2003年7月10日

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156 参議院・外交防衛委員会−(4)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=遠山清彦(公明)


平成十五年七月十日(木曜日) 

○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
 私、これからいろいろと質問を今日させていただきますけれども、先ほど小泉委員のいろんな議論を聞いておりまして、私がこれから聞く質問にもかかわることも含まれておりましたので、私のちょっと見解を述べたいというふうに思いますけれども。
 いわゆるこの法案が可決した際に、自衛隊をイラクに派遣をすると。その派遣された自衛隊の法的権能と、特に先ほどの議論で焦点になっていたのはイラクの国民との関係ということであると思うんですけれども、確かに可能性として、私も、イラクの国民が派遣をされた自衛隊に対して抵抗をする、あるいは激しく抗議をするといったことが可能性としてはあり得るというふうに思っております。ただ、その可能性があるから自衛隊は派遣することができないとなりますと、私、これ自衛隊だけではなくて、例えばJICAの職員もこれ駄目になっちゃうと思うんですね、同じような論法で。つまり、だれも行けなくなる。政府の関係者はだれもイラクの人道復興支援に行けない。自衛隊だけじゃないですよ、先ほどの論理でいけば。私はこれおかしいと。
 そうなると、私の考えは、これは自衛隊にしても自衛隊以外の政府の関係者にしても、イラクに派遣をする際は、我々日本は国連の加盟国として国連が出した一四八三の決議に基づいて行くんだと。仮に、それが自衛隊であれ、自衛隊以外の日本政府関係者が復興人道支援のために行った場合に、治安上の、さっき言った抵抗というのは治安上の問題ですね、治安上の問題が起こったときには、現在あるいはその起こった時点でイラクの治安に責任を持つ当局がその問題を一義的に処理するんだと。
 例えば、それが、CPAが、つまり国連決議一四八三によって当局として認められた、施政権が認められたCPAがイラクの国内の治安状況全般に責任を持っているならば、私は、当然取るべき、日本の自衛隊にしろ政府の関係者にしろ、まず取るべき手続は、現場でおかしな事態にならないように対応するのは当然として、その治安に責任を持つ当局に通報をして、今こういうふうに遭っています、自分たちがこういう目に遭っています、何とかお願いしますという通報をする。
 例えば、その時点でイラクの文民警察ができていれば、ちなみにこれは、イラクの文民警察については、国連決議一四八三の中で事務総長がイラクの国連の特別代表を任命をして、この特別代表がしなければいけない(h)の項目にイラクの文民警察の能力を再建することと書いているわけですから、ですからこれは国連の特別代表の責任でイラクの文民警察は再建されなきゃいけないんです、決議上。そこのイラクの文民警察が来て、そこでもしいろんな混乱があればそれ収拾すると。あるいは、もしこういう混乱が起こった段階でイラクの暫定統治政権なるものができていたら、当然にこのイラクの暫定統治政権、これはCPAとの関係もありますけれども、が治安に対して責任を持つ段階に至っていれば、それはそこの当局に連絡をして、そこの当局が一義的な責任をその混乱に対して負うということだというふうに私は思っておりますので、先ほどの議論で、やや外務大臣、歯切れの悪い御答弁になっておりましたけれども、それは当然、自衛隊で、だれであれ、向こうが武装勢力で何かやってきたら、それは正当防衛、自然権的権利として正当防衛はできるわけですから、それは当然に正当防衛の行為はその範囲でやると。
 しかし、治安問題が起こるから自衛隊を送れませんよというのは、私は、この国連加盟国の一員として行っている以上、これはほかの国の機関とか政府の職員にも全部当てはまる話で、根っこから全部、じゃ人道支援、一切イラクでやるなという話になってしまいますから、私はそういうふうに思っております。
 この点については、政府の中でしっかりと議論していただいて、明快な御答弁をしていただけるように、私からもお願いを申し上げます。
 私の質問に移らせていただきますが、まず官房長官にお聞きをいたします。
 自衛隊の派遣の必要性については私も先日の代表質問でも主張させていただきましたが、イラクでの活動環境は大変厳しいと。私も六月の初めにイラクへ行きまして、四十五度から五十度の気温の中で難民キャンプも私、三つ視察いたしましたけれども、二十分、三十分歩いたらくらくらになってしまう。そういう意味で、私は、自衛隊員の方々がそういった環境で、自衛隊の方でもかなり大変な作業を強いられるんではないかというふうに思っているわけでありますけれども。
 また、食事にしても水にいたしましても、あるいは電力のたぐいにいたしましても、全部自分で自給をできる能力がなければいけないという意味で、私は、日本が、特に政府が持っている組織の中でそういう能力を持っているのは自衛隊しかないだろうと。また、これは種類はちょっと違うかもしれませんけれども、過去十年余り国際協力業務に日本の自衛隊が参加をしてきた、それで経験や実績を積み上げてきた、また日本の国内でも災害救援等で実績があると。そういうことで、私は、自衛隊が人道復興支援のためにイラクに派遣されるということは十分に正当化できるというふうに思っております。
 ただ、今日、私最初に質問したいのは、この自衛隊を派遣する際の派遣の期間の問題なんですね。
 私が今つらつら申し上げたのは、復興の初期段階ではこういう自己完結性を持った組織じゃないと復興支援のためにまともに活動ができなくなると、かえって現地に迷惑を掛けるという意味で私は自衛隊が必要だという話をしたんですけれども。将来、いずれかの時点において、イラクの治安状況が改善をされて社会インフラが整って、例えば文民が行ったりしたときはホテルがちゃんと泊まれるところがある、二十四時間電力もあるというふうになった場合には、もう必ずしも自衛隊じゃないと復興支援できないというわけじゃないという段階に至ることが将来あり得るわけです。そうなったときに、日本政府の判断として、これはもう自衛隊じゃなくても復興支援できますねと、じゃ、ついては速やかに自衛隊を撤収しましょうかという段階が来ると思うんです。
 今議論している法案の有効期限は四年間となっているわけでありますけれども、必ずしも四年待つ必要性はないわけですね、理論的には。ですから、まず最初の質問は、この四年たつ前に、もう自衛隊じゃなくても、自己完結性を備えた自衛隊じゃなくても復興支援できると、政府の主体的な判断で自衛隊を撤収するということが私はあり得ると思うんですけれども、これ、官房長官、御見解はどうでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) 委員御指摘のとおりでございまして、これは治安状況が回復し、また緊急的なインフラの整備とかそういうものがだんだんと整備されていくということになれば、これは何も自衛隊でなくてもいいよと、むしろ専門家の、インフラ整備専門の建設会社が行くとかいったようなことも考えられるわけですね。それはもう、一つにはインフラの問題と、それからインフラが悪くてそして緊急的な対応をしなきゃいかぬ、正に自己完結性のある、また防御能力を持つ自衛隊が出動する場面であるというように思います。
 したがいまして、時間がたって治安が回復され、そしてその必要性がなくなるときには、これは当然のことながら、撤収と申しますか、この基本計画の対応措置の中止ということになるわけでございます。これはあくまでも閣議決定によって基本計画を変更する、こういう形において派遣を終了すると、こういうふうなことになります。これはもうあくまでも我が国が当然のことながら主体的に判断することでありますけれども、当然、その判断の中にはCPA若しくは関係諸国、国際機関等との相談ということも当然あるわけでございます。
 この四年になる前に終了するということにつきましては、本法案の附則第二条において、この法施行後四年経過した日より前に対応措置を実施する必要がないと認められるに至ったときは法律自体を速やかに廃止する旨、規定がございます。そのようなことでもって委員の御指摘の点については対応できるというように考えております。

○遠山清彦君 よく分かりました。
 それで、基本計画を変更することによって日本政府の主体的な判断で自衛隊の撤収ができるということなんですが、ただ、最後に官房長官が、附則のところで法案自体を廃止できるということだったんですけれども、私の理解では、この法案によって取られる対応措置というのは必ずしも自衛隊のみによるものだけではありませんね。
 ちょっとだけ確認なんですが、要するに対応措置が、例えば自衛隊の隊員によるものと、それから他の政府機関の職員、あるいは場合によっては民間の団体の協力も得られることに今回なっていますので、民間の方々を派遣をして、政府の責任でやっている対応措置があるとした場合に、自衛隊による対応措置は終了しましょうと、しかしこちらの、文民というか他の政府機関が行っている対応措置については継続しましょうといった場合には、これは法案を廃止してしまうわけにいかないというふうに思うんですけれども、その際は基本計画の中で細かく、これはやる、継続するけれども、これは終了するといった形で変更するということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) そのとおりでございまして、自衛隊はもう撤収していいと、しかし、復興支援職員ですね、復興支援職員の活動はこれは十分にあるというような状況であれば法そのものは存続する、しかし自衛隊の派遣については基本計画の変更ということで対応するわけでございます。

○遠山清彦君 よく分かりました。
 次に、外務大臣に質問をさせていただきたいというふうに思います。
 私、何度もほかの場所でも申し上げているとおり、今回のイラク復興支援というのは、私は、国連決議一四八三に貫かれている精神というのは何といっても人道上の要請であるということだというふうに思っております。冷戦時代の考え方でいえば、たとえ人道上の理由があっても、国連、特に国連じゃなくて他の主権国家がある主権国家の内部に入っていって、いろんな国づくりを事細かに支援をするとか、あるいは治安維持の業務をやるということは、これはなかなか抵抗が実際あったわけでありまして、一九九〇年代に入って、いわゆる人道的介入という言葉が大分定着をしてきたわけでありますけれども、いわゆる、本来であれば、厳密に言ってしまうと内政干渉の原則に触れるんではないかと、これは今でも一応国際法上の大きな原則になっているわけでありますが、しかし、その内政干渉の原則という制約と比較したときに、例えばルワンダのケースがよく国際社会で挙げられるわけですけれども、国際社会が中で何を起こっているのかを分かりつつ放置したときに起こる被害、これは人道的に甚大だという場合には、やはり知恵を出して、また他国が介入する、介入される側の意見もできる限り最大限尊重して。
 ただ、最近は破綻国家増えておりますので、その国の国民の利益とか意見を正当に代表できる機関さえないと。これはソマリアのケースしかり、それからルワンダのケースしかり、あるいは旧ユーゴスラビアの幾つかのケースしかりということだったわけでありますが。
 そういう、ですから私は、九〇年代からのここ十年ちょっとの流れの中で、人道上の、これをほうっておいた場合、それは我々日本だって、これ別にイラクの復興支援手伝わないで何にもしなければ、お金も使わない、あるいはいろんなリスクも回避できるということあるかもしれません。しかし、そうやってほかの国が全部そうなってだれもイラクにかかわらないとなったときに、イラクの今後がこれからどうなるのかと、人道的にどういう被害が起こるのかということを考えた上で、私はこういう決議が今出てきているんだというふうに思うんですね。
 ですから、私自身は、旧来の考え方からいったら確かに引っ掛かるところがある。だけれども、国際社会では少なくとも十年以上積み上げられてきた議論の上で、人道上の要請が大きい場合にはみんなでできることをやろうというのが今国際政治の流れだというふうに思っております。
 ですから、よく私も国会で議論を聞いていておかしいなと思うのは、このイラクの復興支援に日本がかかわるのは日米同盟があるからだとか、日米関係を国際協調に優先しているからやっているんだという議論があるんですけれども、これは私おかしいと思うんですね。時々小泉総理もその議論に乗っけられて、何か、アメリカしか守ってくれないでしょうみたいな、いこじな何か発言しているんですが、そんなこと言う必要ないんですよ。このイラクの復興支援にかかわるというのは、私が今申し述べたように、要するに国際政治、社会の中で主流となりつつある、人道的な理由で、ある国の国づくりを助けるという要請が一番先に来ているというふうに私は思っております。
 ただ、日本の世論調査を虚心坦懐に見ますと、確かに反対が、この日本が自衛隊を派遣すること、あるいは復興支援にかかわることに反対が賛成を上回るものもあるわけでして、これは、なかなかまだ日本がイラク復興支援に参加することの意義というものが理解されていない証左でもあるのかなというふうに思っております。
 国民の中には、いやこれは日本の国益のためにどうなるんだという、やや功利主義的でありますけれども、ある意味正当な、これは国民の税金を使ってやるわけですから、御意見を述べられる方もいらっしゃるわけでして、外務大臣に、ちょっと長い前置きになりましたけれども、お聞きしたいのは、今回イラクの国家再建と復興に日本が取り組んでいくことということと日本の国益というものの関係について、外務大臣、どういう御認識を持っていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) これが日本の国益でございますと言って幾つか挙げることはできますし、これはちょっとその後でいたしますけれども、物の考え方、その基本的な流れとして、国際社会の全体の秩序あるいはその安定、平和ということを考えるときに、世界が全体として豊かになるにつれ格差があるという認識が生まれ、そして、今まで余裕が出てきた分、人権問題、人道問題、これについての関心が高まってきているということは、私はおっしゃったようにあると思います。それで、それのさらに背景としては、グローバリゼーションということでお互いにその連携が非常に深まってきたので、一国であることを看過すると自分の国に実際に影響が及んでしまう。アフガニスタンの麻薬というのがいい例だと思いますけれども、というようなこともあるというふうに考えております。
 といったことが委員がおっしゃったように、この問題の背景にあると思いますけれども、イラクについてなぜ日本が支援をすることが必要かということで言うと、私はまず第一に申し上げたいのは、それは日本のような世界の中で力を持った国、大きさを持った国として当然のことであるからということであると私は思っています。その当然なことという意味には、委員のおっしゃったような人道、人権的な配慮というのももちろんありますし、それから日本として国際協調、それからイラクに起こることは日本と全く無縁のことではないというような考え方があると思います。そういうことで支援というのはやるべきだと、それから現にやっていると思いますけれども、委員もおっしゃったように具体的に幾つかのメリットというのもあると思います。
 そのメリットの話になるわけですけれども、やはり一番大きいのは油の問題があると思います。これは中東地域への原油の依存度が九割近いということから分かるように、特にイラクというのは潜在的に非常に大きな産油国であり、かつては日本に対して大きく供給をしていた国であります。その国が安定をしていって発展をしていくということは、日本にとってもメリットであるということ。
 それから、もう一つ挙げられるのは、先ほどちょっと触れましたけれども、我が国として国際社会と協調をしていく姿勢ということが非常に大事であるということだと思います。これはその国連決議が出ているわけでして、国連によってアピールがあるわけでして、それに対応していくということは大事なことである。これは、我が国として国際社会を大事にしていくという姿勢の表れであるというふうに思います。
 それから、その次に挙げられるのは、日本として中東地域というのはアラブ、イスラムの国全体とのかかわり合いであって、イラクの国民を助けるということはアラブ、イスラム社会の人にとって歓迎をされることである、その姿勢を見せるということが大事であるということだと思います。
 それから、さらに大量破壊兵器の問題というのがあります。これは大量破壊兵器の脅威を除去し拡散を防ぐということは、我が国にとって重要なことであって、イラクの問題の背景にずっとこの問題があったわけです。
 それからもう一つ、日米同盟、委員もおっしゃられましたけれども、日本と米国が手を組んで正に世界の中の日米同盟というのは、この間、小泉総理とブッシュ大統領が話をなさったことですけれども、そういう世界の秩序作り、平和作りをしていく二つの重要な国としてやっていくという関係、これを実践に移していくという、細かく申し上げればそういったことがあると思います。

○遠山清彦君 分かりました。
 是非、今いろいろとお話ありましたけれども、大量破壊兵器のところはずっとこの委員会でも焦点になっているわけでありますけれども、いろんな機会通じて国民の皆さんに、やっぱりなぜ日本がイラクの復興支援に、景気の問題もいろいろ内政上の問題もある中で、かかわるのかということをいろいろと説明をいただきたいと思います。
 それで、防衛庁長官、後でまとめて聞きますので、外務大臣、続けてお伺いをいたしますけれども、私に寄せられたメールの中にこういうものがございました。イラクの現状については日々テレビのニュース等で報道されているけれども、とにかく私たち国民にとって本当のところがよく分からない、テレビのニュースというのは断片的な情報であるとか、米兵がどこかでこういうふうに撃たれましたという、ある意味センセーショナルな事件だけを扱っているかもしれないと、そうすると現地の実際の実情というのはなかなかよく分からない、分からない中で政府がこの法案を出してきても国民として判断しかねると、いいか悪いか判断する材料自体が少ないという苦情というか話がありました。私、これ、ある意味、正鵠を得た指摘だなというふうに思っているわけですけれども。

 そこで、外務省の方もいろんなイラクについての情報提供というものを努力されてきたと思うんですけれども、私は率直に申し上げて、もうちょっとできるんじゃないかというふうに思っているんですね。外務省の職員の方、大変夜遅くまで仕事されていて、この間もテレビの番組で何か外交官が朝一時とか四時まで仕事をしているのをドキュメンタリー見て感銘を深くいたしましたけれども、新しい仕事を言うようで申し訳ないんですが、例えば外務省のホームページに、今イラクでこういうことになっているわけですから、毎日じゃないにしても週に一遍ぐらい、過去一週間イラクでどういうことが起こったのかを、余り主観交えずに客観的にこの情報を載せるようなページを作って、例えば国民が、今政府がこんな法案出しているけれども、本当にこんなの必要なのかと思ったときに、そこクリックしたら、ああ、こういうことなのかということが分かるようにしたらいいんじゃないかと。
 実は、そういう情報を、じゃ外務省として作ろうとしたときに独自にやったら結構大変だと。実は国連、私、調べてみたら、今インターネットで特に英語だと相当有益な情報いろいろ出ています。
 例えば、このUNオフィス・オブ・ザ・ヒューマニタリアン・コーディネーション・フォー・イラクという、人道支援に対するコーディネーションをやっている国連の事務所は、週に一回、これは週に一回じゃないですね、定期的にヒューマニタリアン・シチュエーション・リポートということで、人道に関するシチュエーションリポートというのを、これ今私、手元にナンバー四〇持っていますが、これ出しています。

 それから、こっちにはもっとハンディーな情報があって、イラク・ウイークリー・アップデートという、正にそのとおり、その一週間イラクでどんなことが起こったかということをまとめたものも同じ機関が出しております。
 それから、米兵の襲撃事件等に関しても、これ、どうも最近何かアップデートされていないので、もう使えないかもしれませんが、ユナイテッド・ネーションズ・イラク・セキュリティー・オフィスというところが出している情報があって、これは非常に分かりやすくて、二枚目なんかはバグダッドの市内を区画で割って、何月何日にどこの区画でどういう事件があったかというのを非常にコンパクトにファクトだけ、事実だけ載せています。三ページに行きますと、今度はイラク全土になりまして、番号が地図の上に一、二、三、四、五、六、七と振ってあって、一番とか見ると、何月何日に、例えばそのチェックポイントで自爆テロがあったと、何人が亡くなったとかというようなことが書いてある。
 こういう情報を、日本国民みんなが英語を読めるわけじゃありませんので、外務省の方でちょっと翻訳、統合して、これは著作権の問題ないと思いますので、ソースを明らかにすれば、それを国民が日本語で見れるようにすると。
 昨日の審議でも、官房長官自ら、イラクの状況というのは刻々と変化すると、だから今の時点で、例えば何人ぐらいの自衛隊の規模でどういう具体的な活動をするのか言い切れないところがあるということをおっしゃって、それはもっともだと思うんですね。
 ただ、じゃ、その刻々と変わるイラクの情勢の変化というものをやはりある程度国民に広く、これは英語ではもう一般に公開されているわけですが、ちょっと外務省で骨折っていただいて、日本語でホームページで提供するようなことを、週に一遍でもいいから考えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

○国務大臣(川口順子君) 大変にイラクについての情報の必要性についてのいい御指摘だと思います。
 イラクで武力行使が始まる前後、前ぐらいから、イラクについての情報については特に入念にお知らせをするように外務省のホームページで工夫をしています。それで、今後この法案を通していただいて、自衛隊がイラクに行くというような状況になったときに、御家族の方、友人、あるいは日本の中でイラクの情報をもっと正確に知っていたいという情報、欲求というのはもっともっと需要が高まると思います。
 御案内のように、委員の方々の中にはホームページを持っていらっしゃる方、多いと思うんですけれども、これをアップデートしていくときのエネルギーというのは相当なものがございます。今、外務省の中で正にこの問題でもう徹夜に毎日近い仕事をしているわけですけれども、これは外務省の問題でもありますし、それから防衛庁、内閣、政府全体として、日本がこれだけ深くかかわっているイラクの問題に対してどの程度正確に頻繁に国民の皆様に情報提供するかという話であると思いますので、防衛庁長官あるいは福田官房長官、今おいでに、お立ちになりましたけれども、と政府の中で相談をして、政府全体としていい情報提供ができるような工夫をしたいと考えております。

○遠山清彦君 是非よろしくお願いします。これは私の意見でもありますけれども、元々は一人の国民からの意見ですので、重く受け止めていただければというふうに思います。
 続きまして、外務大臣にやはりお聞きしたいんですが、先ほど来ずっとお話ありますように、イラクでは五月以降も米軍の兵士を中心に死傷者が出ております。先ほどのお話ですと、最近ちょっと減ってきたということではあるんですけれども、これで一部の専門家が指摘しておるのは、やはり米兵ばかりが、人数が多いですから当たり前といえば当たり前なのかもしれませんけれども、米兵ばかりが襲撃の標的になっていると。自衛隊を派遣しようという政府として、この事実をどう分析をされているのかと。
 イスラム教国においては、極端な場合、宗教上の命令でありますファトワというものを出して、例えば、これは全く私の仮想の質問でありますけれども、モスクの中で宗教指導者が米兵を襲えと、これはファトワであるということになりますと、かなりこれはイスラム社会では大きな影響力を持つ話になってしまうと。あるいは、米兵が襲われているということは、サダム・フセイン政権の残党がいわゆる組織的な指示系統を持ってやっていることなのかと。
 実は、これは今日一紙にしか載っておりませんけれども、毎日新聞ですかね、毎日新聞が、これはどこまで信憑性あるかというのはそれぞれとらえ方が違うんですけれども、イラクの、この新聞によりますと、「バグダッド周辺で米軍へのゲリラ攻撃を続ける武装集団のうち最大級とされる組織の幹部」、二十八歳なんですけれどもね、がこの毎日新聞のインタビューに応じて、「日本の自衛隊がイラクに来て米軍に協力すれば、占領軍とみなし、攻撃対象にする」ということを言ったという記事が朝刊に今日出ております。
 この話はこの話で一つの参考なんですけれども、これ、外務大臣ともし防衛庁長官も何かコメントあれば聞きたいんですが、やはりこの米兵がずっと襲撃されているということの背景にどういうものがあると現状では分析、認識をされておられるのか、ちょっと聞きたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) これはいろいろな要因があるだろうと思いますけれども、ちっとも生活が良くならない、物事が前に進んでいかないという感情というのは背景として強く流れていると思います。
 そういう意味で、今、国際社会としてやらなければいけないことは、できるだけ早く、できるだけたくさんの支援をして、イラクの生活が良くなるという、目に見えて良くなるという状態にしていくということであるかと思います。そういう意味で、今が大事であって、三か月後に同じことをするのではなくて、今しなければいけないという感じが私には強くございます。
 それで、我が国として、今、既に、例えば経済協力その他で、現行法でできることについては既に取り組んでいるという状況であるわけでして、我が国として、国力にふさわしいということはございますけれども、より多くの支援をしていかなければいけないというふうに思っております。

○遠山清彦君 じゃ続いて、ちょっと関連するので防衛庁長官に聞きたいと思うんですが、この米兵襲撃事件、死者の数が減ったという統計がさっき出たわけですけれども、しかし他方で、昨日なんかも七人ぐらいですか、負傷したというような、ほぼ連日何かあるというのが実情でございまして、そういったイラクから来る報道を受けて、例えば、今審議している法案が仮に成立しても、やはり米兵などへの襲撃事件が止まらない場合、海上自衛隊とか陸上自衛隊で輸送業務をやる、これはいいでしょう、しかし、陸上自衛隊の地上部隊というか普通科連隊というか、そういう部隊をやはり送るのはやっぱり困難なんではないかという意見が例えば我が党内でもちょっとある。
 ですから、私がちょっと聞きたいのは、この米兵に対する襲撃事件の問題と、日本政府がこの法案が成立した後に、当然調査の結果次第でもあるんでしょうけれども、陸上自衛隊の要員を送るということをリンクして考えてやっぱりいかざるを得ないのか、それとも必ずしもそうでないのか、ちょっとその点をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) この法案が成立を仮にいたしました後に、現地に調査団を送ります。そこでニーズ、治安状況等々勘案をいたしますし、それをいろいろ受けまして基本計画を定め、更に実施区域を定めますときに、防衛庁長官が総理大臣の承認の下に、いろんな要素が重なり合いますが、一つは、非戦闘地域でやらなければいけないということが法案に書いてありますわけで、その米兵に対する襲撃が組織的、計画的な国又は国に準ずるという、いつものやつでございますが、そうでないところを選ばなければいかぬだろうと。でなければ非戦闘地域というのを満たさないわけでございますし、仮にそれが野盗、山賊、強盗のたぐいであったとしても、それが余りに頻度が多くて、とてもではないが町にも出られない、いかな自衛隊をもってしても、訓練を積み、権限を持ち、装備を持ったいかな自衛隊であったとしてもというような事態があるとするなら、これはあくまで理屈のお話でございますが、そういたしますと、野盗、強盗のたぐいであるから、非戦闘地域とはいいましても、それは、今度は安全確保義務というものに対してそれが履行できないという状況が発生をいたしますわけで、それは考慮要素たり得ることだと思っております。
 それは、やはり私どもは、憲法に書いてある非戦闘地域でなければいけないということ、そして権限、武器を持った上で安全を確保する、そして任務をきちんと行う、これを充足する活動でなければいけない、そのために一つの考慮要素にはなるというふうに考えておる次第でございます。

○遠山清彦君 分かりました。一つの要素になるということで。
 長官、ちょっと角度を変えまして、これはこの間の本会議で舛添委員の方からお話があったことで、やはり自衛官がイスラム文化あるいは現地の慣習といったものをやっぱり理解していなければいけないと。総理も先日の本会議では前向きな答弁をされていたわけでありますが、防衛庁長官として、具体的にどういう方法で派遣される隊員に対して研修をされるおつもりでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) これはまだ、確定して、こういうやり方で教育をするというのをコンクリートしてやっているわけではございません。当然、まだ法案も成立をいたしていないわけでございます。
 しかしながら、やはりイスラムというものを理解する上において、一つは言語というものがございます。先ほど若林委員から、日常会話なんてそんな簡単なものじゃないぞというおしかりをいただきましたが、それは、もちろんぺらぺらと日常会話をしゃべれるわけではなくて、しかしながら、最低限の意思疎通ができるような、そういうものはしなければいかぬ。──意思疎通と言ってもいけませんか。全く何もしゃべれないということではなくて、こんにちは、さようなら、ありがとう、ごめんなさいとか、そういうような、それにもう少しプラスしたような、そういうものはできなければいけないというふうに認識しています。
 それからもう一つは、いわゆるイスラム圏に赴任をする方々、これは自衛官だけではなくて、外交官もそうでありましょうし、あるいは商社マンにしてもそうでしょうし、あるいはメーカーの方々もそうかもしれません。そこにおいてイスラムというものを理解するための一つのやり方というものが、スタンダードがあるわけではございませんが、大体こういう形で研修をしてイスラムの地に行って商売をし、あるいは事業を行い、物を作るというようなことがあるだろうと思っています。そういうものの中で、きちんとした理解、最低限の理解、少なくとも文化の誤解による、基本的な誤解によるあつれき、摩擦、そういうものを起こさないようにということで考えております。

○遠山清彦君 分かりました。
 次に、今、長官が言及になったんですけれども、語学の問題ですね。
 先ほどの若林委員との議論の中で、自衛隊員でアラビア語できるのは八名ぐらいじゃないかというお話でしたけれども、──一名増えました、まあ一名増えても二名増えても大体十名ぐらいかなと。それぞれのまたアラビア語がどれぐらいのレベルなのかというのは、これは全然分からないわけですが、はっきり言うと、何人の自衛隊員が行くかにもよりますけれども、少ない、極めて少ないことはこれは間違いないわけで、ただ、ただし、当然考えておかなきゃいけないのは、CPAとかあるいは米英軍とかその他の国連機関と連携する際、これは英語でできるわけですから、これはいるでしょうと。ただ、先ほどもちょっと御議論になっていましたけれども、やっぱりイラク国民との関係という、これは私も大事だと思っているんですね。
 ですから、語学要員というのはそれなりのアラビア語、さっき意思疎通で、さようなら、こんにちはという、それは何というか、活動を円滑にするという潤滑油的な意味では、それはもう日常会話ぐらいみんな覚えていかなきゃいけないと思いますが、トラブルが起こったとき、起こりそうなときとかにやっぱりぱっと出ていって現地語で交渉できる人、いるといないとでは大きな違いが私はあると思うので、それで、聞きたいのは、これは、例えば自衛隊として自前でアラビア語の語学要員が足りないといった場合に、この法案に基づいて、例えば他の政府機関職員でアラビア語できますよとか、あるいはもう場合によっては民間からアラビア語の高い能力を保持する方々、当然本人たちが同意した場合に限ってですけれども、の自衛隊に対する協力、これを仰ぐ可能性というのは、これはありますか。

○国務大臣(石破茂君) 更に詳細は運用局長から答弁をいたさせますが、それはあると私は思っています。
 それはもう、やはり今までもそういうのを活用した事例はございますし、それは自衛隊員が、例えば、今八名と申しました。その八名が全員行くわけではございません、もちろん。その中の一人か二人かもしれません。ですから、その現地の方、あるいは日本人でもそういうアラビア語に堪能な方にお願いする、自衛隊員ではなくてもお願いする、そういうことはあり得ると思っておりますが、詳細、運用局長からお答え申し上げます。

○政府参考人(西川徹矢君) この点、お答え申し上げますが、現時点において任務がまだ明確じゃございませんので、どれだけの通訳が必要だとかどういう場面で必要だとか、先ほど先生おっしゃいましたように、英語で、いわゆる各機関の関係はほとんど英語で通じますので、これからの任務の形態とか、そういうものによって大分違ってくると、こういうことをちょっと前提に置かせていただきまして、我々としましても、今回の準備の段階で、自衛隊の行った部隊が現地の方とうまくコミュニケートできることは大変大事なポイントであると、こういう認識はやっております。
 先ほど大臣から申し上げましたように、アラビア語のできる、できるといいますか、アラビア語圏に勤務した防衛の駐在官でございますか、八名おりますが、残念ながらどれだけできるかというのは我々ではちょっとどの程度というのはよく分かりません、大変に失礼でございますが、ある程度できるというふうに我々見ておるんですが。
 それから、先ほど大臣の方からお話ございました現地で雇うということですね、これにつきましては、一つ東ティモールでPKOやっておりますが、今、あの際に、現地の人で日本にも留学したという経験のある方で、ティトン語、インドネシア語、それから英語、日本語の分かる、こういう方を現地で雇って大分活用させていただいたというのがございます。ただ、先生御指摘の、残念ながらその日本人、こちらから通訳としてどなたかを隊員以外で連れていくというのはちょっと過去には例はございません。
 ただ、語学がそれでいいというふうには、要らないというふうには考えておりませんで、大臣の方から今御指示ございました、そういうことも含めての検討をこれから考えていきたい。とにかく意思が通じることは大変、特にトラブル的なときにいち早くそういう手が打てるということは大事であるということは十分認識しております。
 以上でございます。

○遠山清彦君 是非、やっぱり私、語学の問題というのはなめちゃいけないと思うんですね。もしかすると、自衛隊の中にも、最終的には、国際的な活動が多いから英語でいいじゃないかということにもなるんですが、これ英語も、実は私もイギリスに六年三か月住んでいましたので、そういう自分の体験上からも言えるんですが、例えば、私も英語は使いますが、しかしやはり母国語が日本語でして、そうすると英語は母国語じゃないと。例えば、私も今年イランに二回、イラクに一回行っていて、結構英語できる人と話を英語でしているわけですが、しかし向こうもやっぱり英語母国語じゃないと。そうすると、双方英語母国語じゃない人間が英語でコミュニケーションすると、意外に単純なことで誤解をしたり、全く違う趣旨に受け取ったり、人間弱いものですから、先に結論があったりするとそっちに有利なように解釈をしたりすることも間々あるわけですし、日本語でも、母国語でしゃべっていても、昨日の総理の答弁で、野盗なのか野党なのか分からないような答弁もありましたし、駄じゃれじゃないですが。
 ですから、それが英語になれば余計そういう確率上がるわけですから、そういう意味で、このアラビア語をできる人を確保するということに関してはあきらめないで、結構いろんな手を使って探していただいて、でき得る限りその強化をして、これはもう隊員の、私は広い意味での隊員の安全のためにもなると思いますので、そこを申し上げたいというふうに思います。
 それで、次に、防衛庁長官、これは私の要望なんですけれども、ある程度十分な語学、この語学の問題をある程度クリアしたと仮定して、仮定をして、次に私考えていただきたいのは、この自衛隊の活動、自衛隊がイラクに入った際にその活動の目的及び内容についてイラクの国民の皆さんに幅広く正しく御理解をいただくと、これをやっぱりしっかりやっていかなきゃいけないというふうに思っております。でき得れば、私の考えでは、現地に行く自衛隊の部隊の中に広報宣伝あるいは渉外、これはイラクの現地の住民対処ですよ、を専門とする、小さくてもいいんですが、チームを作った方がいいんじゃないかとさえ私は思っているんです。
 じゃ、こういうチームを作ったときに何やるのかと。例えば私、具体的にサジェスチョンとしてあるのは、今バグダッドの市民の情報源の大きなものの一つは新聞です。これは、サダム・フセインがいたころは新聞は御用新聞が三つあっただけです。ところが、私が調べたところ、フセイン政権が崩壊した後に次々と新しい新聞が発刊されて、今バグダッドでは十四紙あるというふうに聞いているわけです。
 例えばですけれども、自衛隊が仮にバグダッド近郊あるいはバグダッドの中で活動するとなったときに、この自衛隊の広報宣伝あるいは渉外を専門とするところが当然に外務省と連携をして、外務省の方で全部やっていただくということも当然あり得ると思いますが、このイラクで発行されている、現地語で発行されている新聞に日本の自衛隊はこういう活動をやりに来ましたということが載る、載って、それを読むだけでも私は、例えば、ああ、突然日本の自衛隊員が現れた、町のどこかにと。彼らは何をやっているのか全然分かんないと。そこで悪い意図を持った人が違う宣伝してしまえば、それは信用されるということもあり得る。
 そういうことからも、やはり、今の時代、情報戦というか、情報は非常に大事ですから、是非、これは外務省の方でやるという話なのかもしれませんけれども、防衛庁としても、そういう自衛隊の活動の目的と内容を幅広く、特に実施区域周辺の住民には伝えるという活動をやっていただきたいと思うんですが、御見解をいただきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 大変貴重な御示唆をいただきました。実は、イラクの情報が一体何によって伝わるのか、またアメリカによって空爆を受けたテレビ局って一体どうなっちゃったのか、一日どれぐらいテレビが放映されておるのか。また、私はまた別の方から聞きました話では、テレビもある、新聞もあるが、イラクにおける情報というのは実は口コミがすげえんだという話も聞いたことがございます。
 何が一番、いろんな伝達方法がございましょう、しかし、自衛隊が来たことがきちんと伝わる、理解される、誤解を招かない、そのためには何がいいのかということは、危険を避けるという意味からも重要なことであると思っております。私どもは、納税者の御負担とそして自衛官のいろいろな献身の下、挺身の下に行おうとしておる事業でございますから、それが正当に評価をされなければ、これは納税者に対しても自衛官に対しても申し訳のないことだと思っております。外務省とよく相談をいたしまして、私どもその辺はよく心していかねばならない。
 ただ、一つは、私ども、PKOに出ました部隊は、例えばもちつき大会ですとか盆踊り大会みたいなこともやって、現地の方とも交流しますが、それは、これはPKOではないということもきちんと理解をした上でやらなければいけない、両々相まってできるだけのことをしてまいりたいと思っております。

○遠山清彦君 ありがとうございます。いろいろとまた知恵を出していただいて、検討していただければと思います。
 続きまして、これはもう避けられない、この委員会で避けられない話題で、もう既に今日もいろんな方が触れたこの戦闘地域と武器使用の問題について、若干防衛庁長官に質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、私の理解では、派遣される自衛隊の要員が武器使用できるのは、ある種の攻撃が発生した場合でも、それが組織性のある、計画性のある攻撃ではなく、また、国又は国に準ずる者による武力行使でなく、また国際紛争に発展するようなものでない場合、その自衛隊員に対するある種の攻撃というのは戦闘行為ではないと。戦闘行為ではないけれども自衛隊員が自然権的自己保存の権利に基づいて武器使用をすると。そうすると、これは非常にまどろっこしいんですね、一般的に言うと。
 私は、これは政府の答弁で今まで出てきたのかどうかはちょっと不勉強で分からないんですが、要するに、一言で言えば、自衛隊員は正当防衛行為として武器使用を、使うことは認められているんだと。ですから、私が何が言いたいかというと、一般的に言ったら、さっきの、何か自衛隊に対する何かある種の攻撃があって、それに自然的権利がどうのこうのというまどろっこしい話を付けると何だかよく分かんなくなっちゃう。そうすると何が出てくるかというと、戦闘行為じゃないけれども武器使用をするってどういうことなんだと。素朴な一般的な疑問ですよ。だから私は、いや、それは戦闘行為じゃなくて正当防衛行為なんだというふうに説明するしかない、として武器使用するんだというふうに、急迫不正の緊急避難もあると思いますが、これは防衛庁長官、よろしいですか、それで。

○国務大臣(石破茂君) ちょっと私の説明の仕方が悪かったら申し訳ありません。ただ、これは本当に憲法上の要請を満たすために、これは昨日も分かりにくいというおしかりを随分いただきました、分かりにくかろうが何だろうがと、こう言っちゃいますとまた誤解を招きますが、私どもはとにかく法律的にきちっと憲法の要請を満たすということは担保をしなければなりません。そしてまた、それが同時に、現場の自衛官が迷うようなことがないようにという、この二つの要求を充足させなければいけないと思っております。
 その上で、そのことをよく分かった上で申し上げますと、相手が国又は国に準ずる者であってもそうでなくても、正当防衛、緊急避難に基づく、本法案十七条に基づく武器使用はできるのでございます。相手が国であろうが国でなかろうが、そうでなかろうが何であろうが自分を守るための武器使用はできますということでございます。
 では、正当防衛、緊急避難とは何なのだということを申しますと、これは違法性阻却事由として、刑法に定められております違法性阻却事由としてございます。私どもは、武器の使用をいたしますのは、それは正当行為としてやるわけでございまして、違法性阻却事由として正当防衛、緊急避難に限るということを申し上げておるわけでございます。法的にはそういう構成になっておると承知をいたしております。
 そういう訳の分からないことを言われても困ると、こういうようなことでございますが、要は、相手がどのような者であれ、自らを守るために必要な武器の使用はできるのだと。で、武器の使用はなぜ武力の行使ではないかと、こう言われますと、武器の使用は武力の、武力の行使は武器の使用を含んだ概念でございますがという、これまた非常に寿限無寿限無のような話になってしまうわけでございます。
 しかし、これは私は本当に憲法上の要請を満たすために必要なものでございまして、要は、自衛官がその場で逡巡をすることがないように、判断の遅れがないように、そのことはやはりきちんとした訓練、そしてまたROE、それに基づいて確保すべきものと考えております。

○遠山清彦君 分かりました。
 それで、じゃ、ここでちょっと相手、攻撃主体が犯罪集団であった場合に限ってお話を聞きますが、相手が犯罪者あるいは犯罪集団、これはよく答弁では、御答弁では例の野盗、泥棒のたぐいというやつですが、その野盗、泥棒のたぐい、つまり言い換えると犯罪者、犯罪集団が攻撃してきた場合は、これはいかなる状況でも戦闘行為とか武力行使に当たりませんね。

○国務大臣(石破茂君) 当たりません。

○遠山清彦君 当たらないと。で、自衛隊は、ですから、この当たらない行為をやることは禁じられていないと。
 次に聞きたいのは、じゃ、これはもう仮定の話で申し訳ないんですけれども、この攻撃主体が犯罪集団であることが明白な場合に、自衛隊の部隊そのものではなく、近在する他国の部隊を犯罪集団が武装して攻撃をしてきて、その部隊から自衛隊の部隊に救援要請があった場合には、これは自衛隊は、例えば救援要請を受けてこの他国の部隊を助けて武器使用することは可能ですか。

○国務大臣(石破茂君) 不可能でございます。

○遠山清彦君 しかし、これ戦闘行為じゃないですよね。戦闘行為じゃないから憲法で禁じられている武力行使に当たりませんね。それは何でできないんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは憲法には抵触をいたしません。しかし、そのような、例えば第三国の部隊がやられておると、その連隊から救援要請があったと、それに対して行くという権能をこの法案は与えておりません。そしてまた、相手が犯罪者集団であるかないかということと本法案第十七条というのは、それはもう相手が犯罪者集団であれ国又は国に準ずる者であれ、十七条というのが使えることは先ほど来申し上げておるとおりでございますが、要するに、先ほども委員が御指摘ありましたが、そういう場合は基本的にどこの国の部隊も自己完結でございます。自分の国のことは自分でやる。
 そしてまた、治安を維持する組織というものが、現地の警察であれ、現状におきましては米英軍であれ、そういうのが負っておるわけでございます。そうしますと、憲法に抵触するものではございませんが、この法案によって権能が与えられておらず、かつまたその国の部隊若しくは治安当局が行うべきものである。現在、私どもそのような整理をいたしております。

○遠山清彦君 大体想像したとおりの御答弁だったんですが、要は、確認したいのは、要するに、攻撃主体が組織性、計画性を持っておらず、国又は国に準ずる者でなくて明白に犯罪集団だと、つまり強盗のたぐいだと分かっていて、それが自衛隊以外のある者、団体を襲っているときに自衛隊がそれを助けに行くことは憲法には触れないということですね。
 ただし、この今議論している法案ではそういう治安維持というか安全確保を直接的にやる任務を付与していないと。ということは、裏返して言うと、付与する法律が出てくれば憲法に抵触せずにできるということですね。

○国務大臣(石破茂君) それは更に詳細な議論が必要かと思いますが、武器使用に関して言えば抵触はしないということでございます。武器使用に関して抵触いたしません。ただ、それを第三国の部隊を助けに行くという行為それ自体がどうなのだろう。そして、それが武器使用を伴うのか伴わないのか、いろんなケースがあるだろうと思っております。
 相手がとにかく、野党、失礼、野盗ですね、発音は。野盗、強盗のたぐいであったとするならば、憲法に抵触はいたしません。ですから、そういう任務を与えることが果たして妥当なのかどうかという判断になってこようかと思います。

○遠山清彦君 私は二度目に、防衛庁長官、聞くときは、意図的に他国の部隊と言わずにある団体とか、そういう言い方をちょっとしたと記憶しておりますが、いずれにしても、NGO、よく言われるのはNGOのスタッフが自衛隊の近くで襲われて助けてくれといった場合とか、そういう場合も含めて考えなきゃいけないのかなと私は思っておりますけれども、いずれにしてもこの点については、御存じのとおり私も内閣法制局ともいろいろと議論をしておりますので、またいろいろと議論をしていきたいと思いますし、もし仮に、この委員会でも言及がありましたが、自衛隊を海外に派遣をして様々な国際平和協力業務をやる恒久法を作るとすれば、これは大きな議論になっていかざるを得ないというふうに思っておりますので、自分なりの論点整理の意味も込めて質問をさせていただきました。
 次に、これも先ほど来議論になっているところですが、例の自衛隊員が誘拐、拉致されて、それを奪還はできないけれども捜索には行けますよ、武器を携行してと。行って、仮に見付け、その自衛隊、その行方不明になった自衛隊を見付けた、場所をロケートしたと、返してくれと。いや返さないと、返さないどころか撃ってきた、武器で攻撃してきた。で、攻撃受けた場合は、これは当然自己保存の権利で応戦できるわけですが、ただ、向こうが撃ってこないときにこっちから撃っていって仲間を助けるということはできませんよというのが私が先ほどの防衛庁長官の御答弁で理解したピクチャーなんですが。
 しかし、現実に行方不明になった自衛隊員がいて、仮に居場所が分かったと。しかし、そこを武装した勢力が、何というか、まあ守っていると言えませんね、拉致した状態で囲んでいると。そこにいるのは分かっていると。それで、やっぱり分かっていたら助けに行かないわけにいかないわけで、ただ、我々の今の自衛隊の法的立場からいうと、攻撃仕掛けるわけにはいかないと。じゃ、交渉だといって交渉したら撃ってきたと。で、撃ってきたことに対しては応戦するけれども、しかしそれでまたぱたっとやんだら、まあ英語で言うとゼン・ホワットという感じになるわけですね。つまり、そこから立ち去るわけにもいかないし、でも何もできないという状況というのはこれあり得るわけですが。
 防衛庁長官は、そういう想定され得る事態に対してどのような、何というか、方策が、それはもう交渉しかないですか。相手の、拉致した人のお母さんか何かを連れてきて説得工作したりなんかして。それしかないですかね、もう。お願いします。

○国務大臣(石破茂君) そういういろんなケースを、実は私どもの内部でもそういういろんなケースを想定して一体どうなんだという議論はいたしております。実は、そういうことを全然考えないで、全く非現実的なものを自衛官に与えて、行って後はおまえら自分たちで考えなと、そんなつもりは私ども毛頭ないわけでございます。
 しかし、最初から武器を使用することを前提として、向こうが撃ってくるということを予測して、それに対する反撃としてではなくて、こちらから撃つことあり得べしといって行くことは、それを多分奪還と言うのだと思うのですね。やはり、返してくれと言い、要請し交渉しということがまずなければ私どもはいけないと今思っているのです。おまえ、そんな悠長なことがというふうなおしかりをいただくかもしれませんが、この法律はそういう仕組みになっておりますし、向こうが撃たないのにこっちから撃つということは私どもとしては考えられないことでございます。
 そういたしますと、やはり、先生、今交渉しかないのかというふうにおっしゃいますが、あるいは武器を使わないでということもあり得るわけですね。──いやいや、そうではなく、空手ということではなくて、ここまで言うともう何を考えておるのだというおしかりをいただきますから申しませんが、救出する手だては何も武器を使ってというだけではないということでございます。
 ですから、それはいろんなことがありますが、いずれにいたしましても、これが非現実的ではないような対応、そしてまた現地の治安がどのようになっておって、それが我が国でできない場合にはそれをどこにまた依頼をするか。いずれにしても、隊員が拉致をされるというのは大変なことでございますから、それに対してきちんとした対応ができる、我々が法の限界があるとするならばそれをどこでもってその部分を埋めるかというようなこともきちんと考えなければいけないと思っております。

○遠山清彦君 分かりました。
 防衛庁長官の苦渋はよく分かっておるつもりですけれども、お話を聞いていたら、実は自衛隊の中には空手特殊部隊みたいなのがいて、武器を一切使わずにそういう作戦を遂行できるのがあれば別なんでしょうが。
 ちょっと角度を変えてお聞きしたいんですが、よく最近、報道でも、武器使用基準の緩和は今回行わないけれども、いわゆるROE、これは訳がいろいろありまして、通常、普通に訳すと交戦規定ということになると思うんですが、武器の運用基準マニュアルなんという用語も報道では出ておりまして、これを作成して隊員に配付をするということがあります。
 この中に、聞くところによれば、仄聞するところによれば、この中には警告射撃とか威嚇射撃という、つまりこちらがまだ攻撃を実際されていない段階から何らかの基準を満たす場合には威嚇射撃、警告射撃という手続を取っていいと。(「当たり前だ」と呼ぶ者あり)当たり前という御議論も当然あるんですが、この攻撃を受ける前から実際に武器を使用する、これは威嚇射撃でも使用ですからね、武器を使用するのは、これは現行法上問題はないんですか。

○国務大臣(石破茂君) これは問題はないと考えております。先生御指摘のように、武器の使用というのは何もばんばんと撃つことだけではございませんで、例えば構えるということも、あるいは警告射撃をするということも、これは武器の使用という概念の中に入るわけでございます。したがいまして、それは当然向こうが撃たなくてもということになります。
 もう一つ、これは先生よく御案内のことかと思いますが、要は急迫不正のといいました場合に、この急迫不正を充足をしますのは、何も向こうが実際に攻撃をすることまで完全に要求をするものではございません。例えば、急迫不正というものを満たしますためには、例えば銃を取り出すためにポケットに手を入れた、これでももう急迫不正は満たしたとする判例もございます。したがいまして、向こうが撃たなくても武器の使用はしてよい、そういう場合はございます。
 さらに、詳細は運用局長から答弁を申し上げます。

○遠山清彦君 短めに。

○政府参考人(西川徹矢君) はい、分かりました。
 大臣の方の最後のところの急迫不正の場合というので、これはもう既に最高裁判例等々で、急迫不正の場合は必ずしも相手から実際的な攻撃を受ける前であっても、そういうふうな明らかな危険があった場合には対応できるというのが確定しておりまして、そこが時々、撃たれないと撃てないとか、こういうふうな言葉で単純で分かりやすいので言うことがございますが、確定されているところでございますので、わざわざ拡張したとかいう話じゃないと思います。

○遠山清彦君 そうしたら、ちょっとさっきの、防衛庁長官、さっきの拉致の話にちょっと戻っちゃいますが、例えば、じゃ誘拐、拉致をされて、生存していることが分かるか分からないか、これ状況によりますけれども、その隊員の命が脅かされているような状況で、他の自衛隊員が助けに行ったときに、さっきは向こうが撃ってこないとこっちは応戦できないから武器使えないという話ですが、例えば今の論理に従って、拉致された自衛隊員の立場に立てば十分急迫不正の侵害状況で武器使えると、ですよね。だけれども彼は持っていない。それ、代わりにほかの自衛隊員がその権利を行使するというのは駄目なんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、正当防衛というのは、自己又は他人のためと、こういうふうに条文にございますから、それは満たす場合があり得ると思っています。ただ、ただ、──いやいや、ただそのことを最初から前提として、前提として行くことはできない。その場合に、正当防衛の要件というものを満たす、つまり今の先生の論で申しますと、急迫不正を満たす場合にはこちらから武器の使用はあり得るということでございます。

○遠山清彦君 もう時間がなくなったのでこの議論で今日はやめますが、今の長官の、長官の今のお話だと、これ、場合によっては、場合によっては捜索行って、武器使用して奪還できる法理論に何かなりつつありません。

○国務大臣(石破茂君) いや、なりつつありません。

○遠山清彦君 だって、拉致されている自衛隊員の自衛権を代替行使するという形でほかの自衛隊員が、同じ現場にもいますし、それ、行使するという形になればできちゃうんじゃないですか。

○国務大臣(石破茂君) これまた先生、時間取って議論させていただきたいと思っておりますが、十七条はどういうような構成になっているかと申しますと、「対応措置の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員、イラク復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由が」云々と、こういうことになってまいります。そうしますと、「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員」と、こういうことになっておるわけでございまして、それは、その場合において共に所在をしなければいかぬわけです。──いやいや、ですから、いやいや、拉致されたと、例えば遠山隊員が拉致されたと。それでは、その二キロ、三キロ離れたところから遠山隊員救出のために行くぞということをやった場合に、この十七条に言いますがところの「共に現場に所在する他の自衛隊員」というものを、何キロか離れている例えば本部において、その条件が満たされているかというと、それはそうではない。

○遠山清彦君 だけれども、その前に捜索をする権利はあると言っている。捜索して同じ現場になっちゃうんですよ。同じ現場になっちゃったら、その根拠法でできるんじゃないですか。

○国務大臣(石破茂君) ですから、私、何を言葉の遊びをしておるんだとおしかりをいただくかもしれませんが、それは、それは奪還と言うのです。捜索をして、捜索に行った結果として自己と共に所在するという状況になったとするならば、それは十七条というものがワークする場面が発生するということでございます。
 しかし、それは捜索に行った結果として現場性が発生をし、自己と共に所在するという条件を充足したということでございまして、捜索、正当防衛、武器使用と、こういうものが積み重なって、結果としてはそれは同じようなことが生じますが、しかし奪還というものを目的としてそういうことをやるということはこの法案は予定をしておらないということを申し上げておるわけでございます。

○遠山清彦君 もう時間が来ましたので終わりますけれども、この今のお話は、何というか、奪還という言葉を使わないけれども、三段階でそれはできますと御答弁をされたのかと私理解をしておりますけれども、またこれからも機会あると思いますので、御議論させていただきたいと思います。
 以上です。


2003/07/10

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