2003年7月22日

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156 参議院・外交防衛委員会−(2)

イラク復興支援特別措置法案について
質問者=吉岡吉典(共産)、広野ただし(自由)、大田昌秀(社民)、山本一太(自民)


平成十五年七月二十五日(金曜日)

○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。
 二十二日の委員会での質問の続きに当たる質問を行います。
 フセイン政権はイラク人民を抑圧し続けてきた独裁政権でありました。そのフセインを打倒せよということを求める国連決議は何かあったのでしょうか。まずお伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 今までの国連決議の中に、安保理の決議の中にフセイン政権を打倒するようにという決議はございません。

○吉岡吉典君 米英が対イラク戦争で行ったのは、国連決議にもない、他国政府の軍事力による政権転覆であったということがはっきり言えるということが明らかになりました。たとえ独裁政権、人民抑圧の政権でも、今日の世界で他国が軍事力をもってその政権を転覆するということは許されていないと思います。
 今回の米英のイラクに対する戦争については、最近では、大量破壊兵器問題は口実であって、目的はフセイン政権の打倒、これが本音であったという多くの指摘が行われるようになっております。三月二十日のブッシュ大統領の開戦宣言も、大量破壊兵器の問題ではなくフセインからのイラク人民の解放ということを言っておりますし、大量破壊兵器が何一つ見付からないうちに発表された五月一日の勝利宣言でも、フセインの支配から国民を解放したということを述べております。
 この本当のねらいがこういうところにあったということと結び付いて、最近いろいろなアメリカの分析が行われております。例えば、当参議院外交防衛調査室の室員の人の書いた、最近発表された論文を見ましても、「イラクの米軍基地を米国は絶対に手放さないであろう。」と、こういうように結論付けております。そうでなく、米軍が早期に撤退する見通しがあると判断しておられるかどうか、お伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 米国政府は、イラク人のイラク人によるイラク人のための政府ができ次第、できるだけ早くCPA当局はその職を離れてその仕事を終わるということを言っているわけであります。それは公の場でそういう発言をしております。

○吉岡吉典君 そのように事態が進行するという見通しを持っている学者というのは、私はほとんどいないと思います。
 今のイラクの実態から、米軍が早期に撤退する、そういう現実的な見通しというのはどこからも出てこない、逆の泥沼化という状況、そういうイラクに日本の自衛隊を派遣しようというわけです。
 ここで今論議になってきました小泉総理の安全なところがあるかどうか私は分からないという答弁は、これは、国民の間にそうでなくても強く存在していたイラク派遣への不安を非常に大きくしたと私は思います。なぜ分からないのか。石破長官は調査しなければ分からないとおっしゃったんですが、調査が十分にやられていないからではなく、イラクの事態が非常に流動的で、いつどこで何が起こるか分からない状況ということが総理の答弁が示すものだと私は思います。
 そういうところへ自衛隊を送る。しかも、一方では、憲法とのつじつまを合わせるために、万一捕らえられても、国際法上の捕虜としての保護は受けないということも明らかになりました。
 私、ちょっとここで付け加えて聞いておきたいんですが、先ほど佐藤議員が述べられました、不幸にして戦死というような場合が出た場合はどうなるのか。犠牲者が出た場合、それは、捕虜は戦闘員でないから捕虜の扱いを受けないということですけれども、私は、自衛隊員が不幸にして犠牲になったというふうな場合に戦死と言えるかどうか、これどなたかお答え願います。

○国務大臣(川口順子君) 戦死という言葉を使われて今おっしゃったわけですけれども、この言葉の意味ですが、例えばジュネーブ条約において戦死あるいは戦死者という用語は使われていないわけでございます。ですから、死者という意味で使われているということです。
 それで、いずれにしても、ジュネーブ条約、一から四までありますけれども、それぞれのところで、例えば第一条約、これは陸戦条約でありまして、あるいは第二条約、これは海戦条約ですけれども、この死者という規定、これは紛争当事国の軍隊構成員の死者の扱いに関するものであります。したがって、自衛隊がこの法案に基づいてイラクで活動をした場合に、これは武力紛争の当事国とはならないということで、死者に該当する、ジュネーブ条約、第一、第二条約に言う死者には該当しないということであります。
 それから、ジュネーブ第三条約というのは、これは捕虜についての条約であります。死者に関する規定は捕虜となった者が死亡した場合に関することでありまして、ジュネーブ諸条約上の捕虜となることはない、自衛隊員はなることはないわけでございますから、これには該当をしないということです。
 それから、ジュネーブ第四条約というのは文民条約でありますけれども、これにおける死者の規定というのは、これは被抑留者が死亡した場合あるいは紛争当事国の住民が武力紛争によって死亡した場合に関するものであって、したがって自衛隊員がジュネーブ条約上の被抑留者となったりあるいは当事国の一員となるということは想定をされないので、この規定に言う死者に該当するということはないと、そういうことであります。

○吉岡吉典君 私が確かめたところでは、自衛隊は武力紛争の当事者ではないと、したがって捕虜の扱いも受けないと、佐藤議員が言われた名誉の戦死でもないと、戦死とは言わないと、こういうことでした。
 防衛庁長官、あなたは、これから派遣される自衛隊員一人一人に、君らは万一のことがあっても捕虜の保護は受けないぞと、戦死ということにはならないぞということを徹底して送りますか、どうですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、そういうことを申し上げることはいたしません。
 それは、捕虜、これはよく御理解をいただきたいのでございますけれども、相手方が自衛官を捕虜にするような権限は持たないということを申し上げておるわけでございます。そのようなことをしていい立場に向こうは立っていないということであって、その中にそういう概念は成り立たない。
 しかし、我が政府として、そういうような、仮に万が一そういうことが起こった場合に、当然そういうようなことはあってはならないことであって、国際社会とともにそういうような虐待、そういうようなことがあってはならないということを要求するのは、これは当然のことでございます。それは相手が法的にどのような者に立つかということの理解によるものでございまして、それは自衛隊がどうであるからということに起因するものではございません。
 それから、もう一つ御指摘になりました戦死ということにはならないのだぞという御指摘でございますが、それは、今ジュネーブ条約上の解釈というものを外務大臣からお話がございました。そういうことによるわけでございまして、その仮に万が一そういうことになった人たちに対して、我が政府として、そういうことにならないように万全な配慮を行いながらもそういうことが惹起されたとして、国として最大限のことをなすのは当然のことでございます。

○委員長(松村龍二君) 川口外務大臣。

○吉岡吉典君 いいです、時間がないからいいです。
 今、防衛庁長官、相手にそういう権利ないとおっしゃいましたけれども、それは日本政府の言い分であって、日本は正当性を持たないと、国際的に多くの指摘があるそういう地位でアメリカ軍に協力するわけで、相手国側にはそれに対して抵抗する権利があるというのが多くの国際法学者の一致した意見になっていることを申し上げておきたいと思います。
 いずれにせよ、日本国憲法が認めない海外での自衛隊の行動、これをなぜ無理に無理を重ねてやらなきゃならないのか。私は、これまでの論議でも、国連の要求もない、またイラクからの要求もない、結局アメリカの要求によって行われるということだと思います。日本の自主的判断だとおっしゃるんですが、これはもうアメリカ側の要求というのは全くないのか。
 アメリカの日本に対する要求、圧力というのはこれまで常識になってきておりますが、その点、石破長官、あなたでも防衛協議等いろいろあると思いますけれども、ちょっとお伺いします。

○国務大臣(石破茂君) 具体的に、どこどこで何々をしてくれというような要請はございません。

○吉岡吉典君 私は、この問題が論議になりましてから、アメリカは日本に実際上、意見は述べるけれども要求はしてこないような意見、またすべて日本が自主的に決定しているような議論がありますので、この際、確かめておきたいんです。
 アメリカはかつて日本に対して、通商交渉でもまた防衛協議でも、脅迫と等しい圧力を掛け、対日要求を突き付けてきたということが、交渉の当事者が自ら書き、語っております。そういうことがお認めになるかならないかということです。
 例えば、お亡くなりになりました伊藤宗一郎衆議院議長ですね、元。この人、防衛庁長官時代にアメリカへ行ったときには、戦後の日本の特殊性を認めないということで大変だったと書いていますね。平和憲法、非核三原則、専守防衛というのは独り善がりの理論であって、そういうのは認められない、それを変えろと突き付けられたと。それで、テーブルをたたきましたと、相手は。そして、あなたらは選挙民が怖くてこういうことが言えないのかと迫ってきたと、私はたじたじだったと、こう雑誌で書いております。それから、田村元、これも衆議院議長をやられた人ですね。三年間の通産大臣時代の通商交渉では、彼らは事ごとに罵倒してくるのだと、こう、これは新聞の投稿文書の中で書いておられます。こういうのが日米関係だったんです。
 今の日米関係で、こういうテーブルをたたいたりの交渉があるかないか知りません。もうテーブルをたたかなくたっていい状態に日本側がなっていて、たたかなくなっているかもしれません。いずれにせよ、日本の戦後の特殊性、それは平和憲法、非核三原則、専守防衛、これが独り善がりの理論だから変えろというのが基本要求だったと書かれているわけです。
 私は、これは伊藤宗一郎さん、防衛庁長官、元、の意見ですから、石破防衛庁長官にお伺いしますが、過去にはこういうことがあったことは認められるか、過去にもそういうことはなかった、今もないとおっしゃるのか、過去も今もあるとおっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) それは、物故されました伊藤宗一郎先生とは随分いろいろなお話をさせていただきましたが、伊藤先生からそのようなことを承ったことはございません。また、私もそのような現場を見たことは当然ないわけでございます。
 それから、今そういうことはないかというお話ですが、これはいろいろな機会でアメリカ国防総省の関係者の方、ラムズフェルド長官を始めとして、お目に掛かることがございますが、そのようなことは一度もございません。それは脅迫的な言辞を弄さなくてもいいようになったのだというふうな委員の御指摘ですが、私は、むしろそれよりも、合衆国というものがどれだけ日本の重要性というものを理解し、日本のいろいろな姿勢というものに対して感謝の意を表しているかということをつくづく感じることが多いわけでございます。
 それは、日本の独自性というものとは全く無関係な話であって、合衆国は日本のそういう立場を十分理解した上で、コアリションという形で日本に対して今回の、合衆国だけではございませんけれども、どういうような形で参加ができるのか、それはそれぞれの国の主体性において決せられるべきものという立場は全く変わっていないと理解をいたしております。

○吉岡吉典君 伊藤防衛庁長官、元長官は、私、直接聞いたのではなく、雑誌や新聞で語っておられることによって今は私は発言したということを付け加えておきます。
 私は、日米防衛協議に参加した人から随分たくさんいろいろな話聞きました。もう驚くべき話も聞きました。時間がありませんから今日はここでは行いませんけれども、私は、やはりアメリカが、日本の戦後の特殊性は認めない、平和憲法、非核三原則、専守防衛を変えろと言い続けてきた。そして、今の日本は大体そういう点でアメリカの合格点になっているんではないかということを考えざるを得ないということももう一度申し上げておきたいと思います。
 次の問題です。
 次の問題は、二十二日も若干触れた問題ですが、今度のアメリカのイラクへの戦争、あの大量破壊兵器問題というのは、あるかないかということ自体が、今も論議がありましたように重要な問題です。同時に、私は、あの宣伝というのは謀略的な情報操作で国民と世界を戦争に巻き込んでいった、そこに今アメリカ国内でもイギリスでも国民が怒りをぶつけているところがあると思います。
 日本も満州事変は謀略で開始しました。そして、満州事変は、その後の事態、次々謀略の連続であったということ、これは防衛研究所に保存されている資料でも一〇〇%証明されております。これも時間がありませんから、私、一々申し上げません。私、本にも書いております。
 ですが、アメリカもこれは大変な謀略を繰り返してきた国。最近、アメリカ国家犯罪全書という本が出ておりまして、私、読んでみました。アメリカというのはもう本当にひどい謀略で戦争をやってきた国なんだなということで、これはもう皆さんが我が同盟国だとたたえるような相手でないということを私は、この本はみんな出典挙げて書いている本ですから、本当驚きました。日本でよく知られることは、トンキン湾事件の謀略があるわけです。
 今度のイラクの大量破壊兵器をめぐって、アメリカ議会でもイギリスの議会でも問題になっている一連の虚偽あるいはでっち上げ、そういうものの中に謀略的宣伝の様相があることをお認めになるのか、それは一切ないとおっしゃるのか、外務大臣、お伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 謀略の意味はちょっと私よく分かりませんけれども、アメリカ側は情報の開示については私は非常に透明な国であるというふうに思っております。
 委員がおっしゃっていらっしゃるのは多分ニジェールからのウランの購入にかかわることかと思いますけれども、その情報が不正確であったということについてはアメリカ政府は公的に認めているわけであります。
 それで、このことによって今回のイラクの大量破壊兵器についての疑惑が何ら変わったかというと、そういうことではない。このニジェールからのウランの購入の話が不正確であったとしても、それによって不存在、WMDが存在をイラクにしていないということが証明されたわけでもない。それから、このイラクについて軍事行動を取ったことの正当性がそれによって揺らぐわけでもないというふうに考えております。

○吉岡吉典君 アメリカのあの大量破壊兵器をめぐる一連の宣伝、これは、別の人は、口実であって、目的はフセイン打倒、中東支配だったと、こう書いているわけですけれども、あそこの中に謀略性が感じ取れないような外務大臣では、私は世界の戦争の歴史から教訓を学ぶことができないと思います。
 日本の戦前行った戦争からも我々は日本が繰り返してはならない教訓を学ばなくちゃいけない。同時に、アメリカその他世界が行った戦争、その中から教訓を学んで、世界が謀略によって、虚偽宣伝によって戦争に引き込まれるようなことはないようにしなければならないと私は思います。そういう教訓を学ぶ姿勢が全く感じ取れないということを私は申し上げておかなくちゃなりません。僕は、外務大臣にもこの「アメリカの国家犯罪全書」という本を是非読んでもらいたいと思います。
 いずれにしろ、時間が迫ってきたので、私は結論に進まなくちゃなりません。
 私は、二十二日の委員会で、三月十九日付けの東京新聞で、アメリカのイラクへの最後通告を歴史的大敗北の瞬間であったと書いた記事の意味の重さを感じ取りました。しかし、それは三月十九日、今、数か月たちました。今、数か月たった時点で、我々はイラクの事態を見詰めることができるわけです。
 四か月たった時点ではいろいろな本も出、例えば私は、寺島実郎さんらの「イラク戦争」という、これもつい最近出たばかりの本も読んでみました。そして、そういう中で、大義のないアメリカの戦争が成功することがないという見通しをはっきり述べられている。この本で寺島さんは、アメリカの戦争の大義は崩壊し、アメリカニズムの終えんということさえ見通せるということを書いています。
 私どもは、そういう時期に自衛隊を海外に派遣しようとする、私は、日本の政府にも、また与党にも、日本の国民の、我々のすべてが過去の戦争からの教訓も学びながらこの歴史的な大転機に正確な対応をしなければならないと思います。
 昨日の本会議で吉川議員がたしか触れたと思いますけれども、一九三一年九月十八日、満州事変の始まりです。これは、関東軍の謀略によって始まったことは、これはもう公表されている外務省の文書でも明らかです。
 この関東軍の謀略だという現地の領事館から外務省へ送られてきた文書は、三月十九日の閣議で幣原外務大臣が読み上げて全閣僚が知るところとなり、そして満州事変の不拡大という方針が決まりました。ところが、軍は従わなかった。そして、三月二十二日の閣議では不拡大という方針を政府も変えました。その変えるときの変え方、これは私は中谷前防衛庁長官にこの委員会で確認を取りました。防衛研究所にある資料によって明らかになることは、これに賛成する者一人もなしと、しかし反対する者も一人もなかったと、だから反対はなかったということで閣議は満州事変へ突き進む決定を行った。沈黙の共犯ということが戦後言われております。
 私は、新聞によると、政府部内でも、また外務省でも防衛庁でもこの問題にそろって積極的にこの法案で行こうということではなかったということが書かれているのも読んでいます。私は、沈黙の協力ということを行わない、かつての教訓を生かした判断を今、日本は、政府も与党も議会も野党もすべてが行わなければならない重大な時期だと思います。私は、この謀略的なやり方で始まった戦争、そして今、泥沼化しつつある、総理大臣自身が安全なところがあるということを言えない、こういうところへ自衛隊を送っちゃならないと思います。
 それで、私、この前も一言触れました。多数決で決めなきゃならないこともあるんです。しかし、こういう自衛隊を危険なところへ送る問題、こういうことは多数決で決めていい問題ではないんです。
 私はそのことを申し上げまして、官房長官の御意見をお伺いし、時間があったら三人に一言ずつで結構ですから答弁求めたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 確かに、委員のおっしゃいますように、米軍による武力行使が三月二十日に決定されたわけでございます、実行されたわけでございますけれども、それまでに至る過程において、どういうようにイラクに対峙していくかということについての国際社会の一致した意見というものはできなかったんですね。その対立の中からそういう判断が生まれたということでございます。そういう対立はございましたけれども、国連決議の一四八三によりまして、これはもう国連が関与してやる、この復興について国連が関与してやるんだということで国際社会は一致を見たわけでございます。
 我々がなすべきことは、イラクが、これが立派な独立国家として今後中東地域の安定勢力になるように、そのために復興に対して支援をするということが大事なんだろうというふうに思っておるわけでございまして、そういうことを目標として今回の法案をお出ししたということを御理解いただきたいというように思っております。

○吉岡吉典君 私は今申し上げましたことを結論的に繰り返すとともに、だからこの法案は廃案にしなくちゃならない、多数決で決めるなどということをやってはならない法案だということを再度強調して、質問を終わります。

○広野ただし君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)の広野ただしです。
 今、同僚吉岡議員から、非常に歴史に学ぶ大事なことを言われたと思います。自由党と共産党さんは原理原則も違うんですが、右回りしてきますと、あるいは左回りしてまいりますと、たまたま結論が一緒になるということが往々にありまして、そういう意味で、でも歴史に学ぶということは誠に大切なことだ、こう私は考えております。
 ところで、総理も官房長官も、海外に日本の自衛隊を、言わば実力行使部隊を派遣することの、このことについて、今まで積み上げ方式で来ているが、そろそろ基本法がと、こういうことをおっしゃっております。私どもは、元々、安全保障基本法というのをもう国会に提出をいたしておりまして、積み上げ方式ではやはりかえって間違いを犯すおそれがある、きちっとした原理原則、そういうものを定めて、そして個別法が必要であれば個別法、こういうことだと思うんですね。特に、特別措置法というこれはもう正に暫定的なことをやっていくわけですから、これは本当に間違いを犯すおそれがあると思っております。
 ところで、基本法の問題なんですが、そこで官房長官に伺います。
 そういう基本法の中で国連、やはり国際協調主義というのは日本の大事な考え方、これは国連憲章も正にそういうことだと思うんですね。国連の位置付けあるいは国際協調主義ということから、私は、やはり海外に自衛隊を派遣する、このときは国連の旗の下に、国連の要請に基づいて、ですから私たちは、国連平和協力隊というものを別途作って、それで国連に出す、こういう考え方を持っております。これが正に国連中心主義ということで、国連がやはり警察力を持つ、あるいは治安維持能力を持つ、場合によっては軍事力を行使する。
 世界連邦というのはまだないわけですが、何らかのいろんな紛争なりそういうものが残念ながら起こるわけで、そういうときにどうやって平和を維持していくのかということについて、日本は無関心でおられるわけはないんですね。やはり平和を作ることについてきちっとした貢献をなさなければならないと、こう思うわけでありますが、この点の基本はどういうふうにお考えでしょうか。──いや、官房長官です。官房長官、政治家としてお考えを賜りたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 国連中心主義というのは、これは我が国も一つの標榜すべきテーマだというふうに思っております。
 国連がすべての国際的な問題を、また利害関係を調整できる場面だということであるならば、それは国連中心主義ですべて国連の判断に従うと、こういうふうな考え方もできるんだろうと思いますけれども、残念ながら今現在、今回のことでも分かるように、その利害関係の調整ができなかったということもございます。過去においてはソ連がございまして、拒否権を発動するという時代がありました。
   〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕
 この十年、そういう意味においては、国連の安保理というものがかなりの調整を果たしてきたということはございましたけれども、必ずしもすべてが調整し切れるものでない。そういったときに、ではどういうようにするのかというところは今一番の悩みでもあるんだろうというように思います。
 ですから、我が国としては、やはり国連の体制をしっかりさせるということは大事だろう。そのために、我が国としても、国連安保理に参加するとかいったような、安保理の常任メンバーになるとか、そういうことも大事だろうし、また国連の改組、合理化、そういったようなことにも口を挟んでいかなければいけない、そういう立場だろうというふうに思います。国連分担金も我が国は第二位だという、そういうことも考えてしっかりと対応すべきであるということで、政府としても国連に対するそういう注文は今までもさんざんしてまいりました。今後も、より強力にその方向を進めていきたいというように考えております。

○広野ただし君 正に大事なことをおっしゃっておりまして、現在の国連は本当にまだ欠陥が一杯あるんだと思うんです。しかし、それなりのことをやってきた経緯もあります。実績も積み上がってきていると。ですから、国連を改組、またきちっとしたものにしていかないと、平和の維持はだれがやってくれるのかと。結局アメリカに頼らざるを得ないと、アメリカ中心主義になっていくわけですね。ですから、やはりそこのところは、欠陥はあるけれどもきちっと直していく、あるいは積み上げてきちっと強いものにしていくということが正に大切だと思うんですね。

 そのときに問題になりますのは、国連に平和協力隊なりいろんなものを、協力、それで出していくにしても、結局集団安全保障の問題が出てくるわけですね。これの点について、憲法は、私たちはこれはできるんだと、こう思っておりますが、政府解釈は依然としてそれを変更しないと、こうおっしゃるわけですね。ここのところはどうされますか、官房長官、政治家としてお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 政治家であるけれども官房長官でもございますので、官房長官的答弁をいたしますけれども。
 これは、もう委員のおっしゃるとおり、政府としては集団的自衛権というもの、これは行使しないということで来ておりまして、この解釈は現行憲法の下で変更する、そういうつもりはございません。

○広野ただし君 しかし、政府は、自然権として集団安全保障あるいは集団自衛権はあると、ただ行使しないんだと、こうおっしゃっているわけですよね。
 私たちは、前文から考えて、国際協調主義ですね、また積極的に平和を作るという考え方のときに、やはりきちっと集団安全保障、これは行使できると。この憲法九条においても、自国の主権発動と言いますが、そこのところは禁止はされておりますよ、ですけれども、集団安全保障まではきちっと禁止しているということだとは思っておりません。国権の発動たる武力の行使、これは禁止はされておりますが、国連の旗の下にやることがなぜ禁止されるのか、ここが私、分からないんですね。これはもう是非、官房長官、政治家としてお答えいただきたいと思うんです。

○国務大臣(福田康夫君) これは、私がお答えするよりは、委員の両隣にお座りの委員にお聞きいただいた方がいいのかもしれぬですけれども。
 国連軍というものに参加すればということでありますけれども、どういう身分で参加するのかということもございますし、今、政府の考え方というのは、そこまで踏み込んで自衛隊が活動するということは許すという解釈をしていないんでありまして、それは、その考え方は今後も変わらないという、そういう立場でございます。

○広野ただし君 じゃ、だれが平和を維持し、平和を作るんですか。
 官房長官、そこはどう思われますか。

○国務大臣(福田康夫君) 我が国も、平和を維持し、そしてまた平和を作るということについてできるんですよ。それは、ただ、戦争はしない、戦争には参加しないということでありまして、その前と後と、その段階においては今の法体系で十分できると、そういう意味において今回の法律もお願いをしているということでございますし、むしろ、日本としては、そういう分野で得意の能力を発揮するということも国際社会の中で求められているものだというように考えております。

○広野ただし君 ですから、私たちは、安全保障基本法案にも言っておりますのは、やはり海外に実力行使部隊を出すんですから、ここのところは極めて抑制的にやると。何でもどんどん行けと、時々、小泉さんは、私たちの法案を曲解されまして、どこでも行く、がんがん行くんですね、そういうのは国民世論から受けませんねと、こういうことをおっしゃいますが、何もそういうことを言っているんじゃないんですね。極めて抑制的にと、こう考えているわけですから、平和を作るために積極的に私たちは貢献をしなきゃならないと、こういうことだと思うんです。
 いずれにしましても、基本というものを、原則というものを作っての、基本法案というものを作って、その中でやっていくということが私は非常に大切だと思うんです。
 ところで、イランの核開発疑惑の問題とアサデガン石油開発の問題があります。このことについて、私も人一倍エネルギー問題については、日本は大変脆弱なところでありますから、自主開発原油というものもやっていかなきゃいけないと、こう思っておりますが、ところで、いろんな究極のことについてお聞きをしたいと思うんですね。
 それで、イランが核兵器開発に、かなりやっていると、こういう証拠が示されたとき、これはアサデガンの協力はどうするんですか。外務大臣にお答えいただけますか。

○国務大臣(川口順子君) 二つの問題があって、一つは、核の開発、これは疑惑であって、今、IAEAやほかの国が、国際社会が働き掛けているということであります。

○広野ただし君 いや、究極ですよ。究極の段階に行ったときの選択をお聞きしているんです。

○国務大臣(川口順子君) それから、そのアサデガンは、委員がおっしゃられたように、今交渉中の話であります。民間企業が交渉している話であります。
 究極の話というふうにおっしゃられますけれども、これはこれ、こちらはこちらという問題なんですね。そして、それぞれが今動いている。ですから、アサデガンの油田の民間企業の交渉が終わった、それを政府の判断でどうこうするという段階の話では今まだない。
 で、そういう究極の場合を想定をして言う、ここで私がそれこそ無責任に発言をするには、これはそれぞれが非常に日本にとって重大な問題である。我が国としては、それぞれをきちんと追及をし、あるいは働き掛けを行い、やるべき交渉は企業に交渉をしてもらうという、そういう段階であります。

○広野ただし君 核兵器というのは、正に大量破壊兵器の究極のものであります。ですからこそ、アメリカはそれがあるからということで、ある疑惑があるからということで戦争の大義にしたわけですね。
 ところで、北朝鮮について伺います。
 北朝鮮には核開発、石破長官、ちょっとお聞きいただけますか。核開発、八千本のウラン燃料を再処理をして、この間も同僚議員が言ってあったと思いますが、六個ぐらいの、あるいは再処理、第二の再処理施設ができているかもしれないと、こういう情報であります。そういうときに、太陽政策、協力政策だけではやはり話が進まないんでしょう。ですから、対話と圧力という形でやるわけですね。これは、やはり大量破壊兵器を持っているかもしれない、持つかもしれないという疑惑があるということのときは毅然とした態度でやるんでしょう。特に北朝鮮の場合は日本の正に近いところにあるわけですね。
 ですから、大量破壊兵器の中で特に核の問題は、日本は物すごく、これ正に原爆を受けた、被害を受けた国でありますから、そこはきちんとした原理原則というのは持っているんだと思うんですね。その原則がない外交あるいは防衛というのは私はあり得ないと思うんですね。
 ですから、その究極のところの話を、例えばイランの問題を言いますときには、これは核兵器が持っている疑惑が極めて濃厚となれば、これはやっぱり石油協力はやらないということだと思うんですよ。私は自主開発原油を人一倍やらなきゃいけないと思っていますよ。だけれども、大量破壊兵器を認めてまでやるのかと言われれば、それはやらないと。
 ですから、インド、パキスタンの核開発の問題でも日本は極めて無原則なんですよ。あのときも結局、核開発をやると、これであれば経済協力をストップするということでしょう、やはり。これが、そういう原則がないところでやるからおかしなことになるんですよ。で、結局、一回止めたけれども、また経済協力再開しているでしょう。
 あるいは中国に対しての考え方もそうですよ。これは核開発を持ち、軍事力を拡大をしているでしょう。そういう国に対して、なぜ経済協力を拡大していくのか、経済協力を止めないのかと、こういう問題だと思うんですよ。原則がしっかりしていないんですよ。
 ですから、外交の原則ですとか防衛の原則というものをきちっとしていただきたいということを申し述べまして、終わらせていただきます。

○大田昌秀君 社民党・護憲連合の大田昌秀でございます。
 まず最初に、官房長官にお伺いいたします。
 政府は、これまでの国会における質疑において、自衛隊を戦闘地域に派遣したり武力行使をさせるつもりはない、自衛隊を派遣するのはイラクの復興支援活動に当たらせるためだという趣旨のことを繰り返し述べておられます。だとすれば、イラク特措法の内容を非軍事、文民部門の復興支援だけに限定すべきではないかと思います。
 改めて申し上げるまでもなく、イラク特措法案は、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動という二つの性格の異なる内容から成り立っています。すなわち、一番目の人道復興支援活動というのは、イラク国民への食糧、医療品、経済復興支援などであります。二番目の安全確保支援活動というのは、端的に申しますと、自衛隊が米英占領軍を支援することだと思います。つまり、後方支援とはいえ、武装した自衛隊による明らかに軍事的支援にほかなりません。
 第一の人道的支援につきましては、既に我が国のNGOや民間人などが行ってきているように、日本の過去の長年にわたる経験と実績を生かして、可能な限り貢献すべきだと思います。
 ところが、二番目の米英占領軍に対する軍事支援につきましては、少なからず疑問があります。
 イラク戦争を始めた米英占領軍を支援することが正当だというためには、まず米英軍の対イラク戦争それ自体が正当だという前提が必要になります。しかるに、米英両国において、対イラク戦争そのものの正当性については、その根拠となった大量破壊兵器が今もって発見されていないこともあって、大義が疑問視されています。しかも、開戦に至る過程で政府による情報操作がなされたとして米英両国の国会で追及され、調査が進められています。その上、世界の国際法学者たちはほぼ一致して米英軍に対する対イラク先制攻撃は国際法や国連憲章に違反すると批判しています。
 この法案が成立すれば、これまでも同僚議員から何度も指摘されてきたように、戦後初めて自衛隊に正当防衛の名において武力行使をさせ、自衛隊員が生命の危険にさらされるだけでなく、他国の人々を殺傷する結果にもなりかねません。そのことは交戦権を禁じている憲法にも明らかに違反すると思われます。したがって、正当性を欠く米英占領軍を支援するため政府がなし崩し的にかつてないほど大規模な自衛隊の海外派兵をなすことには国民の過半数が反対しています。
 政府がイラクの復興支援のために自衛隊を派遣するとおっしゃるのであれば、すべからくイラク特措法案は人道支援だけに限定するか、さもなければ全面的に廃案にすべきだと思います。この点について、官房長官から御認識をお聞かせください。

○国務大臣(福田康夫君) 今回、この法律でもってイラクを支援していこうということについては、これは委員御指摘のとおり、人道復興支援とそれから安全確保支援活動、こういう二種類、御指摘になられました。そのとおりでございまして、これはそもそも安保理決議一四八三、これはイラクの国民に対して医療その他人道上の支援やイラクの復興支援を行うということ、そしてまたもう一つ、イラクの国内における安全及び安定を回復させるために貢献をする、こういうことを国連が要請をしている、国連加盟国に要請をしている、こういうことによって我が国は活動しよう、こういうことでございます。
 人道復興支援、これは申し上げませんけれども、この安全確保支援活動、これについては、具体的な内容、これは医療、輸送、保管、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒といったような業務、こういうものを想定をいたしております。
 それで、米軍が行う掃討作戦を応援するんではないかと、こういうことをおっしゃいましたけれども、この米軍などが行う掃討作戦に対して我が国が支援することができるか否か。このことにつきましては、この作戦に基づく個々の具体的活動がイラクの国内における安全及び安定を回復するその活動に該当するか否かということに掛かっているわけでございます。その内容、範囲、対象、目的などにつきましては、この当該活動を行います国から説明を受けた上で、我が国として主体的に判断し、そして関連安保理決議を踏まえてこのような活動を支援するための措置を行うことを決定していく、こういうことになっておりますので、委員の御懸念されることはこの法律どおり行えば問題は生じないと、このように考えております。

○大田昌秀君 今おっしゃった輸送の中に武器弾薬の輸送が入りますか。

○国務大臣(福田康夫君) 武器弾薬の輸送はこれは排除されておりません。ただ、その武器弾薬の輸送が、これが主たる目的になるということはあり得ないと思っております。

○大田昌秀君 次に、外務大臣にお伺いいたします。
 前回の本委員会で事前協議制についてお伺いしたわけですが、まだ納得できませんので、いま一度確認させてください。
 事前協議制が設けられた背景について、外務省の海老原北米局長は、米軍に全く自由に施設・区域を使用させるということではなく、日本側も一定のコントロールを施すという考え方があったと説明されました。
 この点と関連して、若干古い話になりますが、一九七二年当時の外務大臣の福田外務大臣は、安保条約の運用で我が国が逆に戦争に巻き込まれる、我が国の国益を害するというようなことになってはならないようにするための歯止めであるということをおっしゃっておられるわけですね。
 川口外務大臣は、これまでの本委員会で、事前協議制に基づく協議は一度もなされていないと答弁されていますが、この福田大臣の、事前協議制は我が国が戦争に巻き込まれないための歯止めであるという、そういうお考えについてはどのように認識しておられますか。

○国務大臣(川口順子君) 事前協議制をめぐって、いろいろな歴史といいますか、いろいろな方の発言があったと思いますけれども、事前協議が行われなかった、これは事実であるわけでございまして、事前協議が行われる場合というのが、これは六条の実施に関する交換公文できちんと決まっているわけですね。それは三つあって、配置における重要な変更、そして装備における重要な変更、それから日本国から行われる戦闘作戦行動と、三つ決まっているわけです。
 そして、こういうことに、今おっしゃっていらっしゃる場合は、日本国から行われる戦闘作戦行動ということをおっしゃっていらっしゃるのだろうと思いますけれども、いずれにしても、そういう場合にこれは事前協議の対象になるわけでございまして、そういう必要があれば、これは米軍が、米側から事前協議をしてくるということだと私は理解をいたしております。

○大田昌秀君 この規定に事前協議が適用されない事例というのが示されていますか。

○国務大臣(川口順子君) どういう場合にされないかという書かれ方ではなくて、どういう場合に事前協議がなされるかということについて決まっている交換公文であります。

○大田昌秀君 いえ、事前協議制度が適用されなくてもいいというような例外規定みたいなのがございますか。

○国務大臣(川口順子君) ですから、申し上げましたように、そういうことではなくて、どういう場合に事前協議が行われるかということが書かれているということです。

○大田昌秀君 これはちょっと疑問がございますので、是非お調べいただきたいと思います。たしか国連関連とか、そういうのは協議の対象にならないということが規定されていると思います。
 そこで、いま一度若干関連してお伺いしますが、さきの北米局長の答弁では、日本から行われる戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動であって、直接戦闘に従事するというような形で飛び立っているということではなく、現地に移動した上で戦闘作戦行動に参加したと推察される、つまり部隊間の移動のようなケースは事前協議の対象とならないということを言っておられるわけです。
 しかし、先ほども引用しました一九七二年当時の福田外務大臣は、日本からの戦闘作戦行動であるかどうかは、日本から出動するときに作戦行動命令を受けているかどうかであると答弁なさっています。さらに、作戦行動命令を受けていなくても、完全武装をして戦闘地域に向かった場合、つまり実態として戦闘の態勢を取って戦闘に参加するための出撃であれば事前協議の対象となるとおっしゃっています。
 このような考え方は、現在変わってきたんですか。

○国務大臣(川口順子君) 先ほどおっしゃった昭和四十七年、七二年の戦闘作戦行動に関する政府統一の見解というのはございますが、それはおっしゃったような、まず、ことで、
 「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」にいう「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがって、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行う義務を有する。
  わが国の施設・区域を発進基地として使用するような戦闘作戦行動の典型的なものとして考えられるのは、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等であるが、このような典型的なもの以外の行動については、個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して判断するよりほかない。
ということを書かれているわけでございます。
 考え方については、その後、変更をしているということはございません。

○大田昌秀君 前回の事前協議についての私の質問に対して、北米局長は、事前協議制は国際公約であって、義務違反を前提にこちらから米国に問い合わせをする考えはないというふうにおっしゃいました。
 しかし、福田、一九七二年当時の福田外務大臣は、我が国が戦争に巻き込まれないため、念には念を入れ、事前協議制度の運用には注意していると述べておられます。
 つまり、事前協議制が空洞化しないように努めなければならないというわけでございますが、改めてそこでお伺いしたいのは、在沖米嘉手納基地報道部は、つい最近のことですが、同基地の第十八航空団からF15戦闘部隊とともに最大八百人規模の兵員が中東地域に派遣されていることを明らかにしておりますが、地元の新聞は、これによって嘉手納基地のF15戦闘部隊もイラク攻撃に参加する可能性が高まったということを報じていて、また実際に参加したパイロットが、自分たちはイラク戦争に参加したということを認めているわけですね。
 それから、ワシントン・ポスト紙の報道によりますと、イラク戦争の直前に日本近海を遊よくしていた、横須賀を母港としている空母キティーホークと、搭載の第五空母航空団、陸軍第百一空挺隊に対し、ラムズフェルド国防長官が三月六日、湾岸地域への出動を命じたと米軍当局者が語ったというふうに報じております。
 このようなケースは日米安保条約第六条にかかわる事前協議制の対象になると思いますが、この点については事前協議の申入れがあったんですか。それとも、我が方から主体的にこれは疑問があるということで協議を申し入れたことはございますか。

○国務大臣(川口順子君) 事前協議はございませんでした。
 それから、こちらから申し入れるという御質問ですけれども、これは、事前協議というのは、先ほど申し上げました日米安保条約第六条の実施に関する交換公文に基づいて米側から申入れをなされるべきものであるということでございます。我が国に対して事前協議の申入れがない以上、我が国の施設・区域からの戦闘作戦行動が行われたことはあり得ないというふうに考えております。
 いずれにしても、「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」にいう、そこで言われている戦闘作戦行動というのは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであるということで、米軍の運用上の都合によって米軍の部隊等を我が国から他の地域に、都合で米軍の部隊などを我が国から他の地域に持っていくということは、これは戦闘作戦行動には含まれていないということであります。この解釈はずっと一致していると思います。

○大田昌秀君 もう時間がないのでやめますけれども、最後に一言お願いしておきたいことは、どうも外務大臣のお話を聞いていますと、沖縄のように基地を抱えていて、そこから実際に戦闘機がイラク戦争に参加するような問題について、他人事みたいに考えておられるように思うんですよね。基地の中でどういう苦しい生活をしているかという人たちのことについて、もう少し人間的な配慮ができる、そして政府の責任としてきちっと考えていただくようにお願いしたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。

○委員長(松村龍二君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   正午休憩
     ─────・─────
   午後五時二十九分開会
○委員長(松村龍二君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○山本一太君 イラク支援新法は、衆議院、参議院両院におきましてかなり濃密な審議が行われてまいりました。例えば、派遣される、イラクに派遣される自衛隊員の武器使用基準の問題をどうしようかとか、あるいは戦闘地域と非戦闘地域の線引きをどうするかとか、そうした細かい法律の様々なポイントについてはもう既に議論し尽くされたと、そういう感を持っておりますので、今日は取りまとめの議論ということで、総理をお迎えしての、十五分しかありませんので細かいことはお聞きするつもりはございません。少し大きなアングルから、原点に返って二、三問、総理のお言葉をお聞きできればと思っています。
 まず第一に、今回の小泉内閣の米英のイラク攻撃に対する支持、この決断を当然ですけれども私は支持をしております。苦渋の決断ではありましたけれども、日本の国益を考えれば私は正しい選択だったということを当然信じております。またさらに、イラクの復興について、日本が国際社会の責任ある一員として貢献をするその枠組みを作ると、今回の法律をこの国会に出されたことについても、これも日本の国益を考えたら適切な判断だったというふうに思います。総理は、この衆参両院で、イラクになぜ自衛隊を送るこの枠組みを作らなければいけないのかということについて、もう何回も御答弁をされているわけですが、総理の過去の御答弁をずっと昨日読ませていただきましたけれども、国益という言葉が随所に出てまいります。
 何度も同じ質問で恐縮ですが、取りまとめということですから、改めて総理にお聞きしたいと思います。
 なぜ今、イラクに日本の自衛隊を送る、そのための枠組みを作るのが日本の国益なのか、そして、なぜ自衛隊でなければいけないのかということについて御質問をさせていただきたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) かねがね言っておりますが、日本の基本的な外交方針は、日米同盟を重視していくことと国際協調を重視していく、これを両立させることだと私は思っております。今回のイラク支援法案におきましても、これは私は両立していかなきゃならないという今までの方針を実施に移すための法案であると思っております。
 戦後一貫してきたこの方針を、具体的な形で、それぞれの国際情勢の変化に合わせて、この方針を今までも日本は誠実に守ってきたと思います。これからもこの方針は、日本の平和と繁栄を築いていくべき重要な外交の基本方針だと思っております。そういう観点から、私は今回のイラク戦争に対する米英の方針を支持いたしました。
 そして、確かに、安保理におきましてはイラクに対する対応が全会一致ではありませんでした。各国で意見の相違がございました。しかし、主要な戦闘が終わった段階におきましては、これは見事に国際協調体制が築かれております。かねがね、開戦前から、そして開戦後も、日本としては、アメリカに対しても、あるいは各国に対して、イラクに対する対応はアメリカ対イラク、フランス対イラクの問題じゃない、国際社会がどうやってイラクに立ち向かうかという問題だと。主要な戦闘が終わった段階で、心配されておりました国際社会の対立が解消され、全会一致でイラクの人道復興支援について安保理決議が採択されました。
 こういう観点から、日本もイラクに対する戦争、これには参加しない、しかし、戦争が終われば、イラクの復興支援のために、国づくりのために、日本としては、日本の国力にふさわしい役割を果たさなければならないと言明しておりましたし、今もその考えには変わりありません。
 そういう観点から私は、今回、自衛隊が派遣される際には、これは非戦闘地域だ、戦闘行為には参加しない、イラク人のイラク人によるイラク人のための政府の早期立ち上げに今国際社会が努力しておりますし、日本としてもそれを支援し、そしてイラクの国づくりに日本としても、文民も、政府職員も、そして自衛隊も、できることがあれば大いにその役割を果たすべきだという観点から今回の法案を提出し、成立のために努力しているわけであります。
 これから自衛隊でなくてもできる分野には日本国民も働いていただく、また自衛隊の方がより有効に活躍できる場があれば自衛隊の諸君にも行ってもらう、こういう趣旨でありますので、この方針に沿って、この法案の趣旨に沿って、日本にふさわしいイラクの国づくりの支援は何かという観点から、自衛隊であれ、民間人であれ、政府職員であれ、いろいろ考えていかなきゃならないと思っております。

○山本一太君 大変分かりやすい御説明いただきまして、ありがとうございました。
 今回のイラク支援新法の議論を通じて、日本の安全保障政策の抱える問題点とか、あるいは将来の課題というものも改めて浮き彫りになったのではないかと、そういうふうに感じているわけなんですが、将来は日本のこうした国際貢献を担保するための恒久法を検討すべきではないかということについては官房長官などからもかなり前向きな御答弁があったような記憶がございますけれども、恒久法を議論するときに、このイラク支援新法でいろいろと浮き彫りになった問題点についても議論するべきだというのは、この参議院の外交防衛委員会でも何人かの同僚議員の方から指摘をされたことでございます。
 総理にもう一点お伺いしたいことなんですが、恒久法をこれから作っていくということになると幾つか課題が出てくるというふうに私は感じております。
 一つは、恒久法を作ったときに、どういうきっかけで、どういう契機で、どういう状況判断で自衛隊を送るかということだと思います。英語で言うと、よくその安保理決議のときに出てきたトリガー、引き金ということになると思うんですけれども、それは、例えば現行のPKO法でいけばPKOが立っていないところには派遣できないということになりまして、果たしてそういう狭い定義でいいのかなという気もいたしますし、先ほど総理が、イラク攻撃の際には、攻撃の際には安保理決議全会一致というのはなかったというお話がありましたけれども、何でもかんでも国連信仰で、国連安保理決議があればいいのかと、こういったことも問題になってくるのではないかという気がしております。
 この何がトリガーになるのかということに加えて、もう一つ問題になることについて総理にお聞きしたいと思います。
 二つ目の問題は、自衛隊をそれでは恒久法で外に派遣をした、そのときに自衛隊の活動と憲法との関係がどうなるかということだと思います。
 集団的自衛権の問題、そして武力行使一体化論という、諸外国では一度も聞いたことのないようなこの不思議な理論がまた目の前にぶら下がってくることになると思うんですが、集団的自衛権の問題については総理も何度か御発言をされて、小泉内閣で解釈を変更するつもりはない、しかし将来に向けて議論するということはいいことではないかというふうにおっしゃっていますが、その姿勢に今も変わりがないかどうか、これについてはいかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず後の質問でありますが、集団的自衛権、私は集団的自衛権を認めるんだったらば憲法は改正した方がいいと思っております。憲法を改正しないで集団自衛権、これまで積み重ねてきた政府解釈を変えるということは小泉内閣ではするつもりありません、これがまず。
 それと、恒久法の問題、いろんな議論が与党からも野党からも出ております。今後、十分時間を掛けて議論しなきゃならない問題だと思いますが、これも国連決議があれば武力行使に参加してもいいじゃないかという議論もありますが、私は、恒久法を考える場合、じっくり時間を掛けていろんな意見を聞きますが、恒久法の場合でも、国連の決議があっても、日本は武力行使に参加すべしという議論がありますが、そこまでは私は難しいのではないかと思っております、この段階でですね。
 こうなりますと、当然憲法の改正論議に踏み込んできます。だから、これからの、今後の恒久法をめぐる議論の中で、じゃ、現行憲法のままで恒久法を制定するのか、いろいろ議論の末にやはり憲法を改正すべしという議論も出てくると思います。そういう状況をよく見極めて、恒久法を議論する場合には、理念の問題、現行憲法の問題、それから国連決議の問題、集団的自衛権の問題、いろんな議論が出てきますから、そういう議論を積み重ねて判断すればいい問題ではないかと思います。

○山本一太君 今の総理の御答弁だと、そうすると、小泉総理としては集団的自衛権の解釈変更ということではなくて、この問題を根本的に解決するためにやはり憲法改正という王道から行くべきだと、こういうことでございますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) いや、恒久法の問題は、現行憲法の中で議論していこうという問題だと思っています。その中の議論ではいろいろ憲法改正論議も出てくるということは否定しないということでありますが、集団的自衛権を、集団的自衛権の行使を認めろということだったらば、私は現行憲法を改正すべきだということを言っております。

○山本一太君 分かりました。
 時間がなくなってきましたので、あと一問だけお聞きしたいと思います。
 最近、私は二つの、二冊の本を読みました。両方ともアメリカのいわゆるネオコンに関しての本なんですが、一つは、総理もお読みになったかもしれませんが、ロバート・ケーガンの「ネオコンの論理」という、このロバート・ケーガンというのはネオコンの旗手と呼ばれていまして、正にこのネオコンの理論の、何か体現しているような有識者なんですけれども。もう一つは、フォーリン・アフェアーズという世界的な外交政策の雑誌の、このフォーリン・アフェアーズ・ジャパンが出した「ネオコンとアメリカ帝国の幻想」という本なんです。
 ケーガンの方は、これはもちろんネオコンの主唱者みたいな人なんですけれども、アメリカとヨーロッパの関係について、アメリカは西部開拓時代でいうと保安官みたいなものだと、ヨーロッパは酒場の経営者だということで、ならず者が入ってくると、ならず者をやっつけるのは保安官で、ならず者がねらうのも保安官だと。ただし、酒場の経営者のヨーロッパからすると、余り保安官が厳しいと、かえって何もしないならず者よりも警戒感を持たれる場合もあるなんて書いてあります。
 また、こちらの「ネオコンとアメリカ帝国の幻想」の中では、ある有識者が、やはりブッシュ政権の単独行動主義とかあるいは安保理崩壊の危機について警鐘を鳴らしているわけなんですが、総理がこれまでいろいろとイラクの問題等々について御判断されてきた中には、やはり日米同盟というものがあったと思うんです。
 これからの国際社会の大きな課題は、このガリバーといいますか、唯一の超大国として改めて出現したアメリカとどう付き合っていくかということだと思うんですけれども、総理の目から見ると、アメリカはガリバーなのかシェリフなのか、それとも如意棒と筋斗雲、世界最大の軍事力と経済力を持った三蔵法師のいない世界の孫悟空なのか、日本はどういう距離感を持ってアメリカと付き合っていけばいいのか、そのことについて御答弁を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今までアメリカ一国がこれほど政治的にも軍事的にも経済的にも強い国になったことはないと思います。正に世界最強の国家であります。そのアメリカとどう協調していくか、協力していくか、これは日本の国の平和と繁栄にとって最も重要な課題だと思っております。
 私は、世の中、反米論が横行しておりますが、反米主義者の中でもアメリカを国際社会から孤立させちゃいけないと思っている人はかなり多いと思っています。いかにアメリカに世界の安全保障に関与してもらうか、そういう前提で、余りアメリカが強大になってほしくないという考えを持っている人はかなりいると。
 中東和平しかりであります。中東和平だってアメリカの関与がなかしむればなかなか実現不可能だと思っております。今回のアフガンにしてもイラクにしても、じゃここでアメリカが手を引いたらどうなるのか。これはまた新たな混乱の種になり得るわけであります。
 アメリカ好き嫌いを別にして、アメリカの協力なしに世界のいろいろな課題というものはなかなか解決しにくい状況である。そういう観点から、私は、日米協力、日米同盟は大事でありますが、今後、世界の中の日米同盟という視点が非常に重要ではないかと。今の日本の行き方というのは、アメリカに協力するとアメリカに追随するという批判が出ますが、そうじゃないと。アメリカと協力することは、今までも、過去も現在も将来も、日本の繁栄にとって非常に重要な課題であると。
 どう付き合っていくか。それはまずお互いの信頼感を醸成していくこと、信頼感を醸成して初めて対等の立場で率直な対話と協議ができる。そういうふうに思いますので、そのとおり、私は日本の外交方針を実施していきたいと思います。

○山本一太君 ありがとうございました。
 終わります。


2003/07/25

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