、千三百、千四百というのは米英豪の要員から成る調査団と、こういうことでございます。イラク監視グループという組織が大量破壊兵器の捜索活動をこれは行っている、そして我が国もその動向を注視をしているところである、こういうことでございます。これが正確なところでございまして、もうその監視というか捜索を始めている。
 そして、じゃそれを、じゃそのまま信用するかどうかということになりますと、これは、これは私どもは信用しますよ、だけれども皆さん方は信用しないということはあるんだろうというふうに思いますから、それはやはり可能な状況が生まれてくれば、最終的な検証というのは国連等の何らかの国際的な関与が重要である、こういうことになると思っております。そうすればいろいろな議論をしなくても済む、信憑性について議論をしなくても済むと、そういうことでございますので、そういうことになるだろうというように思います。そういうことについては国連決議の中にも、はっきりとではないけれども、その趣旨が盛り込まれているというように承知しております。

○国務大臣(川口順子君) 今、官房長官が、あるいは先ほど官房長官がおっしゃったことを今御説明更にございましたけれども、そういうことと違うことを今まで申し上げているわけでは全くございませんで、私が今まで申し上げ、ごく最近でもそういうふうにお話をしていますけれども、調査、査察について、今後そういった査察が可能な状況になれば、少なくとも最終的には、最終的な確認ですね、国際的な関与が重要であると、これはずっとこういうことを申し上げてきているわけです。
 それで、一四八三、これが通りましたけれども、その中で、イラクが武装解除の義務を果たさなければならないことを再確認をするということを一四八三で言っています。そして、イギリス及びアメリカに対してこの点についての自らの活動、今アメリカが千人、米英を中心としてやっているわけでして、この活動を安保理に報告するように慫慂するということを決議で言っているわけですね。
 それからさらに、UNMOVICやIAEAの権限を再検討する安保理の意思を強調をするということを言っている。したがいまして、国連の決議で、今アメリカやイギリスが中心になっているということを前提にして、それを報告を国連にしなさいというのが国連の今の立場であります。
 我が国としては、それに加えて、最終的には、査察が可能なような状態になれば、国連、国際的な、最終的には国際的な関与をして確認をするということが重要だということを、これはずっと言ってきていると、そういうことでして、特に官房長官のおっしゃったことと私の今まで申し上げてきていることと違いがあるというふうには私は感じておりません。

○若林秀樹君 確かに、一四八三後の話だと今思います、今のお話は。ただ、私が申し上げたのは、四月九日の時点で、その時点でもう既にやっぱり国際機関を入れてインスペクションすべきではないかということに対して、川口さんはその必要はないようなことをおっしゃられたんで、私はちょっとそこは違うんじゃないかということを申し上げただけでございますので、今おっしゃった一四八三のことを中心にそのお話は理解できましたので、それで終わらせていただきたいと思います。
 それで、もう一件、大量破壊兵器のことで、昨日の新聞報道で、ブッシュ大統領が一月の一般教書演説で言及したイラクのウラン購入疑惑、ニジェールからイラクへのウランの移転について箇所があったんですけれども、それはでっち上げの情報に基づいていたということをアメリカがやっぱり正式に認めたわけですね。これはやっぱり大変なことだというふうに私は思いますけれども、まずこのこと自体について日本政府としての御見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 報道官がどのような説明をしたかということについては後で安藤局長の方から話をしてもらいますけれども、基本的に、確実でない情報に基づいた説明が一般教書の中にあった、ただ、基本的なそれが立場、問題についての立場を変えることになったかというとそうではないということを報道官として言ったというふうに私は承知をいたしております。そういうような部分があったということであると思いますが、そういうような確実でない情報に基づいた文章が一般教書の中に入ったということは事実だと思いますけれども、問題全体の方向性あるいは重要度がそれによって変わったわけではない、それがあったか、なかったかということによって問題の本質は何ら影響を受けていないというふうに考えます。

○政府参考人(安藤裕康君) フライシャー・ホワイトハウス報道官の発言ぶりでございますけれども、これは九日の日に、現在訪問中の南アフリカにおけるプレス懇談の中でこの問題について言及しておられるわけですけれども、ちょっと引用させていただきますと、一般教書の演説後、偽の文書に関する情報を入手した、イラクによるウラン入手に関するこの情報は大統領演説のレベルまで上がるべきではなかった、しかし、対イラク戦争は、フセインによる化学及び生物兵器といった大量破壊兵器の保有と核関連プログラムの再構成の試みに由来する脅威に基づいていたのである、フセインに対する戦争を開始する理由は一般教書演説が行われた日と同様今日も正しいものである、後になって分かったことにより、現在、我々はウランとニジェールの関係は正確ではなかったことを承知している、ウランに関する特定の一文が間違っていたからといって根本的な主張が正しかったことが変わるわけではないということを理解するのは重要である、こういうふうに言っておられるわけでございまして、正に今、大臣が言われたように、このことが間違っていたからといって根本的な主張が正しかったことが変わるわけではないというふうに言っておられるわけでございます。

○若林秀樹君 分かりました。
 しかし、根本的な主張が変わるわけじゃないというのは、これはアメリカ政府の立場ですから、それを日本政府が是認して、私もそう思いますと、本当に今、政府の見解として言うんですか、それを。遺憾だと思わないんですか、この事実に対してねじ曲げて入れたということ自体は。それは、はっきり答えてください。

○国務大臣(川口順子君) ここの部分については、IAEAのエルバラダイ氏もしばらく前に、もっと早い時期に確報、確定された情報ではないということを言っているわけでして、米国政府としてこの部分についてもう少しきちんとした精査があってよかったという気は私としていたしております。

○若林秀樹君 遺憾だということだというふうに思いますけれども。
 私は、やっぱりこれ一つ取っても、事実じゃないことを予算教書に入れるというそのもののこと自体やっぱり体質じゃないかと。要は、それを、いろんなことを捏造してやっぱり事実として作り上げていくんではないかということも思ってしまうわけで、日本政府としてはそういう情報を信じるしかないという中で判断しているわけですから、私はやっぱりこういう事実は非常に重要な問題だなというふうに思いますし、日本政府としてもしっかりとしてそれをアメリカに言うべきではないかなというふうに思いますが、どうですか。

○国務大臣(川口順子君) 前にも申し上げましたけれども、我が国のこの問題についての判断、これは基本的に、先ほど別な委員の方からの御質問でもお答えをしましたように、査察団の累次の報告等をベースにいたしまして、そして英米等の情報を参照にして我が国としては判断をしてきているわけです。
 それで、その査察団の報告について言えば、それは先ほど別な委員の方に御答弁を申し上げたとおり、様々な疑惑があるということは全くそのとおりであるわけでございます。
 先ほど言いましたように、アメリカとしてもう少し、これほど重要な文書、一般教書というのは世界が注目している文書ですから、そこに入れる情報についてはもう少し精査をしてもらったらよかったというふうには思いますけれども、我が国のこの問題についての判断がこれによって何ら変わるわけではないということでございます。

○若林秀樹君 これ以上この問題で言及は避けますけれども、一般教書という極めて重要な、世界が注目している、アメリカはこれからこうするんだという話の中にこういうことが平気でホワイトハウスの中で上がってくるということ自体は、私は体質に非常に問題があると。そのほかの件についてもこういうことがあったんではないかということを、疑念を生じるような私は行動ではなかったかなというふうに思います。
 その上で、いずれにせよ、今後また大量破壊兵器のことについては引き続き問題にしていきたいと思いますけれども、今回の米国の対イラク攻撃、結局のところ現時点では大量破壊兵器が見付かっていないわけですから、これだけ見ますとやっぱりイラク政権の打倒、サダム・フセインの排除ということを本当に目的とした今回の対イラク攻撃ではなかったかということを、現実としてそうなっていることに対して、福田官房長官として国民にこれをどう説明するのか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 現在、大量破壊兵器について、先ほど申しましたように捜索が行われているわけですね。今までもしたかもしれないけれども、専門的な捜査でなかったということもあったと思います。これからは相当な人数、千人以上の人数を投じてやると、こういうことでありますから、その結果を待つべきだろうと思います。
 しかし、じゃこの戦争がそれでどうだったのかという、こういう評価になりますが、それはその武力行使を決定するまでの経緯というものから考えて、それは妥当性は十分にあったというように考えるべきではないのかなと、こういうふうに考えております。

○若林秀樹君 いつになったら発見できるのかという感じはします。アメリカは、イラク攻撃の大義ということでは、直前になってサダム・フセインの排除だということを明確に言っておりましたので、ややそこはすり替えていると。ただ、我が国政府としての根拠は、やっぱり大量破壊兵器が問題であるということになっていますから、この辺は大分アメリカとまた事情も違うんではないかなというふうに思います。
 私は、一定の時期に来たら客観的な評価を下すのは筋だというふうに思っておりまして、仮に相当期間が経過してもなお大量破壊兵器が発見されないとしたら、一体じゃどのように判断を下すんだろうかということについてどう考えるか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) ただいま私からお答えしたんですけれども、大量破壊兵器の捜索が行われる、そしてそれも最終的には国際機関が承認するというような形で公表される、その結果に基づいて判断をすべきものでありますけれども、しかし、この武力行使を行ったこと、これも繰り返しになりますけれども、これは、そういう決議の、六七八からずうっと来ているいろいろな決議に基づいて、その筋道を立てて武力行使に至ったという経緯がございます。
 そして、武力行使についても、それはいろいろな、決断をするときにいろいろな意見がありました、いろいろな判断があったわけですね。ドイツもフランスも、またほかの国もいろんな考え方を持っていた。じゃ武力行使をしないでどういう方法があったのかということについて、意見は決してまとまっていなかったと、こういうふうに思います。
 また、もう少し私見も交えて申し上げれば、それでは、あの武力行使を決断するときに、米英軍が二十万以上、中東地域に集積されたといったようなそういう事実、そしてそのことがあったからこそ、イラクも嫌々ながら査察に、程度問題でありますけれども、ある程度協力をしたと。こういうこともあったわけでありまして、やはりそういうような武力的な圧力というものが、査察をきちんとやるためにはその後も必要なんだろうと。そうすると、だれがそういう部隊を維持するかと、こういったような問題もございます。そういうことについて具体的な方策、あの段階で集約できなかったということが、やはり武力行使に踏み切らざるを得なかった一つの大きな原因だろうというように思っております。
 そういうようなことを申し上げて、私は、これがその正当性があるのかどうかということに、これはいろいろな議論があるかもしれませんけれども、筋道としてはそういう説明ができ、またそれは妥当性は十分にあるというように考えております。

○若林秀樹君 今おっしゃられたことは、仮に大量破壊兵器が見付からなかったとしても、政府としては米軍の対イラク攻撃を支持するという御発言ですか、今のは。そういうふうにちょっと聞こえたんですけれども。

○国務大臣(福田康夫君) それはもう支持しちゃったんです、しちゃったんですよ。それを取り消すことはできないですね。
 しかし、それはきちんとした体系を持って考えて、その結果であるということでありまして、じゃ、あのときにほかの判断があって、それがもっと正しかったんだと、より正しかったんだということが言えたのかどうかということになろうかと思います。

○若林秀樹君 ただ、支持をしたといっても、仮に大量破壊兵器が見付からなかったということに事実として認定されたならば、それでも支持するかということに対しては、これは非常に大きな問題だというふうには思いますので、そこはやっぱり政府として何らかの責任を問われるようなところだというふうに思いませんか。

○国務大臣(福田康夫君) しかし、大量破壊兵器の存在については、国連決議にもございましたし、またそれから以降、一四四一以降も数度の査察もあったと、その結果も出ているわけであります。そういうことを根拠にして、大量破壊兵器はあるんだというのは国際社会の一致した見解であったのではないかと思っております。

○若林秀樹君 国際社会の一致した見解では私はなかったと。そこで分かれたからいろいろ問題があったということで、あの時点でですね。何かありますか。

○国務大臣(福田康夫君) それは、大量破壊兵器の存在についてはほとんどの国際社会の国々が同様の見解を示したというふうに思います。

○若林秀樹君 この問題については、また引き続き同僚議員の方から質問をさせていただきたいと思います。
 次に、質問に移りたいというふうに思いますが、今回の法律のそもそも論の中で、何ゆえにPKO法が法律を修正してでも使えなかったのかどうかということについてちょっと伺いたいなと、率直な疑問としてですね。
 確かに、PKOを適用するときには相手国政府の同意というものが必要だというふうに思います。今回の法律で派遣をするときに、法律の文言上はイラク施政を行う機関の同意ということで、CPAにこれはなるんでしょうか。多分そういうことであれば、CPAの同意をもって自衛隊等の派遣が可能になるということであるとしたならば、なぜゆえにPKO法を修正をしてCPAの同意を得て派遣できるようにしないのか、その辺の理由についてお伺いしたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 今回の一四八三を踏まえた上で自衛隊を派遣するということにつきましては、これは今、委員も御指摘になりましたけれども、CPAというものが決議一四八三でもってその任務を与えられたということになるわけでありまして、それに基づいて行動すると、こういうことになります。
 じゃ、PKOでこの活動ができないのかということになりますと、これは御案内の合意、同意、それから中立、撤収、武器と、こういったような五原則ですね、これがありまして、その要件に、少なくとも停戦合意ということについては、これは要件が満たされたというようには考えにくいだろうと、今の状況において。ということがありますから、PKO法を適用するのはこれは困難であると、これが政府としての判断でございます。
 この状況については、将来、治安の状況とかそういうようなものが変化があり、また同時に、暫定政府が立ち上がるといったようなそういう状況の変化があれば、またその段階で考えられることはあるかもしれないけれども、少なくとも、その一四八三でもって、これでもって活動ができるということになれば、PKO法の発動が更に必要だという状況ではないというように考えるべきだと思います。

○若林秀樹君 そう言われますと、今回の自衛隊の派遣も主体的に活動するということが原則ですよね。じゃ、何ゆえにCPAの同意を得なきゃいけないのかということを法的に書くのは、どういう論理なんですか。

○政府参考人(増田好平君) CPAの同意、若しくは、原則は当該外国の同意というところでございますけれども、これはいわゆる国際法上の領土主権というものとの関係において、その国の政府の同意を必要であると。今回の場合、この法案の場合には、イラクにあっては正に正統政府がございませんので、今、先生から御指摘のような施政を行う機関の同意ということで足りるということに解して、このような規定を置いているところでございます。

○若林秀樹君 分かりました。取りあえず、基本的には領土主権としてのCPAを一四八三が国際社会として認めているんであるから、そこの同意を得て自衛隊を派遣するという理解ですね。取りあえずそれを承って、一度頭の中で整理して、また質問があればしたいというふうに思っています。
 今回、衆議院等の議論を通じて意外と出ていない質問が、仮に今回の法律が成立したとして、この法律によって掛かる経費の見込み、そしてその財源がどのぐらいになるのかについて余り言及がなかったと思いますので、それについてちょっとお答えいただきたいと思います。
 これは官房長官でよろしいでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) 一言で申し上げますと、現時点で復興費用の規模などについてはっきりしたことを申し上げると、これは困難です。したがいまして、額は決まらないから、どういう調達をするかというそういう問題も、これは今申し上げるような段階になっていないと、こういうことであります。
 現在は八千六百万ドルの対イラク支援、これは実施決定をいたしております。これは、当面の課題として教育、保健、電力等の生活基盤の再建を優先する、そういうふうなことでもって支出を決めているわけであります。今後の復興支援にかかわる経費ということになりますと、本年の十月に開催予定の支援国会合までに、国連又は世銀が中心となって行うニーズアセスメントがございます。また、CPAによります予算の編成作業がございますので、そういうものを通じて明らかになってくると、こういうことになります。
 そういう中でもって、我が国がどの程度の支援を行って、又はその財源を調達するかということはこれからの課題なのでありますけれども、そういう今言いましたニーズアセスメント、CPAの予算の作業というものを見ながら考えていきたいと考えているところでございます。

○若林秀樹君 確かに、これからニーズアセスメントをしていろいろなパッケージを決めて予算額がだんだん決まってくるんだと思いますが、ただ、現実的に自衛隊の派遣についてはもう十月末までかなりの装備の調達とか訓練とか、私は、様々なことがやっぱり掛かるんじゃないか。それは予備費で充当されるんでしょうか。お答え、長官。

○政府参考人(増田好平君) 官房長官からのお答えに尽きているわけでございますけれども、正に対応措置、具体的な活動内容がこれから決まっていくわけでございますので、その正に必要となる費用の規模等に応じまして財源手当てをどうするかもまた考えていくべきものと考えておりまして、現時点でどのような形でその財源を手当てするかということを申し上げるのは困難であるということを御理解願いたいと存じます。

○若林秀樹君 ただ、基本計画をまとめるためにいろいろな作業をやっていくわけですよね。当然、そこに掛かる費用というのは出てくるだろうし、取りあえず当面持っていくものについての装備が本当に今のこれで足りるかどうかということについては、これは現実的に費用掛かりますよね、これからいろんなことを準備して基本計画が行われるまで。
 じゃ、基本計画ができるまで一銭もお金は掛からないんですか。そんなことないでしょう。それは何で、じゃ、充当するんですか。それは予備費ですか。じゃ、それはちゃんと予備費ですと言ってもらわないと、今の答えにはなっていないですよ。

○国務大臣(福田康夫君) これも金額によるわけです、どういうような規模で活動を開始するか。しかし、その前にやらなきゃいかぬのは調査団を派遣しなきゃいかぬ。これはもう徹底した調査をするわけでございますけれども、当然そういうお金が掛かるわけです。こういうのは、この程度であれば防衛庁の今の予算の中で処理できるのではないかと思いますけれども、それを超える、要するに本格的な支援が始まるということになれば、まあそれは規模にもよりますけれども、予備費で取りあえずは対応するということになると思います。

○若林秀樹君 予備費ということになるんでしょうけれども、当然、予備費で足りなければまた秋の補正予算等で、そういうことで手当てするということになるんじゃないかなと思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) はい。そのようにお考えいただきたいと思います。

○若林秀樹君 いいですか、石破長官。不思議そうな顔をされている。

○国務大臣(石破茂君) それは官房長官がお答えになったとおりで予備費で見るべきものですが、それが非常に大きな金額になれば、それは当然補正予算ということになろうかと思います。
 ただ、先ほど来お答えを政府としていたしておりますように、幾ら掛かるかというのは実際現地のニーズを見なければ分かりません。これであれば幾らとか、これであれば幾らみたいなことは、それは机上の計算はできますが、実際にそれが、例えば浄水ということにいたしましても、どのぐらいニーズがあるかでどれほど持っていくかは変わりますので、ここで確定的なことが申し上げられないのはそういうわけでございます。

○若林秀樹君 そういうことで取りあえず理解をさせていただきます。
 次の質問に移りたいと思いますけれども、先日、矢野外務副大臣が韓国に行かれたということで、外交通商相と会談をされて、今回の有事法制からイラク法制等については、平和憲法や専守防衛の原則の下、透明に進められることを期待するということで、先ほど官房長官が、自衛隊を派遣することについては国際社会から理解は得られているというようなお話もありましたけれども、本当にそうなのかなと。やっぱり懸念する声もいろいろあるんじゃないかなというふうに思いますが、副大臣としてこの会談を通じてどういうふうに感じられたか、そして、我が国としてアジア諸国あるいは中東周辺諸国に今回の措置についてどういうふうにこれから説明していくのか、その辺の考え方についてお伺いしたいと思います。

○副大臣(矢野哲朗君) 七月の三日、四日、韓国を訪問してまいりました。
 私の思いでありますけれども、湾岸戦争後、PKO法、そして周辺事態法、そしてテロ特措法、有事法制、今回ということで、一連の経緯があったわけでありまして、この推移というものをやはり近隣諸国に正確に伝えなければいけないなという思いがまず一点であります。
 そして、特に韓国の場合に、先般、盧武鉉大統領が訪日されて、あの国会演説で、本当に未来志向の下にひとつやっていこうという、私なりに感銘を受けた演説でありましたけれども、そういう一つの演説の中に、過去を振り返って、すべて過去が清算されたわけではないというふうな私なりの思いもあります。ですから、誠意を尽くしていきたいというふうな一つの思いもありました。
 それでもって、先方、潘基文大統領外交補佐官と、それから羅鍾一大統領国家安全保障補佐官、そして尹永寛外交部長ですか、お会いさせていただきました。それぞれに同趣旨の、正に憲法の枠内で、専守防衛という一つの思いの中でのひとつ今回の決定でありますということを正確にお伝えし、先方としてもその旨了解したというふうなやり取りだったと思っています。

○若林秀樹君 それは今、韓国に行ったときの御感想だと思いますけれども、ほかの周辺諸国あるいは中東諸国もこの自衛隊の派遣についてはそれなりに理解が得られるだろうという御認識なのか。もし、川口大臣、中東を訪問されていますので、もちろん一か国一か国聞いているわけじゃないと思いますが、その辺の御感想をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 韓国については、今、副大臣がおっしゃったとおりでございます。
 それから、中国についても、これは中国側の記者会見での場の発言ですけれども、日本が専守防衛政策を着実に遵守をし、平和発展の道を堅持することは、日本自身の利益に合致し、地域、世界の平和と安定に寄与するという旨の発言があったというふうに承知をしておりまして、基本的にその考え方としては、日本がそういうことでやるという説明をしているわけですから、そういうことであれば理解をするという趣旨の、意図の発言であるというふうに思っています。
 総理も近隣の国に行かれて、エジプトそれからサウジに行かれて、あるいはほかの方々も大勢その地域は訪問していますけれども、きちんと説明をして日本の意図を理解をしてもらうということは何よりも大事だというふうに思っております。そういった考え方で説明をし、それぞれの理解はもらっていると私は思っております。
 引き続きいろいろな側面で、いろいろな場で説明を続けることは大事だと考えておりますので、その努力も今後やっていくつもりでおります。

○若林秀樹君 ありがとうございました。是非、引き続きそういう説明努力を続けていただくようお願い申し上げたいと思います。
 次に、今のイラクの治安状況でございますが、私が訪問させていただいたのは六月初旬でありまして、アメリカからの説明は、前と比べると少し良くなりつつあるというような説明もありました。ただ、現実には、その後のいろいろな衝突等発生して、現実に亡くなられた方が多いという状況の中で、今現実に日本政府として治安状況をどういうふうにとらえているのか、具体的な数字も含めて教えていただきたいと思います。
 もし、ちょっと細かいですけれども、可能であれば五月一日前と後に分けて、戦闘で死んだのか事故で死んだのか、そしてその中でイラク人の人の数も分かれば概要を教えていただきたいと思います。安藤局長。

○政府参考人(安藤裕康君) 治安でございますけれども、現時点におきますイラク国内の情勢についてちょっと申し上げますと、全般的な情勢といたしましては、フセイン政権の残党による散発的かつ局地的な抵抗活動というものが行われているわけでございます。
 地域で申し上げますと、まずファッルージャあるいはラマーディ等の西部地区でございます。それからティクリート等があります中部、それからクルド人地区を除きます北部、この中にはモスル等も入ってまいりますけれども、この辺が治安が不安定であるということでございますけれども、ただ、それら地域全部が不安定ということではなくて、今申し上げたような特定の地区の限られた地域ということが言えるかと思います。
 具体的な最近の事件といたしましては、ラマーディ西部でございますけれども、ここで武装したイラク人の襲撃によって米兵四人が死傷しているということでございます。それからまた、バグダッド市内そのものでも米兵をねらった事件がかなり発生をしておるような状況でございます。他方、バグダッド以南でございますが、ここの地域では、先般、アマーラ付近でイギリス人の兵隊六名が死亡いたしましたけれども、こういうふうな散発的な事件を除きますと、基本的には現地警察と米軍の協力によりまして治安が改善されつつあるという現状でございます。
 それから、死者の数等で見てみますと、米軍につきましては、七月七日まで全体で二百七名が米軍の死亡者でございますが、このうち五月一日以降ということでいいますと六十九名でございます。したがいまして、五月一日以前は百三十数名でございますけれども、五月一日以降が六十九名ということでございます。イギリス人につきましては、イギリス軍の死亡者につきましては、六月二十四日まで、これちょっと古い数字でございますけれども、全体で四十三名、これは五月一日以前も含んでおります。他方、五月一日以降になりますと十名ということでございます。
 その後、五月一日以降の死亡者数を月別に見てみますと、米軍は、五月が三十七名、六月が二十八名、七月が四名ということでございまして、ただいま委員御指摘のように、六月はちょっとその数が減っていることは事実でございます。ただ、七月になって増えているかどうかというところは難しい点でございまして、七月の三分の一で四人ということでございますから、そんなに死者の数が大幅に増えているという状況ではないのかなというふうに考えております。
 それから、民間人でございますが、イラクの民間人でございますが、これについては、何しろイラクの現在政権ができておりませんのできちんとした数字を把握することはできません。したがいましてマスメディアの報道等を通じるしかないわけでございますけれども、ちょっと古い数字では、現在まで少なくとも三千人を超える方々が、イラク人がお亡くなりになったというふうに認識しております。
 それから、全体の、こういう散発的な抵抗運動が組織化されているかどうかという点でございますが、これについてはブレーマーCPAの長官が、最近の攻撃は戦略性のある脅威ではなく、自暴自棄となった小規模集団による散発的な行為であるというふうに述べられております。
 以上でございます。

○若林秀樹君 ありがとうございました。
 数字上は若干減っているというようなお話だったというふうに思いますけれども、本来であればこの治安はもっともっと良くならなきゃいけないんですけれども、ある意味じゃ相変わらず高いレベルでそれなりに散発は続いているのかなという印象を、私もそういう、取ってもいい数字ではないかなというふうに思います。
 そういう意味では引き続き大変な状況にあるということだと思いますし、一方、今まではイギリス人は余りねらわれなかったというか、死亡者がいなかったんですけれども、この間のアマラですか、六名、そして、聞くところによると最近も何か亡くなられたというお話もありますので、最初は米軍だけねらわれているのかなと思うと、必ずしもそうではない状況がありますし、物取り等、別に米軍だけということではなくて、とにかくチャンスがあらばということになるんじゃないか。そういう意味では、非常に危険性は、どの軍隊が行っても起こる可能性、私もあるんではないかなという感じはしているところでございます。
 次に、我が国の支援を考える上で、やはり最終的にはイラク国民のためになっているかどうか、どういうニーズがあるのか、そして我が国の国際的な社会の位置付け、あるいは日米関係等も考えなきゃいけないと思いますが、重要なのは、我々はどういう能力があるのか、どういう力があるのか、どういう支援ができるのかという見極めもこれは非常に重要なことではないかなというふうに思います。行ってみたものの全然役に立たなかったとか全然違うことをしてしまったとかいうことになると大変ですので、そういう意味で、やっぱり自衛隊の能力、どこまであるかというのは一般国民にはほとんど分からないところであります。
 私は、例えば地雷の除去というのは部隊として自衛隊ってできるんじゃないかというふうに思っていましたところ、聞くところによると、部隊として地域を与えられてそれをやるというのはできないという話をいろんな人から伺いました。そういう意味では本当に、いろんな、後方支援以外で何が本当に自衛隊ができることがあるのかということについて、水の浄化というお話もありましたけれども、それ以外に何か考えられるようなことというのはありませんでしょうか。当然いろんな検討をされているとは思います。
 済みません、官房長官。かなり後ろの質問に行ってしまいましたので探すのに苦労されているというふうに思いますが、お答えいただければ有り難いと思います。

○国務大臣(石破茂君) 自衛隊の能力ということでございますが、昨日、委員の御質問に対しまして水の御説明をいたしました。これは、昨日も申し上げましたが、民間ではほとんど持っていない、そして他国の部隊でもそんなものは持っていない。私どもは災害派遣という任務がございます。阪神大震災のときもそうでございますが。そういう能力というものを他国の軍隊に比べてもかなり高いレベルで有しておると思っております。
 では、ほかに何があるのだというふうに問われますと、これは実際に現地でニーズがあるかどうかということとは直接関係ございません、例えば発電というような能力がございます、あるいは医療というものがございます。本当に、いわゆる人道支援、イラクの方々に喜んでいただけるという意味で申し上げるとするならば、発電でありますとか医療でありますとか、そういうことを挙げることができると思っております。
 私どもが持っております能力というのは、ほかに比肩し得る、あるいはそれ以上のものを持っておると考えております。

○若林秀樹君 地雷除去はやっぱり難しいという認識でよろしいでしょうか。私はかなりニーズはあるんじゃないかなと思ったんですけれども、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) これは、私どもの装備といたしまして、例えば地雷原があります、地雷原を通っていかねばならないと、そのときに通路を確保せねばならない、私どもの部隊が通りますための通路を確保しますためのそういうような地雷除去能力というのは持っております。ところが、面的に、広い面で地雷を除去するということを考えてみましたときに、そういう能力を私どもは有しておりません。

○若林秀樹君 分かりました。
 あと、現地に行って実際どういうニーズがあるかどうかは調べないと、最終的にはそれはマッチするかどうかというのはこれからの話ではないかなと思います。
 その中で、やはり私は、やっぱり人間が行く以上、コミュニケーション能力というんでしょうか、必要じゃないかなというふうに思います。コミュニケーションというのは、単に言葉だけじゃなくて、現地の習慣、文化あるいは生活スタイル等様々なことを理解していないと、全然違うことで衝突してしまってお互いに理解ができなかったりしますと、これは非常に大きな問題になるんではないかなというふうに思いますが、聞いたところによると、語学、しゃべれる人も非常に少ないようですし、今まで駐在でそこへ住んだことはもちろんないわけだというふうに思いますが、この辺、どんなふうに考えて、どういうふうにこれから訓練されるつもりでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 語学は、これはもう、今のところ、私どもでアラビア語圏に在勤をしておった防衛駐在官、これの数が八名でございます。私ども、アラビア語をしゃべるということを元々予定をしておらなかったものでございますから、これはもういかんともし難い話でございます。英語がしゃべれるとかフランス語がしゃべれますとかドイツ語がしゃべれますとか中国語がしゃべれますとか、そういうのは大勢おりますが、アラビア語というものをなかなか想定しておらなかったことは事実でございます。
 しかしながら、行きまして全然言葉が通じないということになりますとコミュニケーションも何もできません。仮に法案が通りまして派遣をされるということになりますと、そういう語学の習得は当然必要でございます。ただ、ぺらぺらとアラビア語がしゃべれるようになるにはこれは大変な時間を要しますので、基本的なコミュニケーションができるような、そういうような、何というんでしょうか、日常会話程度というふうによく申しますが、そういうものはきちんとできるようにしていきたいと思っております。それもきちんとした教育課程を通じ、課程といいますかね、そういうようなプログラムに従ってやりたいと思います。
 それからあと、イスラムの文化というものは、これはお詳しい先生方もいらっしゃいますけれども、やはり我々の文化とは違うところがあるだろうと。それは生活風習もそうですし、それから宗教の理解というものも私は必要なのだというふうに思っております。最低限、向こうに行って、文化の違いあるいは宗教の違いから無用の混乱が生じないようにということには万全の配意をしてまいる、そのように考えております。

○若林秀樹君 日常会話と簡単に言いますけれども、日常会話を実際に使いこなすというのは、これ相当大変ですし、そんな簡単なことじゃないな。通訳雇うといっても、じゃ自衛隊で一緒に行きますといったら行かないと思いますよね、多分。外務省の人もアラビア語がしゃべれる人一杯おられるようですから、もし本当に安全ならそういうことも考えられないわけじゃないと思いますけれども、非常に私は重要なことだと思います。
 本当に、じゃ、砂漠において、あの暑さの中で武器等が本当に、あるいは自動車等が動くのだろうか。仕様はほとんどそのものになっていないと思いますから、その辺もいろいろあるんじゃないかなというふうには思いますけれども、あえてもうそこは聞きませんけれども、そういう準備というのは非常に私は大変なんではないか。そして、なおかつ、やっぱり人間が行くということですから、全然知らないところに行って何が起こるか分からない、そのときの精神状態、コントロールも、非常にこれも大きな問題じゃないかなというふうに思います。
 是非、私が今、コントロールするというのは民主党の立場とはちょっと違うことで、もし行くんであればということで御理解をいただきたいというふうに思います。(「賛成、賛成」と呼ぶ者あり)賛成じゃないことを言いますが。
 米国の指揮下に入るということをさんざんこれまでおっしゃっていましたけれども、昨日も申し上げましたように、安全なところへ行って米軍の指揮下関係なく主体的に活動をするんだというすごいきれいなお話がありますけれども、実質的に、逆に、やはり米国の協力を得ないと、いざというとき、あるいは活動を円滑にするとき、もうとてもじゃないけれども、やっぱりできないはずですよね。
 その辺に、米国の指揮下と協力を得るという、やっぱり線引きというのは何らかの考え方があるんじゃないかなというふうに思いますけれども、もしその辺、お考えを聞かしていただけるなら。

○国務大臣(石破茂君) それは、我々の行います活動につきまして調整をすることはございます。それぞれの軍隊が復興人道支援をやっておるわけでございますから、それぞれ勝手な判断で勝手なことをやると整合が取れなくなる、昨日お答えをしたとおりでございます。したがいまして、その調整ということは行います。
 また、米軍に守ってもらってということがよく言われるわけでございますけれども、米軍に守ってもらうということを前提として参りますと、これは自己完結性というものと整合が取れなくなっちゃうわけですね。我々が自己完結性というふうに申しておりますのは、それは、例えば電気にしても、水にしても、食糧にしても、住居にしても、医療にしても、それは自分たちでできますということでございますが、基本的には、自分たちの安全、身を守る安全は自分たちでやるということも含んでおる概念でございます。したがいまして、アメリカに守ってもらうということを前提にして、我々は、仮に法案が通って派遣をするということになりましても、そういうことを考えているわけではございません。
 しかしながら、米軍は米軍で、自分たちは活動をします。結果としてそういうことは生じるかもしれません。米軍が存在しておることによって我々の安全が更に高まるということは当然あることでございます。しかし、そういう状態があるということと米軍の指揮下に入るということは全く別のことでございます。要は、我々がやりますオペレーションが米軍の命令によってではなく、我々が主体的に、しかしながら調整の下に行われるということでございまして、指揮命令という形にはこれは入るものではない、そういう認識でございます。

○若林秀樹君 もう一つだけ、じゃ、その関連で、米軍が、仮に守ってもらうとしたら、何の根拠でそういうことが可能なのか、あるいは協定を結ぶのか。当然、日米安保ではないというふうにそこは思いますけれども、その辺はどうなんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、実際に行ってみないとこれは分かりません。どういう形で、これ、協定という形になるのか何になるのか、これまた外務省との協議が必要だろうと思っております。
 しかし、私が今申し上げましたのは、合衆国は合衆国を守る、合衆国の自己完結性というのがあるわけでございます。そういう中にあって我々の安全に資するという場面は生ずるだろうということでございまして、米国とどういう関係を結ぶか、これは協定も含めましていろんな形があり得るだろうと思っております。これは今後の検討でございますが、基本的に、そのことは我々が米軍の指揮下に入るということではございません。

○若林秀樹君 取りあえず理解しました。
 先ほど来、戦闘行為はどういうものなのかということについては、これまでの議論で伺っているところですが、じゃ、具体的にその戦闘行為かどうかということを現場でどのように判断するのか、どういう指針を出すのか、現実問題としてそういうことが可能なのかどうか、非常に分かりやすいようにちょっとお答えいただきたいと思います。
 長官は、計画性、組織性、継続性、国際性を、どうやって現場で瞬時にこれを判断するのか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 先ほどのお答えに付け加えることをお許しをいただきたいと思いますが、これ、米英軍は治安の維持という任務も負っております。それはイラク全般の治安維持ということも併せて負っておりますので、そのことによって我々の安全ということに資するということもありますことを申し添えさしていただきたいと存じます。
 国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し又は物を破壊する行為に該当するかどうか。そのときに、私は、計画性、組織性、継続性、国際性というようなことを申しました。そんなことは現場でどう判断できるんだいということだと思います。
 これは、本当に長い時間掛けて、どうだろう、どうだろうといって考えて判断するようなことには当然ならないわけでありまして、その場における、瞬時のとは申しませんが、極めて限られた時間での判断が必要だと思っております。
 そのときに、現場の指揮官が判断いたしますときに、そのよりどころとなるようなもの、すなわち、こういう場合には、こういう場合にはとにもかくにも一回休止あるいは退避ということを行いなさいというようなことですね。ある意味、抑制的なものでございます。これこれしかじか、こういうような場合には、それは外見もございましょう。それから、規模もありましょう。そしてまた、その者たちが何を言っているかということもございましょう。そういうような、ある意味、外形標準にならざるを得ないと思っております。こういうような場合には、とにかく一回引きなさいということ、そういうような基準を示すことが必要なんだろうというふうに思っております。
 それは、何をもって継続性といい、何をもって国際性といい、何をもって組織性というか、言葉にしますと、これはそういうふうになりますが、実際にそれを判断するというのは、繰り返しになりますが、ある意味、外形標準という形になるだろうと思っております。
 大事なことは、私どもが、午前中の答弁でも申し上げましたが、国際的な武力紛争の一環としての武力を行使したというふうに評価をされないことが大事だと思っております。
 その場合に、やはり瞬時、瞬時といいますか極めて短い時間で判断できる。そして、最終的にその実施区域を変更するでありますとか、そういうものは防衛庁長官が判断をするわけでございます。防衛庁長官がその場に行って見ておるわけではございませんし、テレビ画像でそれを送ってきているわけでもございません。実施区域を本当に変更するということになってまいりますと、これは本当に政治の判断ということもございます。もちろん、実施区域の変更というものが、戦闘が行われているということだけで決められるものではありません。あるいは、戦闘ではないけれども、そこでは非常に危険が高まっておる。よって、実施区域を変更するということも当然あり得ることでございます。
 ですから、それはそういうような形で行う、私は、今、このように考えております。

○若林秀樹君 言葉ではもちろん分かるんですけれども、現実問題に、攻撃に遭えば、それは正当防衛で反撃しますよね。そうしたら、もうそれはほとんど攻撃の開始であり、ずっと継続しているわけですから、そこで一時避難、中断なんということは、ほとんど私はそれは現実問題として無理だと思います。そんなことはあり得ないんじゃないですか。だって、どうやってそれを一時中断して、避難して、向こうから攻撃してくるのを、できるんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、近傍において戦闘が行われた場合というものも含んでおるわけでございまして、その場合にも一時避難しということになるわけでございます。ですから、それは、実際に我々の部隊が攻撃を受けていなくても、近傍において戦闘が行われる場合ということが条文にも書いてございますが、その場合には当然避難するということになるわけですね。そしてまた、実際に我々が襲われたというときも、十七条によって武器が使えることは御承知のとおりでございます。
 そこで、相手が国又は国に準ずる者、若しくは本当に単なる、もう一人で、その食べ物よこせとかですよ、その金をよこせとかですね、明らかに違うと。国又は国に準ずる者ではないという場合においては対応は違うわけであります。
 そこで、グレーみたいな部分、どちらか分からないねという部分は当然存在するわけでございまして、その場合には、やはり正当防衛、緊急避難で武器は使いながらも、やはり対応というものは、一人二人の相手、明らかに組織的、計画的に行われているものではない者とは異なるわけでございます。

○若林秀樹君 余り理解できませんね。回答になっていないような気がしますので。
 今回、武器使用基準、いろいろ御指摘ありましたけれども、私は、やっぱり長官の話を伺っていると、本来この法律でも武器使用基準は緩和した方が良かったんではないかというふうに本当は思っていらっしゃるんじゃないかなと思っていますけれども、その辺ちょっとお伺いしたいと思いますが、正直に答えていただきたい。

○国務大臣(石破茂君) なるべく正直にお答えをしておるつもりでございますが、いや、なるべくではない、絶対正直にお答えをしておるつもりでございますが、足らざるところがあれば御指摘をいただきたいと思います。
 今、委員が御指摘のように、緩和すべきだという議論がありますね。あるいは国際標準に合わせるべきだという議論がございますね。例えばPKOであればSOPという武器使用コードがあります。しかしながら、SOPというものは示されておりますけれども、それぞれの例えばUNTACとかUNMISETとか、それぞれのPKOによってまた武器使用基準は異なるわけであります。その国連SOPがそのままどれにでも適用されるというものではございません。そしてまた、それに参加する各国が、午前中の答弁で申し上げましたが、我が国はこのように武器を使用しますというルール・オブ・エンゲージメントというものは、どの国も原則明らかにいたしません。
 したがいまして、これが今回のような、PKOではございませんので、PKOではない今回のような場合の、ある意味世界初演みたいな話ですね、そういうような場合の標準的な武器使用というのはこういうものだというのが明確な形で存在するわけではございません。したがって、国際標準に近づけよという議論は、じゃそのすき間というのは何なのでしょうかということになってまいります。
 もう一つは、私どもが考えておりますのは、なぜ正当防衛、緊急避難に限っているかということを申し上げますと、それは決して武力の行使にはつながらない、少なくともそういうような法的評価は受けないということを考えておるわけでございます。
 では、例えて言いますと、こういう評論がございました。自爆テロが近づいてきたときに警告射撃なんかしている暇があるのかという御指摘がありました。そうしますと、じゃ警告射撃をしないで撃っていいのかということに逆に言えばなるわけでございます。あるいはBタイプの武器使用、任務遂行を妨害する行為に対する武器使用というものが、じゃ一体何があるのだろうか。すなわち、十七条の規定にも該当せず、自分の身にも危険が迫らず、かつまた自衛隊法九十五条武器等防護、この規定にも該当しない、しかしながら任務遂行を妨害する行為というのは一体何なんだろうか。
 じゃ、それに対して我々は武器を使用することが要請をされているだろうかということを考えてみましたときに、我々が行います活動を考えたときの武器使用の緩和というのは、一体どの場面で何を緩和をするのだろうか。そして、我々が武力の行使と評価されない部分は何なんだろうかということを私はきちっと議論すべきだと思っているのです。
 我々が議論をいたしまして、本当にこれ以上緩和すべきものがある、それはこれなのだということが、我々が現地において行います行動の範囲において考えますと、なかなかそれは見いだし難いというのが正直なところでございます。

○若林秀樹君 そこまで言われるとまた言い返したくなるんですけれども、やっぱり今回はその具体的な任務遂行のために行くわけですよね。その任務遂行を妨害する人に対して攻撃できないということは本当に致命的じゃないですか、それは。
 だって、例えば他国の、自国の物資だったら分かりますが、他国の物資を運ばなきゃいけない、他国の物資を盗もうとした人に対して何にもできないわけでしょう、それは。正にこれは任務遂行できないじゃないですか、それは。

○国務大臣(石破茂君) いや、ですから、そういうことに対して武器を使うということを予定しているかしていないかということなのです。
 つまり、これも委員十分お分かりいただけると思いますが、じゃ他国の物資が盗まれるということに対して我々は本当に武器を使用すべきなのだろうか。あるいは我々のトラックが走っていたといたします。その任務を妨害しようとした場合に、隊員の生命・身体に危害を加えず、かつまた我々が持っておる装備に危害を加えずにその任務遂行を妨害するということは一体何なんだろうかと、そういう概念が本当にあり得るだろうかという判断なのでございます。

○若林秀樹君 私はそれもあり得ると思いますよ。これまでは日本の自衛隊は普通の武器使用基準でやっていると思うから逆に襲わなかっただけであって、使えないと思えば、ただ荷物を盗み出してどんどんそれは逆にするんじゃないでしょうか。それに対して何もできないとしたら、他国の物を運ぶなんということに対して信頼感逆に失いますし、武器弾薬なんて言っていますけれども、そんなこともできないんだったらそんなの運ばせるわけにはいかないというのが普通の考え方では私はないかなというふうに思いますので、ここで使用基準を緩和しなければ、ほかで何が緩和するんですかという形に、将来的に禍根を残す可能性も私はあるんではないかなというふうに思います。その辺どうですか。

○国務大臣(石破茂君) それは御議論として成り立つというか、ある議論なんだろうと思っております。当然我々の部内でも、今、先生がおっしゃいますようなそういう議論はいたしております。
 しかし、それを認めた場合に、では一体どこで歯止めを掛けるのか。いわゆる自己保存的な正当防衛、緊急避難というものに限りまして、抑制的と言われれば抑制的です。しかし、そういう自然権的なというふうに申し上げてもよろしいが、それに限って武器使用をするというふうに我々は考えてきたわけです。海外において自衛隊が出る、そして武力の行使はしない、武器の使用は自然権的なものにとどめる、正当防衛、緊急避難、あるいは九十五条というふうに連綿と今まで考えてきたわけでございます。
 それを、任務遂行を妨害する行為に対しては武器が使えるということになりますと、これはどこで歯止めを掛けていくのだろうか。自然権的と言ってきたものを、それを任務遂行を妨害する行為に対しても武器が使えるということになりますと、次に歯止めを掛けるべきは一体いかなる概念においてであるかという議論が私は併せて必要なのだろうと思っております。
 確かにおっしゃるように、それじゃ武器弾薬を運んでよなんと頼む国はいないじゃないかと、そういうことはあるのかもしれません。しかし同時に、我々は、日本の国が自衛隊が出るということに対して国内的な御理解は今までの範囲でいただいておるわけでございます。そして、国際的にも、自衛隊は出るけれども、自分たちを守るためにしか武器は使わない、そういうふうな形で御理解もいただいてきたわけです。それとの兼ね合い、そして憲法に抵触しないようにということは、私は議論が必要なことだと思っております。
 委員の御指摘を私は全面的に否定するものではございません。議論する価値があるものだと思っております。しかし、今回の法案はそういうようなものまで予定をいたしておりません。あくまで本法十七条、そして自衛隊法九十五条の範囲でやりたい、そのようなお願いをしておるわけでございます。

○若林秀樹君 私はやっぱり正直言って詭弁だなという感じはしています。
 石破長官の発想であれば、まず任務を遂行するためにどうあるべきかと、その上で歯止めを掛けるのが石破長官の私は普通の考えじゃないかなというふうに思いますし、今回の議論をいろいろ聞いても、それぞれ議員もその必要性は分かっているわけですよね。ですから、最初からそういうのをくぐり抜けるようにするということ自体が私はちょっと本末転倒だなというふうに思いますし、一回かけてみて、議論をしてどうなっていくかということがやっぱりやるべき通過じゃないかなというふうに思いますので、恐らく本気で与党三党の皆さん方が変えようと思えばここで変えられるわけですから、是非そういうことも議論をしていただきたいというふうに思っているところでございます。
 いずれにせよ、時間に近づいていますので、これ以上ほかの質問に入りますと中途半端な形で終わりますので、引き続きまた質問させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。


2003/07/10

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